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森友問題に新疑惑、「内部文書」開示でウソを認めた財務省
http://www.mag2.com/p/news/350219
2018.02.16 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース
ここに来て、森友問題を巡る大量の内部文書が公表されています。昨年、国会において「森友学園にかかる交渉記録はすべて破棄した」と言い張り続けた当時の理財局長・佐川宣寿現国税長官の発言が偽りだったことが事実上証明されたにも関わらず、同問題の真相解明のため野党が求める佐川国税長官の国会招致を拒否し続ける政府与党。一体何を隠し、誰をかばおうとしているのでしょうか。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんがこれまでの経緯を振り返りつつ、その真相に迫ります。
事実上、佐川長官のウソを認めた財務省
森友問題に関する近畿財務局の内部文書が次々に公表されている。いずれも、担当部課からの相談内容と、それに法務部門が回答した記録だ。
いまになって開示の動きが出てきたのは、市民団体の情報開示請求の仕方が上手だったからということに尽きる。「廃棄されたというのなら交渉記録でなくてもいい。周辺の森友関連文書を」。そんな趣旨の請求だった。
担当部課は頭を抱えたかもしれない。法律の相談記録は5年間保存する決まりだ。かりに交渉や面談の記録なら廃棄したと言い張ることができるとしても、これについて無いといえば、完全なウソになる。財務局は文書を出さないわけにいかなくなった。
市民団体とほぼ同時に開示請求していた毎日新聞も文書を入手した。こちらは「面談・交渉に関する文書」を請求していたが、市民団体とほぼ同様のものが出てきた。市民団体に開示した以上、拒否しても意味はないということだろう。
だが、文書の種類は「法令照会」であっても、法的に問題がないかどうか、どう対処すべきかを問うものであり、面談・交渉の経過を説明しないわけにはいかない。
事実、どの質問文書にも
・事案の概要
・経緯
・学校法人側の主張
・事実関係
というかたちで、それまでの経過がまとめられている。
「交渉記録はすべて破棄した」とひたすら強弁を続けた佐川宣寿前理財局長(現・国税庁長官)の発言がウソだったことを、財務省は文書開示によって事実上認めたことになる。
太田理財局長は「交渉記録とは全く別物」と表面上、佐川氏を庇っているが、今回の情報開示で佐川氏が追い詰められることになったのは間違いない。栄転した前任者の尻拭いをさせられる太田局長の心中は複雑であろう。
こうなると、国会も黙ってはいない。当然、文書を全て出せと強い要求が出てくる。
財務省は1月の5件の文書に続き、2月9日、新たに「法令照会」「回答」文書20件、計約300ページを国会に提出した。2013年9月10日から16年5月19日までのものだ。
このうち16年3月31日と5月19日の記録が、国有地たたき売りの真相を知るうえで興味深い。
居丈高に昭恵夫人の名を持ち出す籠池理事長夫妻をどう納得させるか。学園側の金銭負担軽減に協力しなければ、小学校は開校できない。国側の涙ぐましい対応がお役所文書の行間に滲む。
16年3月31日の文書を見てみよう。担当課からの照会(3月24日)に対する回答である。
最初の質問。「校舎建築予定箇所に存在する廃棄物混在土壌を撤去する必要があると考えるが、その考え方でよいか」。
法務部門は「明確な回答は困難」と前提を示した。廃棄物はすでに撤去されたはずだったからだ。
小学校建設用地の地下3メートル以下は沖積層であり、何万年も前のものだ。そもそも、そこに生活ゴミや産廃があるとは考えられない。
しかし、3メートルより上部の土には地下埋設物、生活ゴミ等があると以前から確認されていた。
そのため、校舎建設予定地の下3メートル、運動場部分1メートルを掘ってゴミを撤去した。その費用1億3,176万円は、国費(有益費)でまかなうことになっていた。
法務部門の「明確な回答は困難」という前提は、撤去済みのゴミとの関連が不明であることへの疑念の表明である。一方、担当者のほうは、別に新たな埋設物が見つかったという趣旨で問い合わせている。
法務部門はチャート図を示して次のように説明した。
有益費の対象となっている廃棄物と「同一視」できる場合は、別途ゴミの撤去をする義務は国にない。「同一視」できない場合で、しかもそのために学校建設が不可能になるなら、瑕疵担保責任にもとづく損害賠償を請求される可能性がある。
担当課は前段の「同一視」できる場合を最初から無視した。新たに埋設物が見つかったことにすれば、莫大な撤去費がかかることを名目に大幅値引きができると考え、その法的裏付けを求めていたからだ。
損害賠償請求を避ける。財務局は究極の国有地安売りに走り出す理屈をそこに求めた。
国有地の定期借地でさえ過去にない特例だったのに、新たなゴミ発見の虚構をもとにタダ同然の値段で売却、それも10年分割。至れり尽くせり、というより、無茶苦茶だ。法的にも決して大丈夫とは言えないだろう。市民団体が財務省と国交省を背任罪などで告発したのはもっともなことである。
