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ベルクのヴァイオリン協奏曲は何度聴いても理解不能なんだけど、本当にみんな感動してるの?(強い疑い)
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/710.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 11 月 11 日 19:09:41: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: ベートーベン ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調 作品31−3 _ 何故この曲だけこんなに人気が有るのか? 投稿者 中川隆 日時 2019 年 10 月 19 日 08:01:40)


ベルクのヴァイオリン協奏曲は何度聴いても理解不能なんだけど、本当にみんな感動してるの?(強い疑い)

Berg Violin Concerto To the Memory of an Angel Kyung Wha Chung Solti - YouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=GDlOGHPR9R8
https://www.youtube.com/watch?v=vVD9SXZLml0
https://www.youtube.com/watch?v=2hdJ4ZTJKoU
https://www.youtube.com/watch?v=sPdtr_zvj1U

Kyung Wha Chung
Sir Georg Solti Chicago Symphony Orchestra
September 3, 1984
_____


ベルク: ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」 クレーメル 1984 - YouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=evW1Cmta9RA

ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
サー・コリン・デイヴィス指揮 バイエルン放送交響楽団
____


Berg Violin Concerto (1936) Krasner-Webern - YouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=yjVTClpoDk4

Louis Krasner, violin Anton Webern, conductor BBC Symphony Orchestra
Recorded live May 1, 1936 at a private concert.


▲△▽▼

吉田秀和 著「私の好きな曲(新潮社)」より
アルバン・ベルク:ヴァイオリン協奏曲
 だが,ここでは,そういうことも一切,考慮からはずしてヴァイオリン協奏曲をあげることにする。それは,私が,この曲の中に秘められた慰めの限りのない優しさと,終曲,特にコーダにおけるヴァイオリン独奏の,まるで澄みわたる青空のはるか遠くまでのびて,消えてゆくような孤線の筆紙につくしがたい美しさに,ほかのどこにもない「鎮魂の響き」をきくからである。
https://blogs.yahoo.co.jp/pocg1005jp/31279956.html


▲△▽▼

アルバン・ベルク「或る天使の思い出に」−−この世で一番美しい音楽   西岡昌紀
http://www.asyura2.com/09/bun2/msg/513.html

投稿者 西岡昌紀 日時 2011 年 7 月 19 日 21:34:12: of0poCGGoydL.


1978年の事と記憶します。


NHK(教育テレビ)で或る音楽会の演奏が放送されて居ました。


NHK交響楽団の演奏会で、指揮者が誰だったかは忘れてしまひましたが、或るヴァイオリン協奏曲の演奏がそのテレビ番組で放送されたのを、もしかすると、途中からだったかも知れませんが、私は、見て居ました。


その曲の最後の部分で、NHKのテレビカメラが、そのヴァイオリニストの表情と姿を映し出すのを見ながら、何と深い表情だろう、と思った事が今も忘れられません。


それは、本当に深い表情でした。そして、その深い表情と共に、そのヴァイオリニストが奏でるその曲の終はりの箇所に、私は、本当に、打ちのめされる感動を与えられたのでした。


その曲を聴いたのは、それが最初ではなかったと記憶します。しかし、とにかく、その静かな、子守唄が消えて行く様な、そのヴァイオリン協奏曲の終はりの部分に私は打たれ、今も良く、その映像を思ひ出します。


そのヴァイオリニストの名は、ギドン・クレーメル。そして、そのヴァイオリン協奏曲は、アルバン・ベルク(Alban Berg, 1885〜1935)のヴァイオリン協奏曲でした。

* * * * * * * * *

昨日(7月18日(月・祝))、私は、東京のサントリー・ホールで開かれた、東京都交響楽団の演奏会で、このベルクのヴァイオリン協奏曲を聴きました。この曲を演奏会で聴くのは久し振りでした。


アラン・ギルバートが指揮する東京都交響楽団と、このヴァイオリン協奏曲を共演したおは、ドイツのヴァイオリニスト、ペーター・ツィマーマン(Peter Zimmermann)でした。初めて聴くヴァイオリニストでしたが、素晴らしい演奏でした。


大分以前から、私は、ベルクのこの曲は、この世で一番美しい音楽だと思ふ様に成りました。昨日も、その素晴らしい演奏を聴きながら、その思ひを深くしましたが、この曲には、或る悲劇的な言はれが有ります。


それは、次の様な逸話です。(昨日の演奏会でのパンフレットより引用)

---------------------------------------------


「私がいなくなっても、きっと大丈夫、お母さんは、なんだって平気で乗り越える人じゃない」そう言って、18歳のその少女は息を引き取った。母の心の痛みは癒えることがなかったという。
 少女の名は、マノン・クロービウス(1916−35)。作曲家グスタフ・マーラーの妻アルマが、マーラーの没後に結婚した建築家クロービウスとの間にもうけた子だ。小児麻痺にかかり、1年以上も苦しみぬいた末の死だった。その「天使のように美しい」(指揮者ブルーノ・ワルター談)少女を、アルバン・ベルク(1885〜1935)もたいそう愛し、1935年4月訃報に接すると、創作中のヴァイオリン協奏曲をマノンに捧げることに決めた。
 そしてそれは、夏には完成する。だが、衝撃的なことに、同年12月24日、ベルク自身も逝ってしまう。享年50。天使のためのレクイエムは、自らのためのそれともなってしまった・・・。
 そもそも、この曲に着手したのは、ある「外注」がきっかけだった。注文主は、アメリカのヴァイオリニスト、ルイス・クラスナー(1903〜95)。折しも、ナチスの台頭により、急進的な作風のベルクへの風当たりが強まり始めていた頃のことだ。報酬も悪くない。ならばということで、オペラ≪ルル≫の創作を中断し、これを書いたのだった。
 最初期のスケッチから、ベルクの反ナショナリズムのメッセージを読み取る研究者もいる。また、ベルクが愛した別の女性たちへの暗示が作品にひそんでいるとの見方もある。

(後略)


松木達也「曲目解説」(都響スペシャル(2011年7月17日・18日)
パンフレットより)


---------------------------------------------

ベルクがこの曲が書いた経緯には、この様な悲劇が有りました。しかし、ベルクが、マノンと言ふ少女の死を悼んで、この曲を作曲したのは事実としても、私は、それ以外に、何かが有ったのではないか?と思はずに居られないのです。上に引用した松木達也氏の解説でも少しだけ触れられて居る様に、私は、この曲には、何か、その少女の死を悼む感情以上の何かが隠されて居る様な気がして成らないのです。


それは、もちろん、ベルク以外の誰にも分りません。しかし、私は、いつの頃からか、この曲には、ベルクが、誰にも語れなかった自身の秘密の記憶が隠されて居ると思ふ様に成りました。そして、この曲を聴く度に、その私の確信は、深まるのです。


二十代の頃から、この曲を繰り返し聴いて来ましたが、その秘密は、永遠の謎です。しかし、昨日は、この曲の、美しい、静かな、子守唄が消えて行く様な、あの旋律を聴いて居て、この曲が、大震災で命を落とした人々の為に書かれた曲である様な錯覚を覚えました。

平成23年7月19日(火)   西岡昌紀


-------------------------------------------------
(以下は、5年前の8月6日に、私がこの曲について書いた文章です。)
            

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF-%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2-%E5%AE%A4%E5%86%85%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2-%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E7%8E%B2%E5%AD%90/dp/B00005HHMZ/ref=sr_1_2?s=music&ie=UTF8&qid=

ベルクのヴァイオリン協奏曲にこめられた感情と追憶, 2006/8/6
By 西岡昌紀


レビュー対象商品: ベルク:ヴァイオリン協奏曲&室内協奏曲 (CD)


 ベルクのヴァイオリン協奏曲は、この世で一番美しい音楽ではないだろうか?この曲には、『或る天使の思ひ出に』と言ふ副題が付けられて居る。その「天使」とは、ベルクが親しかったアルマ・マーラーの娘で、1935年に交通事故により、19歳で他界したマノンと言ふ少女を意味して居る。ベルクは、親しい友人の娘が、突然この世を去った事に心を痛め、この副題を付けた。しかし、私には、この副題には、同時に別の意味が含まれて居たのではないか?と言ふ気がしてならない。−−それは、私だけの思ひではない様で、昔の恋人への思ひがこめられて居るのではないか?等、様々な考察が為されて居る様である。−−だが、真実は、ベルクにしか分からない。音楽は、作曲家が、自分の心の秘密を隠す場所なのだから。(私は、ベルクは、売春婦に恋をした事が有るのではないか?と想像する事が有る。もちろん、全くの想像である。しかし、この曲には、そんな人に語れぬ深い感情と追憶がこめられて居る気がするのである。)
 私が、今までに聴いたこの曲のCDで一番好きなのは、このCDである。もう一つ、パールマンと小澤征爾によるCDも素晴らしい。しかし、パールマンの音は明るい。渡辺玲子さんの音色には、明るさを抑えた深さが有る。−−その明るさを抑えた音色が、この曲の孤独と憂愁を、どれだけ深く、聴く者の心に伝えてくれる事か。−−作曲されて70年以上が経ったが、この曲の美しさは、なお十分知られて居ない。この曲の真価が理解され、更に多くの人々に愛される為に、私は、このCDを推薦する。

(西岡昌紀・内科医/広島に原爆が投下されて61年目の日に)
http://www.asyura2.com/09/bun2/msg/513.html

▲△▽▼

149名無しの笛の踊り2016/11/19(土) 09:46:24.34ID:tmdKQYR/

ベルク、ヴェーベルン、シェーンベルクなどを知ったかぶりして能書き言う奴はナルシストばかり
本当は何も分かっちゃいない
どうだ、オレは凄いだろう、と見栄をはりたいだけの馬鹿


150名無しの笛の踊り2016/11/19(土) 09:55:43.30ID:g2vs4Zcn

その三者って1世紀近く前の人間だぞ。
見栄に使われるというより、クラヲタなら聴いていなければ恥ずかしい部類。

151名無しの笛の踊り2016/11/19(土) 16:37:06.55ID:bfPFd+1l

他人にわかって自分にわからないものがある
という事実を受け入れられない人なんでしょうw

152名無しの笛の踊り2016/11/19(土) 20:38:01.17ID:mivALqOd

最初は俺って凄いだろう、かも知れないけど、
新ウィーン楽派の3人はクラオタの間でさえかなり受けが悪いので
そんな意識もやがて消えて無くなる

ひっそり、大切に聴いてる人が多いと思う


385名無しの笛の踊り2018/10/23(火) 01:05:35.03ID:uhaZ+Y8Y>>386

ベルクのピアノソナタをグレン・グールドが弾いてる動画があるけどこんなわけのわからない曲を思い入れたっぷりに弾いちゃってばっかじゃねーのって思う


386名無しの笛の踊り2018/10/23(火) 07:30:57.96ID:hkABoMsq
>>385
お引き取りください

387名無しの笛の踊り2018/10/23(火) 10:36:20.52ID:wCOf7txz>>390

ベルクほど理路整然と書かれていて分かりやすい作曲家もそういないんだけどなあ
思い込みで聴くと難しく聴こえるんだねえ

388名無しの笛の踊り2018/10/23(火) 11:13:02.88ID:KpRHwS9n

耳が出来てないと鳴ってても聞こえないものってあるんだよな
俺もそれで悩むがw


389名無しの笛の踊り2018/10/23(火) 11:15:25.08ID:MaaQQ7F9

わけのわからない = 難しい という自分に都合のいい解釈をするわかりやすい人だねー


391名無しの笛の踊り2018/10/23(火) 12:27:05.62ID:wCOf7txz>>393

クラシックを聴くのに、たかだか20世紀前半の曲も理解できないとか、そんな人はハイカルに親しむ資格すらないと思う。
ガイジに理解しろと言うのも酷だけど。


393名無しの笛の踊り2018/10/23(火) 12:50:14.45ID:hkABoMsq
>>391
でもさ、オーケストラの定期公演なんかでシェーンベルクの変奏曲なんて入ってると、
露骨に入りが悪かったりするからね
ただ、ベルクのピアノソナタはぎりぎり調性音楽だけどね
あの曲の楽譜、ちゃんとロ短調でシャープ2つの調号書いてあるのに、
何故かほとんどのFisとCisの音の前に律義に個別にシャープつけてるという訳のわからんことになってる


404名無しの笛の踊り2018/12/05(水) 16:49:44.51ID:R3dsP+uz>>405

単なる自分の好き嫌いをドヤ顔で自慢するような奴は現代音楽は聞かないほうがいい
他人の迷惑になるだけだ


405名無しの笛の踊り2018/12/05(水) 17:39:30.65ID:iqR7FbNW
>>404
自慢?
ところでベルクのヴァイオリン協奏曲は泣けるね
ヴォツェックあたりは正直何が何やらよく見えないところもあるけど、
このコンチェルトはそんなことはなくて全てが胸に染みわたる


422名無しの笛の踊り2019/01/09(水) 08:02:59.22ID:851hU/nI

抒情組曲くらいしか知らん

423名無しの笛の踊り2019/01/09(水) 13:12:31.87ID:eCqBgxNS
>>422
だまされたと思ってバイオリン協奏曲聴いてみてくれ
泣けるよ

288名無しの笛の踊り2017/12/28(木) 22:32:15.69ID:ZPtfvC05>>289>>291

ヴァイオリン協奏曲は名曲だし
ベルクはいいよ
録音で良いから聴いてもらいたい


289名無しの笛の踊り2017/12/29(金) 08:33:17.69ID:tHdDg4+P
>>288
素直に同意
最初は誰の録音でもいいと思う
名曲中の名曲というか、人生に影響を及ぼす力さえ感じるよ

424名無しの笛の踊り2019/01/18(金) 20:22:06.58ID:7YAZn2ee

ヴァイオリン協奏曲のコラールは心に沁みる
あのような曲を書いてもらえたアルマの娘は幸せ者

シェーンベルクとベルクはモダンなのに、ロマン派の甘くて豊満な残り香がただようからすこ
これがヴェーベルン(現地ではヴェーバーンというらしいけれど)になると(初期作品を除いて)辛口になる


434名無しの笛の踊り2019/04/01(月) 20:29:56.73ID:2vd+rhVd>>443

ピアノソナタの弦楽六重奏曲ヴァージョンくるおしいほどすこ
むせかえるような花の薫りさえ感じられますよ〜感じる感じる

Alban Berg - Piano Sonata in B minor Op. 1 (Transcription for String Sextet by Heime Müller) - YouTube 動画
https://www.youtube.com/watch?v=17uPhYnDG38

Alban Berg (1885-1935) Piano Sonata in B minor Op. 1 (1907)
Transcription for String Sextet by Heime Müller (2003)
Artemis Quartet
Members of the Alban Berg Quartet
Virginclassics, 2006


33名無しの笛の踊り2016/09/09(金) 20:45:23.17ID:VcjZ3o9y

不思議なのは、ベルクの曲は何故あんなに官能的なんだろう?


34名無しの笛の踊り2016/09/09(金) 20:47:38.20ID:VcjZ3o9y

官能的で、それでいて貴族的で上品


36名無しの笛の踊り2016/09/10(土) 02:38:06.67ID:M2Rx0rWC

息の長い旋律を感じる

436名無しの笛の踊り2019/04/04(木) 20:22:22.79ID:eXSc9qQz

作品1からいいのがいいよな

437名無しの笛の踊り2019/04/04(木) 22:29:10.73ID:odxbzyO9

初期の七つの歌
作品1の前から既に名曲

438名無しの笛の踊り2019/05/09(木) 21:44:53.99ID:TW/+qwKk

青年時代に作曲した歌曲もいい。


440名無しの笛の踊り2019/05/13(月) 20:39:06.98ID:+EWEiiWe

この人の自筆譜を見ると、JSバッハやショパンのそれのように美しくて感動する


458名無しの笛の踊り2019/11/09(土) 18:19:40.44ID:cfEd57pT

鰤から歌曲全集が出るよ!

Berg Complete Songs - Brilliant Classics
https://www.brilliantclassics.com/articles/b/berg-complete-songs/


459名無しの笛の踊り2019/11/09(土) 21:32:45.19ID:Q0Zha4cp

少年時代の歌曲が75曲もあったのか
これがほとんどを占めているのも凄いな

40名無しの笛の踊り2016/09/10(土) 08:48:36.71ID:u7btCDEE

逆説的になるが、ベルクの声楽曲は清楚で澄みきった声で歌ってほしい
声自体が華やかで色っぽすぎると、あまりにも性的になってしまうので

41名無しの笛の踊り2016/09/10(土) 08:50:27.40ID:u7btCDEE

前衛音楽そのものにそういう傾向があるかもしれない

42名無しの笛の踊り2016/09/10(土) 08:51:35.36ID:u7btCDEE

初期作品は色っぽく歌っても映えるけれど


94名無しの笛の踊り2016/10/20(木) 23:29:46.28ID:Ii+ng3KF>>95

割と武満とか近いと思うんだけど、いかがでしょう?


95名無しの笛の踊り2016/10/20(木) 23:38:39.33ID:rMi4sK6g
>>94
色気が全然違うと思うんだけど
タケミツにもむせ返るような色気が求められる曲もあるのかしら


96名無しの笛の踊り2016/10/21(金) 02:17:34.91ID:eHNhS3U3

色気というか影響関係は強いから名前は挙がるよね

97名無しの笛の踊り2016/10/21(金) 02:52:04.34ID:4MVqNgA8
>>95
武満の最初期、メシアンを知る前の作品と言われる「2つのレント」の1番目の曲は特にベルク風だと言われる
でも、あまりそうは聞こえないんだけどな

あと、個人的な感想だけど、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲なんかはバルトークに加えベルクの影響もあると思う
でもこちらもあまり色気は感じないかな
むしろ水野修孝なんて人とかかな、近いのは


341名無しの笛の踊り2018/05/12(土) 21:04:22.07ID:+qHPn9VF>>342

クラシックの迷宮の武満徹カンタータディアローグ回でルルっぽいモチーフが出てきてギョッとした

342名無しの笛の踊り2018/05/13(日) 00:01:59.38ID:aOE7aQXV
>>341
初期の武満はメシアンと並んでベルクからの影響も大きかったというね


343名無しの笛の踊り2018/05/21(月) 21:45:07.49ID:hzdoPuNZ>>345>>349

武満徹ってどの曲もみんな同じじゃん
「弦楽のためのレクイエム」一曲あれば他は聞かなくていいよな

157名無しの笛の踊り2016/11/20(日) 07:22:50.02ID:i+BT/273

一般的にはベルクが一番甘やかで抒情的であるとみなされているようだけれど、
この人の音楽、本質的にはたいへんドライで辛口だと思う

※嫌いと言っているわけではありません、寧ろ一番好きです


302名無しの笛の踊り2018/02/27(火) 02:46:57.04ID:QY54+8hW

現代音楽でまともに聞けるのはベルクだけだな
中期以降のシェーンベルクとかウェーベルンとかましてやシュトックハウゼンなんて到底音楽とは呼べない代物だ


325名無しの笛の踊り2018/04/19(木) 10:18:40.30ID:sL5OCvQc

雰囲気は嫌いじゃないけどなんとなく少し頭おかしいかなぁって感じ
まぁ現代曲の人だしね


326名無しの笛の踊り2018/04/19(木) 10:38:26.76ID:hcNC+V1b

19世紀生まれの人の曲が今どき現代曲というのはちょっとなあ


327名無しの笛の踊り2018/04/19(木) 10:42:21.87ID:sL5OCvQc

んー、かといって後期ロマン派でもないしのぉ
雰囲気的に現代曲といっていいんじゃまいかねぇ


328名無しの笛の踊り2018/04/19(木) 10:51:30.51ID:hcNC+V1b
>>327
後期ロマン派の次はもう現代なの?
ちゃんと新ウィーン楽派とか、無調音楽だとか、表現主義だとか、名前があるじゃん
それと、ベルクは非常にロマン派につながる音楽書いた人だと思う

329名無しの笛の踊り2018/04/19(木) 11:19:41.26ID:Whabhyte

そりゃまあ、19××年からは現代音楽です!みたいなわけにはいかないからな。
1920年頃から後のストラヴィンスキーやヒンデミットなどに比べれば、ベルクに限らず
シェーンベルクもヴェーベルンもロマン派とのつながりは強い。

330名無しの笛の踊り2018/04/19(木) 12:16:24.98ID:NJDxrso1

やっぱり未だに12音イコール現代みたいな発想はあるんじゃないの
結局人間の情感に訴えてくるジャンルではないし


332名無しの笛の踊り2018/04/21(土) 00:21:17.11ID:ZJiaT3ij

口ずさめないもんな
当時は100年後にはポピュラー音楽になってるとすら言われていたそうだが

333名無しの笛の踊り2018/04/21(土) 08:45:50.11ID:/Kblx6cf

ベルクは現代曲だよな
バナナはおやつに入らなくてもベルクは現代曲だよ


22名無しの笛の踊り2016/09/08(木) 22:58:33.44ID:by8+iGvp

ベルク派
シェーンベルク派
ウェーベルン派(いない?)


