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フランツ・ヨーゼフ・ハイドン 交響曲 第100番ト長調「軍隊」
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/877.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 1 月 31 日 23:22:27: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: モーツァルト 歌劇「魔笛」 投稿者 中川隆 日時 2020 年 1 月 20 日 20:29:06)

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン 交響曲第100番ト長調「軍隊」



ブルーノ・ワルターの ハイドン 交響曲第100番「軍隊」


Bruno Walter / VPO - Haydn : Symphony #100 "Military " (1938) 再復刻





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Vienna Philharmonic Orchestra
Recorded 1/10, 1938
transfer from JPN Columbia 78s /JS-39(2VH-7016/7)


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Haydn: Symphony No. 100 (Military), Walter & ColumbiaSO (1961)




Bruno Walter (1876-1962), Conductor
Columbia Symphony Orchestra


Rec. 2, 4 March 1961, at American Legion Hall, in Hollywood


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交響曲第100番ト長調 Hob.I:100 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1793年から94年にかけて作曲した4楽章の交響曲。ロンドン交響曲のうちの一曲で、「軍隊」の愛称で知られている。


「軍隊」という愛称は、有名な「トルコ軍楽」の打楽器(トライアングル、シンバル、バスドラム)が第2楽章と、終楽章の終わりで使われていることによる。


なお、18世紀のヨーロッパの宮廷ではトルコがエキゾティシズムの対象であり、様々な「トルコ風音楽」が流行として取り入れられた。モーツァルトのジングシュピール『後宮からの誘拐』ではトルコの宮殿が舞台であり、序曲において打楽器がふんだんに使用される。また『トルコ行進曲』の愛称で知られるピアノソナタ第11番(イ長調K.331)の第3楽章や、ヴァイオリン協奏曲第5番などがトルコ軍楽のリズムや音色を意識したものとして知られる。


第二楽章は「2つのリラのための協奏曲ト長調」Hob. VIIh-3 をほぼそのまま転用したものだが、最後に軍隊ラッパの模倣と、印象的なティンパニのソロが新しく加えられている。当時の音楽ではティンパニのソロは異例中の異例だった。ハイドンは交響曲103番の冒頭で再びティンパニのソロを使用している。


初演は1794年3月31日にロンドンのハノーヴァー・スクエア・ルームズにおける第8回ザロモン演奏会で行われた。


構成
第1楽章 Adagio - Allegro
第2楽章 Allegretto
第3楽章 Menuetto:Moderato
第4楽章 Finale:Presto


https://ja.wikipedia.org/wiki/交響曲第100番_(ハイドン)


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
1. 中川隆[-14017] koaQ7Jey 2020年2月06日 12:06:15 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-686] 報告

クラシック音楽 一口感想メモ
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn, 1732 - 1809)
https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%28%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E3%80%81%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%29

モーツァルト、ベートーヴェンと並ぶ古典派の巨人。

2人に比べればキャッチーなメロディーやドラマ性に欠けて地味であるが、実力はほとんど変わらない。多作だが、工夫を凝らされているのでどの曲にも驚きがあり、快活で明るく滋味もあり、晩年は骨太で大変完成度の高い音楽に到達した。短くコンパクトにまとまっていて聴き易い。

交響曲一覧(Hob.I)

ハイドン入門はなんといっても交響曲である。107曲は多いが、だいたいの曲は何かしら聴き所がある。80番以降は傑作の森だし、それ以前もいい曲は多い。

とはいえ初期の1764年位までの作品は、ベートーヴェンの1790年代の作品みたいなもので成熟した時代とは別物だし、中期も時々駄作があり1〜2割くらい間引くとちょうどよいとは思う。


交響曲(1番から30番)


•交響曲第1番 ニ長調 1757◦3.5点


1楽章をはじめとして、どの楽章もエネルギー溢れる音楽でパワーに満ちており、心が躍る。音が非常に活き活きとしており、心を楽しませる度合いはハイドンの交響曲の中でもかなり上位クラスである。記念すべき1番に相応しい名作。

•交響曲第2番 ハ長調 1757-59/61以前?-64◦3.0点


どの楽章もパワーを感じるものの、1番のような名作感はなく、ごく標準的なレベルの曲である。メロディー重視というより勢い重視であり、高揚感があるため聴いていて楽しい。1番に続き3つの楽章しかなくコンパクト。

•交響曲第3番 ト長調 1759/60?-62◦3.5点


2番に続き、この曲も同様の楽しみのある曲。メロディーは耳に残らないものの、音の勢いに身を任せるだけでとても楽しい時間を過ごせる。初めての4楽章制で、構成が大きいだけ深みも増している。2楽章の骨太な手応えと陰影の深さにそれを感じる。最後の楽章は対位法の要素があり、ジュピター交響曲を連想する。

•交響曲第4番 ニ長調 1760以前?-62◦3.0点


3楽章制だが、各楽章はわりと長い。聴く楽しみなど、出来は同年の他の曲と大きくは変わらないが、プラフアルファの良さはあまり感じない。2楽章は短調だが、陰影の深さがあまりない。その代りにバロックのような端正さはあるため、わりと良い曲ではあるけれど。3楽章がメヌエットで終わるのは、優雅ではあるが締めくくりとしては物足らない。

•交響曲第5番 イ長調 1760以前?-62◦3.5点


1楽章は穏やかな曲。ホルンが美しい情景を演出する大変美しい曲である。このような詩情をハイドンが表現していたとは驚いた。教会ソナタ形式ならではかもしれないが、驚いた。2楽章も派手すぎず、聴きやすくて美しい。ヴァイオリンのソロの使い方も素敵だ。しかし、前半2楽章の素晴らしさと比較して、後半はありきたりであり、あまりトキメキがない。

•交響曲第6番 ニ長調『朝』 1761?◦3.8点


初期の交響曲。合奏協奏曲と交響曲の間のような曲である。旋律は単純で、和声も単純であまり機能が強くない。しかしながら、合奏的な楽器使いの多彩さが生み出す楽想の豊かさ、薄明のような雰囲気の詩情は驚くべきものがある。初期の曲だが非常に素晴らしい。

•交響曲第7番 ハ長調『昼』 1761◦3.5点


1楽章はごちゃごちゃした印象を受けてしまった。2楽章はソロの受け渡しがとても効果的で、非常に美しい。田園的な印象であり、様々な楽器のソロが活躍する様は多様な生命の息吹すらも感じさせる。3楽章と4楽章はこの合奏協奏曲らしい複雑さと音の動きの楽しさを存分に楽しませてくれる。ほぼ全ての楽器にソロがあるのは楽しい。

•交響曲第8番 ト長調『夕』 1761?◦3.5点


『朝』と同様に、バロック的な音の使い方により、活力のある貴族的な華やかさが演出されている。多くの楽器が活躍の場を与えられていて楽しい。素晴らしいのは2楽章。夜の帳の降りた世界で起こる幻想的で美しい情景は、大変美しい。ハイドンの緩徐楽章の中で、もしかしたら屈指の出来かもしれない。

•交響曲第9番 ハ長調 1762◦3.0点


小さな3楽章制の曲。小さく無難にまとまっているイメージであり、聴いていて楽しさはある。2楽章はフルートが旋律をずっと吹いていて大活躍で楽しい。3楽章は面白くない。

•交響曲第10番 ニ長調 1761?-66◦3.0点


これも9番と同じくコンパクトな3楽章制。1楽章はありきたりであまり面白くない。2楽章は優美で美しい。シンプルだがけっこう聞き惚れるものがある。3楽章はメヌエットと最終楽章を兼ねたような曲で、作曲者の意図はいちおう成功しているように聴こえる。

•交響曲第11番 変ホ長調 1761?-62/(1769?)◦2.5点


教会ソナタ。1楽章の雰囲気は素敵であり、空間的な広がり感のおかげで後期に教会ソナタ形式の1楽章を書いたならこう書いたかもと思わせるものがある。しかし、あまりに長すぎて終わるまで我慢が大変である。2楽章以降はその疲れのせいでいまいち頭に入ってこない。実際インパクトが薄く面白くない、ありきたりの曲に聴こえる。

•交響曲第12番 ホ長調 1763◦2.8点


1楽章はあまり印象的でない。2楽章の短調の憂いを活かして心に入り込んでくる様はなかなか良い。歌謡的な冒頭の旋律が分かりやすくて印象的。分かりやすいためか、ある意味でハイドンには珍しく映画音楽のようでもある。3楽章は普通の最終楽章らしい曲。

•交響曲第13番 ニ長調 1763◦3.0点


2楽章がチェロ協奏曲のようである。渋い音が気分を静かに盛り上げてくれる素敵な音楽である。3楽章も管楽器が活躍する、少し田園的な情緒がよい。4楽章はジュピターの最終楽章と同じドレファミの動機をふんだんに使っており、たたみかけるように高揚感を煽って盛り上げるところがそっくりである。聴いていてドキっとするのが楽しい。

•交響曲第14番 イ長調 1762/63◦2.8点


1楽章はハツラツとして元気がよくて良い。2楽章と3楽章はかなりありきたりで楽しくなく、がっかりする。4楽章は盛り上がる最終楽章であり、早いパッセージも登場したりして、楽しめる曲。2、3楽章のがっかり感をある程度挽回してくれる。完全には挽回できていないが。

•交響曲第15番 ニ長調 1761◦3.0点


1楽章は後年ほどもったいぶってはいない序奏からの、高速な音楽への突入はエンターテイメント的な楽しさ。また序奏の音楽に戻るのは斬新な構成である。ピチカートに乗った楽天的な音楽はオペラの前奏曲のようだ。2楽章の跳ねるリズムのメヌエットも楽天的で華やか。3楽章は普通。4楽章も普通。つまり1楽章の面白さが半分以上の価値を占めている。

•交響曲第16番 変ロ長調 1760頃/63?◦3.0点


1楽章は執拗な動機の繰り返しや、伴奏とメロディーの関係が珍しくて面白い。2楽章は普通であまり面白くない。3楽章は躍動感とモーツァルト的な力感のある音楽でなかなか良い。

•交響曲第17番 ヘ長調 1760頃/62?◦3.0点


1楽章は素朴ながらも、優美でありながら一つひとつの音に力強い表現のチカラを持たせているところがモーツァルトっぽい。2楽章も優美でモーツァルトを思い出す。彼よりもっと軽い遊びがあるし、中間の自由闊達さはかなり違うが。3楽章は3楽章制の欠点がモロに出ている。メヌエット風でいかにも物足りなくて満足できない。

•交響曲第18番 ト長調 1762頃/64?◦2.8点


1楽章はバロックの室内楽のようなごく素朴でのどかな曲調。2楽章も素朴で音の密度が薄く、聴きやすいが充実感がない。3楽章はディベルティメント風。どの楽章も聴きやすいのだが交響曲らしい充実感に欠ける。ただ、つまらないまではいかず、音感の良さで気分よく楽しませてくれるものがある。ただ、内容と比べて冗長だと思う。

•交響曲第19番 ニ長調 1757-59頃/60?◦3.0点


1楽章は疾走感があり、ダイナミックさが楽しい楽章。2楽章は短調で、歌劇の一幕のような具体的場面を思わせる描写的な音楽であり楽しい。3楽章は威勢の良い音楽であり、1楽章も似たところがあるため、この曲は尖った曲という印象を強くもつ。

•交響曲第20番 ハ長調 1757-59頃/63?◦2.5点


1楽章はトランペットが鳴り響く派手志向の曲。2楽章は優美さはあるものの、音の絡み方が単純である。3楽章もまた素朴で複雑さが足りないため手応えが足りない。4楽章はある程度の複雑さはあるが、トランペットの華やかさも上手く生かされていないし物足りない。

•交響曲第21番 イ長調 1764◦3.0点


1楽章は教会ソナタの1楽章としては良い塩梅の雰囲気で心地よい。2楽章のノリと快活さも良い。3楽章は曲としては普通と思うが、何よりアイネ・クライネ・ナハトムジークに冒頭が似ていてドキッとする。4楽章の前のめりさと舞台音楽的な人情を感じる快活さも楽しい。

•交響曲第22番 変ホ長調『哲学者』 1764◦3.5点


オーボエの代わりに音が5度低いコーラングレを使った渋い音が素敵。特に1楽章のバロック音楽の通奏低音を連続するようなゆったりとして豊かな低音の動きの上で、思索的ともいえるゆったりとした旋律を奏でる所が、哲学者の愛称の由縁になったのも納得の素敵さで魅力的。他の楽章は曲としては標準的に思えるが出来は良く、コーラングレ採用による響きの他との違いで楽しめる。

•交響曲第23番 ト長調 1764◦3.0点


1楽章は音をふんだんに使って、沸き立つような楽しい気分を演出したもので良い。2楽章もテンポは早くないが、楽しくてコミカル。3楽章と4楽章もコミカルで、特に4楽章は完全に諧謔的な音楽で客を驚かせるのを狙ってやっている。最後に消えるように終わるのはびっくりする。

•交響曲第24番 ニ長調 1764◦3.3点


1楽章は溢れるかのごとく素敵な光に満ちているような、幸せになれる曲。2楽章は冒頭から最後までフルートのソロが大活躍で、完全に協奏曲である。カデンツァすらある。とても美しく清純で運動性もあるフルートの良さを存分に引き出している曲で素晴らしい。3楽章は1楽章の幸せさと強く相関を感じるメヌエット。4楽章はジュピターの最終楽章を連想する骨太で壮麗な雰囲気で気分を持ち上げる曲。4音の動機も類似している。

•交響曲第25番 ハ長調 1761頃◦3.3点


1楽章は重厚な前奏に続いて、主要部も重厚さと疾走感を兼ね備えた曲なのが印象的。2楽章は中間の管楽器のソロがピツィカートに乗って奏される部分が楽園的な愉しさで良い。3楽章は普通の4楽章制の最終楽章のような曲調。それなりの聴きがいはある。

•交響曲第26番 ニ短調『ラメンタチオーネ』 1768◦3.3点


3楽章のメヌエットの独奏が大活躍するところとメロディーがチャーミングで素敵。愉しいなあと耳を奪われる。そのため、それに続く4楽章が存在しないのは非常に物足りなくて残念。また1楽章の激しい感情の表出も悪くない。

•交響曲第27番 ト長調 1761頃◦3.0点


1楽章は単に爽やかすぎるところがあり、ハイドンではないみたい。2楽章のシチリアーノも爽やかで何かの間奏曲のようだ。3楽章も同一性を保って爽やかであり、緊迫感が希薄な呑気な曲。どの楽章も音の密度が低くハイドンらしい良さは少ないものの、個性的な曲としての愉しみがあることは否定しがたい。

•交響曲第28番 イ長調 1765◦3.3点


1楽章のリズミカルな音形の支配する音楽は独特の躍動感に心を踊らせる効果があり、なかなか楽しい体験を与えてくれる。2楽章がその反動で低音中心の心が落ち着く曲調なのもよい。一方でリズムが活躍する場面があり一貫性を感じさせてくれる。その対比が楽しめる。3楽章もまたリズミカルさや、対比の鋭さで楽しめる曲。4楽章はコミカルさを内包しつつ、うまく締めくくってくれる曲。

