横溝正史(2時間ドラマ) https://sites.google.com/site/darklymama/home/ya/yokomizo2悪魔が来りて笛を吹く(1992)、 悪魔が来りて笛を吹く(2018)、 悪魔の仮面(1998)、 悪魔の唇(1994)、 悪魔の手毬唄(1990)、 悪魔の花嫁(1995)、 悪霊島(1999)、 犬神家の一族(1990) 神隠し真珠郎(2005)、 仮面舞踏会(1986)、 霧の山荘(1985)、 黒い羽根の呪い(1996)、 香水心中(1987)、 獄門岩の首(1984)、 獄門島(1990)、 獄門島(1997)、 獄門島(2003)、 殺人鬼(1988)、 死仮面(1986)、 死神の矢(1989)、 女王蜂(1994)、 女怪(1996)、 真珠郎(1983)、 人面瘡(2003)、 水神村伝説殺人事件(2002) トランプ台上の首(2000)、 呪われた湖(1996)、 白蝋の死美人(2004)、 病院坂の首縊りの家(1992)、 不死蝶(1988)、 本陣殺人事件(1983)、 本陣殺人事件(1992) 魔女の旋律(1991)、 ミイラの花嫁(1983)、 三つ首塔(1993)、 迷路荘の惨劇(2002)、 迷路の花嫁(1993)、 八つ墓村(1991)、 幽霊座(1997) ▲△▽▼
悪魔が来りて笛を吹く(1992)
いくら原作がよくても、これじゃあどうしようもないですな。他にも二度ほど2時間ドラマで作られてるらしい。横溝正史シリーズのがよかったせいで、西田敏行氏主演の映画版も何じゃこりゃだった。と言うか、あの映画はテレビではなぜかあまりやってくれないな。原作は昭和22年の設定だけど、こちらは25年。東京、銀座の天銀堂で起きた毒殺魔による宝石盗難事件。椿英輔元子爵(石濱朗氏)が事情聴取を受けるが、容疑が晴れて釈放。それなのになぜか失踪し、信州霧ヶ峰で死体で発見される。金田一のところへ美禰子(西村知美さん)が現われ、父英輔は生きているのではと言い出す。彼女は信州まで行って父親の遺体の確認をしたが、母秌子(金沢碧さん)らが死んだはずの英輔を目撃したというのだ。金田一はその晩行なわれる占いに出ることに。秌子の主治医目賀博士が砂占い・・コックリさんのようなもので、英輔の生死を占うのだ。その夜、秌子の伯父、玉虫元伯爵(根上淳氏)が殺される。しかも密室殺人。次に秌子の兄、新宮利彦(清水章吾氏)が殺される。だいたい原作通りの流れだが、見ていてアレレなことばかり。英輔の死体の手の指が全部切断されてるってのは原作にはなし。それじゃあ自殺にならないじゃん。指紋が・・って天銀堂の犯人は手袋していて指紋残してないぞ。指のこと金田一が知らないってことは、新聞などで公表されてないってこと。殺人かもしれないとなれば警察が捜査しているはずで。そもそも他殺をにおわせて、捜査が飯尾に行き着いたらどうするんだよ。あと、モンタージュ写真が証明写真みたいにはっきりしてるのは変。もっと合成っぽくしなきゃ。金田一の前に座ってる美禰子は・・膝が丸見えだ。スカート短すぎるんじゃないの?原作と違い、椿家は生活には困っていないようだ。屋敷はりっぱだし、庭の手入れも行き届いている。戦争や華族制度の廃止の影響はほとんどなしか。原作と一番違うのは東太郎。何と美禰子の兄になってる。英国に15年留学していたという設定だが、戦争中は日本に・・ってずいぶんアバウト。それに英国で何勉強してたんだ?働いていないみたいだし。もちろん小夜子との悲恋とかは出てこない。 悪魔が来りて笛を吹く2 美禰子にも違和感がある。彼女は不器量で、絶世の美女である母親とは全然似ていない。まわりの影響を受けやすく、誰かに頼ってばかりの秌子とは違い、困難の中を自力で生きていこうとするタイプ。髪は短くカットし、服装も地味。少々意固地だが、けなげな女性。髪が長くていかにもいいとこのお嬢さんといった服装のこちらの美禰子じゃ違うのだ。西村さんの出番を多くするため、金田一の須磨行きにもついてくる。謎の怪人に殺してと頼むし、何か知ってるのに隠すし。兄が犯人と知って苦悩しているはずなのに、犯人暴きの席ではすました顔で立ち会ってるし、何じゃこりゃの連続。子供の頃「ザ・ガードマン」とか「キイハンター」を見ていて、何でこんなに筋がメチャクチャなのかと不思議で仕方なかった。ここでこうなったのに、次のシーンではああなってるのはなぜなんだ?あのシーンやった意味がないじゃないか。最初から入れる必要ないじゃないか。あれからウン十年たつけど、やっぱりおんなじことやってるんだわ。入れたせいで前後が繋がらなくなってる。秌子役の金沢さんは洋装で出てくる。彼女は情欲に弱い狂い咲きの妖花というイメージじゃない。それにしてもなぜ東太郎の設定を変えたのだろう。彼は秌子と利彦の間にできた子供。英輔のためにと飯尾を使って宝石を盗ませたけど、受け取りは拒否された。そりゃそうでしょ。罪もない人10人も殺して手に入れた宝石なんか受け取るわけがない。それに英輔は金に困ってるわけじゃないし。それに・・何で実行犯に父親そっくりの飯尾を選ぶんだ?さすがに警察に密告したのは東太郎から利彦に変更されている。東太郎が密告したのではますます話がおかしくなるからね。彼が自分の犯行を利彦や秌子のせいにしていたのは潔くないですな。天銀堂事件のこと何とも思ってないのがすごい。ラストの美禰子の「わたくし生きてていいのでしょうか」というセリフにも引っくり返りそうになったな。生きていたくなくなるくらいショック受けたのは、利彦の妻華子や息子一彦も同様でしょ。でもそういうのは全く無視される。西村さんだけ目立たせておけばいいってか?しかもちょっと金田一に励まされるとコロッと態度変わるし・・。違うでしょ、美禰子は華子や一彦を励まし、新しい生活に踏み出すんでしょ。 ▲△▽▼ 悪魔が来りて笛を吹く(2018) NHKBSでも金田一物やり始めたのか。今回はアララなシーン多かったな。NHKも変わったな。金田一は吉岡秀隆氏。下宿代に困ってるところなどかわいかったけど、部屋はもう少し狭くて足の踏み場もないって感じの方がよかった。下宿のおかみ、せつ子が倍賞美津子さん。椿家はなかなかりっぱで、洋館と日本家屋がくっついているような感じ。「百年名家」に出てきそう。登場人物では信乃とお種が省略されている。あと、秌子が姉で利彦が弟になっている。さあこれから謎解きというところで1時間8分くらいか。ずいぶんすっ飛ばしてきている。椿役は増岡徹氏、須磨の旅館のおかみが山村紅葉さん。山村さんは大きな目が小錦に似てるな。淡路島の慈道が火野正平氏。知ってる人はそれくらいか。この作品はキャストが難しい。美禰子が前髪垂らした鬱陶しい感じで出てきたとたん、ああこりゃだめだ・・と予想つく。異様でも美しくもない秌子が出てきた時点で、こりゃ完全にアウトだ・・と覚悟する。菊江役の人は美人だ。華子は変なことになってる。彼女はもっとまともなキャラのはず。気になったのは旅館の女中おすみ。子爵、子爵と呼び捨てで、普通は「子爵さん」とか「子爵はん」とか言うんじゃないの?謎解き部分は早送りしたくなるほど長い。秌子は睡眠薬でも飲んだのか。彼女は自殺なんか絶対するタイプじゃないのだが。しかも命は取りとめて、「えッ、じゃあ助かるの?」とびっくり。また、東太郎が自分の素性知らないことにも驚く。アザのこと知らないのにもびっくりだ。軍隊に行ったのなら酒を飲まされる機会あったはず。風呂場で体があったまってアザが浮き出たのを、まわりに指摘されたはず。金田一が現場に一同を集めるのはすべてが組み立て終わったからで。東太郎にアザがあることは金田一は確認ずみでなければならないはずだが。東太郎と秌子の死もねえ・・何じゃこりゃ。東太郎が秌子殺すの誰も止めようとしてなかったような。飯尾が椿のフリして出没するシーンも見せなかったな。謎解き部分で金田一が引き延ばしたりあいまいな態度取ったりするのはおかしいし、みんなを救えたのにと後悔するところもおかしい。本当にそう思うのなら東太郎を容疑者として連行させれば、少なくとも秌子は死なずにすんだ。まあ別にいいんですけどさ。 ▲△▽▼ 悪魔の仮面(1998) これは短編の「神楽太夫」と「薔薇の別荘」が元になっているらしい。と言っても、前者は神楽太夫が出てくるってことだけしか関係ない。後者は、何かの理由で集められた一族、殺された当主と思いがけない跡継ぎ、それくらい。ほとんどオリジナル。昭和32年、岡山の田舎。大金持ちの仁礼竜之助が親戚を集める。なぜか金田一も同席。金に困っている者、竜之助、鶴子(真野響子さん)夫婦に子供がいないので、自分の息子を養子にとかいろいろあるが、どれも不成功。竜之助の身の回りの世話をしている可南子を籍に入れるというのでみんな仰天。彼女は30年前竜之助が女中に生ませた子。その身元調査を依頼されたのが金田一。で、間違いなしとわかったのでみんなに披露したわけ。もちろんみんなは納得しない。村はちょうど祭の最中で、お神楽をやっている。で、竜之助が殺される。凶器は鎌だ。次に可南子。蛇の抜け殻が残されていた。竜之助の妹涼子の時は鎖。それにしても竜之助が殺された時点で、何で可南子に警護を付けないのか。莫大な財産が見も知らぬ小娘に行くとみんなが騒ぎ立てているのだ。次に狙われるとしたら彼女でしょ。また、警察が何もしないから、鶴子は琢馬(羽場裕一氏)と密会できる。琢馬は女癖の悪い兄の竜之助にじっと耐えている鶴子への同情が、いつしか愛に変わっていたのだった。冒頭うじゃうじゃ出てくるのは「神隠し真珠郎」と同じだが、写真付きの系図が何度も出てくるので、そこはわかりやすくてよかった。いつものことだが金田一は何もできない。まあ彼は殺人を防ぐのが仕事じゃないからね。誰がどういう理由でどうやってというのを明らかにするのが仕事で。結局竜之助が昔集中豪雨にまぎれて隣りに住んでいた家族三人を殺したというのが発端で。それも酒造りに適した水を手に入れたいからという水っぽい理由で!生き残った鶴子と弟史親が、仇の竜之助を殺したってのはわかる。でも、可南子や涼子まで殺すのは・・はずみがついちゃったからってアンタそんな軽はずみな理由で・・。真野さんはじっと押し黙っている表情が印象的だ。大昔テレビで芸能レポーターに囲まれて質問されても(たぶん柴氏との交際についてだったと思う)、一言もしゃべらず黙り続けていたのが印象に残ったけど、その時と同じ表情。
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悪魔の唇(1994)
原作は「悪魔の百唇譜」。感想を書くため読み返した。前半はほぼ原作に忠実だが、舞台は京都に変更してある。それと原作は昭和35年だが、こちらは32年。妻をなくした河合警部(谷啓氏)にお悔やみを言うため京都へ立ち寄った金田一。そのまま山陰へ旅するつもりが、ちょうど殺人事件が起きたと引っ張り回される。あまり深く関わらないうちに出発しようとするが、そのうち興味がわいてきて本腰を入れることに。被害者朱実と、次に見つかった若い男園部は、嫉妬にかられた朱実の夫小島(天田俊明氏)が殺したのではないか。朱実の夫は中国人から日本人に変更してある。血染めのトランプカードもなし。売り出し中の女優ユカリ(吉川十和子さん)と、小島の部下坂巻(田中実氏)が出てくるが、何やら秘密がありそう。謎の男のカゲもちらつく。ユカリが朱実の身元確認に来て涙を流したり、”シャボン玉飛んだ”などと歌うシーンがあって、その後の展開は予想がつく(思いやられるとも言う)。原作のユカリは清純派で売っているものの、実際は世間ずれしたしたたか者。でもそうやっちゃうと、見ている者の同情を得られない。だからあくまでも美しく清らかで薄幸で。京都の暑い夏を感じさせる小道具がいい。そうめん、枝豆、スイカ・・あら、食べ物ばっか。冒頭からヌードを出してきてサービス。身元確認の時も胸を出したままなのは不自然。それにしても朱実役の人は偉いな。服を着ていてさえ死体役は難しいのに、裸でぴくりとも動かない。途中京都キネマが出てくるが、太秦かな。金田一が撮影をぶち壊しにして怒られるのはお約束。謎の男・・藤野役は火野正平氏。今じゃ「こころ旅」で好感度ばつぐんの氏だが、この頃はこういううさんくさい役もやっていたんだな。後半になると変更が目立つ。原作をそのまんまやれとは言わないが、創作を加え始めると話にだんだんまとまりがなくなる。シャボン玉の歌で感じたいや〜な予感があたり始める。重苦しい感じのクラシックの某曲が何度となく流れる。作り手のどっちつかずかげんを表わしているかのようだ。 悪魔の唇2 歌手くずれの都築は女性をたらし込み、薬で眠らせ、唇紋を取って収集。それだけではなく写真もとってゆすっていた。この都築が、絶対に女性を虜にしなさそうな容姿なのが致命的。その彼が殺され、彼に手ほどきを受けた園部が、あとを継いで脅迫を続けていたと。朱実もユカリも被害者であると。園部はある家の土蔵を借りて住んでいたが、契約の時一緒に来た白石なる人物が藤野らしいと。ここらへんは原作通りだ。ただ、原作では都築殺しは九ヶ月前、こちらでは五年前になってる。ユカリが都築の子供を身ごもったことや、それが原因で芸能界から消え、最近ようやくカムバックしたこと、坂巻とは幼なじみなどというのは原作にはなし。藤野が六人も殺し、土蔵の近くに埋めていたというのもなし。彼がいかに異常で残酷な性格かというのを強調し、ユカリが彼を殺しても仕方のないことだったというふうに持っていく。志村刑事は、藤野に首を絞められ、殺されるところだったのだから、ユカリのやったことは正当防衛だと思っている。しかし・・藤野は何回刺されたんだ?正当防衛にしては刺しすぎでしょ。すべては藤野の仕業・・となって、事件は解決と思われたが・・金田一が引っくり返す。小島が朱実の浮気を疑い、男に会いに行けるよう、急に東京出張を言い出したのを知っていたのは、朱実とお手伝いのナツ子と坂巻だけ。だから朱実を殺したのは坂巻。その頃ユカリのそばにいたのは園部。ユカリは彼を薬で眠らせ、殺す。二人が一緒に死体で見つかれば、疑われるのは小島。都築を殺したのもユカリ。同じ被害者である朱実を殺すのは一見筋が通らないように見えるが、園部にゆすられ続けてせっぱつまった朱実は、今度はユカリを脅して金や宝石を要求。言うことを聞かなければ都築殺しをばらすぞと言われ・・。「ああするより他になかった」とお決まりのセリフ。そのわりには小島に濡れ衣着せて平気ってどういうことよ。とにかく見ている者の涙をしぼろうとあの手この手。”シャボン玉飛んだ”・・ゲッ、いいかげんにしろ!早く終わってくれ〜!何じゃこりゃ〜!お尻がムズムズする〜! ▲△▽▼ 悪魔の手毬唄(1990) 昭和27年・・原作より三年ほど早い設定。磯川警部(藤岡琢也氏)オススメの岡山の湯治場亀の湯を訪れた金田一(古谷一行氏)。磯川はここの女将リカ(有馬稲子さん)に密かに心を寄せている。20年ほど前、リカの夫源治郎は、詐欺師恩田に殺されたが、顔は判別できないほど焼けていた。磯川は、殺されたのが恩田で、殺したのは源治郎なのでは・・という疑惑を捨て切れない。原作だとリカへの思いは秘めたままだが、こちらは表に出す。リカの秘密を握っている放庵をゲス野郎に描くが、原作ではそこまでいかない。恩田の詐欺も結果的にそうなった・・と、原作では弁護している。まあとにかくリカにとっては、磯川がいつまでも事件ほじくり返すのをやめないのは迷惑だったろう。何となくクリスティーの「スリーピング・マーダー」思い出す。いつものように金田一は、あらかた殺されるまで何もできない。犯人リカは美しくはかなく死ぬ。同じ毒で死ぬにしても、放庵の死に様とはえらい違いだ。この作品でよかったのは、泰子、文子、ゆかり(伊藤つかささん)、里子(浅野愛子さん)の四人の仲がいいこと。泰子と文子はリカの息子歌名雄(石黒賢氏)をめぐるライバルだが、文子は友情の方が大事だと思ってる。里子はゆかりのために命を投げ出す。事件のきっかけは恩田と源治郎が同一人物で、四人とも彼の娘であること。歌名雄とは異母兄妹だから結婚させるわけにはいかない。歌名雄と泰子は愛し合っているが、リカは反対するにしても理由が言えない。何しろ源治郎(恩田)を殺したのは自分。リカの苦悩はわかるが、夫殺しがばれず、迷宮入りになった頃を見計らって、この地を去ることもできたはず。元々彼女はよそ者なんだし。そうすりゃ今頃になって四人も追加で殺さずにすんだのに。まあ他の三人は美しいのに自分の娘里子だけ生まれつき全身にアザがあるのが悔しい・・とか、ゆかりが大スターになって故郷に凱旋したのが妬ましい・・とか、そのうち復讐してやる・・とかいろいろあるのだろうが。もちろんテレビの方は悲しい運命に翻弄された気の毒な・・を強調。出演者では泰子の母役江波杏子さんと、里子役浅野さんが印象的。有馬さん、石黒氏は印象薄い。特に石黒氏は若い娘にモテモテのキャラなのに・・。 ▲△▽▼
