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コラム2018年11月29日 / 16:12 / 10分前更新
カリスマ経営者の「ゴーン化」を防ぐ方法
Edward Hadas
3 分で読む
[ロンドン 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1970年代のベストセラー「タイプA 性格と心臓病」という本は、心臓疾患は「攻撃的で、より短時間で多くのことを成し遂げようと常にもがいている」タイプの人に起こりやすいと主張した。
その後、心臓疾患との関連性については疑問が呈されるようになっているが、「タイプA 性格と魂」というタイトルだったならば、多くの経営者に当てはまるのではないか。多国籍企業の最高責任者だったカルロス・ゴーン容疑者は、その最たる例だ。
現在は日本の拘置所で勾留されている64歳のゴーン元日産自動車会長は、究極の「タイプA」行動パターンだ。
仏自動車大手ルノー(RENA.PA)、そして日産自動車(7201.T) という、経営危機に瀕した2つの巨大企業のトップとして、夜もよく眠らず、それぞれの企業や産業界のタブーをエネルギッシュに打ち破り、経営を立て直した。実業界を舞台にしたアクション映画のヒーローにでもふさわしい「コストキラー」というあだ名まで手中にした。
だがゴーン容疑者は、大胆すぎたようだ。
年20億円程度だった日産からの報酬を、過少申告した容疑が持たれている。日本メディアによると、レバノンやブラジルにおける自宅用不動産の購入に会社資金を流用したなど不適切な行為もあったという。
勾留中のゴーン容疑者は、自らの疑惑について公の場で発言していない。だが、仮にルールを何も破っていなかったとしても、今回の事件は、大きな成功を収め、世界的な名声を得て巨額の富を手にした経営者が、大半の人の目には異様に映る高額報酬よりも、さらに多い金額を自分は受け取って当然だと考えていたことを示した。
輝かしい経歴に、惨めな終止符が打たれたように見える。運命の突然の暗転は、ゴーン容疑者を悲劇のヒーローにしてしまうかもしれない。偉大な人物だが、その偉大さは、重大な人格の欠陥と切っても切り離せない。
成功を収めた経営者が、偉大さと大きな弱点を併せ持っていることは珍しくない。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)のジャック・ウェルチ元最高経営責任者(CEO)からハリウッドの大物プロデューサーだったハーベイ・ワインスタイン氏まで、それぞれの業界で最もダイナミックで大きな成功を収めた経営者のキャリアには、過剰報酬や性的威圧、無謀なリスクテークなどの汚点が付いて回っている。
この悲劇的な呪いは、職業上の強みと密接な関係にある。不安定な自信と物事を達成させる飽くなき欲望が、凝り固まった企業の通例を打破し、企業文化の再構築を成し遂げる原動力となる。
だがそれは時に、聖書で言うところの「肉の欲、目の欲、生活のおごり」、すなわち過度のセックスや金、権力への欲望を満たすための不適切な努力にもつながる。
言い換えれば、当初は会社組織で成功をもたらす「タイプA」の突出した部分は、昔ながらの個人的な「罪」へと簡単に脱線する。これは、会社組織だけの問題ではない。何千年もの間、権力は支配者を腐敗させてきた。しかし、神とほぼ同等とみられていた皇帝や王は、下々と違う行動をしても許されたため、罰を受けずに済むことが多かった。
企業のトップは、「長」と「執行役」の不安定なハイブリッドだ。王族のような報酬を受け取り、敬われるが、他の従業員と同じルールに従い、自制することも求められる。「タイプA」の性格は、「長」としての職務の助けにはなるが、善行とは相いれない部分がある。
企業には、ゴーン容疑者のようなスキャンダルを防ぐための防波堤が4つある。それぞれが強力に保たれなくてはならない。
まず第1に、企業内の手続きだ。すべての社員と同様に、CEOにもその決定を社内の委員会に諮り、監査証跡を残して職務規定に従うことが求められる。こうした仕組みが完全に機能することはまずないが、それがなければ、倫理面で「心停止」に見舞われる「タイプA」経営者はずっと多くなるに違いない。
それでも、例えば定期的な個人監査や、内部告発者が直接取締役会に通報できる仕組み作りなど、より手厚い官僚的なチェックを導入することが効果的だろう。
