★阿修羅♪ > 近代史3 > 588.html
 ★阿修羅♪
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
フランク・ダラボン ミスト(The Mist, MGM 2007年)
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/588.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 8 月 26 日 23:21:49: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 


フランク・ダラボン ミスト(The Mist, MGM 2007年)

動画
https://www.youtube.com/watch?v=Cey5i6C9apM

監督 フランク・ダラボン
脚本 フランク・ダラボン
原作 スティーヴン・キング『霧』
音楽 マーク・アイシャム
撮影 ロン・シュミット
配給 MGM/ワインスタイン・カンパニー
公開 2007年11月21日


激しい嵐が町を襲った翌朝、湖のほとりに住むデヴィッド・ドレイトンとその妻のステファニーは自宅の窓やボート小屋が壊れているのを見つける。デヴィッドは買い出しのため、8歳の息子のビリーと隣人のブレント・ノートンと共に車で地元のスーパーマーケットへ向かった。店は客たちで賑わっていたが冷蔵庫以外は停電していた。デヴィッドたちが買い物をしていると、店外ではパトカーや救急車が走り回りサイレンが鳴り始めた。その直後、鼻血を流したダン・ミラーが店内へ逃げ込み「霧の中に何かがいる」と叫ぶ。店内の一同が戸惑うなか店外の辺り一面は白い霧に包まれていく。不安に駆られた客たちは店内へ閉じこもった。

狂信者のミセス・カーモディは「これはハルマゲドンの始まりだ」と考える。自宅に2人の子供を残してきた女性は誰か一緒に付いて来てくれるように懇願したが、皆に拒否されたために「全員地獄に落ちればいい」と言い残して1人で霧の中へと出ていった。そんな中、デヴィッドとビリーは教師のアマンダ・ダンフリーと仲良くなる。デヴィッドはメカニックのマイロン、ジム、ノーム、そして副店長のオリー・ウィークスと共に倉庫を調べ店外の排気口の様子を見るためにシャッターを開けるが、そこから謎の触手が侵入してきてノームが連れ去られてしまう。デヴィッドたちは店外に謎の生物がいることを皆に伝えたが、ノートンをはじめとする懐疑的な者たちは救助を要請するために脱出することを主張する。そこでデヴィッドは彼らがどこまで行けるのかを調べるため、外出する1人の男にロープを結びつけ外出してもらった。ノートンたちが霧の中に消えロープは少しずつ引き寄せられるが突然ロープがとても強い力で引っ張られる。ロープを引張ていた力がなくなりたぐり寄せると、男の下半身だけが帰還した。

夜になると、店内の光に寄せられて巨大な羽虫や翼竜のような怪物が窓を破り店内に侵入し、デヴィッドたちは辛くもこれを撃退するが店内で犠牲者が出てしまう。その混乱を受けミセス・カーモディの狂信的発言を信じる者が現れ始めるなか、デヴィッドたちは負傷者を助けるため隣の薬局へ医療物資を取りに行った。薬局内は蜘蛛の糸に覆われており、デヴィッドたちは柱にくくりつけられたMPを発見する。謝り続けるMPの体から無数に出てくる蜘蛛のような生物の襲撃を受けたデヴィッドたちは犠牲者を出しつつも店へと逃げ戻る。

店に戻ると、3人の兵士のうち2人が自殺していた。残り1人のジェサップ二等兵は「軍が異次元を観察する『アローヘッド計画』を実行している」という噂について問い詰められたうえ、そのことをミセス・カーモディの信者となったジムに聞かれてしまう。ミセス・カーモディは「ジェサップに責任がある」と演説し、彼は店内の人々にナイフで何度も刺されたうえ生贄として店外に放り出され何者かに霧の中へと連れ攫われる。

