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トランプ中間選挙後に弾劾も?元顧問弁護士ら「裏切り」続々
https://diamond.jp/articles/-/178574
2018.8.31 矢部 武 ダイヤモンド・オンライン
トランプ氏に忠誠を誓っていたマイケル・コーエン元顧問弁護士が司法取引に応じ「爆弾発言」 写真:ユニフォトプレス
トランプ氏個人の顧問弁護士が「裏切り」
まさにテレビの法廷ドラマを観ているような、驚くべき展開である。かつて「大統領のためなら銃弾も受ける」とまで語ってトランプ氏への忠誠を誓っていたマイケル・コーエン元顧問弁護士が8月21日、ニューヨークの連邦地裁で司法取引に応じ、「トランプ氏の指示のもとで犯罪を行った」と証言したのだ。
コーエン被告は8件の罪で、有罪を認めた。この中には選挙資金法違反も含まれ、「トランプ大統領から指示を受けて、トランプ氏と不倫関係にあったと主張する2人の女性に口止め料を支払った」と述べた。
トランプ大統領はツイッターで、「刑を軽くしてもらうために話をでっちあげた」と激しく非難。しかし、トランプ氏の虚言癖をよく知るコーエン被告は、口止め料に関するトランプ氏との会話を秘密裏に録音していた。
問題はトランプ大統領が法を犯したかどうかである。トランプ大統領は「法律違反はなかった」と主張している。しかし、コーエン被告が宣誓証言で示唆した通り、トランプ氏の指示で選挙資金法に違反したのだとしたら、トランプ氏も法を破ったことになるのではないか。
しかもコーエン被告はこの他にも、2016年米大統領選におけるトランプ陣営とロシアの共謀、いわゆる「ロシア疑惑」について、トランプ氏が事前に知っていたとする情報を持っているという。元顧問弁護士の裏切りで、就任以来最大の法的かつ政治的な危機に直面したトランプ大統領。はたして大統領の職に留まることはできるのか。
「私は家族と国家を優先する」
コーエン被告ほどトランプ氏をよく知る人物はおそらく他にいないだろう。10年以上にわたって顧問弁護士を務め、トランプ氏が抱えるさまざまな問題を何も聞かずに解決してきたことで、「フィクサー」とも呼ばれていた。
コーエン被告はトランプ一族が経営する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」の海外取引にも携わり、また、大統領選では頻繁にテレビに出演し、トランプ氏を擁護した。
テレビ番組の司会者から、トランプ氏が対立候補に世論調査でリードされていることを指摘されると、「誰が言っているのですか?」「どこの世論調査ですか?」などとしつこく食い下がった。そしてトランプ氏の大統領就任後は、「私は政権には入りませんが、顧問弁護士としてニューヨークでもワシントンでも、トランプ氏が必要とする場所にはどこでも行きます」と言って支えた。
そんな2人の関係が崩れたのは2018年4月、コーエン被告のビジネス取引を捜査していた連邦捜査局(FBI)が同氏のニューヨークの事務所や自宅を捜索したのがきっかけだった。押収された大量の物品、ファイルの中に2人の女性に支払われた口止め料の証拠があった。1人は元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズさん、もう1人は元プレイボーイ誌モデル、カレン・マクドゥーガルさんだ。
その後、コーエン被告はABCニュースの番組で、「トランプ氏に関する情報と引き換えに“刑を軽くしてやる”と言われたら、どうしますか?」と問われ、「つねに妻と娘、息子が最優先です。家族と国家を優先します」ときっぱり答えた。それはかつての上司のトランプ氏に対する「決別宣言」だった。
そして8月21日、コーエン被告は司法取引に応じ、詐欺行為や選挙資金法違反など8件の罪を認めた。重要なのはコーエン被告が宣誓のもと、大統領の指示を受けて2人の女性に口止め料を支払い、連邦法に違反する行為を行ったと述べたことだ。
その翌朝、トランプ大統領はツイッターで、「口止め料は自分のお金で支払った。選挙資金は使っていないので犯罪ではない」と強弁した。
しかし、連邦選挙委員会(FEC)の元法律顧問のラリー・ノーブル氏によれば、コーエン被告が口止め料は選挙に影響を与えるためだったと認めているので、それが個人のお金か、選挙資金から出たのかに関係なく、選挙資金法違反にあたる可能性があるという。
コーエン被告の弁護士を務めるラニー・デービス氏は、PBSニュースのインタビューでこう語った。
「我々がいま目にしているのは、米国の歴史上めったに見られなかったことです。弁護士である被告が宣誓のもと、自分のクライアントである合衆国大統領が重罪を犯したと証言したのです。この国の大統領が重罪を犯したという証拠が出てきたわけです」(2018年8月22日)
さらに2人の仕事仲間の裏切り
そんなトランプ大統領にさらなる痛手となる事態が起きた。長年の仕事仲間だった2人がコーエン被告の事件で、刑事免責の取引をして(裁判所から訴追免除の特権を得る)、検察の捜査に協力していることがわかったのだ。
1人はタブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」の発行元社主であるデービッド・ペッカー氏である。ABCニュースによれば、ペッカー氏はコーエン被告と協力して大統領と関係したカレン・マクドゥーガルさんのストーリーをもみ消し、大統領もこの取引について知っていた、と当局に語ったという。この手法はネガティブな情報のネタを買い取って握りつぶす「キャッチ&キル」と呼ばれるものだ。
