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卵の価格下落がこのままでは「底なし」になりかねない理由
https://diamond.jp/articles/-/191895
2019.1.25 鈴木貴博:百年コンサルティング代表 ダイヤモンド・オンライン
鶏卵の価格が歴史的な安値水準まで下落している。国主導の生産調整だけでは解決できない、卵に関わるビジネスの構造的な問題とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA
卵の価格が歴史的安値に
業界はどこで判断を誤ったか
鶏卵の価格が歴史的な安値水準まで下落しています。卵の価格の指標になるJA全農たまごの初取引で、Mサイズが1キロ100円の値をつけました。例年、その年の初値は下がる傾向にありますが、この100円というのは15年ぶりの安値で、現在でも130円と非常に低い水準で卵の取引価格が推移しています。
昨年末はこの価格が185円で、だいたいこれくらいの水準にならないと農家はちゃんとした利益が確保できないといわれます。実際、農家によれば、この価格水準だと販売価格に占める飼料費が8割に達してしまい、到底利益を残すことはできないと言います。
この先の見通しですが、安値が続くことでスーパーでの特売需要が増え、出荷量も取引価格も改善していく可能性はあります。とはいえ、それでも例年より3割ほど安い相場になりそうだということで、関係者は危機感を高めているようです。
このような事態を招いた重要な分岐点が、2015年の鶏卵価格の高騰にあったといいます。この年、卵の取引における年平均価格が224円という高値で推移したことで、生産者が競って設備投資をし、飼育する鶏の数を増やしました。結果として、この年を境に業界全体で卵が供給過剰となり、今回の歴史的な安値を迎えてしまったのだといいます。
取引価格が下がったことで、都内でも卵1パックを100円台の下のほうで安売りするスーパーが出てきました。そのことで卵の取引量は順調に戻してきましたが、一方で、安売りはこの問題の根本的な解決にはならないようです。卵の価格だけが下がっても、世の中の卵需要が増えるわけではないからです。
卵のように、価格を下げてもそれほど需要が増えない商品のことを「価格弾力性が低い商品」と言ます。このような商品は、供給過剰になるとそれ以上のペースで価格が下落します。問題解決の方向性としては、生産量の調整しかありません。
そのため、業界では国の生産抑制事業制度が発動されることに期待しています。供給を適正な水準に減らすことで、農家が利益を出せる取引価格に戻そうというわけです。
ただ、鶏卵の場合は解決に時間がかかります。鶏は成育した後、800日間卵を産み続けます。国の生産抑制制度は、こうして卵が産めなくなった鶏が廃鶏された後で、鶏舎を60日空けて生産調整をした業者に補助金を出す仕組みになっています。つまり、卵の生産調整は時間がかかる長期戦になってしまうのです。
物価の優等生だった卵の死角
生産調整は解決にならない
そしてもう1つ、鶏卵農家にとって重要なことがあります。生産調整だけでは根本的な対策にはならないという、別の事情があるのです。それは、卵がスーパーの客寄せ商品になっているということです。
卵は長らく「物価の優等生」と呼ばれてきました。栄養価の高い食品でありながら、スーパーに行けばとても安く手に入る。そういった評判が立つ一方で、そこに目を付けた小売業界が卵を客寄せの目玉商品として扱う商習慣が根付いてしまいました。
同様の客寄せ商品に、トイレットペーパーや醤油、サラダオイルといったものがあります。これらの商品は、週末のチラシで安売りをすると消費者が喜んで買って帰ってくれます。卵にしても醤油にしても、ずっしり重い商品は安く手に入ると消費者が、なんとなく得をした気持ちになるのです。なのでスーパーとしては、これらの商品で儲けが出なくても、お客さんがたくさん来てくれればそれで構わない、と考えるようになります。
実は、私はこういった「客寄せ商品」になってしまった商品のコンサルティングを、何度か手がけたことがあります。こうなってしまうと、その商品で利益を上げること自体が非常に難しくなります。
