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EUを反中国貿易戦線に引き入れたワシントン
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2018年8月31日 マスコミに載らない海外記事
2018年8月10日
F. William Engdahl
最近の、ユンケル欧州委員会委員長とトランプ政権のワシントン貿易関税会談の明らかな成功に、EUの多くの人々が安堵のため息をついているが、現実は、ワシントンが、EU、特にドイツに、貿易と経済の発展における中国との協力へのあらゆる可能性の扉を閉ざすよう、巧みにあやつったように思える。中国経済政策には問題があるものの、最近の進展は、アメリカと、中国に敵対的な日本との、中国発展に反対する同盟を支持して、中国を本拠とするユーラシア経済空間の膨大な可能性に背を向けることにEUが合意したことを示している。これはEU経済の先行きを大きく損ないかねない。
最近のワシントン-EU会談前の数週間に、当初、EUと中国製品の輸入関税に対する最近の一方的なアメリカ宣言に対する、合法的なWTOや、他の異議申し立てを提示して、北京は共同戦線を模索していた。7月16日の北京での中国-EUサミット前、中国当局は様々なEUの相手方と交渉していた。彼らは、ワシントンに対する共同戦線と引き換えに、EU企業に対して、中国国内市場を開放する大幅な譲歩を進んでしたと言われている。政府公式の新華社通信は、中国とヨーロッパは“協力して保護貿易主義に抵抗すべきだ。中国とヨーロッパ諸国は、最適のパートナーだ”と報じた。“彼らは自由貿易は、世界の経済成長のための強力なエンジンだと固く信じている。”
中国の新経済シルク・ロードと呼ばれることが多い一帯一路構想の戦略目標の一つは、最終的に、中国貿易を、巨大なEU市場と直接結ぶ輸送インフラの陸-海ネットワークを作ることだ。これまで、ブリュッセルは反対してきたが、個々のEU諸国、特にハンガリー、ギリシャやチェコ共和国などのEUの東部地域は、中国インフラ投資を受け入れようとしていた。ここ数週間、トランプが、EU諸国からのアルミニウムと鉄鋼製品に対する一方的な貿易関税を打ち出し、同時に、ワシントンは中国に対する一連の厳しい関税経済制裁と、予定している更なる威嚇を開始し、ドイツや集団としてのEUとのより大規模な協定の余地が中国には、ほとんどなくなった。ワシントンが中国とEUの両方を同時に標的にしていた事実が、中国が、ワシントンに対抗して、EUと緊密な協力を始められるという素朴な北京の希望をかきたてた。
中国のハイテクが本当の標的
アメリカ大統領が、アメリカ-中国貿易赤字の規模に関する果てしない数のメッセージをツイートし、更に2000億ドルの中国からの輸入に新たな関税を課すという威嚇を投稿しているが、実際のアメリカ戦略は、アメリカ通商代表ロバート・ライトハイザーの事務所で、精密に開発されている。レーガン政権時代にさかのぼる年季の入った貿易交渉専門家ライトハイザーは、3月 301条に関するUSTR報告書の起草を監督した。
ライトハイザーのグループは、2015年、中国が出した「中国製造2025年」政策文書に挙げられている 10の産業分野を標的にしている。この戦争は、貿易ドルを巡るものではなく、主要技術での世界支配を巡るものだ。
中国は、当然のことながら、その技術基盤を、世界最先端の水準的に強化しようとしているが、主要アメリカ・ハイテク企業に支援されて、ワシントンは、その挑戦を阻止したがっている。関税戦争は、それをするために使われている策略だ。
興味深い目立つ事実は、いわゆる2016年選挙での、トランプのためと想定されているロシアによる干渉を言い立てるアメリカ諜報界が繰り出すおそまつな声明や非難や文書との対比だ。こうしたアメリカ政府による非難で、ロシアとロシア企業に対する、アメリカの厳しい経済制裁をもたらした主要な容疑は、動機が全く不明な退職したイギリス MI6職員が、ジョン・マケイン上院議員に手渡したうさんくさい、曖昧な文書に基づいていた。アメリカ諜報界のトランプに対する戦いは トランプ-中国戦争とは、全く性格が異なっている。後者はアメリカの党派政治ではなく、アメリカ各組織の戦略的合意なのだ。中国は、アメリカに対し、産業上、同等な立場に上昇することが許されないのだ。
「中国 2025年」は優先項目として、人工知能や量子計算、工作機械やロボット、航空宇宙や、航行装置、ハイテク海運、最新輸送機器、新エネルギーの乗り物、発電装置、農業機器、新素材、(GMOを含む)バイオ医薬品や、先進的医薬品を含む十の主要技術分野を挙げている。
ニューヨークの外交問題評議会は「中国: 2025年」に関する最近の報告で、こう警告した。“「中国製造2025年」による中国の狙いは、ドイツやアメリカ合州国や韓国や日本などのハイテク経済に仲間入りしようというより、その全てに置き換わることだ。”
