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子供のいない「おふたりさま」夫婦に「相続トラブル」が続出中のワケ 準備すべき「死後の手続き」がある
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63778
2019.09.23 週刊現代 :現代ビジネス
■「おふたりさま」の相続問題
本当は相続人がいるのに、その存在を普段は意識しないためにトラブルを招くケースは少なくない。
それが、子どものいない夫婦、つまり「おふたりさま」の相続の場合だ。
二人きりの老夫婦の場合、夫か妻のどちらかが亡くなれば、その遺産はすべて配偶者のものになる。わざわざ遺言書を作成する必要はない――。こう考えて、そのまま亡くなる高齢者は多い。
ところが、これは間違いだ。
おふたりさまの場合、民法の規定する法定相続人は、故人の親、きょうだい、次いで甥や姪の順になる。これを念頭に置いていない人は多く、遺産をめぐるトラブルが多発している。
大阪府在住の向井淑子氏(77歳・仮名)には、50年以上連れ添った夫がいた。子どもはなく、小さな自宅で、夫と二人暮らしを続けてきた。
夫が亡くなったのは、つい2ヵ月前のことだった。向井氏が語る。
「半年前、夫は末期がんの宣告を受けました。病院からの帰り道、夫は『俺たちには子どももいないし、財産はお前が全部もらえる。だから、俺が先に逝っても安心だからな』と、私に話しました。
自分が大変な状態なのに、第一に私の心配をしてくれていたのです。そんな夫に遺言書を書かせておこう、なんて考えはまったくありませんでした」
夫の財産は、自宅を含む不動産が5000万円分と、預貯金が1400万円。質素な生活を送る向井氏が余生を過ごすためには十分だった。
夫婦ともに高齢だったこともあり、近しい親族はいなかった。夫の言うとおり、死後手続きに向けて、生前にしておくべき準備などない。向井氏はそう考えていたのだが――。
■甥が出てきた…
そして、夫が亡くなり、向井氏は喪主として葬儀を執り行った。
この葬儀の場で、向井氏は想定外の相続トラブルに巻き込まれることになる。
「20年以上会っていなかった甥が、突如『遺産分割協議はどうするか』という話を持ちかけてきたのです」(向井氏)
向井氏の夫には兄がいた。兄はすでに亡くなっているが、その子どもである甥が、夫の葬儀に参列していた。
故人のきょうだいが法定相続人の資格を持っている状態で亡くなった場合、その子どもである甥や姪が代襲して遺産を相続する権利があるのだ。向井氏の甥の場合、法定相続分は遺産の4分の1(1600万円)となる。
とはいえ、これまでほとんど交流のなかった甥が、まさか夫の遺産を相続しようとするとは思わなかった。
向井氏は、今後も自宅に住み続けたいと考えている。しかし、夫の残した1400万円の現金では、甥の法定相続分である1600万円を渡すことはできない。
そのことを相談すると、向井氏の甥は、驚くべきことを口にした。
「現金で払えないのなら、自宅を売っておカネを作ってもらえませんか」
あまりに残酷な仕打ちだが、甥が納得しないかぎり、自宅を売却してでも、夫の遺産から1600万円を渡さなくてはならない。遺言書さえあれば、こんなことにはならなかった。
■3人で分割するハメに…
子どものいない夫婦が遺言書を作らずにいることはよくある。しかし、遺言書がなければ、相続人同士で遺産分割協議をしなければならない。
夫が妻に残すつもりだった預貯金の口座や不動産でも、相続人全員の同意がなければ、名義変更ができないからだ。なんと向井氏は、夫の預貯金を引き出すことすらできなくなってしまったのだ。
向井氏のように、法定相続分の現金が用意できず、遺産分割協議が解決できない場合、不動産を共有名義にするか、売却して代償金を支払うほかなくなる。
また、おふたりさまの相続で、甥や姪が相続人となる場合は、相続人の数が増えることも多い。
下の図のように、2400万円分の財産を持つ夫が死去した場合を考えてみよう。
夫婦には子どももおらず、夫の両親はすでに他界しているため、夫(被相続人)の兄が法定相続人となる。
その法定相続分は遺産の4分の1(600万円分)だ。だが、その兄もすでに他界しているため、その子どもが代襲相続人になる。
このケースでは、兄には二人の子どもがいるため、代襲によって、甥と姪が法定相続人となる。その際の法定相続分は遺産の8分の1(300万円分)ずつだ。
故人の妻は、この二人と遺産分割協議をしなければならない。妻は、甥と姪のそれぞれとやり取りをしたうえで、遺産分割や名義変更を進めなければいけないのだ。
このように、すでに他界した法定相続人に子どもが複数いれば、相続人の数も増えることになる。夫婦の遺産を一人で相続するつもりが、3人で分割するハメになるのだ。
■態度が豹変
だからこそ、子どものいない夫婦は遺言書を残しておくことが重要だ。弁護士の武内優宏氏が語る。
「配偶者や親、子どもとは違い、被相続人のきょうだいや甥、姪には、遺産の最低限の相続割合である遺留分の規定がありません。
つまり、遺言書に『配偶者に全財産を相続する』と明記すれば、被相続人のきょうだいや甥、姪から遺産を請求されても、法的には支払う必要はなくなります」