悪魔の花嫁(1995)
原作は短編で、金田一は出て来ない。新聞記者の三津木俊介が謎解きをするのだが、テレビでは少しは痕跡を・・とでも思ったのか、同じく新聞記者の宇津木恭兵を出してくる。金田一は恭兵の妹香織からの手紙で京都へ赴くが、指定された料亭で待っていても現われない。あきらめて河合のところへ向かう途中、夜道が物騒で・・と同道を頼んできたのが鶴田弓枝(高橋ひとみさん)。途中、霧の中で悪魔のようなものが浮かび上がるが、金田一はそういうものは信じないたちらしく、誰かのいたずらだと思っている。鶴田家は京都でも有数の資産家らしい。当主は弓枝の姉で、故人の澄枝の夫菊雄(古尾谷雅人氏)。彼は婿で、澄枝の財産を元手に事業を拡大。ホテル業にも乗り出そうという勢い。菊雄には鮎子という幼い娘がいる。弓枝は奈良にいたが、姉の死で鮎子の世話をするため三年前に戻ってきた。恭兵と婚約していたが、彼は澄枝と旅館で服毒心中。後で金田一は香織を訪ねるが、彼女は手紙は出していないと言う。しかし彼女は兄の死には強い疑問を抱いている。菊雄には忠雄(沢向要士氏)という弟がいる。空襲で足が不自由。原作ではせむしだが変更してある。知り合った翌日金田一は再び鶴田家へ。菊雄の誕生パーティに招待されたからだが、どうやら弓枝は金田一の初恋の女性に似ているらしい。それとあの悪魔の正体も気にかかる。転んだ忠雄を助けるというシーンもあるが、ここで彼が体が不自由だということを印象づけておくわけだ。仮装パーティの途中、悪魔のような仮装をした人物が現われる。停電もあって、何が何やらわからないうちに近藤と立野が刺し殺される。後でみんなして男と言っていたけど、仮装をしていたのだから女性かもしれないじゃん・・と私なんかは思ったんだけど。家政婦の村木の仕業かも・・って。ずっと澄枝の世話をしてきて、菊雄のことを嫌っているところなんか「レベッカ」のデンヴァース夫人みたいだ。また、仮装パーティで浮かれる人々の間を歩くまがまがしい悪魔は、「赤死病の仮面」を連想させ、なかなかよかった。 悪魔の花嫁2 近藤と立野は小豆相場に手を出して失敗し、菊雄に穴を埋めてもらおうとしたが断られる。菊雄とこの二人、執事の笹野(六平直政氏)、後で出てくる室戸らは、戦争中一緒に地獄を見た仲間らしい。近藤と立野は菊雄を脅していたらしく、当然警察に疑われるが動じない。そのうち弁護士の宅間も墜落死する。死者は増やしてあるし、途中で洋一郎が神隠し・・なんて出てくるので、こりゃ話はどこへ行き着くのかいな・・と心配になる。原作と違い菊雄はいつまでたっても死なないので、生かしておくため(←?)あれこれ出してくる。弓枝や忠雄が菊雄を殺さないのは、洋一郎の生死が不明だから。洋一郎は両親が晩年になってからできた跡継ぎで、澄枝や弓枝にとっては年の離れた弟。それがある日突然行方不明に。溺愛していた両親は悲しみのあまり死んでしまう。もちろん菊雄の仕業で、それもこれも財産を一人じめするため。まず澄枝をたぶらかして結婚し、心中に見せかけて始末し、遺産を相続。その後弓枝に手を出し、近く結婚するつもり。洋一郎がいなくなったため、財産は姉妹二人がそれぞれ持ってるが、彼が生きて帰ってきた場合はすべて彼のものになる。菊雄は戦時中恩を売った室戸に洋一郎の始末を命じたが、彼は手を下せず、山伏として暮らしながら子供を育てる。室戸が病死すると、山伏仲間で事情を聞いて知っている木田(佐川満男氏)が引き続き面倒を見る。へたに姿を現わすと菊雄に殺されてしまうので隠れていると。・・警察は当てにできないってか?これらがわかったのは恭兵が残しておいたメモのおかげ。彼が澄枝と旅館でしばしば密会していたのは不倫ではなく、洋一郎のことを相談していたからなのだ。ただ、その旅館は宅間が愛人にやらせていた関係で、菊雄の知るところとなり、毒を飲まされ殺されたと。木田と笹野は相討ちのような形で死亡。金田一は洋一郎を連れて鶴田家へ。菊雄と対決するが、彼がすべての黒幕という確実な証拠は何もない。笹野は死んでしまったし、澄枝達に毒を飲ませたのは旅館のおかみ。 悪魔の花嫁3
この後やっと(←?)弓枝が菊雄を刺し殺し、例の・・悪魔の仕業と言い立てるが、これは今逮捕されては困るからだ。鶴田家の存続や洋一郎の将来・・財産相続・・を確実なものとするには法的手続きが必要。彼が本物なのは間違いなく、自分達がいなくなった後は村木が洋一郎や鮎子を守ってくれるだろう。金田一もあえて黙っている。ずっと存在感の薄かった忠雄がようやく前に出てくる。彼の障害は実はそう重くもなかった。でも、容疑者からはずれるためには体が不自由とまわりに思わせておく必要があった。悪魔の仮装をしたのは彼。う〜ん、でもなぜ近藤と立野を殺すんだ?洋一郎のことを何か知っていないかくらいは聞くのでは?菊雄と違ってすぐ口割りそうだし。金田一は自首を勧めるが、二人にその気がないことはわかっている。忠雄が弓枝のことを思っているのは原作通りだが、弓枝の方は・・彼の気持ちに気づいていたのかな?ラスト・・すべてが片づき、二人は毒入りワインを飲んで美しく死ぬ。ネットで調べると酷評されているが、私はそうひどい出来でもないのではと思っている。ただ、菊雄の言動につじつまの合わないところがあるのは確か。自分のまわりで次々に人が死んでいるのに、誰の仕業なのか全然気にしてないみたいなのはおかしい。誰かが自分を陥れようとしている。それはいったい誰?普通少しは疑うでしょ?洋一郎のことがほったらかしだったのもおかしい。室戸がちゃんと言う通りにしたのか確認するでしょ?弓枝のことはいちおう心から愛していたようで、結婚しても殺す気はなかったと思われる。だから彼女に刺された時は、信じられない様子。と言って彼に同情する人はいまい。澄枝にしたことを思えばね。と言うか、直前に金田一にあれだけ暴かれて、それでもなお弓枝が彼を信じて結婚すると?弓枝は浮草のように頼りなげな、はかなげな感じだが、一回だけ強いところを見せる。菊雄の戦友仲間を訪ねて回っている金田一を襲おうとしたチンピラどもを退けるシーン。ここは意外でよかった。澤向氏は知らない人だが、その後澤向要進と改名したようだ。 ▲△▽▼ 悪霊島(1999) 金田一は祈祷師のはるから手紙をもらい、岡山県の下津井へ。しかし彼女は殺されていた。手紙には具体的なことは何も書かれていなかったが、はるの手には刑部神社のおみくじが。で、刑部島へ。途中青木という男を引き上げるが、「鵺の鳴く夜に気をつけろ」とか言ってこときれる。島では刑部大膳(神山繁氏)を始めとする刑部家と、貿易商として成功している越智竜平(峰岸徹氏)を始めとする越智家があって、昔から仲が悪い。宮司の守衛(清水綋治氏)と巴(山本陽子さん)の娘真帆(中本奈奈さん)は、竜平の甥拓郎(中村俊介氏)と恋仲で、駆け落ちしようとするが止められる。両家の仲の悪さを思えば当然だが、巴と竜平は昔恋仲だったのを引き裂かれた。若い二人を応援してくれてもよさそうなものだが・・と金田一は思う。見ている我々は、そりゃ二人が兄妹だからに決まってるじゃん!と思う。拓郎は養子・・の時点で決まりでしょ。金田一は依頼人となるはずのはるが殺され、報酬の当てもないのに調べ回る。しかし殺人を止められない。99年というと山本さんは50代後半で、43歳の巴はちと無理がある。20年前の若い巴もやるが、見ている方が恥ずかしくなる。中村氏はやさしそうな顔立ちで、私は見たことないが浅見光彦シリーズを長く務めたらしい。巴と竜平の間に生まれた双子の兄妹・・と知らされた二人は、当然ショックを受ける。金田一はこの二人がまだ関係を持っていないという前提で接しているが、そうじゃなかったらどうするのかね。原作での巴は多情で甘ったれで、竜平でさえアイソつかすが、こちらはそうはいかない。あくまでも美しく悲しく、(何人殺そうが)彼女は悪くありません、仕方なかったんです状態。例によってマーラーの曲がじょうじょうと流れ、時にはうるさいほど鳴り響く。まあ原作とは全く別の話と考えれば、余計なものを切り捨て、巴を中心としたストーリーにうまくまとめ上げてあり、わかりやすいとは思う。でも原作のファンは磯川警部と幻の息子とのめぐり合いを期待するわけで。一番心に残るのはあの部分なのであって。何でいつも女性連続殺人犯を薄幸な美女に仕立て上げるのかね。男性が犯人ならこんな変更しないと思うが。
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犬神家の一族(1990)
中井貴一氏が金田一やってたとは知らなんだ。2時間以上あって、劇場用映画ですと言ってもいいくらい。細かいところをちょこちょこ変えてあるが、一番よかったのは犯人松子(岡田茉莉子さん)の動機。佐兵衛(若山富三郎氏)の霊に支配されて・・みたいな描写にはうんざりしていたので、こちらのズバリ遺産目当てというのは非常にいい。「愛情をくれなかった父親に何をもらいますか」・・いいですなあ正直で。今までの「犬神」と違うのは三姉妹の背景にスポットをあてていること。ただの意地の悪さ、冷たさではなくて、彼女達をそういう性格に追い込んだ佐兵衛の所業を強調する。三姉妹の母親だけでなく、古舘(小林桂樹氏)は恋人と引き裂かれ、徳島警部補(荒井注氏)、佐川刑事(柳沢慎吾氏)も家族のことで佐兵衛を恨んでいる。その佐兵衛が生涯でただ一度純粋に愛したのが菊野・・なんて言われてもねえ。何と身勝手な。ちなみに菊野は古舘の元恋人という設定。そっちを強調するためか、珠世(財前直見さん)が佐兵衛の孫という設定はなし。単に佐兵衛の大恩人の孫ということにしてある。そのせいで遺言状で珠世が重んじられていることに説得力がない。今回松子の琴の師匠香琴(結城しのぶさん)の設定もひねってある。原作では菊野だが、こちらでは菊野の妹はる。松子のアリバイ作りに協力していると見せかけて、後で事実を申し立てて松子を窮地に追いやる。もちろん姉の復讐だ。また、佐清(石黒賢氏)と静馬の協力関係はなしとか、松子が最初から本物の佐清じゃないとわかっていたとか、妙なことになっている。それでいいのかな・・とも思うが。何度もうるさいくらい「よきこときく」がくり返される。全体的にスピード感がなく、停滞した感じ。三姉妹の中では次女竹子役三ツ矢歌子さんもいいが、三女梅子役結城美栄子さんがすばらしい。怨念のこもったしゃべり。謎解きのシーンで、珠世の後ろに猿蔵(丹古母鬼馬二氏)の顔だけがうつっているのが、深刻なシーンなのに笑える。他に若林が辰巳琢郎氏、奉納手形のことを言い出す朝子が浅野ゆう子さん、金田一の助手池田が松本伊代さん。個人的に感心したのは人力車夫役桜金造氏。老婆にぶつかりそうになった後の表情・・目つき、口元、頭の振り方がすばらしい。洋装にメガネの中井金田一も悪くはないが、印象は薄い。今にも「サラメシ!」とか言いそう。
▲△▽▼ 神隠し真珠郎(2005) 1977年のテレビ版は原作の香りをよく伝えていたけど、こっちは・・。舞台は信州ではなく、岡山。時代は不明だが、テレビの形を見るとやや古めかしい。それでいてカラーコンタクトレンズがあったりして。椎名は出て来ず、乙骨(勝村政信氏)が金田一連れてくる。鵜藤と由美の二人暮らしのはずが、ぞろぞろうじゃうじゃ。作り手の方も心得ていて、家族構成図を出したり、いちいち顔をうつしたり。初めは誰が誰やら状態だが、そのうち見分けがつくようになる。困るのは何にでも女がくっついていること。〇〇の母、〇〇の妻、〇〇の愛人。で、これら女性達が揃ってどうでもいいような存在で。普通これに子供達が加わるはずだが、そっちは一人だけ。この子供・・誠司がまたウロウロしているだけの存在で。鵜藤(神山繁氏)には、それぞれ母親の異なる三人の息子がいる。本当はもう一人末の真珠郎がいるが、18年前3歳の時、神隠しにあって行方知れず。この真珠郎と思われる男が、長男の雄一、次男の研二(乙骨)、三男の幸三を惨殺。なぜ真珠郎だとわかるかと言うと、彼は金髪で青い目をしているからなのだった。ここで見てる人全員思う・・本当に鵜藤の子?もちろんそんなことは無視される。金田一でさえ遺伝的におかしいのではないかと疑わない。みんなしてウロウロしているだけで時間がたっていく。誰がどうなろうと、どうでもよく思えてしまうのがまずい。河合警部の谷啓氏、鵜藤の神山氏、金田一の古谷一行氏・・演技がどうのより、健康の方が気になる。寒そうだし走ってるし。原作の面影はうっすら程度。洞窟の中や部屋の中に、恨む相手の名前が書かれた紙がいっぱいぶら下がっているところ、真珠郎が写真をナイフでブスブス突くところなど、いいシーンもある。真珠郎役山崎勝之君もなかなかいい感じで、興味が持続するとしたら彼のおかげ。由美役田中美里さんもいいが、鵜藤に暴行されるとかそういう原作での設定はなし。子供の頃鵜藤によって両親を半殺しにされ、兄と弟を殺された恨みということになっている。終わりの30分くらいは、延々説明・回想。どんなに頭悪くてもこれなら理解できるでしょ・・と言わんばかり。由美の母親役は吉田日出子さんかと思ったら泉晶子さんだった。ラスト流れる音楽はなぜか夏の終わりの、ひとけのなくなった海辺を思わせるような・・おフランスの恋愛映画ででも流れそうな曲だった。まあ・・予想したほどひどくはなかったけど、相手がわかっているのだから、あんな手間と時間のかかる、成功率の低い復讐の手段は取らないだろう・・ってどうしても思っちゃう。 ▲△▽▼ 仮面舞踏会(1986) 小野寺昭氏の金田一を見るのは初めて。ちょっと髪の毛が多すぎて不自然な感じがするけど、大人しくて控えめな性格なのはいい。2時間ドラマなので駆け足気味。1時間を少し過ぎたあたりでゴルフのシーン。あら、もう美沙(松原千明さん)の色盲がわかっちゃうの?今回残念だったのは、メインの千代子役松尾嘉代さん、飛鳥役鈴木瑞穂氏に魅力がないこと。大女優と大物実業家の豪華カップルにはとても見えない。千代子は大根女優、飛鳥は千代子に振り回される小物にしか見えない。荒木道子さんの篤子は、古谷版の乙羽信子さんに比べると憎たらし度は薄め。美沙が殺すのは泰久(佐原健二氏)だけで、槇と津村(清川新吾氏)は篤子が殺す。二人とも美沙の出生の秘密を知り、篤子に大金を要求する悪党に描かれる。