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経産省は「ゾンビ救済ファンド」を手放さない
「官民ファンド」はソブリン・ウエルス・ファンドとは似て非なるもの
2018.12.12(水) 阿部 崇
経産省はどんな後継人事案を練っているのか
世間を驚かせた産業革新投資機構の取締役9名の辞任劇。田中正明社長らが不信感を募らせた経済産業省に対する批判もあれば、辞任する経営陣たちの行動に首をかしげる向きもある。産業革新投資機構と経産省、両者の主張が対立しているが、なぜこんな事態に陥ったのか。金融界を長く取材してきた経済ジャーナリストの町田徹氏に、問題の根源を聞いた。(JBpress)
「官民ファンド」は血税と借金でバクチを打つようなもの
――産業革新投資機構(JIC)で、田中正明社長をはじめ取締役9名が辞任しました。原因については「経産省が一度は示した高額報酬の約束を反故にしたからだ」「いや、経産省の変心により、JIC設立の理念を貫くことが難しくなったからだ」などと様々な見方が出ていますが、町田さんはどう分析されていますか。
町田徹氏(以下、町田) まず言っておかなければならないことは、JICのような「官民ファンド」は、そもそもその存在からして好ましくないということです。
日本の官民ファンドを、中東諸国やロシアのような資源大国の政府系ファンド「ソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)」と同列に論じる人もいますが、これは大きな間違いです。
SWFとは、クウェートやサウジアラビアのような石油や天然ガスで稼いだ莫大な資金を原資に、国の将来に備えて大事に運用しようというものです。
それに対して、日本の官民ファンドが運用するのは公的資金、いわば血税です。産業革新投資機構も「官民ファンド」とはいいながら、出資金3000億円のほぼ100%が政府出資。さらにおよそ1兆8000億円は政府保証付きで民間から借金することができる建て付けになっています。つまり、国民の血税に、さらに民間からの借金をつぎ込んでバクチを張るみたいなもので、そもそもその存在自体、筋が悪すぎると言うべきでしょう。
――JICの前身である産業革新機構は、経営難に陥った企業の救済に使われたことで、批判を浴びていました。
町田 もともと運用能力もないのです。だから産業革新機構は、大手電機メーカーのディスプレイ部門を結集させたジャパンディスプレイの設立に深くかかわるなど、破たん寸前の問題企業の救済にせっせと注力してきた。他の官民ファンドだって、JAL救済に利用されたりと、「国策救済」のツールになってきたわけです。能力がないうえ、筋違いのことにおカネを流用するのですから、運用の結果が良好なはずはありません。
特に今回、9名の取締役が辞任したJICは、旧産業革新機構から分離した株式会社INCJを傘下に置き、さらに政府は、やはり官民ファンドの1つ、クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)をJICと統合させようとしていました。
INCJもクールジャパン機構も、運用の中身を検証されたら、かなり悲惨な内容になっているはずです。つまり、産業革新機構を産業革新投資機構に衣替えし、そこにINCJやクールジャパン機構をひっつけるような複雑な構造にしようとしたのは、その運用実態を検証させないようにする政府の狙いがあったと私は睨んでいます。
日産取締役会、ゴーン会長の解任を決定 全会一致で
仏パリでフランスのブリュノ・ルメール経済・財務相(左)と会談した世耕弘成経済産業相(右、2018年11月22日撮影)。(c)ERIC PIERMONT / AFP〔AFPBB News〕
経産省も田中氏も「どっちもどっち」
――そのことを、社長に就任していた田中さんは知らなかった?
町田 田中さんは、自らも関わった経産省の「リスクマネー研究会」の取りまとめ――これ自体が産業革新機構を産業革新投資機構に衣替えすることを正当化するためのレポートですが――で謳われたような、経産省や財務省がSWF的ファンド作りに乗り出すという「建前」を鵜呑みにしたのかも知れません。しかし、もし田中さんが本当にそう思い込んでいたのなら大甘です。日本政府の本音や性癖を分かっていないと言うしかない。
――そもそもは、取締役の報酬額を巡って経産省と対立したわけですが、億を超える報酬はファンドの責任者として妥当でしょうか。
町田 田中さんが理想と述べているようなSWFや民間ファンドのような、ファンド運営の仕事を本当にしたいのならば、まずはお金は自分で集めてくるべきだと思います。もっと言うなら、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットさんのように、自分の手金もつぎ込んで、「自分のお金もリスクに晒して命がけで運用しますから、皆さん、どうかお金を預けてください」と訴えるステップも不可欠です。
その運用がうまくいかなければ、お金はすぐに回収されたり、ファンド運営者の首が飛んだりする。そういうリスクが必然的について回るのです。
ところが、そういうリスクを一切取らなくていい立場の田中さんが、政府に用意してもらったお金を運用し、そのうえ日銀総裁をもはるかに上回る高額報酬がもらえると。そんな都合のよい話はないのです。
だから今回の騒動を見ていると、経産省も田中さんたちも、どっちもどっちという感想しかありません。
――田中氏は辞任会見で、「(辞任する取締役は)誰一人としてお金のためにここに来ていない。仮に当初提示された報酬額が1円だったとしても来ていたと思う」と述べています。
町田 本心でそう思うのだったら、11月24日に嶋田隆次官から「高額報酬は認められない」と告げられた後に、JICの取締役会で「報酬は1円」と決めればよかったと思います。9月に一度文書で提示された報酬額に基づいて、JICの取締役会で決議した内容を、急に経産省が白紙撤回したから法治国家ではない、なんて言っていますが、どう考えたってそんな議論にはならないと思います。許認可なんてそんなものです。役所の方で「調べてみたら適当じゃない部分があったからやっぱりダメ」というのが許認可の世界でしょう。
後任はゾンビ救済ファンドに協力的な人物?
――JICにはまだ存在意義はあるのでしょうか。
町田 僕自身は、こんなものさっさと潰した方がいいと思っています。でも、経産省はそう思わないでしょう。
そもそも田中さんたちが辞めることになったのも、形の上では本人たちの意思による「辞任」ですが、実態はむしろ、経産省側が「何が何でも」という形で切り捨てたというのがより正確ではないでしょうか。
というのも、さっきも述べたように、JICは産業革新機構などの過去の失敗を海の奥底に沈めておくためのファンドだったのです。だからそこから分離したINCJをぶら下げるような二重構造まで作った。そこには乱立するファンドを集約して整理するという大義名分もあるでしょうが、実態は、これまでの失敗を糊塗するためのスキームじゃないでしょうか。
ところが田中さんたちは、新たなに同じようなファンドを二重、三重にぶら下げて、そこに海外ファンドの金や民間の金も入れて、ガンガン運用して、ディスクロージャーにしてもこれからガラス張りでやっていきます、という方向で動いていた。そんなことをされたら、これまでの損失を隠すためのスキームが破綻しかねず、経産省も黙ってみていることはできなくなった。経産省的に言えば、完全な「人選ミス」ということになります。そこで「だったらいっそ、クビを切れ」という判断に傾いた。それが今回の真相ではないかと思っています。
結局、高邁な理想を掲げても、役所はゾンビ企業の救済ファンドを持っていたい。だから田中さんらが辞任したいま、恐らく経産省にとっての目下の急務は、新たな経営陣として、国策ゾンビ救済ファンドに協力してくれる物わかりの良い人材を確保することだと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54933
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- 異常事態。産業革新投資機構の役員退陣を新聞各紙はどう伝えたか 産業革新投資機構は閉鎖せよ JIC大混乱 辞任コメント うまき 2018/12/12 13:58:54
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