8名無しの笛の踊り2016/09/07(水) 17:48:29.29ID:ryaiVUAP

よくわかる日本の新ウィーン楽派受容

・基本的にシェーンベルク派とベルク派で分かれる
・だがウェーベルンが一番という人はいない
・にも拘わらずマイノリティーを気取って、よく理解もしてないのに
ウェーベルンを推す一派が存在する

9名無しの笛の踊り2016/09/07(水) 19:44:25.04ID:XJ1sX+S5

声楽で素晴らしい業績を残したのは、ベルク
シェーンベルクとヴェーベルンの声楽曲はいまいち


12名無しの笛の踊り2016/09/07(水) 19:48:15.99ID:ryaiVUAP

いや声楽曲は皆素晴らしいよ
ルルもモーセとアロンも第二カンタータOp.31も
まあ強いて言えばモーセとアロンが最強だな


320名無しの笛の踊り2018/04/12(木) 20:27:18.74ID:n5kvPqo4

シェーンベルクとベルクは単独スレが何度もたっているのに、
ヴェーベルンは彼ひとりではスレが立たないかなしみ


321名無しの笛の踊り2018/04/12(木) 20:46:36.68ID:ojfxE1cG

シェーンベルクスレは落ちたままじゃね?
ヴェーベルンスレはゲソ板にはまだあるが過疎ってるな


60名無しの笛の踊り2016/09/13(火) 19:55:59.95ID:W6aJFRfC>>62>>67

俺の感じではベルク派とヴェーベルン派は結構居るが
シェーンベルク派は少ない
俺は3人とも好きだけどな


62名無しの笛の踊り2016/09/13(火) 20:38:10.63ID:glXDx3OS
>>60
シェーンベルクは12音になる前、更に言えば調性で書いてた頃のあの素晴らしさがあるので、
どうも12音の作曲家としてはいまいちに感じるんだよね
ただ、例外はワルシャワの生き残り
あれは本当に凄い作品だと思う

>>61
ピアノソナタこそベルクの原点
あのうねうねと調性の煮え切らない作品なのににシャープを2つ調号に設定し、
なおかつほとんどのfis,cis音にわざわざ音符の前に個々にシャープをつけるというまどろっこしい書き方してる
聞きやすい作品じゃないけど、やみつきになる要素があるなあ


64名無しの笛の踊り2016/09/14(水) 12:17:08.46ID:KEqWudeE

ベルクもウェーベルンも技術の限りを尽くして
凄く繊細な世界を描いてくれるから好きだ

65名無しの笛の踊り2016/09/14(水) 12:33:40.98ID:pFmPypmZ
>>57
ベルクは駄作が一曲もないのが凄いよね
モーツァルトやベートーヴェンだってゴミみたいなつまらん曲もあるのに
もっともモーツァルトもベルク位推敲して書いてたら全部が傑作揃いだっただろうけどw


66名無しの笛の踊り2016/09/14(水) 13:20:15.81ID:eqBTTry3
>>65
このレベルまで磨き抜いてから作品を出す人って、ベルクとウェーベルンの他には、
ショパン、ラヴェルくらいかな。

67名無しの笛の踊り2016/09/14(水) 15:15:09.19ID:La8hCeKa
>>60
浄夜もピエロも良いと思うが、それが20年代以後の作品を否定する理由にはならんな
まあシェーンベルクの音楽は愛想が悪いのはたしかだが

とはいえベルクも、3つの管弦楽曲の第3曲とか室内協奏曲のフィナーレとかは
一向にわかった気にならない

394名無しの笛の踊り2018/11/12(月) 05:05:30.63ID:Q8I4HZFU

ベルクって50歳で亡くなってるんだな
ヤバくね?

395名無しの笛の踊り2018/11/21(水) 19:44:16.28ID:a5LsSnlQ

アルテンベルク歌曲集だいすこ
作品4であんな作品を書けるなんて、ベルクは何という才能の塊なのだろう


418名無しの笛の踊り2018/12/25(火) 01:15:47.14ID:KyvsZKWa

やっぱりモーツァルトやベートーヴェンに比べると作品数が圧倒的に少ないな
ハマったと思ったらもう新たに聴く曲がないわ


419名無しの笛の踊り2018/12/31(月) 13:24:56.63ID:M7Hnn4gv

すごい遅筆だよな


420名無しの笛の踊り2018/12/31(月) 17:31:02.43ID:bW3Ly8+k

その代わり物凄く凝ってる


421名無しの笛の踊り2019/01/01(火) 01:08:17.67ID:8faxKUc1

貧乏ゆえ数々の雑用に追われ作曲が進まなかった
師匠も兄弟子もそうだった


47名無しの笛の踊り2016/09/12(月) 02:01:13.40ID:bh5YNviW

クラシック最後のメロディの天才


50名無しの笛の踊り2016/09/12(月) 13:15:34.34ID:3FGgV/qD>>53

20世紀最高の作曲家だが、作品が少なすぎる。
あと20曲あれば評価はもっと違っていた。


57名無しの笛の踊り2016/09/13(火) 19:15:46.30ID:glXDx3OS>>65

こんなスレが出来てたんだ
ベルクは大好きだな
抒情組曲、2つのオペラ、ピアノソナタ、クラリネットとピアノの小品、
室内協奏曲、そしてヴァイオリン協奏曲

どれをとっても天才の刻印があるように思う
でも、ひとつだけあげるとしたらヴァイオリン協奏曲かな
バッハのコラールが出てくるところで泣く

63名無しの笛の踊り2016/09/14(水) 09:55:54.29ID:LT1FiVnr

某有名なアバズレの娘(こいつもアバズレ)にちょっかい出して
アバズレにこてんぱんに怒られている可哀相なベルク

43名無しの笛の踊り2016/09/10(土) 08:53:20.69ID:u7btCDEE

ベルクってお手伝いさんに娘を産ませているけれど、
妻との間には子供いなかったよね?

287名無しの笛の踊り2017/12/28(木) 18:38:14.67ID:ZvS0TyM6

メイドさんとの間に生まれた娘のアルビーネは里子に出して結局会えずじまいだったんだっけ
かわいそう
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/classical/1473159439/

 

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コメント
1. 中川隆[-15014] koaQ7Jey 2019年11月11日 19:12:27 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2113] 報告

ベルク ヴァイオリン協奏曲


2. 中川隆[-15013] koaQ7Jey 2019年11月11日 19:28:01 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2112] 報告


ベルク ピアノソナタ



3. 中川隆[-15012] koaQ7Jey 2019年11月11日 19:29:21 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2111] 報告

ベルク ピアノソナタ


4. 中川隆[-15011] koaQ7Jey 2019年11月11日 19:43:45 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2110] 報告

ベルク ルル組曲

berg Lulu Suite - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ih5CxewXU5c
https://www.youtube.com/watch?v=NLXbloXbsX4
https://www.youtube.com/watch?v=xRFiTzS6e44
https://www.youtube.com/watch?v=ApD6wmUeNpE
https://www.youtube.com/watch?v=kfiYF1s-XN8


Berg: Lulu-Suite; Altenberg-Lieder; 3 Pieces for Orchestra Op.6

Lulu's Song · Margaret Price
Claudio Abbado
London Symphony Orchestra
Released on: 1971-01-01

5. 中川隆[-15010] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:09:14 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2109] 報告

ベルク:《抒情組曲》からの3章 [弦楽合奏版1928] カラヤン 1973 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=W_gSHnk2Pyw


Herbert von Karajan 1973年9, 11月
Berliner Philharmoniker

Berg : Three Pieces from the "Lyric Suite" Version for string orchestra ; 1928
2. Andante amoroso 6:38
3. Allegro misterioso 3:27
4. Adagio appassionato 7:08

_____


Alban Berg- Lyric Suite - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=crLFn2muMm4&list=PLpyZ2hyfYerNvIVAcboAbf7eG-pTlMPdC
https://www.youtube.com/watch?v=5a1mwUAZLaE&list=PLpyZ2hyfYerNvIVAcboAbf7eG-pTlMPdC&index=2
https://www.youtube.com/watch?v=qD9RgfXP9n8&list=PLpyZ2hyfYerNvIVAcboAbf7eG-pTlMPdC&index=3
https://www.youtube.com/watch?v=UEKdQX1xxoI&list=PLpyZ2hyfYerNvIVAcboAbf7eG-pTlMPdC&index=4
https://www.youtube.com/watch?v=ehZhPRwLzqs&list=PLpyZ2hyfYerNvIVAcboAbf7eG-pTlMPdC&index=5
https://www.youtube.com/watch?v=kVFaB_XyJW8&list=PLpyZ2hyfYerNvIVAcboAbf7eG-pTlMPdC&index=6


Performed by the Alban Berg Quartett
____


Alban Berg Lyric Suite For String Quartet (1925-1926) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uYIMRXkyJ10

Alban Berg
Lyric Suite for string quartet (1925-1926)

Allegretto gioviale 00:00
Andante amoroso 03:09
Allegro misterioso – Trio estatico 09:26
Adagio appassionato 12:43
Presto delirando – Tenebroso 19:05
Largo desolato 24:00

Juilliard String Quartet
Robert Mann, violin
Earl Carlyss, violin
Samuel Rhodes, viola
Claus Adam, cello

Live recording: Ascona, August 24, 1970

6. 中川隆[-15009] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:13:57 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2108] 報告

ベルク: 弦楽四重奏曲 作品3 アルバン・ベルク四重奏団 1974 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uJy5mWJlmU8


Berg : Streichquartett Op.3
1. ラングザーム Langsam 9:21
2. メーシゲ・フィアテル Mäßige Viertel 9:48

Alban Berg Quartett, Wien April.1974

7. 中川隆[-15008] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:20:00 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2107] 報告

ヴォツェック

Berg - Wozzeck - Carlos Kleiber 1970 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=JA8r5c567X0
https://www.youtube.com/watch?v=WoUUTe-mzoI
https://www.youtube.com/watch?v=7ujBRCGdSRI
https://www.youtube.com/watch?v=9nXWiimZJcc
https://www.youtube.com/watch?v=-5vPSQyCWp4
https://www.youtube.com/watch?v=qti3_NgXicU
https://www.youtube.com/watch?v=x_whQUs9wpQ


Munich, Nationaltheater
27 November, 1970 - Live Recording

Bavarian State Orchestra & Chorus

Marie: Wendy Fine
Wozzeck: Theo Adam
The Drum Major: Fritz Uhl
The Captain: Georg Paskuda
The Doctor: Jieth Engender
Margret: Gudrun Wewezow
Andres: Friedrich Lenz
The Fool: Walter Carnuth
First Artisan: Max Proebstl
Second Artison: Carl Hoppe
Marie's Child: Narika Krauth

8. 中川隆[-15007] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:22:07 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2106] 報告

ヴォツェック


Rare Carlos Kleiber Berg Wozzeck Fragment - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=_oCBTslT1Pc
https://www.youtube.com/watch?v=soRTezlvv_Y


WDR Symphony Orchestra
Wendy Fine: Soprano
(1972)

9. 中川隆[-15006] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:32:56 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2105] 報告

ベルク

Diana Damrau; Sieben frühe Lieder; Alban Berg - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=rXzzcmEy3cw

Diana Damrau--Soprano
Stephan Matthias Lademann--Piano
Salzburger Festspiele
LIVE; 2005

____


Berg - Sieben frühe Lieder - Jessye Norman-Pierre Boulez - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bE85ldyYfZM

Recorded live at Suntory Hall, Tokyo, 19 May 1995
London Symphony Orchestra
Jessye Norman, soprano
Pierre Boulez, conductor

____


Anne Sofie von Otter The complete 7 frühe Lieder with piano (Berg) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=g8cxKPRGFIs


Berg, Alban (1885-1935) 7 frühe Lieder (1905-08):

I. Nacht 00:00
II. Schilflied 04:34
III. Die Nachtigall 06:42
IV. Traumgekrönt 09:11
V. Im Zimmer 11:45
VI. Liebesode 12:48
VII. Sommertage 14:41


Anne Sofie von Otter -mezzosoprano
Bengt Forsberg -piano

10. 中川隆[-15005] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:41:37 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2104] 報告

ベルク


ALBAN BERG. CHAMBER CONCERTO. BAREMBOIM, BOLEZ, ZUKERMAN - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bfCat_Kp2cU

_____


Alban Berg - Chamber Concerto - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9f0fGxarvGM

Alban Berg (1885 - 1935) - Chamber Concerto, for piano, violin, and 13 wind instruments (1923 - 1925)

I. Thema scherzoso con variazioni [0:00]
II. Adagio [9:45]
III. Rondo ritmico con introduzione [24:45]

Oleg Kagan, violin
Sviatoslav Richter, piano
Chamber Ensemble of Moscow Conservatory, Yuri Nikolaevsky (1977)

11. 中川隆[-15004] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:45:17 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2103] 報告

ベルク ルル


Alban Berg, LULU, Act 1 sc 2. Stratas, Tear, Mazura. Boulez, Chereau. ENGLISH SUBTITLES







CAST:
Teresa Stratas (Lulu)
Robert Tear (Painter)
Toni Blankenheim (Schigolch)
Franz Mazura (Dr Schoen)
Kenneth Riegel (Alwa)

Orchestra of the Paris Opera
conductor: Pierre Boulez
Director: Patrice Chereau.

The black subtitle-band at foot of screen was in the original issue (no English subtitles).
12. 中川隆[-15003] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:48:35 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2102] 報告
ベルク ルル


Alban Berg LULU, Prologue. Stratas, Mazura, Riegel, Nienstedt. Boulez, Chereau. ENGLISH SUBTITLES - YouTube



13. 中川隆[-15002] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:53:51 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2101] 報告
ベルク ルル


berg Lulu - Act 2 - Wenn sich die Menschen ... Du kannst mich nicht dem Gericht - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fm3Y91lrzyA


Berg: Lulu / Act 2

"Wenn sich die Menschen" ...

"Du kannst mich nicht dem Gericht" ·

Teresa Stratas · Hanna Schwarz · Yvonne Minton · Kenneth Riegel · Franz Mazura

Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez

Berg: Lulu

℗ 1979 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin
Released on: 2000-01-01




[スレ主【中川隆】による初期非表示理由]:2重投稿(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)

14. 中川隆[-15001] koaQ7Jey 2019年11月11日 20:56:45 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2100] 報告

ベルク ルル

Alban Berg - Lulu, act 1 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HalTMlAUho8


Alban Berg - Lulu, opera in three acts, act 1

Lulu - Teresa Stratas
Gräfin Geschwitz - Yvonne Minton
Eine Theater-Garderobiere, ein Gymasiast, ein Groom - Hanna Schwarz
Der Medizinalrat, Schigolch, der Polizeikommissär - Toni Blankenheim
Der Maler, ein Neger - Robert Tear
Dr. Schön, Jack - Franz Mazura
Alwa - Kenneth Riegel
Ein Tierbändiger, Rodrigo - Gerd Nienstedt
Der Prinz, der Kammerdiener, der Marquis - Helmut Pampuch

Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez

[スレ主【中川隆】による初期非表示理由]:2重投稿(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)

15. 中川隆[-15000] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:01:17 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2099] 報告
ベルク ルル

berg Lulu - Act 2 - Sie glauben nicht - Könntest du dich für heute nachmittag - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fC1amKC0O2I


Berg: Lulu / Act 2
"Sie glauben nicht" - "Könntest du dich für heute nachmittag"

Teresa Stratas · Yvonne Minton · Franz Mazura

Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez

Berg: Lulu

℗ 1979 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin

Released on: 2000-01-01




[スレ主【中川隆】による初期非表示理由]:2重投稿(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)

16. 中川隆[-14999] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:05:35 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2098] 報告

ベルク ルル

berg Lulu - Act 2 - Hü, kleine Lulu - O Freiheit! Herr Gott im Himmel! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yRVOVO80w40


Berg: Lulu / Act 2

"Hü, kleine Lulu" - "O Freiheit! Herr Gott im Himmel!"