•交響曲第29番 ホ長調 1765◦3.0点


1楽章は不思議な三拍子のきらびやかな曲であり、音の分解能が低いためメヌエットに似ているが違うという独特の雰囲気をもっている。2楽章は薄い音で掛け合いが続く、これまた不思議な雰囲気。といっても使われる音形はハイドンの手癖のようなものだが。3楽章はメヌエットの部分はなかなかよい。トリオは伴奏だけになってしまうという特殊曲。ハイドン研究室にあるとおり、これが元の作意とはとても思えない。4楽章も他の楽章と同じく、何か音が薄くてテンションが上がりにくい感じがする。

•交響曲第30番 ハ長調『アレルヤ』 1765◦3.0点


明るく快活な曲。悪くはないが特段の良さは見つからなかった。3楽章制であり、最後をメヌエット楽章で締めくくるところの雰囲気がやや面白い。


交響曲(31番から60番)
•交響曲第31番 ニ長調『ホルン信号』 1765◦3.8点


冒頭のホルンをはじめとした管楽器の大活躍が愉しい祝典交響曲。一番目立つのはホルンだが、他にも次々と新しい楽器が華々しく活躍する様は、豊かさがあるとともに痛快なエンターテイメントとして、ウキウキした気分になれる。かなり楽しめる。

•交響曲第32番 ハ長調 1760頃◦3.3点


33番との双生児のような同じ年に書かれた祝典交響曲。2曲はよく似ているのだが、気のせいか32番の方が内容が豊富で楽想も練られており、よく出来ている気がする。どの楽章も手応えを感じるものであり、単に派手なだけでなく品もよく優雅で、かつ中身のある良さを感じる。

•交響曲第33番 ハ長調 1760頃◦2.8点


祝典交響曲だから派手にトランペットとティンパニが鳴り響く楽しさはある。しかし、あまり深い内容がないため、完全にその場かぎりの音楽になっている。

•交響曲第34番 ニ短調 1767以前◦3.0点


最初にアダージョで始まる教会ソナタ形式でかなり古臭い印象のある曲。しかし、その音の響き方も含めた古臭さが味となり、新鮮さも演出するため、なんとなく興味を持って聴ける。

•交響曲第35番 変ロ長調 1767◦2.8点


これといって強い魅力を発見できなかった。1楽章の主題の組み合わせ方は良いなと思うが、特別によく出来ているというほどではない。

•交響曲第36番 変ホ長調 1761頃◦2.8点


多くの場面にバロックらしい素朴さをまだ残している。特に4楽章。全体に旋律の魅力はあまりない。過渡期を楽しむという点で好奇心を刺激してくれるところはある。

•交響曲第37番 ハ長調 1757-59頃◦3.3点


1楽章はティンパニがうるさいほど活躍する、祝典的なノリで攻めた曲。2楽章もティンパニが鳴り響き、勢いを抑えてはいるがパワーを持続しているのが面白い。3楽章は弦の冷静ながらも歌心と間合いの良い曲。他の楽章のどんちゃん騒ぎの間だから余計にかもしれないが、とてもよく出来た曲に聞こえる。4楽章は普通。

•交響曲第38番 ハ長調『エコー』 1769頃◦3.5点


軽妙なキレの良さがあり管楽器が大活躍するバロック的な音の軽さが楽しい。全編その雰囲気で統一されている。2楽章のエコーは楽しい仕掛けであり、ハイドンらしいあっと驚く機知の刺激を味わえる。

•交響曲第39番 ト短調 1765頃◦3.5点


1楽章はまさに文字通りの疾風怒濤の音楽。2楽章は1楽章の刺激を緩和しつつも、この楽章もまだ刺激的だと思う。なかなか面白い。3楽章は独特の地に足がつかない感じで面白い。4楽章はものすごく激しい曲。嵐のようなあまりの迫力に圧倒されてしまう。同じト短調のモーツァルトの25番との関連性を考えて聴くと面白い。

•交響曲第40番 ヘ長調 1763◦2.5点


4つの楽章すべて旋律の魅力が乏しく、それに代わる魅力も見つけられない。高揚感などの雰囲気的な良さも少なくて、気分が盛り上がらない。

•交響曲第41番 ハ長調 1770頃◦3.3点


2楽章の管楽器の活躍。3楽章の神々しいほどの輝かしさ。4楽章のたたみかける高揚感はいずれも愉しさを感じさせるもの。祝典的な交響曲として十分な価値がある。

•交響曲第42番 ニ長調 1771◦3.0点


1楽章は地味目でピンとこない。2楽章は大人な曲。長すぎるのが気になる。3楽章も、やや落ち着いている印象がある。4楽章がまた落ち着いていて、どうにもワクワク感が足りない。構成を工夫していて豊かさはあるが。

•交響曲第43番 変ホ長調『マーキュリー』 1771頃◦3.3点


品位と中庸な明るさや滋味や快活さや優美さのバランスに優れた、ハイドンらしい魅力に溢れた曲。上品で典雅な雰囲気が聴いていて心地よい。BGMに使えそうな穏やかな雰囲気である。1楽章からそう感じたが、楽章間の統一感もある。といっても、機会音楽のようなつまらなさわけではなく、交響曲らしい聴き映えはちゃんとある。1楽章のバランスの取れた快活さが特に魅力。4楽章は控えめながらもきっちりワクワクさせてくれる。

•交響曲第44番 ホ短調『悲しみ』 1772以前◦3.8点


まさに激情的な悲しみに溢れた曲である。そして3楽章は透明な癒しや安らぎに満ちた名曲。ハイドン作曲というのが驚きのドラマチックさである。ロマン派のようだ。そして、普段と違う作風ではあるが、やはり凡百の作曲家とはレベルの違う名作となっている。

•交響曲第45番 嬰ヘ短調『告別』 1772◦3.8点


1楽章はモーツァルトのト短調を想起させる始まり方。旋律の魅力はモーツァルトには劣るが、第2主題は割と魅力的で第1主題との対比に感動出来る。2楽章と3楽章も短調交響曲としてロマン的な感性すら感じさせる所がモーツァルトと同じである。4楽章の後半の、演奏者が一人ずつ減っていく場面がやはり全曲で一番印象的。この部分は世の中の多くの交響曲の中でも忘れがたい場面の一つ。

•交響曲第46番 ロ長調 1772◦3.3点


1楽章は短調に頻繁に転じる中間が面白い。メロディーが良いというより多くの変化が面白い。2楽章も短調で始まり、長調と入れ替えながら聴かせるとても美しい感動する曲。4楽章はコミカルな緩急のつけ方で驚かせてくれる面白い曲。

•交響曲第47番 ト長調『パリンドローム』 1772◦3.0点


標題の由来である回文構造の3楽章は、楽譜を順方向の後に逆方向に演奏するという、興味をそそる仕掛けで面白い。ただ、曲の良さとしては大したことはない。曲として面白いのは、音の動きが活発な1楽章だと思う。4楽章もわりとバランスよく充実している内容である。

•交響曲第48番 ハ長調『マリア・テレジア』 1769以前◦3.8点


1楽章の一度聴いたら忘れない華麗なファンファーレで始まる元気な祝典的音楽は気持ちよく聴けて愉しい。2楽章の流麗で優美な美しさとバランスの良さは出色の出来。メロディーがなかなか魅力的。3楽章と4楽章も活発さを楽しめる曲で出来は良い。

•交響曲第49番 ヘ短調『受難』 1773◦3.8点


全編を悲劇的な力強さが覆っているハイドンには珍しい曲。歯切れの良さが重すぎずに重要度の高い音を響かせててきぱきと音楽を進めるため、過度にロマン的な感情は抱かせないが、しかし強く訴えるものと美的感覚のバランスの良さのため、良い曲になっている。

•交響曲第50番 ハ長調 1771頃◦3.5点


1楽章の序奏のあとは豪快で内容もあり魅力的。2楽章は最後まで延々と2声部なのが面白い。3楽章と堂々として聞き応えがある。4楽章の高揚感も聞き応えがある。どの楽章も聴き所がある曲。

•交響曲第51番 変ロ長調 1771頃◦3.0点


1楽章は普通。2楽章はホルンやオーボエが大活躍で面白い。3楽章は華やかだがあっさり終わる。4楽章は速度が遅めなのが特色で、華やかさはあるが圧倒感はない。

•交響曲第52番 ハ短調 1771頃◦3.0点


短調曲。あまり長調に転じない。自分の慣れのせいかもしれないが、交響曲としての短調のこなれた使いこなしていないように感じる。長調曲を短調にしたように感じる場面が多い。最終楽章はわりと気に入ったが。

•交響曲第53番 ニ長調『帝国』 1778-79頃◦3.5点


祝典交響曲であり、全体に力強い輝かしさに満ちている。1楽章は威風堂々とした曲だが、それだけでない味わいがある。2楽章もくっきりとした力強さと味わい深さがある曲。3楽章は普通。4楽章は英雄的で舞台的なエンターテイメント曲。

•交響曲第54番 ト長調 1774頃◦3.5点


1楽章のエネルギーに満ちた明るく力強い音楽はかなり魅力がある。2楽章は大編成のオケが合いそうな、音の厚みで荘重に演奏される曲。ヴァイオリンとチェロの長い2重奏が最後に用意されているのが耳を引く。3楽章も華やかできらびやかで魅力的。4楽章はまた大編成が合いそうな音の厚みのある壮麗な輝かしい曲。ベートーヴェンより後の時代の息吹が感じられる曲。どの楽章もよく出来ている。

•交響曲第55番 変ホ長調『校長先生』 1774頃◦3.5点


軽快で少しコミカルさも感じる雰囲気で、心がワクワクする楽しさがある。メロディーの楽しさが素晴らしい。1楽章はまた聴きたいと思わせるものが強くある。2楽章もウキウキするような気分で聴けてとても楽しい。4楽章が弱いのが惜しい。

•交響曲第56番 ハ長調 1774◦3.3点


1楽章は祝典気分というだけ。2楽章はかなり美しい。ファゴットのソロが耳を捉える。この時期のハイドンの緩徐楽章の傑作だと思う。しかし、やや長すぎるきらいがある。3楽章は普通だが輝かしさがある。4楽章のぐるぐると音が廻るような運動性が愉しい。

•交響曲第57番 ニ長調 1774◦3.3点


1楽章は清冽な雰囲気がよい。なかなか聞き応えがあり、聴き入ってしまう。2楽章はピチカートが耳を引く。モーツァルトみたいな柔らかさの曲。3楽章は躍動感がある。4楽章は悪くない。弦がユニゾンで素早く動く部分が聴き応えがある。

•交響曲第58番 ヘ長調 1776◦2.8点


3楽章までは特段の長所を見つけられなかった。4楽章だけは楽器数などに緩急をつけたダイナミックさの高揚感が楽しい。

•交響曲第59番 イ長調『火事』 1766頃◦2.8点


初期の単純すぎる音楽の作りが耳についてしまい、不満が残ってしまった。少しおどけた感じやあたふたした感じのコミカルさが楽しめる。

•交響曲第60番 ハ長調『うかつ者』 1774◦3.3点


全6曲。舞台音楽を使い回したもので、組曲に近い。交響曲らしい構成の楽しみがない。音楽的にはそれなりに面白い。調弦をやり直す場面にはびっくりする。


交響曲(61番以降)
•交響曲第61番 ニ長調 1776◦3.3点


軽快に跳びはねるような雰囲気が支配的。どの楽章もなかなかの佳作だと思う。強烈な印象こそないものの、よく出来ているなと感じる。

•交響曲第62番 ニ長調 1780頃◦3.0点


複数の作品をつなぎ合わせて作った急造の作品とのことだが、知らずに聞けば気付くのは容易でないと思う。1楽章や2楽章はなかなか良いと思う。3楽章も活発で楽しめる。4楽章も悪くはないのだが、急造感を感じるので聞き終わった後の印象が良くない。

•交響曲第63番 ハ長調『ラ・ロクスラーヌ』 1779頃◦3.3点


1楽章はまあまあ。2楽章は面白い。主題が面白いうえに、弦楽器と管楽器の使い方など、舞台音楽のようで、新鮮な感覚がある。短調と長調を行き来するのも面白い。3楽章は主題がいまいちだが、展開に変化を付けて楽しませようとするメヌエット。4楽章は珍しいほど内容が豊富でよく出来ている。

•交響曲第64番 イ長調『時の移ろい』 1773?/78以前◦3.5点


1楽章も2楽章もしなやかで回想的な雰囲気がよい。特に2楽章は切ない気分にさせられる。3楽章はまあまあ。4楽章のロンドは力強くて充実感がある。

•交響曲第65番 イ長調 1771頃◦3.3点


爽やかで聴きやすい曲。愛らしくて可愛い。メロディーが良い。特別な工夫や仕掛けの楽しみではなく、純粋になんとなく良い曲だなあと感じるところが良い。最終楽章のホルンの活躍も愉しい。

•交響曲第66番 変ロ長調 1775-76頃◦3.0点


キラキラとした優美さで聴きやすい曲。工夫で聴かせるのではなく、しなやかな雰囲気で聴かせる。メロディーもなかなか良い。どの楽章もそれで統一出来ているのだから、ハイドンの芸風の広さを感じる。それなりに良い曲ではあるが、特徴が少なくて工夫やメロディーなどに特段の目立つポイントがない。

•交響曲第67番 ヘ長調 1775-76頃◦3.3点


様々な工夫がされているらしい。2楽章の特殊奏法もおやっと思うし、3楽章のヴァイオリン2本による民族音楽みたいな場面は耳につくかなり印象的な個所だ。曲として旋律が全般にわたりイマイチだし、前述の特殊場面も別に面白いだけで、あまり音楽として効果的とか必然性などは感じなかった。ただし、4楽章は中間で突然慈しみにあふれる室内楽になり、そこから楽器を重ねていく最後の流れはかなり魅力的だ。ここだけで評価が上がる。この時期にしてはかなり長い曲。

•交響曲第68番 変ロ長調 1774頃◦3.3点


1楽章は普通の出来で楽しめる。2楽章はイマイチ。この曲の特徴は異様に長い特異な3楽章。何度も楽章が終わったと思ってもまだ続く。ごくシンプルな薄い伴奏の上でのメロディーを何度も再現しながら間奏を奏でる。人情を感じる楽想であることもあり、主人公が何度も登場しては退場して脇役が出てくる舞台を観ているかのように楽しめる。4楽章も悪くない。

