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中国、台湾への軍事侵攻に向け沿岸部にミサイル整備…習近平、悲願の中台統一か
https://biz-journal.jp/2018/08/post_24502.html
2018.08.21 文=相馬勝/ジャーナリスト Business Journal
中国人民解放軍建軍90周年 内モンゴル自治区でパレード(写真:新華社/アフロ)
中国人民解放軍が台湾への軍事侵攻に向けて、ミサイルを沿岸部に整備し、潜水艦部隊を集結、さらに航空母艦打撃群の台湾海峡派遣など、戦闘能力を増強する準備を着々と整えている。16日に発表された米国防総省(ペンタゴン)の議会向け年次報告書によって明らかにされた。
中国軍は2012年秋に軍トップの党中央軍事委員会主席に就任した習近平中国共産党総書記によって軍備を拡大するとともに、陸海空3軍やロケット砲兵部隊が一丸となり、米軍との戦闘を想定した実戦形式の台湾有事作戦の軍事演習を頻繁に実施。同時に、反腐敗闘争によって弛緩しきった軍上層部を更迭するなど、軍事強化路線を強力に推進している。
ペンタゴン報告書は「これらの目的は近い将来の台湾進攻を視野に入れたもので、台湾や周辺地域の安全保障政策を脅かすのは確実だ」と指摘しており、日本を含む東アジア情勢に大きな影響を及ぼすことが予想される。
■台湾海峡トンネル高速鉄道構想
報告書は「米議会年次報告―中華人民共和国をめぐる軍事増強と安全保障問題」と題しており、ペンタゴンが毎年、議会向けに作成している。今年の報告書では「中国人民解放軍は隣接する民主的な島である台湾への軍事侵攻の準備を着実に進めている。解放軍は台湾を制圧するために、最新鋭の軍事兵器を開発、いつでも使えるように実戦装備している」と指摘している。
しかし、報告書は「台湾の軍事的な安全が保障されているのは台湾が(米軍から供給される)高度な最新鋭軍事兵器を保有していることに加えて、100マイル(約160km)にも及ぶ台湾海峡によって、解放軍が台湾に容易に軍事力を行使できない点にある」とも強調している。
中国政府は最近、この「台湾海峡」という最大の難関を攻略する具体的な計画を発表した。それが「台湾海峡トンネル高速鉄道構想」だ。実は、中台間を高速鉄道で結ぶという構想自体は16年3月、北京で開かれた全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)の16〜20年の中期経済目標「第13次5カ年計画」に盛り込まれていた。
中国が中台の両岸を鉄道で結ぶ案を検討していることはそれまでも伝えられたことがあったが、16年の全人代では正式な研究計画として書き込まれたことから、中台双方で話題となった。だが、16年の計画では具体策は挙げられておらず、海底トンネルを掘削するのか、あるいが橋を架けるのかなど具体的内容は不明で、台湾側は「荒唐無稽な計画で、台湾統一工作の一環。プロパガンダであり実現不可能」と冷ややかな反応が大半だった。
中国側の窓口機関、海峡両岸関係協会トップの陳徳銘会長も当時、台湾・中央通信の取材に「中国には台湾と建設に向けて協力できる技術、資金があるものの、これは政治的な問題で、実現には時間が必要」と述べるにとどまっていた。
ところが、ここにきて中国における技術分野の最高研究機関で中国政府直属の中国工程院が「台湾海峡海底トンネル鉄道計画」をぶち上げたのだ。中国工程院のメンバー(院士)は現在600人あまりで、中国版新幹線である「高速鉄道プロジェクト」など国家の最重要プロジェクトには必ず携わっており、最近では習氏が「国家千年の計」として自ら提示した史上最大規模の建設プロジェクトとなる河北省雄安県一帯の「首都経済圏構想」も中国工程院が深くかかわっている。
工程院が示した台湾海峡海底トンネル鉄道計画によると、起点は福建省沿岸の平潭(へいたん)島で、台湾側の最終地点は新竹市で「台湾のシリコンバレー」と呼ばれるIT関連の企業や工場が集中している沿岸都市。
この計画は日本の青函トンネルがモデルだが、青函トンネルが海底下約100mの地中を穿って、海底トンネル部分は23kmなのに対して、中台海底トンネルは海底トンネル部分が135kmと長い分、トンネルの深度も海底下約150mとけた外れに深くなっており、技術的に極めて難しいとみられる。
しかし、無事完成すれば高速鉄道の速度は時速250kmと、中台間を約30分でつなぐ計算だ。工程院は台湾海峡海底トンネル鉄道を旅客用として位置付けているが、場合によっては軍事的にも兵員輸送に転用でき、解放軍による台湾侵攻の重要な輸送ルートとなる。
台湾側も軍事転用に警戒を強めており、いつ着工できるかどうかは現時点では見通しはつかない状態。だが、中国側の計画では「2030年の完成を目指す」としている。そのとき、習氏は73歳となるが、この春の全人代で国家主席の2期10年の任期を撤廃しただけに、理論上は習氏がそのまま最高指導者として君臨することは可能だ。
■台湾統一
中国では習近平体制に入ってから、軍事演習を強化しているほか、最近でも解放軍による10万件以上の「有償服務(ビジネス)」を全面的に禁止する決定を下した。7月初旬の軍機関紙「解放軍報」も社説で「中国人民解放軍は50年も戦争を経験しておらず、平和病にかかっており、平和ボケが蔓延している」などと軍内の弛緩した雰囲気を痛烈に批判した。軍機関紙が軍を直接的に批判するのは極めて異例。
習氏は12年秋に党中央軍事委主席に就任して以来、「号令がかかれば集まり、集まれば戦争の準備をし、戦えば勝つ」との軍の基本原則を発表して、全軍に檄を飛ばし、翌年からは毎月のように長期間の実戦形式の軍事演習を行っている。これを踏まえて、社説は「戦争を止められるのは、我々に戦闘能力があってこそだ」述べるとともに「軍は今こそ正しい道に戻り、戦闘訓練に集中しなければならない」と直言するなど、この「平和ボケ社説」は習氏の強い意向が働いているのは間違いない。
その習氏は台湾の対岸の福建省幹部を17年間も務めるなど台湾問題には強い関心を持ち、「自身の最高指導者としての悲願は中台統一」と親しい側近に語っていると伝えられており、習氏の軍備強化路線の目的は、米軍を撃滅しての台湾統一とみてもおかしくはないのである。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
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