Teresa Stratas · Kenneth Riegel · Toni Blankenheim · Gerd Nienstedt
Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez

[スレ主【中川隆】による初期非表示理由]:2重投稿(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)

17. 中川隆[-14998] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:07:48 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2097] 報告

ベルク ルル

berg Lulu - Act 2 - Sein Vater! ... Du Kreatur, die mich durch den Strassenkot - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=KmffNznymRY


Berg: Lulu / Act 2

"Sein Vater!" ... "Du Kreatur, die mich durch den Strassenkot"

Teresa Stratas · Yvonne Minton · Kenneth Riegel · Franz Mazura · Gerd Nienstedt
Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez

[スレ主【中川隆】による初期非表示理由]:2重投稿(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)

18. 中川隆[-14997] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:09:41 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2096] 報告
ベルク ルル

Alban Berg - Lulu, act 3 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0dpSN9Bc15s

Alban Berg - Lulu, opera in three acts, act 3
Orchestration of the third act completed by Friedrich Cerha

Lulu - Teresa Stratas
Gräfin Geschwitz - Yvonne Minton
Eine Theater-Garderobiere, ein Gymasiast, ein Groom - Hanna Schwarz
Der Medizinalrat, Schigolch, der Polizeikommissär - Toni Blankenheim
Der Maler, ein Neger - Robert Tear
Dr. Schön, Jack - Franz Mazura
Alwa - Kenneth Riegel
Ein Tierbändiger, Rodrigo - Gerd Nienstedt
Der Prinz, der Kammerdiener, der Marquis - Helmut Pampuch

Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez


[スレ主【中川隆】による初期非表示理由]:2重投稿(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)

19. 中川隆[-14996] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:11:02 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2095] 報告
ベルク ルル

Alban Berg - Lulu, act 2 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=aMvHhJNFOVk


Alban Berg - Lulu, opera in three acts, act 2

Lulu - Teresa Stratas
Gräfin Geschwitz - Yvonne Minton
Eine Theater-Garderobiere, ein Gymasiast, ein Groom - Hanna Schwarz
Der Medizinalrat, Schigolch, der Polizeikommissär - Toni Blankenheim
Der Maler, ein Neger - Robert Tear
Dr. Schön, Jack - Franz Mazura
Alwa - Kenneth Riegel
Ein Tierbändiger, Rodrigo - Gerd Nienstedt
Der Prinz, der Kammerdiener, der Marquis - Helmut Pampuch

Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez

[スレ主【中川隆】による初期非表示理由]:2重投稿(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)

20. 中川隆[-15013] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:18:06 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2112] 報告

アルバン・ベルク ルル
ピエール・ブーレーズ指揮 パリ・オペラ座管弦楽団


Alban Berg - Lulu, act 1 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HalTMlAUho8

Alban Berg - Lulu, act 2 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=aMvHhJNFOVk

Alban Berg - Lulu, act 3 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0dpSN9Bc15s


Lulu - Teresa Stratas
Gräfin Geschwitz - Yvonne Minton
Eine Theater-Garderobiere, ein Gymasiast, ein Groom - Hanna Schwarz
Der Medizinalrat, Schigolch, der Polizeikommissär - Toni Blankenheim
Der Maler, ein Neger - Robert Tear
Dr. Schön, Jack - Franz Mazura
Alwa - Kenneth Riegel
Ein Tierbändiger, Rodrigo - Gerd Nienstedt
Der Prinz, der Kammerdiener, der Marquis - Helmut Pampuch

Orchestre de l'Opéra de Paris
Pierre Boulez

21. 中川隆[-15012] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:41:09 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2111] 報告

アルバン・ベルク ルル組曲

Pierre Boulez & Chicago Symphony Orchestra Alban Berg, Debussy & Stravinsky








From the Cologne Philharmonic Hall, Germany (2000)

Chicago Symphony Orchestra
Pierre Boulez - conductor
Christine Schäfer - soprano

0:57 Alban Berg - Lulu-Suite (1934) for soprano and great orchestra
(excerpt)

21:02 Claude Debussy - Le Jet d’eau (1907) for soprano and orchestra

28:33 Claude Debussy - Trois Ballades de Villon (1910) for soprano and orchestra
28:33 No. 1
33:30 No. 2
37:40 No. 3

42:05 Igor Stravinsky - The Firebird (1912) for great orchestra (complete ballet music)
22. 中川隆[-15011] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:43:54 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2110] 報告

ベルク: 抒情組曲 ブーレーズ 1974 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Hvht0RyB9jM


Pierre Boulez 4 March. & 21 Dec.1974
New York Philharmonic

Berg : Lyric Suite
第1楽章:アンダンテ・アモローソ 5:37
第2楽章:アレグロ・ミステリオーソ;トリオ・エスタティコ 3:30
第3楽章:アダージョ・アパッショナータ 5:56

23. 中川隆[-15010] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:46:08 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2109] 報告

ベルク

Berg - Drei Orchesterstücke - BBC SO - Boulez 1967 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=sszSkAYCpqU


Alban Berg
Drei Orchesterstücke op.6

I. Präludium. Langsam
II. Reigen. Anfangs etwas zögernd - Leicht beschwingt
III. Marsch. Mässiges Marschtempo

BBC Symphony Orchestra
Pierre Boulez
Studio recording, London, 22.III.1967

24. 中川隆[-15009] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:49:32 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2108] 報告

ベルク ピアノソナタ

Mitsuko Uchida Works of Schoenberg, Berg, Webern - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=a1SA1-DvvI0


Arnold Schoenberg (1874-1951)
Klavierkonzert, op.42
1. I. Andante (“Life was so easy”)
2. II. Molto allegro (“Suddenly hatred broke out”)
3. III. Adagio (“A grave situation was created”)
4. IV. Rondo: Giocoso (“But life goes on”)

Anton Webern (1883-1945)
Variations, op.27
5. Sehr massig
6. Sehr schnell
7. Ruhig fliessend

Arnold Schoenberg
Drei Klavierstücke, op.11
8. I. Massig
9. II. Massig
10. III. Bewegt

Sechs kleine Klavierstücke, op.19
11. I. Leicht, zart
12. II. Langsam
13. III. Sehr langsam
14. IV. Rasch, aber leicht
15. V. Etwas rasch
16. VI. Sehr langsam

Alban Berg (1885-1935)
Klaviersonate, op.1
17. Piano Sonata

Mitsuko Uchida, piano
The Cleveland Orchestra
Pierre Boulez, conductor

25. 中川隆[-15008] koaQ7Jey 2019年11月11日 21:53:59 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2107] 報告



Berg - Der Wein (Dorothea Roeschmann)





From the Salzburg opening concert, 2011. Vienna Philharmonic, Pierre Boulez.


____



Alban Berg Der Wein  アルバン・ベルク 管弦楽伴奏歌曲「ワイン」

 昨日ワイン(シャンパン)の記事を書きながら、ワインを歌った歌曲を探したところ、結構大作がありました。ボードレールの詩にベルクが作曲したオーケストラ伴奏による演奏会用アリア「ワイン」。「ワインの魂」、「愛する二人のワイン」そして「孤独者のワイン」という3編の詩に曲をつけていますが、一連の一つの作品として中断することなく演奏されます。

 ペトルッチ(IMSLP)のサイトにはピアノ伴奏譜が公開されています。ドイツ語の歌詞とともにボードレールのオリジナルの歌詞でしょうか、フランス語の歌詞も記されています。動画サイトには複数の音源が公開されています。私が見た限りではいずれもソプラノと管弦楽のオリジナル編成の様で、ピアノ伴奏版や男声によるものは見つけていません。梅丘歌曲会館のサイトでは3編の詩それぞれについて、ドイツ語の歌詞とその日本語訳と、ボードレールのフランス語歌詞とその日本語訳とが紹介されています。

 なんと言ってもベルクの作品ですから現代音楽の範疇にどっぷり入っている作風です。正直美味しいワインを飲みながら聞こうと思う曲ではありません。現代音楽の一つの作品を繰り返し聞いていると、だんだん飽きてしまう曲もありますが、この曲はその魅力が徐々に判って来る曲だと思います。酒を謳った管弦楽伴奏作品と言えばマーラーの「大地の歌」がありますが、ベルクのワインはマーラーの「大地の歌」の一つの楽章に匹敵する歌と言う事はできると思います。マーラーの「大地の歌」を意識した作品???としてはツェムリンスキーの「抒情交響曲」がありますがやや中途半端な作品に留まっている印象があります。ただ普通の人が普通に聞く分にはツェムリンスキーの「抒情交響曲」の方が普通に聞き易いでしょうね。

 ベルクの「ワイン」を自宅のオーディオで聞きながら酒を飲むと言う状況は正直思い浮かびません。この曲はあまり大きくない音楽専用ホールでの生演奏を、作品と対決するかのごとき姿勢で聴くのが一番良さそうです。ホールのホワイエにワインや他の酒を提供するバーがあったとしても、少なくとも「ワイン」を聞き終わるまでは素面でいるだろうと思います。
https://blog.goo.ne.jp/kawaikanta/e/2631d5615dad6ed953d3ae4307887402

26. 中川隆[-15005] koaQ7Jey 2019年11月12日 00:33:36 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2104] 報告
アルバン・ベルク
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF


アルバン・マリーア・ヨハネス・ベルク(Alban Maria Johannes Berg, 1885年2月9日 - 1935年12月24日)は、オーストリアの作曲家。

アルノルト・シェーンベルクに師事し、アントン・ヴェーベルンと共に、無調音楽を経て十二音技法による作品を残した。十二音技法の中に調性を織り込んだ作風で知られる。

ベルクはウィーンで富裕な商家の子供として生まれた。幼い時から音楽や文学に興味を抱き早熟な少年時代を送る。15歳の時、父が没した頃から独学で作曲を試みるようになる。この時の現存する多数の歌曲は1980年まで封印されていた[1]。

1902年にはベルク家の別荘で働いていた女中、マリー・ショイヒルとの間の私生児の父となり、翌年にはギムナジウムの卒業試験に失敗して自殺を図るなど10代後半の私生活は波瀾に彩られたものだった。

1904年、ベルクの兄が弟の作品をシェーンベルクのもとに持ち込み、シェーンベルクや同門のヴェーベルンとの交友が始まる。ベルクはギムナジウム卒業後、公務員となるが作曲活動に打ち込むためわずか2年で辞職し、ウィーン国立音楽院へ。

1907年、「4つの歌曲」Op.2などの曲で本格的な作曲家デビューを飾る。

1908年7月23日、宿痾の病となる喘息を発病、この時23歳だったベルクは「23」という数字を自己の運命の数と決め、この数は以後の作品の構成を彩る事になる。

1911年、声楽を学んでいたヘレーネ・ナホフスキーと結婚。ヘレーネの母アンナはオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の愛人として知られ、ヘレーネは皇帝の庶子とも言われており、ベルクの周辺では気位の高い女性として知られていた。

1912年、「アルテンベルク歌曲集」Op.4を完成するも師シェーンベルクの反応は色よいものではなく、この歌曲集の完全初演はベルクの死の17年後まで持ち越される。

1914年、ゲオルク・ビューヒナーの戯曲「ヴォイツェック」の上演に接したベルクはこの戯曲を基にした無調音楽のオペラの作曲を始めたが、この年に第一次世界大戦が勃発、翌年から兵役に服する事になり作曲が不可能になったが、1917年になって休暇を与えられ、歌劇「ヴォツェック」 OP.7の作曲再開に踏み切った。「ヴォツェック」の完成はその5年後の事である。

「ヴォツェック」完成後、シェーンベルク50歳の誕生日に献呈するべく、ピアノ・ヴァイオリン・13管楽器のための室内協奏曲に取り組むも50歳の誕生日には間に合わず、1925年に完成する。

その同じ年に歌劇「ヴォツェック」がベルリン国立歌劇場でエーリヒ・クライバーの指揮によって初演された。初演にあたって34回ものオーケストラ練習と14回のアンサンブル練習が行われ、分奏を含めると総計150回の練習が行われたという。ベルクと指揮者は激しい批判に晒されるが、この作品によってベルクの作曲家としての名声は揺るがぬものとなった。この年、プラハ訪問中に知り合ったハンナ・フックス=ローベッティーンとの不倫関係が始まり、この関係から「抒情組曲」という音楽的果実が実る事になった。

1928年、フランク・ヴェーデキントの戯曲「地霊」および「パンドラの箱」に基づく歌劇「ルル」の作曲に取り掛かるも、翌年には「ルル」の作曲を一時中断、演奏会用アリア「ワイン」を作曲した。

「ヴォツェック」の成功によって順調であるかに見えたベルクの作曲家人生は、1933年のナチス・ドイツ政権発足によって暗転する。師シェーンベルクと共に(ベルクはユダヤ人ではないが)ベルクの音楽も「退廃音楽」のレッテルが貼られ、ドイツでの演奏が不可能になる。

1935年、アルマ・マーラーと彼女の2番目の夫ヴァルター・グロピウスとの娘でベルクも可愛がっていた、マノン・グロピウスの訃報に接し、「ルル」作曲の筆を再び置いて、ベルクとしては異例の速筆でヴァイオリン協奏曲を書き上げる。しかし、協奏曲完成の直前に虫刺されが原因で腫瘍ができ、これが悪化、手術を受けるも敗血症を併発しこの年の12月24日に50年の生涯を閉じた。

未完のまま遺された「ルル」は完成していた2幕までと「ルル組曲」の抜粋という形で初演されたが、未亡人ヘレーネは補筆を禁じ、3幕の形での「ルル」(フリードリヒ・ツェルハ補筆版)初演はヘレーネ没後の1979年にパリのオペラ座にて行われた(パトリス・シェロー演出、ピエール・ブーレーズ指揮)。ヘレーネがここまで頑なになったのは、第二次世界大戦後にショイヒルの子と会ったこと、ベルクとハンナとの不倫を知ったことによる夫への反感から情報をコントロールしようとしたことが原因とされる[2]。

主要作品


「ベルクの楽曲一覧」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7

7つの初期の歌曲
ピアノ・ソナタ Op.1
弦楽四重奏曲 Op.3
アルテンベルク歌曲集 Op.4
管弦楽の為の3つの小品 Op.6 (1914年 - 1915年/1929年改訂)
歌劇「ヴォツェック」 OP.7 (1925年初演)
室内協奏曲 (1923年 - 1925年)
抒情組曲 (1925年 - 1926年)
ヴァイオリン協奏曲 (1935年)
歌曲集「私の両眼を閉じてください」
管弦楽伴奏歌曲「ワイン」
歌劇「ルル」(1928年 - /未完成)

編曲

フランツ・シュレーカーの歌劇《はるかなる響き》のヴォーカルスコア(1911年)
アルノルト・シェーンベルクの《グレの歌》のヴォーカルスコア(1912年)
シェーンベルクの《弦楽四重奏曲第2番》の後半2楽章(同上)
ヨハン・シュトラウス2世のワルツ《酒、女、歌》(1921年)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF

27. 中川隆[-15004] koaQ7Jey 2019年11月12日 00:38:43 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2103] 報告

ウィーン 音だより (3) ベルクとウィーン
http://www.takashi-sato.jp/reading/h16_berg.html



こちらもウィーン生まれの代表的な作曲家ながら、ベルクにはシューベルトほどの人気があるわけではなく、ゆかりの旧跡として残っている場所も多くありません。 アルバン・ベルク・ヴェーク(アルバン・ベルク通り)の名は、ベルクが生涯の大半を過ごした13区・ヒーツィングの小道に付けられていました。


「新ウィーン楽派」と「十二音技法」

ベルクが音楽史の中で属している「新ウィーン楽派」と、彼らが採用した作曲システム「十二音技法」について、まずは簡単に解説しておきましょう。


シェーンベルク

「新ウィーン楽派」は、オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクと、その弟子たちが形成した集団のことで、 ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンの「ウィーン古典派」に因んだ名称と考えられています。 代表的な作曲家はシェーンベルク自身と、アントン・ヴェーベルン、アルバン・ベルクの3人だけです。

バロック以降、300年にわたって西洋音楽を支えてきた「調性」という概念はロマン派の成熟とともに揺らぎ、次第に飽和・行き詰まりの様相を見せるようになります。 ヴァーグナーの「トリスタン」に代表されるように、拡大され、不明瞭なものとなっていった調性が、表現の進歩とともにやがて崩壊に向かうのは歴史の必然でした。 シェーンベルクや同世代の作曲家たちは、こうして「無調」に到達します。しかし、無調の音楽というのはそう簡単に作れるものではありません。

調性は、いわば音楽を束ねてきた「輪ゴム」のようなものでした。輪ゴムが劣化して緩くなり、ついに切れてしまうと、 それまで輪ゴムによって秩序立てられてきた音楽はバラバラになってしまい、「無意味な音の羅列」になりかねない。 シェーンベルクは、調性に代わる新たな「輪ゴム」(秩序)を、無調の音楽に持ち込まなければならないと考えました。

調性音楽においては、1オクターヴの中にある12の音のうち、7つの音が「音階」を形成し、そのうちの1つは「主音」、主音の完全5度上の音は「属音」などと、 それぞれに特別な機能(役割)を与えられます。重要な役割を付与された音は、その音楽の「主役」として何度も登場し、 それ以外の音は主役に従属する「脇役」になる。シェーンベルクはこうした音と音との主従関係に注目して、調性に代わるシステムを考案しました。


・ 1オクターヴの中の12の音の中に「主役」や「脇役」を設けず、すべての音の登場回数を均一化する。

・ 12の音を1回ずつ使った「基本音列」を設定し、「基本音列」のヴァリアントによって音楽を構成していく。


ヴェーベルンの「協奏曲」作品24の基本音列

これが「十二音技法」の基本的なアイディアです。

西洋音楽をラディカルに変革し、「調性の崩壊」を招いた張本人と目されることもあるシェーンベルクですが、 本人はバッハやベートーヴェンから脈々と続くドイツ音楽の後継者を自認しており、あくまでドイツ音楽が今後も優位を保っていくための正統的な進歩を目指していました。 ドビュッシーやストラヴィンスキーなどが伝統に反抗することで無調に達したのとは、正反対の道のりだったのです。


青年期まで

ウィーン中心部、ベルクの生家があった場所

アルバン・ベルクは1885年2月9日、ウィーンの中心部で生まれました。父は書籍や美術品の店を経営しており、芸術的な素養のある母のもと、 ベルクとその兄弟たち(兄2人と妹1人の4人兄弟)は、文化的で裕福な生活を送っていました。 一家に職業音楽家はいませんでしたが、ベルクは妹とピアノを連弾したりして音楽に親しみ、14歳頃から作曲を試みるようになります。 作品の多くは歌曲で、書き上がると家庭内で披露されました。

そんな幸せな日常が暗転したのは1900年のことでした。父が心臓発作で急死してしまったのです。残された一家は経済的に逼迫しました。 精神的ショックからか、15歳のベルクは7月23日に持病となる喘息の発作を起こします(一説には1908年の7月23日)。 以降、ベルクは「23」を運命の数字と定め、自らを表す数として作品の中で暗示的に使用しました。

不幸は続きます。1902年には一家の別荘で雇っていたメイドの女性を妊娠させてしまい、ベルクは私生児アルビーネの責任を負う証書を書かされました。 学業の成績も低迷し、精神的に追い詰められたベルクは自殺未遂に至ります。

しかし音楽の創作はこの間も絶えず行われ、140曲もの歌曲が独学で書かれました。兄がそのうちの数曲を密かにシェーンベルクに見せたことから、ベルクの運命は変わります。 若者の才能を認めたシェーンベルクは、一家の財政状況を鑑みて、ベルクを無償で弟子に取ることを決めたのでした。 1904年、ベルクが学校を卒業し、役所の会計士見習いとして働き始めた年のことです。


作曲家としてのあゆみ

シェーンベルクは、ベルクの声楽曲への偏愛や、ナイーヴで人間的な感受性をすぐに見抜きましたが、それだけではいずれ行き詰まると考え、器楽も対等に扱えるように、厳格で秩序だった技術的訓練を施しました。 15歳で実父を亡くしたベルクにとって、シェーンベルクは人生に導きを与えてくれる新しい父でした。 1911年にシェーンベルクがウィーンを離れたことで修行期間は終わりますが、シェーンベルクはそれからもことあるごとに、ベルクの音楽や生活に口を出し続けました。 ベルクは恩師を心から尊敬しつつも、その保護者気分に幾分うんざりしてもいたようです。

ヴェーベルン

1905年に母方の遺産を引き継いだことで、一家の経済状況は安定し、ベルクも役人見習いの仕事を辞めて音楽の勉強に専念することができるようになりました。

ウィーン音楽院に入学した彼は、同じくシェーンベルクの弟子だったアントン・ヴェーベルンと出会います。 理知的でヴァイタリティに溢れ、師の信頼を勝ち得ていたヴェーベルンは、繊細で病弱なベルクとは正反対の性格の持ち主でしたが、それにもかかわらず二人は生涯の親友となりました。

マーラー

ベルクの学生時代の最大のスターはマーラーでした。ウィーン国立歌劇場の総監督として辣腕をふるう姿に心酔したベルクは、 終演後の楽屋に押し入ってマーラーの指揮棒を強奪するという蛮行に出ています。マーラーの死後、ベルクはその未亡人アルマや、 アルマの次の夫である彫刻家のヴァルター・グロピウスとも親交を結びました。

ベルクは持ち前の感受性と教養の高さから、あらゆる芸術分野に精通していましたが、ウィーンっ子らしくサッカー観戦に熱狂するような一面も持ち合わせており、 また彫りの深い顔立ちで、仲間内では美男子としても有名でした。


妻ヘレーネ

1907年にベルクはオペラ歌手のヘレーネ・ナホヴスキと出会い、猛烈な恋に落ちます。ヘレーネの母は皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の愛人で、 ヘレーネは皇帝の庶子と噂されていました。自身と同じように高い教養と理想を持ったヘレーネとの結婚は、 彼女の父の反対によりなかなか実現しませんでした。この頃作曲されたピアノ・ソナタ作品1、弦楽四重奏曲作品3をはじめとする初期の重要な作品には、 この苦しく激しい愛の情熱が表れています。