籠池夫妻が16年3月15日に財務省の本省に乗り込んで、理財局の田村嘉啓国有財産審理室長と面会したとき、真っ先に出たのが以下の言葉だった。
今回お邪魔した主たる目的というのは何かというと、近畿財務局の方が、ガラとか、有害物質が入っている土を運ばないで場内に埋め戻してほしい、なんいうようなことが発生したわけです。 |
前年の9月、近畿財務局、大阪航空局、工事業者、設計会社の担当者が土地改良工事について話し合ったさい、校舎建設予定地の下3メートル、運動場部分1メートルを掘って、廃棄物を全て用地外に運び出そうとすれば莫大なコストがかかることが問題となった。
結果として、建設に支障のないゴミは埋め戻すか、そのままにしておき、費用を抑えることになったのだが、どうやらその事実を籠池夫妻が知らされていなかった可能性がある。
そのため、校舎建設の杭打ち工事が始まるとともに出てきたゴミに驚愕し、工事業者からもらった四者会合の記録メモを手に、善処を求めて財務省に直談判におよんだのだ。
田村室長は籠池夫妻にこう言った。「土地を売る値段よりも、土地を改良する価格の方が高いときに、売るかどうかは、別の判断がありますが、われわれここまでさせていただいて…」
当時はまだ森友学園が国有地を定期借地していた。にもかかわらず売却の話が出ている。しかも、ゴミ撤去費用が土地の価格と近い数字になる可能性まで示唆しているのである。
実際、この面会を契機に、話は急展開しはじめる。翌日の3月16日、近畿財務局と大阪航空局の担当者が籠池夫妻のもとを訪れた。驚くべき素早い対応だ。
共産党が最近になって入手した音声データには、その時の数時間にわたる話し合いが録音されている。
財務局 「本省から指示を受けています」 |
大阪航空局 「有益費(国費負担)で土壌汚染の改良と埋設物撤去をすでにやっておりますが、それとは別に、今回出てきた廃棄物は国のほうに瑕疵があると判断されますので、その撤去については、国のほうでやりたいと思っています」 |
れらの短い発言に、この日の全ての中身が集約されている。つまるところ、すでに国が撤去費を出したものとは別に新しいゴミが見つかったので、その分は国の瑕疵にあたる。だから、国がそのコストを負担する、というわけだ。
9日後の3月24日、森友学園から近畿財務局に「土地を購入したい」と申し入れがあった。
それを受け、先述の通り財務局の担当者は法務部門に対応を相談した。「小学校の建設には敷地全体の廃棄物撤去が必要だ。土地を安価に買い受けて問題解決を図りたい」という学園側の主張を報告し、判断を仰いでいる。
その後、土地の売却価格について交渉がおこなわれた。以前の当メルマガでふれた関西テレビ放送の音声データにその話し合いが記録されている。簡単におさらいしておこう。
諄子氏 「絶対あれはタダで分けてほしい。私らは授業料を安くしてあげたい」 |
籠池氏 「きれいになってへんかったんや。棟上げの時に首相夫人も来られるのにどうするの、僕の顔は」 |
学園の代理人弁護士 「死ぬ気で値段を下げるよう取り組んでほしい。知恵を絞ってほしい。下げる理屈を考えないといけない」 |
財務局職員 「3メートルまで掘ってます。その下のゴミは国が知らなかったので、そこはきっちりやる必要があるでしょうと…そういうストーリーはイメージしてるんです」 |
この会合が3月下旬とされる。財務局の法務部門が担当課に回答書を出したのが3月31日だ。
担当課の質問は、学園側の対応を怖れるような内容がほとんどである。法務部門の回答には「具体的事情に照らして、貴課において判断されたい」と突き放したような表現もみられる。
その後、大阪航空局が新たに見つかったとされるゴミの処分費用を8億1,900万円と見積もって、その分を評価額9億5,300万円から値引きし、6月20日に売買契約が締結された。この値引きに何ら根拠がないことを会計検査院が指摘したのは周知のとおりだ。
今回の国の論理だと、廃棄物が入っている国有地の売却についてはあとで損害賠償請求されないよう、全て除去するか、大幅値引きしなければならなくなってしまう。悪しき例をつくったものだ。
それにしても財務省や国交省をして、これほど杜撰な国有地売却に駆り立てたものを、安倍総理や夫人への忖度と片づけて曖昧なままにしておいてよいものだろうか。
近畿財務局や大阪航空局のレベルで対処できるとは到底思えない。役人が前例にないことをするには、上からの指示が必要だ。当時の次官や局長クラスに総理を取り巻く政治家、秘書官らの働きかけが全くなかったとすると、あまりに度の過ぎる忖度と言わざるをえない。
野党は国会に昭恵夫人や佐川国税庁長官を招致するよう求めている。これまでいくら要求しても与党は拒否し続けてきた。いったい何を隠し、誰を守ろうとしているのか。
image by: 安倍晋三 − Home | Facebook
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