ミセス・カーモディとその信者たちを恐れたデヴィッドと一部の生存者たちは物資をかき集めて店外への脱出を計画する。夜が明けてデヴィッドたちは動き出すが彼らの前に立ちはだかったミセス・カーモディは「ビリーを生贄に差し出せ」と要求する。信者の男たちとの戦いのなかオリーがミセス・カーモディを射殺し店内の脱出に成功する。店から車へ向かう最中、オリー、マイロン、コーネルが怪物の餌食となりバド・ブラウンは間に合わず慌てて店内に引き返した。結局、デヴィッドの車に乗り込めたのは彼とアマンダ、ビリー、ダン、アイリーンの計5名であった。信者たちが静観する中デヴィッドの車は走り去っていく。

霧の中、デヴィッドは自宅へ辿り着くが妻は屋外で糸に巻かれて死んでいた。悲しみをこらえ南に向かったデヴィッドたちは生存者に遭うことも無く、崩壊した街の風景や何百フィートもある巨大な怪物を目撃する。そして、ついにデヴィッドの車はガス欠となり、彼ら4人の大人は眠ってしまったビリーの横で生還を断念する。オリーが怪物に喰われる際に落とした銃をデヴィッドは持っていたが、それには弾丸が4発しか残っていなかったため、彼は「自分は何とかする」と述べてビリーら4人を射殺した。

半狂乱となったデヴィッドは車を飛び出し「自分を殺せ」と叫ぶ。だがその直後、霧の中からは現れたのは自走砲や火炎放射器で怪物たちを焼き殺す兵隊たち、そして霧が発生してすぐに店を出ていった女性と彼女の2人の子供を含む生存者らを載せたトラックだった。判断を間違え、無駄に命を散らしてしまったデヴィッドは霧が晴れていくなか後悔の念にかられて絶叫し続けた。

キャスト

記載は「役名、俳優(日本語吹替)」。

デヴィッド・ドレイトン
演 - トーマス・ジェーン(堀内賢雄)主人公の画家。
息子ビリーとスーパーマーケットに閉じ込められてしまう。

アマンダ・ダンフリー
演 - ローリー・ホールデン(日野由利加)最近町に越してきた新任の女教師。
ドレイトン家とも顔馴染みでビリーの面倒を見てくれている。婚約者から自衛用に拳銃を渡されている。

ビリー・ドレイトン
演 - ネイサン・ギャンブル(佐藤利奈)デヴィッドの息子。8歳。

オリー・ウィークス
演 - トビー・ジョーンズ(茶風林)スーパーマーケットの副店長。
特技は射撃。デヴィッドの話をよく理解してくれる。

ミセス・カーモディ
演 - マーシャ・ゲイ・ハーデン(宮寺智子)狂信的なキリスト教信者の中年女性。
極端な言動ゆえ、当初は客たちから避けられていたが、徐々に信者を増やしていく。

ジム・グロンディン
演 - ウィリアム・サドラー(辻親八)機械工の作業員。
ミセス・カーモディの信者になっていく。

ブレント・ノートン
演 - アンドレ・ブラウアー(古澤徹)ドレイトン家の隣に住む著名な弁護士。
妻帯者。過去にデヴィッドと境界線についてのトラブルを起こした。
デヴィッドたちが外にいる謎の生物の話をするも一向に信じようとしない。何人か仲間を連れて外へ助けを呼びに出て行ってしまう。

ダン・ミラー
演 - ジェフリー・デマン(佐々木敏)
序盤に霧の中にいる何かに襲われ、鼻血を出しながらスーパーに逃げてきた年配の男性。多くの人間がミセス・カーモディに洗脳される中、デヴィッド側に同調した考えを持つ。

アイリーン・レプラー
演 - フランシス・スターンハーゲン(羽鳥靖子)
ビリーが通う小学校で教師をしている白髪の老女。同じくデヴィッドらに同調。

バド・ブラウン
演 - ロバート・トレヴァイラー(小室正幸)スーパーマーケットの店長。
デヴィッドから怪物の話を聞いた時は嘲笑っていたが、切り落とした触手の先を見て事態を把握。

