そもそもトリチウム水と言ってもそれがどのような経緯で生成されてしまったどんな水なのか、私もそうだったが、詳しく知っている人は少ないのでは? こちらの牧田寛氏の記事が問題点が良くまとまっているのでよろしければご参考に。 ハーバービジネスオンライン 牧田寛 東京電力「トリチウム水海洋放出問題」は何がまずいのか? その論点を整理する https://hbol.jp/174094?display=b (以下、冒頭部分を転載) >去る8月30日から31日にかけて、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一:1F)で貯まり続ける「トリチウム水」の海洋放出について社会的同意を求めるための公聴会が福島県と東京都の三会場で経済産業省(経産省:METI)により開催されました。 その7日前に当たる8月23日に河北新報により、8月27日にフリーランスライターの木野龍逸氏により「トリチウム水」には、基準を超えるヨウ素129などの放射性核種が含まれていることが報じられました。 (参照:処理水の放射性物質残留 ヨウ素129基準超え60回 17年度 | 河北新報 2018年08月23日木曜日、トリチウム水と政府は呼ぶけど実際には他の放射性物質が1年で65回も基準超過(木野龍逸) ? Y!ニュース 2018年08月27日月曜日) これら報道への反響はたいへんに大きく、30日からの公聴会は全会場、全日程で大荒れとなり、市民からは反対の声が多勢を占める結果となりました。 一体何が起きたのでしょうか。 (転載終わり) その後をざっと要約すると、そもそも福島第一原発は豊富な地下水脈の上に建てられてしまったので、常時その地下水をくみ上げて枯らす井戸が稼働している必要があった。しかし、事故後はその井戸が稼働しなくなってしまったので、地下水がどんどん湧き出て来て原子炉から放出された放射性物質を含む汚染水が大量に出来てしまうようになった。 しかし、2013年以降は多核種除去装置が稼働してトリチウム以外の核種はだいたい取り除けるようになった。残ったのは水素の放射性同位体であるトリチウムを含んだ水である。そのトリチウム水をこれまでは放出せずにタンクに貯めて来たがもう限界である。 トリチウムそのものは大量に摂取したり、常時浴び続けたりしない限りは「大きな被害は起りにくい」ので、海洋放出しても大丈夫だろうという意見が出て来た。(この記事の著者もそうするしかないだろうと思っていた) ところが・・・ トリチウム水という名は実はその実態とはかけ離れていて、実際には他の危険な核種も無視できないレベルで含んでいる事実が発覚。 (以下、上記記事2ページより転載) >結論ありきの政府・東電の公聴会 https://hbol.jp/174094/2 >これまで政府と東電は、一般向けにはALPSなどでトリチウム以外の核種は除去しており、「トリチウム水」には他の核種は検出限界以下、または基準以下しか含まれていないと説明してきました。 そのためあらゆるPA活動や公聴会が「トリチウム水の海洋放出」への理解を求めるものでした。 ところが、23日の河北新報での報道では、その「トリチウム水」から、告知濃度限度を超えるヨウ素129が2017年の1年間で60回検出されたこと、さらにルテニウム106、テクネチウム99を加えると2017年だけで65回、告知濃度限度を超えていたことがわかりました。加えてその後、ストロンチウム90の告知濃度限度超過もわかりました。 さらにヨウ素129とルテニウム106は、昨年から今年にかけての84回の分析のうち45回と過半数で告知濃度限度を超えていたと報じられています。(※前出木野氏の記事による) これまで東電は、ルテニウムを除き、トリチウム水ではトリチウム以外の核種は検出限界以下であると説明し、30日31日の公聴会は「トリチウム水」にはトリチウム以外の核種は含まれない(検出限界以下である)ことを大前提として行われました。 実際問題として、PAのセレモニーとしての「公聴会」はシナリオが決まっていますから、前提が覆されるような事実が出てきても「トリチウム水」の海洋放出というシナリオの書き換えができません。結果、公聴会当日は海洋放出への反対意見が相次ぎ、大荒れとなりました。 結局、公聴会2日目の8月31日が締め切りだった市民への意見募集は、9月7日消印有効と延長されるなど、PAとしては惨憺たる結果に終わっています。(参照:経産省) >まっとうな手順を無視した政府・東電 >今回、なぜこのように経産省、東電の目論見は崩れたのでしょうか。委員の発言にあったように、政府、東電は、大型タンクでの長期間保管は議論の俎上に上げないという内々での申し合わせをし、海洋放出を唯一の現実的解にして公聴会を締めるつもりでした。これはいつものPAの手法で、公聴会の形骸化そのものでした。 そもそも、「トリチウム水」という説明が事実と異なっていたことが第一の問題です。