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2019年3月20日 The Wall Street Journal
人民元高求めるトランプ氏、図らずもそれが得られる訳
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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「将軍は一つ前の戦争を戦う(前回の戦略を採用してしまう)」という格言がある。中国の2018年の輸出が堅調に維持されたのは、人民元の大幅な下落も背景となった。米国のドナルド・トランプ大統領と貿易担当の「将軍」たちは、中国が再び競争優位に立つために元相場を操作しないよう、中国政府との通商合意に元相場の安定を保証する項目を盛り込むことを求めている。
実際には、11月以降に対ドルで3%上昇したものの、このところの元相場はまずまず安定している。その理由は通商合意の可能性が強まったことだけではない。中国が長期的な元相場の制約に合意する公算は小さい。その半面、市場の現状と経済動向を踏まえれば、現時点で元の対ドル相場を安定させるのは中国政府にほとんど負担が掛からない。
中国の輸出は下押しされているが、成長減速と原油価格の急落を受け、18年終盤から輸入の減少が一段と激しくなっている。17年と18年の大半で、輸入の伸びは輸出の伸びを約10ポイント上回っていた。12月以降は輸入が失速し、中国の貿易収支改善と通貨下支えに寄与している。
米連邦準備制度理事会(FRB)がハト派姿勢を強めたことも追い風となった。昨年11月には、中国国債の利回りは米国債10年物の利回りをわずか0.25パーセント・ポイント上回る程度だったが、今ではその差は倍になっている。こうした利回り格差は、年初からの中国株式相場の急回復とともに元建て資産の投資妙味を増し、元を押し上げている。
これら全てが意味するのは、元相場は中国の政策当局による直接的な支援がほとんどないまま上昇しているということだ。貿易問題の緊張がほぼ頂点に達し、利回り格差が3%を超えていた昨秋、中国の外貨準備は一時的に減少したが、その後は増加に転じた。国内銀行による外貨売買の売り越しも解消し、資本流出圧力は和らいでいる。
現在、本当の不確定要素となっているのは中国国内の住宅市場だ。14年終盤には不動産価格が急落し、中国人民銀行(中央銀行)がやむなく本格的な緩和サイクルに入った結果、翌年には大量の資本流出が起こった。歴史的な株式バブルももたらし、その後のバブル崩壊が資本流出圧力をさらに強めることになった。
中国の不動産市場はまたも減速し、株式市場にはバブルの気配が漂う。直近の不動産市場の不安定さは前回ほどの大惨事にはつながらないとみる相応の理由はある。ただし、実際に不動産価格が再び急落に見舞われれば、人民銀はさらに積極的な政策緩和で対応することはほぼ間違いない。その時点で、元への賭けは全て止まる。
(The Wall Street Journal/Nathaniel Taplin)
https://diamond.jp/articles/-/197464
日本もファーウェイ排除宣言を、曖昧は国を亡ぼす
米中ハイテク覇権で世界はブロック化、欧州とは地理的条件異なる
2019.3.20(水) 渡部 悦和
中国企業を利用したスパイ活動「決してない」 李克強首相
中国・北京の人民大会堂で開かれた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の閉幕後、記者会見する李克強首相(2019年3月15日撮影)。(c)FRED DUFOUR / AFP〔AFPBB News〕
「米中ハイテク覇権争い」により世界はブロック化する
北京で開催されていた2019年の全国人民代表大会(全人代)が終了した。
米ドナルド・トランプ政権を刺激する「中国製造2025」に言及する者はいなかった。あたかも、米中貿易戦争下において、ケ小平の「韜光養晦(とうこうようかい)」(才能を隠しながら、内に力を蓄え、強くなるまで待つこと)が復活したような状況である。
李克強首相は、中国政府が中国企業にスパイ行為をさせているという欧米の批判に対して、次のように反論した。
「(スパイ行為は)中国の法律に適合せず、中国のやり方ではない。スパイ行為は現在も将来も絶対にしない」
しかし、私はこの主張を全く信じないし、これを信じる中国専門家はほとんどいないであろう。
中国は、過去において国家ぐるみで先端科学技術などの入手を目的としたスパイ活動を活発に行ってきたし、現在も行っていて、将来においても必ず行うであろう。
李首相の発言は、中国要人の「言っていることとやっていることが違う」という言行不一致の典型である。
習近平主席が「中華民族の偉大なる復活」「科技強国」「製造強国」路線を放棄するわけもなく、トランプ政権が求める構造改革に応じず、結果として「米中の覇権争い」、特に「米中のハイテク覇権争い」は今後長く続くであろう。
米中ハイテク覇権争いの焦点になっている華為技術(ファーウェイ)は、全人代開催中の3月7日、「米国で2018年8月に成立した国防権限法によってファーウェイの米国事業が制約を受けているのは米憲法違反だ」として米国政府を提訴し、全面的に戦う姿勢を見せている。