•交響曲第69番 ハ長調『ラウドン』 1775-76頃◦3.0点


ティンパニとトランペットを導入して華やかな曲。しかし、ハイドンの標準的な曲が並んでいる印象であり、あまり目立った良さは発見できなかった。メヌエットはつまらない。

•交響曲第70番 ニ長調 1778-79頃◦3.3点


1楽章は、シンプルで直接的な華麗さのある音楽。2楽章は短調と長調が交互であり、いい感じの哀愁と郷愁の音楽で心を奪われる。3楽章は祝典的。4楽章は冒頭の雰囲気や中間の対位法的な個所など工夫された曲で、再び聞き入ってしまう。終わり方に驚く。楽章構成などいろいろ独特な曲。

•交響曲第71番 変ロ長調 1778-79頃/80◦3.0点


薄めの音で、細かい所に仕掛けを入れていそうな複雑さがある。自然体で聞いている分には、華やかさがそれなりにあって、この時期らしい成熟感のある曲という印象。

•交響曲第72番 ニ長調 1763-65頃◦3.0点


番号が大きいが、31番「ホルン信号」と同じ時期の作品。手の込んだ作品群の中に、素朴時代の音楽が紛れ込んでいる印象である。1楽章はホルンが大活躍して派手で楽しいから気付きにくいが、2楽章以降では時代の違いが明白である。とはいえ、そのつもりで聞けば素朴なりに味があり楽しめる。各楽章でソロが活躍し、順番にソロを回すのも楽しい。

•交響曲第73番 ニ長調『狩』 1781?/1782以前◦3.5点


1楽章の広がりのある主題は印象的。モーツァルトのような活気のあり多くの発想がつまった展開はかなり良い。2楽章もハイドンらしい温かみのある穏やかさが素敵。3楽章は普通。4楽章は突然のティンパニとトランペットでどんちゃん騒ぎで驚く。

•交響曲第74番 変ホ長調 1780?/81以前◦3.0点


切れがよくてかなり快活であり、この時期らしい成熟感もあり楽しめる曲。そういう点では地味によく出来てる。それ以上のものはないため目立たないが、よく聴くと実は良い曲。

•交響曲第75番 ニ長調 1779?-80◦3.3点


ティンパニとトランペットが鳴り響く祝典交響曲。はじめの序奏が高める期待値は、ハイドンの中でもなかなかよく出来ていると思う。1、3、4楽章はいずれも、特筆するべきほどのものはないが、華やかで愉しい曲であり、メロディーもそれなりに良くて変化もあり十分に楽しめる。2楽章の変奏曲はお得意のパターンの曲だが、チェロの独奏が活躍するのが面白い。

•交響曲第76番 変ホ長調 1782◦3.0


この時期としてはいかにも標準的な作品。4楽章の主題に修飾音が多く付いていて、展開でも同様に多いのは、少し目新しさを感じる。全体に悪くはないが、快活さなど諸々の要素がほとほどであり、やや地味な作品。

•交響曲第77番 変ロ長調 1782◦3.8点


舞台音楽的なダイナミックさと愉悦感が多くの箇所で感じられる良曲。華があり麗しさもあり、モーツァルトの音楽に似ていると思う。他にも例えば弦と管の分担の仕方にも類似を感じる。1楽章はオペラの序曲みたいにも聞こえる。4つの楽章が全部出来が良いし、ワクワク感が感じられて、聴いて良かったと思わせるものがある。

•交響曲第78番 ハ短調 1782◦3.0点


1楽章は、跳躍する主題などを使って長い短調部分を使って切迫感を演出しているのだが、いかんせんハイドンの音楽の要領の良さのせいで、浸りきれず、心に迫るものがない。2楽章と3楽章は長調であり、これはなかなか良い。特に華やかな3楽章は好き。4楽章はモーツァルトの短調曲の最終楽章に雰囲気が似ていてまた切迫感を演出する主題を繰り返すのだが、魅力がもう一つであり、要領が良すぎるのもありもの足りない。

•交響曲第79番 ヘ長調 1783/84◦2.5点


4つの楽章に光るものがない。工夫が少なく、ハイドンとしてはありきたりの部類の音楽がずっと続いており、平板で盛り上がりにも欠ける。駄作だと思う。

•交響曲第80番 ニ短調 1783/84◦3.3点


短調でなかなかの迫力で始まるにも関わらず、のんきな田園的主題が挿入されたり、遊び感覚いっぱいの1楽章が愉しい。2楽章は珍しくモーツァルトにかなり似ている優美で美しい曲。もの悲しい短調を混ぜたり、表情豊かな曲。3楽章は入り口が短調で、その後もうまく短調を混ぜつつ長調主体で面白い。4楽章は控えめな音の厚さでバランスをうまく保っている。

•交響曲第81番 ト長調 1783/84◦2.8点


1楽章はモーツァルトに似ているがあまり面白くない。2楽章は滋味のある主題と軽快でバラエティーに富む変奏で悪くない。3楽章のメヌエットも明るく弾むような気持ちにさせてなかなか良い。4楽章は再びモーツァルトを連想するが、平凡な曲と思う。


パリ交響曲
•交響曲第82番 ハ長調『熊』 1786◦4.0点


3楽章までは、ドンドコと威勢がよく快活で愉しい曲だが、内容が充実している感じではない。しかし四楽章の楽しさが数あるハイドンの中の交響曲の素敵なフィナーレの中でも格別。

•交響曲第83番 ト短調『めんどり』 1785◦3.5点


冒頭いきなり短調に圧倒されるがすぐに明るくなる。一楽章と二楽章がかなり充実している。二楽章は美しい緩じょ楽章で聴き入ってしまう。

•交響曲第84番 変ホ長調 1786◦3.0点


どの楽章も普通だが歯切れが良いフレーズが多い印象があり、管楽器も活躍するのを楽しめる。

•交響曲第85番 変ロ長調『王妃』 1785?◦3.0点


概ね普通だが、一楽章の突発的な激情的な短調のフレーズに驚く。あとは三楽章の後半が美しい。

•交響曲第86番 ニ長調 1786◦3.0点


管弦楽の編成が大きいので分厚い響きを楽しめる。曲としては普通。

•交響曲第87番 イ長調 1785◦3.0点


フィナーレが高速でなく一楽章のような雰囲気なのが目新しい。


トスト交響曲
•交響曲第88番 ト長調『V字』 1787頃◦3.5点


やや重たい曲調は現代のオケで演奏すると風格がある。そして音のうちに秘められた叙情性があるのを楽しめる。

•交響曲第89番 ヘ長調 1787◦3.0点


いつものノリやドンチャン騒ぎが無く、ロマン派の予感も無く、やたらと優雅で大人しい。


ドーニ交響曲
•交響曲第90番 ハ長調 1789◦2.0点


ありきたりな素材ばかりで、一楽章は少しいいと思う部分もあるがそれ意外はいまいち。

•交響曲第91番 変ホ長調 1788◦2.0点


1、2も3楽章がありきたりでイマイチ。4楽章の弦の使い方などはそれなりに愉しいのだが、それまでのイマイチ感を打破する程のものではない。


ザロモン交響曲
•交響曲第92番 ト長調『オックスフォード』 1789◦4.0点


それまでの総決算のような充実ぶりでどの楽章も端正でありなヵら内容豊富。

•交響曲第93番 ニ長調 1791◦4.0点


主題がどの楽章も魅力的で、快活さと優美さのバランスや楽章間の出来上など、多くの点でバランスが取れたオーソドックスな上質の作品。

•交響曲第94番 ト長調『驚愕』 1791◦5.0点


一楽章の泉から湧き出るように絶妙な素晴らしい音楽が次から次へと現れる爽快な楽しさ。「びっくり」の二楽章も三楽章のメヌエットも四楽章も全ての楽章のメロディーが優れていて聞きやすく、爽快でありながら美しく詩魂をこめた充実の内容で大変素晴らしい。

•交響曲第95番 ハ短調 1791◦3.0点


ありきたりの素材しか使っていなくて斬新さが無いのだが、珍しい短調で力強さもありそれなりに聴いて楽しめる。短調の曲だがかなり多くの部分は長調。

•交響曲第96番 ニ長調『奇蹟』 1791◦3.0点


メロディアスでないのでザロモンの中で聴きやすいほうでない。分厚い音で音に意味をもたせて雄弁に演奏しやすい、ある種のかっちりしたゴツさがある。

•交響曲第97番 ハ長調 1792◦3.0点


あまり大きな特徴が無いが、一楽章の主題はシンプルながら魅力がそれなりにあるし、二楽章の優美な美しさと陰影も楽しめる。後半は普通。

•交響曲第98番 変ロ長調 1792◦3.5点


2楽章の優美さな美しさはモーツァルトみたい。他の楽章もしなやかな雰囲気で場面のつなぎがスムーズな所が多くモーツァルトぽい。最後の楽章の最後で協奏曲風になるのが面白い。

•交響曲第99番 変ホ長調 1793◦3.5点


優美でしなやかで上品な雰囲気を楽しめる。


•交響曲第100番 ト長調『軍隊』 1793-94◦4.5点


全ての楽章に旋律の美しさと親しみやすさ、柔らかくて瑞々しい感覚がある。後半の遊び心や楽しい気分も好き。軍隊の楽器のドンチャン騒ぎも面白い。

•交響曲第101番 ニ長調『時計』 1793-94◦4.5点


規模が大きく力強く、モーツァルトのように美しいメロディーが全楽章にあふれていて聴きやすい。有名な時計の楽章はシンプルなのに不思議なくらい素敵だ。

•交響曲第102番 変ロ長調 1794◦3.5点


100番台で唯一愛称が無いが曲のレベルは同じ。勇壮で豪快で男性的な雰囲気を楽しめる。

•交響曲第103番 変ホ長調『太鼓連打』 1795◦3.0点


2楽章があまり魅力的でない主題の変奏曲なのに長すぎる。他の楽章も、立派だが主題に魅力があまり無いので印象が薄い。

•交響曲第104番 ニ長調『ロンドン』 1795◦4.5点


前向きさ快活さを保ちつつスケールが大きく、ベートーベンのようにそれぞれのフレーズが意味を持って響く巨匠的な充実感のある素晴らしい内容に魅せられる。冒頭から心を持って行かれる。

その他の交響曲

•協奏交響曲 変ロ長調 (交響曲第105番) 1792◦3.3点


1楽章はメロディーの魅力こそあまりないが、たくさんの楽器が大活躍し、多くの音が聞こえてくる充実感はなかなかのもの。2楽章も同様である。もはやベートーヴェンの3番や4番くらいの重厚である広大な空間を沢山の楽器が奏でる音で埋めていく様はすごい聞き映えである。ベートーヴェンにも協奏交響曲を書いて欲しかったなとつよく思った。3楽章もまた同じような感想である。ただ、ここで初めて耳につく旋律が現れる。しかし、ソロの大活躍が主眼になるため、すぐに終わる。歌劇で各楽器が配役のように活躍するような華やかな音楽である。

•交響曲 ニ長調 (第106番) 1769?

•交響曲 A 変ロ長調 (第107番) 1757/61頃?

•交響曲 B 変ロ長調 (第108番) 1757-61頃?

協奏曲

ハイドンの協奏曲はモーツァルトの20代前半の協奏曲みたいなクオリティである。安定して心地よい音楽。モーツァルトと比較すると、独奏の輝かしく縦横無尽な活躍と、芸術として昇華された深みの点では確かに負けている。しかし、耳を愉しませて、心がウキウキするようなら楽しさを提供してくれるハイドンの協奏曲はとても楽しい。モーツァルト以前、バロック以降という立ち位置は独特の価値がある。モーツァルトは協奏曲の作曲において、ベートーヴェンの交響曲のような画期的な意味をもたらしたのだと気付くことが出来た。モーツァルトのピアノ協奏曲20番は、ベートーヴェンの交響曲3番のような位置にある曲なのであろう。ハイドンは協奏曲が不得意という先入観を排除することで、ハイドンの協奏曲を聴くのは驚くほど楽しくて素敵な時間になる。


ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa)


•ヴァイオリン協奏曲第1番 ハ長調 1761-65頃 ◦2.5点


1楽章は全然面白くない。2楽章は素朴な独奏のメロディーがひたすら続く音楽がでヴィヴァルディよりシンプルなくらい。3楽章は協奏曲らしい活発さを楽しめて、耳を楽しませる点での価値はある。聞く価値があるのはこの楽章だけだが、高い価値とまでは言えない。

•ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ長調 1765

紛失

•ヴァイオリン協奏曲第3番 イ長調『メルク協奏曲』 1770/71頃◦3.0点


オーケストラでなく弦楽合奏での協奏曲ということもあり、通奏低音が鳴っていそうな古臭いバロック風の曲に感じられる。地味ではあるが、温かみのあるハイドンの良さは感じられる。優雅で品の良い雰囲気を楽しめる曲。協奏曲としての面白みとしては、ヴァイオリンの活躍が不十分であり、あまり無いと思う。

•ヴァイオリン協奏曲第4番 ト長調 1769以前◦3.5点


全体にバロック協奏曲の色彩が濃い。1楽章はとても優雅で美しさに感動できる。2楽章はあまり特徴がない穏やかな曲。3楽章がきびきびとした音楽性と協奏曲の相性がよく、純粋に音を聞いていて楽しいと感じられる曲。

チェロ協奏曲(VIIb)

•チェロ協奏曲第1番 ハ長調 1760-65?/1780 ◦3.3点


1楽章は活発で楽しめるものの普通。2楽章は優美で美しく、チェロの独奏の歌が素晴らしい。3楽章はきびきびとしたフレーズが魅力。

•チェロ協奏曲第2番 ニ長調 1783 ◦3.5点


しなやかさ、優美さがあり、情熱的でもあるが基本は明るい。渋いところはあるが、よくある渋さをフル活用したチェロ協奏曲とは一線を画している。


ホルン協奏曲(VIId)

•ホルン協奏曲第1番 ニ長調 1762 ◦3.3点


シンプルで爽やか。モーツァルトほど耳に残るものはなし、内容が豊富という感じでもないのだが、なぜかアドレナリンが分泌されてくるような聴いていて身体の中から楽しさが湧き出てくる感覚はすごいものがある。楽しい気分にさせてくれる娯楽の音楽としては、かなりのレベルである。

•ホルン協奏曲第2番 ニ長調 1781以前 偽作?◦3.0点


1番よりも表情豊かであり、ホルン独奏の活躍度合いも高い。しかし、1番の不思議な魔法のような部分はないため、同じように良い曲だと思うのだが、単なる古典派の一般的な協奏曲以上のものがないようにも冷静に考えると思われる。


トランペット協奏曲(VIIe)

•トランペット協奏曲 変ホ長調 1796◦3.5点


トランペットの明朗な音を存分に楽しめるため、何度も聴きたくなる。ハイドンの協奏曲らしい胸の踊るような楽しさに加えて、トランペットの明朗さを活かした空間的な広がりのある音の気持ちよさが素晴らしい。晩年の作品であるため、ベートーヴェンに近いがっちりとした力強い重さや構築感があり、技術的な成熟感による安定感がある。この曲はそれがハイドンの協奏曲らしい魅力をさらに増している。


フルート協奏曲(VIIf)

•フルート協奏曲 ニ長調 1780?


