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リビアの戦乱を引き起こしたのはアメリカ政府を操ってきたネオコン(シオニストの一派)
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投稿者 中川隆 日時 2020 年 1 月 27 日 14:33:38: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 日本人は「狂ったアメリカ」を知らなすぎる 投稿者 中川隆 日時 2019 年 1 月 20 日 09:50:46)

リビアの戦乱を引き起こしたのはアメリカ政府を操ってきたネオコン(シオニストの一派)


2020.01.27
2011年の軍事侵略でリビアを破壊した責任の一端は国連にある

 リビアの戦乱に終止符を打とうという動きが出ている。今年に入り、1月12日からの停戦を目指す話し合いがモスクワで実施されたのもそうした動きのひとつ。

 しかし、前途多難ではある。トリポリを拠点とするGNA(国民合意政府)のファイズ・サラージは署名したものの、ベンガジを拠点とするLNAのハリファ・ハフタルは署名せずに立ち去ってしまう。そこで1月19日にベルリンで停戦を目指す会議が開かれた。

 国連が承認しているのはGNAだが、LNAのハフタルは1960年からCIAに保護されてきた人物で、彼に従う武装グループはアメリカで軍事訓練を受けている。

 LNAはペルシャ湾岸の産油国やエジプトの支援を受け、捕虜になったLNAの空軍幹部によると、その​エジプトがF-16戦闘機でトリポリやミスラタのGNA軍を空爆している​という。その幹部によると、フランスの専門家チームが偵察、通信傍受、兵站活動を指揮しているともいう。

 それに対し、トルコがGNAを支援するため、2019年5月頃から戦闘部隊をリビアへ派遣しているとも言われている。トルコは2011年3月から始まったシリア侵略にムスリム同胞団を中心とする武装勢力を送り込んでいたのだが、その武装勢力がシリアのイドリブに取り残されて扱いに苦慮している。

 トルコ政府はシリアの戦乱を終息させるため、その武装勢力をリビアへ移動させるという見方もあるのだが、それによって戦闘が激しくなる可能性があるだろう。

 しかし、リビアで新たな戦争が始まろうとしているとは言えない。2011年2月から戦乱は続いているのだ。その戦乱を引き起こしたのはアメリカ政府を操ってきたネオコン(シオニストの一派)にほかならない。アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、イスラエル、カタール、トルコといった国々がリビアを破壊し、問題を生み出したのだ。その侵略戦争に西側の有力メディアが協力したことも忘れてはならない。

 ネオコンの戦略に基づいてジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを正規軍で先制攻撃したのが2003年3月。その攻撃によってサダム・フセイン政権は倒され、中東で地獄の門が開いた。

 イラクでの戦争によって親イスラエル派の体制を樹立することがネオコンのプランAだったが、失敗する。イランに近い政権が誕生したのだ。そこでアメリカ政府はイラクを「石器時代」にするというプランBへ切り替える。ブッシュ政権は​2007年のはじめ、スンニ派の武装勢力を使った傭兵戦へ向かって進み始めた​のだ。的として想定されたのはシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラ。

 2009年にアメリカ大統領となったバラク・オバマはブッシュ政権の方針を引き継ぎ、2010年8月にPSD-11を出してムスリム同胞団を主力とする体制転覆プロジェクトを始めた。編成された武装集団はムスリム同胞団のほかサラフィ主義者も参加することになる。

 リビアへの軍事侵攻にはフランスやイギリスも積極的に関与している。2011年3月上旬にイギリスは「外交チーム」をリビアへ送り込むが、その実態は破壊活動、秘密工作を専門とするSAS(特殊部隊)やMI6(対外情報機関)の集団。このチームはベンガジから約30キロメートルの地点で反政府軍に拘束されるが、2日後に解放され、帰国している。

 この段階で戦闘は激しくなっていたが、アル・カイダ系戦闘集団のLIFGを主力とする地上部隊だけで政府軍に勝つことは難しい。そこで2011年3月17日に国連の安全保障理事会は飛行禁止空域の導入を決議した。これによってアメリカ、イギリス、フランスをはじめとするNATO軍はシリア上空での制空権を握ることになり、空爆が始まる。

 NATO軍は8月20日に首都攻撃を開始、ムハンマド・アル・カダフィは首都トリポリから故郷シルテへ向かうのだが、そのシルテも10月20日に攻略され、カダフィは惨殺された。その数週間前からNATOはカダフィの動きを正確に把握していたと言われている。

