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(回答先: アメリカの医療費は何故常識では考えられない程高額なのか? 投稿者 中川隆 日時 2019 年 2 月 19 日 09:36:42)
米大統領選の争点に浮上した大学生の巨額借金問題 2019年7月16日
斎藤 彰(ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/16794
全米学生が抱え込んだローン(student loan)総額が1兆6000億ドル(約160兆円)という空前規模にまで膨れ上がり、返済免除措置の是非めぐり、来年大統領選の民主党有力候補の間で大きな争点となっている。
大学生事情を日米間で比較した場合、最大の違いは、全米学生のほとんどが借金を抱え、返済に追われ続けている点だ。途中でデフォルト(自己破産)に陥ったり、ローン未返済のまま卒業する割合も80%以上に達し、連邦準備制度理事会(FRB)ニューヨーク支部の最新データによると、未返済の借金総額は1兆6000億ドルという、日本の国家予算以上の規模にまで及んでいる。
(bearsky23/gettyimages)
このため、「このままでは次世代を担う若者たちの活躍を阻害しかねない」として、2020年大統領選での大きな社会的関心事に浮上してきたのが、こうした学生ローンの返済免除をめぐる是非論争だ。
そこでまず、アメリカの大学の基礎データを、最新の国勢調査局、および「国立全米教育統計センター」(NCES)資料から見てみよう。
<大学の数>
公立校=1626校(日本は国公立合わせ172校)
私立校=2672校(同589校)
<学生数>
公立校=1450万人(日本は国公合わせ56万2000人)
私立校= 540万人(同200万4000人)
<毎年の入学生数>
2年生カレッジ=75万人
4年生大学=130万人
<学位取得率>
4年生大学=全体学生の60%
修士課程=全体学生の66%
<途中退学>
2年生カレッジ=全体学生の70%
4年生大学=全体学生の40%
上記の基礎データが示す通り、アメリカの場合、公私立合わせた学生総数が約2000万人で日本の8倍近くと格段に多く、しかもその9割以上が大学または民間ローンで授業料や生活費をまかなっているのに加え、途中退学者も少なくないことが、学生の巨額累積債務を生み出す最大の要因になっている。学費および生活費の両方またはどちらかを親に負担してもらう学生が圧倒的に多い日本とは、歴然たる違いがある。
「学士号」の価値が下落した結果、さらなる借金で大学院へ
筆者は数年前、アメリカ滞在中に首都ワシントンの私立ジョージ・ワシントン大学大学院修士課程(国際経済専攻)に在学する学生(当時30歳)に詳しくインタビューしたことがある。
彼の場合、学部はフロリダ州立大学で融資を受け卒業したものの、毎月の借金返済が可能な収入が期待できる就職先が見つからず、大学院進学を決めたと告白してくれた。そして、ワシントンでもさらに借金を余議なくされており、結局、修士課程修了までのローン総額は推定9万ドルになると嘆いていた。
つまりアメリカでは大学生数の激増で「学士号」の価値が下落した結果、4年制大学を卒業したとしても、ホテル・ボーイやガソリンスタンド従業員程度の就職口しか見つからなくなっているというのだ。そこで真面目にローン返済するには、さらなるローンを覚悟してまでも大学院に進学せざるを得なくなるという悪循環に陥ることになる。
実際、「NCES」がまとめた2018年度集計によると、同年度の単科大学および4年生大学在籍学生総数は、2000年時より約450万人増の1990万人に達する一方、このうち約300万人(日本約26万人)が大学院に進学したとみられるという。また、学部時代の学生1人当たりの借金は平均3万7000ドルと推定されており、大学院に進学した場合は出費がかさむため、その2倍以上の負債を抱え込むことになる。
取材した大学院生もまさにその一人だったが、CNNテレビの調査報道によると、卒業後、社会人となってからも学生時代にたまった借金の返済に追われる人は全米で4400万人にも膨れ上がっており、その中には、20代、30代の若者だけでなく、社会の第一線から身を引いた70代、80代の退職者も含まれているという。
こうしたことから「学生ローン」問題は、もはや学生だけの懸案ではなく、全米の多くの市民にとっての重大関心事でもあるのだ。
