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人口が多く土地が狭い日本 なぜ一戸建てを好むのか
人民網日本語版 2019年04月30日09:25
東アジアのマンションが密集して建ち並んだ都市環境の中で、日本は「特別なグループ」に属するといえる。日本の多くの地域では高くそびえ立つマンション群が見られず、それに代わるのが「一戸建て」と呼ばれる独立した住宅だ。新華網が伝えた。
ここ10数年間、日本の持ち家率は60%前後を保ち、個人の持ち家の中心は一戸建て住宅だ。独立した建物、庭があって芝生がある生活が、多くの中国人が最初にイメージする日本人の暮らしだ。
日本人はなぜ一戸建てを好むのか。
▽豊かになるために、まず家を建てる
1950年代初期、日本では「住宅金融公庫法」と「公営住宅法」が相次いで公布され、厳しい経済状況にありながら住宅問題の解決に乗り出した。
「公営住宅法」は資金のない国民に政府が賃貸住宅を提供すると規定。日本政府は予算を支出して日本独特の安価な賃貸住宅の建設を急ピッチで進めた。より重要なのは「住宅金融公庫法」で、政府が金融公庫を設立し、手元に余裕のある国民にローンを提供し、住宅建設を後押ししたことだ。それから数十年にわたり、この法律は日本の持ち家率を引き上げ、小規模な一戸建てが国土の上にどんどん建つようになった。
60年代に入ると、日本経済が高度成長期に入り、鉄鋼建築材料の生産量なども増加を続けた。手元にゆとりのある日本人はついに住居環境のレベル向上をはかるようになった。日本政府が65年に打ち出した「住宅建設5カ年計画」は、「1家に1戸、1人に1室」を提唱し、公営賃貸住宅を建設すると同時に、一戸建ても建設すべきとした。
独立した一戸建てが住宅政策の支援の重点だった。そのため日本では地方住宅供給公社という機関も設立され、大量の資金が充てられて住宅建設の責任を担うことになった。これ以降、一戸建てが日本の個人所有住宅の代名詞になった。
一戸建てはあちこちに建てられ、都市近郊から中心部に向かって広がり、第二次世界大戦で荒廃した土地が大規模な住宅地に変わった。あらゆる土地に家が建ち、東京などの大都市では土地不足問題がみられるようになった。
▽人口が多く土地は少ないのに一戸建て志向
70年代末には、日本の人口はすでに1億1600万人に達し、日本社会には「全ての人が一戸建てに住んだら、日本全体が土地不足の危機に陥る」との懸念が広がった。人口の爆発的増加と土地不足を憂う論調が各メディアを賑わし、こうした不安感は不動産市場で「早く買って、早くもうけよう」とする投機心理をあおり、不動産価格は高騰して、「バブル経済」が出現した。
しかし、これが一戸建てを建てようとする日本人に情熱に影響を与えることはなかった。その原因は日本の人口分布が非常にアンバランスなことにある。
第二次大戦後の日本はわずか23年で都市化率を72%に引き上げた一方で、農村の土地は大量に手つかずのままだった。都市の人口分布は非常にアンバランスでもあり、人口は主に2大エリアに集中していた。1つは東京を中心とする首都圏で、総人口の約3分の1にあたる3700万人が住んでいた。もう1つは関西圏(大阪、京都、神戸などを中心とする地域)で、人口は2千万人を超えていた。
つまり日本の人口の半分以上が国土の約10%に暮らしていたということだ。これ以外の国土の大部分は、必要な農業などの経営活動に利用されるほか、半分に満たない人口がそれぞれ一戸建てを建てても十分に余裕があるものだった。
不動産バブルで住宅価格が高騰し、サラリーマンは都市部を離れることを余儀なくされた。こうした人々の中には破産した不動産市場の投機者も含まれている。バブル経済が崩壊すると、日本政府はこのタイミングで副都心建設と地下鉄・都市鉄道改善の戦略を打ち出し、都市部に密集した人口を効果的に分散しようとした。大都市周辺のエリアや県が新たな一戸建て用地になり、相対的に多い土地供給と厳格な価格監督管理政策により住宅価格は徐々に落ち着いていった。