次に、取締役会だ。強いボスが、弱気な「タイプB」ばかりを取締役に起用し、やりたい放題やることは、よくある話だ。強く慎重なタイプの人間が規律に目を光らせていない限り、自制心のないボスが不適切な行動に出る可能性は高まる。CEOを監督するための、真に独立した役員で構成される特別委員会設置が有効かもしれない。
3番目の防波堤は、トップ自身の良心だ。成功を収めた「タイプA」の人物は、非常に説得力がある場合が多い。高額報酬でも自身の特別な貢献には見合わない、と自分自身を納得させることができる。
有益な自戒を呼び覚ますのは難しいが、例えば瞑想などの精神的修行を義務付けることが役立つかもしれない。または、過去の絶対君主のように、厳しい真実を告げる許可を与えられた「お抱え道化師」が必要なのかもしれない。
最後に、懲罰だ。恐れが、言うことを聞かない心を抑えてくれるかもしれない。1人や2人の経営者が投獄や財産喪失などの不名誉に陥ったとしても、多くの自己中心的な人間はへこまない。自分達は普通と違う基準で判断されるべきだとする彼らの自信は、驚くほど強固だ。とはいえ、CEOの報酬が増加するにつれ、罰を受けるCEOは減少した。これにより、倫理的な誤りがより起きやすくなっている。
これら4つの防波堤に共通するのは「不信」だ。部下や取締役、株主や検察が、「この経営トップは職務で不可能なこと成し遂げ、奇跡を起こした」などと考えなければ、悪行に対する耐性は下がる。そうなれば、未来のコストキラーや起業家も、魂を滅ぼさずに済むだろう。
Renault SA
61.98
RENA.PAPARIS STOCK EXCHANGE
--(--%)
RENA.PA7201.TGE.N
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/global-markets-breakingviews-idJPKCN1NY0N0?il=0
トップニュース2018年11月29日 / 15:22 / 31分前更新
焦点:
ルノー日産連合の危機、元凶はマクロン大統領の介入主義
3 分で読む
[パリ 28日 ロイター] - カルロス・ゴーン容疑者の逮捕を機に、日産自動車(7201.T)は再度ルノー(RENA.PA)支配からの脱却を試みようとしており、マクロン・フランス大統領は新たな悩みの種を抱えることになった。しかしこの問題はマクロン氏の「身から出たさび」と言えるかもしれない。
2015年4月、当時経済相だった37歳のマクロン氏は、政府によるルノー株買い増しという驚きの命令を下した。国の議決権倍増の是非が問われる同月末の株主総会で、倍増を確実にするための工作だ。一夜にして下されたこの命令が、ルノー日産連合の日産側に深刻な波紋を広げる。
その後8カ月にわたるマクロン氏側と当時日産ナンバー2だった西川廣人現社長との闘いが、今日の危機の種をまいたと多くの関係者はみている。
「マクロン大統領自身がどっぷりと関わっている」と語るのは資産運用会社アライアンスバーンスタイン(ニューヨーク)のアナリスト、マックス・ウォーバートン氏。2015年の決断が「最終的にフランス政府の支配下に組み込まれてしまう」という日産側の危機感に火を付けたことを、マクロン氏は認識すべきだという。
昨年大統領に就任したマクロン氏は現在、街頭デモや過去最低の支持率に見舞われている。同氏の大胆な介入主義はかつては新鮮に映ったが、ルノー日産連合の危機を契機に、その負の側面に注目が集まるかもしれない。
マクロン氏が政府保有ルノー株の拡大に動く前年、当時のオランド大統領は「フロランジュ法」を定めていた。これは全上場企業について、株主投票により適用除外(オプトアウト)を選択しない限り、フランス政府など長期株主の議決権を2倍にするものだ。
<急襲>
マクロン氏は2014年末から数カ月にわたり、ゴーン氏とルノー取締役会に対し、翌年4月30日の株主総会でオプトアウトを提案しないよう説得を続けたが、ルノー側は首を縦に振らなかった。政府の持ち株比率は15%、議決権はそれを小幅に上回る比率だったため、政府は株主投票で負ける公算が大きかった。
そして4月7日の夕方、マクロン氏からゴーン氏に「礼儀上の」電話が入る。政府がルノー株を4.73%買い増したこと、そして翌朝にはそれを発表し、オプトアウト案を否決に追い込んだ後に買い増し分を売って持ち株比率を15%に戻すことを告げたのだ。
