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2023年5月16日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/250157?rct=national
全く別人の医療情報を閲覧できる状態だった、コンビニで住民票を取ったら別人の内容だった…マイナンバーカードをめぐるトラブルが次々に明らかになった。あきれるのは同カード普及を旗振りしてきた政府の言い分。「健保組合のせい」「システム会社のミス」など責任逃れの言葉ばかりだ。利用拡大策はどんどん進み、保険証廃止などを含むマイナンバー法改正案はすでに衆院を通過したが、このままでいいのか。(中山岳、山田祐一郎)
◆加藤勝信厚労相は「入力時のミス」
「入力時におけるミスがあって、えー、マイナンバーカードにそれ以外の人の情報がくっついていた」
加藤勝信厚生労働相は12日の記者会見で、マイナカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を巡って別人の情報がひも付けられたトラブルについて淡々と説明した。
厚労省によると、医療保険を運営する健康保険組合などは被保険者からマイナンバーが未提出の場合、住民基本台帳からマイナンバーを確認することがある。その際、同姓同名や生年月日が同じ別人のマイナンバーを誤って入力し、保険証とひも付けていた。
誤入力は2021年10月〜22年11月末で約7300件に上る。こうしたミスが原因で、医療機関でマイナ保険証を利用した際や専用サイト「マイナポータル」のアクセス時に別人の医療情報を閲覧されたケースも5件あった。
同省は先月、健保組合などの保険者に再発防止を通知。マイナンバー入力時に氏名の漢字、ふり仮名、生年月日、性別、住所の5項目をチェックするよう求めた。加藤氏は会見で「入力時に間違った形で行われていたところが問題」と強調。記者から相談窓口を設けるかと問われたが、「今でもご指摘があればお答えし、課題が出れば対応している」と述べるにとどまった。
◆松本剛明総務相は「システムの点検を要請」
マイナカードを使ってコンビニで住民票や戸籍の証明書を受け取るサービスでも、誤交付が相次いだ。
総務省はこれまで東京都足立区、横浜市、川崎市、徳島市で他人の証明書の誤交付を延べ14件確認。足立区や横浜市のケースでは交付サービスのシステムに不具合があったとし、委託業者の富士通Japan(東京)と、富士通本社に再発防止を求めた。
松本剛明総務相は記者会見で、証明書交付システムについて「複数の社にまたがっているものなど、いろんなパターンがあるようだ。誤交付が起きる仕組みになっていないか関連システムの点検を要請した」と述べた。
健保組合やシステム会社にミスがあったにせよ、国の責任はないのか。
元総務官僚で立教大経済研究所研究員の平嶋彰英氏は「総務省などの担当部署はシステムの専門知識が分からないこともある。システム会社のミスが明らかな場合、そうした説明しかできないのだろう。問題は、国がマイナカードの普及に力を入れても、想定外のトラブルや異常事態が起きた際にどうするかといった危機管理の仕組みを整えてこなかったことでは」と話す。
中央学院大の福嶋浩彦教授(地方自治)は「マイナカードは国の事業。委託先の会社などがトラブルを起こせば、担当省庁が国民に説明を尽くして最終的な責任は政府にあるとの姿勢を示してほしい。それが不十分に見えると国民は不信感を抱く」と指摘。「そもそも本当に必要ならば政府は正面から義務化を議論したほうがよい。これを避けて、一方でマイナポイントや保険証との一体化で、事実上の義務として国民を取得に追い込もうとしていないか。これではマイナンバー制度への信頼は生まれない」
◆デジタル庁は以前規約で「一切の責任を負わない」
今回、露呈した無責任ぶり。それはカード取得者が行政サービスを受けられる政府サイト「マイナポータル」の利用規約に表れている。当初、デジタル庁は規約で、免責事項として利用者や第三者が受けた損害について「一切の責任を負わない」と記載。昨年10〜11月に「こちら特報部」をはじめ複数のメディアがこの問題を取り上げると、河野太郎デジタル相は規約の見直しを指示。規約は今年1月と5月に変更された。
デジタル庁によると、大きな変更があったのは1月。担当者は「免責事項は、ごく一般的な内容だったが、従来の表現は誤解を生むと考えた」と説明。変更後は「故意又は重過失によるものである場合を除き、デジタル庁は責任を負わない」とした。
では、責任を負うのはどのような場合なのか。「例えばウイルスの存在を認識しながら放置するなどが重過失に当たる」と担当者。一方で「基本的な考えは従来と変わっておらず、そういった事態はなかなか想定し得ない」とする。
一方で、マイナカード利用拡大の動きはどんどん進む。今月11日には同カードの一部機能をスマートフォンで利用できるサービスがグーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」端末を対象に始まった。時期は未定だが、iPhone(アイフォーン)のOSでも導入が検討されている。マイナポータルでの手続きがスマホでできるようになるほか、民間手続きにも順次広がる見込みだ。
◆登下校時間をマイナカードで記録
さらには全国の地方自治体で、政府の「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用し、カードをさまざまな公共サービスで使用できる「住民カード化」や、児童生徒の登下校の把握を目指す事業も始まっている。
島根県美郷町は、町内の公立小中学校計4校に各1台、読み取り機器を設置し、登下校する際にカードをかざして時刻を記録。保護者のスマホに通知が届くほか、学校側も児童生徒の状況を把握できる環境整備を目指す。システム開発を進めて年度内に実験を開始する。同町情報・未来技術戦略課の担当者は「出欠管理ではなく、サービスとして必要な保護者に利用してもらう。カードの取得を呼びかけるものでもない」と説明する。
同町は、人口4000人余で高齢化率が5割に迫る。マイナカードの交付率は78.5%と全国平均の69.8%を大きく上回る。このほか公民館などの公共施設、避難所受付などに機器を設置する方針で、事業費約2億5000万円を全額交付金でまかなう。住民からは、紛失などを心配する声も聞かれるというが「カードを常時携帯する土台づくりにつなげたい」と期待を懸ける。
◆「利用者の自己責任ばかりが膨らむ」
国会では保険証廃止を含むマイナンバー法など関連法改正案が既に衆院を通過。顕在化したマイナカードの問題点を置き去りにしたままでいいのか。
名古屋大の稲葉一将教授(行政法学)は「行政と民間などの区別がデジタル社会に溶ける中で、責任の所在も不明確になっている。このままでは利用者の自己責任ばかりが膨らむ」と指摘。「本来は規約などではなく、政府の責任を法律で規定する必要があるのに、国会で十分審議されないまま利用拡大が進んでいる」と危ぶむ。
マイナンバー制度に詳しい清水勉弁護士は「やり方が拙速すぎるため、国民や現場の職員、システム会社などが巻き込まれ、被害者でありながら加害者とされている」と強調する。
その上で、カードの利用拡大に慎重な議論を求める。「いまは特典があるから必要のないカードを一気に作ってミスが出ている。短期間で国民全体がカードを持たなければいけないという政策自体がトラブルの要因。本来、カードの取得や利用は任意であるという考えに立ち戻る必要がある」
◆デスクメモ
国や官吏の行為で個人に損害が生じても、国家は責任は負わないという戦前の「国家無答責の法理」。戦後、国家賠償責任を認めた憲法一七条でこの法理は廃されたが、今回の責任逃れぶりを見ると、この法理の復活を思わせる。無答責どころか、とても大きな責任があるはずなのに。(歩)
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- マイナカードの運用ミス続々 公表遅れの裏でちゃっかり普及策 選挙ではだんまり それでいいのか(東京新聞) 蒲田の富士山 2023/5/31 05:51:04
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