サリー
演 - アレクサ・ダヴァロス(うえだ星子)スーパーの若い女店員。
ジェサップとは恋仲。

ウェイン・ジェサップ
演 - サム・ウィットワー休暇中の軍人。階級は二等兵。サリーとは恋仲

アンブローズ・コーネル
演 - バック・テイラー髭が特徴的な老男。

マイロン
演 - デヴィッド・ジェンセン(ふくまつ進紗)機械工の作業員でジムの同僚。
デヴィッドたちとシャッターを確認しに行った一人。

ノーム
演 - クリス・オーウェン(中野光貴)スーパーの若い店員。
デヴィッドの言葉を聞かずに、外の機械を調べにシャッターを開けてしまい、生物の触手に捕まり霧の中に引きずり込まれる。

MP
演 - アミン・ジョセフ(魚建)軍の憲兵。

バイカー
演 - ブライアン・リビーバンダナを巻いた初老男性。
ノートンが外へ出るタイミングでアンブローズの車に置いてある銃を取りに出て行く。

家に子供を残してきた女性
演 - メリッサ・マクブライド店が霧に覆われた直後、二人の子供が待つ自宅まで車で送ってくれる人を探すが誰も呼応せず、皆が止めるなか一人で店を出て行く。

ハティ
演 - スーザン・ワトキンス(新田万紀子)レプラーの友人でビリーの世話をしてくれる短髪の初老女性。

ステファニー・ドレイトン
演 - ケリー・コリンズ・リンツ(加納千秋)デヴィッドの妻でビリーの母。家で留守番をしている。


怪物

霧に覆われた後、突如現れた怪物達。霧が立ち込める場所に入り込み人々を襲う。そのため霧が入らない密室であれば比較的安全は保障される。 斧で切れたり、火炎スプレーで対処は出来る程度の耐久力だが、大きさや数の多さが厄介。ムカデやハチ、蜘蛛や蟹のような多足類から翼竜のような種など様々。

アラクニ・ロブスター(Arachni-Lobster)

体長50フィートにもなる、クモとカニとカマキリをミックスさせたような肉食生物。

上から見た姿はクモにそっくりである。 リンチを受けて外にいけにえとして摘み出されたジェザップ二等兵を襲って食い殺した。また、終盤にも再登場し、副店長を食い殺している。

テンタクルズ・フロム・プラネットX(Tentacles from Planet X)

イカの触手に似た肉食の生物で、腹側に吸着カップ状の口がある。

店員のノームを包み込んで肉をはぎ取って致命傷を負わせ、最終的には霧の中に引きずり込んで食い殺した。なお、本体からちぎられた肉片は霧となって消滅する。

グレイ・ウィドワーズ(Gray Widowers)

犬ほどの大きさのクモによく似た肉食生物。

尻から出る強酸を伴った糸も厄介だが、それ以上に怖ろしいのは人間を苗床にして繁殖するというその生態である。人間の体に数百個以上卵を産み付け、一日後に孵化した幼体は人間の体を食べながら成長する。しかも苗床にされてしまった人間は意識があるようで、主人公の妻はこれの被害にあったらしく窓際に繭にされた状態で発見された。

スコーピオン・フライズ(Scorpion-Flies)

サソリとスズメバチを合わせたような紫がかった甲殻を持つ飛行生物。夜になってからスーパーの照明に引き寄せられてきた。

尻尾には人間を一撃で殺すほどの強力な神経毒を持っており、それでレジ係だったサリーを殺した。なお後述するプテロ・バザードが天敵の模様。

プテロ・バザード(Ptero-buzzard)

スコーピオン・フライズを狙って現れた翼竜とタカを合わせたような容姿の四枚羽の飛行生物。

肉食で、人間も普通に襲う。ただ、拳銃弾数発で殺せるほどなので、落ち着いて対処すれば問題ないだろう。

ベヒーモス(Behemoth)

甲殻類のような六本足を持つ巨大生物。大きさは240フィート(約73メートル)で、

原作小説では「シロナガスクジラが鱒ほどの大きさに見えるほど」と形容されるほどの威容である。スコーピオン・フライズを引き連れた状態で終盤に突如出現した。主人公たちに目もくれず霧の中に去っていったが、その後どうなったかは不明。

キラー・カイト(Killer Kite )

