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金融市場に無傷のセクター見当たらず、投資家の逃げ場ほとんどなし ドイツ銀行株が下げ止まらず 仮想通貨売りに終わり見えず
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/549.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 21 日 20:00:21: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 社会保障費の歯止め見送り、景気最優先 財政危機に警鐘 マイナス利やめた方が景気物価に好影響 日銀金融政策 米利上げ新興国 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 21 日 19:53:15)

金融市場に無傷のセクター見当たらず、投資家の逃げ場ほとんどなし
Lu Wang、Elena Popina、Vildana Hajric
2018年11月21日 12:58 JST
• S&P500種は20日に一時調整局面入り、社債市場も動揺
• 質への逃避は現金への逃避と化したとインスティネットのワイス氏
金融市場にとって今年は、過去50年で突出した厳しい1年となっているが、20日に状況は目に見えて悪化した。幅広く資産全般が軟調となり、投資家の逃げ場がほとんどなくなった。
  株式相場は続落し、幅広い銘柄が売られる中で、S&P500種株価指数は一時高値調整の水準まで下げた。原油は年初来安値を更新。クレジット市場にも動揺の兆しが見え、仮想通貨ビットコインは急落した。一方で米国債や金、円といった従来から安全資産とされる資産は小動きだった。

  2%の株安と6%の原油価格下落、社債相場の下降基調を全て考え合わせると、金融市場は1日の下げとしては2015年以降で最大級となった。S&P500種は今年の上昇分が帳消しとなり、原油価格は1年ぶりの安値に低迷。ジャンク債に連動する上場投資信託(ETF)も14年以降で最悪の下げ局面となった。
  インスティネットのトレーディング責任者、ラリー・ワイス氏は「市場にはまだ『パニック』はないが、大方のトレーダーは売りの勢いがすぐに鈍ると確信できていない。質への逃避はここにきて、現金への逃避と化した。今が資金を投じるタイミングだと説得するのは厳しい」と指摘した。
  幅広い資産クラスが歩調を合わせて値下がりした背景には将来への不安がある。米国株の過去最長の強気相場の原動力となってきた企業利益は、ピークに達したように思われ、トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争も収まる兆しが見えない。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げ姿勢を和らげる気配はなく、利上げが続けば、S&P500種構成企業が過去10年に発行した総額約5兆ドル(約564兆円)相当の社債保有者には悪夢となる。

  キーバンクの最高投資ストラテジスト、ブルース・マケイン氏は「投資に回したい資金は多いが、十分に魅力的な投資先はあまりない。幅広い資産の下落を招いている要因は、リセッション(景気後退)入りするのか、低めだがより持続可能な経済成長が得られるのかという疑念だ」と述べた。

原題:Worst Day of an Awful Year Leaves No Corner of Market Unscathed(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIIV6A6JIJUO01

 
株式投資家は現金の配分増やすべきだ−ゴールドマン
Divya Balji、Joanna Ossinger
2018年11月20日 23:25 JST

Photographer: Bloomberg/Bloomberg
株式投資家は近年、素晴らしい利益を上げてきたが、現金のインフレ調整後リターンがプラスになった現在、リスクを減らすのが賢明かもしれないと、ゴールドマン・サックス・グループが提言した。
  デービッド・コスティン氏らゴールドマンのストラテジストは11月19日のリポートで、「株式へのエクスポージャーを維持しながら、現金の配分を増やすべきだ」とし、「株式との比較で現金が競争力のある資産クラスとなるのは、長年なかった現象だ」と記した。

  米利上げによってマネーマーケット・ファンドの利回りが2%を超え、インフレ率を上回ったことがこうした推奨の背景にある。12月にも0.25ポイントの利上げが見込まれるほか、2019年にも追加利上げが想定されており、現金の妙味はさらに増す公算だ。
  ゴールドマンのストラテジストらは株式について、公益株などのディフェンシブセクターに重みを置くべきだとしている。S&P500種株価指数は来年、「控えめな1桁台の絶対リターン」になると予想。18年に見られた「堅調な」企業利益と経済成長が減速するためだと説明した。
ゴールドマンの分析によるシナリオは以下の通り
• 確率50%の基本シナリオ:S&P500種が今年2850で終了、19年は5%上昇して3000へ
• 確率30%の下振れシナリオ:20年に景気後退に入るリスクが投資家心理の重しとなり、S&P500種は19年を2500で終了
• 確率20%の上振れシナリオ:強い経済成長がさらに長期化し、S&P500種は来年3400で終了
原題:Goldman Says It’s Time for Equity Investors to Boost Their Cash(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHJZH6K50XV01

現金より安全なものなし」−ハイテク株安でシリコンバレーにも不安
Sarah Ponczek、Jeran Wittenstein
2018年11月21日 8:48 JST
• 起業支援のホフマン氏、引き揚げた投資資金を今は現金で保有と説明
• 同氏の不安はハイテク株安がウォール街だけの懸念でないことを示唆

A group of men walks through a public space at Twitter Inc. headquarters.
Photographer: Michael Short
スティーブ・ホフマン氏はおなじみの紫と青の格子柄のシャツで現れ、マイクを握るやシリコンバレーの楽観論を表現。インスタグラム、エッツィ、チェンジ・ドット・コム、フォースクエアと、これまで成長を支援してきた企業の名前を交え、自身の起業支援の実績を宣伝した。
  インキュベーター(起業支援組織)のファウンダーズ・スペースを2011年に創設した同氏の話に聞き入っているのは、20代の聴衆だ。自分たちの夢に賭けてくれそうなベンチャー投資家らに直接会おうと、サンフランシスコのとある会議室に詰めかけた。
  ただ、これより少し前の時点で、ホフマン氏の口調はずっと悲観的だった。実のところ、自身の資金をポンと差し出すことはほとんどしていないという。テクノロジー株はバリュエーションが数十年にわたって高騰しており、このところのナスダック100指数の下落は想定された。公開市場での株売りの動きはますます悪化するばかりで、今度は、高止まりしてきた非公開の新興企業のバリュエーションも押し下げ始めるのではないかとホフマン氏は懸念する。
  「実際、かなり心配している」と同氏。公開市場に投じていた資金の80%と、非公開市場への投資の60%を引き揚げ、今はそれを全て現金で保有していると説明し、「現金より安全なものはない」と語る。
  ホフマン氏が抱く不安は、シリコンバレーの基準で見ればやや極端かもしれないが、新たな現実を浮き彫りにしていることは間違いない。テクノロジー株の急落を心配しているのはもはやウォール街のトレーダーだけではないという現実だ。

  誰もがドットコムバブルの崩壊や2008年のような相場急落に備えているというわけではない。そこまで悲観的なのはホフマン氏などごく一部で、一般的にはそれほどあからさまではない。ベンチャーキャピタル(VC)企業が投資案件の精査にかける日数を数日増やす、あるいは若いプログラマーが100万ドル(約1億1300万円)の住宅購入を保留する、といった具合だ。
  19日までで、テクノロジー株の大半は下落基調が始まって数カ月となる。中でも下げが顕著なのは、7月の最高値から35%下落したネットフリックスや、9月以来24%下げたアマゾン・ドット・コムだ。S&P500半導体・半導体製造装置株指数は6月初めから20%余り下げている。S&P500テクノロジー・ハードウエアおよび機器株指数もこのところ下げがきつい。世界のテクノロジー企業の合計時価総額はこの2カ月半で1兆1000億ドル減った。
  ファウンダーズ・スペースのイベントに出席したエンジェル投資家兼コンサルタントのアレックス・チョンプフ氏は「投資家の楽観論は以前より抑えられている。1年前にはなかったであろう上限が設けられている」と語った。

原題:‘Nothing Safer Than Cash’: Tech Rout Puts Silicon Valley on Edge(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIGUU36VDKHS01?srnd=cojp-v2


 


 
クレジット市場の亀裂広がる、レバレッジドローンからジャンク債まで
Jeremy Hill、Natalya Doris
2018年11月21日 14:33 JST
• 投資適格債とクレジット・デフォルト・スワップにも弱さ
• GEの苦境が社債市場全体に広がることを投資家は懸念
クレジット市場に入った亀裂が、広がっている。米企業の上にのしかかる巨額債務の重さを、投資家は恐れ始めた。
  圧力は先月に高まり始め、先週爆発した。投資適格債のスプレッドとジャンク(投機的格付け)債のプレミアムが2年近くで最も大きく拡大し、レバレッジドローンの価格は2016年以来の水準に落ち込んだ。
  BMOグローバル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、スコット・キンボール氏は「年末まではかなりひどい市場になるだろう。転換点となると考えられるポイントが今から年末までの間にはない」と話した。
  ゼネラル・エレクトリック(GE)の苦境が市場の不安に拍車をかけた。金利上昇に加え成長鈍化の可能性がある中で、巨額債務に起因する問題は社債市場全体に広がる恐れがあると投資家は不安を抱いている。
  高格付け社債のデフォルト(債務不履行)に備える保証料の指標であるCDX投資適格指数は先週、3月以降で最大の上昇となり、16年11月以来の高水準に達している。


原題:Credit Showing Deeper Cracks From Leveraged Loans to Junk Bonds(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIJ0U96K50XS01

 


仮想通貨売りに終わり見えず、ビットコインは4000ドル接近
Samuel Potter、Todd White
2018年11月20日 19:48 JST 更新日時 2018年11月21日 8:23 JST
• ビットコインは一時13%下落し4051ドル、今週の下げは25%超
• イーサやライトコイン、XRPなどライバル仮想通貨も軒並み安
仮想通貨市場を飲み込んだ混乱が20日も続き、ビットコインは一時4000ドルに接近。全ての主要な仮想通貨が軒並み続落した。
  ビットコインは一時13%下落し4051ドルを付けた。今週の下げは25%を超えた。昨年12月時点では2万ドル近い水準で取引されていた。ビットコインの下落を受け、イーサやライトコイン、XRPといった競合する仮想通貨も売り込まれた。
  仮想通貨市場は過去数カ月にわたり比較的安定した動きだったが、11月に入って急落し、規制の動きも強化されたことから、同市場の強気派を動揺させている。コインマーケットキャップ・ドット・コムによると、仮想通貨の時価総額は1月に付けたピークから7000億ドル(約78兆9000億円)減少。ビットコインの下落に賭けることができる先物市場での取引は急増している。