他に謎の女・・槇を千代子に取られた元妻(白川和子さん)が出没。作り手は千代子の方も謎めいた魔性の女に描きたいようだが、謎の女は一人でたくさんだ。二人というのは欲張りすぎ。舞台は軽井沢ではなく、山中湖畔に変更。泰久の死も去年ではなく、今年(←?)。もう一人の夫阿久津は省略され、田代の存在も都合よく扱われる。篤子も美沙も戦争の被害者として・・気の毒な存在として描かれる。その上なぜか美沙は金田一に思慕の念を抱いている。しかし泰久によってすべてを踏みにじられてしまう。罪は篤子が全部かぶってくれたけど、もう生きる気力はない。原作のような、突然変身する邪悪さはなく、最後までひたすら悲しく美しい。特に2時間ドラマはこういうの念入りに描くのが好き(常套手段)だから、こんなに早く種明かししちゃって残りの時間どうするの?と思っても、大丈夫ちゃんと埋まるのよ。今回もなぜか金田一と美沙は小舟を浮かべ・・これじゃ「真珠郎」みたいだ・・と思っていたら・・案の定美しく服毒死。今回は、泰久がバンガローに落書きしていたSASUKEのことがちゃんと説明されていて、そこはよかったけど、全体的にはダメダメムード。大げさな演技や、一部の人のへたくそな演技が作品の質を落としていた。松原さんは古風な美しさがよかった。原健策氏がお父さんだそうで、これにはびっくり。小野寺氏のは他に「真珠郎」とか「三つ首塔」、「夜歩く」があるようで、放映されたら見るつもり。 ▲△▽▼ 霧の山荘(1985) 原作が反映されているのは最初の方だけ。すぐ変更・・と言うか、暴走・迷走し始める。信州のホテルに滞在中の金田一。等々力のゴルフに付き合っていた時見かけた往年の大スター、紅葉照子(岡田茉莉子さん)に亡き母の面影を見、心引かれる。彼女の姪容子(松本留美さん)が金田一に会いにくる。彼なら20年前に身辺で起きた殺人事件の真相解明をしてくれる・・と照子は思い込んでいるらしい。迎えの車を寄こすというのを断り、散歩がてら出かけた金田一だが、霧の中で迷ってしまう。往生していると使いだという、うさんくさい男が現われ・・ここから殺人事件が起きたと思わされた金田一が警察を呼んで赤っ恥をかくまでは原作と同じだが、それ以降は全然別の流れ。原作では殺される照子も、使いの男平太(山本昌夫氏)も死なない。もっとも照子は最後に死ぬけど。何しろ岡田さんなので、彼女が犯人というのは見え見え。原作では容子と武彦(西田健氏)が犯人で、照子と平太を殺し、照子の姉房子に罪をなすりつけようとするのだが、こちらでは容子も武彦も殺されてしまう。房子は出てこず・・。照子は20年前「死の接吻」という映画で水木と共演するが、彼が事故とも自殺ともつかない死を遂げたため、映画は未完成に終わる。その後半年ほど失踪した照子は、現われたと思ったら引退宣言。その後実業家の田島と結婚するが、その彼が病死。死の間際に自分が命じて水木を殺させたと告白。それが誰なのかは不明だが、水木の死の直前一緒に酒を飲んでいた監督の上条(織本順吉氏)、カメラマンの渡瀬、会社の宣伝部長秋葉(田中明夫氏)のうちの誰かに違いない。三人とも水木に自分をあきらめさせようとしていたし。照子は三人を別荘へ呼び寄せ、カムバック宣言。自分が資金を出し、「死の接吻」を完成させる・・と、水木そっくりの達彦まで出してくる。で、撮影が始まり、途中で容子が崖から転落死、武彦は銃の暴発で死ぬ。上条達は撮影中止を言い出すが、照子は時間がないと続行を主張。これで彼女が不治の病なのは確実と。映画は人妻と海軍将校の悲恋か。怒り狂った夫が恋人を撃ち殺し、傷心のヒロインは毒をあおって美しく死ぬと。情事のシーンが何度か出てくるが、照子はしっかり着ているので不自然。後で彼女は乳ガンが再発し、余命六ヶ月とわかる。脱がないのはそのせいとか、何かいい持っていき方があっただろうに。
霧の山荘2
途中で金田一は旅に出る。半年の失踪は出産のためとなぜか気づいたらしい。生まれたのが達彦で、水木にそっくりなのはそのせい。死期を悟った照子が、昔のマネージャーに育ててもらっていた達彦に遺産を相続させるため、今回のことを仕組んだのだ。武彦と容子は田島の甥、姪なので、照子が死ねば遺産は二人に行く。あのでもだからって邪魔だ殺してしまえとなります?母親の愛と言われても困るんですけど。それに・・田島の財産でしょ?あんたのじゃなくて。大女優だったのなら自分のもあるはずで、それを残せばいいじゃん。いや〜それにしても岡田さんの若作りと言うか、ヒロインなり切り演技見るには忍耐が必要です。演技とは言え母親が息子とラブシーン演じるのは異常だし、シャワーシーンはおぞましくさえある。何じゃあのシーンは(後ろ姿は吹き替えらしいが)。この時点では達彦は照子が母親だとは知らないはず。知っていたらいくら何でもあんなことしないでしょ。ラスト近くまで達彦はほとんどセリフもなく、何を考えているのかよくわからない。いや、作り手にもわからないんでしょ?死んだ恋人への恋情と、息子への愛情と、映画を完成させたいという女優根性といくら何でも欲張りすぎ。一番呆れるのは金田一も等々力も照子のやったことを犯罪だと認識していないらしいこと。容子も武彦も遺産は当てにしているが、それは血縁だから当然のこと。だからこそ照子の面倒を見、わがままに付き合ってきた。今回だって素人だけど映画に出てくれるなど協力的。原作のような悪人では決してない。それをあなた問答無用で殺しちゃうんですぜ。このようにひどい内容なのだが、出演者のおかげで何とか見ていられる。西田氏は「帰ってきたウルトラマン」がよかった。金田一が話を聞く佐久間役三谷昇氏もよかった。異様じゃない役は珍しい。ところで達彦役の人は誰かしら・・冨家規政・・ええ〜ッ、若い!あたしゃ「イチから住」とかいう番組でちらっと見ただけですけど。達彦がうつる度にちょっとのっぺりしてるけど美形だし、体格もいいし・・と感心していましたの。何度か上半身裸でうつるけど、全然いやらしさがなくて肌のきれいさとか均整の取れた美しさがすばらしくて。達彦は人を殺してまで用意された遺産なんて欲しくないはず。そこらへんちゃんと描写して欲しかったけど。岡田さん持ち上げるのに気を取られ、他はお留守になってたな。
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黒い羽根の呪い(1996) 原作は「鴉」という短編。読み返してみたが、兵藤家は出て来ないし、犯人も違っている。まあ、佐久間良子さんが出てきた時点で予想つくけど。珠生(とよた真帆さん)は蓮池の養女に変更されているが、由良(佐久間さん)が実母なのも予想つく。昭和32年岡山県の矢神村。ネットで調べていたら、BSTBSの紹介文で失神村になっていたのには笑ってしまった。いがみ合う蓮池家と兵藤家。珠生と兵藤の長男泰輔は愛し合っていたが、仲を裂かれる。珠生の婿、貞之助は放蕩者。三年前突然失踪したが、書置きには三年後に戻るとあって、その日が迫っている。紋太夫役中丸忠雄氏は映画「電送人間」が印象に残るが、テレビでは「37階の男」というのがあった。調べてみたら1968年。高層ビルとして話題になった36階建ての霞が関ビル。実は37階があって、主人公はそこに住んでいるという設定。泰輔役の人は見覚えがある・・渋谷哲平・・そうそうこんな人もいたっけ。兵藤の妻役佐野アツ子さんは昔ポーラテレビ小説に出ていたな。その頃は厚子だったけど。幾代役は沖直美さん。原作とは違い、とんでもない悪女に変更されている。幾代は貞之助と関係を持っている。だから珠生と泰輔の駆け落ちを邪魔するのはおかしいが(むしろ駆け落ちしてくれた方が好都合のはず)、結婚後も不倫を見せつけ、苦しめてやれという魂胆か。由良は珠生の不幸に心を痛める。貞之助のひどい仕打ちに思い余って殺そうとした珠生が失敗すると、代わりに由良が彼を殺す。その秘密を嗅ぎつけた直次郎、和哉、幾代も殺す。だいぶ殺人を増やしてある。貞之助の失踪を三年と区切ったのは、モンダミン・・じゃない、紋太夫の余命の関係。彼も発作を起こして死亡。はい、また一人死人追加。この設定だと、最初から由良が実の母と名乗り出て、蓮池家を出ていればこんなことにはならなかったのに・・となる。やっぱり蓮池の財産を珠生に継がせたかった?原作だと珠生は女性として欠陥があるが、恥ずかしさもあって表沙汰にしたくない。貞之助と相談して失踪したことにする。離婚という手段を取ると、また次の婿を取らされ、同じ恥をかくだけ。三年の間には紋太夫も死ぬだろうし・・(珠生は紋太夫の孫という設定)。まあこういう理由はテレビではムリ。例によって由良は人を殺す時も、自殺した後も美しい。 ▲△▽▼
香水心中(1987) 原作はさほど長くないので、登場人物を増やし、死人も増やしてある。そのわりには停滞感が漂うが、ただくっつけただけじゃだめなのだということがよくわかる。昭和35年の初春、金田一は香水会社の社長常盤松代に呼ばれ、伊豆の別荘へ。理由は使いで来た営業部長省三にも不明。途中で車のトランクがパカッと開くので、中に死体があるってのは予想つく。松代には三人の孫がいて、後継者のことを言い出すので、こりゃ殺人の始まりだな・・と思う。こういうの言い出すとろくなことはない。まわりには真面目で通っている松樹は人妻百合子と不倫している。その彼は山荘で首吊り、そばには百合子の絞殺死体が。現場にはなぜか気分が悪くなるほど香水の匂いが・・。だったら山荘に近づいたあたりで匂い始めるとか・・。省三と同じく松代の血縁で、彼女に世話になってる美代子がおなかを押さえるので、松樹の子を宿しているのだと予想つく。途中捜査会議では一同の顔写真つきで状況を説明してくれるのが親切。最初のうちは、は?松樹?は?松彦?と混乱してるから。原作では省三があっさり遺書を残して終わってしまうので、拍子抜けする。第一香水をまいたりしてごまかしても、百合子と松樹を解剖すれば死亡時刻のずれなんてすぐわかるわけで・・。原作では美代子は自殺、省三も後を追うが、こちらの美代子は死なない。松代役は高峰三枝子さん。数年前の「本陣」より若く美しく見えるのは洋装のせいか。松樹は山下規介氏、松彦が田中隆三氏。松子がカツラをかぶっていたことや、別荘番市助(ストロング金剛氏)との関係は何だったのか。まあこういうのをくっつけないと、松子の出番はないのだが。市助の死や、百合子の夫青野(草薙幸二郎氏)の死はおまけ。松代の主治医で穂積隆信氏、解剖医で菅貫太郎氏がちょこっと。美代子役高樹澪さんはサラサラの髪が気になる。ああいうの見ると縛りたくなる。等々力がハナ肇氏。露天風呂でお尻見せるのは・・本人?この作品で一番印象に残るのは省三役河原崎建三氏。原作とは年齢も性格も違う。こちらの省三は出てきた時から怪しいが、それでいてそれが気にならない。ちょっとした表情やセリフが非常にうまいからだ。メイドのふみ役の人もうまい。ちょっとその場で足踏みしてから走り出すなど芸が細かい。
▲△▽▼ 獄門岩の首(1984)
金田一は休養を取るため岡山県の合田村という、山間にある熊の湯へ。出迎えた日和は下心があるらしく、金田一を滝へ案内する。300年前、百姓一揆があって、名主の十右衛門の首が滝に突き出した岩にさらされる。そのせいでこの岩は獄門岩と呼ばれるように。滝は名主の滝、胴体が浮かんだところは首なしの淵とそれぞれ呼ばれるように。一年前に熊の湯の養子達夫の首が岩の上にさらされていたが、犯人はわからずじまい。日和は金田一に解決してもらおうという魂胆らしい。ところが投宿していた考古学者里村(西沢利明氏)が同じ手口で殺されてしまう。村人はたたりと恐れるが、江戸時代ならともかく現代では通用しない。まあ前半はほぼ原作の流れに沿っているが、後半になると原作部分を使いきってしまったという感じで、水増し感がつのる。原作では里村は映画監督だが、こちらでは考古学。学生四人のうち、土井(加納竜氏)がいかにもな感じなので、犯人はすぐわかる。里村のせいで命を落とした恋人の復讐というのは原作通りだが、恋人が千代の姉と言うのは違う。また、彼が玄蔵(夏木勲氏)に殺されるというのも違う。せっかくハンサムな加納氏が出ているというのに、ろくに存在感も示せないまま退場。こちらでは土井の悲しい復讐ではなく、熊の湯のおかみ、幾代(久保菜穂子さん)と玄蔵との悲恋に焦点しぼりたいからね。そのせいでいろいろ無理が生じるんだけど。こちらでは玄蔵は十右衛門の子孫、幾代は十右衛門を裏切った蓮池の子孫ということにしてある。その仇どうしの家に生まれた二人が駆け落ちまで考えるほどの仲に。当然引き裂かれるが、幾代の腹には子供が・・。それが達夫の妻道子。その道子は達夫が殺された後、自殺。原作では達夫を殺したのは道子で、死体の始末にたたりを利用しようと首を切ったのは幾代。でもこちらでは達夫、土井、産婆を殺し、金田一の命まで狙ったのは玄蔵ということに。玄蔵をかばおうと幾代まで金田一を撃とうとする。私は達夫を殺したのは(もちろん正当防衛だ)原作通り道子の方がよかったと思う。それを知った幾代が玄蔵に死体始末の協力を頼み、そのせいで道子が出生の秘密に気づき、加えて夫を殺したという罪の意識に耐えきれず自殺・・と。暗い内容なので、芸者の桃太郎(西川峰子さん)を出してきて明るいムードを出す。印象に残ったのは久保さんの目の演技。今ではあまりお目にかからない。
▲△▽▼ 獄門島(1990) これが片岡鶴太郎氏の金田一、一作目だとか。金田一は戦友の千万太に頼まれて獄門島へやってくる。千万太は自分が死ぬと三人の妹が祖父の嘉右衛門(平幹二朗氏)に殺される、それを止めてくれと死に際に頼んでいた。ところが嘉右衛門はすでに病死したと聞いて、金田一は一安心。死者には何もできない。千万太のいとこ、一は無事帰ってくるらしい。おめでたいことだが、それにしては一の妹早苗(遥くららさん)の様子は少しおかしい。金田一は千万太の葬式が終わったら島を離れるつもりだったが、通夜の晩花子が殺される。次に雪枝が殺され、その度に金田一は自分の無力さを悔やむこととなる。原作では三人姉妹はまるで狂い咲きのような、色気違いのような感じだが、こちらではそれほどでもない。特に月代は牧瀬里穂さんが演じているので、かなりまとも。しかも金田一に思慕を寄せている。姉妹の性格の変更が吉と出たとは思えない。彼女達の奇矯ぶりがこの作品の特色なのだ。彼女達は自分の世界に生き、いつもケラケラと笑い、ある意味幸せそうだ。月代は金田一に行かないでと懇願するが、彼は山狩りへ行ってしまう。その際おまじないと称して月代のおでこにキスするのである。こういうシーンで見ている者が胸キュンするとでも?たぶんみんないっせいに心の中で「ぶわっかじゃないの〜!!」と叫んだはずだ。最後に残った月代のそばにいてあげないなんて!この時点では彼は犯人は復員兵姿の男と思い込んでいたわけだ。結局彼は千万太の頼みをかなえることはできなかった。無能ぶりばかりが目立つわけだが、ある程度は仕方のないこととも言える。何しろ彼は詳しい事情がほとんどわからないまま事件に巻き込まれたのだから。それに早苗のようにウソをついている者もいるし。片岡氏の金田一は適役だと思う。無理にもじゃもじゃ頭にせず、すっきりした髪なのもいい。いいと思うけど・・作品の出来はまた別の話。ラストで彼は早苗に島を出るよう勧めるが、断られる。これは原作通りで、このことから彼女は金田一が好意を持った、数少ない女性のうちの一人として知られる。ところがこの作品では月代との心の交流を美しくうたい上げておきながら、ラストでは本命は早苗だった・・となるのである。これじゃ月代も浮かばれませんてば!
