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2018年12月21日 みわよしこ :フリーランス・ライター
「生活保護を受けるとやる気がなくなる」は本当か
「生活保護はやる気を失わせる制度」という見方は非常に根強い。一度生活保護を受給すると、多くの人がなかなか労働復帰できないのは、なぜなのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA
「生活保護でやる気がなくなる」
を検証する3つのポイント
「生活保護は、やる気を失わせる制度」という見方は、非常に根強い。笑顔とエネルギーに満ち溢れた楽しそうな人が生活保護で暮らしていることは、事実として少ない。何が原因なのかはともかく、生活保護で暮らしていることと、体力や気力や尊厳が失われがちであることは、強く結びつきがちだ。
今回は、この問題の解決策の1つとして挙げられることの多い、次の3点のアイデアを考えてみたい。
(1)働いても収入が増えない「収入認定」の仕組みが、生活保護からの脱却を妨げているのではないか。
(2)生活保護から脱却すると、社会保険料や医療費の自費負担によって、かえって生活が苦しくなる。この問題を解決する必要があるのではないか。
(3)世間、特に「頑張っているのに生活保護より苦しい」と感じる低所得層の視線をもう少し温かくするために、生活保護を受給していない低所得層を、もっと支援する必要があるのではないか。
現在、厚労省は「生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会」を開催しているが、非公開なので内容は不明だ。例えば10月19日に開催された第4回会合ではパソナからのヒアリングが行われたが、資料は公開されていない。しかし、公開されている議事要旨からは、本人の就労意欲を重視していることが読み取れる。いずれにしても、生活保護と就労については、「都市伝説」が多すぎる。
最初に、大切なことを1つ確認しておく必要がある。働いて生活保護から脱却できる可能性がある人、言い換えれば単身者で年収200万円程度の収入を得られそうな人は、何人いるのだろうか。
細かく集計された年次・年度次の最新データが揃っているのは、2016年の生活保護統計だ。とはいえ、生活保護統計から「自分の働きによって、生活保護以上の生活ができそうな人」の人数を見積もるのは、実はかなり困難なのだ。
たとえば「母子世帯」には、母子世帯も父子世帯も、両親以外の大人が子どもを育てている世帯も含まれる。いずれにしても、子どもと同居している大人の健康状態や年齢は顧られない。生活保護で言う「母子世帯」であるということが意味するのは、「子どもがいて、両親の片方または両方がいない」ということだけなのだ。
生活保護で暮らす母子世帯の世帯主は、病気や障害を抱えているかもしれない。また、子どもが障害や病気を抱えており、大人が容易に働けない状況にあるのかもしれない。公式統計では、「母子世帯」が「死別」「離別」「その他」に分類されているが、その世帯の大人が働けるかどうかを示す指標ではない。
まず単純に、年齢に注目しよう。生活保護で「働ける」とされるのは64歳以下だ。しかし、生活保護で暮らす人々の平均年齢は56.8歳なのだ。「働ける」残り時間は、約8年ということになる。
生活保護受給者で「働ける人」は
実際にどれくらいいるのか
もっとも「平均=典型」と言えるかどうかは、一般的に疑わしい。せめて、平均ではなく中央値に注目すべきだろう。ところが、公開されている統計データから中央値を推測すると、60〜64歳の範囲にある。62歳なら「働ける」残り時間は3年だ。
2016年は約211万人が生活保護で暮らしていたが、「働ける」とされる20〜64歳の人々は約85万人だった。このうち約46万人は50〜64歳だった。「働けるはずなのに」と叱咤激励しても、あまり意味がなさそうだ。
「努力すれば、就職はそれほど難しくないはずだ」と言えるのは、20代・30代であろう。同年、生活保護で暮らしていた人々の中に含まれていた20代は約6万人、30代は約11万人であった。合わせて17万人。20代・30代で「若いから働けるはずだ」と考えられる人々は、生活保護で暮らす人々の8%に過ぎなかったことになる。
さらに年代別に見てみると、40代が23万人、50代が34万人である。この世代に関しては、「失われた20年」「ロスジェネ」「バブル崩壊」「リーマンショック」といった時代の波を考えざるを得ない。
そこに、一度失敗すると再起が困難な日本の就労状況の影響も重なる。60代は、60〜64歳だけで20万人だ。50代で失職して生活保護を必要とする状況になったら、就労努力を重ねても安定した雇用は得られず、アルバイト収入を得て保護費を少なく受け取るのが精一杯のまま60代を迎え、やがて65歳の高齢者となるのは、自然の成り行きかもしれない。
「働けるはず」と言える人が
実はほとんどいない生活保護の世界
次に「単身者かどうか」に注目しよう。単身の人々と、育児や介護を担っている人々では、同じ「男性でやや不健康な55歳」であっても、就労を開始したり転職したりするにあたっての制約が全く異なるはずだ。