 そして反カダフィ軍による宗教的な弾圧、虐殺、民族浄化が始まるが、その一方で戦闘員や武器/兵器がシリアへ運び込まれていたことは本ブログでも繰り返し書いてきた。

 例えば、2011年11月には元アムネスティ・インターナショナル事務総長で国連事務総長特別代表だったイアン・マーティンがアル・カイダ系戦闘員1500名をリビアからトルコへ「難民」として運んだとも報告されているほか(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Progressive Press, 2019)、12月になると​マークの消されたNATOの軍用機​がトルコの軍事基地へ武器を運んできたと報道されている。

 こうした侵略戦争による殺戮と破壊の結果、リビアは暴力に支配される破綻国家になった。教育、医療、電力料金が無料、農業は元手なしで始めることができるという国だったリビアは無残なことになっている。ヨーロッパを上回る生活水準を維持していたリビアは地上から消え、今は暴力が支配する破綻国家だ。

 リビアのカダフィ体制を破壊した大きな理由のひとつと考えられているのは、カダフィがアフリカを欧米から自立させようとしていたこと。自分たちの通貨体制を作りだし、ドルやフランによる支配から抜けだそうとしたのだ。アフリカの資源を盗むことで自分たちの社会を維持している欧米の支配層にとっては深刻な事態だ。

 ​フィナンシャル・タイムズ紙によると​、リビアの中央銀行が保有する金の量は少なくとも143.8トンあった。ウィキリークスが公表したシドニー・ブルメンソールからヒラリー・クリントンへあてた2011年4月2日付け電子メールによると、リビア政府が保有していた金の量は143トン。同量の銀も保有していたという。カダフィはこの金は利用し、ディナールというアフリカ共通の通貨を導入しようとしていたのだ
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202001260000/  

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コメント
1. 中川隆[-13758] koaQ7Jey 2020年2月15日 20:28:43 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-362] 報告
2020.02.15
大統領候補として売り出されているブータジャジはイスラエルとCIAが後ろ盾
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202002150000/


 民主党の大統領候補としてピート・ブータジャジが売り出されている。今年の1月まで世論調査でトップだったジョー・バイデンは急速に支持率を落としているが、これはウクライナの汚職事件を封印し損なったことが大きいのだろう。

 しかし、2月に入って世論調査でトップに躍り出たのはバーニー・サンダース。草の根で人気のあるサンダースは2016年の大統領選挙でも少なからぬ人が支持、ヒラリー・クリントンを内定してた民主党幹部たちに足を引っ張られた。そうした工作の一端を明らかにしたのがウィキリークだ。

 人気の点ではトップのサンダースだが、「最有力候補」とは言えない。内政でも外交でも彼の政策が支配層に嫌われているだろうからだ。彼が候補者になり、大統領に選ばれるためには政策を支配層へ近づけねばならない。

 本ブログでは繰り返し書いてきたように、アメリカでは国内の収容所化と国外での侵略が推進されている。そうした流れは1991年12月のソ連が消滅した後に加速、2001年9月に再加速された。

 リチャード・ニクソンの辞任を受け、1974年に登場したジェラルド・フォード政権で親イスラエル派のネオコンが表舞台で影響力を強めはじめ、2001年9月からは圧倒的な力を持った。今では民主党も共和党も関係なく、大多数の議員がイスラエルを盲目的に支持している。

 しかし、世界的に見るとパレスチナ人を弾圧、殺戮と破壊を繰り返すイスラエルを批判する声は高まり、イスラエルに対するBDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動が広がっている。

 そうした運動が広がることを恐れ、アメリカでは反BDSが法律化されつつある。ジョージア州では2016年に州と1000ドル相当以上の契約をしている場合、イスラエル支持を誓うことが義務づけられた。そのジョージア州の大学で講演が予定されていたジャーナリストのアビー・マーチンはイスラエルに忠誠を誓うことを拒否、その結果、講演はキャンセルされた。

 アメリカと同じアングロ・サクソン系の国であるイギリスにおいてもイスラエルを批判する声はある。大きな節目になったのは1982年のイスラエル軍によるベイルート侵攻。1万数千人の市民を虐殺、さらにファランジスト党の手を借りて無防備のサブラとシャティーラにあったパレスチナ難民のキャンプを攻めて数百人、あるいは3000人以上の難民を虐殺している。