▲△▽▼ 獄門島(1997) 昭和21年、呉の病院で知り合った千万太(ちまた)の遺骨を抱いて瀬戸内の小島、獄門島へ渡った金田一。島の網元、鬼頭の家では、肇が復員するという、うれしい知らせがもたらされたばかり。金田一が危惧するのは、今はの際に千万太がくり返していた言葉・・自分が戻らないと妹達が殺されてしまう・・。腹違いの妹月代、雪枝、花子の三人は、揃いも揃って頭のネジのゆるんだ、狂い咲きの花のような姉妹。兄の恐れた通り、次々に殺されてしまう。見る前は、長い原作をどう2時間にまとめるのかな・・と思っていたが、1時間を過ぎる頃にはあらかた終わってしまっていた。ずいぶんスイスイと来たなあ。謎解きの時間がたっぷりあるってことは、これからどんどん原作からはずれていくのだろう。さて今回はどんな余計な設定くっつけることやら・・。男手のない鬼頭家を守っているのは、肇の妹早苗(秋吉久美子さん)。島をまとめていた嘉右衛門(金田龍之介氏)が死に、その息子与三松はヒロポン中毒で座敷牢に。その息子千万太が死んだとなると、財産は三姉妹へ。姉妹が死ねばいとこの肇に渡る。肇が密かに島へ渡り、姉妹を殺して回っているのか。怪しい復員兵も目撃されているし。原作と違うのは、肇の戦死が三長老にすでにわかっていること。早苗は復員詐欺に会ったのだ。住職了然(名古屋章氏)、漢方医幸庵(織本順吉氏)、村長荒木(北村総一朗氏)は、嘉右衛門から、財産が三姉妹へ渡らぬよう頼まれていた。与三松の後妻で三姉妹の母お小夜とは憎み合っており、千万太、肇がだめなら早苗に家を継がせるように・・早苗は実は嘉右衛門の娘で・・あれれ?そうきたか。本作はなるべく早苗を前面に出そうとあの手この手。でも秋吉さんのはかなげな・・すっぱいような顔が大うつしになる度、お尻がむずがゆくなってしまって・・。早苗が兄と間違える復員服の男は、あれじゃあ正体不明のままだ。冒頭河合警部がちゃんと、海賊退治に追われていると言っているのに。原作ではすでに死んでいるお小夜を出してくるが、あんまり意味がない。本家乗っ取りの道具にされ、最後は分家の志保(宮下順子さん)に捨てられる鵜飼(藤木直人氏!)。島を去る金田一と同じ船にしょんぼりと乗る。船を見送り、頭を下げる早苗。ラストシーンはなかなかよかった。 ▲△▽▼
獄門島(2003) 上川隆也氏の金田一は見るの初めてかと思ったら、「迷路荘の惨劇」も彼だった。どこと言って特徴はなく、しゃべり方とか石坂氏に似ていて、個性が感じられない。でも、古谷氏のような大げさなところはなく、大人しくて控えめなので、終わり頃には好感持ってた。金田一役はこの二作だけらしいのがちょっと残念。昭和21年、戦友千万太の死を伝えるため獄門島へ渡った金田一。死の間際三人の異母妹・・花子、月代、雪枝のことを頼まれたのに、何もできない金田一。次々に殺される三姉妹。前半の1時間で事件はあらかた起き、後半はひんぱんにCMが入り、みんなを集めて謎解きし、やらなくてもいいどんでん返し。この作品のキモは、亡くなった嘉右衛門の狂人じみた遺言が、住職の了然(神山繁氏)、村長の荒木、医者の村瀬(寺田農氏)に殺人を実行させること。出征した千万太にもしものことがあったら、三姉妹を殺せ。なぜなら彼女達の母親小夜はどこの馬の骨ともわからぬ旅回りの女役者。あんなのに家を継がせてなるものか。早苗役は高島礼子さん。年齢の関係で、一(ひとし)は弟に変更してある。三姉妹も年子ではなく三つ子に。一番の変更は嘉右衛門がまだ生きてること。だから了然達三人が死の床にある嘉右衛門に懇願されて・・というキモが生かされない。死ぬかと思ったら、ボケながらもしぶとく生き延び、それで恐ろしくて・・ということにしたかったらしいが、世話をしているのが早苗なので、話がおかしくなってしまった。三つ子役は三倉茉奈、佳奈嬢。双子を三つ子に増量した(←?)わけだが、合成シーンには全く違和感がない。逆に違和感ありありなのが早苗の衣装。戦後まもなくなのに・・喪中なのに・・着物も帯もりっぱで、しかも一着だけじゃない。まるで着物のCMだ。こんな生活はいや、島を出たいと金田一に迫ったのに、結局すっぽかすのもわけわからん。バカ正直に待ってる金田一に胸キュン。彼だって早苗に全面的に頼られても困るはずで、現われなくてかえってホッとしたのでは?原作では磯川警部が出てくるが、こちらは等々力警部(中村梅雀氏)に変更されている。
▲△▽▼ 殺人鬼(1988) これはだいぶ前に一度見たが、ちゃんと全部見たのかどうかは覚えていない。最初にうつる絵は文庫本のカバー絵で、これじゃあ犯人が女性だってのがわかってしまうのでは?お化け屋敷から始まるので、あれれ?闇ブローカーの死体が見つかるが、大金が入っていたはずの財布がなくなっている。金田一は榊原という金持ちの家の留守番をしている。ある晩暗い夜道で同道を頼んできたのが加奈子(藤真利子さん)。お化け屋敷の近くで古着屋をやっている菊江という女性とそっくりだが、違うらしい。原作では探偵作家の矢代というのが出てきて、加奈子達と関わる。金田一が出てくるのは、賀川(清水綋治氏)が殺されてから。加奈子には亀井(笹野高史氏)という戸籍上の夫がいるが、夫婦と言っても一晩限り。出征前に好きでもない相手と結婚させられた女性は他にもいたんだろうなあ。死ぬかもしれないからせめて・・という親ごころはわかるけど、そのせいで一生縛られた人もいると思う。加奈子は疎開先で妻子持ちの賀川と親しくなり、夫婦同然に暮らしている。死んだと思っていた亀井が片目、義足になって現われ、復縁を迫るが、加奈子はまっぴらだ。途中で賀川の本妻、梅子(星由里子さん)も登場。お化け屋敷は別として、あとはほぼ原作に忠実。賀川が殺され、加奈子が首を絞められた状態で見つかるが、金田一は現場のカーテンのシワが気になる。原作だとカーテンの後ろにくぼみがあって、人が隠れるのに都合がいいが、テレビではすき間がなく、隠れるのは無理に思える。二人のブローカー殺しは金目当て。賀川に生活能力がないからだ。菊江と加奈子が同一人物ではないかと金田一がすぐ調べないのは変。賀川の家が焼けるのは余計だし、金田一が命狙われるのも唐突。加奈子が菊江としてそのまま暮らしているのも変。奪った金でどこかへ逃げるはずだが。とは言え、全体的にはよかった。原作ではごつい梅子も、星さんなので上品。テレビでは加奈子は死なないで逮捕される。あのままだと彼女と賀川の犯行は明るみに出、家名を守るための梅子の自殺も無駄になってしまうだろう。 ▲△▽▼
死仮面(1986) 感想を書くため原作を読み返した。他の作品に比べると読む回数は少ない。内容や登場人物に深みがない印象受ける。解説によれば、一部が欠落していて、いろいろ捜したものの見つからず、いつも文庫の解説書いている中島河太郎という人が代わりに書いたのだそうな。読んでいても全然わからないのはさすが。岡山の美術品店で女性の腐乱死体が見つかる。顔は見分けがつかないが、そばにデスマスクがあって。店を借りた野口という男性は姿を消している。身元を特定するため、復顔術の権威がいる東京へやって来た等々力達。ついでに金田一にも事件のあらましを説明する。そんな金田一の事務所へ美しい女性が訪ねてくる。川島学園の理事長夏代(加茂さくらさん)の妹で、秘書をやってる里枝(萬田久子さん)である。夏代あてにデスマスクが送られてきたのだが、どうもそれが末の妹君子のもののようで。心臓の弱い夏代は発作を起こす。復顔の結果、例の死体は男を刺して逃げ、手配中のダンサー、葉山京子とわかる。君子が京子らしいが、学園では君子らしい女性が目撃されている。片足が不自由で黒メガネの不審な男も目撃されるが、野口が京子・・君子に同情し、夏代達にいやがらせをしているのか。それはともかく金田一は幽霊など信じない。岡山で死んだのが君子なら、幽霊のふりをしている誰かがいるはずで。原作では金田一の事務所が描写される。三角形で狭くて、書類や新聞の切り抜きで足の踏み場もないほど散らかっている。金田一本人も、訪れた人が必ず後悔するほど貧相で薄汚れている。でもテレビはそこまでいかない。窓があって明るい。展開はほぼ原作通りだが、そのうち逸脱してくる。里枝が萬田さんなので、悪女にするわけにはいかない。同情票が集まるようになっている。その分夏代が憎々しげに描かれることに。三姉妹の母親静子役は初井言榮さん、圭介が速水亮氏、夏代の隠し子澄子が小林聡美さん、山口刑事が江藤博利氏。ラスト、里枝が全く罪に問われないのも、問われる気がない(←?)のも不思議だ。君子に化けて夏代に発作を起こさせ、死に追いやったのアンタですぜ。
▲△▽▼ 死神の矢(1989) 原作は片瀬・・ということは神奈川だろうが、こちらは琵琶湖から始まり、古舘の屋敷は京都といった具合。金田一と等々力がのんびり釣りをしていると、矢が飛んでくる。人がいるのに矢を射るなどありえないが、ありえないことは他にもたくさん。高見沢、神戸、伊沢の三人が、考古学者古舘の娘早苗と結婚するため、弓の腕前を競うわけだが、こちらはほんのお遊び。加納が省略され、そのせいで早苗の存在は限りなく薄い。ひょんなことから古舘の屋敷に泊まることになった金田一の、「竜宮城へ来たみたい」というセリフがいい。確かにりっぱな洋館だ。まず伊沢が矢で殺され、彼を脅していた元ボクサー、駒田が疑われる。等々力は彼が犯人と決めつけ、金田一が何か言っても無視。そのうち神戸が同じく矢で殺され、駒田は自殺。あらら・・原作では死なない彼が死んじゃったぞ。金田一は文代という女性の自殺が今回の事件に関係しているのではと思っている。古舘は彼女と結婚するつもりでいたらしい。自殺の原因となった三人を早苗の婿選びというエサで呼び集め、復讐したのでは?もちろん最初に登場した時から家政婦立子があまりにも怪しいので、文代が彼女の娘なのは予想がつく。ただ仲が良かったなんていうのは、テレビでは許されないのだ。どうしても血が繋がっていなければならないのだ。途中金田一は若狭へ。海辺の寒村、荒れる海、強い風・・お決まりの三点セット。今回は誰の依頼も受けていないから、自費で行ったのか。古舘役は山口崇氏。「天下御免」とか「新書太閤記」とかよく見ていたけど、なぜか水谷良重さん(当時)と共演した東芝日曜劇場か何かの作品が印象に残っている。高見沢役嵯峨周平氏は「殺人鬼」で見たばかり。早苗役は長山洋子さんだが、とてもバレリーナには見えん。鶴子役が汀夏子さん、立子役が松尾嘉代さんで、この二人が犯人なのだが、金田一が「善良で思いやりのある人」と二度も言うので、引っくり返りそうになった。立子はともかく、何の関係もない駒田を崖から突き落として犯人に仕立て上げようとした鶴子は善良とは言えないでしょ。と言うか、高見沢殺しは誰の仕業にするつもりだったの?バレエの最中いきなり現われた何とかマンみたいなのにはびっくりした。それが山本刑事・・草薙幸二郎氏だったのにはもっとびっくりした。こういうありえない・・は許す!!
