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平均で年431万円…日本血液学会の幹部、製薬企業から「講演料」等の報酬受領リスト
https://biz-journal.jp/2019/10/post_123677.html
2019.10.20 文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長 Business Journal
医療ガバナンス研究所とワセダクロニクルが調査・作成した「製薬マネーデータベース」
抗がん剤市場の成長が目覚ましい。2018年度の国内売上は約1兆2,000億円。1989年度の3,280億円から、平成の間に3.7倍に成長した。
この傾向は今後も続く。新薬開発が相次ぐからだ。今年5月にはスイスのノバルティスファーマ(ノ社)が開発した再発または難治性の白血病・悪性リンパ腫に対するCAR-T細胞療法キムリアが保険償還された。薬価は3,349万円だ。
抗がん剤開発の主戦場は造血器悪性腫瘍だ。腫瘍サンプルの採取が容易で、細胞分裂が速いため、抗がん剤が効きやすいからだ。現在、60の分子標的治療薬が存在するが、このうち24は造血器腫瘍を適応とする。肺がん12、乳がん7、悪性黒色腫7、腎細胞がん6を大きく引き離す。
造血器腫瘍を治療するのは血液内科医だ。製薬企業は彼らと良好な関係を構築したい。両者の関係はどうなっているだろうか。NPO法人医療ガバナンス研究所は、2016年度分の支払いについて、ワセダクロニクルと共同で製薬マネーデータベースを立ち上げ、無料公開した。現在、2017年度分のデータベースの整備を進めている。以下は、このデータベースを用いた分析だ。
日本血液学会の理事会は理事27人、幹事2人で構成される。2016年度、29人の幹部全員が製薬企業から講演料などを受け取っており、平均は431万円だった。もっとも多いのは理事長である赤司浩一・九州大学教授で1,093万2,026円だ。21社から依頼され、74件の講演などをこなしていた。以下、次に続く。
・豊嶋崇徳・北海道大学教授:891万円
・神田善伸・自治医科大学教授:866万円
・松村到・近畿大学教授:782万円
・小松則夫・順天堂大学教授:766万円
・飯田真介・名古屋市立大学教授:753万円
興味深いのは、彼らに金を支払う製薬企業だ。29人中、9人がノ社からもっとも金を受け取っていた。言うまでもないが、ノ社が血液内科医にカネを払うのは、キムリアを抱えるからだ。キムリアの販売方法は特殊だ。処方できる施設は限定される。中核となるのは、2015年7月から2017年12月にかけて実施された国際共同治験に参加した九州大学、北海道大学、国立がん研究センターだ。ノ社が売上を増やすには、このような施設の責任者を取り込めばいい。
では、両者の関係はどうなっているだろう。もちろん親密だ。キムリアの日本での治験の責任者を務めた豊嶋・北海道大学教授は、2016年度にノ社から103万5,742円を受け取っていた。キムリアの臨床開発には、医師の協力が欠かせない。協力した医師に報酬を払うのは当然だ。ただ、カネを払ってくれる人に「迎合」してしまうのは人間の常。市販後に処方できる施設を、このような施設に限定すれば、患者選択にバイアスが働いても不思議ではない。少なくとも、世間の理解は得にくい。キムリアのような高額医薬品の場合、製薬企業は主治医のさじ加減ひとつで3,349万円の売上を確保する。従来の処方以上に、透明性が高い情報開示システムの構築が必要だ。
■名古屋大グループ
血液内科の領域には、高額な医薬品が多数存在する。このようなやり方はノ社に限った話ではない。2016年度、製薬企業が血液内科医に支払った講演料などの総額は7億8,703万円で、多い順にセルジーン9,646万円、ノ社8,548万円、ブリストル・マイヤーズスクイブ7,441万円となる。
製薬企業は、あの手この手で血液内科医に接近する。特に力を入れるのは診療ガイドライン委員へのアプローチだ。日本血液学会には造血器悪性腫瘍診療ガイドライン委員会という、のべ60人の医師によって構成される組織が存在する。この組織を仕切るのが、名古屋大学を中心とした名古屋グループだ。60の委員ポストのうち、14のポストを12人の名古屋グループが占める。2位の東大グループの6人、7ポストを大きく引き離す。
名古屋大グループ12人が2016年度に受け取った製薬マネーの平均は234万円。東大グループの平均213万円を上回る。
なぜ、名大が血液内科を仕切るのか。名大血液内科(元第一内科)は、そもそも伝統あるグループだからだ。初代教授の勝沼精蔵氏は、1937年に創立された日本血液学会の初代会長を務めた。日本最大の白血病研究グループ「成人白血病治療共同研究機構(JALSG)」は1987年に大野竜三教授(1964年名大卒)が立ち上げたものだし、我が国の骨髄移植をリードしてきたのも名大だ。日本造血細胞移植学会の事務局は、現在も名大内にあり、公益財団法人日本骨髄バンクの理事長を務めるのは、小寺良尚医師(1967年名大卒)だ。
製薬企業は名大グループを熱心に支援する。講演会や臨床研究支援はもちろんのこと、退職後の面倒もみる。2008年に名古屋第一赤十字病院を退職した小寺氏の再就職先は、愛知医科大学に新設された造血細胞移植振興寄附講座だった。寄付元は協和キリンなどだ。
2013年には関連病院の部長が「不祥事が露顕し、退職に追い込まれた(名大血液内科医局員)」。名大グループの重鎮は、この医師を「創薬開発、治験等に関する業績は申し分のないもの」があるため、「彼の再出発のために」製薬企業に寄附講座を設置するように依頼するメールを送った。製薬企業社員から、筆者のところにも転送されてきた。さすがに、この件は実現しなかったが、現在、依頼した重鎮の医師は愛知県内の医科大学に設置された寄附講座の教授を務める。資金を提供するのは、これも協和キリンだ。
■製薬マネーデータベース構築の必要性
我々は、製薬マネーの調査を進めてきた。さまざまな診療科を調べたが、血液内科は製薬企業との距離が極めて近い診療科といっていい。
このような診療科の医師がキムリアを処方する。キムリアは処方されれば、結果とは無関係にノ社と病院にカネが入る。効果が期待できない患者に投与することは、血税をドブに捨てるに等しいが、医師の懐は痛まず、製薬企業は巨大な利益をあげる。一部の病院は処方を増やすため、他の病院で断られた患者を引き受け、キムリアを処方するかもしれない。「一縷の望みにかけて最善を尽くした」と言えば、体裁は取り繕えるからだ。
このような状況はキムリアに限った話ではない。血液内科が主導してきた抗がん剤治療や骨髄移植の開発も、似たような状況の中で推し進められてきた。
筆者は、このような状況はある意味で仕方ないと思っている。血液内科は先端医療をリードし、先端医療は人体実験の側面があるからだ。ただ、だからこそ節度と情報開示が必要だ。透明性が担保されなければ、社会から信頼されない。日本血液学会は、血液内科に関する部分だけでいいから、独自に製薬マネーデータベースを構築し、公開したらどうだろう。社会の見方が変わるはずだ。
(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)
●上昌広(かみまさひろ)
1993年東大医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。 虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の診療・研究に従事。
2005年より東大医科研探索医療ヒューマンネットワークシステム(後に先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年3月退職。4月より現職。星槎大学共生科学部客員教授、周産期医療の崩壊をくい止める会事務局長、現場からの医療改革推進協議会事務局長を務める。
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