 歴史的に親イスラエルだったイギリスの労働党もパレスチナ人支持へ転換、イスラエルの残虐行為を擁護するアメリカへの批判が高まった。

 そこでアメリカのロナルド・レーガン政権はイギリスとの結びつきを強めるため、メディア界の大物を呼び寄せて善後策を協議した。そこで組織されたのがBAP(英米後継世代プロジェクト)だ。このプロジェクトには少なからぬメディアの記者や編集者が参加する。

 そうした中、目をつけられた政治家がトニー・ブレア。1994年1月に妻とイスラエルへ招待され、3月にブレアはロンドンのイスラエル大使館で富豪のマイケル・レビーを紹介された。その後、ブレアの重要なスポンサーになるのだが、言うまでもなく真の金主はイスラエルだ。

 米英の親イスラエル人脈にとって好都合なことに、労働党の党首だったジョン・スミスが1994年5月に急死、その1カ月後に行われた投票でブレアが勝利、党首になる。

 レビーだけでなく、イスラエルとイギリスとの関係強化を目的としているという団体LFIを資金源にしていたブレアは労働組合を頼る必要がない。そこで国内政策はマーガレット・サッチャーと同じ新自由主義、国外では親イスラエル的で好戦的なものになる。これが日本でも評判になったニュー・レイバーにほかならない。労働党をブレア以前に戻したのがジェレミー・コービン。彼を有力メディアが「反ユダヤ」だと攻撃したのはそのためだ。

 アメリカでは民主党の大統領候補選びでバイデンが失速した後、親イスラエル派に支持されているのはインディアナ州サウスベンド市長だったピート・ブータジャジである。

 この人物の有力スポンサーと言われているのがヘッジ・ファンドを経営するセス・クラーマン。この人物は熱烈なイスラエル支持者で、違法入植にも賛成している。今回の大統領選挙でこの人物はブータジャジのほか上院議員のアミー・クロウバシャーなどへ寄付しているようだ。

 また、昨年からデイビッド・コーエン元副長官やCIAの中東工作の責任者だったジョン・ブレアなど少なからぬCIAの元スタッフがブータジャジを支援していることが話題になっている。

 ブータジャジの支持者の中にはベネズエラの体制転覆を目論んでいる人もいる。そのひとりがドナルド・トランプ政権で国家安全保障会議の南アメリカ担当者だったフェルナンド・クッツ。CIAと関係が深くネオコンが拠点のひとつにしているCSISの秘密会議に出席したことでも知られている。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202002150000/

2. 中川隆[-7251] koaQ7Jey 2021年2月19日 19:53:39 : ggtj42tZ3E : MkF0VFlkVHpkbEE=[40] 報告

2021.02.19
米軍を中心とする勢力がシリアやイラクで軍事力を増強、緊張が高まっている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202102190001/

 アメリカ主導軍がシリアの反政府勢力に対する支援を強化している。2月18日にも60台のトラックを連ね、イラクのクルド支配地域からシリア北東部のハサカ周辺へ軍事物資や装甲車両を運び込む光景を撮影した映像がインターネット上で公開されている。イラク政府はアメリカなどに対して撤兵するように求めてきたが、占領軍は無視している。それどころかNATO軍はイラクにいる部隊の規模を500名から4000名へ増やすのだという。

 イラクのクルドは1960年代後半からイスラエルの情報機関の影響下にある。クルドを率いていたムスタファ・バルザニはイスラエルの情報機関モサドのオフィサーだったと言われ、その息子であるマスード・バルザニも同じだと見られている。アメリカはイラク北部にクルドの国を建設しようと目論んだこともあるが、クルド内部の反バルザニ派がこの計画に反対して挫折してしまった。

 アメリカ軍がイギリス軍などを引き連れてイラクを先制攻撃したのは2003年3月のこと。スンニ派を中心とするサダム・フセイン政権を倒して親イスラエル派の体制を樹立する予定だったが、イラク国民の多数を占めるシーア派が同じシーア派のイランに親近感を持つことから親イラン派の政権が誕生してしまった。

 こうした状況を打開するため、イギリスの首相だったトニー・ブレアはブッシュ米大統領に対し、非宗教政権を倒してムスリム同胞団と入れ替えるように求めたという。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Pregressivepress, 2019)

 ​シーモア・ハーシュが2007年3月にニューヨーカー誌で書いた記事​によると、ブッシュ政権はイスラエルやサウジアラビアと手を組み、シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを叩き潰そうと考えた。