そこで、来年大統領選挙を控え、「集票効果」が期待できそうな争点として浮かび上がって来たのが、学生ローンの「返済免除措置」問題だった。
とりわけ大統領指名候補を争う民主党候補たちの間では、避けて通れない重要テーマとなっており、すでに、先月2回に分けて行われた主要候補を招いた市民討論会では、白熱した論議が戦わされた。
多くの民主党候補の中で、学生救済問題に関し最も明快かつ大胆な提案者として知られるのが、急進派のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州)だ。
目玉は「Wall Street Tax」
同議員は2016年大統領選でヒラリー・クリントン氏と指名争いを演じた際に、全米公立大学の「授業料全額免除」をスローガンに掲げ、若者の間で絶大な支持を集めた。今回はこれをさらに一歩進め、すでにローン返済に苦しめられている全学生および卒業生を対象に1兆6000億ドルの借金全額を帳消しにすることを提案した。授業料免除と合わせ、そのための総コストは「10年間で2兆2000億ドル」を見込んでいる。
問題はその財源確保だが、サンダース氏のプランによると、その目玉は「Wall Street Tax」と呼ばれ、これまで無税だったウォール街での株、債権、デリバティブ売買に0.5%程度の富裕税をかけることを狙っている。これによって、「今後10年間で2兆4000億ドル」の増収が期待され、これまで難題とされてきた学生ローン問題は一気に解決できるというものだ。
また、有力候補の一人でもあるエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)もサンダース候補同様、借金に苦しむ学生たちの救済の必要性を早い段階から訴えてきたことで知られる。
ただ、ウォーレン女史の場合は、恩恵を受ける対象者を限定、具体的には@年収10万ドル以下の世帯に対しては一人当たり5万ドルを限度にローンを帳消しA年収10万ドルから25万ドルの世帯の場合は「相当額」を帳消しB年収25万ドル以上の世帯は対象外―という3グループに分けた点が最大の特徴であり、そのための必要コストも「10年間で1兆2500億ドル」と控えめだ。なお、財源確保の方法についてはまだ、詳細は明らかにされていない。
一方、現段階で再選目指すトランプ氏にとって最も手ごわい候補と見られているジョー・バイデン前副大統領の場合、財政悪化などを理由に今のところ、目を引くほどの提案はなく、各州に点在するコミュニティ・カレッジ(2年制)の全学生を対象に授業料免除措置を打ち出す程度にとどまっている。
ただ、バイデン氏は副大統領在任当時の2015年に、授業料免除を4年生大学にまで拡充する案に対し支持表明した経緯がある。同氏は今後、民主党候補間での指名争いが過熱していく中で、これまで以上に「学生ローン」問題に有権者の関心が集まってきた場合、より大胆な救済案を持ち出す可能性も否定できない。
このように、「学生ローン」問題が、大統領選の大きな争点として浮上してきた背景には近年、若年有権者層の政治的役割が重視され始めたことがある。
高まる若者の投票率
たとえば、2018年中間選挙では、「ミレニアル世代」(1989〜1995年生まれ)が、フロリダ、ジョージア、ネバダ、オハイオ、ウイスコンシンなどの激戦州で、若者の全国平均投票率(31%)を10%以上も上回る高い数字を記録した結果、民主党候補の当選に大きく貢献した。その時より15%程度投票率が高くなると予想されている2020年大統領選ではより一層、彼らの政治参加の度合いが勝敗のカギを握るとみられている。
しかも、現役学生も含めこうした若者たちにとって、未返済のままのローンは死活的問題であるだけに、大統領候補たちが今後、より具体的にどんな救済策を提示していくのか、関心は高まる一方だ。
これに対し、伝統的に「自助努力」を重視してきた共和党は、学生救済措置について「国や州がローンを肩代わりすることは、若者をさらに堕落させることになる」として、冷ややかな反応しか示していない。再選をめざすトランプ大統領も同じ立場だ。
ただ、貧困家庭出身の若者が大学、大学院への道を閉ざされているのも事実であり、建国以来「教育の機会均等」を是としてきたアメリカだけに、「学生ローン」問題は国家的課題となりつつある。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/16794
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