これについては、マクロン氏の批判派も称賛者も口をそろえて政府による前代未聞の「奇襲」だと言う。くすぶりつづけていたゴーン氏とマクロン氏のエゴのぶつかり合いが、この時爆発した。
マクロン氏は周囲の警告をよそに事を進め、オプトアウトを否決に追い込んだ。これによりフランス政府は事実上、ルノーの「可決阻止少数」株主となった。そのルノーは日産株の43.4%を保有して株主総会を支配している。
東京は殺気立った。日産は取締役会の構成や資本関係などに関する協定(RAMA)からの離脱をちらつかせる。離脱すれば自身より小規模な親会社ルノーの株式を自由に買うことができるようになり、ルノー支配を覆せる。
西川氏は2015年9月3日付のルノー取締役会宛ての書面で「連合の信頼の基礎であるルノーのガバナンス、ひいてはルノーの自主的経営に重大な影響が及ぶだろう」と告げている。書面はロイターが入手した。
日産の広報担当者はこの記事へのコメントを控えた。
西川氏はルノーに対し、日産の支配株を売却し、日産が保有するルノー株15%の議決権を元に戻し、連合に対する支配を放棄するよう求めた。しかしマクロン氏のスタッフは当初、ゴーン氏が振り付けたものだと考えてこれを無視する。
フランス政府の株式保有を管轄していた機関の高官は当時「ゴーン氏が日産と日本側の考えを語るとき、彼は自分の考えを語っているのだ。私からすれば全部たわ言だ」と話していた。
<見誤ったマクロン氏>
3年後の今、ゴーン氏は逮捕されたが、日産は再び同様の要求を突き付けようとしている。
元フランス政府高官の投資銀行バンカーは言う。「専門用語も言い回しも語彙も、2015年とほとんど同じだ。日本の立場を代表しているというゴーン氏の話をわれわれは信じていなかったが、本当に彼の作り話ではなかったことが分かった」
Nissan Motor Co Ltd
984.7
7201.TTOKYO STOCK EXCHANGE
+13.20(+1.36%)
7201.TRENA.PA7211.T
マクロン氏がルノーと日産の完全合併を求めて圧力をかけたことも、逮捕劇の数カ月前から日本側を警戒させていた。
両社と三菱自動車(7211.T)の首脳は29日夜、今後の連合の在り方を協議する予定で、主導権を巡り日仏の確執が深まる恐れもある。そうした中、ルノーはマクロン氏が結んだもう1つの合意に手足を縛られている。
日産が連合を離脱する可能性を巡り緊張が高まっていた2015年末、フランス政府は大半の非戦略的決定に関してルノーの議決権を18%に制限することに合意した。
マクロン氏が支持したこの「安定」合意には、ルノーが日産の株主総会で取締役会に反対しないとの拘束力のある約束まで盛り込まれている。これは主導権争いのハンデだ。
パリの議決権行使助言会社プロキシンベストのロワ・ドゥサン最高経営責任者(CEO)は「ルノーは主要な資産に対する権利を放棄したも同然だ」と指摘。「彼らはもうすぐ、交渉力が損なわれたことに気付くだろうが、もう手遅れだ。連合のパワーバランスは既に覆された」と述べた。
<気もそぞろ>
当時の判断について当時のある閣僚は、マクロン氏が大統領選をにらんで政党「共和国前進」の立ち上げ準備を進めていた時期にあたり、そちらに気を取られていたようだと振り返る。同党のウェブアドレスが登録されたのは2016年1月7日。ルノーと日産が合意を結んでから4週間も経っていなかった。
この元閣僚は、ゴーン氏にも2015年の闘いをエスカレートさせた責任の一端があると言う。
「ゴーン氏は、閣僚らより自分の方が上だという鼻持ちならない自信を持っていた。話し相手としては首相しか念頭になかっただろうから、やはり自分の偉さを重々認識しているマクロン氏には気に入らなかっただろう」
(Laurence Frost記者 Michel Rose記者)
https://jp.reuters.com/article/renault-nissan-macron-idJPKCN1NY0HD?il=0
2018年11月28日 ダイヤモンド・オンライン編集部
ゴーン不正の実態を会計から読み解く…金商法違反、脱税、特別背任
八田進二・青山学院大学名誉教授に聞く