 その記事の中で引用されたジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のバリ・ナスルの説明によると、資金力のあるサウジアラビアは「ムスリム同胞団やサラフィ主義者と深い関係」があり、そうしたイスラム過激派を動員することができる。ただ、その勢力は「最悪のイスラム過激派」であり、彼らが入っている箱を開けたなら、2度と箱の中へ戻すことはできないとも警告していた。

 2009年1月に大統領はバラク・オバマに交代、2010年8月にはムスリム同胞団を使った体制転覆プラン、PSD-11を承認している。ブラア英首相の意向に沿う計画だ。そして「アラブの春」が始まり、リビアやシリアでは2011年春から戦争になる。これを西側では「内戦」と表現しているが、侵略戦争以外の何ものでもない。

 ムスリム同胞団は歴史的にイギリスと関係が深いが、アメリカの国務長官だったヒラリー・クリントンの側近中の側近と言われたヒューマ・アベディンもムスリム同胞団と結びついている。母親のサレハはムスリム同胞団の女性部門を指導している人物だ。

 2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、カダフィ自身は惨殺された。その直後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジの裁判所にアル・カイダの旗が掲げられている。(​ココ​や​ココ​)そうしたこともあり、反カダフィ軍の主力だったLIFGはアル・カイダ系であり、NATO軍がそのLIFGと連携していたことが明確になった。

 アメリカ政府が戦闘員や武器/兵器をシリアへ集中させていた2012年5月にロシア大統領がドミトリー・メドベージェフからウラジミル・プーチンへ交代して状況が大きく変化する。リビアのカダフィ体制が倒されようとしている時に手を拱いているばかりだったメドベージェフ大統領とは違い、プーチンはアメリカの前に立ちはだかった。しかもシリア政府軍はリビア軍より強い。

 そこで​オバマ政権は反シリア政府軍への支援を強化するが、そうした行為は危険だと警告する報告書が2012年8月にホワイトハウスへ提出​されている。アメリカ軍の情報機関DIAが出したのだが、その中で反シリア政府軍の主力はオバマ大統領が言うような「穏健派」ではなく、サラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘されている。「過激派」だということだ。

 それだけでなく、オバマ政権の政策はシリア東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告していた。これは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になり、残虐さを演出してアメリカ軍、あるいはNATO軍の介入を誘う。この時期、ダーイッシュの戦力は急拡大しているのだが、その一因はサダム・フセイン時代のイラク軍将兵が合流したからだとも言われている。

 そのダーイッシュやアル・カイダ系武装集団に大きなダメージを与えて支配地域を急速に縮小させたのが2015年9月にシリア政府の要請で介入したロシア軍。シリア政府に無断で軍隊をシリア領へ入れているアメリカ、シリア、フランスなどとは違う。

 この過程でアメリカの軍や情報機関は戦闘集団の幹部を救出、末端の戦闘員が残されることになった。イドリブの戦闘集団はトルコが後ろ盾になっている。ジハード傭兵が敗走する中、アメリカ政府が新たな手先として選んだのがクルドである。

 戦闘車両などが運び込まれている先の​ハサカではアメリカ軍が新たな軍事基地を建設​、戦闘員や物資を輸送するために滑走路も作られ、油田地帯に近いデリゾールでもアメリカ軍によって新しい航空施設を建設されている。シリアに対するイスラエルによる攻撃も激しくなっている。

 そうした攻勢に対抗して​ロシア軍は地中海に近いラタキアにあるロシア軍のフメイミム空軍基地の滑走路を拡張し、戦略爆撃機が離着陸できるようにした​。ジョー・バイデン政権は支配体制を「リセット」するため、軍事的な圧力を世界規模で強めている。中東は特に危険な状態だと言えるだろう。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202102190001/

3. 中川隆[-4611] koaQ7Jey 2021年5月25日 17:18:52 : GdFTMoi0rM : RGpDLnJkaGloeDY=[19] 報告

『リビア戦争 カダフィ殺害誌』 マクシミリアン・フォーテ 著 山田文・訳
書評・テレビ評2021年5月23日
https://www.chosyu-journal.jp/review/21030

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AA%E3%83%93%E3%82%A2%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%82%AB%E3%83%80%E3%83%95%E3%82%A3%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E8%AA%8C-%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%86/dp/4909828001