原題:No End in Sight for Crypto Sell-Off as Bitcoin Approaches $4,000(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHLOE6JIJUO01?srnd=cojp-v2

 


ダイモン氏は正しかった、ビットコインが「詐欺」発言時と同水準に
Michael Patterson
2018年11月20日 22:43 JST

ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO
Photographer: Marlene Awaad/Bloomberg
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は恐らく正しかった。
  同氏は2017年9月、仮想通貨のビットコインについて「詐欺」だと発言し、同通貨を取引する行員を解雇すると脅かしたが、ビットコインはその後の3カ月で4倍以上に値上がりした。ダイモン氏は発言を後悔しているとし、ビットコインの基盤となるブロックチェーン技術への信頼を表明した。
  しかし最近では、ビットコインについてダイモン氏の悲観論の先見性が際立ってきた。ビットコインは最高値から78%も下落し、ダイモン氏の発言当時の価格に戻った。他の仮想通貨も下落し、コインマーケットキャップ・ドット・コムによれば、仮想通貨全体の時価総額は1月に記録した過去最高からほぼ7000億ドル(約78兆7000億円)減少している。

原題:Jamie Dimon Vindicated? Bitcoin’s Back to Where He Cried ‘Fraud’(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHRKV6TTDS601?srnd=cojp-v2

 


外為フォーラムコラム2018年11月21日 / 13:12 / 3時間前更新
コラム:ビットコイン、5000ドル割れで砕かれる幻想
Tom Buerkle
2 分で読む

[ニューヨーク 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ビットコインに対する甘い夢は、最近のさらなる価格下落で吹き飛ばされつつある。

多くのファンは、ビットコインが従来の金融を葬り去ることを夢見たが、価格が5000ドルを割り込んだことで、株式や債券よりも投資家の弱気心理によってずっと影響を受けやすいという事実が分かってきた。

ビットコインの欠点は、基本的な価値を持ち合わせていないことだ。

約10年前に発明されたビットコインはそれ以来、技術者とリバタリアン(個人の自由を至上価値として国家による制約を最小限にとどめるべきだと主張する人々)の双方に幻想を抱かせてきた。

つまり、個人や企業が銀行もしくは政府による搾取を受けずに世界中で資金のやり取りができる「摩擦のない金融」が約束されたということだ。昨年ビットコイン価格が突然2万ドル近くまで高騰すると、それまで懐疑的だった投資家までその輪に飛び込み、二匹目のどじょうを狙った似たような仮想通貨の発行が続出した。

それが全て間違いではなかったとしても、今では非常に時期尚早だったように見受けられる。イニシャル・コイン・オファリング(ICO)は今年に入ってブームが破裂した。米証券取引委員会(SEC)などの規制当局の締め付けや、EOSネットワークがICOを通じて過去最高の42億ドルを調達した直後にガバナンス問題に巻き込まれたことが原因だ。

一方、伝統的な投資家を引き寄せたのは裏目に出たようだ。

クライプト・ファンド・リサーチは、今年全体で仮想通貨専門のヘッジファンドの設立は最大150本に達すると予想する。だがそのほとんどは高値近くで買い、既に大きな損失を抱えているはずだ。ビットコインはこの1カ月で約3割、昨年12月の最高値からは75%も値下がりしており、漂うのは投資家のあきらめムードだ。

ビットコインを手放す理由には事欠かない。

1年前にビットコインから分裂して生まれたビットコインキャッシュ自体が、今月初めに再び2つの仮想通貨に分かれてしまった。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、各中央銀行に独自のデジタル通貨発行を促しており、これはビットコインの地位に影を落としかねない。貿易摩擦懸念や金利上昇が株安・債券安を引き起こしていることから、投資環境全般も急速に悪化している。

S&P総合500種は20日にまた2%近く下がり、9月の高値からの下落率は10%に達した。投資家にとってこれは痛手だが、リフィニティブのIBESデータによると、S&P500種企業は第3・四半期に約29%利益を伸ばした。来年も増益基調は続く見通しだ。

こうした現実世界の支えは、ビットコインにとっていくら欲しても手に入らない要素と言える。

●背景となるニュース

・コインベースによると、ビットコインの価格は米東部時間午後2時24分に4500ドルをわずかに上回る水準だった。それまでの24時間で約400ドル下がり、過去1カ月の下落率はおよそ3割に達した。過去最高値は昨年12月に記録した1万9500ドル強だった。
https://jp.reuters.com/article/bitcoin-fall-breakingviews-idJPKCN1NQ0A1  

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コメント
1. 2018年11月21日 20:08:52 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[143] 報告
株式市場の不安要因に流動性不足が加わる−JPモルガン分析
Lu Wang
2018年11月21日 12:10 JST
• 市場の厚みで見ると、株式は少なくとも2014年以来最悪の年に
• 商品や通貨、債券では「流動性悪化の兆しがほとんどない」

Photographer: Daniel Acker/Bloomberg
10月に始まった株式相場の下落局面で心配すべき項目のリストに流動性低下が加わった。少なくともJPモルガンのストラテジストらはそうみている。
  同ストラテジストらは「Hui-Heubelレシオ」と呼ばれる流動性の指標がS&P500種株価指数とストックス欧州600指数、TOPIXのそれぞれ先物で2月以来の水準に落ち込んでいることに着目している。この指標は株価を動かすのに何件の取引を要するかを測るもので、値が大きいほど市場に厚みがあることを示す。
  ニコラオス・パニギリツオグル氏率いるJPモルガンのストラテジストらは、債券から株式まで金融市場引き締まりのあらゆる状況を一覧にしたリポートでこうした現象に言及。株式先物でいくつかの悪い予兆に気付いたと説明した。市場の厚みという点で株式は今年、少なくとも2014年以来最悪の年となる方向だという。
  パニギリツオグル氏は電子メールで、JPモルガンのデータは「流動性の低下が単に市場のボラティリティーによって合理的とみなされるものより持続性がある」ことを示していると指摘。「S&P500種先物の小口の売りが流動性不足で増幅され得るため、脆弱(ぜいじゃく)性も示唆している」と記した。
  ただJPモルガンは商品や通貨、債券では「流動性悪化の兆しがほとんどない」としている。

原題:JPMorgan Sees Stocks Vulnerable to Liquidity Shortfalls in Rout(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIIO9T6TTDS201 

2. 2018年11月21日 20:25:50 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[145] 報告
19年の世界成長率3・5%に下げ OECD予測、20年に米中大幅減速
2018/11/21 19:00日本経済新聞 電子版
 世界経済が先行きの減速感を強めている。経済協力開発機構(OECD)は21日発表した世界経済見通しで、2019年の国内総生産(GDP)の実質成長率を3.5%とし、9月時点から0.2ポイント引き下げた。20年の予測では米国と中国の成長が大幅に鈍化すると分析。米国発の貿易摩擦などのリスクが高まる中、世界経済が頭打ちになると指摘している。海外減速の影響で日本の成長も緩やかになる見通しだ。

 中国の18、19年の成長率は9月からそれぞれ0.1ポイント引き下げ、6.6%、6.3%と予測。ユーロ圏もそれぞれ0.1ポイント低い1.9%、1.8%とした。米国は底堅いとみて変えなかったが、米国以外の減速が目立ち始めている。

 要因として主に貿易額の鈍化と、先進国の金融政策の引き締めを背景にして、世界の成長が鈍くなりつつあると説明。特に貿易摩擦による関税の引き上げは、企業が世界に持つ付加価値網や雇用を阻害する可能性があるとの懸念を示した。

 OECDが強調したのは「先行きには陰りが見え始めている」。大きな一因が貿易摩擦だ。OECDが複数のシナリオを検討したところ、米中の貿易戦争が激化すれば21年にかけて米国のGDPを1.1ポイント、中国は1.3ポイント程度押し下げる。世界全体では0.8ポイントの下押し圧力がかかる。

 OECDは世界の貿易額の実質伸び率が17年の5.2%から18年以降は3%台になると予測。貿易摩擦の激化によって「企業の投資計画などに不確実性を生み出す」と警告した。

 もう一つは新興国経済の行方だ。中国は7〜9月期のGDPが前年同期比6.5%増と前期比0.2ポイント鈍化。足元で減速が鮮明になっている。トルコやアルゼンチンなどでは米連邦準備理事会(FRB)の利上げの影響で資金流出が起き、需要が縮小。英国の離脱を控える欧州連合(EU)や、イラン問題などを抱える中東も、地政学リスクとして世界経済に悪影響を与えかねない。

 足元の世界経済は米国の一人勝ち状態だが、こうしたリスク要因などを背景に、20年からは米国の成長ペースも鈍化する見通しだ。OECDは20年の予測を初めて示し、米国は2.1%、中国は6.0%とした。担当者は「減速が著しいのが米中の2カ国」と語る。

 日本も無縁ではいられない。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は「輸出がけん引する形での成長は見込めないが、国内の設備投資はなお強く、日本の景気は徐々に減速する」とみる。

 OECDによると、日本は18年は0.3ポイント下げて0.9%。相次ぐ自然災害で生産や消費、輸出など幅広い分野で被害が出たことが響く。19年に1%に戻すが、19年10月予定の消費税増税後に消費が減退し、20年は0.7%成長と予測。一方で日本の政府債務残高が高いことに触れ、税率10%への引き上げ後も「段階的に引き上げることが必要」と主張している。

日本経済、10〜12月期はプラス成長回帰へ 予測は年率2.1%増
2018/11/14 17:28
WTO、世界貿易量を下方修正 貿易戦争の影響で
2018/9/28 18:21
景気、外需支えに回復基調へ 貿易摩擦・原油高リスク[有料会員限定]
2018/5/16 20:29
IMF、貿易摩擦の「景気リスク」警鐘 成長率3.9%
2018/4/17 22:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38038350R21C18A1EE8000/


 


2018年11月21日 宮内健 :経済ジャーナリスト
長銀「最後の頭取」が今だから話せる、破綻カウントダウンの日々
長銀元頭取の鈴木恒男さん
長銀元頭取の鈴木恒男さん Photo:DOL
1998年秋、日本長期信用銀行(以下、長銀)は経営破綻し国有化された。破綻時の頭取だった鈴木恒男氏は当時の記者会見で、その原因を「急激な環境の変化」と語った。長銀は長期資金の貸し付けを主に行う長期信用銀行としての役割が行き詰まり、新たな貸付先を拡大する中で、不動産バブル崩壊へと巻き込まれていった。さらに金融行政の変化、金融危機の発生という外部的な要因も、長銀を破綻へと導く大きな要因になっていた。