有価証券報告書への報酬未記載や、住宅などさまざまな個人的利益を日産から受けていたといった報道が連日出ているゴーン容疑者。これらは果たして、どの程度の罪になるのか。また、ゴーン容疑者以外の日産経営陣の責任はどう考えるべきなのか。会計の専門家で、青山学院大学名誉教授の八田進二氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)
<論点1>
「退任後の報酬」は記載すべきか?
ゴーン容疑者の不正を会計視点で読み解きます
驚くような不正の数々が明らかになってきたゴーン容疑者。今後一体、どんな罪に問われていくのだろうか? 写真:ユニフォトプレス
――ゴーン容疑者の逮捕容疑は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)。2010年から5年間にわたって毎年、役員報酬の約10億円、合計50億円を記載しなかったというもので、その後の3年間(30億円)分も合わせて80億円になるとの見方もあります。
高額な報酬という批判を避けるために、毎年の役員報酬20億円のうち、半分の10億円を「退任後に受け取る」という契約にし、その年の有価証券報告書には記載しなかった、ということのようですが、原則としては、これはアウトです。「退任後なら、役員退職慰労金扱いであり、今は記載する必要はないのでは」との見方もあるようですが、役員退職慰労金とは在任年数などを勘案して、退職時に決めるものです。「2010年は10億円、2011年も10億円」といった具合に毎年、金額を決めて契約していたのなら、それぞれ当該年に会計処理すべきです。
ただ、この約束が単に「それくらい払うよ」という、一種の希望的観測じみた効力しかないようなものならば記載の必要はない、という解釈もなくはない。その辺りは、会社がどういった処理をしているかを、詳しく見ていかなければ分からないでしょう。
――さらに、株価に連動した報酬を受け取れる「SAR(ストックアプリシエーション権)」も約40億円分、開示しなかったとされています。
次々に明らかになっていることを一言でいうと、ゴーン容疑者は会社の財産をほしいままにしてきた、ということです。検察は最終的には特別背任を狙っているのではないかと思います。
ただし、特別背任は検察側が越えるべきハードルが高いのも事実。どういう意思決定プロセスを経ていたのか、本当にほかの取締役は一切知らなくてゴーン容疑者の独断なのか、などといったことをきっちり詰めて行かなければいけませんから、相当時間がかかるだろうと思います。
<論点2>
「住宅の無償供与」は脱税行為にもなる
八田進二/青山学院大学名誉教授・大原大学院大学会計研究科教授
慶應義塾大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(プロフェッショナル会計学)。 駿河台大学経済学部教授、青山学院大学経営学部教授、同大学大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、青山学院大学名誉教授。2018年4月より、大原大学院大学会計研究科教授。他に、日本監査研究学会会長・日本内部統制研究学会会長・会計大学院協会理事長・金融庁企業会計審議会委員(内部統制部会長)等を歴任。また、複数の企業等の社外監査役および監事を務めている。 《主な著訳書》 『公認会計士倫理読本』(財経詳報社)、『「逐条解説」で読み解く 監査基準のポイント』『逐条解説 内部統制基準を考える』『会計プロフェッションと監査』『会計・監査・ガバナンスの基本課題』『会計のいま、監査のいま、そして内部統制のいま』『会計人魂』『COSO全社的リスクマネジメント』 (以上、同文舘出版)『会計プロフェッションの職業基準』『開示不正―その実態と防止策―』『21世紀 会計・監査・ガバナンス事典』(以上、白桃書房)、『決定版COSO不正リスク管理ガイド』『内部統制の統合的フレームワーク−フレームワーク篇、ツール篇、外部財務報告篇』(以上、日本公認会計士協会出版局)、他多数。
――さらに、今回の逮捕容疑には入っていませんが、オランダの子会社を通じてレバノンやブラジルに高級住宅を購入させたり、挙げ句の果てには家族旅行の費用や、娘の大学への寄附金などを日産に出させる、姉との不正なアドバイザリー契約を結んで年10万ドルを支払うなど、明らかに私的な出費も日産に負担させていたようです。会計的には、これらはどのような問題だと捉えられるでしょうか?