2人は1911年5月3日にようやく結婚し、郊外のヒーツィングに居を構えました。ベルクは自宅を離れる日には毎日妻へ手紙を書き、忠誠と愛情を示し続けました。


CD「ウィーン 音だより」に収録されているピアノ・ソナタ作品1は、シェーンベルクのもとでの学習の総仕上げとして書かれた「卒業作品」です。 作曲時期は明確にはわかっていませんが、1909年頃に完成したと考えられ、1910年、ベルクの記念すべき作品1としてベルリンのリーナウ社から自費出版されました。 表紙に印刷されている独特の丸文字は、作曲者自身がデザインしたもので、彼の美的なセンスが発揮されています。

ベルクは当初、多楽章形式の伝統的なソナタを構想していましたが、第1楽章を完成させたところで行き詰まりました。 シェーンベルクに相談したところ、「それならば、君はもう言うべきことを全部言ってしまったのだ。これで終わりにしてはどうか」とアドヴァイスされ、結局単一楽章のソナタとして完結しました。

半音階や全音音階、4度音程の多用によって調性感は極めて曖昧にされていますが、一応はロ短調をベースにしています。 拡大され尽くした調性とは対照的に、ソナタ形式の構造は明瞭に造形されており、提示部には古典派風の繰り返し記号まで付けられています。 詳しい分析はここでは割愛しますが、モティーフを徹底的に、とりわけ対位法的に操作していく方法はベートーヴェン以来のソナタの伝統を受け継ぐものです。 しかし全体を覆う爛熟した響きは悲劇的、かつ頽廃的な雰囲気を纏っており、伝統と革新が交錯する世紀末ウィーンの空気を色濃く反映した作品といえるでしょう。

出版の翌年1911年に弦楽四重奏曲作品3や、ヴェーベルンの新作などとともに初演され、騒動を巻き起こしたと伝えられています。 ベルクが生前に出版したピアノ独奏曲はこの1曲のみです。


13区・トラウトマンスドルフガッセ27番地のベルク夫妻の住居


シェーンベルクの門を離れ独り立ちしたベルクでしたが、作曲家としてのスタートはなかなか軌道に乗りませんでした。 シェーンベルク門下生の発表会以外に作品披露の場はなく、その発表会でさえも、聴衆の罵倒と暴動で警官が呼ばれるような始末でした。 保守的なウィーンの聴衆の、現代音楽に対する風当たりは厳しいものでした。

“ ドイツ、フランス、イタリアで、私の音楽への関心が生じてきたらしいことを感じますが、オーストリアでは全く反対です。 シェーンベルクの主宰する「私的音楽演奏協会」を除いては、ウィーンでたとえ1曲でも私の作品が演奏される場所はありません。 「ピアノ・ソナタ」ですら演奏されないのです。
(1920年、エドゥアルト・エルトマンから自作の交響曲を献呈されたことに対する感謝状より)

第一次世界大戦が始まると、召集されハンガリー国境に配属されますが、病弱な身体は軍隊の生活に耐えられず、すぐにウィーンの大本営に戻されました。 開戦当初は愛国心に燃えていたベルクでしたが、自身の体験を通して戦争の悲惨さと無意味さを痛感するようになります。

戦争が終わると、シェーンベルクの設立した「私的音楽演奏協会」の代表に任命されました。 ウィーンで現代音楽を演奏し、人々を啓蒙するために、この協会は理想的な組織でした。 聴衆の拍手は禁じられ、演奏が充分なレヴェルに達していないと見なされれば発表は取りやめられました。 ベルクはこの演奏会の企画や運営に深く関わり、彼のいくつかの作品の初演もここで行われましたが、依然として成功へのきっかけをつかむことはできませんでした。

作曲家としての成功を半ば諦めたベルクは音楽ライターへの転身を図り、実際に音楽雑誌に記事を投稿したりしていますが、 そこでは彼の優れた文筆力と分析家としての手腕が発揮されています。


「ヴォツェック」の成功

完全な無調のスタイルを手中に収めたベルクの創作態度は実に丁寧なもので、1作を書き上げるのに何年もかかるのが常でしたが、 ビューヒナーの戯曲「ヴォイツェク」のオペラ化には、実に構想から8年もの歳月が費やされました。 従軍や「私的音楽演奏協会」の役職による中断を挟みながら、少しずつ書き進められたオペラ「ヴォツェック」は、1922年に完成しました。

貧しい下級兵士ヴォツェックは金のために人体実験の被験者となって精神を病み、内縁の妻の不倫を知って錯乱、彼女を刺殺し、自らも溺死する…という救いのない筋書きに、 ベルクは無調様式を駆使した濃密な音楽を付与していきました。そこには、自らの過酷な従軍体験も反映していたに違いありません。

アルマ・マーラー

依頼を受けて書かれたのではない「ヴォツェック」は、上演の見込みはなかったものの、若い作曲家を支援していたアルマ・マーラーの援助を受けて自費出版されることとなりました。 これが功を奏し、ベルクの運命は好転し始めます。

1923年4月にはウィーンのウニフェルサル出版社と独占契約を結び、過去も含めてすべての作品が同社から出版されることになります。 8月にはザルツブルクの国際現代音楽祭で弦楽四重奏曲作品3が演奏され、新聞で賞賛されました。

「ヴォツェック」も、意気盛んな指揮者たちの注目を集めていました。ヘルマン・シェルヒェンはオペラの一部を抜粋した組曲を委嘱、 この「組曲版」は1924年にフランクフルトで初演され話題となります。全曲の上演は1925年12月14日、ベルリン国立歌劇場で行われました。 指揮を執った若き芸術監督エーリヒ・クライバーはかねてからこの作品の真価を見抜いており、「職を賭す」覚悟で初演に臨みました。 保守層からの反発はあったものの、結果的に作品は大成功を収め、ベルクは40歳にしてビッグネームを勝ち得ます。 ヨーロッパ各地での上演に招かれては聴衆の喝采を浴び、出版社からの収入は月給制となり、自動車や別荘を買うなど、 「成功者」としての生活がベルクを待ち受けていました。


ハンナ・フックス

転機のベルクはまた、新たな熱愛の対象をも手にすることになります。 プラハに住む友人のヘルベルト・フックスを訪ねていったベルクは、あろうことかその妻ハンナと熱烈な恋に落ちたのです。

妻ヘレーネへの忠実な手紙は以降も書き続けられましたが、その言葉は実は空虚なもので、ベルクはその後の生涯を通してハンナだけを愛し続け、その愛情こそがインスピレーションの源でした。 ハンナは、アルマ・マーラーの後の夫となるフランツ・ヴェルフェルの妹でもありました。ヘレーネはこの不倫関係にうすうす感づいていたようで、仲を取り持ったアルマは後々までヘレーネの恨みを買うこととなります。

ハンナへの愛から生まれた作品は弦楽四重奏のための「抒情組曲」で、運命の数字「23」、自身とハンナの頭文字をはじめ、 譜面には2人にしかわからない秘密の暗号が大量に書き込まれました。その妄想的なまでの情熱を、ハンナ本人がどう受け止めていたのかはよくわかりません。

この頃からベルクは、師シェーンベルクの開発した十二音技法を、自らの創作に採用し始めますが、その手法は独特で、ある意味ではシェーンベルクの理念に反するものでした。

シェーンベルクは十二音技法を実践するにあたって、聴き手に調性を感じさせないよう、三和音や音階など従来の調性音楽に使われていた音型を避けるようにして音列を組む、という規則を設けました。 ベルクはこれを意図的に無視して、伝統的な調性音楽と十二音技法との折衷を目指したのです。

もうひとりの弟子ヴェーベルンが、十二音のシステムを更に推進する急進的な作風を見せたのに対し、ベルクはあくまでも耳に心地よい音楽を求め続けました。 ウィーン人らしい保守性を、ベルクは捨て去ることができなかったともいえるでしょう。


「ルル」と晩年

「ヴォツェック」が成功すると、ベルクはすぐに次のオペラの構想を練り始めます。原作に選ばれたのは魔性の女「ルル」を主人公にしたフランク・ヴェーデキントの戯曲でした(「地霊」と「パンドラの箱」)。 出会った男を次々に虜にし、破滅に追いやるルル。ベルクにもまた、ルルの魔力が降りかかったのかもしれません。

「ルル」の作曲が進むにつれて彼の周囲ではトラブルが多発し始めます。ナチスの台頭によって、ユダヤ人のシェーンベルクを頂点とする新ウィーン楽派への弾圧が激しくなり、 シェーンベルクは1933年にアメリカに亡命。ベルクに批判的だった保守派の評論家たちの声はますます大きくなり、「ヴォツェック」の上演は途絶え、収入も激減します。 ベルクの健康状態も、今までになく悪くなっていきました。



マノン・グロピウス

1935年4月、ヴァルター・グロピウスとアルマ・マーラーの娘、マノンが18歳の若さで他界します。女優を目指していたこの美少女をとりわけ可愛がっていたベルクは、 アメリカのヴァイオリニスト、ルイス・クラスナーから委嘱されていたヴァイオリン協奏曲を、マノンの追悼に捧げることにしました。 ベルクの作品としては異例の速さで書かれたこの協奏曲は、モーツァルトの「レクイエム」やマーラーの晩年の作品と同じように、作曲者自身の死が近いことをを予感させるものでもありました。

ヴァイオリン協奏曲を完成させ「ルル」の仕上げにかかっていたベルクは、夏の間に背中にできた虫さされが悪化し、年末に重体となります。 運命の日、12月「23日」の夜を何とか持ちこたえたベルクは、翌24日の未明、敗血症で息を引き取り、自宅の近くのヒーツィング墓地に葬られました。50歳でした。

ヒーツィング墓地のベルク夫妻の墓

遺作となった「ルル」は、最終幕が未完のまま残されました。アメリカにいたシェーンベルクや、 ヴァイオリン協奏曲の初演の指揮を執ることになっていたヴェーベルン(盟友の死にショックを隠しきれず、リハーサルの後急遽降板)に補筆の依頼が舞い込みますが、誰も首を縦に振ろうとしませんでした。

そうこうするうちにヘレーネ夫人の態度が硬化し、ベルクの全作品の管理を徹底するとともに「ルル」の補筆を全面的に禁止しました。 死後に訪ねてきた私生児アルビーネの存在を知ったことや、ハンナ・フックスとの不倫関係など、ヘレーネの中では亡き夫に対する複雑な感情が渦巻いていたのでしょう。 ヘレーネはそうしたネガティヴな事実を隠蔽すべく、情報をコントロールしようとしたのです。彼女は夫からの大量の書簡を発表しましたが、原文は公開されず、 ヘレーネの「口述」に基づくもので、その信憑性には疑問がもたれています。

ヘレーネの死後、その遺言に逆らってウニフェルサル社がウィーンの作曲家フリードリヒ・ツェルハに「ルル」の補筆を依頼していたことが明らかになりました。 晩年のヘレーネが設立した「アルバン・ベルク財団」は即座に法的措置を執りましたが、最終的に第2幕までと第3幕の補筆版を分けて発表する、ということで合意しました。 補筆版はピエール・ブーレーズの指揮により1979年に上演されました。

慎重に、そして緻密に作品を創造していったベルクは、極めて寡作な作曲家でしたが、その作品のどれもが人類のかけがえのない遺産として高く評価されています。 死後40年以上を経て日の目を見た完成版「ルル」も、「ヴォツェック」と並んで世界の歌劇場の人気レパートリーとして定着しています。


[参考文献]
・アルバン・ベルク ―生涯と作品―(フォルカー・シェルリース著、岩下眞好・宮川尚理訳、泰流社)
・Alban Berg, A Research and Information Guide (Bryan R. Simms, Routledge)
・Alban Berg Bildnis im Wort (Willi Reich, Die Arche)

http://www.takashi-sato.jp/reading/h16_berg.html

28. 中川隆[-15003] koaQ7Jey 2019年11月12日 00:51:07 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2102] 報告

私の両眼を閉じてください


『私の両眼を閉じてください』(ドイツ語: Schliesse mir die Augen beide)は、アルバン・ベルクがテオドール・シュトルムの同一の詩に曲付けした2つのリートである。『私の両の瞼を閉ざして下さい』等の日本語訳題もある。


Schliesse mir die Augen beide
mit den lieben Händen zu!
Geht doch alles, was ich leide,
unter deiner Hand zur Ruh.

Und wie leise sich der Schmerz
Well' um Welle schlafen leget,
wie der letzte Schlag sich reget,
füllest du mein ganzes Herz.

私の両目を閉じてください、
その愛しい両手で!
そうすれば全てが、私の苦しみは
あなたの手の中で眠るのです。

そして、悲しみが静かに
波を打って眠りに付く時には、
その最後のひと寄せが打ち寄せるとき、
あなたは私の心の全てを満たしてくれます。

1907年に作曲したハ長調の歌曲(4分の5拍子)と、十二音技法によって作曲された1925年の歌曲の2つがあり、前者は(作曲当時)未来の妻となるべきヘレーネ・ナホフスキーに、後者はウニヴェルザール出版社の創立25周年記念に、それぞれ献呈されている。

1925年版は、ベルクの十二音技法が初めて本格化した楽曲であり、ここに使われた音列は、1926年の『弦楽四重奏のための抒情組曲』に再利用された。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%81%E3%81%AE%E4%B8%A1%E7%9C%BC%E3%82%92%E9%96%89%E3%81%98%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84

▲△▽▼


1907年版

Hermann Prey - Schliesse mir die Augen beide - Alban Berg - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=hA00s2kqq04

Alban Berg, Schliess mir die Augen beide

Baritone: Hermann Prey
Piano: Michael Krist

Recording: Phonogram GmbH, Munich, October 1975


▲△▽▼


berg Schliesse mir die Augen beide (1925) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5z98t_-DnYc

Margaret Marshall · Geoffrey Parsons
1925年版

29. 中川隆[-15002] koaQ7Jey 2019年11月12日 00:57:17 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2101] 報告

ベルク アルテンベルク歌曲集


Renée Flemming Alban Berg - Lieder Op. 4 Altenberg Lieder (Lucerne Festival, Claudio Abbado) - YouTube






Live recording from the Lucerne Festival, 2005

Lucerne Festival Orchestra
Claudio Abbado - conductor
Renée Fleming - soprano

Alban Berg - Songs Opus 4 "Altenberg-Lieder"
Five Orchestral Songs after Texts from Postcards by Peter Altenberg

1:05 I. Seele, wie bist du schöner
3:34 II. Sahst du nach dem Gewitterregen den Wald
4:34 III. Über die Grenzen des All
6:11 IV. Nichts ist gekommen
7:34 V. Hier ist Friede
30. 中川隆[-15001] koaQ7Jey 2019年11月12日 01:03:28 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2100] 報告

ベルク アルテンベルク歌曲集

Alban Berg - Five Orchestral Songs Altemberg-Lieder - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=q6g9zzPhkOU
https://www.youtube.com/watch?v=MxwLrL5zEMA
https://www.youtube.com/watch?v=ZeC6eQuyjzM
https://www.youtube.com/watch?v=8PfrCp_4LRY
https://www.youtube.com/watch?v=XJO_Letoai8


Alban Berg, Five Orchestral Songs "Altemberg-Lieder", Op. 4.

Margaret Price, Soprano.
Claudio Abbado, Conductor.
London Symphony Orchestra.

31. 中川隆[-15000] koaQ7Jey 2019年11月12日 01:08:06 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2099] 報告

ベルク編曲 ヨハン・シュトラウス2世のワルツ《酒、女、歌》(1921年)

新ウィーン楽派編曲によるヨハン・シュトラウス2世:ワルツ作品集
皇帝円舞曲,南国のバラ,酒・女・歌,他
ボストン・シンフォニー・チェンバー・プレーヤーズ - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=W1FO_SZJrsQ

32. 中川隆[-14999] koaQ7Jey 2019年11月12日 01:27:25 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2098] 報告
ベルク編曲 ヨハン・シュトラウス2世のワルツ《酒、女、歌》(1921年)


J. Strauß- Wein, Weib und Gesang, arr. Alban Berg - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=lLoVdUiyO20


Mario Hossen, Violin
Kristina Hinova, Violin
Zsofia Holyevac, Viola
Lilyana Kehayova, Violoncello
Andres Anazco, Piano Alfredo
Ovalles, Harmonium
CD Souvenir de Vienne 2014
_____


Johann Strauss II Wein, Weib und Gesang, op. 333 (transcr. Berg) - Riccardo Caramella Ensemble - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HjKHFgKznfc


Wein, Weib und Gesang, op. 333
Transcription by Alban Berg (1885 - 1935) for string quartet, harmonium & piano (1921)
Introduktion (Andantino) -- Allegro moderato -- Maestoso - Walzer 1 - Walzer 2 - Walzer 3 - Walzer 4 -- Schluss


Riccardo Caramella Ensemble

Quartetto Voces:
Bujor Prelipcean, violin
Anton Diaconu, violin
Ion Stanciu, viola
Dan Prelipcean, cello

Fabio Luz, harmonium
Riccardo Caramella, piano

live concert, Auditorium Rai, Torino, 1987

33. 中川隆[-14998] koaQ7Jey 2019年11月12日 01:49:43 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2097] 報告
ヨハン・シュトラウス2世のワルツ《酒、女、歌》原曲


Zubin Mehta, Wiener Philharmoniker - Wein, Weib und Gesang, Walzer, Op. 333




___


J. Strauss II Wein, Weib und Gesang, Op.333 - YouTube
Berliner Philharmoniker · Herbert von Karajan
https://www.youtube.com/watch?v=d5aqmqxLWo4

_____


Wein, Weib und Gesang, Op. 333 - YouTube
Wiener Philharmoniker/Herbert von Karajan
https://www.youtube.com/watch?v=czkGB_bnAuc

_____

J. Strauss II Wein, Weib und Gesang, Op. 333 (Live) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HjpxeyyShnI


Wiener Philharmoniker · Willi Boskovsky
New Year's Day Concert In Vienna
Released on: 1979-01-01
34. 中川隆[-14995] koaQ7Jey 2019年11月12日 11:31:34 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2093] 報告
YouTube からiTunesに音楽をダウンロードする方法
https://www.imobie.jp/support/fix-how-to-download-youtube-to-itunes.htm

HD動画変換、オンライン動画変換 - OnlineVideoConverter.com
https://www.onlinevideoconverter.com/ja


2007/11/58 Yoshii9 へのiPodの接続…iPodは高音質か?
https://web.archive.org/web/20130312141851/http://shyouteikin.seesaa.net/article/63516831.html

12/58 Yoshii9 へはiPodは繋がない…iPodの音質の限界を知った切っ掛け
https://web.archive.org/web/20121004002400/http://shyouteikin.seesaa.net/article/129279700.html

iTunes を入手 - Microsoft Store ja-JP
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/itunes/9pb2mz1zmb1s?cid=appledotcom&rtc=1&activetab=pivot:overviewtab

iTunes - アップグレードして今すぐiTunesを手に入れよう - Apple(日本)
https://www.apple.com/jp/itunes/download/

iPodへの曲・音楽の入れ方 iPod Wave
https://www.ipodwave.com/ipod/ipodmusic.htm

35. 中川隆[-14988] koaQ7Jey 2019年11月12日 15:50:54 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2084] 報告

ベルクは 1902年には一家の別荘で雇っていたメイドの女性を妊娠させてしまい、ベルクは私生児アルビーネの責任を負う証書を書かされました。 学業の成績も低迷し、精神的に追い詰められたベルクは自殺未遂に至ります。


63名無しの笛の踊り2016/09/14(水) 09:55:54.29ID:LT1FiVnr

某有名なアバズレの娘(こいつもアバズレ)にちょっかい出して
アバズレにこてんぱんに怒られている可哀相なベルク

43名無しの笛の踊り2016/09/10(土) 08:53:20.69ID:u7btCDEE

ベルクってお手伝いさんに娘を産ませているけれど、
妻との間には子供いなかったよね?