こうした急激な環境変化が起こる中で、長銀「最後の頭取」は、破綻を前にどのような状況に追い込まれ、対応していたのか。20年がたった今だからこそ話せる、長銀破綻までのカウントダウンの日々を鈴木恒男氏に聞いた。(聞き手/経済ジャーナリスト 宮内健)

※前編はこちら→『長銀「最後の頭取」が語る、20年前の破綻に至った本当の理由』

金融行政は「護送船団方式」から
「自己責任原則」へと移行
 さまざまな経済対策で1996年には景気回復の動きが広がり、金融機関の不良債権問題は解決へ進むかに見えました。しかし当時の橋本龍太郎首相が主導する財政緊縮政策が打ち出され、政府が97年4月からの消費税2%引き上げを閣議決定すると、景気は冷水を浴びせかけられたように委縮し始めました。

 97年に入ると、それまで経験のない信用収縮が生じつつありました。地価をはじめとする資産価格の低下が実体経済の足を引っ張るデフレスパイラルにより銀行は追加の不良債権償却・引当に迫られ、自己資本比率規制をクリアしようと一段と激しく貸出金の回収に走りました。これで流通業界やゼネコン業界などで多くの企業が資金繰りに窮し、事態は不動産バブルの崩壊から、非製造業を主とする過剰債務企業を市場が追い詰める新段階へ移行しました。

 一方、95年12月に「今後の金融検査・監督等のあり方と具体的改善策の取りまとめにあたって」という大蔵大臣談話が発表されました。「金融行政の転換について」という副題がつけられたこの談話で、金融機関の自己責任の徹底と市場規律が十分に発揮される透明性の高いシステムを構築することが宣言されました。

 金融行政の根本を、それまでの大蔵省が行政指導する護送船団方式から自己責任原則に変えることは、邦銀の格付けにも大きく影響しました。さらに96年11月、政府は唐突に「金融ビッグバン」を打ち出しました。ただ、総論だけで具体論が見えず、金融業界の人間もメディアもそれが何を意味するのかよくわからない状態でした。

 このような経営環境の激変の中で、97年5月頃から長銀はスイスバンクコーポレーション(SBC)との業務提携に活路を見いだそうとしました。株式を持ち合い、合弁で証券会社や投資顧問会社を作る。自己資本を増強し、海外に後れを取っていたといわれる新金融技術の習得などが見込め、日本の銀行としてはかなり先を行くような提携をしたつもりでした。

 しかし、後でこの提携が裏目に出ることになります。

長銀株の下落でSBCとの提携が破綻
日本長期信用銀行本店ビル
日本長期信用銀行本店ビル(当時)。2012年に建物自体も解体されてしまった Photo:PIXTA
 1997年11月、ついに日本で金融危機が発生しました。三洋証券が会社更生法を申請して倒産した翌日、同社が無担保コール市場から取り入れた10億円がデフォルト(支払い不能)になったのです。

 無担保コール市場は当局から認可を受けた金融機関が相互信頼に基づき、資金の貸し借りを行う場です。つまり護送船団方式を前提にした仲間内の資金融通システムで、そこで起こった戦後初のデフォルトによって、金融機関同士が疑心暗鬼に陥り「融通した資金が返ってこないかもしれない」と金融システム不安が一気に加速しました。株式、為替、債券はトリプル安となり、都銀の一角であった北海道拓殖銀行が経営破綻し、続いて山一証券の自主廃業が決定しました。

 この危機に際して金融機関の資本増強のために公的資金の注入が検討され、翌年3月に長銀を含む21行に公的資金投入が行われましたが、金融システムの安定には不十分な規模で終わりました。その遠因には世間における銀行のイメージの悪さがありました。

 この時期、長銀には別の難問が持ち上がっていました。ビッグバンの先兵になろうと業務提携したSBCから「ディストレスワラント条項」を付け加えることを要求されたのです。これは長銀の株価が3日間にわたって50円を下回るか、20日以上にわたって100円を切った場合は、合弁で設立する証券会社などの長銀保有株をSBCに譲渡するというものです。

 突然この条項の承認が提案された常務会において反対したのは1人だけで、私を含めたその他の出席メンバーはただやり取りを聞いているだけでした。自分の部門の仕事はきちんとやるけれど、他の部門には口出ししないという官僚的な縦割り組織の弊害です。そんな縦割りの思考に私自身、どっぷり浸かっていました。

 その後、後述の株価下落によりディストレスワラント条項の発効は現実のものとなりますが、長銀が力を入れてきた分野を手放すことになって、マーケットの評価を大きく落としてしまいました。

SBCとの合弁証券会社から大量の長銀株売り
株主総会中に「株価が50円を切った」のメモ
 1998年6月に入ると思いがけない事態が生じ、長銀の経営は急速に悪化しました。5日、月刊『現代』7月号の広告に「長銀破綻」の見出しが躍ったのです。記事は新味のある内容ではありませんでしたが市場は敏感に反応し、株価は前日18円安の181円で引けました。

 しかも6月9日、SBCとの合弁会社である長銀ウォーバーグ証券のロンドンオフィスは長銀株の大量の売り注文を受け、それをそのまま東京の証券取引所につなぎました。普通、日本の金融機関であれば親密な会社の信用を落とす行為なので、他の証券会社に持ち込むよう顧客を誘導します。しかし欧米のディーラーは自分の実績と報酬に直結しますから、そんなことはお構いなしに売るのです。このようなビジネス慣行の違いには思い至りませんでした。

 長銀ウォーバーグ証券による長銀株の大量の売りは、「SBCは長銀を見限った」と市場に受け取られました。海外も含めて相当な投資家が空売りのチャンスだと考えたのでしょう。そうでなければ説明のつかない株価の下落が起こり、6月22日には前営業日の112円から62円へ一挙に50円も急落し、その後、長銀の株価は二度と100円台を回復しませんでした。

 ちょうどこのときは、新たに設置される金融監督庁に、大蔵省から金融の企画機能を切り離して一緒にするかどうかで同省と政治家の間で綱引きが行われていた時期でした。監督機関が引き継ぎで空白の時を狙い、ヘッジファンド等が長銀を空売りのターゲットにしたのでしょう。

 マーケットの巨大な力は平時には見えませんが、こうしたときに大変な猛威を発揮する。それは非常に怖いもので、株主総会の最中に「長銀株が50円まで値下がりしている」とのメモが入ったときは衝撃的でした。我々はマーケットの底知れない力に対する思慮を欠いていたというか、まさかそこまでのものだとは思っていなかったのです。

あらかじめクビが決められた頭取就任
信用低下で資金繰り困難に
 根拠に乏しいメディアの報道やうわさ話が飛び交い、株式市場で長銀株がもみくちゃにされ窮地に追い込まれる中、長銀は他行との合併を模索し、住友信託銀行との合併に最後の望みを託すことになりました。

 合併するためには政府から公的資金を8000億円から9000億円注入してもらい、不良債権処理を行って身ぎれいにする必要がありました。大蔵省と相談しながら作成した公的資金を入れるための再建計画では、前提条件の1つに代表取締役の辞任がありました。経営責任の明確化のためです。

 一方、長銀は1998年4月に執行役員制を導入し、それまで28人いた取締役を6人に減らしていました。すると会長を除き代表権を持っていない取締役は末席にいる私を含めて2人だけ。もう1人は国際畑で役所との折衝経験があまりなく、消去法的に私が頭取に就任せざるを得なくなりました。

 頭取といっても住友信託と合併できた暁には当然クビになる立場で、いわばワンポイントリリーフです。私自身、ずっと不良債権処理に関わってきた立場で、決してよい人選とは思えませんでしたが、誰かが引き受けなければ前には進めず長銀の幕引きもできない。腹をくくってやるしかありません。8月21日に頭取代行に就任し、翌9月29日に正式に頭取になりました。

 我々が再建計画を提出し公的資金を申請したその頃、政治も混乱していました。7月の参院選で自民党が惨敗し、責任を取って辞任した橋本首相の後を受けて小渕内閣が成立。8月25日から金融再生関連法案の審議がスタートしていました。いわゆる金融国会です。焦点は長銀が破綻しているかどうかであり、破綻しているかどうかの基準は債務超過であるかどうかでした。

 債務超過で破綻していれば金融安定化法による公的資金投入は健全行を対象としているため、公的資金は使えなくなり、破綻処理に移行せざるを得なくなります。しかし不良債権の認定の仕方によって、債務超過であるかどうかは大きく変わり得ます。つまり、債務超過であるかどうかについても、そう単純に決まる話ではないのです。

 政府・与党は破綻状態ではない長銀に公的資金を投入する方針でしたが、野党は強く反対し破綻金融機関に対する法的な処理を行う制度を設けるべきだと主張しました。

 合併後の銀行の業績が浮上すれば優先株などで投入された公的資金が返済され、国民負担にはなりません。しかし当時はより少ないコストで金融危機を収束させるという視点はほとんどありませんでした。

 金融国会は9月中旬まで議論が右へ行ったり左へ行ったり膠着しました。そして長銀の信用がかかった国会審議で1ヵ月ほど衆目を集めるところとなった結果、その間に多くの風説やフェイクニュースが流布し、長銀の信用は日を追って低下し資金繰りが困難になりました。株価もどんどん下落し、住友信託では共倒れを懸念して合併に対し慎重な意見が強まりました。

 結局、本格的な金融危機を防ぎ金融システムを安定化するプルーデンス政策が用意されておらず、審議が膠着している間に長銀の信用が最終的に毀損される結果となったのです。結局、金融国会では野党案の丸のみが了承されて長銀の国有化による破綻処理が動かないものとなり、経営破綻が確定。我々の合併への努力は水泡と帰しました。

 長銀は1952年に施行された「長期信用銀行法」に基づく銀行で、その法律が当時の池田勇人蔵相の指揮下に成立したことから自民党の宏池会と親しい関係にありました。一方、監督官庁である大蔵省は自らが与党自民党への根回しや説明を行うとして、個別の銀行が個々の政治家に依存することを極度に嫌っていたこともあって、長銀が直接宏池会に依存することはありませんでした。というよりは、大蔵省ルートを妨害しないように、直接的な動きを避けていました。