エンクワイアラー紙は大統領選期間中、トランプ氏を全面的に支持する一方、ヒラリー・クリントン候補に対しては「秘密のウソ発見器をパスせず」「2度の隠された発作」「余命6ヵ月」など敵意に満ちた記事を次々に出し、総攻撃を仕掛けた。これだけトランプ氏を強く支持していた人物に裏切られたのだから、大統領にとってショックは計り知れないだろう。
検察に捜査協力したもう1人は、トランプ・オーガニゼーションの最高財務責任者(CFO)のアレン・ワイセルバーグ氏である。検察当局によれば、コーエン被告は大統領選の直前、ダニエルズさんに口止め料を支払い、ワイセルバーグ氏が翌年、この立て替え分を返済したそうだ。トランプ・オーガニゼーションは当初、この支払いは弁護料の立て替えだとしたが、コーエン被告の月間請求書を見ると、2017年の弁護料とは関係ないことがわかったという。
トランプ氏の会社の「金庫番」であるワイセルバーグ氏が、大統領の財務状況についてどんな新しい情報を検察側に提供したのか気になるところである。
ロシア疑惑の決定的な証拠
コーエン被告の捜査協力はロシア疑惑の捜査にも大きな影響を与えそうだ。大統領選中の2016年6月、トランプ陣営の幹部がクリントン候補に不利になる情報を得るためにニューヨークのトランプタワーでロシア政府とつながりのあるロシア人弁護士らと面会したことや、ロシアが民主党の全国委員会本部へのハッキングをしたことなどについて、トランプ氏が事前に知っていたことを示す情報をコーエン被告が持っているというのだ。
法律の専門家によれば、トランプ氏がそのことを事前に知っていたか、あるいはそれに協力したという証拠が出れば、反逆罪にあたる可能性があるという。合衆国憲法第2条4節は、「反逆罪は収賄罪、その他の重罪または軽罪と並んで弾劾の根拠になり得る」としている。
ちなみにトランプ氏は選挙戦中、「ロシアよ、もし聞いていたら、(ヒラリー・クリントンの)行方不明になっている3万通のメールを見つけるよう期待している」などと、ロシアのハッカー攻撃を歓迎するような発言を行っていた。
前出のラニー・デービス弁護士は、PBSニュースのインタビューでこう語った。
「コーエン被告が直接知り得た情報はモラー特別検察官が関心を持つようなものだと確信しています。それが証明になるかはわかりませんが、少なくとも示唆しているのは対立候補のクリントン氏に不利になるような不正、サイバー攻撃、コンピュータ犯罪をロシアのスパイが行ったことを、トランプ氏が知っていたということです」
一方、トランプ大統領はウェストバージニア州の支持者の集会でおなじみのフレーズを繰り返しながら、大声でこう叫んだ。
「フェイクニュースにロシア疑惑の“魔女狩り”を垂れ流しするマスコミが大勢来ている。共謀はどこにある? まだ一生懸命探しているのか? 探せるものなら探してみろ!」と。
表向きは精いっぱい強がって見せているようだが、内心はビクビクしているのではないか。
ロシア疑惑の決定的な証拠
大統領は一般市民と違って免責特権があるので、たとえトランプ氏の違法行為が証明されたとしても訴追されることはないだろう。しかし、議会は重罪や軽罪を犯した大統領を弾劾訴追し、裁判にかけることができる。つまり、トランプ大統領が職にとどまれるかどうかは議会の採決によって決まるということだ。
コーエン被告の有罪答弁の後、トランプ大統領はFOXニュースの番組で自身の弾劾の可能性について聞かれ、こう答えた。
「立派な成果を上げている大統領を弾劾できるというのですか? 正直言って、私が弾劾されたら、株価は暴落します。皆がとても貧しくなるでしょう」
残念ながら、この大統領の頭の中にあるのは「誇大妄想」(自己の成果を誇張し、過剰な称賛を求める)と「金儲け」のことだけで、憲法や法の支配、民主主義を守ろうという意識はまったくないのかもしれない。
コーエン被告の有罪答弁を受けて、一部の民主党議員は「いま我々はウォーターゲート事件以来の憲法の危機に直面しています。救済手段は全て提示されています。その中には起訴もあります」と警告を発した。
ウォーターゲート事件では、1972年に再選を目指していたニクソン大統領の関係者が民主党の全国委員会本部に盗聴器を仕掛けようと不法侵入して逮捕され、一連の選挙妨害や隠蔽工作が発覚。その後、議会で弾劾勧告案が可決され、追い詰められたニクソン大統領は74年8月9日に辞任した。
現在、与党共和党が上下両院で多数を握っているので、トランプ大統領が弾劾される可能性は低い。しかし、11月の中間選挙で、民主党が支持者の反トランプ票を結集させて両院で多数を奪還すれば(少なくとも下院で)、来年1月に弾劾手続きが開始されるかもしれない。最近の世論調査では民主党が有利との結果が出ており、その可能性は小さくないように思える。
そうなれば、かつて忠実な部下だったコーエン被告が議会の「弾劾公聴会」で、トランプ大統領の不正行為について証言をする場面も見られるかもしれない。いずれにしても、このエキサイティングな「法廷ドラマ」はしばらく続くことになるだろう。
(ジャーナリスト 矢部 武)
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