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2018年11月21日 ロイター
社会保障費の歯止め見送り、景気最優先 財政危機に警鐘も
社会保障関係費をめぐり、歳出をコントロールするための目安やコスト抑制の方針を明示することは見送られた
11月20日、経済財政諮問会議では、社会保障関係費をめぐり、歳出をコントロールするための目安やコスト抑制の方針を明示することは見送られた。2017年6月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
[東京 20日 ロイター] - 20日の経済財政諮問会議では、今後の経済財政運営方針が議論されたが、社会保障関係費をめぐり、歳出をコントロールするための目安やコスト抑制の方針を明示することは見送られた。2019年10月からの消費増税を前に、景気腰折れの回避を最優先にする政府のスタンスがにじみ出た。
だが、22年度から30年度にかけては急速に高齢化が進むと予想される。このまま財政規模の膨張を放任した場合、国内貯蓄で財政をファイナンスできない事態に直面すると警鐘を鳴らす専門家もいる。
社会保障費の伸びについて、これまで政府は16─18年度の3年間で1.5兆円程度というシーリングを設けていた。
10月時点の同会議では、民間議員から、従来の年間5000億円の伸びを下回る額に抑制することが可能との意見が提示されていた。19年度の高齢者人口(65歳以上)の伸びが0.9%程度と、過去3年間の1.7%程度より減速するとの試算から、高齢者人口の伸びが緩和されるためとしていた。
しかし、この日の会議で示されたのは、19年度の社会保障関係費は「経済・物価動向等を踏まえ、2021年度まで実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す」という、今年6月に発表された新経済・財政再生計画で示された目安を実現すべき、というものだった。
具体的な目安額は提示されず、目安を示す文言も骨太方針から踏み込んだ内容にならなかった。
複数の政府関係者によると、19年10月の消費増税後に景気が冷え込まないよう、十分な対策を打ちたいという意見が政府内で多数派となり、さらに診療報酬の抑制に反発する医療関係者の強い働きかけが影響したという。
全世代型社会保障を目指す安倍首相は、教育無償化の拡大に力を入れ、家計負担を軽減して消費対策にもつなげたいとの考えを再三にわたって表明している。
同時に政府内には、増税で実質的な所得の目減りの影響が大きい高齢者世帯に対する支援策も手厚くしたいとの声が多くなっている。
社会保障関係費を厳しく抑制することは、こうした政府内の意向とは相いれないとみられる。
財政制度審議会の「来年度予算編成に関する建議」(20日発表)でも、今年は社会保障費の目安額を示さなかった。これまで毎年5000億円程度という抑制目安額を明記してきたが、増税が可能となる経済環境を整えることが「先決」と、財務省が戦術を転換した可能性が、政府部内でささやかれている。
財政再建を重視する政府関係者は「価格上昇の激しい薬や医療高度化により、放っておけば、社会保障費は高齢者人口の伸び以上に拡大する。できれば4000億円前後といった目安額を示したいとの思いはあった」と打ち明ける。
政府内からも20日の諮問会議で、具体的な抑制額や踏み込んだ文言が示されなければ「最も財政に影響の大きい社会保障費の策定が、ブラックボックスの中に入っってしまう。財政拡大に歯止めが効かない」と嘆く声もあった。
さらに中長期の財政状況を見通せば、2022年度から30年度にかけて、75歳以上の後期高齢者が急増する(国立社会保障・人口問題研究所)が、この年齢層では1人当たり医療費の国庫負担が前期高齢者の5倍に膨らむ。
今のうちから社会保障費の抑制に取り組まなければ、財政再建はままならないことは誰もが認識している。
立正大学経済学部の池尾和人教授は「2020年代には国内貯蓄で巨額の財政をファイナンスできなくなる可能性が高まり、財政の様相も変化するだろう」と指摘する。