原作小説に登場する「生きた凧」。クライマックスに森を車で通るシーンに登場した。

容姿はつるつるした被膜と黒目が複数ある、イカによく似た巨大生物。映画には登場しなかったが、上記の特徴を含んだコンセプトアートは執筆された。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
1. 中川隆[-8654] koaQ7Jey 2019年8月27日 06:56:48 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[4097] 報告

ハリウッド・エンディングに挑戦した男 〜フランク・ダラボンとスティーヴン・キング『ミスト』の問題〜
紀平照幸 2013/12/13
https://news.yahoo.co.jp/byline/kihirateruyuki/20131213-00026150/



この文章では2007年の映画『ミスト』および原作小説「霧」のラストについて触れています。

スティーヴン・キングの小説の映画化と言えば、数少ない例外(『キャリー』『スタンド・バイ・ミー』)を除いては改変・改悪が当たり前で(なにしろ、ご本人が自ら監督した『地獄のデビル・トラック』にしてからにトホホな出来でしたから)、もはや誰も期待していなかった頃に登場したのがフランク・ダラボン監督の『ショーシャンクの空に』でした。原作(「刑務所のリタ・ヘイワース」)に忠実でありながら、映画的ダイナミズムも併せ持った佳品は批評家や観客に愛され、「EMPIRE」誌が選んだ映画オールタイム・ベストではなんと数多の名作を抑えて1位を獲得しています。続く『グリーンマイル』もヒットし、キング原作=ダラボン監督のコンビは映画ファン安心のブランドとなっていた、そんなダラボンが満を持して発表したのが『ミスト』でした。

まずはいつものように映画の解説から。激しい嵐が町を襲った翌朝、主人公デヴィッドは8歳の息子を連れてスーパーマーケットへ買い物に行きます。しばらくすると周囲に不穏な雰囲気が立ち込め、白い霧がマーケットを覆い尽くしてしまいます。「霧の中に何かがいる!」そう絶叫しながら店に駆け込んでくる血まみれの男も。やがて、本当に霧の中から不気味な化け物が次々と出現し、店の中に立てこもった人々を次々に襲ってくるのでした…。

恐怖のポイントは2点。まずは霧の中から出現する怪物たちです。あるものは軟体動物風、あるものは昆虫風と、まるで悪夢の中に出てくるような奇怪なデザインの、生理的に嫌悪感を催すような怪物が次から次へと出てくるのですから。ちなみに原作者のスティーヴン・キングは大の蜘蛛嫌い。したがって蜘蛛のようなモンスターはひときわ不気味に描写されています。もうひとつは、閉じ込められた人間たちの心理描写。一団の中には狂信的な女性ミセス・カーモディがいて、これがハルマゲドンの始まりだ、と唱えます。最初は冷ややかな目で見ていた生存者たちが、追いつめられるにつれて彼女に同調していき、ついには幼い子供を生け贄に捧げようとさえしてしまう展開にはぞっとしました。あえてスター俳優を使わず、デヴィッドにトーマス・ジェーン、カーモディにマーシャ・ゲイ・ハーデンと、地味ながら実力派のキャストを起用しているのも、物語に迫真性を与えています。

さて、問題はラストです(ここからネタバレです。注意!)。原作版では、デヴィッドが息子や彼に同調したわずかな者たちとマーケットを脱出し、車で走り去るところで終わっています。霧は一向に晴れる様子もなく、どこまで広がっているのかもわからない。世界は終わってしまったのか? という含みを残しながらも、一片の希望を残した終わり方でした。

しかし、映画版は「その先」に踏み込んでいます。車の燃料は尽き、周囲からは異様な物音が迫る中、デヴィッドたちは決断を迫られます。「このまま奴らに食われるよりは…」彼らが下した結論は、自決。デヴィッドは息子や仲間を射殺、弾がなくなったため、死を覚悟して外に飛び出しました。その時彼が見たものは…? なんと火炎放射器や自走砲で怪物たちを退治している軍隊、そして次第に晴れゆく霧の彼方には、最初の方で彼の制止も聞かずに店の外に飛び出した人々が避難民と共にいる姿も見えました。デヴィッドにできるのは、ただ絶叫することだけ…。