 自民党全体が宮沢喜一大臣をいただく大蔵省の原案に沿って動いてくれると思っていたのですが、自民党の「派閥政治」が曲がり角に来ており、折しも野党の若手議員と自民党の一部議員が同調して政府案に反発するという事態にさしかかっていました。「政策新人類」といわれた議員たちです。

 長銀は、最終段階で宮沢大臣や当時の池田政調会長など宏池会の力を頼んだのですが、すでに政界は様子が変わっていました。頼みの大蔵省自身がイメージダウンする中、動き続ける政治の世界に一金融機関が効果的に働きかけることがいかに難しいか、肌身で感じました。

「我々が世界恐慌を引き起こすのでは…」
綱渡りの資金繰りに奔走
 長銀の経営破綻が現実のものとなっても、まだまだやるべき仕事がありました。資金繰りです。国有化されるまでには時間があり、それが10月下旬であることは見当がつきました。その間、長銀が国有化されるといっても、一般のお客さまは金融債を解約し現金化しなければ不安で仕方がありません。

 一方、銀行同士が取引を行うインターバンク市場では、長銀に無担保で融資してくれていた金融機関は簡単に貸してくれなくなります。金融債の解約が相次ぎ、他方でお金を貸してくれなくなれば資金ショートが起こります。これは大変危険な事態で、「あの銀行が払えないとなればこっちの銀行も危ない」と危機が伝播してしまいます。その危険が実際に起こったのが昭和金融恐慌でした。

 しかもデリバティブやスワップといった金融派生商品ではかなり大きな規模の契約を国際的にしていますから、長銀がデフォルトになると国際的な騒ぎになる可能性がありました。折しもロシアで金融危機が表面化しており、金融不安は世界に広がっていました。当時の日銀理事でのちに国有化長銀の頭取やセブン銀行初代社長などを歴任する安斎隆氏にも時折呼び出され、「絶対に穴をあけるなよ」と。安斎さんは万が一の場合には、日銀特融を行わざるを得ないと考えていたようですが……。

 資金不足は「10日後に8000億円から1兆円になる」といった巨額な水準でした。しかし、我々が資金ショートすると世界恐慌を引き起こすかもしれない。そんな恐怖感を持ちながら、私も含め全役職員が必死の思いで資金繰りに駆けずり回りました。

 幸いにも長銀はデフォルトを起こさず98年11月4日、国有化長銀の役員が着任し、私は解任されました。頭取代行に就任してから2ヵ月半の期間でした。

長銀破綻がもたらした教訓とは?
「異論を出す力」が失われていた
長銀元頭取の鈴木恒男さん
「長銀破綻の教訓」を語る鈴木さん Photo:DOL
 長銀の経営破綻が現在の行政や金融機関にもたらした影響や教訓はたくさんあると思います。その1つは遅きに失した感もありますがプルーデンス政策、つまり、金融機関の破綻を防いだり、金融システムの安全性を維持したり、あるいは金融危機が発生した際に迅速に対応できる体制が国民的な理解を得てできたことでしょう。

 アメリカではリーマンショックの際、非常に素早く対応しました。それができたのは日本も反面教師になっていると思いますが、やはりプルーデンス政策が用意されていたからです。これがあれば金融危機が生じても素早く公的資金を注入したり緊急融資を出したりして、金融機関の資金繰り危機に対応できます。

 もう1つは大きな制度変更をいかに行うか、という問題です。1990年代前半まで日本の金融機関は縦割りの専門金融機関制度と行政指導に縛られていました。それが一時期は日本経済に貢献していたのですが、90年代半ばにいきなり銀行は市場原理のもとに、自己責任で経営せよ、行政は事後監視だけを行うと急激な方向転換が行われました。

 この方向転換は米国のまねをしたというか、そうさせられた面が大きいのですが、長年の金融システムや慣行を変えるに際しては、自国の状況に合わせて時間をかけて行わなければ、さまざまな混乱が発生し、危機的な状況を招きかねないというのも長銀破綻の教訓だと思います。

 また、危機的な状況があったとしても、当然ながら企業経営者は企業の生き残りのためにあらゆる可能性を想定して議論を尽くさなければいけないわけですが、前にも述べたように長銀は縦割り組織の弊害で、私を含め他のセクションの問題にもきちんと意見を言うべきとの自覚が乏しく、そうした風土に浸かってしまっていました。

 こまごましたところにとらわれず全体を観察し「異論を出す力」を企業の中に蓄えないと、企業の弾力性が失われてしまいます。しかし異論を言う人を異端者として排除する傾向があったのは否めません。これは本当に大きな反省点で、経営者は自戒して日頃からそうした風土づくりを心掛ける必要があると思います。

重層的な金融危機の要因を総括し、
今後に活かす取り組みを
 銀行経営の側面でいえば、長銀はグローバルマーケットの一流プレーヤーになることを目標にしていた時期があり、そのために背伸びしたことも確かです。しかし日本の物差しは通用しませんでした。長銀は試行錯誤の末に反面教師としての事例を示してしまいました。

 一例を挙げれば、長銀は海外の営業体制を拡充し、アメリカなどでは日本企業だけでなく現地のローカル企業にも融資先を広げましたが、現地通貨での低コストの資金調達力が伴っていないため、薄利多売の難しい仕事でした。

 また、海外の大手金融機関との提携にしても、ディストレスワラント条項のようなものが普通に取り交わされているのが世界の金融界ですが、そうした危機対応まで考えて業務提携をした日本の金融機関は少なかったでしょう。長銀の事例が他の金融機関に警鐘を鳴らしたことは確かです。

 現在の銀行は低金利とカネ余りで利ザヤが取れない中、どうやってもうけていくのか本当に大変だと思います。自助努力でなんとかしなさいと言われても、違う海へ漁に出て失敗し、リスクを負うことになりかねません。今回問題を起こしたスルガ銀行はその象徴のようです。

 長銀が経営破綻したのは、最終的に経営陣、マネジメントの責任です。それを前提にして言うのですが、我々は長信銀制度からの転換ができなかった。ここまで述べたように破綻に至るまでには複合的、重層的な要因がありますが、究極的には長信銀が歴史的使命を終えて消滅したということなのだと思います。長銀の破綻に続き日債銀も破綻し、やはり厳しい状況にあった興銀も他の金融機関とのあまり実態のない提携で、将来の展望が開けているかのように形づくりをせざるを得ませんでした。98、99年は長期信用銀行という制度が事実上消滅した年として金融史に記録されるのでしょう。

 あれから20年が経過して、経営破綻の瞬間だけにフォーカスするのではなく、かつて日本経済の中に長信銀が存在し、どのような役回りを担っていたかも含めて長銀を語ってもよいのではないか。最近はそう考えるようになりました。

 アメリカではリーマンショック後、下院議会で総括作業を行いましたが、日本では金融危機対応についてそうした総括的な取り組みが行われていません。長銀国有化後に内部調査委員会が設けられ、経営陣の責任追及に絞った調査は行われましたが、複合的な要因を究明する動きは出てこなかった。

 さかのぼればアメリカでは1929年のウォール街大暴落の後、1932年にペコラ委員会を上院に設置して調査を行い、グラス・スティーガル法の制定などにつながりました。アメリカはこうした取り組みをしっかりやっている。日本がそれをしないのは、非常にもったいないことなのではないでしょうか。
https://diamond.jp/articles/-/186139

3. 2018年11月21日 20:30:34 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[147] 報告

ビジネス2018年11月21日 / 15:37 / 3時間前更新

スルガ銀の預金流出したが、ゆうちょ銀の残高は減少=民営化委員長
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[東京 21日 ロイター] - 郵政民営化委員会の岩田一政委員長は21日の記者会見で「スルガ銀行の預金が相当流出しているが、ゆうちょ銀行の貯金残高は減少を続けている」と述べ、不正融資問題でスルガ銀(8358.T)から流出した預金がゆうちょ銀(7182.T)に向かっているとの見方を否定した。

岩田委員長は、ゆうちょ銀への資金シフトが起きない背景として「(預金者保護や健全性維持の)制度的な整備が終わっていることや、金融行政が銀行の経営や健全性を監督していることの反映ではないか」と指摘。ゆうちょ銀の預入限度額を緩和すると地域金融機関からゆうちょ銀に預金がシフトすると警戒する金融庁をけん制した。

和田崇彦
https://jp.reuters.com/article/suruga-yucho-idJPKCN1NQ0K5

 


外為フォーラムコラム2018年11月21日 / 17:43 / 34分前更新

遠のくソフトブレグジット、英ポンドの足かせに


尾河眞樹 ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員兼金融市場調査部長
5 分で読む

[東京 21日] - 英国のメイ首相は14日、約5時間に及ぶ閣議を経て、欧州連合(EU)からの離脱協定素案を内閣が了承したと発表。EU離脱(ブレグジット)協議の進展を好感し、ポンドは一時買われる場面もあったが、その後反落した。同協定案に対する議会からの反発が強く、承認は困難との見方が広がったためだ。

実際、閣議では29人の出席閣僚のうち3分の1が反対したという。その翌日には、ラーブEU離脱担当相が辞任を発表。その理由として、同協定案が、英国の一体性を脅かすものであり、英国は発言権もないまま恒久的にEUの法律や規制に縛られるリスクがある、といった欠陥を挙げている。

マクベイ雇用・年金相や閣外相の辞任も相次いだことで議会は混乱。EU離脱強硬派の保守党議員を中心に、メイ首相に対する不信任投票を求める動きも浮上している。英国の政治情勢は極めて不透明な状況で、今後も当面の間、ポンド相場の足かせとなろう。

<厳しい選択を迫られる英国>

離脱協定案を閣議了承した直後、メイ首相は「われわれの前にある選択は明白だ。この合意か、あるいは合意なしで離脱するか、離脱をやめるかだ」と記者団に語ったが、その言葉通り英国は極めて厳しい選択を迫られている。

「合意なきEU離脱」は英国経済にとってダメージが大きく、これを避けるには、英国はEUに対して一定の譲歩をせざるを得ない。だが、議会、特に与党保守党内の離脱強硬派からの反発が強まっている。