しかし、複数の政府関係者は「今は25年度基礎的財政収支の黒字化目標達成のことなど考えていない」と認めている。
(中川泉 編集:田巻一彦)
https://diamond.jp/articles/-/186302
今マイナス金利やめた方が景気・物価に好影響−小枝氏インタビュー
日高正裕、藤岡徹、竹生悠子
2018年11月21日 5:00 JST
実証分析で利上げ条件を2%から1%に下げた方が物価を上昇させる
理論が発展段階にある時、データに語らせるとこういうふうになる
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
小枝淳子早稲田大学准教授はブルームバーグのインタビューで、日本銀行が今、マイナス金利を撤廃した方が景気や物価に好影響を与える可能性があるとの見方を示した。日銀の金融研究所は今月5日、約2年前にマイナス金利を撤廃していた場合の景気や物価への好影響を指摘した小枝氏の英語論文を公表した。
小枝氏は、日銀が今、マイナス金利を撤廃した場合の影響について、まだ実証分析してないので断定はできないとしつつ、総括的な検証を行った2016年9月に比べて景気が良く、物価上昇率も高く、潜在成長率も今後上昇が見込まれるのであれば、「利上げをした方がしなかった時に比べ、経済活動や物価を押し上げる方向に働く可能性がある」と述べた。インタビューは19日に行った。
黒田・日銀総裁Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
小枝氏の論文「量的・質的緩和のマクロ経済の影響」は1995年から2016年末までのデータを基に、実際に起きた現実と別の想定でシミュレーションを行い、政策効果を定量的に評価するカウンターファクチュアルと呼ばれる手法で実証分析を実施。日銀が16年1月に採用した0.1%のマイナス金利を同年9月に0%に引き上げていた方が、景気や物価に好影響を与えた可能性が高いという結果が得られた。
小枝氏は元国際通貨基金(IMF)エコノミストで、昨年10月から1年間、日銀金融研究所の客員研究員を務めた。「この論文は研究者としてデータをしっかり分析して結果を報告しようという動機で執筆した。政策提言をしているわけではない」と強調した。
市場では、金融研究所が現政策に反する論文を公表したことで、日銀が金融政策正常化に向けて布石を打ったとの見方も出ている。黒田東彦総裁は20日の国会答弁で、同論文は「日銀の公式見解ではない」と言明。マイナス金利は「現時点では大幅な金融緩和の一環として必要」と述べ、市場の観測を否定した。
日銀は13年4月、2年で2%の物価目標の達成を掲げて量的・質的緩和を開始したが、5年半たっても達成は程遠い状況だ。日銀は現在も、2%を安定的に持続するため必要な時まで現行の金融緩和を継続することや、安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続すると約束するなど、2%にひも付けた政策運営を行っている。
小枝氏の実証分析では、利上げ条件を1%に引き下げた場合、潜在成長率が強ければかえって物価を上昇させるという結果が得られた。景気が十分強ければ、物価上昇率が2%に達する前に利上げしても、「利上げ後にそれほど引き締めなくてもよくなる」と指摘。長期目標として2%を変える必要はないが、「必ずしもそれを利上げの条件にしなくてよいのではないか」と語る。
日銀の試算によると4−6月期の潜在成長率は0.78%だが、小枝氏は「そこそこ強い」と指摘。今後も0.8%前後の潜在成長率が続くと仮定すると、物価2%を利上げの条件にするより、1%の方が経済、物価に好影響を及ぼすとの見方を示す。
主流派経済学の標準的なモデルでは「利上げの条件を引き上げるとあまりにも景気や物価に効くのでパズル(謎)と言われている」と指摘。「理論的なものが発展段階にある時に、実証分析によりデータに語らせると、こういうふうになる」と論文の意義を語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHHFB6TTDSA01?srnd=cojp-v2
日銀金融政策の今後(田口美一)
日銀のインフレ目標はギブアップすべき?