▲△▽▼ 女王蜂(1994) 最初沢田亜矢子さんが出てきて、彼女が智子役?って一瞬思ったのよ。ちょっと年齢的にアレだけど、智子はほら、絶世の美女ってことになってるから、それなりにきれいな人でないと。映画版の中井貴恵さんも、テレビシリーズ版の片平なぎささんも、絶世にはほど遠い(すみません)。そしたら沢田さんは神尾秀子役で。それはいいんだけど、智子役の人は・・。腫れぼったい顔でふくれっつらで・・墨田ユキさん・・知らんなあ。何かイメージ違うんですけど。真っ赤な口紅が毒々しくて・・。智子の母、琴絵としてフィルムにうつっている時は古風な美貌の持ち主に見えてよかったけど。金田一が呼ばれたのは脅迫状のせいか。いえ実はこれ、ちょうど東京へ出かけようかという時に放映されていて。電車の時間が迫っていたせいで、ラストの10分くらいは見ることができなかったんですの。でもほら原作は読んで何がどうなるのかは知ってるし。秀子が欣造(原田芳雄氏)の罪をかぶって・・あら?何だか妙なことになってるぞ。女王蜂じゃなくて女郎蜘蛛になってるぞ。智子の見合い相手三人は次々に殺されるけど、三人とも秀子と関係があった(ええ〜ッ!?)。秀子は欣造とも関係があった(ギョギョッ!)。何と昔は秀子と欣造と琴絵の三人が・・(ウゲゲ)。びみょーに秀子は仲間はずれにされとりますが。秀子は見合いの相手三人を殺したのは誰か突き止めるために、下男の印南に色じかけで迫り(オヨヨ)。で、欣造は10年前智子をレイプしていたと(〇☓△・・)。秀子は私の人生を捧げたのだから欣造と結婚するのだと。大道寺の財産は私のものよと。自信たっぷりだし隠してないしケタケタ笑うし、そのうち欣造に殺されるし。それに輪をかけてトンマなのが金田一で、あなたが犯人と欣造に迫るけど、証拠はあるのかと逆に居直られてしまう。それから若狭へ出かけていって、旅の一座に裏を取る。順番が逆だろッ!どう見たって若狭まで行くの面倒だから、欣造にゆさぶりかけて、それでゲロしたらラッキーって感じ?そんなことしてるから欣造は殺され、智子は自殺し(この部分は見てないんだけど、ネットの情報によるとね)。いや〜原作から宇宙の果てまでワープしたような内容。奥様お昼の愛の劇場(激情でもいいけど)。着物のスソが割れて白い脛が見えると男どもはメロメロ。どこからともなく流れてくる「ベニスに死す」と同じマーラーのアダージョ。沢田さんのりんとしたたたずまいに期待したんだけどねえ。 ▲△▽▼
女怪(1996)
これは「女怪」と「霧の中の女」が元らしいが、後者は読んだことないと思う。長谷川という男が殺され、なじみのホステス、ユキが逮捕される。血のついたコートなど証拠は揃っているが、彼女は無実を主張。金田一(片岡鶴太郎氏)は、足しげく通っているクラブのママ、虹子に心引かれているが、次の一歩が踏み出せない。虹子がそれとなく心のうちを明かしても、温泉旅館で夜中に身を投げ出しても、何もしない。岡山にある虹子の亡夫持田の墓が暴かれ、死体から首が持ち去られる。跡部という修験者が目撃されており、怪しい。持田の死因は脳溢血とされているが、実は殺されたのだ。長谷川の次には男娼のテツちゃん、続いて跡部も死ぬ。無反応の金田一に見切りをつけた虹子は、賀川という男性と知り合い、やっと心から愛せる相手にめぐり合えたと喜ぶが、実は賀川と跡部は同一人物。ここらへんは原作のように、賀川がぱったり姿を見せなくなって虹子が混乱するというふうにした方がよかったと思うが。虹子役は古手川祐子さんで、きれいなのはいいが、例によって彼女は悪くないんですの大合唱にはいささかうんざり。持田はサディストで、さんざん私を苦しめたひどい夫だったんです。しょうがないから殺したんです。死亡診断書に脳溢血と書いてくれた長谷川は、私を脅迫し始めたんです。おまけにユキとも関係を持ち、ユキは私の店を乗っ取るつもりだったんです。長谷川を殺して逃げ出す時、ばったり出会ったのがテツちゃんだったんです。私は男装していたけど、見破られたかも。跡部は持田の首を盗み、死因を知り、私を脅迫したんです。そればかりか跡部は賀川だったんです。あいつは片方で私を幸せにし、片方で私を苦しめたサディストだったんです。ついでに言うと金田一さんが何もしなかった・・私に手を出さないからこういうことになったんです。私の本命は金田一さんだったんです。・・ちなみに私こういうのを「だったん人の踊り」と呼んでおります。硯川とかいう作家役でフランキー堺氏が出ているが、病気のせいかやせて痛々しい。等々力警部役は石黒賢氏だが、金田一とコンビを組むわけでもなく、終わり頃になると出てこない。食堂で金田一が等々力に食事をたかるシーンはおかしい。それとなくねだって、いつの間にかおごらされている・・みたいな。あと、子猫がかわいかった。 ▲△▽▼ 真珠郎(1983) 終戦から少したって、金田一は乙骨と信州へ出かける。乙骨は私立大学の講師で、一ヶ月ほど前に知り合ったばかり。実は金田一はまわりに信用される、事件の目撃者として選ばれたのだが、そんなことは知るよしもない。行き先は鵜藤の家。以前乙骨は鵜藤の姪、由美の家庭教師をしていたらしい。鵜藤は知られた学者だったが、悪行のせいで世間から攻撃され、すっかり人間嫌いに。しかも二年前に脳溢血を起こし、今では半身不随。原作では「おつこつ」だが、ここでは「おとぼね」。「おとぼけ」みたいで違和感感じる。また、原作では金田一は出て来ず、由利麟太郎。もちろんそれだと話にならないので、語り手椎名耕介と由利の役どころを金田一が受け持つ。今回はわりと原作に忠実で、突拍子もない変更はされていない。ただ、金田一役小野寺昭氏にさっぱり魅力がないのが見ていて残念。あの髪型は不自然だし、かきむしり方もよくない。顔がアップになる度に、アブラ取り紙が欲しい!と思ってしまう。原作では後半舞台は東京へ移るが、こちらは信州から動かない。見どころは何と言っても由美役真野響子さんの美しさ。原作だとワンピーススタイルだったりするけど、こちらでは浴衣。白い肌に黒い髪がすがすがしい。悲鳴をあげるシーンが何度も出てくるが、この悲鳴も上手(←?)。真珠郎の方はあまり印象に残らない。テレビシリーズとどうしても比べてしまうせいか。乙骨の動機は戦争での体験が影響しているようだが、原作通り鵜藤の財産狙いでもよかったのでは?ところで鵜藤は蔵の二階へどうやって上がったのかな。また、鵜藤、由美、真珠郎は蔵の二階からどうやって外へ出たのかな。乙骨は夏木勲氏、岡田英次氏はテレビシリーズでも鵜藤やってた。駐在の木村は渡辺篤史氏。他の連中は揃って血みどろ、欲望まみれだが、この木村だけは正常な世界にいる感じ。そこが何だか印象に残った。鵜藤の首や逃げ水の淵に投げ込む時の由美の体が張りぼて見え見えなのが残念だった。
▲△▽▼ 人面瘡(2003) これは1時間ですむような内容なので、引き延ばすためあれこれくっつけてある。外務省の事務次官斎藤(内田勝正氏)は隠し金が3億といううわさがある。急死した彼のお守り袋を手がかりに薬師の湯旅館へやってきたのが斎藤の運転手田代と、芸者の麻美(三原じゅん子さん)。一年前近くで入水自殺を図ったところを旅館のおかみお柳(淡路恵子さん)、使用人万造に助けられたのが松代(斉藤由貴さん)。今では仲居として働き、お柳は彼女を息子貞二(倉田てつを氏)の嫁に・・と願っている。松代は妹の由紀子が突然現われ、驚愕する。金田一は足にヒビが入ったとかで湯治中。まず田代が殺され、続いて由紀子、麻美が殺される。お柳をひんぱんにうつすので、原作読んでない人でも彼女が怪しいとわかるはず。松代には人に言えない秘密がある。右肩にできた不気味な人面瘡に悩まされる。火事の記憶も彼女を苦しめる。彼女は老舗の和菓子店の長女で、譲治という婚約者がいたが、由紀子に取られてしまう。由紀子は昔から姉のものを奪ってばかり。松代は気がついたら血まみれの包丁を手にしていた。譲治を殺したのは自分では?由紀子も殺そうとしたのでは?殺してなくても火事の中、見殺しにした罪は消えない。現われた由紀子は早速貞二を横取り。由紀子が死ぬと今度は麻美がつきまとう。彼女の場合は3億円目当て。田代を殺したのは彼女らしい。でも薬師神社には何もなかった。お守りをよく見ると薬師乃湯神社だ。今は旅館の一部として台所に神棚が祀ってある。金はその下に埋められているに違いない。貞二と結婚して、おかみにおさまり、神棚の下を掘るのだ・・遠大な計画だなあ・・。3億円や貞二の出生の秘密などは原作にはなし。死体の数も増量サービス。松代は夢遊病の代わりに二重人格みたいになってる。お柳は原作と違い病気で死なず、万造と共に逮捕される。犯行の動機は旅館を潰したくないため。由紀子や麻美じゃだめ、貞二と結婚するのは松代でなくちゃ。エゴイストすぎるという批判ももっともだ。人面瘡は見せれば見せるほどばかばかしいが、作り手はそう思わないらしい。動かしたり声を出したり余計なことやっております。出演者では仲居のウメ役あき竹城さんがよかった。 ▲△▽▼ 水神村伝説殺人事件(2002) これは「車井戸はなぜ軋る」が元になってる。原作と違い、戦争は関係ないようで。冒頭、水神ダムの建設に反対している秋月善太郎(西沢利明氏)が鎧武者に斬り殺される。その10年後、岡山県知事に当選した横尾(大和田伸也氏)は、ダムの建設を中止する意向を示す。土木会社の本位田大三郎の自殺は、そのせいと思われた。金田一が水神村へ来たのは、大三郎の娘鶴代(坂口良子さん)に、自殺ではないと証明してくれと依頼されたから。本位田家と秋月家は仲が悪い。秋月家は酒造りを生業としていたが、ダムのせいでだめになってしまった。善太郎を殺したのも本位田家の仕業と恨んでいる。善太郎の死体は見つかっていないが、地蔵が彼の血で染まっていた。秋月凛子(田中美奈子さん)は横尾の秘書だが、全然仕事してない。と言うか横尾も冒頭だけであとは出てこない。そのうちアメリカで事故死したはずの大助が本位田家に戻ってくる。顔が焼けただれ、声も変わっている。一方秋月家の者は、大助ではなく伍一だと思っている。伍一と大助は顔がそっくりで見分けがつかない。伍一もアメリカへ行って10年になる。設定には無理やり感が漂う。梨枝は大助の婚約者だったが、今は弟の慎吉と婚約している。祖母の槇子は慎吉や梨枝の気持ちも無視して、大助と結婚させると言い出す。梨枝の家は本位田家に大恩があり、抗議もできない。頼みの慎吉は、元々は兄さんと結婚するはずだったんだしとか、家業も兄さんに・・と、まあおまえそれでも男かよと呆れるくらいじれったい。祝言の夜は家から車で2時間もかかるほど離れた山の現場で仕事している。誰がどう見たって”逃げた”としか思えない。梨枝があきらめているのが気の毒で。その梨枝が殺され、別の場所で大助も死体で見つかる。神社に奉納された手形から、大助は本人だったとわかる。となると大助の手形を取りに行った女中のお杉の死は何だったのか。大助本人なら手形を奪う必要ないはずで。でもこのことはスルーされる。他の出演は谷啓氏、尾見としのり氏、泉晶子さんなど。金田一は金詰まりらしく、腹をすかせている。トイレが近いのは年のせいか。
▲△▽▼ トランプ台上の首(2000) 昭和30年代・・東京隅田川。夕方になると惣菜を満載したモーターボートがやってくる。コロッケ、豚カツ、ハンバーグ、オムレツ、野菜サラダ・・これらを買ってくれるのは、新しくできたアパート、聚楽荘の若奥様方だ。四階建てで一階あたり15世帯・・しめて60世帯あるから、いい稼ぎになる。以前は・・アパートができるまでは、水上生活者が主なお客だった。ひじきに油揚げの煮つけ、こんにゃくに里薯の煮ころがし、うずら豆の甘辛煮・・アパートでひと商売した後は、それらを待っていてくれる古くからのお客の方へ回る。宇野はアパートの一階に住むストリッパーのアケミが顔を見せないのをいぶかしく思う。惣菜や服装のことでいろいろ宇野にアドバイスしてくれたのが彼女。彼女の部屋の窓のあたりを見た彼は、血が垂れているのを見て不安になる。管理人のおばさんと一緒に調べてみると・・。トランプが散乱したカードテーブルの上にアケミの生首が!・・原作はこんな感じで始まる。普通なら見つかるのは首なし死体。それなのに、アケミの場合は胴体が見つからないのだ。なぜだろう。読む者をぐいぐい引き込む手際のいい流れ。でもテレビの方は題名こそ「トランプ台上の首」だが、なかみは「黒猫亭事件」。しかも原作には出てこないマジックが題材に。「トランプ」の模様がついた「台」の「上」で、人体切断のマジックが行なわれる。金田一は「首」と胴体が別々の人間というトリックを見て、一人二役、あるいは二人一役のからくりに気づく。と言うか、気づいてないのは金田一だけ、見ている我々はとっくにわかってる。金田一が親しくなったマジシャンのマヤと、黒猫亭のマダム繁子は同一人物だった。二人の女が糸島という男をめぐって三角関係と思われたが、実際は・・。黒猫亭が注目されたのは、隣接する蓮正寺の僧、日兆が見つけた頭蓋骨のせい。これが繁子のものだと思われ、姿を消した糸島が疑われた。しかし糸島も死体で見つかる。見ていて思う。いったい話はどこへ行き着くのか。ふらふらだらだら、ゆるい展開。首なし死体のようにさ迷い歩く。なぜコロッケやひじき、ストリッパー、音符模様のガウン、カードテーブル、おなかに張りついた大きなクモ・・にしなかったのか。
トランプ台上の首2
黒猫亭で賄いをしていたお君の話によると、繁子は松田花子という逃亡犯らしい。花子は17歳の時養父・・叔父を殺して出奔。17歳、養父と来ればあとは予想がつく。奇術師だった父の死後、花子は怠け者の養父に稼ぎをしぼり取られる日々。それだけではなく凌辱も。そういう、くみ取るべき事情は警察も知っていたのだから、自首していれば今頃は償いもすんでいただろうに、なまじ逃げたせいでいつまでたっても過去から逃れられない。次から次へとゆすられ、脅され、殺人を重ねるはめに。マジックだけが生きがいとか、くれなゐ座で風間に出会って真実の愛を知ったとか、見ている者の目をそらそうとあの手この手。「養父を殺した後、潔く自首するべきでした」などとは口が裂けても言わない。もちろんそれだと映画にならないんだけどさ。いつもなら9死タイム・・「私のせいじゃナインデス」があって、ヒロインは美しく死ぬけど、今回は金田一がこの先の人生みたいなことを言うので、あれれ?と思った。17歳の頃ならともかく、今は何人も殺している。よくて無期懲役だろ?と私なんかは思うんですけど。金田一の口ぶりだと数年で出てこれそうじゃないの。つかまる前にもう一度・・と、風間と二人で舞台でマジックをする。お客は金田一だけ。音楽もなし。どうせ途中で花子は血を吐いて美しく死ぬに決まってる。スローモーションで美しく倒れ、美しく花が散らばる。「あッ、しまった」と金田一がわざとらしく叫び、河合達が駆けつける。でも・・死ななかったな、珍しく。青いライトの中で無言で続くマジック。ゆっくり近づいていく河合達。このラストシーンはなかなかよかった。花子役は古手川祐子さん、風間役は三浦浩一氏。糸島役は石山葎雄氏。昔は石山律、あるいは律雄、現在は石山輝夫らしい。昔時代劇等でよく見かけた。やさしそうな顔と声でわりと好きだった。悪役で見たのは初めて。日兆役出光秀一郎氏は夏樹静子さんの息子らしい。他に高畑淳子さん。それにしてもどうして千代子の首を切断したのかな。胴体がないから指紋の照合はできないけど、歯の治療記録で花子じゃないとばれちゃったし、生首にする意味がない。
▲△▽▼ 呪われた湖(1996) こちらは犯人を変更してある。死体数も増やしてある。昭和30年、金田一はなぜか鳥取砂丘にいる。そこで見かけた美しい女性と、なぜか岡山県の鬼頭(おにがみ)村で再会する。村では昔干ばつがあって、その時の水争いのせいで、いまだに北神家と西神家がいがみ合っている。北神の当主龍蔵(室田日出夫氏)は県会議長も務めた有力者だが、今は病がち。毎日通って世話をしているのが保健婦の秋子(多岐川裕美さん)で、金田一は思いがけぬ再会にびっくり。龍蔵の息子浩一郎は、短大出の才媛由紀子と婚約しているが、その由紀子が失踪。龍蔵が呼びつけたのが河合で、金田一はその後を追ってきたと。由紀子を水車小屋へ呼び出す浩一郎の手紙を見つけたのが母親の八重(鰐淵晴子さん)。しかし浩一郎には覚えがない。後で、西神の当主で村長の順三の息子、康雄が書いたものとわかる。由紀子の死体が見つかったのは九十郎の小屋。原作では由紀子は義眼だが、こちらは熱病のため髪がなく、カツラをかぶっていたという設定にしてある。原作での秋子は村長恭平の後妻で、浩一郎をたぶらかし、由紀子との婚約を妬んで康雄にニセ手紙を書くようそそのかす。由紀子に惚れている康雄に傷物にさせてやれという魂胆。大変な悪女なのだが、金田一が村へ来た時にはすでに失踪。後で死体で見つかる。つまり原作では生きている秋子は出てこないのだ。恭平はこちらでは村長ではなく、龍蔵の弟に変更してある。原作では九十郎が犯人だが、こちらは秋子。例によって彼女には悲惨な過去がどっさりくっつけられる。幼い頃両親は相次いで首吊り自殺。姉のかをりは鳥取へ養女に出され、秋子は浩一郎の子守として働く。両親の自殺は例の水争いのせい。水番だった父親は龍蔵のごり押しでうんたらかんたら。龍蔵に引き取られてからはいいようにこき使われる。戦争中は従軍看護婦としてルソン島へ。戦後は姉と二人、ストリッパーとして旅から旅へ。一緒に暮らせるのはうれしく、村へ戻る必要はないのだが、それでも戻ってきたのは・・。いつもの通り金田一は途中で鳥取へ。今回は浩一郎が疑われたため龍蔵が彼を雇ったから、お金の心配はなし? 呪われた湖2 そこでわかったのは、かをりが一週間前に亡くなったこと。鳥取砂丘で会った時、秋子は姉の遺灰と形見のレコード一枚を持っていて。金田一が河合達に秋子が犯人と話しても、その時点ではやや説得力に欠けるが、自首を勧める金田一に秋子が思いを話すうちに説得力が出てくる。いつもならお涙ちょうだい物語にうんざりする私だが、今回は感心しながら見ていた。秋子の中で何かが変わったのは、偶然恭平に出会い、思いがけない話を聞いた時。徴用されたのは龍蔵の娘なのに、龍蔵と恭平で手を回し、秋子に書き換えたというのだ。秋子が戦争を生き延び、行かずにすんだ娘が空襲で死んだのは皮肉な話・・と、恭平にすればただの笑い話だが、秋子にとっては・・。両親の死は元はと言えば龍蔵のせいだし、姉と別れ別れになったのもそのせい。人間として扱われず、物扱い。それでもすぐには行動起こさずにいたが、姉の死で一気に復讐モードに突入と。ここらへんは説得力がある。ただ、由紀子を殺すのは・・。赤ん坊の頃から世話をしている浩一郎といつしか愛し合うようになり、由紀子に嫉妬したのはわかるが、それだけでは弱い。なぜストレートに龍蔵に向かわないのか。恭平を殺したのは龍蔵に協力していたから、九十郎を殺したのは由紀子殺しを気づかれ、金をゆすられたため。秋子は浩一郎に、「オレとのことはみんなウソやったんか、オレはアンタのオモチャやったんか」となじられるが、これもおかしい。浩一郎の方こそ秋子がいるのに何で由紀子と婚約するのかいな。龍蔵に反抗した様子もないし・・。龍蔵は心臓発作でも起こして秋子の復讐完了となるかなと思っていたが、死ななかったな。いつもなら秋子も金田一が河合に待ってもらっている間に美しく自殺するところだが、今回は死ななかった。うん、だっていつも自首の勧めと言うより自殺の勧めにしか思えないんだもの。由紀子の死体を湖に沈めた浩一郎が何のおとがめもなしなのはちょっと不自然。まあ今回は多岐川さんの信じられないくらいの若さ、美しさに驚嘆して、たいていのことはどうでもよく思えるんですけどね。1951年生まれで1996年の作品だから当時45歳くらい?・・ひぇ〜信じられない!