2つのリラのための協奏曲(VIIh)

5曲とも爽やかで楽しい。コンパクトにしてコミカル。特別な何かがあるわけではないし、どの曲も似ている。だが、楽しいエンターテイメント曲として、もう一度聴きたいと思わせるものがある。リラ・オルガニザータは生演奏でどのように聞こえるか分からないが、イヤホンで聴いている限りはコミカルで可愛らしい音楽を奏でる楽器に聞こえる。聴いていてついニコっと笑顔になってしまう。

•2つのリラのための協奏曲第1番 ハ長調 1786 ◦3.8点


コンパクトにして、古典派らしい爽やかさに満ちている。内容充実。どの楽章も要領よく必要な要素をまとめていて無駄がない。かなり素敵。特に1楽章と2楽章は最高である。

•2つのリラのための協奏曲第2番 ト長調 1786 ◦3.5点


1楽章はコンパクトで悪くないがメロディーの魅力が今ひとつ。2楽章は優雅でなかなかよい。3楽章は音が生き生きとしていて優雅さもあり、心がワクワクさせられるような優雅な気分になるような、非常に魅力のある楽章。

•2つのリラのための協奏曲第3番 ト長調 1786 ◦3.8点


1楽章の爽やかで心が楽しさでいっぱいになり、気分が良くなる度合いは相当なもの。古典派の素晴らしさを堪能できる。2楽章はモーツァルトを思い出すミューズの神が宿ったような神々しい美しさを端々にみせる。3楽章は凄みこそないが、楽しさ心地よさを十分に魅せている。

•2つのリラのための協奏曲第4番 ヘ長調 1786 ◦3.5点


1楽章は他と同様にとてもコミカルでノリノリの楽しい曲。2楽章は優雅さのある楽しい明るい曲。3楽章はおとぎ話を連想するような可愛らしい旋律の曲で1番印象的。どの楽章も高いクオリティー。

•2つのリラのための協奏曲第5番 ヘ長調 1786 ◦3.0点


この5曲の中では他とそっくりである同工異曲感がなく、雰囲気が違うものになっている。しかし、明るさと内から湧いてくるような音楽の推進力がなく、それに代わる良さが見つけられず、面白くない曲になってしまったように感じる。

チェンバロ協奏曲(ピアノ協奏曲)(XVIII)

•オルガン協奏曲 ハ長調 XVIII-1 1756 ◦3.0点


初期の曲だが、すでに耳と心を楽しませる協奏曲としては良いものになっている。特に3楽章の祝典的な雰囲気はなかなか気分を盛り上がらせる。バロックから一歩進んだ協奏曲としての楽しさがある。

•オルガン協奏曲 ニ長調 XVIII-2 1767

•チェンバロ協奏曲 ヘ長調 XVIII-3 1765/71以前 ◦3.0点


1楽章は長めの曲なのだが、あまり魅力を見つけられない。2楽章はチャーミングな旋律の魅力がある。3楽章も盛り上げて楽しい気分にさせる、楽想を次々と繰り出してたたみかけるような音楽。ただ、1楽章が面白くなかったのを取り返すほどではない。

•チェンバロ協奏曲 ト長調 XVIII-4 1768頃?/82以前 「ピアノ協奏曲」とも◦3.3点


1楽章は自由に前面で活躍するチェンバロのがなかなかの聴きもの。原始的なチェンバロ協奏曲として、それなりの出来に聴こえる。2楽章は、旋律に魅力がある、心地よい温かみとある雰囲気が魅力。ただ、冗長だと思う。3楽章はアドレナリンの出るような曲で、旋律やフレーズは普通のようにみえて、なかなか楽しめる。

•オルガン協奏曲 ハ長調 XVIII-5 1763

•ヴァイオリンとチェンバロのための協奏曲 ヘ長調 XVIII-6 1766 ◦2.3点


鍵盤楽器と弦楽器という組み合わせの二重協奏曲は珍しい。しかし、録音のせいかヴァイオリンは目立たない。チェンバロが常に大活躍。1楽章はまあ普通の曲で強い印象は残らない。2楽章も3楽章もなんら特別感がなく、協奏曲らしい良さもたいしたことがなく、ハイドンには珍しいあまり面白くない曲と思う。

•オルガン協奏曲 ハ長調 XVIII-10 1771

•チェンバロ協奏曲 ニ長調 XVIII-11 1782「ピアノ協奏曲」として良く演奏される◦4.0点


モーツァルトと比べてシンプルだが爽やかで美しく独特の明るい霊感に満ちている。

https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%28%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E3%80%81%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%29

2. 中川隆[-14016] koaQ7Jey 2020年2月06日 12:09:46 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-685] 報告

ハイドン(室内楽)
https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%28%E5%AE%A4%E5%86%85%E6%A5%BD%29


弦楽四重奏曲一覧

ハイドンの交響曲は爽快で聴いて楽しい娯楽作品である。一方で弦楽四重奏曲は「ああ、いい曲を聴いたなあ」という胸が一杯になるような感動を得られる曲が多い。そして作品数がとても多いにも関わらず、初期を除けば駄作がほぼない。

ハイドンの練達の技術で次々と名作と呼べる水準の曲を生み続けており、あまりにも驚異的という印象を受ける。楽器の用法も楽曲もバランスが良く形式的な安心感がありながらも自由さがあり、リズムと旋律が一体となって合奏の楽しさを感じさせるものであり、非常に書法が優れている。切れ味のよさと心が温まる感じというハイドンの良さが最大に活かされている。そして現代の耳では、アダージョの3楽章の魅力がロマン派的であると共に温かみと感動を感じさせるものであり、ずば抜けている。

どの作品も後期ロマン派の爛熟したブルックナーの巨大なアダージョと同格なほどの深い精神世界に入り込んでいる。もちろん他の楽章も愉しめる曲ばかりであり、まさに宝の山である。「これを知らないとはクラックファンとして人生損している」と断言できる音楽である。

初期の弦楽四重奏曲

•Op.1(1755年

1番〜6番と0番。まだ音がスカスカであまり価値はない。

•Op.2(1755年?)

7番〜12番。同様に音がスカスカで価値は低い。


Op.9(1771年)
•Hob.III.19 弦楽四重奏曲第19番ハ長調◦3.3点


1楽章はあまり印象に残らない。旋律がいまいちである。2楽章は精彩があるというほどではないが、聴いていて楽しいものがある。3楽章は美しい成熟したメロディーと雰囲気で、宝物のようなものを産み出している。4楽章は急いでいるような前のめり感が楽しい曲。

•Hob.III.20 弦楽四重奏曲第20番変ホ長調◦3.5点


1楽章は冒頭の分散和音のメロディーが特殊で驚くが、その後は高い密度の音楽に驚く。1番より書法の成熟を感じる。2学も音の絡まりが心地よい。3楽章はメロディーが歌謡的でとても心に沁みるものがある。美メロディーで忘れ難い印象を残す。4楽章は勢いまかせでない、味のある締めくくり楽章で、フットワークは軽いながらも渋さがあって良い。

•Hob.III.21 弦楽四重奏曲第21番ト長調◦3.8点


1楽章は躍動感と冷静さが同居して、しかも渋さもある、とても素晴らしい曲。2楽章は品が良い。3楽章は感動的に始まり、心に深く食い込む美しさを見せていて感動させてくれる。なんと美しい音楽だろう。4楽章の品の良い軽快な音楽はスマートに締めくくってくれて素晴らしい。

•Hob.III.22 弦楽四重奏曲第22番ニ短調◦3.8点


短調の曲。1楽章も2楽章もモーツァルトのような音の流れの良さと、ベートーヴェンのような芯の強固さと、シューベルトのはかないセンチメンタルさを併せ持ったようなバランス。悲劇性を強調しておらず控え目だが、わりと悲しさをもった曲。3楽章はいつものように感動的で、短調の間だけに達観とか打ちひしがれた後の回復のようで素晴らしい。4楽章はやりすぎないながらも嵐のような激しさを内包した内容でよい締めくくり。

•Hob.III.23 弦楽四重奏曲第23番変ロ長調◦3.3点


1楽章の変奏曲は、単なる音の分解を細かくしていくだけでなく、様々なニュアンスの変化が多彩な表情となり、説得力をもった音楽になっている。2楽章は普通の曲。3楽章は感動的なメロディーで相変わらず素晴らしいのだが、2楽章との対比が効いておらず効果が薄い。4楽章も単体ではよいのだが、他とのつながりがイマイチ。

•Hob.III.24 弦楽四重奏曲第24番イ長調◦3.0点


1楽章と2楽章はあまり旋律の魅力を感じない。2楽章は休止を多く入れていて、独特の浮遊するような不安定感を感じる。3楽章は単なる感動的メロディーだけでなく、多少の推進力でポジティブに進めていく雰囲気を持っている。なぜか曲に入り込みにくい。4楽章はあっという間に終わる。全体にちょっと取っ付きにくい曲だと思う。


Op.17(1771年)
•Hob.III.25 弦楽四重奏曲第25番ホ長調◦3.3点


1楽章は中庸な中に磨かれた良さを持つ。2楽章は主張が控えめな曲であるが、シンプルななかに微妙なニュアンスをそれなりに楽しめる。3楽章は艶のある短調の曲で、移りゆく気分を奏でる弦の合奏の響きが美しい。やや長いが聴きがいがある。4楽章は手際が良い系統だが、多くのアイデアを詰め込んでおり充実している。

•Hob.III.26 弦楽四重奏曲第26番ヘ長調◦3.5点


1楽章は豊穣さと渋さを兼ね備えた内容豊かな曲。2楽章は旋律の穏やかさと愉しさを併せ持ち、中声の音の絡ませ方の美しさがその魅力を高めている。3楽章は沈み込みながらも、水面が見えるあたりを漂う感じで、絶妙な塩梅が楽しい。人生の悲哀を表現しているが、黄昏という感じでなく未来を見ているところが素晴らしい。4楽章は充実感があるものの、旋律の魅力が今一歩だと思う。

•Hob.III.27 弦楽四重奏曲第27番変ホ長調◦3.3点


1楽章の変奏曲は主題は悪くないものの、変奏が世界を深めていく感覚が弱くて、いまいち心が踊らない。2楽章は普通。3楽章はいつもの素晴らしさで、音の織物が心に折り重なるように触れてきて、深く感じ入るような感動をくれる。ニュアンスも豊富。3楽章のただベストの群に属するものではない。4楽章はそれを上手くうけて、盛り上げすぎでもないいい感じに適切なテンションで締めくくってくれる。

•Hob.III.28 弦楽四重奏曲第28番ハ短調◦3.5点


1楽章は短調に始まるが、最初だけである。中庸な速度で繰り出される多くのメロディーは、落ち着いて聴けることもありかなりの充実感で満たされる。2楽章は堂々とした主題が魅力的。中間で悲しげな心情にも変化するたて単純でない豊かさである。3楽章は素敵であり、儚い希望と生きる決意を感じさせる感動的な曲である。ただ、本当の深い精神世界まではいかない。4楽章は性急さをすこし含む曲で、内容豊富であり短調らしいしめくくりもあり、なかなか良い。

•Hob.III.29 弦楽四重奏曲第29番ト長調◦3.5点


1楽章はやや勘所をとらえにくい曲に感じる。内容は多いが、ふわふわと場面が移り変わっていく。2楽章は穏やかで上品な音楽だが、単なるディベルティメントに堕ちず、ほのかな刺激もある。3楽章は短調であり、嘆きの歌とでも呼びたいような悲痛感が覆っている。リズムが少ない詠唱的なアダージョは珍しいと思う。後半のソロにやるレティタティーボは最大限の悲しみに到達している。4楽章は生命感のある音の活発な動きが楽しい。

•Hob.III.30 弦楽四重奏曲第30番ニ長調◦3.5点


1楽章は刺激や工夫が音楽のつくりに沢山見受けられる。2楽章もまたありきたりでない音の動きで楽しませてくれる。3楽章はリズム感が常に消えないなかで、バロック的な明朗さのあるソロの穏やかな歌が続く。いつものアダージョの沈み込むような魅力はないが、これはこれで強く心に刻み込まれるものがある曲。4楽章は動機を重ねていくのだが、これも統一性があり、単なる勢いでない新鮮さをそれなりに感じる音形である。


Op.20 『太陽四重奏曲』(1772年)

次から次へと湧いてくる楽想の充実と自由闊達さが素晴らしい。

•Hob.III.31 弦楽四重奏曲第31番変ホ長調◦3.3点


かっちりした1楽章、滋味の溢れる2楽章、印象に残るメヌエットの3楽章、快活で楽しい4楽章と、どの楽章も存在感がある。

•Hob.III.32 弦楽四重奏曲第32番ハ長調◦3.5点


一度聴いただけでは構成が把握しにくい複雑な1楽章、インパクトがある強烈な短調と中間のトリオの対比が鮮明な2楽章、対位法的な4楽章と聴きどころが多い。

•Hob.III.33 弦楽四重奏曲第33番ト短調◦3.0点


緩徐楽章は素敵。最終楽章はモーツァルト的な性急さがあるものの物足りない。1楽章は短調から入るがすぐに長調になるパターンだが、いまいち分かりにくく、すっきりと音楽に入れない。

•Hob.III.34 弦楽四重奏曲第34番ニ長調◦3.5点


滋味と複雑さを兼ね備えた1楽章、変奏曲形式で切なく悲しい歌を切々と奏で続けるような2楽章が素晴らしい。3楽章は普通、4楽章のきびきびした音の動きも楽しい。

•Hob.III.35 弦楽四重奏曲第35番ヘ短調◦4.0点


短調曲で、1楽章はすぐに長調になるパターンではなく、短調が続き悲しい音楽が続く。緩徐楽章や最後のフーガもかなり素晴らしい。旋律がどの楽章も魅力に溢れており、ハイドンの短調の弦楽四重奏の中では傑作である。

•Hob.III.36 弦楽四重奏曲第36番イ長調◦3.5点


長調だが、単なる明快さや優美さではない複雑で味わい深い魅力がある。緩徐楽章がやはり一番だが、1楽章も味わい深く、4楽章のフーガは緊張感を演出して見事に太陽四重奏を締めくくっている。


Op.33 『ロシア四重奏曲』(1781年)

モーツァルトが衝撃を受けた作品。古典派らしい均整の取れた美しさ楽しめるが、複雑で味わい深いハイドンの多くの弦楽四重奏の中では、単純明快すぎてものたらないと感じる時もある。