例えば金融サービスについて、EUは域外銀行の国の規制が「エクイバレンス(同等)」だと認めない限り、域内の営業を許可していないが、離脱協定案では英国の金融機関も「域外」の扱いを受ける。このままでは英国の金融機関が現在のようにEU域内における自由な営業をすることが難しくなる。

また、最大の懸案事項だったアイルランドの国境問題についても、2019年3月の離脱後に設ける移行期間中(2020年12月まで)に協議によって解決する方向性となり、問題は先送りされた格好だ。

<ソフトブレグジットは困難な情勢>

ブレグジットを巡る目先の注目イベントは、25日にブリュッセルで行われるEU首脳会議だ。EUで今回の離脱協定案に正式合意するための臨時会合となる。ここを通過した後、12月中に今度は英国議会で離脱協定案の採決が行われる。ここで承認されると、来年1月に同議会で離脱関連法案の採決が行われる。

ただ、今回の離脱協定案については、野党だけでなく与党保守党からも反対の声が上がっているだけに、議会で承認される可能性は低い。仮にメイ政権がなんらかの形で退陣に追い込まれ、次期政権に交渉相手が変わったとしても、ジョンソン前外相やデービス元EU離脱担当相など強硬離脱(ハードブレグジット)派が後継者となれば、EUとの交渉はさらに難しくなるだろう。

したがって、スムーズな形で英国とEUが離脱協定を合意した上で19年3月29日に離脱する「ソフトブレグジット」の実現は、もはや極めて困難な情勢である。

<「メイ首相降ろし」の動向に注目>

加えて、現在メイ首相の不信任投票が行われるかどうか、英議会の動向にも注目が集まっている。実際に与党保守党で党首の不信任案の採決が実施されるためには、下院議員の15%(48人)が「1922年委員会」と呼ばれる保守党一般議員で構成される委員会に不信任投票実施を求める書簡を送付する必要がある。

それを受けて投票が実施されるが、ここで不信任が成立しなければ、メイ首相は保守党党首、英国首相の地位にとどまり、その後1年間は不信任動議を提出されることはない。この場合は、ソフトブレグジットの可能性が高まるだろう。

もし不信任案が成立すれば、メイ首相政権は退陣し、次の党首選にも出馬できなくなる。EUとの交渉も滞り、「ハードブレグジット」の可能性が高まる。仮に解散総選挙の流れとなれば、争点は「EU離脱の是非」となり、この場合、ひょっとすると次期政権によって、今一度EU離脱の是非を問う国民投票が行われるかもしれない。

<ばらばらな英国民の想い>

問題は、英国民の意見が依然まとまっていないことだ。調査会社ユーガブが15日発表した世論調査によれば、今回の離脱協定案の内容を受け入れたソフトブレグジット派は6割で、ハードブレグジット派の4割を上回った。

ただし、今回の離脱協定案の内容を受け入れるか、それともEU離脱の是非を問う国民投票を新たに実施するか、との問いに対しては、44%対56%で後者が上回った。さらに興味深いことに、EUとの合意なくハードブレグジットに踏み切るか、もしくは改めて離脱の是非を問う国民投票を実施するか、との問いに対しても46%対54%で後者が優勢となっている。

Slideshow (2 Images)
これだけみれば、ソフトにせよハードにせよ、このままブレグジットに突き進むよりも、もう一度国民投票を実施することを望む国民の方が若干多いようだ。

ただ、「ブレグジットに関して今後どういった方向に進むべきか」という問いに対しては、「離脱協定案を受け入れ、ソフトブレグジットすべき」が16%、「離脱協定案に反対して、別の協定を模索すべき」が11%、「離脱協定案に反対し、合意なしでハードブレグジットすべき」が19%だった。また、「離脱協定案の是非を問う国民投票を行うべき」が8%、「ブレグジットをやめて、EUに残留」が28%、「その他」もしくは「分からない」が18%となり、EU離脱に対する英国民の想いはバラバラだ。

これらの回答から「離脱か否か」だけをまとめれば、ソフトであれハードであれ、明確にブレグジットすべきという回答が35%に達する一方で、EU残留を望む回答は28%となる。もし再び国民投票を行ったとしても、結果が「EU残留」となるかはっきりせず、仮にそうなったところで、離脱派との差は依然わずかなままで、残留決定後も再び世論が分断し、議会の混乱が延々と続く可能性が高い。

<ハードブレグジットならユーロにも下落リスク>

折しも、15日発表の10月英小売売上高は前月比0.5%減と、7カ月ぶりの大幅減少となり、市場予想の同0.2%増を大きく下回った。今後発表される経済指標も悪化しているようであれば、政治の混乱と景気悪化がさらにポンドの重しとなろう。

ポンド/ドルが、10月31日の安値1.2699ドルを下抜けると、下落が加速する公算が大きい。さらに今後、仮に英議会で「メイ首相降ろし」が勢いづけば、ハードブレグジットの可能性が高まったとの見方から、ポンドだけでなくユーロ相場も崩れるリスクがあるだろう。

市場全体がリスクオフの流れとなれば、16年の英国民投票の際のように、値幅の差はあるが、ポンド/円と共にユーロ/円も下落するとみている。

混乱状態のまま突然ハードブレグジットに突入すれば、貿易取引や金融決済、出入国その他、国境をまたぐあらゆる経済活動の手続きが滞るリスクもある。ハードブレグジットは、英国経済にとっては当然大きなマイナスだが、こうした混乱は英国と関わりの深い欧州経済全般にとっても、少なくとも短期的にマイナスとなろう。

*本コラムは、外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

尾河眞樹氏 ソニーフィナンシャルホールディングスの執行役員兼金融市場調査部長(写真は筆者提供)
*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルホールディングスの執行役員兼金融市場調査部長。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。著書に「本当にわかる為替相場」「為替がわかればビジネスが変わる」「富裕層に学ぶ外貨投資術」などがある。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-maki-ogawa-idJPKCN1NQ0S5


 

 
https://diamond.jp/articles/-/186009 
【第198回】 2018年11月21日 上久保誠人 :立命館大学政策科学部教授
英国のEU離脱交渉から垣間見える「民主主義の凄み」
英国のEU離脱問題で
「離脱協定案」が暫定合意
EU離脱をめぐる英国政治の合意形成から「民主主義の凄み」が垣間見える
 英国は欧州連合(EU)と、「離脱協定案」を交渉間レベルで暫定合意した。協定案は、2020年末の離脱移行期間終了後も懸案の英・アイルランド国境管理問題が解決するまでは、英国がEUとの関税同盟に当面残留することが柱となっている。また、今回の合意では離脱移行期間終了後に結ばれる通商協定について「自由貿易を推進し、規制や税関手続きで連携する」という基本方針が盛り込まれた。これを受けて、テリーザ・メイ英首相は臨時閣議を招集し、協定案について、了承を得た。

 しかし、英・アイルランド国境管理問題の解決が長引けば、英国がEUの規制・ルールに従い続ける可能性が残る。与党・保守党内の「離脱強硬派」が「英国の主権を取り戻すことができず、何のための離脱かわからない」と猛反発し、交渉担当者だったドミニク・ラーブEU離脱担当相までもが、「協定案を支持することはできない」として辞任する事態となった。

 また、メイ政権と閣外協力している北アイルランドの民主統一党(DUP)も、英国のうち北アイルランドだけにEUの規制が適用され続けることを批判し、野党・労働党はメイ政権・保守党の混乱に乗じて解散総選挙に追い込み、政権交代を狙っている。さらに、親EU派からは、EU離脱の是非を問う国民投票の再実施を求める声が上がっている。EU離脱の第二関門は、年末から年明けにかけての英国・EU両議会での承認だが、英国政治はまさに「カオス」と呼んでも過言でない状況だ。

 英国に支店や製造拠点を置く日本企業は、「ノーディール・ブレグジット」となると、EU域内で自由な営業ができなくなったり、英国からEU域内への輸出に高関税がかかる懸念がある。そのため、日本国内では、英国のEU離脱に関して、ネガティブな見方が広がっている。

 だが、この連載は、英国のEU離脱に関して、短期的な日本経済への悪影響だけに焦点を当てる議論と一線を画してきた(本連載第134回)。本稿も、一見カオスにしかみえないEU離脱交渉を巡る英国政治から、「民主主義の凄み」が示されているのだと主張する。

「ポピュリスト」を現実化するには
一度政権担当させてみればいい
 ドナルド・トランプ大統領の登場に代表されるように、世界中にポピュリズム(大衆迎合主義)が広がっている。欧州では、フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首は、2017年のフランス大統領選挙で決選投票に勝ち残った(第162回)。また、2017年12月にはオーストリアで、2018年5月にはイタリアで、極右政党が参画する連立政権が相次いで誕生している。

 ドイツでも、アンゲラ・メルケル政権の移民政策に批判が集中し、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が台頭している。メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)、は地方選での大敗が続き、首相は12月の党大会で実施される党首選への立候補を断念する意向を表明した。そして、南米・ブラジルでも、女性、黒人、性的少数者への相次ぐ差別発言で「ミニ・トランプ」と呼ばれるジャイロ・ボルソナロ氏が大統領選に勝利した。

 しかし、これらのポピュリズムの広がりに対する筆者の考えは、「一度、政権をやらせてみたらいい」である。極右政党が主張する「移民排斥」や斜陽産業の雇用を守る「保護主義」は、コアな支持者だけを相手にしていればいい時は、歯に衣着せず気持ちよく訴えることができる。だが、政権を獲ったら、そうはいかなくなる。

 現代の国際社会では、生産・流通のサプライチェーンや集団安全保障体制が、さまざまな国家の間で網の目のように複雑に絡み合っている。外国を排除して一国だけで生き抜くなど、経済的にも安全保障的にも不可能だ。政権を運営する立場になれば、あっという間にそのことに気づかされることになる。次第に極右政党の政策は現実化し、穏健な中道右派のようになっていくのだ。

ポピュリストが現実化する
典型例は日本の安倍政権
 実は、その典型的な事例は、日本の安倍晋三政権かもしれない。首相就任前の安倍氏が、Facebook等で、憲法、安全保障、教育、歴史認識などについて保守的な言動を繰り返していたことを知っている人は少なくないだろう。しかし、首相就任後は保守的な「やりたい政策」を後回しにして、国民が望む経済政策を優先し、「アベノミクス」を推進した(第163回)。

