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日銀の最悪の選択(大機小機)
2019/3/15 17:30日本経済新聞 電子版
欧米の金融政策方針が一気にハト派方向へ修正され、国内景気の雲行きも怪しくなるなか、日銀の追加緩和観測が出てきた。筆者は、あらゆる追加緩和策では副作用が効果を上回るため、その実施には強く反対する。だが残念なことに「効果・副作用のいかんにかかわらず何らかの対応をせざるを得ない」との考えのもと、日銀が年内にも実施する可能性は相応に高まっている。それでも、追加緩和はしばらく温存され、実施は向こう1〜2カ月といった目先ではないだろう。
引き金になりそうなのは、本格的な景気後退、1ドル=100円を超えるような円高進行、政府の大型景気対策の3つだ。今年は選挙と消費増税が重なる特殊な年である。政府は景気変調や円高進行に過敏に反応して、安易に大型景気対策を打ちやすい。その際に日銀は、協調策として追加緩和を強いられる。
日銀は、2016年9月に追加緩和の4つの選択肢を示している。(1)マイナス短期金利の引き下げ(2)10年金利目標値の引き下げ(3)上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ増額(4)マネタリーベースの増加ペースの加速――だ。(4)は、再び国債とマネタリーベースという量に高い目標を設定することを意味する。
日銀が現在想定しているのは(1)ではないか。金融機関の収益見通しに与える打撃を十分に認識したうえでのことだ。2%の物価安定目標達成のためというより経済・金融情勢の急激な悪化を受けた緊急措置と位置づけるだろう。状況が改善すれば早期にマイナス0.1%まで戻し、それを将来のマイナス金利撤廃への布石とする可能性もある。
しかし、16年のマイナス金利導入が社会不安を招いたことを記憶する政府は、選挙の年にそうした措置を望まないのではないか。むしろ、国民が痛みを感じにくい(4)を日銀に要求するかもしれない。
日銀がこれを受け入れれば、過去2年半に及ぶ国債買い入れ減額は台無しになってしまう。国債市場の流動性が極度に低下し、市場のボラティリティーが著しく高まるリスクも生じる。最悪の場合、グローバル金融危機の引き金となる可能性さえあるのではないか。政府の意向に背くことができずに、日銀がこうした最悪の選択をしないことを願うばかりだ。
(神羊)
激動欧州経済、尋常ではない金融政策転換
2019/3/8 10:50日本経済新聞 電子版
日本電産の永守重信会長は2018年10〜12月期連結決算会見で、一転して大幅減益となったことについて「ガタンガタンと受注・出荷が落ち込み、私の体験でも見たことのない、尋常ではない変化が起きた」と表現した。
この感覚はドイツ中心の欧州企業でも共有されている。「18年11〜12月に売り上げがストンと落ちた」というコメントが市場では頻繁に聞かれる。対中依存度の高い日欧経済が米中貿易戦争のあおりをまともに食らった状況が鮮明だ。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁も、18年後半には欧州経済の立ち直りを語り、量的緩和は18年末までに終了、利上げも検討と語っていた。
ところが、18年末からECB理事会ごとにスタンスが慎重になった。市場では、利上げ先送り、場合によっては、量的緩和実施前に行った銀行への低利融資による資金供給策の再導入が予想されるに至った。
7日に開催されたECB理事会は波乱の展開になった。まずユーロ圏GDP成長率見通しを3カ月前の年率1.7%から1.1%へと急激に引き下げた。
「緊急事態」に対応してドラギ総裁は異例ずくめの金融政策転換を決断した。18年末に終了したばかりの量的緩和政策にかわり、量的緩和政策導入前に実施していた銀行への低利融資による資金供給策(TLTRO)の再開を決定した。
利上げ開始も、これまでの19年夏以降から20年以降と変更が明示された。マイナス金利脱却などいつになるか見当もつかない。しかも、満期を迎えるECB保有国債も全額を再投資という緩和政策は「かなりの期間」継続となった。
筆者が驚いたのは、マネーばらまき策に強い抵抗を示すタカ派ドイツのバイトマン連銀総裁までが、今回の金融政策転換を支持したことだ。
歴史的な視点でのサプライズは、このままだと10月に退任予定のドラギ総裁がついに「利上げ未体験」の中銀総裁として名を残すことだ。
イタリア経済は2期連続マイナス成長で正式に「景気後退期入り」が宣告され、一帯一路への参加宣言で中国依存政策があらわになったばかりだ。しかも、極右・極左連合政権は親プーチン派である。コンテ首相がモスクワを訪問したときには「この国にいたほうが心地よい」と語っている。
ドイツにとって従来は最優良顧客であった中国が「中国製造2025」により、一転してライバル国になったとの危機感がみなぎる。ドイツの景況感指数は18年11月ごろからストンと落ち込んだ。
英国の欧州連合(EU)離脱混迷は、EU諸国にも経済的ダメージを与え、英・EUの共倒れリスクを秘める。
そこに、米中通商交渉一時休戦後の次の標的として欧州が浮上中だ。ライトハイザー通商代表部(USTR)代表は早くも厳しいけん制発言で臨戦モードをあらわにして見せる。
政治的にもフランスが駐イタリア大使を召還した。「次は国交断絶」とされる異常な外交的措置だ。5月の欧州議会選挙をにらみ、イタリアのポピュリスト相乗り政権幹部がフランス国内の極右政党に接近したことが「過去にない内政干渉」と批判されているのだ。
政治経済とも風雲急を告げる状況で、ECBの危機対応手段も限られている。量的緩和がもはや限界に近いからだ。寄り合い所帯のユーロ圏では、国別にECBが買える国債の量が、一定配分で制限されている。最優良のドイツ国債などは既にかなり買われてしまった。かといって、財政不安のイタリア国債を大量に購入することは「財政ファイナンス」のそしりを受けかねない。苦肉の策としてTLTRO復活に至ったわけだ。
市場の懸念は欧州経済が悪化して危機的状態になった場合に、もはやECBに有効な金融政策手段が残っていないことだ。
ブレグジットはじめ欧州経済波乱は「対岸の火事」として冷ややかに見る傾向があるニューヨーク株式市場でさえ、7日のECB理事会決定はサプライズとなり、寄り付き後にはダウ200ドル超の急落を招いた。
欧米市場の目は日銀にも向けられる。「次は日銀」と問われるが、その質問の意味がこれまでと異なる。「日銀の出口はいつか」から「日銀の追加緩和あるのか」に変ってきたのだ。
世界的に金融正常化が進むはずの19年が3月には早くも逆戻りの様相だ。市場ではマネーが様子見ながら、おろおろ株式と債券の間を行ったり来たりの状況である。外為市場もドル、ユーロ、円、人民元の「弱さ比べ」のごとき展開だ。
豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42187680Y9A300C1000000/
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