国土の10%前後の人口が密集した地域にとってみれば、バブル経済でも一戸建てが広がる状況は変わらなかったが、日本の大都市中心部の住居環境をある程度は改善したといえる。
また日本が地震国であることも日本人が一戸建てを建設・購入しようとする原因の1つだった。
▽家を買えない現実 中産階級のシンボルだが
多くの中国人が考えるのとは異なり、一戸建てに住むことは別荘のような広々した住宅に住むことを意味しない。コンパクトなマンションのようなもので、大半の一戸建ては居住面積が100平方メートルを下回る。人口が多く土地が少ない問題に直面して、日本人は家と家の間の空間をますます縮小してきたため、日本の住宅地の公道は非常に狭いものが多く、車の通行にも人の移動にも不便だ。だがこうした住宅も別の意味を与えられると違ってみえてくる。
90年代には漫画・アニメ作品の「ちびまる子ちゃん」と「クレヨンしんちゃん」がアジアで大ヒットした。どちらもごく普通の日本の家庭の日常を描いており、一戸建ての家に住み、庭のある生活をしている。こうして一戸建ては中産階級の暮らしのシンボルになった。一戸建てをもつことが日本社会では青年から中産階級へ移行するシンボルになった。
日本経済の高度成長期には、中産階級になり、1つの企業で一所懸命に働き、年功序列によって徐々に昇進昇給し、決められたレールを進んでいけば快適な生活は保障された。快適な暮らしのシンボルは一戸建てであり、現在の中国の中産階級が大きな窓のある高層住宅を追い求めるのと似ている。
こうして日本では若いパパたちが30年以上のローンを背負ってでも家を買い求めるようになった。
しかしバブル経済が崩壊すると、日本の若い世代は一戸建てへの興味を失っていった。今や30歳以上の自立するはずの年代の日本人でさえ、持ち家率は下降の一途をたどって10%に低下し、平屋を自分で建てる人の割合はさらに低い。バブル経済で今の多くの若者の親世代が資産を失い、当時子どもだった彼らの心に暗い影を落とした。また若い世代はお金を住宅に使うのではなく暮らしの質を高めるのに使いたいと考えている。
つまるところ、問題の最も根本にあるのはお金がないという現実だ。
日本社会では終身雇用と年功序列が普及し、年長の社員が長らく企業の中位・上位のポジションを独占し、若い社員を出世の道からはじき出してきた。若い社員は発展チャンスもなければ、出世の可能性もないまま、長らく職場の最下層に押しやられ、賃金は安い。そこで家を買わず、結婚もしなくなり、結婚率は低下を続け、ひいては高齢化問題を深刻化させている。
21世紀になると、日本の若者は両親と同居する割合が高まり、上昇ペースもさらに速くなった。自分の家を買えないため、2010年以降、30歳前後で両親の家に住んでいる人の割合が約3分の1に達した。20代で結婚した人の5分の1が両親と同居している。何年も家から出たことのない「引きこもり」も登場した。
家を買って独立するという社会的観念が、家を買えない現実によって徐々に崩れてきている。こうした時代に呼応するように二世帯住宅が登場。これはバージョンアップした一戸建てだといえる。これまでのような成人すると家を出て独立した生活を営むという観念は、高齢化の波の中で徐々に崩壊している。
日本では持ち家率は低下してもなお高水準を保ち、一戸建ての中産階級のシンボルとしての位置づけには何の変化もない。一戸建ては標準的な日本人の暮らしの象徴であり、日本経済の勃興発展の歴史を今に伝えるものでもある。これと同時に、高まる空き家率は高齢化を迎えた日本の人口減少の写し絵でもある。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年4月30日
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