田口講師:私の整理では、アベノミクスでは中央銀行として日本銀行がやったことはある程度効果があり、実体経済では円高阻止、株安阻止も結果的にはうまくいきました。経済も非常に順調に回復し、むしろ回復期としては非常に長い、5年超の経済成長に寄与してきたと思います。ただし、この中でたくさんの国債を日銀が買ってしまったので、その出口戦略をどうするかという問題が残っています。また、日銀ではありませんが、日本政府、あるいは財務省が巨額の国債残高を抱えているわけですが、これをどのような道筋で解消していくのか、この二つが大きな宿題として残っています。
日銀は7月の終わりに緩和策の枠組み強化として一連の内容を打ち出しました。緩和を強化するのか、出口に向けた準備をしているのかよくわからない、矛盾のある内容だったと思います。コメントでは緩和策の強化と言ってはいるものの、政策の具体的発動では、10年国債の0%を維持と言いながら、変動許容幅は±0.2くらいまでよいという言い方をしていて、一体どういう思惑なのかとなったわけです。平たく考えれば、そうは言ってもやはり出口戦略に向かって、国債の金利が0やマイナスというのはまずいので、少しずつ調整を図っていくのだろうというのが読み筋だと思っています。実際に10年国債の金利を見ても、足元では0.15%位まで上昇しています。
さらに、黒田日銀総裁の公表している政策の推移の中で、最も注目すべきは国債購入で、80兆円としていたものを変更せず、今もそのままにしています。
ところが、実際そのペースで日銀が買っているかと言うと、日銀の国債残高の推移をプロットした表を見ると、2013年あたりから80兆近いペースで買ってきていたものが、実はすでに2017年から30兆円に減っているのです。そして今年は9月までのところで約22兆円となっています。このようにすでに無理が出てきているのです。実際に資産サイドに負債もついてきているのは当たり前のことで、そもそも5年ほど前から最後のポイントだと指摘してきた銀行券については、3兆円から5兆円ほどは伸びていたわけですが、やはりここにきて急激にストップがかかっています。国債を買っていないわけなので当然、当座預金もそれほど伸びてはいません。掛け声では80兆円と言っても、実際のところはすでに購入ペースは半分以下のところまで落ちてきているのです。
日銀が異次元緩和を始めたところからの株と為替の推移で考えると、最初の2年ほどは効果が絶大でした。2016年以降は効果が全くないという見方もありましたが、ここまで時が経ち5年間を振り返ると、株価は落ちておらず、為替もトランプ政策があったとはいえ円高には戻っていません。これだけ大規模なことを続けてやり、しかも国債購入ペースが80兆円から40兆円程度に下がっていても、急に逆戻りはせず、かなりの効果が続いているという評価もできるのです。
また、CPI(除く生鮮食品)をコアインフレ率と日本では呼んでいますが、その水準は1%に向かってゆるゆると落ち込むこともなく徐々に切り上げる動きとなっていて、それほど悲観する状況ではないと思います。世界を見ても、アメリカは2%にしっかり乗ってきていますが、ユーロは1%を割ってきています。イギリスあたりも2%後半から足元はまた落ちてきています。世界で言うコアインフレ率は、生鮮食品とエネルギーを除くもので、日本ではコアコアと言われているものになり、0.4%となっています。しかしこの0.4%も、マイナスから比べると、プラスになってきているわけです。
そもそも2%は、海外に比べて日本の目標としては高すぎるのではないかということを、元日本銀行幹部でみずほ総研エコノミスト、門間氏がデータで示しています。日本はバブル期から世界に比べてインフレ率が低いという話で、海外で2%といった目標は日本では0%でもおかしくないのではないかというコメントを週刊エコノミストに発表しています。
また、やや専門的ですが、最近アメリカでよく言われていることがあります。失業率が下がるとインフレが上がってくることを示すのがフィリップスカーブで、図では縦軸と横軸を逆に取っています。普通は景気が絶好調になってくると失業率が下がっていき、ある時点より低下するとインフレが顕著になってくると言われているのですが、これが最近では失業率が下がってもあまりインフレ率が上がっていないということがディスカッションされています。つまり、現在日銀が消費者物価2%を達成するために死に物狂いでやるということ自体に、どこまでの意味があるのかということが取りざたされているのです。
金融政策の今後として、日銀は2%をギブアップした方がわかりやすいのではないか、また国債、株、リートも、そろそろ購入減額を明確に示した方が良いのではないか、ゼロ金利は一旦終わったという話を始めても良いのではないか、と思うのです。少し古い話ではありますが、2015年に元日銀の田幡氏がIMFからの要請で行った調査で、金融政策の正常化には相当な時間がかかると結論づけています。特にその当時で日本は20年以上、アメリカとヨーロッパでは10年かかると言われていました。しかしアメリカについてはこのときの予測よりも速いピッチで出口を進んでいるのです。日銀の金融政策の今後が注目されているわけです。
動くきっかけはアメリカ?