どうです? 見事なまでのバッド・エンドでしょう? この変更は脚本も担当したダラボン監督のアイディア。これを聞かされたキングは「衝撃的な結末」と絶賛しましたが、あまりと言えばあんまりな展開に一般のファンの間では賛否両論。「真のホラー映画」と褒める人がいれば、「後味が悪すぎる」と否定する人も存在します。

ではなぜ、このエンディングが人々の拒絶反応を呼び起こすのでしょうか? ここで他の映画の場合を考えてみましょう。例えば『ダイ・ハード』や『007』シリーズなどのアクション映画を。追いつめられた主人公は、とっさの判断で手近にあったものを使って反撃したり、目の前の穴に飛び込んだりします。そしてその選択は大抵の場合正しく、主人公を救い、悪を倒してくれます。しかしこの『ミスト』で行なわれたことは、その真逆なのです。デヴィッドが良かれと思い、自分の家族や友人を救おうとして下した決断は、すべて間違っています。彼に従った者たちは例外なく悲惨な末路を迎えてしまうのです。さらに、撮影スケジュールが理由で実現しませんでしたが、ダラボンはラストでデヴィッドが見る生存者の中に、彼と喧嘩別れした隣人や、マーケットに残った人々なども登場させたかったそうです。つまり「デヴィッドを信じた者は死に、信じなかった者だけが生き残った」と言いたかったのですね。この徹底ぶり! 『ミスト』こそは、「主人公の行動は常に正しい」というハリウッドの公式に真っ向から「NO!」を突きつけた映画だったのです。

原作が大変よくできた小説ですから、そのまま映画化してもそれなりの傑作になったはずの『ミスト』。しかしこの付け加えられたラストのおかげで、心に刺さったトゲのように一種忘れられない強い印象を残した作品になったではないでしょうか。それこそが、反対意見が多数出ることも覚悟の上でダラボンが目指したものなのだと思います。

(付記)

この映画の発表後、ダラボンは劇場用の映画を撮っていません。彼は2010年からTVシリーズの「ウォーキング・デッド」を製作。ゾンビがうろつきまわる世界でのサバイバルを描き、今までのTVの常識を超えた物語を展開中です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kihirateruyuki/20131213-00026150/

2. 中川隆[-8653] koaQ7Jey 2019年8月27日 07:07:37 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[4098] 報告

2015-02
衝撃のラストをネタバレ解説!観た人全てが鬱になる映画『ミスト』はここが凄い!
https://type-r.hatenablog.com/entry/20150205

■あらすじ

『嵐の翌日、デヴィッドは異様な霧に懸念を抱きながら息子と共にスーパーマーケットへ買い出しに出掛けた。すると、その濃い霧は間もなく買い物客でごった返すマーケットに迫り、ついには町全体を飲み込むように覆っていく。人々がマーケットに缶詰状態となる中、霧の中に不気味な怪物を発見したデヴィッド。一方、骨董品店の女主人カーモディは狂信めいた発言で人々の不安を煽っていく。その夜、突如として霧の中のモンスターたちが襲撃を開始、店内は大混乱に陥った!原作者スティーヴン・キングとフランク・ダラボン監督が「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」に続いて再びコンビを組んだ驚愕のホラー・ミステリー。霧(ミスト)の中に待っていたものは何か?映画史上かつてない、震撼のラスト15分!』


「後味の悪い映画」、「バッドエンド」、「最悪の結末」、「鬱映画」などで検索すると、かなりの高確率でヒットする作品、それがスティーヴン・キング原作・フランク・ダラボン監督の『ミスト』です。

本日の午後のロードショーでは、そんな『ミスト』が放送されるので、観る際はそれなりに覚悟してご覧ください(笑)。ちなみに、他のバッドエンド映画の代表格としては、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と『セブン』がツートップと言われています(^.^)