 また、保守派が考える「古き良き日本の伝統」(第144回)よりも、産業競争力を重視する「働き方改革」「女性の社会進出の推進」(第177回)や事実上の移民政策(第197回)、社会民主主義的な傾向が強い「教育無償化(第169回・P.3)を推進してきた。

 もちろん、安倍政権は「特定秘密保護法」(第72回)「安全保障法制」(第115回)「テロ等準備罪(共謀罪)法」(第160回)と、安全保障政策を推進してきた。だが、「最もやりたい政策」であるはずの「憲法改正」は、「自衛隊」の名前を条文に明記するだけで、実質的にフルスペックの集団的自衛権を行使する「国防軍」の創設を諦める内容だ(第194回・P.4)。

 要するに、安倍政権は世論の動向に極めて敏感に対応してきた(第194回)。それは、コアな支持者であるはずの保守派に「安倍政権の左傾化」と批判されるほどなのだが、政権を維持するためには、少数のコアな保守派よりも、日本の有権者のボリュームゾーンであり、野党と票の奪い合いになる中道層に向けた政策を打ち出すほうがいいという現実的な判断だろう(第169回・P.3)。また、少子高齢化が進む日本で、伝統ばかりを重視する保守派の意向をまともに聞いていたら、国家として衰退の道しかなくなるという危機感かもしれない(第185回)。

 他国でも、極右政党が政権入りしたら、次第に同じような「現実化」が起きていくだろう。むしろ、もう移民が社会・経済システムに完全に組み込まれており、国境を越えた移動も当たり前の国が多いわけだから、日本よりも容易に極右政権の現実化は起こり得る。既に、ボルソナロ大統領など、就任直後に経済政策の公約の修正を示唆したといわれる。だから、筆者は「政権をやらせてみればいい」と思うのだ。

英国のEU離脱のプロセスで
起こった政治の「現実化」
 英国のEU離脱のプロセスで起こっていることも、民主主義における「現実化」そのものだ。そもそも、英国はEU離脱を「国民投票」という「直接民主主義」の手法で決めた。国の運命を左右する重大な問題を国民投票で決めるべきではないという主張があるが、筆者はそれを支持しない。

 まず、この国民投票の成果として、ほとんど指摘されることがないが、「新自由主義的な政策」の振り返りの機会を与えたことである(第135回・P.3)。英国では、マーガレット・サッチャー政権以降、新自由主義的な政策志向の政権が続き、それは「英国病」と呼ばれた衰退から英国を見事に復活させた。

 一方で、新自由主義的な政策は、都市部が金融業を中心に高い経済成長で豊かになる半面、地方は取り残されて格差が広がった。しかし、英国はEU域内でトップクラスの好調な経済財政状況が続いたために、改革派の政治家、官僚は地方を顧みることがなかった。国民投票で、衰退した地方の多くでEU離脱が多数を占めたことを目の当たりにして、初めて格差を放置したことの深刻さを思い知らされた。

 その後、紆余曲折があったが、今年の10月29日にフィリップ・ハモンド財務相が、秋期財政報告書(予算修正計画)を公表し、EUと離脱条件などで合意できれば、長らく掲げてきた財政緊縮策を終了させるという方針を示した。

「国民投票」で決めたからこそ
さまざまな問題が明らかになった
 また、EU離脱のさまざまな問題が明らかになったのも、「国民投票」で離脱を決めたからだと思う。仮に英国が「全体主義国家」「独裁国家」で、指導者の独断である日突然「EU離脱」が決定されたとする。おそらく今日に至るまで、EU離脱で生じる不都合な真実は隠されただろう。あるいは、離脱交渉が困難に陥るのを国民に見られてしまうかもしれないが、その時はEUを敵とみなして、「すべてはEUが悪い」と一方的に攻撃して国民を煽るポピュリズムが横行しただろう。民主主義のプロセスが、それを許さなかったのだ。

 EU離脱の問題は、国民投票直後から明らかになった。EU離脱派の極右政党「英国独立党(UKIP)」のナイジェル・ファラージ党首は、離脱決定直後に、自らの使命を果たしたという理由で、辞任した。しかし、辞任の本当の理由は、離脱が本当に決定したことで、これまで隠してきた不都合な事実が明らかになることがわかっていたからだ。

 ファラージ党首やボリス・ジョンソン前ロンドン市長(当時)ら離脱派は国民投票前、英国がEU加盟国として支払っている拠出金が「週3億5000万ポンド」に達するとし、離脱すればそれを「国民医療サービス(NHS)」の財源にできると主張していた。しかし、実際は拠出金の3分の2が補助金として英国に払い戻されており、実際の拠出金は「週1億8800万ポンド」であった。離脱派は、国民投票後に誤りを認めた。ファラージ党首は、批判を恐れて「逃げた」のである。

 また、離脱派は国民投票でEU諸国からの移民制限を主張していた。だが、EUとの離脱交渉の過程で、EUとの「自由貿易協定」を結ぶ一方でEUからの移民を制限するという、英国にとって「都合のいい話」を、EUに強く拒否された。すると離脱派は「移民がゼロになるわけではなく、少し管理できるようになる」と主張を修正したのだ。

 離脱派が、「EUへの拠出金」や「移民制限」で過剰な主張をしてしまったのは、離脱派と残留派が大接戦となった国民投票に勝利しなければならなかったからだ。そして、その後にその主張の修正・撤回に追い込まれたのも、それが国民投票の過程での主張だったために、非常に重い「説明責任」を求められることになったからである。

メイ首相の粘り強い交渉が
オープン・ブレグジットへの道を開いた
 そして、メイ首相が、移民制限を優先し、EUの単一市場や関税同盟から脱退する「ハード・ブレグジット(強硬なEU離脱)」路線から、現在の「オープン・ブレグジット(穏健なEU離脱)」路線に姿勢を変化させることができたのも、民主主義的なプロセスが確保されていたからだ(第192回)。

 元々「残留派」であったメイ首相が、国民投票後に首相に選出された当初、「ハード・ブレグジット」路線を取ったのは、保守党内の「離脱強硬派」約50名の造反を恐れたからである。保守党政権は議会で330議席を持つ多数派ではあったが、過半数326にギリギリの議席数を維持していたに過ぎない。離脱強硬派が造反したら、首相は身動きが取れなくなってしまう。首相はEUと簡単に妥協を図ることができず、当初は「ハード・ブレグジット」以外の選択肢を口にすることができなくなっていたと考えられる(第159回)。

 その後、2017年6月の総選挙での敗北で、メイ首相はさらに追い込まれたが、一方でEUとの交渉を粘り強く継続した。2017年12月には、英国とEUが激しく対立して膠着し、離脱後の通商協定や移行期間の交渉に入る障害となっていた英国の「離脱清算金」について合意に達した。

 そして、2018年7月、通商協定の交渉でメイ首相は、(1)EUとの間の移民の自由な移動は制限する、(2)EUと共通の規格や基準を規定した新ルールブックを締結し、EUとの自由貿易圏は離脱後も維持する、を柱とする新方針を打ち出した。これは、従来の「ハード・ブレグジット」路線から「オープン・ブレグジット」路線への転換を示すもので、首相別邸の名前を取って「チェッカーズ案」と呼ばれた(第192回・P.3)。

 だが、これはEUからすれば、英国にとって都合がよすぎるものだった。EUからすれば、英国を自由貿易圏にとどめたまま、「移民の制限」を認めてしまうと、それにならってさまざまな加盟国がドミノ倒しのように「移民の制限」を求め、離脱に走るような事態になりかねない。これは、EUには受け入れがたいことであり、チェッカーズ案は拒否された。

 一方、ジョンソン外相、デービッド・デービスEU離脱相などの「離脱強硬派」の閣僚が、相次いで反旗を翻し辞任した。これまで、強硬な主張を続けてきたが、ハード・ブレグジットの困難さを直視させられて、「逃げた」と嘲笑されている。

 そして、今回の「離脱協定案」の交渉間レベルでの暫定合意である。しかし、閣僚の辞任が続き、保守党内は事実上、分裂状態となってしまった。メイ首相がどこまで政権を維持できるか、不透明な状況である。

 だが、一方でメイ首相がEUとの厳しい交渉を粘り強く、しかも英国民のみならず、全世界の人がオープンにそれを見られる「民主的な形」で継続し、少しずつ合意を形成していったことで、ハード・ブレグジットは無理筋だという世論を次第に広げていったことは、重要だと考える。

ポピュリストに身を引かせた
英国の成熟した民主主義の凄み
 現在、英国内には、英国のEU離脱の是非を問う「国民投票」の再実施を求める動きが広がっている。それは市民レベルにとどまらず、サディク・カーン・ロンドン市長や、ゴードン・ブラウン元首相ら、指導者レベルにまで広がっていることが注目される。今、国民投票を実施すれば、残留派が勝利するという世論調査もある。もちろん、国民投票の再実施は、あまりにもハードルが高く、現実的ではない。

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されます。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)
 保守党内の離脱強硬派は、これまでの交渉経緯で明らかになったことから、本当に「合意なき離脱」となった時に起こる混乱をよくわかっている。本当に「合意なき離脱」となったら、猛批判を浴びて、彼らの政治生命は終わる。

 むしろ、彼らの本音は「オープン・ブレグジット」が決まった後に、「本当は我々の主張通りがもっとよかった」と、都合のいいことを言い続けたいということだ。それがポピュリストであるジョンソン前外相の、次期首相を狙う「隠れた戦略」かもしれないのだ。

 また、保守党が本当に分裂して、解散総選挙になったら、労働党に政権を渡してしまう懸念が大きい。主要産業の再国有化を訴える極左のジェレミー・コービン労働党党首が首相になるような事態は、主張の違いを超えて、すべての保守党議員にとって、最も避けねばならないことである。

 筆者は長期的に見れば、「オープン・ブレグジット」は、泥船であるEUに残留するよりもベターな解だと考えている(第149回)。最終的に、英国政治は「カオス」を乗り越えて、EU離脱のあり方に1つの「解」を出すだろう。それは、さまざまな間違いや、混乱からも学び、それを修正して進むことができる、民主主義の持つ「凄み」なのだと考える。