ゲスト白川浩道氏(クレディ・スイス証券 副会長、チーフ・エコノミスト):まず2%のターゲットはナンセンスだという気がしています。日本は2%という数字を達成しようとすると、これには統計的な問題もありますが、中に入っている家賃等の全体に占めるウエイトは3割くらいあるのですが、家賃の上昇率は0%あるいはそれ以下なのが実態です。どの国でも公共サービス系の物価、例えば教育費や運賃、家賃が、制度として上がっていくものなのです。そうした国で消費者物価2%を達成するという事は、それほど生活必需品の物価に負担がかからないのですが、日本の場合はそういうところが動かないので、全体で消費者物価を2%上昇させようとすると、食料品が10%も上がらないと達成できない訳で、これは無理な話なのです。
このような統計的なことを少し勉強すると、より現実的な物価というものがあり得ると考えられます。ないしはもう少し公共的なものも上げていく、インデックス化して賃金として上げていくというような何かをやらないと、突然2%という数字だけを与えられてなんとかしろと言われても、現実的に無理なのです。
ただ問題は、日銀だけでギブアップできないという問題があるということなのです。もうギブアップしたいし、しようと思っているので、2%達成不可能という見通しを彼らも作っているわけで、ほぼギブアップしてしまったと言えます。しかし、政府がまだギブアップしておらず、やることの意味を自らも問わないので、議論が完全に停滞し、フリーズ状態になっているのです。
これはやはり誰かが指摘した方が良いと思うのですが、日銀が言っても誰も聞かず、政府でも誰も言わないので、これは永遠に残るのではないかとすら思います。日銀はすでに誰かに助けを求めている状態ですが、日銀側からは言い出せません。おそらく政府も政権が変わらなければ言わないでしょう。
1つのチャンスは、他の国あたりから言ってもらうことです。日本はもともと無理なことをやっているのではないか、為替を安く誘導しているのではないか、無理なことを目標にしていること自体、実は何か下心があるのではないかと、トランプ大統領に言ってもらうのが一番良いのです。そうすれば大きく変わることになるでしょう。しかしそれを彼が言わなければ、何も動かないだろうと思うのです。私がもしアメリカの大統領だったら、それは無理なのではないか、下心があるのでしょう、為替を安くしているだけだろうと言い、簡単に終わらせることなのです。しかしそれを言ってくれなければ、何も変わらないという気がしています。
(下心があるのでしょう、 私がもしアメリカの大統領だったら、「それは無理なのではないか、為替を安くしているだけだろう」と言い、簡単に終わらせることなのです。しかしそれを言ってくれなければ、何も変わらないという気がしています。)
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「株式・資産形成実践コース」講師
田口 美一
11月6日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【次回の記事】米利上げが与える新興国への影響(唐鎌大輔)
【前回の記事】新たな時代の日中関係(大前研一)
https://asset.ohmae.ac.jp/mailmagazine/backnumber/20181114_1/
米利上げが与える新興国への影響
唐鎌大輔
新興国の局面変化
2010年を起点としたときの、新興国への累積資本流入額を見ると、2017年に多くの資本が入り、その後に流出が始まっているのが分かります。これは当たり前の話で、アメリカが金利をこれだけ上げれば、ドル建ての資産が相対的に魅力的になってきているということです。
裏を返せば、今まで新興国のような政治的なリスクや経済的なリスクを負っている、相対的にリスクの高かった資産は、ドルに比べて魅力が落ちるはずで、そこからお金を抜くしかないのです。したがってその動きが、今始まっているというわけなのです。その意味で局面変化が近いという見方ができるのです。