「観ると鬱になる映画」の代表格。ただし作品の評価は「最高!」と「最低!」が見事に真っ二つに分かれています。

この『ミスト』、僕は映画館で観たんですよ。『ショーシャンクの空に』の原作者スティーヴン・キングとフランク・ダラボン監督が再びタッグを組んで新作を撮った!という触れ込みに釣られてノコノコ観に行ったわけです。で、観終わった直後の感想は、皆さんの予想通り「うわあああ、こ、これはヒドい…!」って感じでしたねえ(笑)。

いや、映画がヒドいんじゃなくて、物語の結末がヒドいんです。映画自体はとても良く出来ていると思いました。クリーチャーの造形や恐ろしい雰囲気、極限状態に追い詰められた人間達の愚かな行動など、キャラクターの描き方やドラマ展開、映像表現の数々は実に見事です。ただ、ラストがヒドい…

ストーリー的には物凄くシンプルなんですよ。ある日、街に霧が発生した → やがてその霧はどんどん大きくなり、街全体を覆い尽くす → たまたまスーパーマーケットに買い物に来ていた主人公 → すると突然お爺さんが「霧の中に何かいる!」と叫びながら飛び込んで来た → 霧の中から”見た事も無い不気味な生物”が出現 → 全員、スーパーマーケットに閉じ込められてしまう……と、ここまでが序盤の展開。

この後はひたすらスーパー内部での描写が続き、「出て行こう!」、「いや、ここにいるべきだ!」など異常な事態に直面した”人間同士の醜悪な言い争い”に終始します。

そして徐々に精神的に追い詰められた人々は、「神の裁きが下されたのよ!」と煽る宗教かぶれのオバサンの言う事に耳を傾け始める。この辺の展開がちょっとダルいんですよね。特にオバサンの”演説”が長くて苦痛(このオバサンが撃ち殺された瞬間、アメリカの劇場では盛大な拍手が湧き起こったそうなw)。

まあ、スーパーのガラスを破って”でかい昆虫”みたいなものが飛び込んでくるハラハラドキドキシーンもあるんですが、『スターシップ・トゥルーパーズ』のバグズの大群に比べたら全然大した事なかったり。

”霧の中のもの”を描くのではなく、”得体の知れない何かに翻弄される人間の姿”を描くことがメインなので当然なんですが、これだけなら「ふ〜ん、まあ割と普通のパニック・ホラーだよね」という評価で終わっていたでしょう。

だがしかし!この映画の真価は、キャッチコピー通り「ラスト15分の衝撃的な展開」によって初めて発揮されるのです!徹底的に追い詰められた主人公のデヴィッドたちは、スーパーからの脱出を決意。車へ乗るまでの僅か数十メートルで数人が化け物に食い殺され、残ったのはデヴィッドと息子を含め5人だけ。

一行はデヴィッドの家へ向かうも、既に化け物の巣窟と化しており、奥さんも死亡していました。あてもなく彷徨ううちにガソリンも底を尽き、救援の道を断たれた彼らが最後に選んだ道は…

拳銃には弾が4発しか残っていなかったため、デヴィッドは息子を含めた仲間4人を射殺。そして半狂乱となったデヴィッドは車を飛び出し、化け物に喰い殺されようと大声で叫び続けます。

ところが、あれほど大量に発生していたモンスターの姿がどこにも見当たりません。いったいどういうこと…?その数分後、急に霧が晴れ、辺りが鮮明になっていきました。そこでデヴィッドが目にしたものは…

おびただしい数の難民と兵隊、アメリカ陸軍のジープ、戦車の姿でした。陸軍は火炎放射器で怪物を焼き払い、スーパーも無事に解放されていたのです。茫然と立ち尽くすデヴィッド。

そんな彼の前をトラックが横切ります。その荷台にはスーパーを飛び出した子供とその母親が乗っていました。あともう少し耐えていれば、デヴィッドと彼の息子も助かっていたのに…。結局、デヴィッドは無事に救助されましたが、彼はいつまでも絶叫し続けたという…

とまあ、こんな映画を観たら気分が落ち込むのも当然ですよねえ(苦笑)。物語の中で息子がデヴィッドに対し、「僕を化け物に殺させないで」と語りかけるシーンがあるんですけど、普通に解釈すれば「化け物から守って」になるところを、「化け物ではなく、デヴィッド自身の手で殺させる」という感じに歪めて描いているところが凄い皮肉(^_^;)

