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セブン「24時間営業強要」問題で露呈、加盟店にコスト負担押し付け巨額利益得るコンビニ業界
https://biz-journal.jp/2019/03/post_26987.html
2019.03.11 文=大ア孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer Business Journal
セブン-イレブンの店舗(撮影=編集部)
小学生の頃、寝る前に翌日の授業のために持っていかなければならないもの(たとえば、木工用ボンドなど)を確認し、買い忘れていたことに気づいても後の祭りであった。どうすることもできず、先生に叱られるのを待つしかなかった。なぜなら、当時の文房具店の営業時間はおおむね10時から18時程度だったからである。
しかし、こうした事態は突然、終わりを告げる。家の近くに食料品や日用品を扱う青い看板の店ができ、早朝から深夜まで営業してくれた。本当に小学生時代の窮地を幾度も救ってくれた記憶が今も残っている。この店は、ローソンの日本1号店である。
時は流れ、現代の日本においてコンビニエンスストアは急激に成長し、郵便局の数に迫る勢いとなっている。豊富な食べ物、温かいコーヒー、公共料金の支払い、さらにはトイレの使用など、実に多くの人がコンビニの恩恵にあずかっている。セブン-イレブンの名の由来は、朝7時から夜11時までの営業時間によるが、今やどのコンビニも24時間営業が当たり前となっている。
■24時間営業に関する問題
東大阪市にあるセブンのフランチャイズ加盟店が人手不足を理由として営業時間を短縮したことに対して、セブン本部が契約違反だとして契約解除と違約金の計1700万円を求めたというニュースが大きな話題となっている。
この加盟店の場合、店の手伝いをしていたオーナーの奥さんが昨年亡くなり、オーナー自身は16時間超えの勤務を続けるといった状況に陥り、本部に救援を要請したがそれが叶わず、やむなく19時間営業(午前1時〜6時の間は閉店)に変更したという事情に、多くの人が心を動かされたことだろう。筆者もそのひとりである。
しかしながら、形式的に捉えるならば、加盟店が本部との間で交わしたフランチャイズ契約に違反した、つまり本部が正しいということもできる。とはいえ、今後のコンビニ、フランチャイズ契約、さらにはより根源的な企業や社会のあり方を考えれば、大いに議論の余地がある問題といえる。
本部は、なぜ24時間営業にこだわるのか。
ひとつには、「利益の追求」がある。繁華街に立地するといった特殊なケースを除けば、通常、多くの店舗において、深夜や早朝の営業は売上が大きく落ち込み、人件費や光熱費を考慮すれば赤字となっている場合も少なくはない。しかし、これはあくまでも加盟店の問題であって、本部はなんら気にする必要がない。なぜなら、コンビニ各社により多少の違いはあるものの、基本的に加盟店が本部に支払うロイヤリティは「売上総利益(粗利益):売上−原価(仕入れ)」によって決まる。よって、本部は人件費や光熱費などは一切気にする必要はなく、ひとつでも多くの商品が売れることのみを追求する。その結果、必然的に24時間営業を強く志向するようになる。
また、「企業イメージの向上」もある。多くの業界がそうであるように、コンビニ業界にも複数のコンペティタ(競合者)が存在し、熾烈な競争が繰り広げられている。こうした状況において、コンペティタが全店で24時間営業を実施している場合、自社のチェーンのみ実施しないという選択は、たとえ一部の店舗のみであっても、確かに難しいであろう。
また、近年、「コンビニの社会インフラとしての役割」も注目されている。たとえば、日本フランチャイズチェーン協会は、「社会インフラとしてのコンビニエンスストア宣言」を発表し、環境、安全・安心、地域経済活性化、消費者の利便性向上といった課題に取り組むとしている。24時間体制で、安全・安心や消費者の利便性向上といった社会インフラの役割を担ってくれることは、もちろん多くの消費者にとって有益であり、コンビニへのイメージを向上させるであろうが、先に述べたとおり、そのためのコストはすべて加盟店が負担しなければならない事態となっている。
■あるべき本部と加盟店の関係
本来、本部と加盟店はともにWin-Winの関係を目指すべきパートナーであるはずだ。しかしながら、今回の24時間営業問題をはじめ、コンビニ本部と加盟店における多くの問題の根源には、お互いのベクトルが揃わない、さらに言えば真逆になってしまうといった現象があるように思われる。こうした根源的な問題が是正されない限り、今後も本部と加盟店との衝突は続いていくことだろう。
たとえば、粗利ベースのロイヤリティ算出の仕組みでは、売上のみを重視する本部と、売上とコストを勘案して自店の利益を最大化させたい加盟店との間に、深刻な問題を生じさせてしまう。
この点に関して、コンビニ本部が大きな利益を得ている現状を鑑みれば、本部が加盟店における人件費や光熱費に対して配慮しなければならない仕組みがあってもよいように思われる。たとえば、粗利益ではなく、人件費や光熱費を差し引いた営業利益などをベースにロイヤリティが算出されることになれば、加盟店の採算を度外視した24時間営業は本部および加盟店の双方の合意のうえで、なくなっていくのではないだろうか。
(文=大ア孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer)
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