287名無しの笛の踊り2017/12/28(木) 18:38:14.67ID:ZvS0TyM6

メイドさんとの間に生まれた娘のアルビーネは里子に出して結局会えずじまいだったんだっけ
かわいそう
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/classical/1473159439/

▲△▽▼


「火夫―ある断章」 DER HEIZER (1913年 5月)
フランツ・カフカ Franz Kafka
原田義人訳
https://www.aozora.gr.jp/cards/001235/files/49859_41919.html


 十六歳のカルル・ロスマンは、ある女中に誘惑され、その女とのあいだに子供ができたというので、貧しい両親によってアメリカへやられたのだが、彼がすでに速度を下げた船でニューヨーク港へ入っていったとき、ずっと前から見えていた自由の女神の像が、まるで突然強まった陽の光のなかにあるように見えた。剣をもった女神の腕がまるでつい今振り上げたばかりのようにそびえ、その姿のまわりにはただようような風が吹いていた。

「あんなに高いぞ!」と、彼は自分に言い、まるで船を去ることを考えないような様子で、彼のそばを通り過ぎていく荷物運搬人たちがいよいよ数を増していくのに押されて、だんだんと舷側の手すりまでいってしまった。

 航海中に一時的に知合いになった一人の若い男が、通りすがりにいった。

「ほう、まだ降りる気がないのかい?」

「もう準備はすんでいますよ」と、その男に笑いかけながらカルルはいって、自分がたくましい青年なものだから、自慢げにトランクを肩に担いでみせた。しかし、ステッキを少し振りながらもうほかの人びとと去っていくその男のほうを見ていたとき、自分の雨傘を下の船室に忘れてきたことに気づいて驚いた。彼はあまりありがたそうには見えない一人の知人に、ちょっとトランクの番をして下さい、と頼んで、帰りに道をまちがえないようにあたりの様子を見廻してから、急いで立ち去った。下へ降りていって、近道になるはずだった一つの通路がはじめて遮断しゃだんされているのを発見して、困ったことになったぞ、と思った。この遮断はおそらく船客全員を下船させることと関係があるらしかった。そこで、あとからあとから曲りくねった廊下を通り、書きもの机が一つだけぽつりと置いてある人のいない部屋を一つ通って、つぎつぎにつづく階段を骨折って探していたが、この道はただ一、二度だけ、それもいつも大ぜいの仲間と歩いただけだったので、ほんとうにすっかり道に迷ってしまった。途方にくれてしまい、だれにも会わないし、ただたえず頭の上に千人にも及ぶたくさんの人びとの足音が聞こえ、遠くのほうからすでに停止した機関の最後の音がまるで息のように聞こえてくるだけなので、よく考えてもみないで、うろつき廻ったあげくにいきどまりになった任意の小さなドアをノックし始めた。

「開いているよ」と、なかから叫ぶ声がした。そこでカルルはほんとうにほっと息をつきながらドアを開けた。

「なぜそんなに気がちがったみたいにドアを打つんだね」と、一人の大男が、カルルのほうをほとんど見ないでたずねた。どこかの天窓からは、船の上のほうでとっくに使い古されたような陰気な光がこのみすぼらしい船室へ射しこんでいた。この船室にはベッドと棚と椅子とその大男とが、まるで貯蔵品のようにぴったり並んで立っていた。

「道に迷ってしまったんです」と、カルルはいった。「航海中は全然気がつかなかったけれど、恐ろしく大きい船ですね」

「そうさ。あんたのいうとおりだ」と、男はいくらか誇らしげにいいながらも、小さなトランクの錠前を扱うことをやめなかった。両手でくり返しその錠前を押えては、錠のぱちりと下りる音をじっと聞いているのだ。

「まあ、入んなさい!」と、男はさらにいった。「まさか外に立っているわけにもいくまいからね」

「おじゃまじゃないですか」と、カルルはたずねた。

「ああ、どうしてじゃまになんかなるものかね」

「あんたはドイツ人ですか」と、カルルはたしかめようとした。ことにアイルランド人によってアメリカへ着きたての者たちがこうむるおそれのある危険について、いろいろ聞かされていたからだった。

「そうだよ、そうだよ」と、男はいった。

 カルルはまだためらっていた。すると男は不意にドアの取手をつかみ、ドアを素早く閉めるとともにカルルを引きこんでしまった。

「通路からのぞかれるのが、我慢できなくてね」と、男はまたトランクの仕事にかかりながら、いった。「だれでもあそこを通っては、のぞきこんでいきやがる。それに我慢できる者なんてほとんどいないだろうさ」

「でも通路には全然人がいませんよ」と、カルルはいった。ベッドの柱に押しつけられて窮屈そうに立っている。

「うん、今のところはね」と、男がいった。

「だが、その今が問題じゃないか。この男とは話がむずかしいぞ」と、カルルはひそかに思った。

「まあ、ベッドの上に横になんなさい。そこは場所があるからね」と、男はいった。

 カルルはできるだけうまくはって入り、はじめに飛びこんでやろうとして失敗した試みを大きな声で笑った。だが、ベッドに入るやいなや、叫んだ。

「しまった、ぼくはトランクのことをすっかり忘れていた!」

「どこに置いたのかね」

「上のデッキですよ。知っている人が番をしてくれています。ところでなんという名前の人だったかな?」そして、母親が旅行のために上着の裏につけてくれた隠しポケットから一枚の名刺を取り出した。「ブッターバウムだ。フランツ・ブッターバウムだ!」

「そのトランクはとても大切なもんですかい?」

「むろんですよ」

「それならなぜ知らない人にあずけたりなんかするのかね」

「下へ雨傘を忘れたんで取りにきたんですが、トランクをひきずって下りたくはなかったものだから。おまけに道に迷ってしまったんです」

「ひとりかね? つれはいなさらないのかね?」

「ええ、ひとりなんです」

「おそらくこの男を信用したほうがいいのだろう」と、こんな考えがカルルの頭をかすめた。「すぐにこれよりもいい友だちが見つかるものでもないし」

「で、トランクも失くしてしまったわけだね。雨傘のほうはわかんないがね」そして、男はまるでカルルのことが今ではただ一つの自分の関心事となったといわんばかりに、椅子に腰を下ろした。

「でも、トランクはまだ失くなったわけじゃないと思いますよ」

「そう思ううちがしあわせでさあ」と、男はいって、短くて濃い黒い髪の毛をごりごりかいた。「船では、港々でしきたりがちがうんでさあ。ハンブルクではあんたのブッターバウムはきっとトランクの番をしていただろうが、ここではきっとトランクも傘も両方ともあとかたもないだろうよ」

「それじゃあ、すぐ上へいかなくちゃならない」と、カルルはいって、どうやって出ていけるのか、とあたりを見廻した。

「まあ、ここにいなさるんだな」と、男はいって、片手で手荒なくらいに胸を突いてベッドへ押しもどした。

「どうしてです?」と、カルルは腹立たしげにたずねた。

「意味がないからさ」と、男はいった。「ちょっとしたら、わしも行くよ。そのときいっしょにいこう。トランクが盗まれていたら、どうしようもないし、その人が置きっ放しにしておいたなら、船がすっかり空っぽになれば、それだけ見つけやすいわけだ。傘だってそうさ」

「船の上のことはよく知っているんですか?」と、カルルは不信をこめてたずねた。船が空になったら自分の品物がいちばん見つけやすいだろう、というふだんならば納得のいく考えが、隠れた難点をもっているように思われた。

「だって、わしは火夫でさあ」と、男はいった。

「あんた、火夫さんですか!」と、まるでそのことがあらゆる期待を超こえていたようにうれしそうに叫んで、肘ひじをついてその男をもっと近くながめた。

「ぼくがスロワキア人といっしょにいた船室のすぐ前にのぞき窓がついていて、そこから機関室が見えましたよ」

「そうだ。わしはそこで働いていたんだ」と、火夫はいった。

「ぼくは前から機械のことに興味があったんです」と、カルルは一定の考えの筋道をたどりながらいった。「で、もしアメリカにこなければならなかったなら、きっと将来は技師になったことでしょう」

「いったい、なぜこなければならなくなったんだい?」

「いや、どうも!」と、カルルはいって、その話は手を振って拒んだ。そうしながら、告白しないことも大目に見てもらいたいというように、微笑して火夫の顔をじっと見た。

「何かわけがあるんだね」と、火夫はいったが、その言葉でその理由を話すようにと要求しているのか、それともそれを拒もうとしているのか、はっきりはわからなかった。

「今では火夫にだってなってもいいんです」と、カルルはいった。「両親にとっては、ぼくが何になったってどうでもいいんですから」

「わしの職があくよ」と、火夫はいって、それを十分に意識しながら両手をズボンのポケットに突っこみ、しわくちゃな、革のような、鉄色のズボンに包まれている脚をベッドの上に投げ出して、ながながとのばした。そこでカルルはもっと壁のほうによらなければならなかった。

「船をやめるんですか」

「そうだよ。わしらはきょう出発するんだ」

「いったい、なぜなんです? 気に入らないんですか?」

「そうだな、いろいろ事情があってね。気に入るとか入らんとかいうことでは、いつでもきまるもんじゃないさ。ともかく、あんたのいうことはもっともで、わしには気に入らなくもあるさ。あんたはきっと、火夫になることをまじめには考えてはいないんだ。そんなことならいくらでも手軽になれるだろうよ。だから、わしはきっぱりとやめろというね。ヨーロッパで学問するつもりだったのなら、なぜここでも学問しようと思わないんだね? アメリカの大学はヨーロッパのより比べものにならぬくらいいいんだぜ」

「そうかもしれません」と、カルルはいった。「でも、学問するための金がほとんどないんですよ。昼間はどこかの店で働き、夜は勉強して、ついにドクトルになり、たしか市長かなんかになった、っていうような話をだれかの本で読んだことがあるけれど、それには大変な忍耐が必要でしょうね? ぼくにはその忍耐が欠けているんじゃないか、と思うんですよ。その上、ぼくはそれほどいい生徒じゃありませんでした。学校をやめることも、ぼくには実際それほどつらくはなかったんです。それからここの学校はきっともっときびしいでしょうからね。英語はほとんどできないんです。およそここの人たちは外国人にひどく偏見をもっていると思いますね」

「あんたもそれをもう経験したんですかい? そうか、そりゃあいい。それならあんたはわしの相棒だ。いいかね、わしらはドイツ船に乗っているわけだ。ハンブルク=アメリカ航海の船だ。それなのになぜわしらはこの船でドイツ人ばかりじゃないのかね? なぜ機関長はルーマニア人なのかね。機関長はシューバルっていうんだ。こいつが信じられんことだ。このならず者がドイツ船でわしらドイツ人をしぼり上げているんだ。いったいあんたは――」ここで息切れがして、手をゆらゆらと振った。「わしが、文句のための文句をいっていると思うかね。あんたにはなんの力もないし、自分自身がすかんぴんの若者だということはわかっているさ。だが、これじゃあ、あんまりというもんだ!」そして、テーブルの上を拳こぶしで何度かたたき、たたきながらも眼を拳から離さないでいる。「わしはとてもたくさんの船で働いた」――そして彼は二十ばかりの名前を立てつづけにまるで一語のように並べた。カルルは頭がすっかり混乱してしまった。「それでずばぬけた働きぶりを見せて、ほめられた。船長たちの趣味に合った働き手だったんだ。一つの貿易帆船に二、三年もいたこともある」――それが彼の生涯の絶頂であるかのように、立ち上がった。「それがこのボロ船じゃあ、万事が規則ずくめでできているし、洒落気しゃれけひとつあるじゃない。この船じゃあ、わしはなんの役にも立たない。いつもあのシューバルのじゃまばかりして、なまけ者で通っている。海へおっぽり投げられたってしかたがない。給料はお情けでもらっている。こういうんだよ。わかるかね。わしにはわからんね」

「そんなことをいわれて黙っている手はありませんよ」と、カルルは興奮していった。彼は自分が船の不確かな床の上にいて、未知の大陸の岸にいるのだ、という感情をほとんど失くしてしまっていた。こうやって火夫のベッドの上にいて、そんなにも気がおけない思いがするのだった。「で、船長のところへいきましたか? 船長のところであんたの権利を主張したんですか」

「まあ、出ていってくれ。ここから出ていってもらいたいな。ここにいてもらいたくないね。わしのいうことも聞いていないで、わしに忠告しようっていうんだから。どうしてわしが船長のところへいかなきゃならないっていうんだい?」そういうと、疲れたようにまた腰を下ろし、両手のなかに顔を隠した。

「この男にはこれよりいい忠告はしてやれないのだ」と、カルルは自分に言い聞かせた。そして、ばかばかしいと思われるような忠告をこんなところでやっていないで、むしろトランクを取りにいくべきだった、と思った。父親があのトランクを永久に譲ってくれたとき、「どのくらい長くこれを失なくさないでいるかな?」と、冗談にたずねたのだった。そして、この貴重なトランクはおそらくもうほんとうに失くなってしまったのだ。それでもただ一つよかったと思うことは、父親がいくら調べようと思ったところで、彼の現在の状態を知るわけにはいかないということだった。ただ、彼がこの船でニューヨークまできたということだけしか、船会社は父親に教えることができない。だが、トランクのなかの品物をほとんど使わなかったことが、カルルには残念だった。たとえばシャツを着換えることがずっと前に必要だっただろうに。つまり、当をえないところで余計な節約をしていたわけだ。今、これからの人生の門出にあたっては清潔な身なりで登場すべきところを、汚れたシャツを着た姿を見せなければならないのだ。そのほかの点では、トランクを失くしたことはそれほどまずいことではなかったろう。というのは、彼が身につけている服は、トランクのなかにあるのよりもいいのだ。トランクのなかのは、ほんとうはただ間に合せの服で、母親が出発のすぐ前につくろわなければならなかったものだ。今、思い出したのだが、トランクのなかにはヴェロナのサラミ・ソーセージが一本入っていた。これは、母親が特別の贈物としてトランクに入れてくれたものだが、ほんの少ししか食べられなかった。航海のあいだ、まったく食欲がなくて、三等船室で配給されるスープで彼には十分すぎるくらいだった。だが、あのソーセージはもっていたかった。そうすれば、あれをこの火夫にやることができたろう。というのは、こういう連中は何かちょっとしたものをつかませると、すぐ味方につけることができるのだ。そのことは父親から教えられていた。父親は葉巻をわけてやることによって、商売の上で自分とかかり合いのある下っぱの社員たちを手に入れていた。今、カルルが贈物にできるものとしてもっているのは、金だけだった。だが、たといトランクはおそらく失くしてしまうということになっても、金にだけはさしあたり手をつけたくなかった。ふたたび彼のもの思いはトランクにもどっていった。そして、もし今このトランクをあんなに容易にもち逃げされるくらいなら、なぜその同じトランクを航海のあいだあんなに注意深く気をつけていて、それを見張るためにほとんど夜も眠れないくらいだったのか、さっぱりわからなかった。彼は航海中の五晩の夜を思い出した。そのあいだじゅう、彼の左側の二人目に寝床をもっていた小柄なスロワキア人が自分のトランクを狙ねらっていると、たえず疑いをかけていたのだった。このスロワキア人はただ、カルルがついに弱ってしまってちょっとのあいだこっくりこっくり眠るのを待ち受けているのだった。昼間いつももてあそんだり練習したりしていた長いなわを使って、トランクを自分のところへたぐりよせようというわけだ。昼間はこのスロワキア人はひどく罪がないように見えるのだが、夜になるやいなや、ときどき寝床から起き上がって、悲しげな顔つきでトランクのほうを見るのだった。カルルはこうしたこといっさいをはっきりと見わけることができた。というのは、船内規則では禁止されているにもかかわらず、いつでもあちこちで渡航者としての不安から小さな蝋燭ろうそくをつけていて、移民案内社のわかりにくい案内をなんとか呑みこもうとしているのだった。こういう蝋燭が近くにあればカルルは少しはうとうとすることができたが、その火が遠くにあるとか、まっ暗だとかいうときには、眼を開けていなければならなかった。この努力が彼をほんとうに疲れさせてしまった。そして、今となってみると、こんな努力もおそらくまったく無用だったのだ。このトランクをもち逃げしたブッターバウムのやつ、いつかどこかで出会うようなことがあったら、ただではおかないぞ!

 ちょうどそのとき、その部屋の外の遠くのほうで、これまでの完全な静かさを破るように子供の足音のような小さくて短な音が鳴り響いた。その音は響きを強めながら近づいてきた。それは男の人たちの静かな行進だった。通路が狭いのだから当然な話だが、その人たちは一列になって歩いているらしかった。武器の鳴るようなかたかたいう音がした。ベッドのなかで、トランクとスロワキア人とについての心配から解放されて、すんでのことに眠りこもうとしていたカルルはびっくりして起き上がり、火夫をつついて彼の注意を向けようとした。というのは、行列の先頭がちょうどドアのところにまで達したらしかった。

「あれは船のバンドだよ」と、火夫はいった。「上のデッキで演奏を終えて、荷づくりにいくんだ。これで全部すんだと。これでもう出かけられる。さあ、こないか!」

 火夫はカルルの手をつかみ、最後の瞬間にベッドの上の壁から額ぶちに入ったままの聖母像を取り、それを胸のポケットに突っこんで、自分のトランクを手に取ると、カルルとともに急いで船室を出た。

「これからわしは事務室へいき、係の人たちにわしの考えをいおう。もうお客さんはいないから、遠慮していることはないんだ」

 このことを火夫はいろいろな言いかたでくり返し、歩きながら足で横に払って通路を横切っていくねずみを踏みつけようとした。ねずみはもう十分間まに合うところまで達していたのだが、ただもっと素早くその孔あなに飛びこんでいった。火夫はおよそ動作ののろい男だった。というのは、長い脚をもってはいるものの、その脚があんまり重すぎるのだ。

 二人は料理場の一画を通っていった。そこでは二、三人の汚ないエプロン姿の――彼女たちはわざと汁をかけたのだ――女の子たちが、大きなバケツのなかで食器を洗っていた。火夫はリーネとかいう女の子を呼んで、腕を女の腰へ廻し、色っぽくたえず男の腕に身体を押しつけてくるその女をつれて少しばかり歩いた。

「今、給料が出るぜ。いっしょに、こないかい?」と、火夫はいった。

「なぜあたしがいく必要があるのさ? それよりお金をこっちへもっておいでよ」と、女は答え、男の腕をするりと抜けて、逃げ去った。

「そのハンサムな子、どこから見つけてきたのさ?」と、女はきいたが、もう返事なんかしてもらおうと思っているのではなかった。仕事を中断していた女の子たちみんなの笑い声が聞こえてきた。

 二人は先へ進んで、一つのドアのところへきた。そのドアの上には小さな前びさしがついていて、そのひさしは小さい金ぬりの女神像の柱に支えられている。船の設備にしてはほんとうにぜいたくに見えた。カルルは、気づいたのだが、このあたりへ一度もきたことがなかった。おそらく航海中は一、二等の船客たちの専用の場所だったのだろう。ところが船の大掃除を前にした今では隔ての壁がみんな取り外されたのだ。事実、ここへくるまでに二、三人の男たちに出会ったが、みんな箒ほうきを肩に担いでいて、火夫に挨拶したのだった。カルルは船の設備がりっぱなのに驚いた。三等船室ではむろんそんなことはほとんどわからなかったのだ。通路に沿って電線が張られてあり、小さなベルの音がたえず聞こえた。