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

4. 2018年11月21日 22:16:58 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[148] 報告

GRI(グローバル・リスク・インデックス)が点灯 リスク回避で円のポジション30%に
DeepMacro FXストラテジー
広木 隆 2018/11/21
PORTFOLIO OVERVIEW( 19 Nov 2018)
久しぶりにGRI(グローバル・リスク・インデックス)が点灯した。リスク回避的なポートフォリオとするため、

流動性の高い通貨を選択する。円のロング・ポジションを30%に高めた。バリュエーションの魅力は薄いがユーロ

もロングに転換した。反対にコモディティ通貨で小国の豪ドル、NZドル、カナダドルはショートを拡大した。通

常はリスク回避局面で選好されるスイスフランは、グロース・バリュエーションともスコアが悪く、若干ショート

を縮めるにとどまっている。
FX-1 STRATEGY Current Portfolio as of 19 Nov 2018
「+」の符号はその通貨のロング(買い持ち)を、「-」の符号はショート(売り持ち)を示す
現在のポートフォリオ
(Nov 19) 豪ドル
AUD ユーロ
EUR 英ポンド
GBP NZドル
NZD カナダドル
CAD スイスフラン
CH 日本円
JPY ノルウェークローネ
NOK スウェーデンクローナ
SEK
成長要因 -3.7 +6.8 -18.6 -2.6 -7.2 -13.6 +26.8 -5.9 +14.9
キャリー 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
バリュエーション -1.5 -16.1 +7.8 -4.2 -10.1 -18.1 +14.1 +10.1 +18.1
グローバル・リスク -11.3 +17.7 +5.8 -13.2 -12.9 +5.6 +25.6 -2.1 -5.7
ポジション調整 +7.9 -3.8 +2.1 +9.7 +14.9 +12.8 -36.5 -0.7 -13.4
最終ウェイト -8.5 +4.5 -2.8 -10.3 -15.3 -13.3 +30.0 +1.4 +13.9
ネットUSD(米ドル)ウエイト:+0.4
前回のポートフォリオ
(Nov 12) 豪ドル
AUD ユーロ
EUR 英ポンド
GBP NZドル
NZD カナダドル
CAD スイスフラン
CH 日本円
JPY ノルウェークローネ
NOK スウェーデンクローナ
SEK
成長要因 -0.2 +8.5 -15.2 -7.3 -6.1 -11.7 +28.9 -6.0 +16.0
キャリー 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
バリュエーション -1.5 -16.0 +7.9 -4.1 -10.1 -18.2 +14.1 +10.1 +18.2
グローバル・リスク 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
ポジション調整 +0.6 +2.7 +2.6 +4.0 +5.8 +10.6 -15.3 -1.5 -12.2
最終ウェイト -1.1 -4.8 -4.7 -7.3 -10.4 -19.2 +27.7 +2.6 +22.0
ネットUSD(米ドル)ウエイト:-4.7
https://media.monex.co.jp/articles/-/10505 

• 2018/11/14ほぼ変わらず 円と北欧通貨のみロング
今週はポートフォリオにわずかな変更しかない。最も大きなポジション変更は、スイスフランのショートを減らし

た点だ。グロースファクターが少し改善した。豪ドルはグロースファクターが若干ながらマイナスに転じ、ポジシ

ョンもわずかなショートになった。

この結果、ロング通貨は円と北欧通貨のみとなった。残りはすべてドルに対してショートであるが、それでもドル

のネット・ポジションは5%弱のショート。残りの通貨のショートを相殺して余りあるほど、円とスウェーデン・

クローナのロングが大きいということである。

グローバルリスク指標(GRI)は変わらない。リスクアペタイトは悪化しているが全面的な「リスクオフ」領域に

はない。GRIは横ばい状態にあり、最近のレンジの下限にあるが安定している。これは、10月の株価急落がシステ

ミックな問題ではなく、行き過ぎたバリュエーションだということをより反映していると考えられる。

• 2018/11/07ユーロのショートを削減し、円のロングを拡大した結果、ドルのポジションはネット・シ

ョートに
変更はニュートラルに近い小幅ロングだったカナダドルを5%弱のショートにしたのみである。あとはすべてウェ

イトの変更である。グロースファクターの変化により、スイスフランのショートを拡大した一方、ユーロのショー

トを削減した。ロング側では円のロングポジションを高めた。その結果、ドルのポジションはネット・ショートに

転換した。
• 2018/10/31ユーロを大きくショートに ドルも円もロング
最大の変化は、ユーロを相当程度のショートにしたことである。先週ユーロは、グロースファクターがプラス成長

に持ち直しバリュエーションの割高さを相殺したため、いったんはニュートラルまで戻した。しかし、ユーロのグ

ロースは再び悪化してしまった。現在はユーロが最大のショートである。同様に、英国のグロースも悪化し、グロ

ースファクターだけを見ればG10通貨のなかで最悪である。しかし、バリュエーションがそれを相殺するくらい割

安なので、小幅なショートにとどまっている。一方、スイスはバリュエーションが若干改善、ショート幅が縮小し

た。
ドルがネット・ロングポジションに浮上した。グロースの改善が寄与した。カナダも同様でニュートラルに近いロ

ングに転換。円が最大のロング通貨である。
我々は、グロースの差異が通貨選択の基本テーマであると考えている。しかし一方でまた、足元のボラティリティ

がこれほど激しいなか、通貨がファンダメンタルズ通りに取引されていることは幾分驚くべきことである。今年の

初めに見られたリスク水準をまだ上回っていないことを考えると、まだこのテーマをあきらめることはないと思わ

れる

 
米国利上げいつまで?!ゴールドマンも円強気転換
大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX
大橋 ひろこ 大橋 ひろこ 2018/11/21
FX
これまで円安を予想していたゴールドマンサックスが円強気予想に転じました。今後1年で108円まで徐々に円高

ドル安が進行するというものですが、10月に日米の株価が大きく下落しても動じなかったドル/円相場が、この先

下落して行くというのはどういうことなのでしょうか。

2018年、ドル/円相場はVIXショックでは年初の112円台から104円台まで8円もの円高ドル安進行となったので

すが、10月の株式下落時には114円台から111円台に3円程度下落しただけでした。株式下落に相関しなくなった

ドル/円相場の背景には、ゼロ金利にあえぐ日本の機関投資家勢が利回りを求め外債投資を積極化しているため、

下値が支えられていると指摘されてきました。

日本国債は長期債でも高くても利回り0.2%程度ですが、米国債は3%を超える利回りがあります。この金利差を求

めてマネーが日本から米国に流れる過程で、円売りドル買いが起こっていた、というものですね。

しかし、足下ではドル/円相場が下落基調に入ってきています。ゴールドマンサックスはここからの円強気(ドル

/円相場下落予想)の理由として米国の経済成長減速と、日本銀行の景気刺激策縮小見通しを指摘しています。足

下では米国経済は絶好調とされていますが、市場関係者の間では米国景気後退の「炭鉱のカナリア」探しが静かな

トレンドとなりつつあります。

炭鉱のカナリアとは危機が迫る予兆を知らせるものですが、米景気後退入りを示唆する指標として有名なのが「米

国債長短金利の逆転」があります。通常、金利は長期になればなるほど高くなります。しかし、近年では短期金利

上昇の勢いが強く、短期金利と長期金利の差が縮小しています。過去の経験則から、短期金利が長期金利を追い抜

いて逆転してしまうと、ほどなくして(半年から1年後ほど)で米国は景気後退(リセッション=2四半期連続で

GDPがマイナス成長となること)が起きることが確認されています。

他にも、

「景気先行指数が前年同月比でマイナスとなると1年弱で、」

「住宅系指標がピークアウトすると1年ほどで、」

「企業利益率(企業利益/国民所得)がピークから3%程度低下するとほどなくして、」

「ISM製造業景況指数がピークアウトすると、、、」

などなど、市場関係者がウォッチするカナリア指標は多岐に渡ります。その全てを検証していませんが、市場では

2019年〜2020年には米国は景気後退入りするとする見方が増えつつあります。

こうした中、先週11月16日、FRBのクラリダ副議長が政策金利について「(景気を過熱も冷やしもしない)中立

金利に近づいている」と述べたことを受け、米国債利回りは急低下となりました。今後FRBによる利上げ回数は想

定されるほど多くはないとの見方が一気に広がったのです。

年内は12月FOMCでの利上げはほぼ織り込まれているとされてきましたが、CME Fedウォッチの12月の利上げ織

り込みは70%前後に留まっており、12月FOMCでの利上げにも懐疑的なムードも醸成されつつあります。仮に12

月の利上げがあったとしても、2019年はどうでしょう。中間選挙ではねじれ議会となった米国トランプ政権が通

せる政策も限定的になるとみられる中、3回も利上げできる強さが続くでしょうか。

米国利上げの打ち止め時期はいつか。これが為替市場の新たなテーマとなりつつあります。そうなると利上げを見

込んで買われてきた米ドルの上昇にもブレーキがかかることに。他方、イタリア財政問題やドイツの政情不安に揺

れる欧州ですが、金融政策だけを見れば年内にECBによるQE(量的緩和策である資産購入プログラム)は終了す

る見込みで、来年夏以降には利上げが見込まれています。日銀の金融緩和策は継続中ですが、その継続には限界が

あるとして出口論も活発化してきています。

となると、2018年ドル一強であった相場はいよいよ終盤。ドル安がトレンドとなる相場が近づいているとの見方

が広まりつつあり、ゴールドマンサックスの円強気転換は市場の変化を確信的にする象徴的なニュースであると思

っています。


大橋 ひろこ
大橋 ひろこ
フリーアナウンサー
フリーアナウンサー/ナレーター/個人投資家。福島県出身。アナウンサーとして経済番組を担当したことをきっ

かけに自身も投資を始め、現在では個別株、インデックス投資、投資信託、FX、商品先物と幅広く投資している

。個人投資家目線のインタビューに定評があり、経済講演会ではモデレーターとして活躍する。自身のトレードの

記録はブログで赤裸々に公表しておりSNSでの情報発信も人気。一時期は海外映画やドラマの吹き替えなど声優と

しても活動していたが、現在は経済番組に専念。現在ラジオNIKKEIなどで経済番組レギュラーを多数抱え、キャ

スターとしても多忙な日々を送っている。
大橋 ひろこ の別の記事を読む
https://media.monex.co.jp/articles/-/10501

 
主力ハイテク株の動きを注視する
ズバリ!江守哲の米国市場の”今”
江守 哲 2018/11/21
• 米国株
懸念されるハイテク企業の中国撤退リスク
米国株は再び不安定な動きになっています。11月18日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で

