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日産ゴーン逮捕、東京地検特捜部へ世界から批判…西川社長ら「逮捕なし」は不自然
https://biz-journal.jp/2018/12/post_25989.html
2018.12.20 文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授 Business Journal
東京地方検察庁特別捜査部が設置されている中央合同庁舎第6号館(「Wikipedia」より/F.Adler)
日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の金融商品取引法違反での起訴は、理解できるが、奇妙なことがひとつある。株主にとって重大な同法違反は、本連載前回記事で述べたように、貸借対照表と損益計算書の虚偽記載だろう。最近でいえば東芝の決算粉飾事件があるが、2014年度決算での粉飾額は2248億円といわれている。ゴーン氏の90億円とは桁が違う。
しかし、東芝の粉飾にかかわった3代の社長は逮捕されていない。一般の社会通念からすると、東芝の社長が逮捕されず、ゴーン氏が逮捕されるのは、すんなりとは納得がいかないのではないか。そのため、アメリカやフランスでは、この点が理解できないと指摘されている。
遅ればせながら東京地検特捜部は12月10日、虚偽記載が長期にわたるため「両罰規定」を適用し、日産の法人としての責任を問う必要があると判断して、日産を起訴した。しかし、ゴーン氏を先に逮捕して、その後で日産を起訴するというのは適切なのであろうか。いくら大きな権力を持つゴーン氏とはいえ、個人が長年にわたり、これだけの大企業で有価証券報告書の虚偽記載を行うことができるのだろうか。有価証券報告書の改ざんには、外国人であるゴーン氏とケリー氏だけでなく、総務部や財務部などが協力していた可能性はないのだろうか。
報道にもあるように、証券取引等監視委員会が数年前、ゴーン氏の指示とみられる会社資金を使った不正な投資について、日産側に指摘していたことがわかっている。日産は、ゴーン氏に再三是正を求めたが拒否されたと報じられているが、オーナー企業ならばいざ知らず、一部上場の大企業でこのようなことを個人の判断でできるのだろうか。日産もこの事実を認識していた可能性もある。
また、日産は監査法人から2013年ごろを中心に、オランダの子会社が設立目的である投資に沿った業務を行っているのか、複数回指摘を受けていたという報道もある。つまり、日産は組織として、今回の経緯を認識していたはずである。よって、ゴーン氏の逮捕より日産の立件が先にくるべきではないだろうか。海外の報道では、「不正確な証券取引所への申告は、通例、企業や監査役が責任を負うもの」「ゴーン氏が(日産の)会計部門全体を欺いたというのか」などと、トップ逮捕に至った責任追及に疑義が呈せられている。
監査法人の責任も問われるべきだろう。これで、「連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認める」とした監査法人を罰しなければ、日本では有価証券報告書は信用できないということを国が認めるようなものである。まさか、監査法人も司法取引をしたのであろうか。いずれにしても、日産のガバナンスとコンプライアンスに大きな欠陥があることは否定できないだろう。
■“ゴーン氏独裁”を強調する構図
これまで、日産の責任追及についてあまり言及しなかった特捜部も、日産を追及しないことが難しくなり、「両罰規定」を持ち出して日産も立件したのではないか。今年6月に導入された司法取引制度で、7月に捜査に協力した三菱日立パワーシステムズが不起訴処分となったケースがあるが、日産も司法取引をしていた可能性もある。報道によると、社内の極秘調査チームを指揮したのは、今津英敏監査役といわれている。ゴーン氏が退任後に受け取る報酬額などを記した覚書に、西川廣人社長が署名していたとも報じられている。
日産のガバナンスの中核である監査役と代表取締役社長も問題を認識しているのに、立件されないとすれば、彼らも司法取引をしたということだろうか。ゴーン氏が逮捕された11月19日、西川社長は22時から本社で、一人で記者会見を行い、理路整然と落ち着いて、かつ激しい調子で“ゴーン批判”を繰り広げていたが、事前にゴーン氏の逮捕について準備していたことをうかがわせる。また、代表取締役社長でもあるにもかかわらず、自社の不祥事をまるで他人ごとのように話す西川氏の姿に違和感を覚えた人も多いのではないか。
その後、日産はゴーン氏の会長解任を決定したが、その時点では捜査の結果、ゴーン氏の「不起訴処分」や「嫌疑なし」という可能性を否定できず、解任判断が拙速であったと厳しく批判をされたり、訴訟などの法的な問題に発展したりする可能性がある。しかし、日産はその可能性をないと踏んで、ゴーン氏を非難し、解任した。日産の経営陣には、「自分たちは大丈夫」という確信があったようにみえ、企業として司法取引を行っているとみるのが自然だろう。
ただ、日産が起訴されても、逮捕者は外国人の2人のみで、日本人経営陣の逮捕者はなしという“ゴーン氏独裁”を強調する構図は不自然であり、今後、海外から格好の批判の標的になるかもしれない。
■日産、ガバナンスの欠如が露呈
ここまでの経緯をみてくると、今回の件は当初からゴーン氏の逮捕が目的だったのではないか。
しかし、そもそも金融取引法違反で、司法取引は成り立つのであろうか。虚偽記載の事実は客観的に明らかなので、司法取引の対象となる「捜査協力」が考えられないため正式な司法取引はできないという見解もある。憶測であるが、この背景には、マスコミでいわれているように特捜部が早々にゴーン氏を背任罪か横領罪で立件ができると踏んでいたのかもしれない。
だが、今後は取締役と監査役が個人として、株主から委託された善管注意義務違反を問われるのではないか。日産の起訴に加えて、完成検査での不正が発覚したことも加えて、主に海外の株主の目が、日産のガバナンスとコンプライアンスのレベルの低さに向かう可能性がある。これは、日産をルノーの植民地から解放した英雄でありたい西川社長にとっては“パンドラの箱”であったかもしれない。
事態は企業としてガバナンスやコンプライアンスが機能していない日産を利用したゴーン氏の逮捕の様相を呈してきており、西川社長の思惑と離れて、問題の本質は日産にあることに向かいつつあるのではないか。実際、海外の投資家からみれば、ゴーン氏個人より日産のほうがはるかに大きな問題だろう。それゆえ、「自浄作用がない日産は、通常のガバナンスに基づいてゴーン氏を追い落とすことができないので、特捜部の力を借りてクーデタを起こした」と指摘されるのである。
長きにわたりルノーと連合を組んでグローバル化したと思われていた日産ですら、企業体質は東芝と同じであったという事実は、日本企業のガバナンスとコンプライアンスに対する信頼のいっそうの低下につながる可能性がある。これは、ゴーン氏を解任させることで日産を守ったと考えているかもしれない経済産業省などの政府にとっては、想定外の展開ではないか。
次回は、今回のゴーン氏逮捕に政府は本当に関与していないのかを状況証拠的に検証してみたい。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)
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