•Hob.III.37 弦楽四重奏曲第37番ロ短調◦3.5点


古典派的な均整の取れたまとまりとシンプルな美しさがあり、はっとするような美しさが随所にあり音楽的に楽しめる。

•Hob.III.38 弦楽四重奏曲第38番変ホ長調『冗談』◦3.5点


1楽章の古典的な均整美や叙情性や4楽章の軽快さは楽しい。

•Hob.III.39 弦楽四重奏曲第39番ハ長調『鳥』◦3.0点


歯切れの良さよりしなやかさを重視しているような曲調。2楽章がいまいち。

•Hob.III.40 弦楽四重奏曲第40番変ロ長調◦3.5点


メヌエット風のスケルツォが珍しく非常に印象的。ラルゴも良い。

•Hob.III.41 弦楽四重奏曲第41番ト長調◦3.5点


1楽章は凡庸一歩手前だが素敵な曲。2楽章は短調で素晴らしい。4楽章の変奏曲も素敵な楽しめる曲。

•Hob.III.42 弦楽四重奏曲第42番ニ長調◦3.0点


旋律的な魅力がやや物足らない。特に魅力が強い楽章は無く、どれもそれなりに良いという感じ。


Op.42(1785年)
•Hob.III.43 弦楽四重奏曲第43番ニ短調◦3.5点


短調の響きを楽しめるコンパクトな作品。1楽章が割と充実し、2楽章も良い。4楽章があっさりしすぎ。

Op.50 『プロシア四重奏曲』(1787年)

かなり古典派らしい内容。シンプルな伴奏とメロディーという素朴さが耳につく曲が多い。

•Hob.III.44 弦楽四重奏曲第44番変ロ長調◦3.0点


Op54以降と比較すると古典派らしいシンプルな内容。最終楽章が充実している。

•Hob.III.45 弦楽四重奏曲第45番ハ長調◦3.5点


冒頭から印象的な半音階的なメロディー。前期ロマン派みたい。二楽章も巨匠的で素晴らしい。最終楽章も大きくて相応しい。

•Hob.III.46 弦楽四重奏曲第46番変ホ長調◦3.0点


あまり特徴が無いが、三楽章が印象に残る。

•Hob.III.47 弦楽四重奏曲第47番嬰ヘ短調◦3.5点


短調と長調の切り替えが美しい。二楽章はモーツァルトが短調曲の緩じょ楽章でやるような美しさ。最終的のフーガも面白い。

•Hob.III.48 弦楽四重奏曲第48番ヘ長調◦2.0点


1楽章はメロディーが単純すぎる。二楽章はあまりいい曲でない。3,4楽章も単純すぎて旋律の魅力がなく貧相。

•Hob.III.49 弦楽四重奏曲第49番ニ長調『蛙』◦3.0点


蛙みたいな四楽章の主題は笑いそうになるくらい面白い。他の楽章は普通の出来だと思う。


Op.51 『十字架上のキリストの最後の7つの言葉』(1787年)

(もとはオーケストラのための教会音楽をハイドン自身が弦楽四重奏に編曲)

•Hob.III.50~56 弦楽四重奏曲第50番-第56番

一楽章構成


Op.54 『第1トスト四重奏曲』(1788年)

古典派らしい素朴さが残っている曲があるが、そこから発展して少し複雑になり始めている。

•Hob.III.58 弦楽四重奏曲第57番ト長調◦3.5点


一楽章は渋さを兼ね備えた明るい曲。二楽章はかなり美しい。三楽章は生き生きとした良いメヌエット。四楽章も良い。全体に充実して聴き応えがある。

•Hob.III.57 弦楽四重奏曲第58番ハ長調◦3.5点


2楽章がエレジーと呼びたくなるほどに悲しい短調の曲。四楽章に大きな美しい前奏のような楽想が短いプレストを挟んでほぼ全編という曲で、かなり印象的。

•Hob.III.59 弦楽四重奏曲第59番ホ長調◦3.0点


1楽章が元気で楽しい。二楽章はモーツァルトみたい。まったりしたシンプルさ。三楽章以降は普通。


Op.55 『第2トスト四重奏曲』(1788年)
•Hob.III.60 弦楽四重奏曲第60番イ長調◦3.0点


古典派らしいシンプルで伸びやかで明るい曲。

•Hob.III.61 弦楽四重奏曲第61番ヘ短調『剃刀』◦3.5点


3楽章までは全体を悲痛な雰囲気が覆っているハイドンには珍しい曲。内容は濃い。最終楽章は晴れやか。

•Hob.III.62 弦楽四重奏曲第62番変ロ長調◦3.0点


古典派らしい颯爽としていて伸びやかな明るい雰囲気が心地いい。

Op.64 『第3トスト四重奏曲』(1790年)

トスト第1、第2より進化して古典派らしさが消えて複雑になりつつあるが、この曲集は駄作がいくつかある。

•Hob.III.65 弦楽四重奏曲第63番ハ長調◦2.0点


音がスカスカで声部の絡みが悪いし、旋律も魅力がない。しかも全部の楽章がそうなので、かなりイマイチである。

•Hob.III.68 弦楽四重奏曲第64番ロ短調◦2.5点


一楽章の短調の響きが美しい。冒頭の不思議なフレーズは面白い。二楽章と四楽章は素朴でやや物足りないが悪くない。

•Hob.III.67 弦楽四重奏曲第65番変ロ長調◦3.5点


活力がある一楽章、歌謡的な二楽章、優美なメヌエットの三楽章はかけ声みたいなフレーズが面白い、生き生きした四楽章と全部の楽章が魅力的。

•Hob.III.66 弦楽四重奏曲第66番ト長調◦3.0点


前半は素朴でやや薄味で脳天気でさえあるが、三楽章で濃厚ないつもの音楽になる。四楽章の快活さは楽しい。

•Hob.III.63 弦楽四重奏曲第67番ニ長調『ひばり』◦3.5点


他の曲と比較して、メロディーがはっきりしていて明快な分かりやすさがある。冒頭の雲雀の主題は印象的。この曲は有名だが、ハイドンの中で突出して優れている訳ではないと思う。

•Hob.III.64 弦楽四重奏曲第68番変ホ長調◦3.3点


一楽章は印象が薄い。二楽章は珍しいほどまさに感動するための音楽。メヌエットもなかなか良い。フィナーレもちょうど良い感じの明るくノリノリの曲。


Op.71 『第1アポーニー四重奏曲』(1793年)

後期らしい完成度になっているが、Op76への道程という感じがある。

•Hob.III.69 弦楽四重奏曲第69番変ロ長調◦3.5点


感動を内に秘める瑞々しい叙情性が印象に残る。しかしあくまで爽やかなのがいい所。前半二楽章が良い。

•Hob.III.70 弦楽四重奏曲第70番ニ長調◦3.0点


普通の曲。フィナーレが素敵な雰囲気。

•Hob.III.71 弦楽四重奏曲第71番変ホ長調◦3.5点


1、4楽章の充実感、二楽章の絶妙な伴奏に載せた歌うシンプルながらも素敵なメロディーなど、魅力的な曲。


Op.74 『第2アポーニー四重奏曲』(1793年)
•Hob.III.72 弦楽四重奏曲第72番ハ長調◦3.0点


全体にしなやかで柔らかい雰囲気が支配的。半音階の動機が多く使われていて所々はっとする。

•Hob.III.73 弦楽四重奏曲第73番ヘ長調◦3.5点


一楽章は展開部が好き。二楽章がモーツァルト的な美しさ。三楽章は普通。四楽章は軽快で耳に残る。

•Hob.III.74 弦楽四重奏曲第74番ト短調『騎士』◦3.0点


一楽章は主題の魅力が今ひとつ。二楽章はオーソドックスで温かみがあるが、美しさがもの足りない。四楽章の愛称の由来となった騎士の主題はそれほど強く印象に残らない。

Op.76 『エルデーディ四重奏曲』(1796年-1797年)

声部の絡みや磨かれ方が誰にも届かないほどの完成度になった。

•Hob.III.75 弦楽四重奏曲第75番ト長調◦4.0点


前半の二つの楽章は大変素晴らしい。楽しく充実した一楽章、柔らかく温かい音の世界が感動的な二楽章。後半は普通になる。

•Hob.III.76 弦楽四重奏曲第76番ニ短調『五度』◦3.5点


愛称の由来となった冒頭の主題はそれほど魅力を感じない。それより後半が良い。特にフィナーレは緊密で緊張感があり優れている。

•Hob.III.77 弦楽四重奏曲第77番ハ長調『皇帝』◦4.0点


1楽章はいつもの歯切れのよさで愉しい。二楽章はやはり、ドイツ国歌のメロディーが大変良い。変奏というより、伴奏と独奏楽器を変えながら何度もメロディーを演奏する感じだが聞きほれる。三楽章はトリオが良い。四楽章は突然の短調で驚くが内容は普通。

•Hob.III.78 弦楽四重奏曲第78番変ロ長調『日の出』◦3.5点


一楽章の叙情性と歯切れのよい軽快さのバランスが良い充実作。二楽章は深く入り込める叙情的な内容。三楽章以降は普通。

•Hob.III.79 弦楽四重奏曲第79番ニ長調『ラルゴ』◦3.5点


ラルゴ楽章は別格というほどではないが、非常に心に響くものがある美しさ。他の楽章もそれぞれ素晴らしい。

•Hob.III.80 弦楽四重奏曲第80番変ホ長調◦3.5点


大作の二楽章に心惹かれる。最終楽章の盛り上がりもなかなか。


Op.77 『ロプコヴィッツ四重奏曲』(1799年)

極限まで磨きぬかれてる。

•Hob.III.81 弦楽四重奏曲第81番ト長調◦3.8点


音楽の幅広さ、精巧な作り、楽器の声部の活用の豊さなど、多くの点で非の打ち所のないようなハイドン晩年の円熟の技が光る作品。

•Hob.III.82 弦楽四重奏曲第82番ヘ長調『雲がゆくまで待とう』◦3.8点


77−1と同様に非の打ち所が無く、さらに内省的で人生の回想を内に秘めたような感動があり、器楽曲でのハイドンの最後の到達点の凄さに痺れる。


Op.103(1803年)
•Hob.III.83 弦楽四重奏曲第83番ニ短調(未完成)

ピアノ三重奏曲

番号は前半がホーボーケン番号であり、後半がランドン版の番号である。


ハイドンのピアノ三重奏曲はピアノが主役であり、弦楽器は味付けだけである。ベートーヴェン以降とは楽器のバランスがかなり異なる。極めて芸術性が高い弦楽四重奏曲などと比較すると、ピアノ三重奏曲は娯楽的で軽くて内容が浅い曲が多いと感じる。曲数は多いが、特に初期の方はあまり真剣に聴くジャンルではないと思う。晩年はそれなりの充実感と聴き応えをみせていて楽しめる。とはいえハイドンらしい大作曲家の精華という感じではないと思う。

1番から20番まで

•ピアノ三重奏曲第1番 ト短調 第5番 1755-60 ◦2.8点


短調の曲。しかもずっと短調の物憂い雰囲気が継続する。ト短調であることもあり、悲劇的な悲しみを持っていてモーツァルトを連想するところがある。とはいえ、やはりハイドンの短調曲の常でメロディーの魅力は今一歩だと思う。

•ピアノ三重奏曲第2番 ヘ長調 第17番 1772 ◦2.8点


1楽章はごく普通。2楽章の変奏曲は少し面白い。特に延々とピアノとヴァイオリンでユニゾンをするのが新鮮。

•ピアノ三重奏曲第3番 ハ長調 ? 偽作

•ピアノ三重奏曲第4番 ヘ長調 ? 偽作

•ピアノ三重奏曲第5番 ト長調 第18番 1784 ◦3.0点


1楽章は長い前奏のような趣き。2楽章はそこそこ充実した曲。これで終わりでもよさそうだが3楽章が変奏曲として続く。しかし短く終わってしまい、位置付けがよく分からない。順番に聴いていると急に音が成熟して驚く。

•ピアノ三重奏曲第6番 ヘ長調 第19番 1784 ◦3.5点


1楽章は健全な普通の曲。 2楽章が素晴らしい。ゆったりとした中での、感情の揺れとか間の使い方が良い。突発的に想いがこみ上げるような場面もあり、かなり心を揺さぶられる。

•ピアノ三重奏曲第7番 ニ長調 第20番 1784◦3.3点


1楽章は前奏的な曲風だが、変奏曲であり構成が理解しやすい。感傷的な歌の2楽章も、それを受けた適度な運動感のある3楽章もなかなか良い。

•ピアノ三重奏曲第8番 変ロ長調 第21番 1784 ◦2.5点


冒頭で重厚な和音に驚かされる。しかし、これ以外は標準以下の出来だと思う。旋律が良くないためあまり面白くない。

•ピアノ三重奏曲第9番 イ長調 第22番 1785 ◦2.8点


1楽章は長くて、まったりしているだけでたいした内容ではない。2楽章の手際の良さは気持ちいい。

•ピアノ三重奏曲第10番 変ホ長調 第23番 1785 ◦3.0点


1楽章のノリの良さと、2楽章の手際の良さと高揚感。なかなか楽しい曲である。緩徐楽章がない楽しさを味わえる。

•ピアノ三重奏曲第11番 変ホ長調 第24番 1788? ◦3.0点


1楽章は成熟しているが、ごく普通の曲。2楽章も内容的にはしっかりした曲だが、普通の曲という以上のものはないと思う。

•ピアノ三重奏曲第12番 ホ短調 第25番 1788/89? ◦3.3点


1楽章は短調だが長調の色が強い。2楽章はモーツァルト的な歌謡性がありロマンティックさもある。3楽章はかなりピアニスティックで音数が多くて楽しい。晩年にさしかかった充実した音楽の場合は3楽章あった方がバランスが良いと感じる。

•ピアノ三重奏曲第13番 ハ短調 第26番 1789? ◦3.3点


1楽章はピアノ三重奏曲の中では長大な変奏曲。短調と長調を織物のように組み合わせて、優美な主題の魅力とあわせて、なかなか楽しめる。2楽章も適度な快活さと胸の膨らむような広がり感が組み合わされており、なかなか楽しい曲。

•ピアノ三重奏曲第14番 変イ長調 第27番 1789/90 ◦3.0点


成熟感のある3楽章の曲。上品にまとまめられている。規模が大きいため時間の使い方が通常と違うこともあり、シューベルトの世界に近付いてきた感がある。しかし、気合いの入った曲というより、ムードをまったり楽しむ音楽という印象。

•ピアノ三重奏曲第15番 ト長調 第29番 1789/90? ◦3.0点


柔らかくて耳あたりはよい雰囲気が続くのだが、印象にのこるような強い主張はない。ディベルティメントのような曲風。

•ピアノ三重奏曲第16番 ニ長調 第28番 1789/90? ◦3.3点


明るく活発な雰囲気が支配していて楽しんで聞けるが、一方で短調に転じる場面も多いので、急に雰囲気が変わってドキッとさせられる時もある。なかなか愉しい曲。2楽章は短調だがしなやかな愛らしさがあり、曲が暗すぎないのがよい。フルート版も聴いたが同様に楽しい。