ファーウェイの第5世代移動通信システム(5G)は、スウェーデンの通信機器大手エリクソンやフィンランドのノキアなどの競合他社を性能と価格で凌駕していると評価されている。
世界の通信事業者にとってファーウェイは魅力的な選択肢である一方、米国側にはファーウェイを凌駕する代替案がないのが現実である。
トランプ政権は、安全保障上の脅威を理由にして、ファーウェイを米国市場のみならず同盟諸国などに圧力をかけて世界市場からも排除しようとしている。
その結果、世界は米国のブロックと中国のブロックに二分されようとしている。
しかし、米国の同盟国のファーウェイ排除の動きは一致団結したものにはなっていない。
日本やオーストラリアなどは米国の意向に沿う決定を一応下しているが、ドイツや英国は米国のファーウェイ排除の要請に対してあいまいな態度を取っている。
その理由は、なぜファーウェイが安全保障上の脅威であるかを証明する具体的な証拠を米国が提示していないこと、トランプ大統領が同盟諸国に対して同盟を軽視するような言動を繰り返してきたことに対するドイツなどの欧州主要国の反発などであろう。
米国は、5Gにおいて世界を米国のブロックと中国のブロックに二分する政策を取りながら、米国ブロックに囲い込まなければいけない欧州主要国の明確な支持を取りつけられていない。
このような状況下で、英国の有力紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「ファーウェイ、排除ではなく監視が必要」 という社説を掲載し、「各国政府はファーウェイ製品の使用を禁じるよりも、監視を続けていくことが自己利益につながる」*1と主張した。
*1=FT、“Huawei needs vigilance in 5G rather than a ban”
「ファイブ・アイズ」で異なるファーウェイ排除の姿勢
米国主導で機密情報を共有する5カ国の枠組み「ファイブ・アイズ」の国々のファーウェイ排除の姿勢はバラバラになっている。
かつて米国と密接不可分な同盟関係にあった英国は、ファーウェイ排除の姿勢を明確にはしていない。
英政府通信本部(GCHQ)の指揮下にある国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)が、「ファーウェイ製品を5G網に導入したとしてもリスクを管理することは可能だ」という結論を出した。
英国はこの春にファーウェイの処遇を決めるが、ドイツとともに排除しない方向に傾いている可能性がある。
これに対して、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の報告書*2は、「ノキアやエリクソンではなくファーウェイの通信機器を使用するのは甘い考えと言うしかなく、最悪の場合は無責任ということになる」と批判している。
安全性のはっきりしない機器は、これを排除する方が安心だという。英国の有力な機関が全く違う見解を公表しているわけだ。
一方、豪国防信号局は「通信網のいかなる部分に対する潜在的脅威も全体への脅威となる」として、ファーウェイを5Gに参入させないよう求めている。
オーストラリアやニュージーランドは5G網にファーウェイ製品を使わないことを決定している。
ドイツは米欧州軍司令官の警告を受けた
米欧州軍司令官(NATO=北大西洋条約機構の軍最高司令官を兼務)スカパロッティ(Curtis Scaparrotti)大将は、3月13日の米下院軍事委員会において、次のように発言した*3。
「5Gの能力は4Gとは圧倒的な差があり、NATO諸国の軍隊間の通信に大きな影響を与える。NATO内の防衛通信において、(ドイツや欧州の同盟国がもしもファーウェイやZTEと契約するならば)問題のある軍隊との師団間通信を遮断する」
この発言は、ファーウェイの5Gを導入する可能性のあるドイツなどを牽制する下院議員の懸念に答えたものだ。このスカパロッティ大将のドイツに対する警告は、日本への警告と受け止めるべきであろう。
ドイツは、ファーウェイを名指しでは排除しない方針だが、アンゲラ・メルケル首相は「米国と協議する」と発言している。
また、ドイツで5G網の整備を目指す英国のボーダフォンCEO(最高経営責任者)は「ファーウェイ製品を使わなければ整備は2年遅れる」と指摘して、ドイツの5G網の整備をめぐる苦悩は大きい。
*2=英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)、“China-UK Relations-Where to Draw the Border Between Influence and Interference? ”
*3=House Armed Services Committee、“HASC 2019 Transcript as Delivered by General Curtis Scaparrotti”
新たに判明したファーウェイの野望
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は3月14日付の記事*4で、世界のインターネット網の支配を巡る米中の海底バトルを紹介している。
米中の海底バトルとは、海底ケーブル(海底に敷設された光ファイバーの束)を巡る戦いだ。