は、米国と中国の意見が対立し、首脳宣言採択を断念する異例の結果となりました。
両国の主張の開きが大きいことが浮き彫りとなり、市場では貿易摩擦が早期に解決されるとの期待が後退したこと

が背景にあります。また、アップルが9月に発表したiPhoneの新モデル3機種について、ここ数週間で生産の発注

を減らしているとの報道がありました。それによりアップル株やサプライヤー株が急落し、他の主要ハイテク株に

も売りが膨らんだことも株安につながっています。
さらに、画像処理半導体大手エヌビディアが発表した同社の第4四半期の売上高見通しが、市場予想を下回ったこ

とも材料視されています。主要株価指数を比較すると、ハイテク株の比率が多いナスダック指数の軟調さが目立ち

ます。
ハイテク株は金利上昇に弱いと言われており、10月の急落は金利上昇が理由だったとの見方が多いようです。しか

し、最近は米国債への資金流入が目立つ中、市場金利はむしろ低下傾向にあります。それでも株価が戻らないこと

を考えれば、主力ハイテク株の下落は金利動向だけが原因ではなさそうです。
今後懸念されるのは、ハイテク企業の中国撤退リスクでしょう。米国の対中政策が強硬な背景は、貿易問題だけで

はありません。より重視しているのは国家安全保障問題です。
その中で重視されているのがハイテク技術の漏洩問題です。これを避けるために、中国からの撤退などが進むよう

だと、生産コストの上昇につながり、ハイテク企業の業績が悪化する可能性があるというわけです。
消費市場としての拡大期待がある一方で、生産拠点としては受容性が低下していきそうです。金利の低下がハイテ

ク株の支えにならず、さらに米中のハイテク戦争が追加的な圧力になるとすれば、米中首脳会談での追加関税問題

に関する「手打ち」は期待しづらくなるでしょう。
米主力ハイテク株価がかなり明確に下げ始めている
一方で、トランプ政権が政策運営を強硬に進めることができたのも、株高基調が続いていたからです。そのため、

トランプ大統領が今の米国株の不安定な状況をいつまで放置するのかも気になります。市場では今なお、サプライ

ズ的な演出により、株価水準の回復が図られるとの期待が高いといえます。
しかし、そうならなかった場合の反動は大きなものになるでしょう。そのため、米中首脳会談に過度に期待するの

は避けた方がよさそうです。
ハイテク株はこれまで割高に買われてきた経緯があるとはいえ、投資家の期待感が高かったことも事実です。しか

し、「FANG」と呼ばれるフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、アルファベットの株価

がかなり明確な形で下げ始めている点は大いに懸念されます。

【図表1】 ナスダック総合指数と米主力ハイテク株の推移

出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成

過去に「ハイテクバブル」「ITバブル」などと呼ばれた2000年までのナスダック指数の上昇から下落に至る値動

きと、現在のFANG銘柄の株価動向を比較すると、かなり似たような動きになっているように見えます。
ちなみに、ナスダック指数は、1985年以降で第1四半期(1月〜3月)に下げたことがありません。つまり、年末に

ナスダック指数を買い、3月末に売却すれば、過去はすべて利益になっています。
しかし、今回はどうなるでしょうか。現在のFANGを代表する主力ハイテク株がハイテクバブル時と同じように大

幅に下げると見る向きはほとんどいません。しかし、歴史的な上昇後の下落局面にあることや、これらの銘柄群が

下げた場合の市場へのインパクトが大きいだけに、当面の値動きには最新の注意を払いたいところです。



江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社 代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為

替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。 著書に『LME(ロンドン金属取引所)

入門』(総合法令出版)など 共著に『コモディティ市場と投資戦略』(勁草書房)
江守 哲 の別の記事を読む
https://media.monex.co.jp/articles/-/10502


 
チャイナショック〜BREXIT 2015-2016との相似形
ストラテジーレポート
広木 隆 2018/11/16
• 国内株式

• マネックス
日経平均のサイコロは昨日までで6勝6敗だが、騰落を〇Xで示すと、こうなっている。
〇X〇X〇X〇X〇X〇X
きれいに騰落が交互に繰り返されている。これを見ると、今日は〇、上昇すると思いたくなるが、果たして日経平

均は反発して始まり、寄り付きから30分経過した現在もプラス圏を維持している。
〇X〇X〇X〇X〇X〇Xの並びに何か意味があるのだろうか。9分9厘ない。
〇X〇X〇X〇X〇X〇Xとなったのは偶々で、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇も、XXXXXXXXXXXXも珍し

くはない。実際、昨年の秋には16連騰もあった。過去12日間の騰落が〇X〇X〇X〇X〇X〇Xとなった後、13

日目の今日の日経平均が上昇して始まったのは、昨日のNY市場でダウ平均が5日ぶりに反発したからだ。〇Xの並

び方とは関係ないだろう。
われわれは、ある連続したパターンが起こると、そこに何かしらの意味を見出そうとしてしまう。バスケットボー

ルで連続してシュートを決める選手のことを「やつはHot Hand持っている!」などという。次のシュートもまた

入るに違いないと期待する。しかし、フィラデルフィア76ersのある日の試合でデータを分析したところ、3本以

上連続してシュートを決めた選手の4投目は外れる確率が5割より高く、逆に3本以上連続してシュートを外した選

手の4投目は入る確率が5割より高かった。つまり、平均に回帰するのである。
われわれは、ランダムなものをランダムであると認めるのが苦手である。『ブラックスワン』で有名なニコラス・

ナシーブ・タレブは「講釈の誤り」という概念を指摘する。われわれは、本来ランダムな動きに過ぎないものをス

トーリー(講釈・物語)に落とし込もうとする。因果関係はないのに、たまたま相関がある、なんてことはざらに

ある。
英国政府の要請で市場改革案をまとめた「ケイ・レビュー」で有名なジョン・ケイはうまいことを言っている。
「ランダムに生まれたデータの中に特定のパターンを探そうとすると、心は温まるが懐は寒くなる。」
過去に何度も同じようなレポートを書いてきた。乱数を発生させてウィナー過程で人為的な株価チャートを描く。

それとそっくりな日経平均の動きがたくさん見つかる。そこにいかようにでもトレンドラインを引くことができる

し、移動平均との関係を指摘することもできる。100%、偶然によって描かれたチャートでも、極めて「もっとも

らしい」説明をつけることができる。これが、チャート分析がいかに当てにならないか、ということの証明である


そうしたことをじゅうぶんわかったうえでチャートの形状についての話をしよう。1カ月前の10/12付ストラテジ

ーレポートではこう述べた。
<今回の米国株安は、早い段階から予見していた。例えば3月7日のレポートでは、マーケットが一度大きく崩れる

と、完全に底が入るのには時間がかかると述べている。10年前のリーマンショック、3年前のチャイナショックを

例に引き、最初の暴落の半年後に2番底を探る動きとなったことを指摘。それに倣えば、今年の秋に2番底模索の展

開となるシナリオを提示した。>
暴落があると、それから半年前後で2番底が来る。2015年のチャイナショックのケースでは翌年の2番底は原油安

を伴う株価急落であった。

WTI原油(ローソク足)とNYダウ平均(折れ線)2015年7月29日〜2016年3月1日

出所:Bloomberg
そして今回もそのパターンになっている。2月の急落に続いて10月に金利上昇によるバリュエーション調整で始ま

った米国株安は、リスク・パリティのポジション調整といった下げの第2局面を経て、現在は第3局面に入っている

という認識だ。この第3局面の背景は原油安である。NYMEXのWTI原油先物は13日までXXXXXXXXXXX

Xを記録。サイコロで全敗、12日続落という史上最長の下落となった。
原油先物のカーブを見ると、それほどコンタンゴが強くないので割安感はいまひとつだが、とりあえず年初来安値

に並んだところで反発している。ここで原油に下げ止まり感が出れば、米国株も落ち着こう。この先は今月末の米

中首脳会談次第だが、将来の交渉「枠組み」で合意との観測も報じられている。期待したいところだ。
しかし、米中首脳会談がポジティブとなり年末にかけて戻りを辿ったとしても、年明けは要注意である。英国の

EU離脱交渉の大詰めが待っている。EUとの間で離脱条件の「合意なし」を避けられるかの判断期限は来年1月21

日。EU離脱は3月末だ。Hard BREXITの可能性が高まった場合、市場は大荒れとなるだろう。何が起こるかは予

想できない。しかし、「何か」が起きた時に市場がどう動くかは予想可能である。ニュースそのものが重要なので

はなく、そのニュースに市場がどう動くかが重要だ。
2015年夏のチャイナショックは、2016年の年明けから原油安で2番底模索となった。そしてその5か月後、6月の

英国民投票でEU離脱が決まりBREXITショックが起きた。中国不安、原油安、そしてBREXIT。3年前とまったく

同じ材料に市場は直面している。市場サイクルは「小回り3カ月、大回り3年」という。オークツリー・キャピタル

会長のハワード・マークスは、新刊『市場サイクルを極める』の中で、「この先どうなるかは知る由もないが、い

まどこにいるかについてはよく知っておくべきである」と述べている。

広木 隆
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。 国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファン

ドマネージャー等を歴任。 長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。 2010年より現職。

青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSテレ東「日経プラス

10」、日テレNEWS24「まーけっとNAVI」、J-WAVE「JAM THE WORLD」等のレギュラーコメンテーターを務

めるなどメディアへの出演も多数。 マネックス証券ウェブサイト

https://info.monex.co.jp/report/strategy/index.html)にて、最新ストラテジーレポートが閲覧可能。 著書

: 「ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論」(ゲーテビジネス新書) 「9割の負け組から脱出する投

資の思考法」(ダイヤモンド社) 「勝てるROE投資術」(日本経済新聞出版社)
https://media.monex.co.jp/articles/-/10479

5. 2018年11月22日 19:02:04 : ughNs283sg : @HlW4yT9_Z8[2] 報告
逃げ場断つ 無理に作った 株高が

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