2016年、生活保護世帯は約160万世帯であった。単身世帯は約127万世帯で、約80%を占めていた。高齢化と単身化が同時に進行しているのは、日本全体に見られる傾向だが、特に生活保護世帯が時代を「先取り」していると言えるかもしれない。
127万人の単身者たちのうち、20〜64歳は約51万人、20代と30代に限定すると約6万人だった。20代・30代の単身者は、生活保護で暮らす210万人の約3%に過ぎなかったことになる。
就労には、多様な意義がある。自分の生み出した仕事の価値が認められて報酬を得ることは、社会とつながる重要な回路の1つだ。就労により生活保護から脱却することの価値は、「保護費を減らし、国と地方の財政に貢献する」ということにとどまらない。しかし、年齢別に見ていくと、生活保護で暮らす若い人々が就労によって生活保護を必要としなくなったとしても、保護費の削減はあまり期待できなさそうだ。
その上に、障害・病気・負傷が重なっているかもしれない。本人の状態を考慮すると、生活保護で暮らす人々の3%にあたる20代・30代の単身者6万人のうち、実際に「働ける」状態にある人々はいったい何人いるのだろうか。
生活保護で暮らす人々の中に含まれている「働ける」人々は、もともと非常に少ない。したがって、就労指導を強化しても生活保護を必要とする人々は減らず、保護費削減にもつながらない。これが実態だ。
単身者で最大3万円程度の労働収入
生活保護から抜け出す気になるか
ここで、冒頭の3つの問いに答えよう。
1番目の問いは「働いても収入が増えない「収入認定」の仕組みが、生活保護からの脱却を妨げているのではないか」というものだ。
生活保護はあくまでも「健康で文化的」な最低限度を保障する制度なので、生活保護の下では、「最低限度」以上の生活はできない。このため、生活保護費以外の収入がある場合には、「収入認定」され、同額が生活保護費から差し引かれる。
働いて得た賃金の場合は、「働き損」にならないように、まず働くことに対する必要経費がカバーされる。さらに、本人の可処分所得が若干は増える。とはいえ、単身者の場合の最大で、増加分は3万円程度だ。それでも、「モチベーション下がりまくり」と嘆息しながら正直に収入を申告しなければ、不正受給となる。ちなみに、不正受給のうち最多のパターンは、就労申告を隠したり少なく申告したりするものだ。
2番目の問いは、「生活保護から脱却すると、社会保険料や医療費の自費負担によって、かえって生活が苦しくなる。この問題を解決する必要があるのではないか」というものだった。
この問題への回答は、2013年に「就労自立給付金」として制度化されている。生活保護の下で就労している場合、就労収入の多くは前述のとおり「収入認定」されるのだが、その分を仮想的に積み立てておき、保護脱却時に一時金として給付するというものだ。
ところが、そもそも対象者がいない。背景は、「そもそも、働いて生活保護を脱却できそうな人がいない」ということだけではない。この制度が前提としているのは、安定した収入が得られる状況が継続、言い換えれば一定の金額を「収入認定」できる期間が継続するということなのだが、その前提は成り立たないことが多いのだ。
たとえば、「生活保護で暮らし始めて、すぐ就職に成功して脱却した」という場合、積立期間がないため給付金の対象にならない。それでも2016年、約1万人が生活保護から脱却して「就労自立給付金」を受け取ったが、厚労省によれば、その1万人は就労によって生活保護から脱却した人々の40%に過ぎなかった。
生活保護基準を引き上げれば、就労した場合に手元に残せる金額も増える。収入申告した場合に手元に残る金額を同時に引き上げれば、「働いたら生活が豊かになった」という手応えが大きくなるだろう。すると、預貯金が容易になる。効果が疑わしい給付金よりも、より効果的に就労意欲を高められるのではないだろうか。
頑張る低所得層を助ける仕組みも
やはり生活保護基準の引き上げから
そして最後の問いは、「世間、特に『頑張っているのに生活保護より苦しい』と感じる低所得層の視線をもう少し温かくするために、生活保護を受給していない低所得層をもっと支援する必要があるのではないか」というものだ。
確かに、その通りだ。しかし、この問題に対する解決策も、まずは「生活保護基準を引き上げる」ということになる。生活保護基準を引き上げれば、連動して最低賃金が引き上げられるからだ。
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さらに、低所得層に対する社会保険料や医療費の自己負担を減らす必要がある。税の減免対象であるはずの低所得層から、実質的に税である社会保険料を徴収するから、「働いて納税しているのに、生活保護より苦しい生活」という倒錯が生まれてしまうのだ。
社会保険料や医療費の自己負担を減額・免除する制度は、一応は全国的に存在する。しかし、必要とする人々が誰でも使えるようにわかりやすく説明している自治体や、申請を容易にしている自治体は、現在のところは「日本のふつう」ではない。
2018年は、生活保護に関して明るいニュースがほとんどないまま終わろうとしている。日本の残念すぎる実情を変えていかなくては、課題問題が濃縮されがちな生活保護の世界は明るくなりようがないだろう。