なにしろ小売店は、もともと「赤字で構わない」という前提で安売りするため、消費者も適正な価格がわからなくなってしまうのです。生産者から見れば大切な商品であって、きちんとした価格で取引をしてもらいたいのに、流通の立場にとっては実質的に商品ではなく、「広告宣伝のツール」として扱ってしまっている。ここに大きな問題が生まれてしまうのです。
単なる「客寄せ」商品から
本当に「価値を売る」商品へ
では、どうすればいいのでしょうか。生産農家の立場に有利な形で、かつ短期的に解決できる方法はありません。しかし、長期的に取り組むことができ、業界として反省ができることは、生産量を適正に調整していくと同時に、高付加価値商品に重点を置くことです。
スーパーの卵売り場では、ここ数年、飼料に工夫をした栄養価の高い、ないしは安全な卵が増えています。そういった商品はなぜか「赤い卵」であることが多く、普通の卵よりも高い価格で流通しています。消費者もそういった高付加価値・安全といったものを求めて、あえて高い方の卵を買っていくケースが少なくありません。
安いほうの卵、つまり白くて10個入りのパックで売られている卵の価格が高くなってくると、なぜかこの赤くて高い卵がより良い商品に見えてくる。これも普通の経済学では説明がつかない、行動経済学的な不思議な現象なのですが、とにかく高い卵がよく売れるようになるのです。
それが2015年頃に起きた、卵の値上がりのもう1つの原因だったと思います。なので、業界として重要なことは、次に2015年のような状況が訪れたときに、前回のように「生産者が競って増産をする」といった動きをどう抑制するかだと思います。
業界としての真の課題は、「どうすれば卵がスーパーの客寄せ商品から、本当の価値を売る商品へと変わることができるか」です。
その観点で言えば、2015年の卵価格の上昇は、徐々に高付加価値商品を市場に浸透させてきた業界の成果だったはず。そのときすべきだったのは、数量増加のためではなく、さらなる高付加価値化に向けた投資だったのですが、鶏卵業界はそこを失敗してしまったと言えます。
今回の鶏卵価格の下落は、起きるべくして起きた「人災」だということです。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
https://t.co/g1p6QziU9e 卵よ、お前もか。こちらは品薄で価格高騰中。この間近所で買った卵が1パック300円以上したのでよく見たらオーストリア産だった。
— Yuriko Goto (@sinlife2010) 2019年1月25日
卵1パック185円で、だいたいこれくらいの水準にならないと農家はちゃんとした利益が確保できない💦
— 由妃 (@96ssDaisuki) 2019年1月25日
しかしΣ੧(❛□❛✿)都内でも🥚100円台の下のほうで安売り…❣️
私達消費者は嬉しいけれど…複雑な問題💦💦https://t.co/4UtFrraxkA
患者さんに「卵は栄養価が高くて風邪予防に良いよ」と勧めるのですが、「コレステロール高いから…」と間違った常識で避けられてしまいます。
— SiliconFW (@SiliconFW) 2019年1月24日
住んでる地域は起伏が多く北斜面とかに養鶏場があり、こんな記事見るとより卵を食べようと思うけど、料理レパートリー狭くて(^_^;)https://t.co/zr2vqFbcmo
国主導の生産調整が入るかも。
— 古谷公史郎(ジンジャーさん) (@furuya_kousirou) 2019年1月24日
と今朝のニュースでやってた。
その説明は「卵を産ませなかった農家に補助金」みたいなことがサラッと書いてあったけど、
産ませなかった?
そんな事出来るの?
って思った。
出荷しな... #NewsPicks https://t.co/MZOlKrWg0T
そんなことになってるのか。確かに一部のお店(ドラッグストアとか)で、卵めちゃ安い。 / 卵の価格下落がこのままでは「底なし」になりかねない理由 (Diamond Online) #NewsPicks https://t.co/7bhfxtaYRh
— Brave(ブレイブ)⚔のら勇者 (@Bravebureibu) 2019年1月25日
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