 火夫はうやうやしくドアをノックして、「入りたまえ」という声がしたとき、かまわずに入れと手でうながした。カルルも入ったが、ドアのそばに立ちどまっていた。部屋の三つの窓の前には海の波が見えた。その楽しそうな動きを見ていると、カルルの胸は高鳴った。まるで五日のあいだ海をたえず見ていたのではなかったようだった。大きな船がたがいに進路を交叉し、その重みが許すだけ打ちつける波に身をまかせていた。目を細くすると、これらの船がただその重みだけでゆれているように見える。マストには細いけれど長い旗が掲げられてあり、それらの旗は航海によってちぢんでしまっていたが、それでもときどきゆれ動いていた。おそらく軍艦からだろうが祝砲が聞こえてきた。あまり遠くないところを通り過ぎていくこうした軍艦の一隻の砲身が、その鋼鉄の被いの反射光で輝き、安全でなめらかだが水平とはいかない航行に愛撫されるように軽くゆらいでいた。小さな船やボートは、少なくともドアのところからは、遠くにしか見られなかったが、大きな船のあいだのぽっかりあいた水面に乗り入れていた。だが、そうしたすべての背後にニューヨークの町が立っており、その摩天楼の何十万という窓でカルルを見ていた。実際、この部屋にいると、自分がどこにいるのか、わかるというものだ。

 円テーブルに三人の人が坐っていた。一人は青い船員の制服を着た高級船員であり、ほかの二人は港務局の役人で、黒いアメリカの制服を着ていた。テーブルの上には、高く積み重ねられたさまざまな書類がのっていて、それらを高級船員がまず手にしたペンでざっとたどり、それから二人の役人に手渡すのだ。役人のほうは、あるいは読んだり、あるいは抜き書きしたり、あるいは書類鞄に入れる。そうでないときには、ほとんどたえず歯で小さい音を立てているほうの役人が、同僚に口授して何か調書に書き取らせている。

 窓ぎわの書きもの机には、背中をドアのほうに向けて、小柄な男が一人坐っている。この男は自分の前のどっしりした本棚のなかに頭の高さに並べられてある大きな二つ折り版の書類を扱っていた。その男のそばには、蓋を開けた、少なくともはじめ見ただけでは空からのように見える小型金庫が置かれていた。

 二番目の窓の前には何も置いてなく、いちばんながめがよかった。ところが、第三の窓の近くには二人の紳士が立って低い声で話していた。一人のほうは窓のそばによりかかっている。この人もやはり船員の制服を着ていて、短剣のつかをいじっていた。この人が話している相手の人は、窓のほうを向いて、ときどき身体を動かすと、相手の胸を飾っている勲章の列の一部分が見えるのだった。この人は私服を着て、細身の竹のステッキをもっていて、そのステッキは両手で腰のところにしっかり当てているため、やはり短剣のように突き出ていた。

 カルルは、こうしたすべてを見るだけのひまがなかった。というのは、すぐ給仕が彼ら二人のほうに近づいてきて、お前なんかここにくる人間じゃないんだというような目つきをして、いったいなんの用か、と火夫にたずねた。火夫は、たずねられたのと同じように低い声で、会計主任さんとお話ししたいのだ、と答えた。給仕は、自分としてはそんな願いはききかねるというふうに手を振って拒んだが、それでも爪先で歩いて、円テーブルを大廻りして避けて二つ折り版をもっている人のところへいった。この人は――はっきりと見えたのだが――給仕の言葉を聞いて身体を硬直させたが、ついに自分と話したいといっている男のほうを振り向いて、きびしく拒絶の意味をこめて、火夫に向かい、そしてまた念を押すため給仕に向っても、手を振って見せた。すると給仕は火夫のところへもどってきて、何かを打ち明けるような調子でいった。

「すぐ部屋から出ていきなさい!」

 この返事を聞いたあとで、火夫はカルルを見下ろした。まるで、この男こそ無言で自分の悩みを訴えるべき相手だといわんばかりの様子だった。カルルは前後の見さかいもなく出しゃばっていき、部屋を横切って足早に歩いていった。そのため高級船員の椅子をかすかにかすめるほどであった。給仕は彼をつかまえようとして両腕を拡げ、毒虫を追うように身体をかがめて走ったが、カルルのほうが先に会計主任の机に達した。そこでは主任は、給仕がこの男をつれ去るだろうと考えて、しっかりした態度を保っていた。

 むろんすぐに部屋全体が活気を帯びた。テーブルに坐っている高級船員は飛び上がった。港務局の二人の役人は、静かに、しかし注意深くながめている。給仕は、すでに偉い人たちが関心を示すようになったところでは自分の出る幕ではない、と思って、引き下がってしまった。ドアのそばの火夫は、自分の助けが必要となる瞬間を緊張して待ち構えている。会計主任はとうとう安楽椅子に坐ったまま大きく右旋回した。

 カルルは、これらの人びとの視線にさらされることをちっともためらわずに、例の隠しポケットをごそごそ探して、旅券を取り出した。そして、これ以上自己紹介するかわりに、その旅券を開いたまま机の上に置いた。会計主任はこんな旅券はどうでもいいと考えているらしかった。というのは、二本の指でそれをわきへどけたのだ。するとカルルは、まるでこの手続きが満足すべき結果で終ったとでもいうように、旅券をまたポケットにしまいこんだ。

「失礼ですが申し上げます」と、カルルは語り始めた。「ぼくの考えによるとあの火夫さんに不当な扱いが加えられたんです。この船であの人の上にいるのはシューバルとかいう人です。あの人自身は、すでにたくさんの船で(あの人はあなたにそれらの船の名前をみんな申し上げることができますが)完全に満足すべき勤めをしました。勤勉で、仕事のことを大切に考えています。たとえば貿易帆船ほどに勤めが法外にむずかしいわけでないこの船で、なぜあの人がどうもしっくりいかないのか、ほんとうにわかりません。だから、あの人の昇進を妨げ、あの人の真価がみとめられることをだめにしているのは、ただいわれのない悪口にすぎないのかもしれません。そうでなかったら、この人はかならずや真価をみとめられないでいるはずがないのです。ぼくはこの件についてただ一般的なことだけを申しました。あの人の特別な苦情についてはあの人からあなたに自分で申し上げることでしょう」

 カルルはこの演説でここにいるすべての人に呼びかけたのだった。事実、みんなも聞いていたし、会計主任が正しい人間だというのよりも、みんなのなかにだれか正しい人間が一人いるということのほうがいっそうありそうに思えるのだった。さらに、彼がこの火夫に出会ったのはほんのついさっきのことだ、ということは抜け目なくいわないでおいた。ともかく、もし彼が今いる場所からはじめて見た例の竹のステッキをもった紳士の赤ら顔に当惑させられなかったならば、もっとうまく話すことができただろう。

「その話は一語一語みんなほんとうです」と、まだだれもたずねないし、まだだれもおよそ彼のほうを見もしないのに、火夫はいった。火夫のこの早まりすぎた行動は、もし例の勲章をつけた紳士が(そのときカルルにわかったのだが、ともかくこの人が船長だった)火夫のいうことを聞こうという気にすでになったらしいのでなかったならば、大きな失策だったことだろう。つまり、その人は手をのばして、火夫に向って叫んだのだった。

「こっちにきたまえ!」

 その声は、一撃で話をつけようとして断固とした響きをもっていた。今はいっさいが火夫の態度にかかっていた。というのは、彼の件の正しさに関しては、カルルは少しも疑ってはいなかった。

 ありがたいことに、火夫がすでに世間をいろいろ渡ってきたことが、この機会に示された。非の打ちどころなく落ちついて、小さなトランクから最後の一つかみで一束の書類と一冊のメモ帳とを取り出し、それをもって当然のことのように会計主任をまったく無視して船長のところへ歩みより、窓わくの上に証明書類を拡げた。会計主任には、自分からそこへ出かけていくよりほかに方法がなかった。

「この男は有名な不平屋でして」と、会計主任は説明のためにいった。「機関室によりも会計にいることのほうが多いんです。この男はあのおとなしい人間のシューバルさえもすっかり絶望させてしまったのです。どうかお聞き下さい!」それから火夫のほうに向きなおっていった。

「君の厚かましさもほんとうに度を越しているよ。君はこれまでに何度、支払い部屋からほうり出されたんだ。君のようにまったく、完全に、例外なく不当な要求をやるなら、そんな扱いを受けるのがあたりまえさ。君は何度、そこから会計課へかけこんだのかね。シューバルが君の直接の上役なのだから、君は下役としてあの人とだけで話をつけるように、って何度おだやかに言い聞かされたのかね。それなのに今度は、船長さんがいられるとこんなところにまでやってきて、船長さんをわずらわすことを恥じないで、君のくだらない訴えの代弁者としてこんな子供みたいな人までつれてくることをちっともはばからないんだからね。こんな子供さんなんか、私はおよそこの船ではじめて見るんだがね!」

 カルルは、無理に自分を抑えて、飛び出すことはひかえていた。だが、すでに船長もそこへきていて、こういった。

「まあ、この男のいうことも一度聞いてやろうじゃないか。あのシューバルはどのみち、ゆくゆくは私に対してはあまりに自分勝手なことをやるようになるだろう。といっても、君の有利になるようにこんなことをいったつもりじゃないのだが」

 終りの言葉は火夫に向っていったのだ。彼がすぐ火夫のために尽力するわけにいかないのは当然すぎることだったが、いっさいは順調に進んでいるように見えた。火夫は説明を始め、最初からシューバルを「さん」づけで呼んで自分を抑えていた。会計主任のいなくなった机のところで、カルルはどんなによろこんでいたことだろう。彼はただなぐさみのために手紙秤ばかりを何度も手で押えつけていた。――シューバルさんは不公平です! シューバルさんは外国人にえこひいきします! シューバルさんは火夫たちを機関室から出して便所掃除をさせました。これはけっして火夫のやるべき仕事じゃありません!――一度などは、シューバル氏の腕前さえもあやしいものだというようなことがいわれた。それはほんとうにもっているよりも、むしろ見かけだけのものだ、というのだ。ここのところで、カルルは力をこめて船長を見つめた。まるで自分が船長の同僚であるかのように親しげな調子であった。これもただ、火夫のいくらかまずい表現法によって船長が火夫にとって不利なような影響をこうむることを避けようとしたのだった。ともかく、いろいろの話からもほんとうのところは聞き取ることができなかった。そして、船長はまだ、今度は火夫の言い分を最後まで聞いてやろうという決意を眼に浮かべて、前を見ていたけれども、ほかの人びとはじりじりしてきた。そして、火夫の声はまもなく無制限に部屋を支配しなくなった。そのことはいろいろなことを心配させた。まず最初に、私服の紳士は竹のステッキを動かし始め、低くではあるが、はめこみの床をたたいている。ほかの人びとはむろんときどきそちらを見やった。港務局の役人たちは、急いでいるらしく、また書類を手に取って、まだいくらか気が散っているようではあるが書類を調べ始めた。高級船員は自分の机をまた身近かによせた。勝ち目があると信じている会計主任は、皮肉まじりに深い溜息をもらしてみせた。ただ給仕だけはみんなが襲われているむら気に取りつかれずにいるように見えた。そして、偉い人たちのあいだに置かれた哀れな男の苦しみに一部分同感して、カルルに向って真顔でうなずいて見せる。まるでそんな表情によって何かを説明しようとしているかのようだ。

 そうしているうちに、窓の前では港の風景がつぎつぎとくりひろげられた。一隻の平たい貨物船が、ころがり出さないように妙なふうに積み重ねられた樽たるの山をのせて、この船のそばを通り過ぎていった。そのためにこの部屋はほとんどまっ暗になってしまった。小さなモーターボートが、もしカルルにひまがあったらよく見ることができただろうが、舵のところにまっすぐに立った男の両手の動きに従いながら一直線に疾走していく。奇妙な形をした浮遊物がときどきじっとしてはいない水面からひとりでに浮かび上がっては、すぐまた波をかぶって、驚いている視線の前で沈んでしまう。遠洋航海の汽船のボートは、懸命に漕こいでいる水夫たちによって進められていくが、船客でいっぱいだ。船客たちはボートのなかで、押しこめられたままになって、静かに、期待にみちて坐っているが、何人かは移り変っていく光景を見ようとして頭を廻さないではいられない。終わることのない動き、落ちつくことのない水によって途方にくれている人びとと彼らの仕事との上に移された落ちつきのない動揺だ!

 だが、いっさいは急ぐように、はっきりするように、くわしく述べるように、と警告しているのだ。ところが、火夫は何をやったのだろうか。なるほど汗を流して話してはいる。窓の上の書類はふるえる両手ではもうずっと前から支えていることができなくなっていた。四方八方からシューバルに関する不平が彼に流れてきている。そのどれもが彼の考えによれば、このシューバルを完全に葬り去るのに十分だ、というのだ。ところが、彼が船長に示すことができたのは、すべてのことをごちゃまぜにした悲しむべき混乱だけだった。竹のステッキをもった紳士は、さっきから天井に向ってそっとパイプをふかしている。港務局の二人の役人はすでに高級船員を自分たちの机につかまえ、相手をまた離しそうには見えない。会計主任は明らかにただ船長が落ちつき払っているために口をはさむことをひかえているのだ。給仕は気をつけの姿勢でいつでも火夫に関する船長の命令に従おうと待ち構えている。

 そこでカルルはもう何もしないままでいることができなかった。そこでゆっくりと船長たちのほうに歩いていき、歩きながらそれだけ素早く、どうやったらいちばんうまくこの一件に口を出していくことができるだろうか、と考えてみた。もうほんとうに潮時しおどきだった。もうほんの少したったら、彼らは二人でうまく事務室から飛び出すことができるのだ。船長はいい人らしいし、それにちょうど今、カルルにはそう思われたのだが、自分が公正な上役であることを示そうとする何か特別の理由があるのだ。だが結局のところ、船長は徹底的に弾ひくことができる楽器ではないのだ。――そして火夫は、なるほど限りなく憤っている内心からではあるが、まさにそういうものとして船長を扱っているのだ。

 そこでカルルは火夫に向っていった。

「もっと簡単に話さなくちゃ。もっとはっきりわかるように。船長さんは、あんたがお話ししているようでは、もっともと思っては下さらないですよ。船長さんが機関士たちや伝令係たちの名前とか洗礼名とかまでご存じで、あなたがそんな名前を言いさえすれば、すぐにだれのことかおわかりになるものですかね。あんたの苦情を整理して、まずいちばん大切なのを申し上げ、ほかのは一段下のものとして申し上げるんですね。そうすればおそらく、たいていのことはただいうことももう必要じゃなくなるでしょう。あんたはぼくにはいつだってあんなにはっきりと話して聞かせたのに!」もしアメリカでトランクを盗むやつがいるなら、ときどきはうそをついてもいいわけだ、と彼は自分のうその弁解のために考えた。

 これが役に立ったならばいいのに! もう遅すぎたんじゃなかったか。火夫は知っているカルルの声を聞くと、なるほどすぐに話を中断はしたが、男としての名誉を傷つけられたこと、恐ろしいさまざまな思い出、現在の極端に苦しい立場、こういったことのために涙を流し、その涙にすっかり曇ってしまった彼の眼ではすでにカルルをうまく見わけることができなくなっていた。今になってからどうして――カルルは今黙っているこの男を前にして、無言のうちにこのことを見抜いていた――、今になってからどうして突然、彼の話しかたを変えることができよう。火夫にとっては、いうべきことはみんないってしまったのに、少しもそれをみとめてはもらえないように思えるし、また一面では、まだ何もいっていないのだが、さらにすべてのことを聞いてくれと今は求めることができないように思えてもいるのだ。そして、こうしたときに、さらに自分のただ一人の味方であるカルルが口を出してきて、自分は教訓を与えようとする。ところが、教訓のかわりに、いっさいが、いっさいがもうだめなのだ、と教えているのだ。

「窓からなんかながめていないで、もっと早くここへくればよかった」と、カルルは自分にいって、あらゆる希望の綱は切れたということを示す合図に、火夫の前で顔を伏せ、両手でズボンのぬい目のところをたたいた。

 ところが火夫はそれを誤解して、きっとカルルの態度に何か自分に対するひそかな非難を嗅かぎ出したのだろう。そして、その非難をカルルに思いとどまらせようという善意の意図から、自分の行為の仕上げといわんばかりに今度はカルルと口論をし始めた。円テーブルの人たちは、自分たちの重要な仕事のじゃまをしているこんな無益なさわぎにさっきから腹を立てていたし、会計主任はだんだんと船長の忍耐が理解できなくなって、今にも爆発しそうになっていた。給仕はふたたび紳士がたの仲間に入って、火夫をけわしい目つきでじろじろ見ていた。最後に竹のステッキをもった例の紳士は、船長もときどきは親しげな視線を送っていたのだが、もう火夫に対してすっかり冷淡になってしまっていた。それどころか嫌気がさしてしまい、小さなメモ帳を取り出して、どうもまったく別な用件をあれこれ考えているらしく、メモ帳とカルルとのあいだに眼をあちこちと移していた。

「わかっていますよ、わかっていますとも」と、カルルはいった。彼は今では自分に向けられた火夫の長広舌を避けようと骨を折っていた。それでもあらゆる争いの合い間にまだ火夫に対する友情の微笑を忘れてはいなかった。

「あんたのいうことはもっともだ。正しい。ぼくはそれを疑ったことは一度もありませんとも」彼はなぐられることを恐れるあまり、火夫の振り廻している両手をとめたかった。とはいえ、もっとしたいことといえば、火夫を片隅へ追いこんで、ほかのだれにも聞かれないように、一こと二こと、低い声でなだめる言葉をささやいてやる、ということであった。ところが、火夫はまったく羽目をはずしていた。カルルは今ではもう、火夫はせっぱつまれば絶望的な力を振りしぼってここにいる七人の男たちを征服するかもしれない、などということを考えて、その考えから一種のなぐさめをくみ出し始めてさえいるのだった。とはいっても、書きもの机の上には、そこをちょっと見ただけでわかるのだが、電気装置のたくさんの押しボタンのついた台があった。それに手をかけ、ただ簡単にそれらのボタンを押しさえすれば、敵意をもつ人間たちであふれている通路が縦横に通じているこの船全体に暴動をひきおこすことができるのだ。

 そのとき、あんなに無関心であった竹のステッキをもった紳士が、カルルに近づいてきて、ひどく高い声ではなかったが、火夫のどなり散らしている叫び声を圧してはっきりわかるように、「いったい、君はなんていう名前ですか」と、たずねた。この瞬間、まるでだれかがドアのうしろでこの紳士の発言を待っていたかのように、ノックする音がした。給仕は船長のほうを見た。船長はうなずいた。そこで給仕はドアのところへいき、ドアを開けた。ドアの外には古いカイゼル服を着て、中肉中背の男が立っていた。その外見からいうとほんとうは機関の仕事に適してはいなかった。だが、これがシューバルだった。ある種の満足を表わしているみんなの眼で、カルルはこの男がシューバルだということに気づかなかったとしても(船長さえ満足の気持からのがれてはいなかった)、火夫の様子でそれとわかって驚かないわけにはいかなかっただろう。なにしろ火夫は、力のこもった腕に拳をしっかと固めて、まるでこの固めた拳こそいちばん大切なものであり、そのためには自分の生命のすべてを犠牲にする覚悟でいるように思われるのだった。そこに彼の力のすべてがこもっていて、また彼の身体をおよそきちんと起こさせている力もその拳にこもっていた。

 こうして敵が現われたわけだが、礼装を着てこだわりなく元気で、わきの下に帳簿を抱えている。おそらく火夫の賃金表と労働報告書とであろう。そして、一人一人の気分をまず何より先にたしかめようとしていることをひどく露骨に顔に出して、順を追ってみんなの眼をながめていた。七人ともすでに彼の味方であった。というのは、船長はさっきは彼に対してある文句をもっているか、あるいはただそれを口実としているかしたのであるが、火夫が自分に対して害を与えたあとの今となっては、おそらくシューバルを非難することはほんの少しでもないように見えた。この火夫のような男に対しては、いくらきびしい扱いをしても十分ということはないのだ。そして、もしシューバルに対して非難すべきものがあるならば、それは彼が火夫の反抗心をこれまでのうちに打ち破ることができず、そのために火夫がきょうはあえて船長の前にまで現われるにいたったという事情そのものであった。
 ところでおそらくこう考えることもできた。火夫とシューバルとの対立は、上級の法廷を前にして表われるような効果を、この人びとを前にしてもきっと表わさないではいないだろう。というのは、シューバルがいくらうまくよそおうことができたところで、しかしそれを最後までもちこたえることはできないにちがいなかった。彼の悪がほんの少しひらめいただけでも、それをこの人たちにはっきりと見させるのに十分だろう。その手はずを進めてやろうとカルルは思った。彼はこれまでについでながらここにいる一人一人の洞察力どうさつりょく、弱点、気まぐれなどを知っていた。そして、この観点からいうと、これまでここで過ごした時間はけっしてむだではなかったわけだ。火夫がもっと事態に応じるだけの才覚をもっていたらよかったが、しかしこれは完全に闘争能力をもたないように見えた。もし彼にシューバルを向かい合わせたら、きっとこいつの憎い頭蓋骨ずがいこつを拳でたたくことはできただろう。しかし、ほんの一、二歩だけでもシューバルの[#「シューバルの」は底本では「シュバールの」]ほうに向って自分から進んでいくことは、きっとほとんどできなかったろう。シューバルが自分から進んでやってくるのではなくとも、船長に呼ばれて最後にはやってこないわけにはいかないという、ひどくやさしく予想できることを、カルルはなぜ予想しなかったのだろう。カルルと火夫との二人が実際にやってしまったように、救いがたいほど手ぶらで、いとも簡単にドアがあるところへ入るなどというのではなく、なぜカルルはやってくる途中、火夫とくわしく戦闘計画を相談しておかなかったのだろうか。いったい火夫はものをいうことができるだろうか。これはいちばんうまくいった場合だけに行われるのではあるが、もしくわしい訊問が行われるとしても、その場合に必要なイエスやノーを火夫はいえるだろうか。火夫はそこに突っ立っている。両脚を開いて、膝は不安定であり、頭は少しばかり上げている。開いた口を通って空気が出入りしていて、まるで胸のなかにはその空気を使う肺がないかのようだ。

 とはいえ、カルルはおそらく故郷にいるときは一度もなかったほど、力強く、頭もさえているように感じられた。彼が外国でりっぱな人たちを前にして善のために闘い、まだ勝利をもたらすまでにはいたっていないにしても、もう最後の征服の準備が完全にできているのを、彼の両親がもし見ることができたならば、なんといったことだろう。両親は彼についての意見を修正するだろうか。自分たちのあいだに彼を坐らせて、ほめてくれるだろうか。彼らにとても従順な彼の眼のうちを一度は、一度は見入るだろうか! これはどうもたしかとはいえない問いだし、またそんな問いを提起するのにはまったく不適当な今の瞬間なのだ!