第二次世界大戦以来、初めての本格的な産業技術の挑戦の目ざましい高まりに直面して、ワシントン今しようとしていることは、ある意味、未曾有で、往々にして誤解されている理由の一つだ。ズビグニュー・ブレジンスキーが、著作で指摘したように、NATOや他の手段で、両国はワシントンに依存する属国の立場に置かれ続けているため、ドイツと日本は、アメリカ超大国覇権にたいする本当の挑戦者ではない。現在の中国は、明らかに、自らをワシントン属国とは考えていない。しかも、中国が、ロシア、イラン、ASEANや、可能性としては、インドさえも含め、ユーラシアの大半を、緊密な経済協力に引き込みつつある事実が、「中国: 2025年」の挑戦を、ワシントンとウオール街にとって、つぼみのうちに摘み取るべき実存的死活の優先事項にしているのだ。問題はそれが機能しないことだ。中国ほどの大国であっても、自国産業の技術的現代化は、あらゆる国の本分なのだ。
アメリカとEU対「中国 2025年」
勃興する中国に乗り越えられつつある恐怖が、ワシントンと、CFRのような主要民間戦略シンクタンクが、中国に対抗するため開発したグローバル共同戦線構築のメッセージなのだ。あるレベルにおいては、それは成果をもたらしつつある。ワシントンの交渉戦術は、明らかに、欧州連合の中でも、最も親密なNATO同盟諸国を制裁し、恫喝して、反中国経済戦線に参加するよう追いやることだった。典型的な、あめとむち手法の変種だ。アメリカ大統領による、EUの鉄鋼と、アルミニウムに経済制裁を課するという恫喝の後、ワシントンはドイツ産業の中核であるヨーロッパの自動車も追加する可能性を言い始めた。トランプは、EUは貿易では敵になったとまでツイートした。会談後、トランプは、アメリカとEUの間には“愛”があるとまでツイートし、ワシントンは明らかに望んでいたものを手にしたのだ。EUは、ワシントンの貿易戦争に反対して中国の側に付くのではなく、中国に反対し、ワシントンにつくことに合意した。古典的なイギリス式勢力均衡地政学だ。
トランプの経済顧問ラリー・クドローは、フォックス・ビジネスとのインタビューでこの策略を認めこう述べた。“欧州連合とともに協定をまとめるところで、我々は中国に対する共同戦線になる”。更にクドローは、NAFTAがまとまれば、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、メキシコと日本はアメリカ合州国と一体化し、中国を孤立化させることになると述べ、意地の悪い辛辣な言葉を付け足した。“弱体な経済のまま中国は一層孤立化する”
ドイツ政府は素早く行動した。8月1日、ドイツ政府は中国投資家によるドイツ・ハイテク企業、ライフェルト・メタル・スピニングAG買収計画を阻止すると発表した。ドイツの経済技術省は、中国による航空機部品メーカー、コテサ買収提案も見直している。これは政策の大きな転換だ。今年早々、中国自動車メーカー吉利が、ドイツ・ダイムラーの株、9%を保有していると発表し、別の中国企業美的集団が、ドイツの先進的工作機械メーカー、クーカを買収した際、ドイツ政府は干渉するのを拒否していた。
ドイツ-日本のつながり強化
攻撃的なアメリカ関税戦争に反対するための協力戦線という中国提案を進める代わりに、ドイツとEUを反中国連合に更につなげるべく、EUは、中国に対抗するアジア同盟構築を暗黙のうちに狙った日本と包括的自由貿易条約を締結した。
間もなく、ドイツのハイコ・マース外務大臣が、ベルリンは日本と詳細不明の“新国際秩序”にむけ“緊密な協力関係”を生み出すための“戦略対話”始めたと発表した。
5月、中国の李克強首相が東京を訪問し、アメリカ貿易制裁に対し、中国と協力するよう、日本を促し、中国の一帯一路構想、新経済シルク・ロードへの参加を日本に呼びかけた。日本の対応は冷淡で明確で、続いてEUとの自由貿易協定を締結した。2017年以来トランプ政権は、中国の増大しつつある経済的影響力への暗黙の対抗として、日本、インド、オーストラリアとアメリカのアジア“四カ国戦略対話”復活を静かに奨励していた。「四カ国戦略対話」はアジア-太平洋地域において、中国の増大しつつある影響力に対抗しようとして、十年前に安倍首相が始めたものだった。
グローバル地政学の巨大な構造プレートが移動しており、その結果が大陸漂流なのか、激しい衝突なのか、現時点では明らかではない。ワシントンとしては、そういうものの実現を認める興味は皆無で、中国もロシアも、EUとの関係修復を明白な理由で心から願っているはずだ。2013年の新経済シルク・ロード・グローバル・インフラ大計画と、二年後の「中国製造2025年」を公表したことで、中国は敵、特にワシントンに、日本であれEUであれ、潜在的同盟国の恐怖につけ込む余地を与えたのだ。EUとユーラシアの間での拡大する差異が、分裂に変わるのを防ぐには、中国による高度で開かれた経済外交が必要だ。それはEUにとっても、中国やロシアにとっても損失のはずだ。
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書。本記事は“New Eastern Outlook”独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/10/washington-has-lured-eu-into-anti-china-trade-front/
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