会社名義で従業員が私的利用するもの、たとえば社宅などを買って提供するというのは、いわゆるフリンジベネフィット(福利厚生費など、会社規定による付加的な報酬の総称)です。しかし、ゴーン容疑者が独占的に使い、かつ家賃などを一切払っていないのなら問題です。家賃相当額は給与と見なすべきなのです。当然課税対象になりますから、ゴーン容疑者はここで脱税をしていたということになります。
家族旅行費用や姉への報酬、娘の学校の寄附金といった類いも、実質的な給与と考えるべきです。いずれも事業目的とは無縁なので、経費に認められるわけがありません。これは不当な支出であり、背任とも言える、違法性の高い話でもあります。
<論点3>
会社側はどの程度悪いのか?
――独裁者として君臨するゴーン容疑者を駆逐するため、日産の役員たちが立ち上がったクーデターである、との世論醸成がされている印象もありますが、やりたい放題の独裁者をこれまで支えてきた日産経営陣にも大きな責任があるのではないかと感じます。
両罰規定が適用されるだろうと思いますが、日産の取締役会、さらに監査役にも大きな問題があります。日産ほどの規模の会社であれば当然、経理・財務はチームで働いています。司法取引に応じた執行役員らがいたわけですが、そのほかの取締役たち、監査役たちは本当に一切、何も知らなかったのか?大いに疑問ですね。歴年にわたって随所で行われてきた不正ですから。断片的であっても、いろいろ耳に入っていたと考えるのが自然じゃないでしょうか。これは取締役会、そして監査役会の機能が果たせていないということです。
また、たとえば今年6月に提出された有価証券報告書には、西川廣人社長名で「当社の第119期(自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日)の有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法令に基づき適正に記載されていることを確認しました」と記載されていますが、西川社長が今回の不正を知ったのは、今年3月だったと報道されています。これが事実なら、なぜ「適正に記載されていることを確認」できたのでしょう?
さらに、ゴーン容疑者解任を決議した取締役会では、ルノー出身の2人の取締役がフランスからテレビ会議で参加したという点も、私に言わせれば大問題です。監視・監督は現地現物であるべきです。でないと、会社の内部監査を適切に行うことなどできない。普段から、グローバル企業の名の下で、こんなやり方がまかり通っていたから、会長解任という一大事に際しても、テレビ会議での出席で済ませてもいいや、という感覚なのでしょう。これは、監査役会の問題です。取締役会の執行がきちんと行われているかどうか、見極めるのは彼らの役割ですから。
もちろん、最大の権限を持つトップ自らが不正を働いた、というのは、非常に食い止めるのが難しい話ではある。日産の不幸だったと言えます。しかし、ガバナンスが緩かったからこそ、ゴーン容疑者は独裁者としてやりたい放題できたのでしょう。私は、取締役たち全員が、ゴーン容疑者とほぼ同罪であると言いたいですね。今年6月に就任した取締役2人は、さすがに責任がなかったかもしれませんが、その他の役員は全員責任がある。特に、西川社長と軽部博CFOの責任は重いのです。
<論点4>
監査法人の責任は?