そのうえで、夫婦とも遺言書には「自分の死後は、配偶者にすべての財産を相続させる」と明記しておくべきだ。
「自分が先に亡くなった場合、配偶者が先に亡くなった場合の双方に備える必要があります。夫婦がそれぞれ遺言書を作成しておけば、どちらが先に亡くなっても、夫婦の財産を守ることができるのです」(武内氏)
一方、子どものいない夫婦の相続で、まだ親が健在ならば、きょうだいではなく親が法定相続人になる。このときは、親の遺留分を封じられないことで、トラブルになる。
熊本県在住の佐藤恵美氏(57歳・仮名)の夫は、遺言書に『自分の死後、不動産と預貯金(合計3000万円分)の財産はすべて妻が相続する』と書き残して亡くなった。
佐藤氏は、義理の母と良好な関係を築いていた。夫は闘病生活が長かったため、義母は「息子が先に逝っても、私におカネを残そうだなんて考えなくていい」と、佐藤氏に温かい言葉をかけていた。
ところが、夫が亡くなると、義母の態度が豹変した。突然、「やっぱり、自分にも遺産を分配してほしい」と言い出したのだ。
■義母との関係
佐藤氏が語る。
「どうやら、夫の弟が『佐藤家の財産を、ほかの家から来た人間に明け渡すなんて非常識だ』と義母に吹き込んだようなのです。義弟は、義母に遺留分の請求ができることも教えていました。
あまりの剣幕に、夫の遺産から遺留分にあたる500万円のおカネを渡すことになりましたが、義母との関係はぎくしゃくしてしまいました」
親が法定相続人である場合、その法定相続分は遺産の3分の1だ。
前出の向井氏の場合は、甥や姪は法定相続人であっても、遺留分はない。遺言書さえ残しておけば、妻以外の相続人に、夫の財産が流出することは避けられた。
ところが、法定相続人である親には遺留分がある。遺言書にどう記載していても、遺留分(遺産の6分の1)は、請求されてしまえば拒否することができないのだ。
それでも、どうしても配偶者に多く遺産を残したければ、遺言書を作成する前の段階で、自身の親と、きちんと話し合っておく必要がある。
「被相続人の親が存命の場合、遺言書だけでは、妻に全財産を残すことはできません。生前のうちに、『妻にできるだけおカネを残したい』という意志を自分の親に伝えておく。そのうえで、親に遺留分の請求をしないようにお願いしておくべきです」(行政書士・阿部惠子氏)
あくまで、遺留分の請求は法律で定められた権利だ。
配偶者と自身の親が揉めることのないように、十分な配慮をしたうえで、遺言書を作成しておこう。
ここまでは、「配偶者にできるだけ多くの財産を残すためにはどうするべきか」を、事例をもとに解説してきた。
だが、現実には、十分な準備をしたつもりでも、自分が死後に残した財産のせいで、配偶者が親族と揉めてしまうケースもある。
■守銭奴、泥棒…
千葉県在住の工藤祥子氏(54歳・仮名)は、前出の向井氏や佐藤氏と同様、夫と二人暮らし。子どものいない二人の家庭だった。夫の両親はすでに他界している。
工藤氏が語る。
「夫は私のためを思って、全財産を私が相続できるよう、遺言書を残してくれたのです。夫の兄にも法定相続分があることは知っていたので、そこまで偏った遺産の分配をして大丈夫なのか、不安でした」
それでも、生前の夫に聞くと、「兄に話はしてあるから、お前は心配いらない」と言う。工藤氏は夫の好意を受け入れることにした。
ところが、昨年、夫が亡くなったとき、「話をしてあった」はずの義兄が、実はまったく納得していなかったことを知る。
「葬儀の際に、義兄夫婦から『守銭奴』『泥棒』と、心無い言葉を浴びせられてしまったのです。まさか義兄にそこまで言われるとは思っていなかったので、深く傷つきました」
工藤氏は、想像もしなかった親族とのトラブルに打ちのめされ、ノイローゼになってしまった。
工藤氏の夫のように、配偶者を思う気持ちが仇となり、かえって心理的な負担をかけるケースは、けっして珍しくない。
■どうすればいいのか
おふたりさまの状態から夫を亡くし、相続を経験した終活ジャーナリストの金子稚子氏が、こうしたトラブルの解決策を語る。
「遺言書のおかげで財産をすべて相続できることになっても、配偶者の親やきょうだいに、納得してもらえるだけのおカネを分ける選択をするべきです。あえて遺言の内容とは違う遺産分割を行うことで、配偶者の死後も、親族と良好な関係を維持できることもあります」
金子氏は、夫の遺言とは異なる遺産分割を行い、義理の父母に少しでも多くおカネが渡るように工夫をしたという。金子氏が続ける。
「遺言書と違う配分にすることで、故人ではなく、私自身の『気持ち』を義理の両親に伝えることができました。
おカネの分配のことだけを考えることが、死後トラブルの解決策ではありません。おふたりさまの場合、被相続人が亡くなった後、残された配偶者のおカネの使いかた次第で、揉めごとを避けることもできるのです」
おふたりさまの相続は、普通の相続とは違う点が多い。一人残される配偶者が幸せな人生を歩んでいけるように、何をしてあげられるのか。また、実際に残された相続人は、何をするべきなのか。
夫婦二人だからこそ、ほかの相続人のことも考えて準備をしておきたい。
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