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人手不足倒産が増えるのは日本経済にとって良いニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190512-00011058-toushin-bus_all
LIMO 5/12(日) 20:20配信 写真:LIMO [リーモ] 人手不足倒産が増えていることは、当該企業の経営者にとっては悲劇だが、日本経済にとっては良いニュースだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。 人手不足倒産が増加している 東京商工リサーチが発表している人手不足倒産の統計には 「後継者難による倒産」も含まれていますが、本稿ではこれを除いて論じることとします。求人難、人件費高騰、従業員退職が望ましいものである一方で、後継者難による倒産は、残念としか言いようがないからです。そもそも後継者難を人手不足と呼ぶべきではないと思いますし(笑)。 すると、2018年度の人手不足関連倒産は131件で、前年度比で倍増しているのです。 人手不足が原因で倒産してしまった企業の経営者には同情しますし、非難したり他人の不幸を喜んだりするつもりは全くありません。しかし、そもそも事業を営むということはハイリスク・ハイリターンに挑むということですから、勝者と敗者が出てくることは自然なことであり、「労働力獲得競争に敗れて倒産した経営者がかわいそうだから人手不足倒産は悪いことだ」ということは言えないと思います。 人手不足になるほど景気が良いことを祝おう まずは、人手不足になるほど景気が良いことを祝いましょう。景気が悪ければ、人手不足倒産は発生しないのでしょうが、その際には売上が不振で倒産する企業が続発するでしょうから、その方がよほど悲惨でしょう。 そもそも、労働力不足という言葉が否定的なイメージなので、別の言葉を使うべきだと筆者は考えています。「仕事潤沢」はパッとしませんし、「労働力需給逼迫」は長すぎますから、誰かに素敵な用語を考えてほしいですね。 労働力不足は、経営者にとっては困ったことかも知れませんが、労働者にとってはライバルが少ないわけですから、望ましいことなのです。 労働力不足になれば、失業の恐怖が和らぎますし、非正規労働者の時給も上がりますし、ブラック企業もホワイト化を迫られるでしょう。 日本経済にとっても、労働力不足は良いことです。企業が省力化投資に励むので経済が効率化するからです。もしかすると、「増税して景気が悪化しても失業者が増えないから、気楽に増税しよう」ということで、財政赤字が減っていくかもしれません。 人手不足倒産で日本経済が効率化する 人手不足で倒産する企業は、他社より低い賃金で労働者を募集していたはずです。それは恐らく労働生産性が低い非効率な経営をしていたために、高い賃金が払えなかったのでしょう。 そうした企業が倒産すれば、そこで働いていた労働者は、より高い給料の払える労働生産性の高い企業に雇われることになるはずです。これは、労働者が労働生産性の低い企業から高い企業に移動するわけですから、日本経済全体として効率的になることを意味しています。 場合によっては、労働生産性が高く、高い賃金が払えるのに払わずに人手不足で倒産した、という可能性もありますが、普通は応募が少ない時点で高い賃金での募集に切り替えるはずです。 倒産した企業の労働者にとっても良いこと 通常であれば、勤務先の倒産は労働者にとって悲劇ですが、人手不足倒産の場合は、むしろ労働者は待遇が改善する可能性が高い、という点も重要です。今までの勤務先が人手不足倒産をしたのは、給料が他社より低いから労働者を募集しても集まらなかったわけで、他社に移れば給料が上がる可能性が高いのです。 労働者が「情報弱者」で、自分の給料が他社より低いことを知らなかった場合もあるでしょうし、知っていても恩のある会社を辞めると言い出せなかった場合もあるでしょう。いずれの場合にも、勤務先が倒産すれば新しい仕事を探すことになり、そこで今までより高い給料がもらえる可能性が高いのですから、素晴らしいことです。 過当競争が沈静化することにも期待 日本企業は過当競争体質なので、「効率的に経営しているけれどもライバルとの値引き合戦が激しくて利益が出ず、高い賃金が払えない」、という企業も多いはずです。そうした企業の中で人手不足倒産が発生するとすれば、それは残念なことに違いありません。 しかし、業界全体のことを考えれば、当該企業が倒産したことで、過当競争が緩和され、生き残った企業が適正な価格で販売できるようになり、適正な利益を得て適正な賃金を支払えるようになる可能性が高いでしょう。これは、素晴らしいことだといえるでしょう。 日本経済全体としても、こうして値下げ合戦が収束していくことは、デフレ脱却に向けた望ましい動きだと言えるはずです。 倒産より合併等が望ましい 企業が倒産すると、企業の中に蓄えられてきたノウハウや顧客リストなどが散逸してしまい、もったいないことになります。まだ使える機械がスクラップ業者に二束三文で叩き売られてしまう場合も多いでしょう。 それを避けるためには、企業が合併したり身売りしたりすることが望ましいと言えそうです。企業経営者としては、自力で生き残れる可能性が少しでもあるならば、身売りしたりするのは嫌だと思うでしょうが、生き残れる可能性が相当低いのであれば、あるところで諦めるという決断も必要となるでしょう。 数百万社ある企業のなかで、求人難などによる倒産がわずか131社しかない、ということは、人手不足で倒産が危ぶまれる多くの企業が身売りや合併などを選択している結果だと推測されます。それは、悲しい決断だとは思いますが、結果的には正解だったのかもしれませんね。 本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。 塚崎 公義
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