――日産の監査法人はEY新日本。あの東芝やオリンパスも担当した大手監査法人です。売上高11兆円の大企業ですから、数億円の住宅やゴーン容疑者の姉への年10万ドルのアドバイザリー契約などという少額の不正は、なかなか見抜けなかったのでしょうか?
もちろん、売上高の9割に貢献している事業を重点的に見る、という重要性の基準はあります。ただし、たとえ小さな規模のものであっても、定性的に見て、コンプライアンス違反が潜んでいるんじゃないかと疑わしい、つまり信用できないものがあれば、規模の大小に関わらず、きちんとチェックすべきだというルールになっています。
―― 一部報道によれば、ゴーン容疑者の住宅購入に使われたオランダの子会社「ジーア」は資本金60億円の小さな会社ですが、監査法人は「会社の実態が不透明だ」と指摘したものの、日産側からかわされたようです。
企業の連結ベースでの不正はたいてい、子会社や関連会社、外国事業拠点を通じて行われるものです。そして、この手の不正は、監査法人が疑念を感じたのにもう一歩、きっちり踏み込めていないというケースが多い。新日本は指摘するだけでは役割を果たしたとは言えないのです。2011年に起こったオリンパスの不正事件を受けて、金融庁は2013年に監査基準の改正を行い、疑問を持った際には徹底的に深掘りすべしという旨を盛り込みました。
今回のケースであれば、疑問を投げかけるだけでなく、実際にオランダに行って調査をすべきです。
確かに手間ひまがかかる話ではありますが、EY(アーンスト・アンド・ヤング)のネットワークを活用したっていいわけで、とにかく疑念がある場合にはしっかり調査すべき。会社側のお茶を濁すような釈明に言いくるめられるようではダメなのです。
<論点5>
金額は決して大きくないけれど…
――東芝の不正会計事件は、経営危機に陥るほどのインパクトがありました。日産の一件は、驚くような話ではあるものの、業績に大打撃を与えるような規模の金額ではありません。
会計監査の世界では、「ある情報が間違っていた場合、正しい情報を知っていたとしたら、情報の利用者(投資家など)は違う意思決定をしただろうか?」という点が重要視されます。その意味から言うと、確かに数字的インパクトは小さい。しかし、投資家は数字のみならず、ガバナンスの状況など非財務情報も重要視しているはずです。
ゴーン容疑者がこだわったであろう役員報酬の開示も、投資家は関心を持っています。だから、株主総会では「前期より利益が下がっているのに、なぜ役員報酬は上がっているのか」といった質問が出たりするわけです。つまり、報酬が納得の行く金額であって、かつ正しく開示されているかどうか、ということは、投資家からすればその企業や経営者を信頼できるかどうかという大切なポイントなのです。
2001年に破綻した米エンロンは、巨額の簿外債務があるなどの不正が起きていた一方、経営者は高額な報酬をもらっていました。米国ではエンロン事件後、監査強化やディスクロージャー強化などを盛り込んだSOX法が制定され、経営者の不正は厳罰化。虚偽記載は罰金も強化された上に、経営者は最長20年の懲役が科され、二度と上場企業の役員にはなれません。
日本では2007年に金融商品取引法ができたときに経営者の責任が重くされましたが、それでも最大で懲役10年。これは「軽すぎる」という議論もあります。
過去には長銀や日債銀の経営者がさんざん争った挙げ句に無罪となった事例もあり、東芝の歴代社長の立件に検察が及び腰になった原因だと言われています。検察は日産で失地回復を狙っているのではないでしょうか。しかし、ゴーン容疑者のケースでも、脱税や横領はまだしも、特別背任まで視野に入れるとすると、簡単な戦いではないはずです。
https://diamond.jp/articles/-/186764
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