それでも、「自分が少しだけラクになりたい」という思いを、「ついでに生活保護の人々も」と広げていくことはできるだろう。そして、厚労省が非公開で続けている生活保護と就労支援の研究会に関心を向けよう。もしかすると、それは自分を救う近道になるかもしれない。
(フリーランス・ライター みわよしこ)
https://diamond.jp/articles/-/189205
ビジネス2018年12月21日 / 17:46 / 1時間前更新
財政健全化へ社保改革継続、岡本財務次官「着実な経済成長も必要」
1 分で読む
[東京 21日 ロイター] - 財務省の岡本薫明次官は21日、ロイターニュースメーカーで講演し、社会保障改革を継続することが財政健全化で最も重要との認識を示した。着実な経済成長を図る中で健全化を進める必要があるとの認識も示した。
政府がこの日閣議決定した2019年度当初予算案は、消費増税対策2兆円と合わせて101兆4564億円と、初めて100兆円を超えた。岡本次官は「消費増税に対して十分な対応を行って、経済への影響を抑える」と、当初予算案の編成の狙いを語った。
19年度予算案では新規国債発行額を9年連続で減額しており、財政健全化も進める内容との認識も示した。
19年10月に予定されている消費税率10%への引き上げに関しては「消費税は安定的な税収で、日本の歳入構造の安定化に資する」と語った。さらなる増税については「今後の社会保障改革をしっかり進めていく中で検討すべき」と述べた。
また、物価安定目標2%の実現に向け、「デフレ状態からは抜け出しているが、物価2%目標に(達するには)はさらなる努力が必要」との見方を示した。
その上で、政府・日銀の共同声明に関し「財政健全化を進めていかないと、金融政策との整合性がとれなくなる」と語った。
https://jp.reuters.com/article/okamoto-idJPKCN1OK0SX
ビジネス2018年12月21日 / 16:06 / 1時間前更新
インタビュー:
市場は神経質な反応、経済の足元しっかり=財務次官
2 分で読む
[東京 21日 ロイター] - 財務省の岡本薫明次官は21日、ロイターのテレビインタビューに応じ、長期金利低下や株安など直近の市場の動きについて、米中貿易摩擦や米利上げを受け、非常に神経質な反応となっているとの認識を示した。
ただ、日米は足元で経済指標がしっかりしており「これからの経済政策で流れをしっかりと作っていくことが大事」と述べた。
長期金利の低下については「金融政策の流れの中で、長期金利が非常に低い水準になっていることは確か」とした上で「これが、金融機関の収益が厳しい状況の要因になっていることはその通り」と語った。
デフレ脱却の時期については「どの時点か言うことは非常に難しい」としながらも、「いろいろな良い動きが出てきている中で、これを好循環につなげてしっかりとした状況を作っていく」と述べた。
岡本次官は「すでにデフレと言う状況ではなくなっている」と指摘。日本経済は、アベノミクスの政策効果で企業収益や雇用情勢が改善するなど「良い流れになっている」とし、来年度予算を含む政策をしっかりと進めることで、デフレ脱却につなげたい考えを示した。
政府は、デフレ脱却を判断する4つの指標として、消費者物価指数(CPI)、GDPデフレータ、需給ギャップ、単位労働コストを挙げている。
税収で国債費を除く政策経費をどれだけ賄えるかを示す国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、2025年に黒字化する目標を掲げている。
岡本次官は、経済回復に伴って税収が上向きとなる中で、高齢化に伴う社会保障費の伸びを抑制する努力をすることで、プライマリーバランスは着実に改善してきていると指摘。「税収増加がプライマリーバランスの改善、公債発行の抑制につながっており、来年もつなげて行きたい」と述べた。
また、来年の消費税率引き上げや3年間で行う社会保障改革をしっかり行うことで「2025年のプライマリーバランスの黒字化をしっかりと目指したい」とした。
2019年10月には消費税率を現行の8%から10%に引き上げる予定。現状、消費税率を引き上げられる経済環境にあるかどうかを問われ「足元はしっかりとした動き。緩やかな回復基調にあるとみている」と述べた。安倍晋三首相は、消費増税は「リーマン・ショック級の出来事がない限り、予定通り行う」としている。
さらなる消費税率引き上げの必要性について岡本次官は「3年間の社会保障改革をしっかりと行うことで、給付と負担のバランス、保険料をどう考えるかで、今後の議論になってくる」と述べた。
日本企業のコーポレートガバナンスについては「近年、格段に進んできている。グローバルに評価される流れに沿ったものになってきている」と指摘した。
*見出しを修正しました。
清水律子
https://jp.reuters.com/article/market-trend-interview-idJPKCN1OK0IS
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