「私がやってきたのは、火夫が私の不正直さということを何か非難しているからです。料理場のある女の子が、この男がここへやってくるところを見かけた、と私に言いました。船長さん、並びにみなさん、私はどんな非難でも、私の書類を使って、あるいは必要の場合にはドアの前に立っている偏見のない公平な証人たちの陳述によって、否定し去る用意があります」シューバルはこう語った。

 これはなるほど一個の男のはっきりした話ではあった。聞き手たちの顔つきに表われた変化によると、彼らは長い時間かかってはじめて人間の声をまた聞いているのだ、と思うことができるだろう。むろん彼らは、このりっぱな話にさえもいろいろ欠陥があるということに気づいてはいなかった。なぜ彼が思いついた最初の具体的な言葉が〈不正直さ〉というものなのだろうか。おそらく、彼の国民的偏見などということではなくて、非難はこの点に向けられなくてはならなかったのではないだろうか。料理場の女の子が火夫が事務室へいく途中だったのを見て、シューバルはそれを聞くとただちになんのためにいくのかわかったというのか。彼の頭をそんなに鋭敏にしたのは、彼自身の罪の自覚ではないのだろうか。そして、彼はすぐ証人たちをつれてきて、しかもその証人たちが偏見がなくて公平だというのか。ぺてんだ、ぺてん以外の何ものでもないのだ! それなのに、この人たちはそれを黙って聞いており、その上にそれを正しい態度とみとめているのか。なぜ料理場の女の子の報告から彼がここにつくまでのあいだに、疑いもなくひどく時間がかかったのか。その目的はただひとえに、それによって火夫が要領をえない話でこの人たちを疲れさせ、そのためにこの人たちが明晰めいせきな判断力を失ってしまう、ということを狙ねらったのだ。この人たちの明晰な判断力こそ、何よりもシューバルが恐れなくてはならないものなのだ。彼はきっとすでに長いあいだドアのむこうに立っていたのであり、あの人のどうでもいいような質問から考えるのに、火夫がもうやられてしまった、と期待できる瞬間になってやっとドアをノックしたのではなかったろうか。

 いっさいは明らかであった。そして、シューバルによっても意に反してそういう事情が述べられたのだった。だが、ほかの人たちに対してはもっと別なふうに、もっとわかりやすく教えてあげなければならない。彼らは目をさましてやることが必要なのだ。だからカルル、急ぐんだ、証人たちが現われ、いっさいをうその洪水でわからなくしてしまう前に、少なくとも今の時間を十分に利用するんだ。

 だが、そのとき船長は手で合図してシューバルを黙らせた。シューバルはその合図を受けるとすぐに――というのは、彼の一件がほんのしばらくのあいだ中断されたように見えたからだった――わきへどいて、早くも彼の味方についた給仕と低い声で話し始めた。そして、火夫とカルルとのほうに横眼を使ったり、まことに確信ありげな手の動作をしたりしないではいなかった。シューバルはこうやってこのつぎの大演説の練習をやっているらしかった。

「この青年に何かおたずねになろうとされたのではありませんか、ヤーコプさん?」船長はみんなが黙りこくっているなかで、こう竹のステッキの紳士に向っていった。

「そうですとも」と、紳士は小さくうなずきながら、船長が気をきかせてくれたことに感謝していった。それからもう一度、カルルに向ってたずねた。

「君はいったいなんていう名前だね?」

 こんなしつっこい質問者というこの突発事を早く片づけることがこの重大な本筋と関係ありと考えたカルルは、彼の習慣となっているように旅券を見せて自己紹介するとなると、まずはじめにその旅券をポケットのなかから探さなければならないので、そんなことはやめてしまい、ただ手短かに答えた。

「カルル・ロスマンです」

「それじゃあ」と、ヤーコプと呼ばれたこの人はそういって、ほとんど信じられないといったふうに微笑しながら、あとしざりした。船長も、会計主任も、高級船員も、そればかりか給仕さえも、カルルの名前のために度はずれな驚きをはっきりと示した。ただ港務局の二人の役人とシューバルとだけが、無関心といった態度をとっていた。

「それじゃあ」と、ヤーコプ氏はくり返して、いくらかこわばった足取りでカルルのほうへ近づいてきた。「それなら、私はお前の伯父のヤーコプで、お前は私の甥おいだ。さっきから、そんなことは少しも知らなかった!」そう船長に向っていうと、つぎにカルルを抱いて接吻した。カルルは無口のまま、すべてされるままになっていた。

「あなたのお名前は?」と、カルルは身体をゆるめられたと感じたあとで、なるほどうれしそうにではあるが、まったく無感動にたずねた。そして、この新しいできごとが火夫に対して及ぼすだろうと思われる結果を予測しようと努めた。

「これはあなたにとっての大変な幸運ですよ」と船長はいった。船長は、カルルの紳士に対する質問によってヤーコプ氏という人物の品位が傷つけられたと思ったのだった。ヤーコプ氏は窓に向って立っていた。自分の興奮した顔をほかの人びとに見せなくてもすむように、ということらしい。そして、その上、顔をハンカチで軽くたたいている。「あなたに伯父様として名のられたのは、上院議員エドワルト・ヤーコプ氏です。これからは、おそらくあなたのこれまでの期待とはちがうことでしょうが、輝かしい将来があなたを待っています。今この最初の瞬間のうちにそのことを呑みこもうとなさい。そして、しっかりしなさい!」

「ぼくはなるほどアメリカにヤーコプという伯父さんをもってはいます」と、カルルは船長に向っていった。「でも、ぼくが聞きあやまったのでなければ、ヤーコプというのはこの上院議員さんの姓でしたね」

「そうですよ」と、船長は期待にみちていった。

「ところで、ぼくの伯父さんのヤーコプは、ぼくの母の兄ですが、洗礼名がヤーコプっていうんです。で、姓はむろん母のと同じはずですが、母は旧姓ベンデルマイヤーっていうんです」

「みなさん!」と、窓ぎわで気をとりしずめていた場所から元気よくもどってきた上院議員は、カルルの説明に関連して叫んだ。港務局の役人を除いて、みんなが笑い出した。ある者は感動しているようであり、ある者はどういうつもりなのかわからなかった。

「ぼくのいったことは、けっしてそんなに滑稽なことではないのに」と、カルルは思った。

「みなさん」と、上院議員はくり返した。「みなさんは、私の意志とみなさんご自身の意志とに反して、つまらぬ家庭の一幕に立ち会われているわけです。そこで私としては、みなさんにご説明申し上げないわけにはいきません。というのは、私の考えますところでは、ただ船長さんだけが」――こういうと、二人はたがいに目礼を交わすのだった――「事情をすっかりご存じなのです」

「今のところぼくはほんとうにどの一ことにも注意して聞かねばならないぞ」と、カルルは自分に言い聞かせ、ふと横をながめると火夫の姿に生気がもどり始めているのをみとめて、よろこんだ。

「私は長年にわたるアメリカ滞在のあいだに――この滞在という言葉はむろんここでは一人のアメリカ市民にとってはぴったりするものではないのですが。なにしろ私は真底からアメリカ市民でありますから――、で、長年にわたり、私はヨーロッパの親戚とはまったくつながりをもたずに暮らしていました。その理由は、第一のはここで申し上げるにふさわしいものでなく、第二の理由をお話しすることは、私にとってあまりにも迷惑なのです。おそらく私の甥にそれを語ってやらなければならないときがくると思いますが、そのときのことが心配なくらいです。話すときには、残念ながらこの子の両親とその一族とについて率直な言葉を語ることが避けられないでしょう」

「これはぼくの伯父さんだぞ、疑う余地はない」と、カルルは自分に言い聞かせ、耳を傾けていた。「おそらく名前を変えたのだろう」

「私の甥は今では両親から――事の真相を示す言葉を使うことにしましょう――あっさり捨てられたのです。ちょうど、猫がしゃくにさわると、ドアの前に投げ出されるようにです。私の甥が何をやってこんなふうに罰を受けたのか、私はとりつくろって申すつもりはありません。しかし、甥のあやまちは、それを申しただけですでに十分弁解になる理由を含んでいるようなたぐいのものなのです」

「これは聞く価値があるぞ」と、カルルは考えた。「でも、伯父さんがあれをみんなに話すのは困るぞ。ところで、伯父さんはあれを知っているはずはないんだが。いったい、どこから聞いたんだろう?」

「つまり」と、伯父は語りつづけ、ちょっと身体を傾けて前に踏んばっている竹のステッキにもたれた。それによって実際、この件から不必要ないかめしさを取り除くことに成功した。そうでなければこの件はきっとそんな不必要にまじめな調子を帯びたことだろう。「つまり、甥はヨハンナ・ブルマーという女中に誘惑されたのです。これはおよそ三十五歳ほどの女です。この〈誘惑された〉という言葉で甥の気を悪くさせたくはないのですが、ほかの同じようにぴったりした言葉を見つけ出すことは困難なのです」

 すでに伯父のかなり近くへ歩みよっていたカルルは、この話の与えた印象をこの場にいる人びとの顔から読み取ろうとして、このとき振り向いてみた。だれも笑う者はなく、みんな忍耐強く、まじめそうに聞いていた。結局のところ、最初の機会が生じたというときに、上院議員の甥のことを笑うわけにはいかないのだ。むしろ、火夫がほんのちょっとではあるがカルルにほほえみかけたといえたかもしれない。だが、これは第一に彼が新しい生気を取りもどしたしるしとしてよろこばしいことであり、第二にはもっともなことでもあった。なぜなら、実際カルルはあの船室で、今ではこんなにもひろまってしまったこの件を極秘にしておこうとしたからだった。

「ところでこのブルマーが」と、伯父は語りつづけた、「甥の子供を生みました。じょうぶな男の児で、洗礼のときヤーコプという名をつけられました。疑いもなく不肖ふしょうこの私を頭においてのことであります。この私のことは、甥がきっとただまったくさりげなく話しただけだと思われますが、それでさえその女の子に少なからぬ感銘を与えたにちがいありません。幸いなことに、と私はいわないわけにまいりません。というのは、両親は養育費の支払いとか自分たちの身にまで及ぶそのほかのスキャンダルとかを避けるために――私は強調しておかねばなりませんが、あちらの法律も、また両親のそのほかの事情も知りません――、で、養育費の支払いとスキャンダルとを避けるために、彼らの息子、つまり私の甥をアメリカへ運ばせたのです。ごらんのとおり、こんな無責任きわまる不十分な支度しかしてやらずにです。それゆえ、この子は、もしこのアメリカにかろうじて生き残っている神意のしるしと奇蹟とがなかったならば、自分の身ひとつをたよりにしなければならず、きっとたちまちのうちにニューヨーク港の裏町のどこかで零落したことでしょう。もしその女中が私宛ての手紙、しかもそれは長いことあちらこちらとさまよっておとといやっと私の手に入ったのですが、その手紙のなかで一部始終を知らせ、それに甥の人相のことや賢明にも船の名前も添えて書いてよこさなかったならば、そんなことになったかもしれません。もしみなさんを面白がらせるつもりならば、その手紙の二、三の箇所を」――といって、伯父はこまかな字で書かれた大きな二枚のレターペーパーをポケットから取り出し、それを振って見せた――「ここで朗読することもできるでしょう。この手紙はきっと効果があるでしょう。つねに善意からではあるが、いくらか単純なずるさと、子供の父親である甥に対する大きな愛情とをもって書かれているからです。だが、事情を説明するために必要である以上にみなさんを面白がらせるつもりはありませんし、また甥を迎えるにあたって、おそらくまだ残っている甥のいろいろな感情を傷つけるようなことをやりたくもありません。甥は、もしそうしたいなら、すでに彼を待っている部屋の静けさのなかでこの手紙を読んで、それを知ればいいのですから」

 だが、カルルはその女中に対してなんらの感情も抱いてはいなかった。いよいよ遠くへ退いていく過去の、ひしめき合う思い出のなかで、その女は台所で戸棚のそばに坐っている。その棚の板の上に両肘をついている。彼が父親のために水を飲むコップを取りにとか、母親に頼まれたことをやるためにとかでときどき台所へいくと、女は彼をじっと見るのだった。ときどきは台所の戸棚のわきで変な姿勢で手紙を書いており、カルルの顔を見て霊感を引き出すのだった。ときどきは片手で両眼を被っていた。そういうときは、いくら彼女に呼びかけても、彼女の耳にはとどかなかった。ときどきは台所のわきの自分の小さな部屋でひざまずいて、木の十字架に祈っていた。そういうときには、カルルはただおずおずしながら、通りすがりに少し開いているドアのすきまを通して女の姿を見るのだった。ときどきは、台所で走り廻って、カルルが彼女の道をふさぐと、魔女のように高笑いしながら、跳び下がった。ときどきは、カルルが入っていくと、台所のドアを閉めて、カルルがどいてくれと要求するまで手でドアの取手を押えていた。ときどきは、カルルが全然欲しくもない品物をもってきて、無言でそれを彼の両手のなかに押しつけるのだった。ところが、あるとき、「カルル」といって、思いがけないその呼びかけにまだ驚いている彼を、しかめ面をして溜息をもらしながら自分の小さな部屋へつれこみ、部屋に鍵かぎをかけた。

 女は絞め殺さんばかりにカルルの首に抱きつき、服を脱がせてくれと頼みながら、自分のほうでも実際に彼の服を脱がせ、ベッドの上に寝かせた。まるで今からは彼をだれの手にもやらず、この世の終りまで、なでいつくしみたいといわんばかりだった。「カルル、おお、あたしのカルル!」と、女は叫び、彼をながめて、彼を所有していることをたしかめようとするかのようだ。

一方、彼のほうは何一つ眼に入らず、女が特別彼のために積み重ねたらしいたくさんの暖かいかけぶとんのなかで不快に感じていた。それから女は彼により添って寝て、彼の秘密を何か聞きたいといったが、彼が何もいうことができないので、冗談でなのか本気なのかわからないが怒って、彼の身体をゆすり、耳をあてて心臓の鼓動を聞き、同じように聞いてみろといって自分の胸をさし出した。ところが、女はカルルにそうさせることができないと、自分の裸の腹を彼の身体に押しつけ、手で彼の両脚のあいだを探った。あんまりいやらしいので、カルルは頭と首とを枕から振りはずしてしまった。それから女は、腹を二、三度彼に向って押しつけた。――カルルには、まるで女が自分自身の一部であるような気がした。おそらくこの理由から恐ろしくみじめな気持に襲われたのだろう。女のほうから何度も何度もまたのあいびきをせがまれたあとで、カルルは泣きながら自分のベッドへもどった。これだけのことだったが、伯父はそれから大きな物語をつくり出すことを心得ていた。で、その女中が伯父のことを考えて、伯父に彼の到着を知らせたというわけだった。じつにいいことをやってくれた。自分としてもきっとその女にいつかむくいてやるだろう、と伯父はいった。

「で今、私がお前の伯父かそうでないか、お前の口からはっきり聞こう」と、上院議員は叫んだ。

「あなたはぼくの伯父さんです」と、カルルはいって、彼の手に接吻し、そのかわりに額に接吻してもらった。「あなたに会って、ぼくはとてもうれしいです。でも、ぼくの両親が伯父さんについて悪いことだけ話していると思うなら、まちがいです。でも、それは別問題としても、あなたの話にはいくらかのまちがいが入っていました。つまり、実際には万事がそんなふうに起ったのではありません。けれども、伯父さんはほんとうにこのアメリカからでは事柄に十分な判断を下すことは無理です。それに、このみなさんにあまり関係はない件のこまかな点で少しばかりまちがったことを教えられても、そうたいして害にはならないと思います」

「よくいった」と、上院議員はいって、明らかに同感を示している船長の前にカルルをつれていき、たずねた。「私はすばらしい甥をもっているでしょう?」

「甥御おいごさんとお知合いになれまして、私は大いによろこんでいます」と、船長はただ軍隊の訓練を受けた人たちだけがやるようなお辞儀をしながらいった。

「こうした[#「「こうした」は底本では「こうした」]めぐり合いの場所を提供できましたことは、本船の光栄とするところです。しかし、三等船客としての航海はきっとひどかったことでしょう。しかし、どなたが乗船しておられるかわかりませんのでね。ところで、われわれは三等の人たちの航海をできるだけ楽にしてあげるように、ありとあらゆることをやっています。たとえば、アメリカ船よりもずっと多くのことをやっております。けれども三等の航海をたのしみにするということまでには、なんといってもまだいたっていません」

「ぼくにはちっとも悪いことなんかありませんでした」

「甥にはちっとも悪いことなんかなかったそうですぞ」と、上院議員は大きな声で笑いながらいった。

「ただトランクだけはどうも失くして――」と、いいかけて、起ったこと、まだやることで残っていることをみんな思い出しながら、あたりを見廻し、この場にいる人たちがみな黙って尊敬と驚きとのために彼に視線を注いでいるのをながめた。ただ港務局の役人たちの様子には、彼らの自己満足しているきびしい顔から見抜くことができる限りでは、こんなに工合の悪いときに自分たちがやってきたと残念がっているのが見られた。そして、今自分たちの前に置いてある懐中時計のほうが、彼らにはどうもこの部屋のなかで起っていること、そしておそらくこれからなお起こるかもしれないことよりも重要であるらしかった。