▲△▽▼ 白蝋の死美人(2004) これは「蠟美人」と「雌蛭」がベースになってるらしい。銀幕の妖花マリ(杉本彩さん)は作家の信造と結婚するが、名門伊沢家の家風に合わない。そのうち信造が殺され、マリが疑われるが出奔。その後男女の黒焦げ死体が発見され、法医学の権威畔柳(清水絋治氏)が彫刻家の瓜生と共に女の方を復顔すると、何とマリの顔で。畔柳は過去信造の母加寿子(岡田茉莉子さん)と何かあったようで。その彼も殺され・・。大筋は「蠟美人」の方からいただいている。金田一が忘れ物を取りに行って欲しいという妙な依頼を受け、男女の死体を発見する部分は「雌蛭」。それにあれこれ・・凄まじい嫁いびり、不義密通・・マリが実は加寿子と畔柳の間にできた子供だった、徹郎(信造の弟)が亀井の妻福美と不倫していた、信造がお手伝いの小百合をはらませていた・・、事件の起きる三年前金田一は偶然マリと出会っていたなどなど。まあこれでもかというくらいドロドロです。こういうのの常として加寿子やマリには運命にもてあそばれた、自分ではどうしてみようもない、ささやかな幸せさえ許されない、みんな私のせい、私は罪深い女・・そういったものもくっつけられます。要するに同情要求モード。金田一がいるのは鎌倉か。仕事がないらしく、旅館でうだうだ。せっせと隣りの洋館・・伊沢家・・を覗き見。見ていてちょっとかんべんして欲しいなあ〜と思ったのが岡田さん。目とか首とか、もう年齢がモロに出てるのに、上からすっぽりかぶせたようなヘアスタイルがちぐはぐで。最後は全部自分のせいと自殺するけど、海辺のシーンで流れるのがどこかで聞いたようなメロディー。「ベニスに死す」のマーラーの曲か。もう死ぬって見え見えで。伊沢家に残されたのは長女の早苗一人。母や兄の相次ぐ死、婚約破棄のせいで発狂か?腹ボテの小百合はこれからどうするのか。マリは瓜生の出所を待つと言う。死刑にはならずにすむのか。徹郎(岸本祐二氏)と福美を殺したのは亀井だし、信造と畔柳は向こうからナイフで襲ってきたんだし。ところでこの瓜生と徹郎がそっくりで。あたしゃてっきり二役だと。瓜生が加寿子の不義の子だと。そしたらマリの方でした。だからマリと信造は兄妹なのに結婚しちゃったわけ。まあ橋本さとし氏の瓜生は大人しくてやさしくてまともでよかったです。
▲△▽▼ 病院坂の首縊りの家(1992) 昭和28年、法眼一族の持ち家・・戦後は廃屋になっている・・での奇妙な結婚式。その後見つかった生首。ストーリーは映画と似ている。原作だと20年ほど間があく。殺された由香利の身代わりとして法眼家に入った小雪は、弥生のもとで研鑽を積み、見事経営手腕を発揮するのだが、映画もテレビも昭和20年代だけですませる。そのせいで、原作にはない弥生の母を出してくる。映画では冬子が弥生の娘、こちらでは敏男が弥生の息子になっている。遺伝子組み換え操作(←?)があっちゃでもこっちゃでもされているので、何が何やらわからなくなる。でもそんなことは実はどうでもいいのだ。これでもかというくらい悲劇見せて、見る者の涙を誘おうという魂胆(成功してないけど)。何だか聞き覚えのある荘重な音楽が流れてきて・・「八つ墓村」もそうだったけど・・。「ベニスに死す」で使われたマーラーの曲だ。20年ほど前の作品だから、古谷氏も、弥生役山本陽子さんもまだ若い。等々力警部役故ハナ肇氏、本條役梅津栄氏も元気そう。由香利と小雪役は川上麻衣子さん。映画での桜田淳子さんが印象に残っているせいか、川上さんはちょっと物足りない。敏男役宇梶剛士氏は原作のイメージに近くていい。全体的に原作のドロドロ感やギリギリ感、どぎつさやなまなましさ・・そういうのが希薄。ちょこっと頭打って死ぬし、すぐ自殺するし。後半になると、だんだん道がそれてくる。法眼病院の現院長の滋(河原崎建三氏)が出てくるので、原作通り彼が犯人か・・ここで映画と差をつけるのかと期待したら・・何やらぐずぐずで終わってしまった。あの状況で、弥生が夫である滋を助けないのはおかしいな。自分が真犯人なんだし、彼は妻をかばおうとしてるんだし。原作では滋は由香利(小雪)の夫。弥生の亡夫琢也が冬子(あいはら友子さん)を囲い、生まれたのが小雪。で、テレビでは琢也は由香利が弥生と継父五十嵐との間の子と疑って、由香利に冷たく接したとか何とか。でも、その由香利と小雪はうりふたつで。もし由香利が五十嵐の子なら、小雪にそっくりなわけないはずで。いや、ここらへん家系図でも書かないと・・文章読んでも何が何やらでしょうな。全体的にふにゃっとした感じで、出来はよくないけど、法眼家の豪華な内装・・廊下も全部畳とか・・はよかった。画面はきれいでくっきり。廃屋がミニチュアっぽいのと、生首がモロ張りぼてなのはバツ。 ▲△▽▼ 不死蝶(1988)
昭和23年頃・・金田一は矢部杢衛(内田朝雄氏)からの依頼で信州の射水へ。今射水には町に多大な寄付をしたブラジルのコーヒー王の養女マリ(有森也実さん)が、母親君江、家庭教師河野、カンポ(ウガンダ・トラ氏)と共に玉造家に滞在中。杢衛は、23年前次男英二を殺し、底なし井戸に身を投げて自殺したと思われている玉造の朋子が、君江に違いないと思い込んでいる。射水署の神崎警部(矢崎滋氏)をせっついても相手にしてくれないので、金田一を呼び寄せたというわけ。朋子は杢衛の長男慎一郎(清川新吾氏)と恋仲だったが、彼には親が決めたいいなずけ、峯子(宮下順子さん)がいた。慎一郎の娘都は玉造の康雄と恋仲だ。康雄、由紀子兄妹の両親はすでに亡くなり、原作では祖母の乙奈は杢衛と恋仲だったが、家のために結婚できず・・。つまり三代続いてロミオとジュリエット状態なわけ。ストーリーはさほど原作から逸脱せず、普通だが、全体的にはもたついた感じ。鍾乳洞の中とか、全然そんな感じがせず、張りぼて感が漂う。神崎の部分でコメディー色を出すが、浮いた感じ。ちょっとびっくりするのは、ウガンダ氏が身軽なアクション見せること。ブラジルだからカポエイラ、他に金田一とマリがパーティでタンゴを踊る。踊っているうちにマリは金田一こそ私の運命の人・・と思い込み、ラストでは何と一緒にブラジルへ行って欲しいと言い出す。一度思い込むと猛進するのは杢衛譲りか。もちろん金田一にはその気ゼロで、大きな瞳に涙を浮かべる有森さんがきれいだ。冒頭汽車の中で金田一が話を聞く土地の男性は、藤木悠氏なので、絶対また後で出てくるだろうと思ったのだが・・。峯子の兄宮田役は神山繁氏、古林役が勝部演之氏、清川氏はいつもなら悪役だが、今回はいい人役。昔は二枚目役やってたんだよな、確か。それにしても・・テレビシリーズの方もそうだったけど、パーティのシーンって盛り上がらないんだよな。昭和23年の田舎町じゃ洗練もへったくれもないけど。あと、パーティに出ていた何人かは素人って丸わかりだし、康雄の演技もひどかったな。お尻がムズムズしちゃう。 ▲△▽▼ 本陣殺人事件(1983)
「名探偵・金田一耕助シリーズ」一作目だが、出来はトホホ。もっとも、出てくる人が皆若く、それだけでも貴重。特に金田一は若い。髪の毛もそんなにもじゃもじゃじゃないし、まっすぐっぽい。性格も控えめで、逆立ちもしない。原作では事件が起きてから久保に呼び寄せられるが、こちらでは結婚式から出ている。花嫁克子には叔父の久保しか出席者がいないから、せめてもう一人くらいは・・というのはわかる。事件ではいろいろな音が手がかりになるが、こちらでは悲鳴と琴の音くらい。中国街道の本陣、一柳家の跡取り、賢蔵が克子と共に殺され、しかも現場の離れは内側から戸締りがしてある。つまり密室殺人。日和警部はあたりをうろついていた三本指の男を犯人だと思い込むが・・。賢蔵の弟三郎の態度が怪しいので、原作を知らなくても・・。まあ彼は殺人はしてなくて、協力者なんだけどね。見ていてがっくりくるのは、彼らの母親糸子の扱い。演じているのが高峰三枝子さんだから、普通の未亡人てわけにいかないのよ。子供五人のうち二人は省略。賢蔵がなかなか結婚しなかったのも、今回のような計画立てたのも、三郎が協力したのも、母親の奔放な性格を憎んでのこと。彼女は義弟の伊兵衛と不倫を重ねていたが、夫に見つかった時は別の男と一緒だったようで、オヨヨ。賢蔵は克子にあやまちを告白されると、母だけでなく彼女にも裏切られた・・とプッツン。と言って表には出せない性格なので、克子を殺して自分も自殺・・という方向へ。原作と違うのは三郎のマザコンぶり。愛してるが故に憎しみもつのると・・。で、こんな家族だから呪われた血ということになる。可憐な鈴子も暗い運命からは逃れられず、脳腫瘍で長くはない。全体的にテレビシリーズとそっくり同じ流れで、これじゃ何のために作ったのかわからないなという感じ。トリックは別として、一作目ならもっと目新しい部分押し出すんじゃないの?よろめき母さんとマザコン息子じゃ芸がない。賢蔵が西岡徳馬氏、三郎が本田博太郎氏、克子役山本みどりさんがきれいだ。克子の親友白木が大塚良重さん、久保が下条正巳氏、日和がハナ肇氏、鈴子が牛島千恵さん。
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本陣殺人事件(1992) 「本陣」は「犬神家」や「獄門島」よりは感想書きやすい。登場人物さほど多くないし、こみいった人間関係もなし。ところがまあこの作品、ドッロドロにしてあるんですよ。私、頭の中で「そんなバカニャ!」とか「「ニャンですって!?」とか猫語で叫んでおりました。よく猫の本買うので、ついついこういう言葉遣いになるんですニャ。今回久保は病気ということで出てこない。婚礼の間に金田一と克子が散歩するなど、克子の出番多くしてある。たいていの「本陣」の克子はほとんどセリフもなく、殺されるためだけに出てくる。克子は自分が一柳家の者に歓迎されてないことを知っている。しかし一柳家の一員となることによって、古くさい家風を変えていきたいと決心している。明るく積極的。長女の妙子(古手川祐子さん)は当主糸子(佐久間良子さん)から家を継ぐよう言われたが、そんなのまっぴらだ。ここで見ている者は思う。両者とも一柳家の因習的な考えを変えたい、あるいは嫌っているのだ。なぜ二人で力を合わせて立ち向かわないのだろう・・って。原作での妙子はもっと年がいってて、すでに嫁いでおり、上海にいて、事件には無関係。秋子も分家の嫁で、事件には無関係だが、こちらでは重要な役回り。驚いたことにクライマックスは金田一の謎解きではない。謎解きがなされる時点で、まだたくさん時間が残っているのを見て、いやな予感にかられる。古谷版「本陣」のように、糸子は伊兵衛によろめいたりしない。しかしやはり一柳家の呪われた歴史を強調する。ところが糸子のやったことと言えば・・。呪われた歴史にピリオドを打つどころか、さらに血でドッロドロにしていくのだ。もちろん彼女はそれもこれもあれもみんな一柳家のためと弁解するのだ。しかも延々と。長すぎるニャ。いいかげんにして欲しいニャ。賢蔵や三郎がどういう性格であれ、一人の生きた人間であって、道具ではない。一柳家の存続に必要かどうかで生死を決定されていいわけがない。そう、彼らは生まれる時点ですでに操られているのである。子供を産めない糸子に代わって、跡継ぎを産まされたのは秋子。その秋子まで糸子と一緒になって・・もう信じられニャ〜い!!糸子は離れに火を放ち、美しく自殺。それはいいけど、秋子はあの後どうなったのかニャ?秋子役は吉行和子さん、白木が牧瀬里穂さん、鈴子が小田茜さん、田谷が赤井英和氏。
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魔女の旋律(1991) 「空蝉処女」という短編が元らしい。横溝正史の作品は時代小説なんかは別としてほとんど持っているのだが・・これは持ってないな。昭和26年の倉敷、市会議員朝倉精一郎(河原崎次郎氏)邸が全焼。父親(穂積隆信氏)は司法解剖を拒否。精一郎は表向きは失火による焼死で片づけられる。岡山から倉敷へ移った等々力は、精一郎と結婚することになっていた水島珠生(伊藤かずえさん)による殺人放火と確信し、独自に捜査を続けている。京都で偶然ヴァイオリンを弾く女性を見かけた金田一は、12歳で病死した妹弥生のことを思い出す。記憶を失っているというその女性は、ハンカチの刺繍から珠生という名前だけはわかっていた。金田一は彼女の記憶を取り戻す手助けをすることになる。朝倉は珠生を息子の仇と恨んでいる。妾腹の次男精四郎(萩原流行氏)は珠生と関係を持ち、子供も生まれたらしい。それを精一郎に知られてしまい・・。その頃珠生の父親が死に、彼女は莫大な遺産を継ぐことに。精四郎は珠生と結婚し、朝倉の財産と水島の財産両方を手に入れようとする。金田一の直感では、珠生はとてもそんな悪女には見えないのだが・・。妹の記憶のせいで自分の目が曇っているのか。見ていても誰が誰だか、どういう関係なのかよくわからない。伊藤さんのヘアスタイルも変な感じ。結局珠生と思われた女性は、実は瑞穂という貧しい女性だったとわかる。血の繋がりはないが、瓜二つというくらいそっくりで、しかも二人ともヴァイオリンの名手だったという設定。珠生は生活に困窮していた瑞穂を助けるフリをして近づき、精一郎殺しの犯人に仕立て上げ、自分は瑞穂として生きていこうと企む。水島家の莫大な財産のことはどうするつもりだったのかな。瑞穂は貧乏なんですぜ。精四郎と組んでいたっていうのなら話はわかるが。ラストの心中は余計だ。赤ん坊の安否がわかったからいいってか?珠生・・実は瑞穂に心を寄せる啓一役は沖田浩之氏、長内美那子さんはどこに出ていたのだろう・・啓一の母親?