このラストシーンに対する意見としては、「ふざけんな!」とか「思ってたのと違う!」とか、様々な感想が出ていたようですが、概ね「嫌な気分になった」という評価が大勢を占めていると思われます。

こういった反応は『セブン』と同様に「後味の悪さを追求したエンターテイメント」としては完全に正しく、作り手側にしてみればまさに「してやったり!」という感じなのでしょう。すなわち、怒ったり鬱な気持ちになった時点で監督の思うつぼなんですよ、トホホ。

この物語のポイントって何かと言うと、「あともう少しだけ待っていれば助かったのに!」と観客に思わせているところなんですね。でもそれは”結果”を知っているからであって、登場人物が置かれた状況を考えた場合、もう少し待てば助かるかどうかなんて分かるはずもありません。そういう状況をわざと作った上で、主人公に最悪の選択を実行させるという、シナリオの意地の悪さが秀逸すぎるでしょコレ(苦笑)。

つまり、映画『ミスト』の凄いところは、何が正しくて何が間違っていたのか、明確な正解を提示していないところなんですよ。トラックに乗った親子を見ると「あ〜、すぐにスーパーを出ていれば助かったのか〜」と一瞬思ってしまいますが、それはあくまでも結果論であって、正解は誰にも分からない。そういう曖昧さを残しているところがミソなのです。

曖昧な点と言えば、この映画って事態がどうなっているのかもさっぱり分からないんですよね。そもそも霧の中から出てきた化け物は何なのかと。米軍が秘かに実験していた「アローヘッド計画」って何やねん?実験中に異次元の世界と繋がってしまい、霧と共に化け物が穴から溢れ出した…みたいな噂話が漏れ伝わってくるだけで状況が一切わからず、ラストも軍が穴を塞いだのか、問題は解決したのかしていないのか、その辺の事情が全く不明なままで終了してしまうのです。

そういう、モヤモヤした幕切れまで含めて「後味の悪い映画」と評されているのだとは思いますが、それにしてもこのラストはなあ…。原作小説はここまで悲惨な終わり方ではなく、主人公たちは無人のガソリンスタンドで燃料と食料を補給した後、車に乗って再び走り去る…という結末になっていました(助かったかどうかは分からないまま)。


スティーヴン・キングの原作
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150410968/ichineneiga-22/ref=nosim/

はもう少し救いがある

これはこれでいいと思うんですけど、フランク・ダラボン監督は「もう少しインパクトが欲しい」と考え、映画版オリジナルのラストを思い付き、原作者のスティーヴン・キングに電話で内容を伝えたところ、「素晴らしい!僕が思い付いていたら、絶対にそのアイデアを採用してたよ!」と絶賛したそうです。ダラボン監督によると、この結末は「どんなに絶望的な状況になっても最後まで希望を捨てるな」という前向きなメッセージだったらしい(う〜む……本当だろうか?)。

ちなみに、本作は当初、ダラボン監督の意向でモノクロ版での製作・上映が検討されていました。「原作の不気味な雰囲気を再現するには、カラーよりもモノクロの方が相応しい」と考えた監督は映画会社に提案するものの、「今の時代にモノクロ映画なんて作っても客が来ないだろ!」と却下されてしまったそうです。

しかし、どうしてもモノクロ版を諦め切れなかった監督は、公開後にカラーからモノクロへと再編集しました。そしてDVD化の際に本編はカラー版、特典映像としてモノクロ版が収録されることになったのです。つまり、モノクロ版こそが監督が本来作りたかった『ミスト』であり、真のディレクターズカットなのですよ。残念ながらブルーレイには入っていませんが、DVDの『コレクターズ・エディション』には特典ディスクとしてモノクロ版『ミスト』が付属しています。興味がある方はぜひどうぞ(^.^)
https://type-r.hatenablog.com/entry/20150205

▲上へ      ★阿修羅♪ > 近代史3掲示板 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 近代史3掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
近代史3掲示板  
次へ