 船長のあとで自分の関心を表わした最初の人物は、奇妙なことに火夫だった。

「心からお祝いを言いますぜ」と、彼はいって、カルルの手をにぎった。それによって相手をみとめているというようなことを言い表わそうとしたのだった。つぎに同じ言葉で上院議員に向かおうとしたとき、上院議員は火夫がそれによって自分の分を超えたことをやろうとしているといわんばかりに、あとしざりした。火夫もすぐにやめてしまった。

 ところが、ほかの人びとも今はやるべきことがわかったとみえて、たちまちカルルと上院議員とのまわりにさわぎを起こした。そこで、カルルはシューバルからさえ祝いの言葉をかけられ、それを受け、その礼を述べた。ふたたび静けさが立ちもどったなかで、最後の番で港務局の役人たちがやってきて、英語で二語だけいったが、これが滑稽な印象を与えた。

 上院議員はすっかり上機嫌で、よろこびを完全に味わいつくすため、どうでもいいようなことを思い出し、ほかの人びとにも思い出させようという気になっていたが、それはむろんすべての人びとによって我慢して聞かれただけではなく、関心をもって受け入れられた。そこで彼は、女中の手紙のなかに書いてあったもっともいちじるしいカルルの人相の特徴を、きっとあとでちょっと使うことになるだろうと思ってメモ帳に書き入れていたのだ、といってみんなの注意を喚起した。ところで、彼はさっきの火夫の我慢できないおしゃべりのあいだに、ただ気をそらすためだけの目的でメモ帳を取り出し、むろん探偵式にいえば正しくはない女中の観察点をカルルの外見と遊び半分に結び合わせようとしたというのだった。

「私の甥はこんなふうに見られているんですよ!」と、彼はもう一度祝いの言葉を受けたいと思っているかのような調子で話を結んだ。

「火夫はこれでどうなるでしょう?」と、カルルは伯父の最後の話がすむと、たずねた。彼は、自分の新しい立場では、なんでも思ったことをいってもいいのだと考えた。

「火夫はあれにふさわしいようになるだろう」と、上院議員はいった。「それに、船長さんがよいと思われるようになるだろうよ。もう火夫のことは十分だし、十分すぎると私は思うね。ここにおられるみなさんもきっと私のこの意見に賛成されるだろう」

「正義に関する件においては、そんなことは問題じゃありません」と、カルルはいった。彼は伯父と船長とのあいだに立っていたが、おそらくこのような位置に立っていることに影響されて、決定を自分の手中ににぎっているように思った。

 それにもかかわらず、火夫はもう自分のために何も望んでいないらしかった。両手を半分ズボンのバンドに突っこんでいた。彼が興奮して動いたためにそのバンドは模様のついたシャツの片はじといっしょに外へ見えていた。そんなことは少しも彼の気にはならない。彼は自分の悩みをすっかり訴えてしまったのだから、自分が身につけている一つ二つのぼろを見られたってかまわないし、追い出されたってかまわないのだ。ここでは階級のいちばん下の給仕とシューバルとの二人が、自分を追い出すというこの最後の好意を果たしてくれるものと、彼はすっかり思いこんでいた。そうすればシューバルは気が落ちつくだろうし、もう会計主任がいったように絶望なんかすることはないだろう。船長はルーマニア人ばかりを雇うことができるだろう。船じゅうどこででもルーマニア語が話されることになるだろう。そうすればおそらくいっさいがもっとよくなるだろう。火夫が会計課でおしゃべりすることはもうないだろう。ただ自分の最後のおしゃべりだけをかなりなつかしい思い出のうちにとどめることだろう。なぜなら、上院議員がはっきりと断言したように、自分のおしゃべりが甥を認知する間接のきっかけとなったからだ。ところでこの甥はさっき何度も自分のために役に立ってくれようとした。だから、伯父との再会に際して自分が役立ったことに対する礼はもうずっと前にあらかじめすませてあったようなものだ。そこで火夫には、今何かをカルルから要求するなどということは全然思いつかなかった。それに、カルルが上院議員の甥であろうと、とうてい船長ではないのだ。ところで、船長の口からは最後にひどい言葉が吐き出されるだろう――こんな自分の考えを追って、火夫は実際にもカルルのほうを見ないように努めていたが、残念ながら自分の敵だけがいるこの部屋では、カルル以外に彼の眼を休める場所がなかった。

「事態を誤解してはいけないね」と、上院議員はカルルに向っていった。「おそらく正義に関する問題であろうが、同時に規律の問題でもあるのだ。両方とも、そしてことに後者はここでは船長さんの判断にまかされているのだ」

「そうだ」と、火夫がつぶやいた。それに気づき、それがわかった者は、奇妙な微笑をもらした。

「だが、船長さんはその上、ちょうどニューヨークに到着したばかりで、信じられないくらいたまっているにちがいない公務をもっていられるのだよ。だから、もう私たちが船を去る潮時だ。余計なことをしてまだ何かまったく不必要な首の突っこみかたをやって、二人の機関士のつまらぬけんかを大事件にしないためにだな。ともかくお前のやりかたはすっかりわかる。だがそれだからこそ、急いでお前をここからつれ去る権利が私にあるというものだ」

「すぐあなたがたのためにボートを下ろさせましょう」と、船長はいった。カルルが驚いたことに、疑いもなく伯父の自己謙遜けんそんと見られる言葉にほんの少しでも異を立てることをやらないのだ。会計主任はあわてて書きもの机のところへいき、船長の命令をボート係に電話で伝えた。

「時間が迫っているんだ」と、カルルは自分に言い聞かせた。「でも、みんなを侮辱することなしでは、ぼくは何もすることができないぞ。だが今は、伯父がやっとぼくを見つけたんだから、伯父を見捨てるわけにはいかない。船長はなるほど礼儀正しいけれど、でもそれだけのことだ。規律のこととなると、船長の礼儀正しさも忘れられてしまう。伯父はたしかに心からああ船長に話したんだ。シューバルとは話したくない。あの男に握手の手を渡したことも残念なくらいだ。そして、ここにいるそのほかの連中はみんなくずだ」

 そして、こんなことを考えながらゆっくりと火夫のほうへ歩いていき、その右手をバンドから取って、自分の手のなかにもてあそびながらおさめていた。

「どうしてあんたは何もいわないんです?」と、彼はたずねた。「どうしてみんな黙って受け入れているんです?」

 火夫は、いうべきことをどう言い表わしたらいいのか探しているように、額にしわをよせた。それからカルルの手と自分の手の上に眼を落していた。

「あんたは不当な扱いを受けているんですよ。この船のだれよりもね。それはぼくもちゃんと知っているんだ」

 そして、カルルは火夫の指のあいだに自分の指をさし入れたり抜いたりした。火夫のほうは、いくらよろこんだってだれも自分のことを悪く取ることがないだろうと思われる歓喜に襲われたように、輝く眼でまわりを見廻している。

「でも、あんたは自分の身を守らなくちゃいけない。イエスとノーとをはっきりいわなくちゃいけないんですよ。そうでないと、人びとは真相が全然わからないんだから。ぼくのいうことを聞くって、約束して下さいよ。だって、ぼく自身はいろいろな理由から、もう全然助けてあげることができないだろうと思うんです」

 それから、カルルは火夫の手に接吻しながら、泣いた。そして、ひびだらけの、ほとんど血のかよっていないようなその手を取って、自分の両頬に押えつけた。まるで思いきらなければならない宝のようだった。――ところが伯父の上院議員が彼のそばへきて、強制の様子はほんの少ししか見せなかったが、彼を引っ張っていった。

「火夫がお前の心に魅入ったらしいね」と、伯父はいって、意味ありげな面持おももちでカルルの頭越しに船長のほうを見やった。「お前はひとりぽっちだと感じていたんだ。そのときお前は火夫を見つけたんで、今はあの男に感謝しているんだ。それはまったく感心なことだよ。でも、もう私のために、あまりやりすぎないようにするんだ。お前の地位を理解することを学ばなければいけないぞ」

 ドアの前でさわぎが起った。叫び声が聞こえ、まるでだれかが乱暴にドアへぶつけられたようであった。いくらか荒れ狂った様子で一人の水夫が部屋に入ってきた。そして女中のエプロンを身体に巻きつけていた。

「外にたくさんいますよ」と、その男は叫んで、まだ人ごみのなかにいるかのように肘ひじであたりを突くような恰好をした。とうとう正気に返って、船長の前で敬礼しようとしたが、女中のエプロンに気がつき、それを引きはがして床に投げ、叫んだ。

「まったく不愉快だ。女中のエプロンなんか巻きつけやがって」

 だが、靴のかかとを音を立てながら合わせ、敬礼した。だれかが笑おうとしたが、船長はきびしい口調でいった。

「だいぶいい機嫌のようだね。だれが外にいるのかね?」

「私の証人たちです」と、シューバルは歩み出ながらいった。「彼らの不穏当なふるまいはどうかお許しのほどを。水夫たちは航海を終えると、ときどき気ちがいのようになるんです」

「すぐなかへ入れてくれ」と、船長は命令し、すぐ上院議員のほうへ振り向くと、親しげにだが口早にいった。「上院議員さん、どうか甥御さんとごいっしょにこの水夫のあとをついていって下さい。この男があなたがたをボートへご案内します。親しくあなたさまとお知合いになれまして、大変うれしく、また大変光栄であることを、まず最初に申し上げなければなりません。いずれ近く機会を得まして、アメリカの商船事情についての私たちの中断されました話をまた取り上げることができますように望みます。そのときもまた、きょうのように愉快なやりかたで中断されることを望みます」

「今のところは、この甥で私には十分ですな」と、伯父は笑いながらいった。「ご親切に心からお礼申し上げたいと思います。どうかご機嫌よう。それに、まったくありえないことではありませんが、私たちは」――ここで彼はカルルを心から抱きしめた――「つぎのヨーロッパ旅行のときには、おそらくかなり長いあいだ、あなたとごいっしょになれるでしょう」

「そうなったら、どんなに心からうれしく思うことでしょう」と、船長はいった。二人の紳士はたがいに握手し、カルルはまだ黙ったまま、ちょっと船長に手をさし出しただけだった。というのは、船長はもう十五人ぐらいの水夫たちにかかりきりになっているのだった。彼らはシューバルの指揮下にいくらか当惑はしていたが、音高く部屋に入ってきたのだった。水夫は上院議員にお先に失礼しますといって、彼とカルルとのために人ごみを押しわけた。二人はお辞儀する水夫たちのあいだを通ってたやすく出ていくことができた。とにかく善良なこの連中はシューバルと火夫との争いを冗談で、その滑稽さが船長の前でもやまないのだ、と考えているらしかった。カルルは彼らのあいだに料理場の女の子のリーネをみとめたが、この女はカルルに向って陽気にまばたきの合図をしてよこしながら、水夫が投げ捨てたエプロンを身体に巻きつけていた。それは彼女のものだったのだ。

 その水夫につづいて二人は事務室を出て、小さな通路へ曲っていった。その通路をいくと、一、二歩で小さなドアの前に出た。そこから短い階段が彼らのために用意されたボートへ通じていた。案内役の水夫はたちまちひと跳とびでボートのなかへ飛び下りたが、ボートのなかの水夫たちは立ち上がって、敬礼した。上院議員がカルルに、用心して降りるようにといましめると、カルルはいちばん上の階段の上ではげしく泣き出した。上院議員は右手をカルルの顎あごの下にあて、左手でしっかと自分の身体に押しつけて、彼の身体をなでた。こうして二人はゆっくり一段一段と降りていき、しっかと抱き合ったままボートに入った。上院議員はカルルのために自分の真向いにいい席を探し出した。上院議員の合図で水夫たちは本船からボートを突き離し、すぐ力いっぱいに漕ぎ始めた。船から一、二メートル離れるやいなや、カルルは自分たちが今、会計課の窓が向いている側にいることに気づいた。三つの窓はどれもシューバルの証人たちに占められており、彼らはひどく親しげに挨拶し、合図していた。伯父さえも答礼した。一人の水夫は、規則正しい漕ぐ手を休めないままで投げキスを送るという芸当をやって見せた。ほんとうに、火夫なんかもういないかのようだった。カルルは、伯父の膝に自分の膝をほとんどつけんばかりにして、伯父の眼のうちをじっとながめた。この人がいつかあの火夫のかわりになることができるだろうか、という疑いが彼の心に起った。伯父のほうもカルルの視線を避けて、彼らのボートをゆさぶっている波のほうに視線を投げていた。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001235/files/49859_41919.html

36. 中川隆[-14981] koaQ7Jey 2019年11月12日 19:03:02 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2077] 報告

カラヤン ベルリン・フィル
Berlin Philarmonic Orchestra - Herbert von Karajan, conductor.
1974 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin

Berg 3 Pieces for Orchestra, Op.6 - 3. Marsch (March); von Karajan-Berlin - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=WVMx0n836u8


___


Alban Berg Lyric Suite - Karajan - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=RF9urI6Z6Bk

2. Andante amoroso
4. Adagio appassionato


▲△▽▼


Second Viennese School Orchestral Works [ H.V.Karajan Berlin-PO ] (1972~74) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=di1CNU91rjk


1. Schoenberg "Pelleas und Melisande" (00:00)
2. Schoenberg "Variation for Orchestra" (43:25)
3. Schoenberg "Verklarte Nacht" (1:05:51)
4. Webern "Passacaglia for Orchestra" (1:35:39)
5. Webern "Six Pieces for Orchestra" (1:47:51)
6. Webern "Symphony" (2:00:51)
7. Berg "Three Pieces for Orchestra" (2:11:08)
8. Berg "Three Pieces from the 'Lyric Suite" (2:42:14)

37. 中川隆[-13998] koaQ7Jey 2020年2月06日 13:41:40 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-667] 報告

クラシック音楽 一口感想メモ
アルバン・ベルク(Alban Maria Johannes Berg, 1885 - 1935)
https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF

シェーベルクよりも「いい曲」であり「また聴きたい」と素直に感じる作品が多い。無調の作曲家ではあるが強く心に訴えるものがある。

•ピアノ・ソナタ Op.1◦4点


この曲は好きだ。独特のロマン派的感動エネルギーを内包しながらも。無調の世界を時折予感させるような不安定な調性。センス良く多重的に音の積み重ね続けて構築された世界は個性的な精神世界を生み出しており、ピアノの美しさを引き出している。ロマン的な世界など、断片的に一瞬だけ古い音楽を見せるのが効果的。聴後感がよいため、また聴きたくなる。

•弦楽四重奏曲 Op.3◦3.5点


無調のカオスが渦巻いたり、虚無的な音が鳴り響いて精神的な闇の底を露わにしたり。ピアノソナタ程の美しさと天才性はないと思うが、無調性の音楽の初期の時代の作品としてはよい作品。ピアノソナタと同様に、1曲しか無いのが残念である。

•管弦楽の為の3つの小品 Op.6 (1914年 - 1915年/1929年改訂)◦3.0点


独自のニュアンスに満ちた曲である。現実的な何かを連想できない前衛的で思弁的な哲学的な曲のため、難解であり聴き方が難しい。とはいえ、骨太のスケール感や、様々なものが強引にごった煮のように混ぜられたカオスや、そのなかに姿を見せるベルク独特の叙情は楽しめる。3曲で20分程度だが、長さ的には密度を保ち聴き手として楽しめる限界と感じた。

•歌劇「ヴォツェック」 OP.7 (1925年初演)◦4.0点


舞台を見ないで音楽だけ聴いても、相当に優秀な音楽であることがよく分かる。無調らしい不条理の表現が大成功しており、音楽の緊密さも高い。そして、音楽が劇的な物語表現と役者の表現行為への音楽の貢献が素晴らしい。器楽曲だけではなかなか分からないベルクの音楽が持つエモーションの力の強さに驚愕する。音楽の新しい表現世界を切り開いており、これ一曲でもベルクの名前は音楽史に残っただろう。

•室内協奏曲 (1923年 - 1925年)◦3.8点


音感の良さが感動的なレベルにある。無調であるのに、音があるべき所にあるため、なんとも素晴らしい心地よさである。ベルクらしい見事な表現の力を発揮しており、情熱的な精神と、高雅で高貴でありかつ厳しさを併せ持ったものが表現されている。特殊構成の曲であるが、ここ音のバランスがまた絶妙だ。管楽器が邪魔せずに控えめな柔らかさが対比されてよい雰囲気を作っている。ヴァイオリンとピアノの鋭さをうまく適度に中和している。かなり感心した。

•抒情組曲 (1925年 - 1926年)◦3.3点


これが抒情的かというと、音楽だけから内容を読み取るのには苦労が伴う。しかし、うまく感じ取ることに成功すると、情熱や甘酸っぱい思い出や悲哀や不条理を感じ取ることは可能だろう。強く感動するほどではないが、無調独特の灰色の世界と、同色の音色である弦楽四重奏で表現される抒情的音楽に、それなりの感慨を感じる。

•4つの小品 Op.5◦3.8点


クラリネットとピアノの曲。4つの曲だがごく短くて、あっという間に終わる。内容が非常に示唆的であり未来的とも言える。感性を強く刺激することではかなりのインパクトがある。音感の良さとセンスに感服する。空白が活かされており、日本的なわびさびに通じるものある。この曲は個人的には、かなり好みでありツボである。

•ヴァイオリン協奏曲 (1935年)◦3.3点


自分と曲との相性が悪いのか、聴いた演奏のせいか分からないが、自分にはベルクの代表作とされているほどのものを感じない。ヴァイオリン協奏曲としてのフットワークの良さや協奏の楽しみや、場面の変化による構成の楽しみが足りないからかもしれない。ベルクらしい無調であるが調性的な中心感がある音楽はここでも健在である。無調というよりむしろ、予想を外すことが多い調性曲という趣の場面も多い。無調が持つ独特のはかなさや超常的な透明感と美しさ、緊張感をうまく活かした曲調である。ヴァイオリンが出ずっぱりの活躍である。最後の完成作品として到達した完成度の高さはよく分かる。

•ルル組曲 (1928年 - )◦3.0点

オペラの一部分を組曲にしたもので、短い時間だけであるが歌も入る。オペラ的、もしくは映画音楽的という印象である。あまり管弦楽曲としての純度は高くない。無調的な映画音楽と考えて聴けば面白いけれども、密度が高くないのはやはり物足りないと感じる。音楽だけを聞く限りは、あまりストーリーも感じられない。

https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF

38. 中川隆[-17324] koaQ7Jey 2021年8月09日 19:05:05 : m9K9ux4HhQ : NjVDV3VXWUpZN2s=[8] 報告
アルバン・ベルク『ヴァイオリン協奏曲 ある天使の思い出に』


Berg: Violin Concerto "To the Memory of an Angel"
℗ 1984 Decca Music Group Limited










Kyung Wha Chung
Sir Georg Solti Chicago Symphony Orchestra
September 3, 1984




ベルクのヴァイオリン協奏曲は何度聴いても理解不能なんだけど、本当にみんな感動してるの?(強い疑い)
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/710.html
39. 中川隆[-17323] koaQ7Jey 2021年8月09日 19:07:56 : m9K9ux4HhQ : NjVDV3VXWUpZN2s=[10] 報告
クラスナー

Berg: Violin Concerto (1936) Krasner/Webern




Louis Krasner, violin Anton Webern, conductor BBC Symphony Orchestra
Recorded live May 1, 1936 at a private concert.

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