現在、世界で使用されている海底ケーブルは約380本あり、それらが大陸を連結する音声・データトラフィックの約95%を伝送していて、ほとんどの国の経済や国家安全保障にとって不可欠な存在となっている。
ファーウェイはこの海底ケーブル網に食い込んでいる。
ファーウェイが過半数の株式を保有する華為海洋網絡(ファーウェイ・マリン・ネットワークス)は、全世界において驚くべきスピードで海底ケーブルを設置し、業界を支配する米欧日3社に急速に追いつきつつある。
海底ケーブル分野では米国のサブコムとフィンランドのノキア・ネットワークス(旧アルカテル・ルーセント)の2社による寡占状態にあり、日本のNECが3位につけ、ファーウェイは4位につけている。
ファーウェイが海底ケーブルに対する知識やアクセス権を保有することで、中国がデータトラフィックの迂回や監視をするデバイスを挿入したり、紛争の際に特定の国への接続を遮断する可能性が指摘されている。
こうした行為は、ファーウェイのネットワーク管理ソフトや沿岸の海底ケーブル陸揚げ局に設置された装置を介してリモートで行われる可能性があるという。
米国などの安全保障専門家は、海底ケーブルに対するスパイ活動や安全保障上の脅威について懸念を表明し、次のように述べている。
「ファーウェイの関与によって中国の能力が強化される可能性がある」
「海底ケーブルが膨大な世界の通信データを運んでいることを踏まえれば、これらのケーブルの保護が米政府や同盟国にとって重要な優先事項である」
ファーウェイは一切の脅威を否定し、「弊社は民間企業であり、顧客や事業を危険にさらす行為をいずれの政府にも要請されたことはない。もし要請されても、拒否する」と反論している。
*4=“America’s Undersea Battle With China for Cotrol of Global Internet Grid”
デジタル・シルク・ロードとファーウェイの関係
中国は広域経済圏構想「一帯一路」の一環として、海底ケーブルや地上・衛星回線を含む「デジタル・シルク・ロード」の建設を目指している。
中国政府のDSRに関する戦略文書では、海底ケーブルの重要性やそれに果たすファーウェイの役割が言及されている。
中国工業情報化省付属の研究機関は、海底ケーブル通信に関するファーウェイの技術力を称賛し、「中国は、10〜20年以内に世界で最も重要な国際海底ケーブル通信センターの1つになる態勢にある」と述べた。
ファーウェイ・マリンは、「一帯一路やDSR計画で正式な役割は一切果たしていない」と説明しているが、ファーウェイが中国政府の大きな戦略に組み込まれていることは否定のしようがないであろう。
米国側につくか、中国側につくか?
我が国は曖昧な態度を取るべきではない
既に記述した米欧州軍司令官スカパロッティ大将の「(ドイツや欧州の同盟国がもしもファーウェイやZTEと契約するならば)問題のある軍隊との師団間通信を遮断する」という警告は、日本にも向けられていると認識すべきだ。
日本にとってのファーウェイ問題は、米国が安全保障上の脅威と認識する以上、その意向を無視するわけにはいかない。
なぜならば、我が国が直面する中国の脅威は、欧州諸国が直面する脅威とは比較にならないくらい大きいからだ。
我が国の報道では、2018年12月10日の関係省庁申し合せ「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続きに関する申し合わせ」を根拠として、防衛省・自衛隊がファーウェイ等の中国企業から物品役務を調達することはないとされている。
しかし、この申し合わせには中国企業名が列挙されているわけではなく、あいまいさが残る。
よもやそんなことはないと思うが、もしも自衛隊の装備品にファーウェイの技術や製品が入っている場合、米軍は「自衛隊との通信を断つ」と宣言するであろう。
米軍にそう引導を渡されて慌てふためくことがないように、今から断固としてファーウェイやZTEなどの中国企業の製品を排除すべきだろう。
その点で、日本政府のファーウェイなどの中国企業名を明示しないというあいまいな態度はいかがなものか。
米国政府は、本気でファーウェイ等の中国企業を米国市場から排除しようとしている。我が国は、ドイツや英国のようなあいまいな態度を避け、断固として米国の側につくべきである。
気になるのは、安倍晋三首相の3月6日の参院予算委員会での発言だ。
安倍首相は、日中関係について「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を新たな段階へと押し上げていく」「昨年秋の訪中で習近平国家主席と互いに脅威とならないことを確認した」と発言した。
しかし、本当に日中関係が「完全に正常な軌道」に戻ったのか、本当に中国は脅威ではないのか?
このような楽観的な対中認識は、トランプ政権の厳しい対中認識とは明らかに違う。
「米国側につくか、中国側につくか、日本は曖昧な態度を取るべきではない」という注意喚起は、サミュエル・ハンチントンが「文明の衝突」で日本に対して与えた警告でもある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55817
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