「トリチウム水」ならば、放射性核種はトリチウムのみであり、総量規制、濃度規制を遵守し、経過と結果について情報を誠実に公開すれば、市民の合意のもとにロンドン条約との整合性をとった上で海洋放出処分ができるはずでした。 ところが実際にはトリチウム以外に告知濃度限度を超えるヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99、ストロンチウム90が過半数の測定で検出されていました。東電はそのことを認識していましたが、生データを公開していたものの、事実を説明していませんでした。生データは膨大であり、精査しなければわかりません。そうした上で、東電はこれまで、「測定している62種類の放射性物質は、他核種除去装置によって告知濃度限度以下まで除去でき、残るはトリチウムだけである」と説明してきたのです。 これでは、放射性物質の海洋放出処分の大前提である市民の同意は得られません。同意を得るための大前提である信頼が崩れてしまったのです。 (以下、3ページ目より)
>今後、「トリチウム水」(ALPS処理水)はどうなってしまうのか? https://hbol.jp/174094/3 >ここで福島第一の「トリチウム水」の現状を見てみましょう。 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会説明・公聴会説明資料pp.5によれば、構内のALPS処理水の平成30年3月時点での状況は以下のようになっています。 タンク貯蔵量:約105万m3 タンク建設計画:137万m3(2020年末) ALPS処理水増加量:約5〜8万m3/年 ALPS処理水のトリチウム濃度:約100万Bq/L(約0.02μg/L) タンク内のトリチウム量:約1000兆Bq(約20g) そして、この発表資料にはありませんが、報道されたように「トリチウム水」(ALPS処理水)には、トリチウム以外のベータ核種が含まれており、全ベータ核種合計(トリチウムを除くベータ核種合計)は100Bq/Lとされてきています。しかし、実際には100〜1000Bq/Lでかなりの揺らぎがあるようです。 先にも申し上げたように、この全ベータ核種合計を表に載せないこと自体がきわめて不誠実です。 次にALPS処理水とSr処理水のタンク容量の推移の実績と予測を示します。 *「福島第一 タンク建設の見通し/多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会説明・公聴会説明資料 pp.25」 図版有り* これらから、2年後にはALPS処理水は130万トン、トリチウムの全放射能量は1.3PBq(ペタ=千兆)と見積もられます。 福島第一原子力発電所は、事故前にはトリチウムを年間で2TBq(テラ=1兆)放出していましたので、通常運転時の500年分のトリチウムがタンクの中に存在することになります。現在も事実上の目安とされている福島第一の事故前のトリチウム放出管理目標値は、22TBqでしたので、この管理目標を遵守すると単純計算で約60年、実際にはトリチウムの半減期が約12年ですので、2020年以降の増加量も勘案して環境放出には約25〜30年かかることになります。ただし、地下水などの経路からのトリチウム放出の分を加えなければいけませんので、実際には30〜40年かかることになります。 国と東電は、7年間で海洋放出を完了するつもりですので、これもつじつまが合いません。 また、トリチウム以外の全ベータ核種(全ベータ核種)の濃度を保守的に500Bq/Lと仮定すると、全ベータ核種の放射能量は、0.65TBqとなります。福島第一の事故前のトリチウム以外の液体廃棄物の放出管理目標値は、1年あたり0.22TBqでしたので、こちらは地下水経路も含めて10年程度で十分でしょう。 結局、ALPS処理水を事故前の環境放出基準を遵守して海洋放出する場合、40年程度の期間を要し、結局今の小型タンクでは耐久性や管理の煩雑さから維持できなくなると考えられます。 トリチウム放出管理目標値を変更するのならば、それは別に審査と市民による合意の手続きを経ねばなりません。また、放射性物質を生産を行わない陸上施設から海洋に放出しますので、ロンドン条約との整合性をとる必要があり、条約締結国からの合意を得る必要があるでしょう。この環境基準を大きく緩和するという手続きについて政府、東電はたいへんに軽く見込んでいると思われます。過去の公害、鉱毒などによる環境破壊と被害の歴史を省みれば、とても考えられない行為です。 (転載終わり)
ざっと、こんなところです。 まあ、韓国が文句言った以前に、国内での公聴会が大荒れになったというのですから、まずは国内問題として議論すべきではないですかね。 皆さんはどう思われます?
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