他に石山律雄氏。珠生と瑞穂のヴァイオリンの先生の家はなかなかよかった。和洋折衷と言うか。そんなところしか印象に残らないほどストーリーは何じゃこりゃ。 ▲△▽▼ ミイラの花嫁(1983) 原作では鮎沢は大学教授だが、こちらでは京都の織物関係。心当たりのない結婚式の招待状を受け取り、京都へやってきた金田一。しかし花嫁京子(根本律子さん)の父鮎沢(田村高廣氏)には招待してないと、冷たくあしらわれてしまう。せっかく礼服に着替えたのにねえ。ところが式の最中、天井から血がしたたり落ち、天井裏へ上がってみると男の死体。顔や手足の指は硫酸で焼かれていたが、京子に求婚していた緒方(速水亮氏)が、様々ないやがらせや脅しのあげく自殺したのでは・・となる。この騒ぎのせいで式は延期。京子は琵琶湖湖畔の別荘へ。世話をしてくれるのは佐和子(茅島成美さん)だが、生け花の先生がここまでやるのは不自然。もちろん彼女は鮎沢と結婚したいのだが、鮎沢の頭の中は京子のことでいっぱい。原作読んでなくったって犯人は見え見え。出没するミイラ男が鮎沢と書生の栗田なのも。式の延期がおもしろくない鷲尾(三ツ木清隆氏)が京子に迫ると、ミイラ男が現われて首を絞め・・。あら?その後どうなったの?鷲尾は生きてるの?死んじゃったの?この後全く描写されないなんて・・ありえな〜い!京子は緒方の方が好きだったみたいだし、これじゃあ踏んだり蹴ったり絞められたり・・ですな。やっぱ殺されちゃったのかな。原作では金田一は出てこない。湖畔で由利麟太郎に声をかけられた鷲尾が、決心して相談に行くということになっている。こちらの後半部の繭の谷がどうとかいうのは原作にはなし。鮎沢が横恋慕して硫酸かけた女性を、結婚式の夜切り殺したら赤ん坊が生まれたという、何が何やらの設定。その赤ん坊が成長するにつれ母親そっくりになったので、またまたよこしまな恋情をいだくようになったという・・。繭の谷の洞窟には花嫁、出席者達のミイラ、緒方の死体があって。招待状を金田一に出したのは緒方なのだが、相談や依頼の手紙でないのは変だ。20年前の生き残りの老人(天本英世氏)が声を失っていることを考えれば。また、金欠の金田一がわざわざ汽車賃使って京都まで来るのもありえない。よかったのは棺から花嫁のミイラが起き上がるところ。鮎沢に近づき、くたりと倒れるところ。緒方の妹八重子の芝居とわかっていてもゾクゾクする。
▲△▽▼ 三つ首塔(1993) 昭和25年京都の丹波、金田一は黒川弁護士の代理で法師村の座光寺家へ。アメリカへ渡って成功した玄蔵が死に、遺言状を公開するために来たのだ。集まったのは玄蔵の長男で当主の雷蔵(鶴田忍氏)、雷蔵の長女音禰(安永亜衣さん)、次女由香里(武田京子さん)、玄蔵の長女蝶子(山口美也子さん)、蝶子の内縁の夫島村。しかしまだ二人いると聞いて彼らは不審がる。現われたのは宮本薫(大谷直子さん)と息子の俊作(高川裕也氏)。座光寺家は以前宮本家の小作をしていたが、今では逆転し、座光寺家の方が羽振りがいい。なぜ仲の悪い宮本家が呼ばれるのか。遺言状には遺産の大半・・6億5千万が俊作と音禰に行くことになっていた。条件は二人が結婚すること。俊作と由香里は慕い合っている仲なので、ショックを受ける。音禰に異存はない。後でわかるが、彼女は養女で、昔から由香里のものを欲しがり、奪うところがある。美人だが、冷たく打算的で、何を考えているかわからない不気味なところがある。ここらへんでわかるが、原作とは全くと言っていいほど違う流れで、犯人も違う。原作の誠也にあたる人物が出て来ず、大谷さんが出てきた時点で、展開の予想はつく。薫は音禰との結婚には反対する。由香里ともだめだ。しかしはっきりとした理由は言わない。座光寺家とは関わりたくないだけでは、俊作が納得するはずもない。見ている我々は、由香里か音禰が俊作と兄妹なのだろうと想像する。「悪魔の手毬唄」と同じだ。遺言状のところでは「犬神家の一族」みたいに、由香里が「あたしのこと何にも書いてない!」と叫び出すかと思ったし。公開の後の宴会で、薫が突然苦しみ出す。吸い物に仕込んであったトリカブトのせいだが、幸い致死量ではなく、大事に至らずにすむ。吸い物は元々は俊作が飲むはずだった。と言うことは遺産相続をめぐっての犯行か。しかし、何が書いてあるかわからない遺言状の公開から宴会までの間に毒を用意するなど、普通はできない。事前に内容を知っていた者の犯行のはず。金田一が黒川弁護士に問い合わせないのはおかしい。見ている我々は、薫が助かった時点でこりゃ怪しい・・と思う。毒殺を企む者が毒を少なめにしておくはずがない。一度被害者になっておいて、容疑からはずれようという魂胆なのは見え見え。
三つ首塔2 その後由香里が首なし死体で見つかる。続いて雷蔵も。由香里は俊作と駆け落ちしようとして、音禰に縛られて倉に閉じ込められる。スキを見て逃げ出し、俊作の元へ急ぐ。バスに飛び乗ってやれやれとなるが、バスは違う道へ。この流れを見ると、音禰は少なくとも直接には手をくだしていない。閉じ込めた由香里をどうするつもりだったのかは不明。バスがタイミングよく通りかかるのも不思議だ。いつどこで由香里が現われるか、犯人にはわからないのだから。雷蔵の時も、音禰は俊作と一緒なので、直接手をくだしていないのは明らか。通夜の席から俊作を連れ出し、誘惑しようとするなど音禰は異常だが、そのうち俊作も彼女と結婚する気になる。途中で音禰に変化が現われ、見ているこっちも、もしかしたら彼女、そんなにひどい性格でもないのかも・・と思い始める。途中金田一に、自分は養女であることや、雷蔵が三つ首塔のことを口走っていたと話す。と言うか、金田一に話す前に警察に言うのが筋だろ。蝶子によると、三つ首塔は玄蔵が雷蔵に命じて作らせた供養塔らしい。金田一が行ってみると、由香里と雷蔵の生首が据えられていて。塔内にはクモの巣一つなく、ホコリも枯葉もなし。生首からは異臭がしているはずだが、金田一は気づかない。ハエも飛んでいない。その後蝶子が殺され、やはり首が塔で見つかるが、警察は見張りとかしていなかったようで。島村も殺されるが、こちらは首ありで、座光寺家の人々とは明らかに扱いが違う。蝶子が殺される時、犯人は駐在の古坂(岡本信人氏)だとわかる。その前に金田一に映画の「無法松の一生」の話をするので、彼が映画と同じく人妻・・この場合薫・・に密かな恋心を抱いているのがわかる。自首した古坂はすべては自分の犯行と主張。一方薫は音禰の本心を問いただす。音禰は金と名誉だけが目的で、俊作のことは愛していないとうそぶく。一時好感度がアップした音禰だが、ここで一気にダウン。薫は音禰を刺し殺す。せっかく古坂が罪をかぶってくれたのに、これじゃだいなしだ。と言うか、音禰は座光寺家の者が殺され、残されたのが自分一人になったのに、全然用心していないじゃん。その後はこれでもかというくらい大量の不幸を薫にくっつける。山盛り大盛りてんこ盛り、お代わり自由、今から30分オペレーターも増員だ!(何のこっちゃ) 三つ首塔3 薫は目の前で玄蔵が父親を殺すのを目撃してしまう。しかも玄蔵はその場で彼女をレイプ。金も盗み、殺人と強盗の罪を武内に着せ、自分はアメリカへ高飛びする。武内は刑務所で自殺、その息子が古坂。てことは薫は武内が無実の罪で刑務所へ入れられるのを黙って見てたのかいな。その後玄蔵は罪を悔いて供養塔を作らせ、遺産相続でも薫に有利なように計らう。ここでも武内のことは無視かよ。座光寺家との関わりを薫がいやがる理由がこれで明らかになる。遺産なんかもらっても恨みが晴れることはない。それ以上に問題なのは、音禰との結婚という条件。ひどい経験をした彼女を癒してくれたのが宮本。俊作も生まれ、一時は幸せだったが・・。実は音禰は玄蔵の子、俊作にとっては異父姉。二人を結婚させるわけにはいかない。島村が殺されたのは、レイプの現場を目撃していて、それをネタにゆすり、関係を強要していたから。薫は音禰には何も話さない。実は私はあなたの母親で、俊作とは異父姉弟なのよと言えば、少しは結末も違ったのでは?殺してから「こうするしかなかった」ってアンタ。座光寺家の三人にしても、玄蔵の家族っていうだけで、直接にはアンタに何もひどいことしてないでしょうが。これで薫に同情しろなんて、いくら何でも無理ですがな。いつも通りマーラーの曲が流れ、「ベニスに死す」モード。いつも通り金田一は何もできずウロウロするだけ。別に音禰は殺さず、真実を知った彼女がこの先俊作とどう生きていくのか、そっちの方を描いて欲しかったが。音禰のキャラをここまで変更するのなら、その先の世界へ挑戦して欲しかったが。そんな期待も空しく、いつもの通り、犯人は悲劇のヒロイン、世の不幸を一身に背負い、何人殺そうが罰せられず、美しく死んでいく。この既定路線をはずす勇気は作り手にはないようで。それにしても2時間ドラマでの金田一物はどれもこれもはずれだ。いったいどうしてなんだろう。作り手の考えと見る側の求めているものが違うんだろう。全作品を見たわけではないが、大物女優が出てくると、あ、この人を中心に内容が変更されているのだな・・とわかる。キャラも変えられ、犯人も変更される。あとはいかに見ている者の涙をしぼるか。見ている方は涙どころか、笑いをこらえるはめになるのだが。 ▲△▽▼ 迷路荘の惨劇(2002)
いつもより長いのは横溝正史生誕100年記念だからか。前に見た時は何じゃこりゃ〜!だった。今見るとわりに原作に忠実な流れ。もちろんあれこれ変更してある。昭和25年、原作は富士の裾野だがこちらは京都。南禅寺やら琵琶湖疏水やら祇園祭やらがはさまれる。実業家篠崎(六平直政氏)のキャラが、成り上がりのゲス男なのか、妻の倭文子(羽田美智子さん)にぞっこんの純粋な男なのか。どっちも強調しようとしてかえってとっちらかってる。辰人(宇梶剛士氏)が元妻倭文子にやさしい言葉をかける穏やかな性格なのか、義母加奈子をレイプしようとし、それを止めた使用人静馬を恨んで惨劇を起こさせた悪党なのか、これもはっきりしない。人間にはいいところも悪いところもあると言いたいなら話は別だが。ちょっと残念なのは、金田一が風呂に入っている時聞こえる柳町のフルート演奏。実はこれが大きな意味を持つのだが、スルーされている。入浴剤の方はちゃんとやってる。静馬が糸(野際陽子さん)の息子というのは原作と違う。柳町の自殺あたりからストーリーはそれ始める。何たって倭文子を気の毒な、でも誇り高い美女に仕立て上げなければならない。タバコを手に取った時、絶対これに毒が仕込んであって・・と、見ている人全員思ったはず。でも死にませんでしたな。代わりに糸を自殺させなければならないから。糸の自殺も原作にはなし。いつでもどこでも糸が出てきて、野際さんの独演会になっていましたな。変にみんなのキャラをいじくり、そのせいで変に芝居がかった感じになり、また京都観光映画にもなっていた。まあ原作はしっかりしてるし、入浴剤とか地下迷路とか小道具も生かされ、前回見た時よりは出来はまともに思えた。最初に地下へ下りる時、見下ろす糸の表情に金田一が不審を感じるところは原作通り。その一方で女中のタマ子の髪型が気になった。ちゃんと縛れ!上川隆也氏の金田一はもっと見たかったが・・。今からでも遅くないからまたやってちょ。等々力警部は中村梅雀氏、運転手奥村が新井康弘氏、井川刑事が火野正平氏、天坊元子爵が長門裕之氏。知ってる人はそれくらいか。
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迷路の花嫁(1993) 原作は売り出し中の作家、松原が主人公で、金田一はあまり出てこない。推理小説をよく読む人なら、途中で犯人はわかるだろう。今回何度目かの読み直しをしながら、これって人情時代劇だよな・・って思ってた。ろくに仕事してないくせに、いやに金回りのいい色男の遊び人がいて、殺人事件に巻き込まれる。女性を食い物にしている悪人がいて、何とか毒牙から逃れようとあがいている女達がいて。そのうちの一人薄幸の美女は色男によって救い出され、またある女はやはり彼のおかげで所帯を持つことができる。またある大店の娘は自分の身を悪人に投げ出す寸前に救われ・・とにかく色男は次々に人助けをし、悪人の鼻を明かすのだ。彼にはプラトニックな関係のままで終わった女性がいる。彼女は悪人の毒牙にかかって自殺したのだ。だから彼には明るくふるまっていてもどこかカゲがある。最後はたぶん長屋のみんなに囲まれ、息を引き取る。外では同心や岡っ引きが彼の死を悼んで黙祷する。江戸時代だと私立探偵は・・??善と悪がはっきりしていて、悪人はあくまでも憎たらしく、女はあくまでも薄幸で、ヒーローの行動はあくまでも痛快。そして涙をそそるラスト。・・妄想はそれくらいにして・・原作は昭和29年くらいだが、テレビは35年。本堂(佐川満男氏)は戦傷ではなく痛風のせいで足が不自由。息子の蝶吉も白痴じゃまずいので普通の子に。原作で一番心にしみるのは、実はこのおでんの串を持ってぽかんとしている蝶吉の描写なのだが。金田一はほとんど松原の役回りなのだが、それだと誰か別の人を犯人にしなきゃならない。ねちっこくしゃべる建部(中尾彬氏)が出てくるので、彼が犯人かなと思ったが違った。金田一は重い結核であと数日の命という綾子(赤座美代子さん)を助けるが、ちょっと目を離したスキに殺され、責任を感じる。うわごとに出てきた「いずし」「きょうこ」を頼りに、兵庫県の出石を訪ねる。泊った滝川旅館(原作では呉服屋)では五日後に一人娘恭子(荻野目慶子さん)の婚礼がある。綾子が気にかけていたのはこのことか。ちなみに綾子は原作には出てこない。
