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イラン体制はアメリカ政府を見限った(その2)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201808200000/
2018.08.21 櫻井ジャーナル
DIAからシリアに穏健派の反政府軍は存在しないという報告を受けていた2012年8月、オバマはNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言した。2012年12月になると、ヒラリー・クリントン国務長官は、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると主張する。翌年の1月になると、アメリカ政府はシリアでの化学兵器の使用を許可、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させるというプランが存在するとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。
2013年3月、シリアのアレッポで化学兵器が使われ、西側はシリア政府を非難する。ところがこの化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出し、5月には国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。
この年には8月にも化学兵器が使用され、これを口実にしてアメリカ/NATO軍は9月上旬にシリアを攻撃すると見られていた。シリア沖にはアメリカ軍の艦隊が集結、それに対してロシア軍も艦船を配置、実際に地中海からミサイルが発射される。
ところが、そのミサイルは海中に墜落してしまった。イスラエルはミサイルの発射実験だと後で主張するが、事前の警告はない。攻撃を始めたものの、何らかの手段、例えばECM(電子対抗手段)で落とされたとされたと見られている。
8月のケースではロシア政府が国連で証拠を示しながらアメリカ側の主張が正しくないことを説明、8月29日にミントプレスはサウジアラビアが化学兵器使用の黒幕だとする記事を掲載した。10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。
12月には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。
後にシリア政府が化学兵器を使ったとする話を発信することになるSCD(シリア市民防衛)、通称「白いヘルメット」をジェームズ・ル・ムズリエが編成、訓練を開始したのは2013年3月のこと。ル・ムズリエはイギリスの元軍人で、コソボでは情報活動に従事していたと言われている。
SCDの設立資金30万ドルはイギリス、アメリカ、そして日本から得ているが、その後、アメリカ政府とイギリス政府から西側のNGOやカタールを経由して1億2300万ドルが渡った。またアメリカ国務省の副スポークスパーソンのマーク・トナーは2016年4月27日、SCDがUSAIDから2300万ドル受け取っていることを認めている。言うまでもなく、USAIDはCIAの資金を流すパイプ役。そのほか投機家で旧ソ連圏の制圧を目指しているジョージ・ソロス、さらにオランダやイギリスの外務省も資金を提供している。シリアでアル・カイダ系武装集団やダーイッシュといったタグをつけた武装集団が敗走する過程でSCDとそうしたジハード傭兵が一心同体の関係にあることが明確になった。
イランとP5+1(国連安保理常任理事国5カ国とドイツ)がジュネーブ暫定合意に達したのは、地中海から発射されたミサイルが海中へ落下した2カ月後の2013年11月。その年の6月にイランで行われた大統領選挙で勝ったロウハーニはハシェミ・ラフサンジャニの側近だった人物で、西側の巨大資本にとって都合の良い人物だと見られていた。こうした状況もオバマ政権が話し合いに切り替えた一因だろう。2015年7月にはJCPOA(包括的共同作業計画)が発表された。
それから3年を経た現在、最高実力者のアリー・ハーメネイーはアメリカ政府と交渉しないと宣言している。ハーメネイーによると、アメリカの交渉とはカネと力(飴と鞭)で行うもので、最初に決めた目的を追求し続ける。アメリカは相手からすぐに利益を引きだそうとし、それを拒否されると騒ぎ立て、屈服させる。それに対してアメリカは約束するだけで、実際には何も相手へ利益を渡さない。目的を達成すると、アメリカは自分の約束を破棄してしまう。JCPOAもそうだとしている。この分析は正しい。
また、イラン経済の悪化については国内の要因によるものだとしているが、これも正しい。ハーメネイーはロウハーニ大統領の政策を修正しようとしている。今後、イランはアメリカとの交渉を止め、ロシアや中国との連携を強めていくことになるだろう。
イギリスとアメリカは1953年にイランでクーデターを成功させ、ムハマド・モサデク政権を倒している。この再現を狙っているようだが、1953年のクーデターが成功したのは偶然だった。モサデク側の詰めが甘かったとも言える。今回はしかもロシアと中国という後ろ盾が存在する。(了)
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