•ピアノ三重奏曲第17番 ヘ長調 第30番 1790? ◦3.0点


さらっと書かれたような2楽章の曲。可愛らしいコンパクトさがある。

•ピアノ三重奏曲第18番 イ長調 第32番 1793/94? ◦3.3点


安定感を感じる1楽章。2楽章の沈み込むような短調のあとに、飛び跳ね廻るような3楽章。楽章ごとのコントラストが非常にはっきりしていて面白い。

•ピアノ三重奏曲第19番 ト短調 第33番 1793/94? ◦3.3点


1楽章は短調の変奏曲で悪くない。2楽章は歌謡的で美しくて心に響く曲。3楽章はコントロールされた高揚感が心地いい。

•ピアノ三重奏曲第20番 変ロ長調 第34番 1793/94? ◦3.3点


1楽章は少しだけ癖はあるが普通。2楽章は冒頭で異様に長いピアノのソロがある。その後も夜もしくは黎明のような雰囲気で、感動的な雰囲気を持続したままの変奏曲となる。ハイドンにしては非常にロマン的な感情に深く浸ることを主体とした曲。3楽章は激しすぎない音楽で2楽章の気分を壊さないように配慮されている。


21番以降

•ピアノ三重奏曲第21番 ハ長調 第35番 1794/95? ◦3.0点


1楽章は悪くはないが、この時代のハイドンならば当然に出来ることしかしていない。2楽章は優美でなかなか美しい。3楽章は音の躍動感を楽しむ曲。

•ピアノ三重奏曲第22番 変ホ長調 第36番 1794/95? ◦3.3点


モーツァルトのように綺麗にまとめようとする志向と、成熟した雄大さを併せ持った曲を書こうとしたのを感じる。規模の大きさとゆったりとした柔らかい雰囲気を楽しめる。2楽章はロマン派の息吹を感じる。3楽章は立派。この時期のピアノ三重奏曲はみんなそうだが、最後の交響曲と同時期という書法の成熟感と規模感が楽しい。

•ピアノ三重奏曲第23番 ニ短調 第37番 1794/95? ◦3.5点


1楽章は長いし、それほど魅力を感じない。2楽章は非常に美しい。ほとんどショパンに近いほど繊細な冒頭のピアノのソロと、それをうけて展開していく音楽は続く平穏さの中で強くロマンチックに心を動かす。3楽章の音の動きは独特であり、スケルツォのようである。それを軸に構築された曲であり、インスピレーションの強靭さを感じる。

•ピアノ三重奏曲第24番 ニ長調 第38番 1794/95? ◦3.5点


1楽章はなかなか詩的なインスピレーションに溢れた、内容豊かな楽章。控えめななかに素敵な音楽が詰め込まれている。2楽章は動機に近いメロディーを繰り返すハイドンには珍しいタイプの曲であり、アタッカで続けて3楽章も珍しい。3楽章はバッハに影響を受けたかのような、奥ゆかしい対位法的な曲。達観したかのような何か清々しい気分に満ちたハイドンには珍しい曲。感動した。

•ピアノ三重奏曲第25番「ハンガリー風」 ト長調 第39番 1794/95? ◦3.5点


1楽章は耳障りのよい寛いだ雰囲気が支配的。2楽章はモーツァルトのような回想的で感傷的な美メロディーをたっぷり聴かせる。音の間合いの使い方など、モーツァルトを意識していると思われる。狙いがあからさまでもやはり感動してしまう。3楽章のジプシー風はハイドンには珍しい。独特の民族的土着的な音楽はいつもと違うだけにハイドンらしい料理の仕方への興味も湧くし、やはり耳を捉えるものがある。

•ピアノ三重奏曲第26番 嬰ヘ短調 第40番 1794/95? ◦3.3点


1楽章は寛いだ雰囲気で特徴は多くないが、充実感と聞き応えが十分にある。2楽章は普通。3楽章はテンションの上がらない最終楽章らしさの少ない曲。しかし、執拗な動機の繰り返しと短調の切迫感がだんだん感動を増していく不思議な曲。

•ピアノ三重奏曲第27番 ハ長調 第43番 1796? ◦3.3点


1楽章は冒頭こそ素人っぽいがっかり感があるが、そのあとは普通の曲として、一応の労力を感じられる曲になっている。2楽章も作り込みをそれなりに行っているが、主題の魅力がない。3楽章は繊細な軽妙さのある主題が珍しい。ピアノの縦横で派手な活躍ぶりはモーツァルトの協奏曲みたいだ。具体的に似た曲はあまり思いつかないのにモーツァルトを思い出す。しかし、モーツァルトには、この楽章ほど斬新で面白い曲はないと思う。

•ピアノ三重奏曲第28番 ホ長調 第44番 1796? ◦3.5点


1楽章はピツィカートを主題の一部として完全に取り込んでいるのが珍しい。内容は変化を十分に詰め込んでいる。2楽章はまた一段と実験的。無機質なユニゾンから始まり、そのまま異様な伴奏とモノローグのピアノが延々と続くのは完全な異常事態である。これはもう、ハイドンなりの前衛的な音楽だろう。ショスタコーヴィチが乗り移ったかのようだ。後半は3つの楽器が絡み合い、悲しみの歌になる。3楽章はメロディーと感情の力が強くて、聴いていてハイドンであることを忘れてしまう。

•ピアノ三重奏曲第29番 ト長調 第45番 1796? ◦3.3点


1楽章となめらかな中に骨太さのある音楽だが、特別なものがない。ノーマルな音楽がさらっと流れていく印象。2楽章は美メロディー風だが、今ひとつ気分が盛り上がらない。3楽章は3拍子で舞踏性と高揚感を演出するのがとても良い。この楽章は何度でも聴きたくなる。

•ピアノ三重奏曲第30番 変ホ長調 第42番 1796? ◦2.8点


1楽章はベートーヴェン的な清々しさ空間的な広がりの共存が良い。ごく普通の曲ではあるが。2楽章は特筆することはない。BGMのような曲。3楽章も特段の特徴がない。

•ピアノ三重奏曲第31番 変ホ短調 第41番 1795 ◦2.8点


1楽章も2楽章と特段の創意工夫を見つけられない。ごく普通の音楽がさらっと書かれているだけで、あまり内容がないように感じる。

•ピアノ三重奏曲第32番 ト長調 第31番 1792/93? ◦3.5点


どこかで耳にすることがある分かりやすいキャッチーなメロディーを前面で推している1楽章は面白い。いきなりピチカートで始まる冒頭は新鮮。2楽章も分かりやすくてメロディーに力がある。いかにもマイナー曲ばかりのピアノ三重奏曲の中ではメジャーになれる属性を持つ曲。

•ピアノ三重奏曲第33番 ニ長調 第8番 ?

紛失

•ピアノ三重奏曲第34番 ホ長調 第11番 1755-60 ◦3.0点


1楽章がモーツァルトのように優美で愛らしい曲でメロディーが目立つ曲であり印象的。2楽章と3楽章はハイドンらしい楽しい曲。ピアノが中心として活躍する音楽なのは相変わらず。

•ピアノ三重奏曲第35番 イ長調 第10番 1755-60 ◦3.0点


1楽章はほとんど全てヴァイオリンとピアノと右手がユニゾンという実験的ともとれる構成で驚く。2楽章は活気あふれるパワーのある曲でかなり素晴らしい。3楽章は可愛らしいさがある普通の曲。

•ピアノ三重奏曲第36番 変ホ長調 第12番 1755-60 ◦2.5点


光る楽章が無いのであまり面白くない。あえて言えば3楽章の明快でかっちりとした快活さがいい感じ。

•ピアノ三重奏曲第37番 ヘ長調 第1番 1755-60 ◦2.5点


中庸のテンポでしなやかでセンチメンタルな1楽章が始まるのは意外だが、なかなか美しい。

2楽章はテンポが速くなり、活発だが、メロディーの魅力はあと一歩。あまりハイドンぽくない。3楽章は陰影に富む中庸のテンポの曲。この楽章もあと一押しの何かが欲しい。

•ピアノ三重奏曲第38番 変ロ長調 第13番 1755-60 ◦3.0点


1楽章の優雅な美しさがなかなか印象的。古典派らしい美しさを堪能出来る。3楽章の快活さもなかなか。バリトン四重奏曲の最終楽章を連想するスピード感の主題が印象に残る。

•ピアノ三重奏曲第39番 ヘ長調 第4番 1755-60 ◦2.5点


優雅でくつろいだ雰囲気の楽しい曲。5楽章ある。普通の曲だが、その中にハイドンらしさが感じられる。

•ピアノ三重奏曲第40番 ヘ長調 第6番 1755-60 ◦3.0点


1楽章と2楽章のほのぼのとした優雅な雰囲気。3楽章の快活さ。まだ磨かれ方は足りないがハイドンらしい楽しさが現れている。

•ピアノ三重奏曲第41番 ト長調 第7番 1755-60 ◦3.0点


珍しい4楽章制。2楽章のトリルの効果が美しくて心を捉えた。他の楽章は中庸でシンプルな普通の曲である。4楽章制であることが高い効果を上げている印象は特にない。


Hob番号外

•ピアノ三重奏曲 ハ長調 第2番 1755-60 ◦2.5点


1楽章は主題の魅力はそこそこ。展開部に随分と迫力があり驚いた。2楽章は優雅にまったりだが、よく短調になるので陰影は深い。3楽章は2楽章と雰囲気が似た優雅な変奏曲だが、音を細かく分けて繰り返すだけに聞こえてあまり面白くない。

•ピアノ三重奏曲 ヘ短調 第14番 1755-60 ◦2.8点


1楽章も2楽章も短調をたっぷり聴かせる。交響曲のようにすぐに長調にならない。3楽章は大半が明るい。手抜きしていない、きちんとした内容で満たされているのだが、演奏のせいか霊感がいま一つ足りないと感じてしまった。

•ピアノ三重奏曲 ト長調 第3番 1755-60 ◦2.0点


ピアノが大変支配的な曲で、他の2つは目立たない。特にチェロは可哀想なくらい。そしてメロディーに魅力がなくて、面白くない。

•ピアノ三重奏曲 ニ長調 第9番 ?

紛失

•ピアノ三重奏曲 ニ長調 第15番 1755-60 ◦2.0点


とにかくハイドンらしさが無い特殊な曲。本当に真作?と疑問に思う。曲自体もつまらない。

•ピアノ三重奏曲 ハ長調 第16番 1755-60 ◦2.3点


まったりした曲。あまり特徴がなく、面白くもない。


ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 Hov.VI[#xa0f11db]
•ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第1番 ヘ長調◦3.0点


チェロは完全に伴奏だけ。1楽章の変奏曲など、手を抜かずちゃんと書いている印象はある。とはいえ、ディベルティメント的な寛いで自分で演奏して楽しむための職人的に書かれた曲である。

•ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第2番 イ長調◦3.3点


1楽章は音の飛び方で耳へのひっかかりを演出している印象。2楽章は短調でハイドンには珍しく音を長く伸ばして存分に聴かせる曲であり、おおっとなる。胸に迫るものがかなりある。3楽章は普通。

•ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第3番 変ロ長調◦2.8点


2番までより少し難易度を上げられているように聴こえるのが最大の特徴。曲としては、特筆するほどの楽章はない。音の飛び方が激しいため、音の動きにスムーズさがない。

•ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第4番 ニ長調◦2.5点


これといった特長のある楽章がない。一貫して平凡であり、聴きどころに欠ける。優雅な音感の良さは一流作曲家の手による作品と分かるものだが、それ以上のものがない。

•ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第5番 変ホ長調◦2.5点


規模が小さくて聴きやすいのはよいが、1楽章の一部を除いてやはり内容が薄く、聴きどころがないと思う。

•ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第6番 ハ長調◦2.5点


2楽章が多少力強い表現になり聴きどころがある箇所がある。それ以外は、さらっと聴ける耳を少し楽しませるだけのディベルティメントである。


バリトン八重奏曲

•8声のディヴェルティメント ニ長調 Hob.X1 1775 brt,SQ,2hrn,BC◦3.3点


1楽章のキレと活発さが楽しい。2楽章と3楽章はごく標準的なディベルティメントだと思う。

•8声のディヴェルティメント ニ長調 Hob.X2 1775 brt,SQ,2hrn,BC◦3.5点


バランスがよくて、楽章の統一感もかなり良い。旋律も良いためいい曲だと没入できる。

•8声のディヴェルティメント イ短調/イ長調 Hob.X3 1775 brt,SQ,2hrn,BC ◦3.5点


1楽章の鎮魂的とも言える悲劇的な暗い曲から、2楽章の底抜けに明るい曲に転換し、3楽章はまったりという特殊構成。2楽章が魅力的。1楽章はモーツァルトの最も悲劇的な曲にも匹敵するほどエモーショナルである。

•8声のディヴェルティメント ト長調 Hob.X4 1775 brt,SQ,2hrn,BC◦3.3点


1楽章も2楽章も穏やかなのが、3番と対比を意図的しているように感じる。古典的な均整の取れた美しさと旋律の良さを楽しめる。

•8声のディヴェルティメント ト長調 Hob.X5 1775 brt,SQ,2hrn,BC◦3.0点


雰囲気は他と同様だが、旋律が平凡でやや魅力が落ちる。

•8声のディヴェルティメント イ長調 Hob.X6 1775 brt,SQ,2hrn,BC◦3.3点


2楽章がモーツァルトのように優美さを裏返したような歌謡的な悲しみの音楽。ハイドンにしては珍しいと思う。他の楽章は普通。

•8声のディヴェルティメント ト長調 Hob.X12 1775? brt,SQ,2hrn,BC◦3.3点


2楽章がまたしてもモーツァルト風の歌謡的な短調。これも良い曲。1楽章の広がりのある曲だがあまり良くない。3楽章のきびきびとした動きは魅力的。


バリトン五重奏曲

•ディヴェルティメント(五重奏曲) ニ長調 1767/68 brt,va,2hrn,BC ◦3.3点


高音が少なくて、父性の強い渋い音になっている。とはいえ、ホルンが2本もあるため華やかさと音の厚みは十分である。ただ、メロディーが地味だし、まったりした雰囲気のためもの珍しさだけで終わってしまう。


バリトン三重奏曲

•バリトン三重奏曲◦2.5点〜3.5点


全126曲。10分程度で3楽章のコンパクトな内容。同工異曲がたくさんあるが、領主に直接演奏してもらうための曲だからかひどい手抜きは無く、どの曲もそれなりのクオリティである。低音ばかりなので聞いていて気分が落ち着くし、ハイドンらしい楽しさにも満ちている。

https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%28%E5%AE%A4%E5%86%85%E6%A5%BD%29

3. 中川隆[-14015] koaQ7Jey 2020年2月06日 12:12:20 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-684] 報告

ハイドン(クラヴィーア曲、声楽曲)
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クラヴィーア曲

クラーヴィアソナタ

曲名につけている数字は、前半がホーボーケン番号で、後半がランドン版による番号である。


ハイドンのソナタは、モーツァルトのソナタのように個別的な個性があったり、心を虜にするような愛らしさと旋律美のような強烈な魅力があるわけではない。しかし、ハイドンらしい素朴な暖かさや成熟感は魅力があり、地味さに耳が慣れると、なかなか楽しめる佳作が揃っていると思う。