迷路の花嫁2
ここまでは順調だったが、後はみんなして隠し事ばかりするので、なかなか前に進まない。霊媒の薬子(くすりこ)が殺され、現場を見た恭子は逃げ出すが、その際血のついた手袋を落としてしまう。それを拾ったのが原作では松原、こちらでは金田一。薬子の死体のまわりに血まみれの猫がわんさかというのは原作通りだが、出演した(←?)猫にとっては迷惑だっただろう。風呂好きならともかく。恭子は薬子を訪ね、死体を発見したことは認めたものの、訪ねた理由は言おうとせず、自分から婚礼中止を申し出る。「なかったことにしてください」・・って当日にキャンセルするなよ!婚約者の欣之助(宮川一朗太氏)は納得せず、金田一に調査を頼もうとしたり、恭子の身を案じて夜も見張っていたりする。結局恭子が口をつぐんでいたのは、犯人が父親(小坂一也氏)だと思い込んでいたため。あの日父親は薬子と会うことになっていて。ところが父親は足止めを食って会いに行けなかったことがわかる。父は犯人ではなかった。彼女は現場に落ちていた凶器のナイフを持ち帰って隠していたが、それには父親ではない誰か・・真犯人の指紋がついているわけだ。小細工せずちゃんと警察に渡していれば、次の犠牲者は出ずにすんだのだが。本堂とタバコの箱の件も原作通り。彼は妻の死は建部が原因と信じている。恭子の方は継母が毒牙に。とにかくどの女も建部の思い通りになってしまう。原作の建部は非常に下卑た印象で、何でこんなのに女性達が虜にされるのかいな・・と思うが、テレビの方は中尾氏なので、少しは説得力がある。深みのある声や表情がいい。ただ、もう少し祈祷所がにぎわっている感じを見せた方がよかったのでは?原作では松原のせいで、こちらでは金田一のせいで、建部は次々に女達に逃げられてしまう。原作では最後に残った女に、顔に硫酸をかけられ、失明してしまう。その女はその後橋から線路に飛び降り自殺する。時代劇なら柳の木の下をフラフラ歩いてきたと思ったら川に飛び込み・・ってところかいな。 迷路の花嫁3 テレビでは欣之助は実は建部の息子ということになっている。雑司ヶ谷で五年前に霊媒殺しがあったが、この被害者が実は建部の妻で、二人の間にできたのが欣之助。彼は実の母を殺したわけだが、それを目撃してしまったのがそこに住み込んでいた綾子。彼女も建部のせいで出石を出奔、東京に出てきていた。その時はそれですんだが、つい最近綾子は偶然欣之助が友人と話しているのを聞いてしまう。何と自分の娘恭子が殺人犯欣之助と結婚するという。こりゃいかん止めなきゃ・・と出石へ向かおうとするが、病気と欣之助のせいで・・。いつの間にか欣之助のことを調べ上げた金田一。一見爽やかな好青年欣之助は、実は金遣いが荒く、しかも殺人鬼だったと。ナイフについている指紋は彼のものだと。もちろん欣之助は自分は犯人じゃないと否定しまくるが、そのうち自分のせいじゃない・・と、責任転嫁し始める。欣之助の母親・・養母だが・・はナイフを恭子からひったくると、建部を刺し、自分は自殺。一瞬の出来事なので、誰も止められない。あの〜何ですか、この流れ。最初は実は真犯人はこの母親で、欣之助を助けようとして行動を起こしたのかと。元凶である建部を道連れに・・でも、それならちゃんと自白してからだよな。欣之助をかばおうと・・自分が罪を背負う気なら、やはり欣之助がしらばっくれてる間に自分が・・と言い出すはず。建部殺しにナイフを使えば、元の指紋はわからなくなるだろうし。でも、そういうの全然なしで、いきなり行動するからこちとらわけがわからんわけよ。一番考えられるのはオマケでもう二人ほど死人を追加しよう・・と、作り手が考えたってこと。理由なんかどうでもよろし。荻野目さんは何か腫れぼったいような顔をしていたな。奈津女役吉川十和子さんはきれいだ。松原が出ていないので、彼女は薬子のところの書生、河村と結ばれる。小坂氏が出ていたのにはびっくりした。この頃にはまだ生きていたんだ。ハナ肇氏はこの作品が最後の等々力警部役。原作はみんな東京だが、こちらは出石焼とか出石そばとか名物の他に、観光名所らしきものも出てきて、何となく寅さんシリーズぽい。 ▲△▽▼ 八つ墓村(1991)
「八つ墓村」と言えば1977年の映画が代表的なんだろうけど、私は大昔NHKで見たのが印象に残ってる。と言ってもほとんど覚えていないんだけど。キャストは山本耕一氏(辰弥)、水野久美さん(美也子)、川口晶さん(典子)で、金田一は出てなかったようで。こちらは1991年の2時間ドラマ。鶴見辰吾氏(辰弥)、夏木マリさん(美也子)、浅田美代子さん(春代)、金田一は古谷一行氏。長編を2時間にまとめたため、かなりそぎ落としてあり、辰弥と結ばれる典子はカットされ、辰弥と美也子がくっつく。際どいシーンがいくつかあり、家族揃って見ていると、えらいことになる。強調されるのは辰弥と美也子の恋で、特に美也子は呆れるくらい悲劇のヒロインに仕立て上げられている。原作だと彼女は慎太郎にプロポーズして欲しいが、落ちぶれた彼は尼子残党の財宝捜し出し、金持ちになってから・・と思っている。で、美也子は手っ取り早く財産を彼に継がせようと、田治見家の者を殺しにかかるのである。ばれないよう無関係な者も殺し、カムフラージュ。それがこちらではあれやこれやいっぱいくっつけて、こういう悪いことしたのも無理ないのよ、やむにやまれぬ事情があったのよ、ほらかわいそうでしょ、さあ同情しろこら・・となってる。慎太郎に財産継がせたいけど、美也子自身は彼と結婚したいわけでも、お金欲しいわけでもない、ただ恨みを晴らしたかったと。そのせいで慎太郎のキャラはあいまいもこ。原作では見つかる財宝も、こちらではなし。美也子に比重かかってるせいで、春代の辰弥への恋情も描写不足。英泉が辰弥を殺人犯呼ばわりした時に、食ってかかるのは(美也子ではなく)春代でなくちゃ。死の直前に春代が辰弥に思いを打ちあけるシーンは、もっと感動的になったはずなのに。それにしても今回の金田一は役立たずで、何のためにいるのかわからん。とらえられた美也子を前に得意になってペラペラ謎解き。そんなことしてるから美也子は小指の傷から入った毒が体中に回り、のたうち回る。見ている方も辛いですぜ、バカバカしくて。また、「アルビノーニのアダージョ」とやらが、やたら深刻なムードぷんぷんさせながら流れるのもイタイ。あたしは慎太郎さんの体と、田治見家の莫大な財産両方とも欲しいのよ、文句あっか!・・で、いいと思うんですけど。 ▲△▽▼
幽霊座(1997) 昭和32年、岡山の久賀村。鎮守の森の樫の木は首くくりの木と言われていて、今朝も心中死体がぶら下がっていた。今年に入って三件、いや四件目だ。ところが死亡時間に1時間のずれがある。こりゃ心中に見せかけた殺人だ!着いた早々河合警部に引っ張り出される金田一。今回は彼が岡山を訪れた理由さえ省略されている。わざわざ東京から呼ばれたとは思えんが。死体を発見したのは蔵元の娘と、奉公人の牧野喜久雄。死体は水木京三郎と乙女。金田一はここへ来る途中、偶然雷車鶴之丞(十朱幸代さん)らと知り合う。鶴之丞のあでやかな美貌に見惚れる金田一。彼女は夫の死後、座長として旅回りの一座を率いている。四年前、息子の鶴之助は「鯉つかみ」の途中で姿を消し、行方知れずに。水木と乙女も座員で、乙女は一座の立女形紫虹(井上純一氏)の妻だが、水木と浮気。嫉妬にかられた紫虹が水木を殴るなどもめていて。結局水木は破門されるが、腹の虫がおさまらない紫虹は、弟子の音丸を折檻するなどいびりまくる。原作だと東京の稲妻座が舞台。歌舞伎では珍しく、個人所有の劇場。「鯉つかみ」の途中で鶴之助が姿を消すというのは原作通りだが、あとは変更しまくり。旅回りの一座というのは、まあ仕方ないと思う。劇場での本格的な歌舞伎を見せるのは難しいから。でも十朱さんが出てきた時点で、内容変更、犯人変更は予想がつく。ゾッとするほど冷たい美貌の女形紫虹への期待なんか、するだけ無駄。十朱さんの見せ場がたっぷりあり、それはまあいいとして、そこだけ浮いているような気も。紫虹が音丸をいじめまくるのに、鶴之丞は全く感知していない。それとお客はもっと・・とんぼを切れば喝采するとか、反応があるはずで。そのうち紫虹が殺される。金田一は四年前に起きた、座付きの作家坪内の溺死に興味を持つ。アル中だったらしいが、事故死なのか殺人なのか自殺なのかはっきりせず、結局迷宮入りに。坪内の死が「鯉つかみ」の初日で、鶴之助の失踪が千秋楽。これは偶然だろうか。鶴之丞は、舞台の途中でいなくなるなんて・・と、腹を立てているようで、もう鶴之助のことは死んだと思っている。失踪からひと月ほどして遺書めいた手紙が来たが、焼いてしまったと言う。続けて三人も死者が出たことで、座員は不安がり、騒ぎ立てるが、皮肉なことに小屋は大入り。 幽霊座2 普通ならここでお客に何か言わせる。だって彼らが押しかけるのは芝居のことより、また何か起きるのではないかという期待のせいだ。途中音丸が血を吐き、そのまま死んでしまう。毒殺だ。彼が死んでしまうのは意外だった。紫虹がいなくなり、彼が女形として一座をしょって立つのだと思っていたから。今まではいじめられて不幸だったけど、やっと苦労が報われる日が来たのだと・・。そしたらあっけなく死んじゃった。金田一は喜久雄の過去を調べ、彼が実は鶴之助なのを知る。ここからは少々ややこしい。「私は悪くないんです」タイムの始まりだ。鶴之助が実は坪内の子だというのは大して意外ではない。昔は坪内にも夢を持つ純粋な時期があって、鶴之丞もそこに惚れた。座付き作家で終わる気はないと、小説を書いては出版社へ送った。でも、書いても書いてもボツになる。そのうち心がすさみ、酒や博打に溺れるように。その日も金を持ち出そうとして、鶴之丞と争いになった。母親が頬を切られたのを見た鶴之助は逆上して坪内に向かっていき、二人して「鯉つかみ」用の水槽に落ちてしまう。気がつけば坪内は溺死。息子を救うため、鶴之丞は死体を移動。でも、坪内がアル中だってのはまわりにも周知のことで。酔って足を滑らせ、水槽に落ちた事故死で、誰も疑わないと思うが。と言うか、死体を大阪の道頓堀までどうやって移動させたんだろう。父親殺しは重罪だからと言っていたが、鶴之助が坪内の子だというのは、この時点では誰も知らないのでは?鶴之助自身も知らないし。水木や乙女、紫虹が殺されたのは、鶴之助が喜久雄として生きていることを知り、ゆすり始めたため。なぜ彼らが鶴之助の居どころを知り、坪内殺しのことも知っていたのかは後でわかる。音丸が告げ口したのだ。彼は水槽の掃除をしていて、坪内の時計が落ちているのに気づく。その時は意味がわからなかったが・・。車の免許を取ろうと、本名の牧野喜久雄で書類を取り寄せたところ、誰かが自分の名前を使って存在している!住所を頼りに確かめに行くと、何と鶴之助がいて。水木や乙女はともかく、憎い紫虹を自分の代わりに始末してくれたのは都合がよかった。これからは自分を立女形にしろ。さもなくば鶴之助のことをばらすぞ。 幽霊座3 何だか紫虹にいびられているうちに、音丸自身が紫虹と同じ性格になっていたというのが・・いかにもありそうなことで、そこはとてもよかった。よかったけど、それが発展しないのがこのシリーズの宿命。いかにヒロインを美しく悲劇的に描くかが大事で、あとは付け足し。息子を守るためなら何人殺してもオッケー。見ているこっちは口あんぐりだ。鶴之助に音丸の経歴使わせるのがまず理解に苦しむ。そのうち必ず気づかれるに決まってるじゃん!坪内の死体を動かしたのも裏目に出た。時計が水槽で見つかったって、溺れてあがいているうちにはずれて底に沈んだのだと思われるだけ。あっちで溺れて死んだはずなのにこっちで時計が見つかるから音丸が不審に思うのだ。せっかく坪内の死をうまくやり過ごし、鶴之助の失踪計画もうまくいったのに、一年に一回、巡業に来た時会えるよう近くの蔵元に入り込ませる。絶対居どころを知られたくないなら会いたくてもがまんし、遠く離れているはず。座員に見られたらそれっきり。ましてや座員の経歴を使うなんてありえな〜い!しかも!鶴之助は心中の第一発見者にわざわざなるのだ信じられな〜い!警察と関わり持つなんて!鶴之丞側だけではない。水木達も、鶴之丞ゆすったってろくな金ないことくらい、自分達が一番よく知っているでしょうに。でも見ていて一番呆れるのは、これだけは言っておかないと・・と、鶴之助の出生の秘密明かすこと。実の父親を殺したと知った鶴之助は大ショック。普通は金田一には言っても鶴之助には言わないでしょうが。秘密を胸におさめ、罪を全部かぶって、一人死んでいくのが母親じゃないの?今回に限っては心中で始まったから終わりも心中で・・と、母子二人の道行き。気の毒に・・って思わなきゃいけないのかな。私には「バッカじゃないの?」としか思えませんでしたとさ。鶴之助役は大沢健氏、音丸役は井田州彦氏。座員香織役は渋谷琴乃さんだが、この香織は存在がちょっとうるさい感じ。小屋主役は穂積隆信氏。鶴之丞に惚れ込み、貸した金の半分しか返してもらえなくても、その金を祝儀だと渡すようなきっぷのよさ。鶴之丞をくどくなど本性あらわすかな・・と思ったが、そのまんま。珍しくいい人の役。他に小島三児氏、なぜかパンチ佐藤氏。1997年と言えば十朱さんは50代半ばだが、とてもそんなふうには見えない美しさだ。 https://sites.google.com/site/darklymama/home/ya/yokomizo2
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