 リビア革命の指導者カダフィが2011年、「アラブの春」による内乱とNATO軍の介入によって殺害された。欧米メディアは「カダフィの独裁体制」が崩壊し、自由と民主主義による新しい国づくりが始まると喧伝した。しかしその後10年を経た今、かつて繁栄を誇り汎アフリカ主義を主導していたリビアは、内戦が続き荒廃し、政治・経済は混迷を極めている。

 当時、大量破壊兵器の開発計画を放棄し欧米と和解していると見られたカダフィを、欧米諸国がなぜ殺害する必要があったのか。著者(カナダ、コンコルディア大学社会・人類学部教授)は、この戦争にかかわった外交官、軍人、政治家、ジャーナリスト、人権活動家らが書き残した膨大な文書から、マスコミが伝えなかった現実を再現している。そして、「人道的介入」を掲げた欧米の軍事介入の実態と目的を、その背景とともに浮かび上がらせている。

 欧米のマスコミはNATO軍の爆撃を「人命救助」「市民保護」のためだとして、それによって市民が保護されジェノサイドが防がれたと大きく宣伝した。しかし、実際にやられたことは、その真逆のことであった。

 そのことは、一度攻撃を受けた死傷者を救助する人々や葬儀の参列者までも再度襲撃する「ダブルタッピング」と呼ばれる作戦がとられたことにはっきり示されている。著者は「もし彼らがこの軍事介入を“人道的”だと考えるのであれば、彼らはもっとひどいこともできるということなのか」と、投げかけている。

 こうした蛮行が反政府派のリビア評議会と結託してやられた。著者はこのことも含めて、それが人権擁護のためではなくカダフィ体制を転覆するためだけにやられたことを明らかにしている。その目的達成を容易にするうえで、マスコミとともにアムネスティ・インターナショナルなど人権擁護団体、左派が果たした役割が大きかった。

 現地の人権NGOを媒介に反政府勢力と結びつき、欧米に対抗的な体制を転覆させ、外資導入に道を開く。これは近年アメリカの覇権拡大の常套手段となっている。本書から、人権擁護団体が「人道主義」「民主主義」を大義名分に事実の誇張やあからさまなウソをばらまき、黒人リビア人への人種差別的な恐怖心を煽ってNATOの軍事介入を擁護し、その残虐行為や民族浄化を正当化するうえで一役買ったことがわかる。

 これらNGOに資金を提供し支援しているのが、全米民主主義基金(NED)など政府資金で運営される組織や、アメリカの二大政党と結びついた全米民主党国際研究所(NDI)や共和党国際研究所(IRI)、さらにアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL・CIO)などの労働組合団体だ。一部NGOと米国務省のあいだの回転ドア、政官民エリート層のひんぱんな人事交流についてもふれている。

 NATOの軍事介入は民衆反乱の方向をコントロールしようとする試みでもあったという。NDIはリビア国内で反政府関係者、人権派弁護士・学者、改革派活動家に直接つながると同時に、国外でさまざまなプログラムを立ち上げ、リビアの活動家に「新しいメディアテクノロジー、政治提言、女性の政治参加」についての研修を受けさせていた。そこでは、アルジェリア、エジプト、モロッコ、チュニジアの活動家と交流させ、たがいに連携・協力できるような手はずも整えていたことも明らかになっている。

 著者は、リビア戦争はオバマ以降のアメリカの戦争の手法であることを、ウィキリークスが公開したアメリカ大使館の外交公電などを通して浮き彫りにしている。オバマはイラクでの失敗から、敵地に上陸占領せずに転覆する作戦をとり、「戦闘にたずさわることのできる年齢の男性はすべて戦闘員」だと再定義することで、無差別の空爆を正当化した。

 著者はそこから、リビア戦争が世界的に衰退するアメリカによる「軍事的人道主義」の台頭を象徴するものだと指摘している。またそのおもな目的が「人命救助」「体制転換」それ自体にあったのではなく、カダフィやマンデラらによるアフリカの自立性を高める動きやその協力体制が築かれるなかで、それを阻みアフリカ大陸における多国籍企業の市場を開くための布石であったと結論づけている。

 アメリカの戦争の旗印である「自由、民主、人権」が単なるプロパガンダではなく、具体的な行動をともなった戦略であることについて、具体的論理的に展開する一冊である。  

 (感覚社発行、B6判・528ページ、4300円+税)

https://www.chosyu-journal.jp/review/21030

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