1番から20番まで


•ピアノソナタ第1番 ハ長調 第10番 1750-55? ◦3.5


シンプルな短いソナタ。古典的な簡素さの美に感動する。3楽章もそれなりに良い曲だが、特に1楽章と2楽章が良い。1楽章も3楽章も短調に転じるのが面白い。いずれにせよ、バロック的なシンプルな美しさが素晴らしい。初期の中でも心に響く曲。

•ピアノソナタ第2番 変ロ長調 第11番 作曲年不明 ◦3.0点


1番と比べると各楽章が長く感じる。2楽章のモーツァルト顔負けの憂愁。半音階的で驚く。1楽章の滋味。3楽章は急速でなく時計のような歩みの進行であり、ハイドンらしい時計的な詩情を見せる。

•ピアノソナタ第3番 ハ長調 第14番 1765? ◦2.8点


素朴でシンプルなソナタ。バロックの香りを放つ素朴な味わいは悪くないが、それ以上の何かは無い。

•ピアノソナタ第4番 ニ長調 第9番 1765頃?-1772 ◦2.5点


6分2楽章の短いソナタ。あまりに簡潔で、音楽的にもあまり目立つ良さは無い。ハイドンらしい良さはこの曲にもあるが、物足りない。

•ピアノソナタ第5番 イ長調 第8番 作曲年不明◦2.8点


爽やかで内容もそれなりに盛り込まれた短い曲。歯切れの良さが魅力。しかし、旋律の魅力にどことない物足りなさを感じる。

•ピアノソナタ第6番 ト長調 第13番 ◦2.8点


いかにもチェンバロ用の曲。4楽章。簡素な曲だが、憂いをたっぷり聴かせる短調の3楽章が独特のバロック的美しさで心に響く。他の楽章は普通。

•ピアノソナタ第7番 ハ長調 第2番 1750頃? ◦2.5点


簡素な曲。特に3楽章はあっという間に終わる。旋律の魅力が足りず、未成熟を感じる。

•ピアノソナタ第8番 ト長調 第1番 ◦3.0点


7番同様にものすごく短い曲。7番より歌心を感じて、ピアノフォルテらしい音の動きを楽しめる。

•ピアノソナタ第9番 ヘ長調 第3番 1766/1760?  ◦2.8点


2楽章がやや長くて冗長に感じるが他はシンプル。これもピアノフォルテらしい音の動きを楽しむ曲。

•ピアノソナタ第10番 ハ長調 第6番 作曲年不明◦2.5点


9番までと比較して長くて構成が大きいのだが、響きを単純に楽しむ素朴さが損なわれている。旋律があまり良くないと音感の良さも微妙なのが気になる。

•ピアノソナタ第11番 ト長調 第5番◦3.0点


2楽章がなかなか美しい。3楽章はいろいろ詰まっていて楽しく、コンセプトは良いが、大成功とはいかないと思う。1楽章は並。

•ピアノソナタ第12番 イ長調 第12番 ◦3.0点


スローテンポから段々早くなる曲。1楽章が美しい。他は並。

•ピアノソナタ第13番 ホ長調 第15番 1766/1760? ◦2.8点


1楽章は重厚な和音が登場して驚く。2楽章などにも、ところどころ初期にはない古典派の後期のような響きが登場する。順番に聴いたら目新しく感じるが、曲としてはいまいち魅力が足りない。

•ピアノソナタ第14番 ニ長調 第16番 作曲年不明 ◦2.8点


過渡的という言葉がついよぎってしまう曲。いろいろとピアニスティックではあるが、曲として十分に使いこなせていないように聴こえる。

•ピアノソナタ第15番 ハ長調 op.41-3 Divertimento Hob.II:11の編曲。偽作。

•ピアノソナタ第16番 変ホ長調 1750-55?

•ピアノソナタ第17番 変ロ長調 op.53-1 作曲年不明 近年では、J.G.シュヴァンベルガーによるものであると判明

•ピアノソナタ第18番 変ロ長調 第20番 作曲年不明 偽作。

•ピアノソナタ第19番 ニ長調 op.53-2 第30番 1767 偽作

•ピアノソナタ第20番 ハ短調 op.30-6 第33番 1771◦3.8点


1楽章が序奏付き。短調の曲という目新しさがある。モーツァルトの幻想曲のような哀しく切ない歌の音楽。2楽章も深く沈み込むような感じときらめくような美しいに溢れたロマンティックな曲。3楽章もそれをうけた見事な内容。このような特殊な曲を高く評価するのは自分でも良いのか悩むが、感動するのだからしょうがない。

21番から40番まで


•ピアノソナタ第21番 ハ長調 op.13-1 第36番 1773◦3.3点


1楽章の執拗な跳ねるリズムは、ハイドンにしては非常に特異な音楽である。効果のほどを高く評価したい出来ではないが、とにかく印象に残る。2楽章はオーソドックスだが、なかなか叙情的で美しい歌心のある曲。3楽章もオーソドックスでなかなか楽しくて、ハイドンらしい素朴さが過剰でない演出となりいい味を出している。

•ピアノソナタ第22番 ホ長調 op.13-2 第37番◦3.3点


1楽章は普通。2楽章はかなり沈み込んだ悲痛の感情に支配された曲。3楽章はそれを受けたしみじみとした晴れやかさのある曲。突発的な激情も挟まれる。ロマン派の息吹を感じる。

•ピアノソナタ第23番 ヘ長調 op.13-3 第38番◦3.3点


1楽章の活発な運動性や展開力は、それだけで楽しめるもの。短調の2楽章も3楽章の意外性のある音の動きの運動性も楽しい。表現の幅があり、滋味も裏にもっていて成熟感がある。

•ピアノソナタ第24番 ニ長調 op.13-4 第39番 1773?◦3.0点


1楽章は活発だがいまいちピンとこない曲。2楽章は短調で歌謡的でモーツァルトのように美しい。3楽章は音の動きで押す曲だが、これも旋律としてはあまりピンとこない。

•ピアノソナタ第25番 変ホ長調 op.13-5 第40番◦3.3点


1楽章は広がり感があるソナタ。多くのものが詰め込まれている、がっちりとしたソナタでハイドンらしい魅力がある。2楽章が非常に短く、そのまま終わるという構成に驚く。

•ピアノソナタ第26番 イ長調 op.13-6 第41番 1773◦2.8点


1楽章は多くが詰め込まれているが、旋律の魅力をあまり感じない。2楽章もあまり旋律の魅力がない。3楽章はスケール主体であっという間に終わる。

•ピアノソナタ第27番 ト長調 op.14-1 第42番 1774-1776?◦3.0点


1楽章は音の動きを止めない勢いの良さでソナタを作っている楽しさ。2楽章と3楽章は中庸で特徴が薄い。

•ピアノソナタ第28番 変ホ長調 op.14-2 第43番◦3.0点


1楽章と2楽章は中庸であり、内容はあるが取り立てた特徴を感じない。3楽章は面白い音の動きでテキパキした雰囲気を楽しめる。

•ピアノソナタ第29番 ヘ長調 op.14-3 第44番 1774◦2.8点


1楽章はふわっとしたつかみどころの分かりにくい曲。2楽章は古典派らしい素朴さだが、構成は大きくバラエティがある。3楽章がうろうろした感じのとりとめもない音楽。

•ピアノソナタ第30番 イ長調 op.14-4 第45番 1774-1776◦3.0点


1楽章は冒頭の第一主題の軽快さが魅力だが、それだけでない多様な表情を持つ。2楽章は2声部でごくシンプルだが、陰翳のある示唆的な曲。前奏の役割。3楽章はそのまま2声部で続けて始まる。和音は登場するが、2声部でバロックみたいなのは変わらない。うまく言えないが独特の穏やかな浮遊感のようなものがる変奏曲。

•ピアノソナタ第31番 ホ長調 op.14-5 第46番◦2.5点


1楽章と2楽章は素朴で穏やかななだけであまり面白くない。3楽章は活発でシンプルにすぐ終わる。

•ピアノソナタ第32番 ロ短調 op.14-6 第47番◦3.0点


1楽章はしっかり書かれているが、学習用に感じてしまう。2楽章も似た印象。3楽章は短調の切迫感を演出する。モーツァルトの8番のソナタの3楽章を連想する。

•ピアノソナタ第33番 ニ長調 op.41-1 第34番 1778以前?◦3.0点


オーソドックスでどの楽章も悪くはない。しかし、学習用のシンプルな曲という印象である。

•ピアノソナタ第34番 ホ短調 op.42 第53番 1783/84 ◦3.3点


1楽章は悪魔的な魅力も見せている。3楽章の迫り来る哀愁も良い。モーツァルトのピアノソナタ8番を想起する。

•ピアノソナタ第35番 ハ長調 op.30-1 第48番 作曲年不明◦3.0点


ソナチネアルバムの曲。教育的な曲の印象が強い。1楽章は三連符の伴奏が珍しくて印象的。2楽章は単純でアルベリティ・バスの上のメロディーが続く。3楽章は軽快な音の動きの曲。コンパクトでよくまとまっていて、難易度が低く、どの楽章もハイドンの中では正統派なのが良いところであり、有名な理由だろう。しかし、ハイドンのソナタの中で特段この曲が優れているというわけではないと思う。自分も昔の学習時に弾いた時は好きだった曲だが、いま観賞用として聴くと代表作とは思わない。

•ピアノソナタ第36番 嬰ハ短調 op.30-2 第49番◦3.5点


1楽章はきっちりと重厚に書かれた悲しみの表現。2楽章も元気のよいのもよい。感動的なのは3楽章。芸術性の香りの高い、悲しみをこらえるような静謐さが非常に強く心を捉えて離さない。この楽章の順番がマジックを起こしている。

•ピアノソナタ第37番 ニ長調 op.30-3 第50番◦3.5点


1楽章はピアノ版の祝典曲かと思うほど威勢がよく技巧的で華やかな曲。音の洪水に圧倒される。2楽章はその反動で極めておとなしくて静謐な曲。3楽章は中庸になるわけだが、これもよくできた楽章である。刺激的な動機を使いつつ、詩的な情緒性も感じる。

•ピアノソナタ第38番 変ホ長調 op.30-4 第51番 1779-1780◦3.5点


1楽章は中庸な速度のソナタとして規模が大きくバランスが取られた立派な曲。2楽章は短調。過度でない程度に感情的なものが盛り込まれており、音の美しさを存分に聴かせる曲。3楽章はそれをうけて悟ったような雰囲気を醸し出す、余韻に浸りながら気分を上昇させていく変奏曲。

•ピアノソナタ第39番 ト長調 op.30-5 第52番◦3.0点


1楽章はコンパクトで柔らさのある曲。2楽章は穏やかな気分になる。初学者が弾くには良さそう。3楽章は素直で程よい運動性であり、やはり弾くと楽しそう。

•ピアノソナタ第40番 ト長調 op.37-1 第54番 作曲年不明◦3.3点


穏やかで愛らしさと味のある変奏曲。大きな激しさは瞬間的にしかみせないまま続くが、曲調に身を浸して楽しめる。ただ、少し長すぎるとは思う。2楽章はめまぐるしく活発な音の動きで、それを追いかけていくだけで楽しめる。


41番以降

•ピアノソナタ第41番 変ロ長調 op.37-2 第55番◦3.0点


ピアノフォルテでなくピアノ的な書法と感じる。1楽章は中庸で悪くないが特徴は少ない。2楽章は非常にめまぐるしさくて楽しい。どちらもメロディーの特徴は少ないが、ソナタを順番に聴くなかでは書法の変化の楽しみがある。

•ピアノソナタ第42番 ニ長調 op.37-3 第56番◦3.8点


1楽章は非常に雄弁であるとともに、シューベルトのような淡く儚い美しさを感じさせる名曲。主題は非常に美しい。2楽章はごく短く、締めのためだけに存在する。この構成じたいが、ハイドンが1楽章を名曲と考えていた証拠である。

•ピアノソナタ第43番 変イ長調 op.41-4 第35番◦3.0点


どの楽章も、なんというか普通で特別感がない。とても中庸な安心感はあるのだが、刺激がなさすぎて物足りない。棘のない音楽だし、ありきたりなつまらなさがあるわけではないのだが。

•ピアノソナタ第44番 ト短調 op.54-1 第32番◦3.3点


1楽章はすぐ長調になってしまう普通の曲だが、シンプルな書法に歌心が忍ばせてあり、なかなかよい。2楽章が短調の美しさを活かしていて、陰影がありながらも冷静で感情に溺れないのがよい。

•ピアノソナタ第45番 変ホ長調 op.54-2 第29番 1766◦3.3点


素朴な書法でハイドンの中ではミニマルな音という印象である。しかし3楽章は工夫が多くあって、驚きが多く感じられて楽しめる。思わず聴き入ってしまうものがある。

•ピアノソナタ第46番 変イ長調 op.54-3 第31番 作曲年不明◦3.5点


1楽章は規模が大きい。それに見合った内容があり満足できる。静かでしなやかな感受性に満ちた柔らかい曲。2楽章は非常に美しくて、強い感動に心を揺さぶられる。ここまで深い精神世界にハイドンが入り込んだかと感動する。3楽章は標準的な内容であり、快速にきっちり締める。

•ピアノソナタ第47番 ヘ長調 op.55 第57番 1788◦3.0点


1楽章は語法や同じ雰囲気が続くところなど、バッハのプレリュードみたいだと思った。2楽章はとても静かで間を使った曲。3楽章も活発だが派手なのは一部であり控えめな曲。

•ピアノソナタ第48番 ハ長調 op.89 第58番 1789◦3.0点


1楽章は幻想曲のような趣き。自由な心の動きをそのまま音楽でなぞったようだ。ハイドンにしては目新しく感じる。2楽章はほのかな高揚感のある曲であり、展開をそれなりに楽しめる。

•ピアノソナタ第49番 変ホ長調 op.66 第59番 1789-90 ◦3.5点


1楽章はハイドンらしい主題の魅力と構成のがっちりした印象で正統派の良さがある。2楽章も規模が大きく、ベートーヴェンの中期に近い充実感。音の響きかたもベートーヴェンにかなり似ている。静けさと、胸の膨らむような広がり感とパーソナルな領域に入り込む感情を両立している。3楽章も冷静で雰囲気は悪くないが、他の楽章ほどの充実感はない。もっと盛り上げてほしかった。

•ピアノソナタ第50番 ハ長調 op.79 第60番 1794-95頃◦3.3点


1楽章はピアニスティックな発想で書かれた大規模な曲。2楽章は初期ベートーヴェンみたいな曲で、若々しく新鮮で気持ちが良い 。ピアノの響きを生かしてる緩徐楽章で美しい曲。3楽章はピアノの機能を使うことに主眼がある曲で今までのソナタの最終楽章と音の使い方が違うように感じる。動機の使い方の成熟した自由さがある。

•ピアノソナタ第51番 ニ長調 op.93 第61番◦3.5点


1楽章はピアニスティックさがありつつも、曲の長さがコンパクトでありよくまとまっていて、聴きやすい。2楽章は適度に活発であり、複雑性も良い感じであり聴きやすい。この楽章もコンパクト。51番は旋律に大きな魅力があるという印象ではないが、50番と52番の大作に挟まれた小さな作品として独自の価値がある。

•ピアノソナタ第52番 変ホ長調 op.82 第62番 1794◦3.5点


ベートーベン初期やクレメンティを彷彿とさせるクラーヴィア曲のテクニックを豊富に活用し、主題の豊富さとスケールの大きさで聴かせる曲。50番以上に規模の雄大さと、楽器の進化にともなう書法の可能性の探求をさらに進めており、もはや完全にベートーヴェンの世界になっている。ピアノの機能と響きを楽しみ、その可能性を試して音楽を作る方向になって。1楽章は壮大にして雄大なソナタ。2楽章の小さな音の残響の産み出す詩的情緒の美しさは特筆もの。非常に規模が大きい。3楽章はピアニスティックで爽快さと性急さが主体だが、それ一辺倒にならないように構成されて締めくくり感を演出している。1番の驚きは、60歳を過ぎて新しい楽器の機能を理解して、それに適応した構造の語法のそれまでと別世界である音楽を書くことに成功していることである。頭が柔らかいなと思う。


声楽曲

•スコットランド民謡集◦4.0点


ホーボーケン番号で273曲。これがとにかく素晴らしい。ピアノ三重奏による伴奏による歌心あふれる曲は、癒される度合いは半端ない。素朴な味は心の故郷に帰った気分になる。これこそが歌、これぞ「The 音楽の楽しみ」とまで思ってしまう。聴ききれないほどの大量さで、まさに宝の山である。あまりに良すぎてテンションが上がってしまう。ちなみに後任のベートーヴェンの民謡集は面白くなかった。

•ウェールズ民謡集◦4.0点


少し聴いただけだが、スコットランド民謡集と同様に素晴らしい。


宗教曲

オラトリオ

•オラトリオ『トビアの帰還』 Hob.xxI-1◦4.0点


晩年の2大オラトリオとは全然違う。この曲はとても楽しめた。輝かしいコロラトゥーラと、華やかでイタリア的で舞台的なワクワク感は素晴らしい。エンターテイメント曲として楽しめる。ハイドンのオペラを見てみたくなる。次から次へと若々しくて驚くほど楽しい音楽が飛び出すから、心が躍りながら聴ける。モーツァルトのオペラが好きな人はぜひ聴いてみるべきだと思う。3時間は長いが苦痛を感じない。交響曲をたくさん聴き漁るようなものだ。レティタティーボが入っているのが息抜きとして良い。

•オラトリオ『天地創造』 Hob.xxI-2◦3.5点


ハイドン渾身の大作。ストーリー性のある音楽であり、オペラに近い雰囲気であり、開放的で明るい。個人的にはやはり、ハイドンの芸風と持ち味からすると少し外れた部分を狙った音楽になっていると思う。ハイドンの最良であるいくつかのモノを感じられない。スケール感や機転や温かさなどである。立派な大作であるものの、ヘンデルのオラトリオやモーツァルトのオペラの良さと比較すると少し落ちると思う。これは実力や労力の問題でなく、相性の問題だろう。

•オラトリオ『四季』 Hob.xxI-3◦3.8点


天地創造よりも壮大で力強くドラマティックであり、良さが分かりやすい。長丁場を面白く聴ける。舞台的ではないが描写的な場面は多い。音楽の活力が、長年で鍛えられた作曲能力をさらに一歩先に進める形で披露されている。古典派の語法で書かれたオラトリオとして、見事な出来である。天地創造より楽しい。大作でありながらどこを切ってもハイクオリティなのが凄い。

•十字架上の七つの言葉◦4.0点


オラトリオ版。各曲がずっしりと重たく、骨太でがっちりしており、壮大なスケールを持ち、メロディーが充実しており、まさに巨匠に相応しい出来となっている。遅い楽章ばかりで、変化に富んでいるとは言えないが、飽きないための工夫はされており、音楽自体の充実感とあいまって、じっくりと楽しんでは最後まで聞ける作品である。最後のコラールでまた感動。


ミサ曲

ハイドンの後期のミサ曲は気宇広大にして壮大で骨太な音楽の中に詩魂をいかんなく発揮した、すばらしい音楽である。アイデアが沢山詰め込まれていて飽きさせない。室内楽との違いは驚くべきであり、作曲家としてのスケールの大きさを感じる。同じミサ曲でも非常に人間臭くてドラマチックなモーツァルトのそれとはかなり印象が違う。前期はまたぜんぜん違うバロックに近い雰囲気だが、それはそれで非常に素晴らしい。

•ミサ曲第1番 ヘ長調 ミサ・プレヴィス Hob.XXII-1◦3.3点


各曲が短いため、コンパクトな仕上がりである。そして、素朴すぎて普通の作品とはだいぶ雰囲気が違う。自分だけかもしれないが、シンプルな音使いに前期バロックを連想するほどである。その点で独特で面白いとはおもうが、やはり完成度や質はまだ十分な高みには達していないと思う。とはいえ聞いていて楽しめないレベルでは全然なく、十分に面白い曲として聴ける。

•ミサ曲 ト長調◦3.5点


非常に短い曲の集合で書かれた曲。全部で8分しかない。とてもコンパクトで聴きやすいし、活力のある様々な曲がある。ダイジェスト版という感じで楽しく聴ける。初期らしい聖なる雰囲気の魅力を他と同様に持っている。短いだけで決して良さは同様だと思う。

•ミサ曲第2番 変ホ長調 祝福された聖処女マリアへの讃美のミサ Hob.XXII-4◦3.8点


初期のミサ曲の、素朴さと宗教的な雰囲気の魅力はここでも溢れている。クリスマスの音楽かと思うような聖なる雰囲気に満ちていて楽しい。バロックのような素朴な陰影感も楽しめるもの。3番と違い一曲が長い作品だが、聞いていて全然飽きなくて続きが楽しみでしょうがない気分で聴ける。自分で演奏したらどう感じるのか分からないが、音源を聴いている限りは後期の傑作とは違う意味で同じくらいの魅力を感じる。

•ミサ曲第3番 ハ長調 聖チェチリア・ミサ Hob.XXII-5◦4.0点


ミサ曲の中でこの曲だけ曲数が多い。これはものすごい力作であり、非常に感動的だ。交響曲の感覚では1765年はまだ初期であるが、実際には精神的に充実した一流の作曲家なのだと思い知らされる。バロックの息吹が感じられる響きや音楽の作りがまた素敵だ。バッハやヘンデルを思い起こす場面がある。ミサ曲らしい敬虔さや聖なる雰囲気と、それに加えた高揚感が楽しませる。曲のバラエティーの楽しさもあり、バッハのロ短調ミサ曲の有力な対抗馬とさえ言いたくなるほどだ。

•ミサ曲第4番 ト長調 聖ニコライ・ミサ Hob.XXII-6◦3.5点


バランスが良くてバラエティーに富んだ曲。バロックに近い素朴さが良い味になっていて、後期とは違う魅力になっている。敬虔さに感動させられる、宗教的な雰囲気が強くてミサ曲らしさがある。最後には強い感動で終わる。

•ミサ曲第5番 変ロ長調 小オルガン・ミサ Hob.XXII-7◦3.5点


瑞々しい繊細な感受性の表現が光る作品。冒頭から感傷的とも言える繊細さにおおっとなる。後期ほどの音の密度ではないにせよ、魅力でいえば同じくらいあるように感じられる。オルガンが大活躍でしんみりと敬虔な気分にさせるのが、また素敵である。最後の曲までも静謐である。

•ミサ曲第6番 ハ長調 マリアツェル・ミサ Hob.XXII-8◦3.3点


いい曲ではあるが、やはり後期の高みに登っている感がない。立派だが予想の範囲内であり、立体的な深みがない。とはいえ、対位法など聴きどころは多少はある。明るくて輝かしくて力強い曲。

•ミサ曲第7番 ハ長調 戦時のミサ Hob.XXII-9◦3.5点


後期のミサ曲の中で、充実度は変わらないが、なんとなくこの後のさらなる成長をみせる名作を予見させる作品というように聴いてしまう。どの曲も良いのだが、これは最高に良いという曲がなく、平均以上が続くように感じられる。濃厚さが少なくて、後期のミサ曲の中では少しだけあっさりしているようにも感じられる。

•ミサ曲第8番 変ロ長調 オフィダの聖ベルナルトの讃美のミサ Hob.XXII-10◦3.8点


立派で壮大な作品であるが、前半部分はやや立体的な奥深さには欠けるように思った。もちろん、このあとの驚異的な数作と比較しての話だが。そして後半はしなやかで敬虔さにあふれる音楽に変貌して感動に包んで最後を締めくくってくれる。驚くべき名作という聴後感を与えてくれる。構成が見事であり、充実感のある曲。

•ミサ曲第9番 ニ短調 ネルソン・ミサ Hob.XXII-11◦4.0点


ハイドンにしては非常に劇的であり、ロマンティックささえも感じる作品で、モーツァルトの短調の曲を連想する。それと同時にハイドンらしい格調高い立派さに溢れている。多くの楽想はいずれも素晴らしい表現の力強さに満ちており、確信に満ちた輝かしさも感じる。そのような方向性の作品としては確実にハイドンの作品の中で頭ひとつ抜けた曲だろう。とにかく充実した立派で劇的な作品。

•ミサ曲第10番 変ロ長調 テレジア・ミサ Hob.XXII-12◦4.0点


壮大に全体を包み込むような大きな包容力、気宇広大さ、敬虔さと優しさ、そういったものに心を委ね、時に圧倒される楽しさに満ちた曲。1曲目から何度も聴いているうちに、すっかり好きになってしまった。旋律も全体的に魅力的であり、多くの楽想が詰まっている。内容の充実感でいえば交響曲よりかなり上という気がする。

•ミサ曲第11番 変ロ長調 天地創造 Hob.XXII-13◦3.8点


すっきりした壮大さと、明快な明るい感じが全体の雰囲気になっている。しかし、シンプルすぎて深みや陰影がやや欠けるかなとは思う。10番ほどの名作には感じられない。しかし、5曲目と6曲目がしなやかで感傷的な感動的な曲。前半の物足りなさを吹き飛ばしてくれる。

•ミサ曲第12番 変ロ長調 ハルモニー・ミサ Hob.XXII-14◦3.3点


とても立派なのだが、全体に立派なだけという印象を持ってしまった。心に残る場面は少ない。充実感はもちろんあるが、それだけではやはり満足に限界がある。


宗教曲

•テ・デウム ハ長調 Hob.XXIIIc-2

•スターバト・マーテル◦3.5点


爽やかさと活力のある敬虔さともいうべき雰囲気が楽しめる音楽。正攻法で魅了がある古典派宗教曲の良作だと思う。音楽として楽しいから長さが全然苦にならない。シンプルではあるが、音楽の情報量は十分に多い。どの曲も音の作る雰囲気に心がウキウキしながら聴ける。宗教的すぎないが、十分に敬虔な気持ちにさせるものがあり、そのバランスが良い。

•サルヴェ・レジーナ◦3.0点


オルガンの活躍が面白い。ハイドンにしてはかなり深刻な音楽。悲しみに満ちている真剣な音楽。しかし、短いせいかもしれないが、なぜか不思議と心を強くは打たなかった。


https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%28%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%A2%E6%9B%B2%E3%80%81%E5%A3%B0%E6%A5%BD%E6%9B%B2%29

4. 中川隆[-12996] koaQ7Jey 2020年3月06日 11:43:11 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[538] 報告
ハイドン論

ハイドンの曲は非常に沢山ある。

いくら現役が長かったからとはいえ、この曲数を書いたのであるから、サクサクと新曲を量産していたわけである。

それにも関わらず、明白な駄作や手抜きが少ないのはすごい。


簡単には聞き終わることが出来ない大量の作品はさながら宝の山のようである。順番に聴いていくと、次の曲を聴くたびに新しい魅力に出会えること、曲に仕込まれた機知に富んだ仕掛けを楽しめること、これがハイドンを聞く楽しみの中の最大の点だと思っている。


単独の曲を、腰を据えて何度何度も繰り返し聞き込むための曲としては、同時代においてもモーツァルトに劣る。

ハイドンは、歌うような忘れがたいメロディーを曲の中心にもってきておらず、機知とか雰囲気的な温かみが主な魅力であるため、中毒のように同じ曲を聞き込み口ずさむようなことにはあまりならない。


しかし、沢山の曲を順番に聴くような聴き方をする場合においてハイドンはモーツァルトに負けない。

CDというフォーマットによりマーラーやブルックナーのよう長い曲を中断なしで聴けるようにしてくれた点で時代にマッチした。

ハイドンは現代のMP3プレーヤーのように超大量の音楽を好きなだけ聴けるデバイスに向いており、まさに今の時代に新しい真価を見せるようになった作曲家と思っている。


ハイドンの作品の中では、やはり交響曲が入門として最適である。管弦楽であるから華やかであり、分かりやすく聴きやすい。

聴き手を意識した華やかな曲が多い。特にザロモン交響曲はエンターテイメント性が高い。爽快で心地よくて、気持ちよく聞ける。


しかし、心の宝物になりそうな感動的な名品が数多くあるという点で、弦楽四重奏曲こそがもっとも驚異的な作品群であるだろう。

交響曲作曲家としてのハイドンと弦楽四重奏曲作家としてのハイドンは全く別の作曲家であると言っても過言ではないと思う。

私は弦楽器のみの室内楽は何重が最適であるかが作曲家によって異なると考えているが、ハイドンの場合は四重奏にピッタリはまっている。

簡潔でキレが良いハイドンの音楽は、音が厚すぎない方が良いのである。

バランスが完璧であるし、さばさばとして、はっきり言い切る音楽性も相性が抜群である。特に晩年は、練達の驚異的な作曲技術の高さをじかに感じることが出来る。

弦楽四重奏曲は一つ一つの作品のクオリティーの高さが抜群に高く、心の宝物になりうるような素敵さを備えているうえに、そのような作品が大量に書かれていている。

1曲書けただけでも凄いと思えるレベルの曲が数10曲もあるのだから、畏敬の念を感じる。

(このWikiでは、あまり高い点ばかり付けるのもいかがなものか、と考えて点数を控え目にし過ぎてしまったと反省している。いつか時間が出来たら一通り聴きなおして点数を上げるつもりである)

そして、作品を追うごとに品質が少しずつ確実に上がっていくのである。数十年かけて書いた作品群がだんだん品質が上がって最後のあたりが一番すばらしい作品になるとは、なんともすばらしい話である。

https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E4%BD%9C%E6%9B%B2%E5%AE%B6%E8%AB%96

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