例えば去年の6月、アルゼンチンが100年国債を発行したという話がありました。その100年国債なども、アメリカでこれだけ金利が付いているのであれば必要ないのです。アルゼンチンは過去100年で5回もデフォルトをしている国であり、無理してそのような国債を買う必要は無いのです。しかし2017年の時には、その100年国債がすごく売れたのです。それはやはりお金が余っていたからです。
しかしこの1年でアメリカはバランスシートを大きく縮小し、これからも縮小していくので、お金の量は世界的に減っていくわけです。その中でどこを削るかというときに、投資家としてはやはり、新興国を削ることになるわけです。こうした動きはこれからも続くと思います。
そもそもアメリカが金融緩和をして、新興国にお金が入ってきたからこうした事態になりました。アメリカが金融緩和をしたときに、新興国にお金が入る段階で資本規制をしておかなければいけなかったのです。量的緩和で新興国にお金が入り、新興国の資産価格が上がることになったわけで、その量を減らした時には、その逆のことが起きるのは当たり前です。金融引き締めをしても大丈夫だと言う人は、徐々にやるから大丈夫だということを言いがちですが、緩和をするときに効果があると言っておいて、止める時には影響がないと言うのはやはり無理があるのです。本来こういうことが起きないためには、資本規制を敷いて量的緩和の影響を新興国が受けないようにするべきだったのです。
しかし、株が上がることを止めるのは、上がって困る人がいないので、非常に難しいのです。このことは、次回同様の局面では、真面目に議論しなければならないことだろうと思います。入ってくるお金で資産価格が加熱しないように、新興国はケアをしなくてはいけないのです。ただそうは言っても、やはり皆バブルが破裂しないとバブルだと気づかないもので、加熱する過程で止めるのは実際難しいだろうと思います。
新興国に入ったお金の中身を見てみると、その60%弱がアメリカの量的緩和要因で、30%弱が低金利要因で、合わせて90%程度がアメリカの金融政策要因によって新興国にお金が入っています。
しかし今、そのバランスシートは縮小していて、金利はどんどん上げているわけなので、新興国の資本は流出して当たり前です。9割近くがそこに端を発しているものなので、どう考えても資本流出は避けられないと言えます。新興国の経済も良いのでお金が残るのではないかという見方もありますが、新興国のファンダメンタルズ要因の資本流入はわずか1%程度なので、1%は残るかもしれませんが、どう客観的に見てもアメリカが利上げを続ける限りにおいては、今後新興国からお金が抜けることは規定路線と言えるのです。
そうしたことを前提に、いろいろな相場や経済の見通しを考えていかなくてはいけないのです。アメリカが元気でアメリカが利上げを続けるという前提に立つと、新興国にお金が入るという事はおそらくありえないのです。わざわざそんなことをする必要がないからです。予想ですが、基本的にはこの資本が出ていくという部分に関しては、ほぼ約束された未来だと言えるのではないでしょうか。
アメリカ経済が耐えられるかどうかというよりも、新興国が耐えられるかどうかが心配だと話ましたが、新興国の経済が何に困っているかと言うと、インフレに困っています。インフレでは通貨安になったら困るわけですが、今世界では、これまで観てきたとおり、新興国からお金が抜けて、新興国の通貨が下がるということが慢性的に起きているのです。そうするとインフレが加速してしまいます。それを止めるために彼らは何をしているかと言うと、通貨防衛です。要するに、利上げをしているわけです。
世界的に新興国の中央銀行は、同時多発的に利上げをしている現状があります。2018年の累積変更幅を見ると、ロシアや南アフリカのように金利を下げた国もありますが、利上げをした国が多くあります。つまり、景気がすごく良くて利上げをしたいというわけではないのに、通貨が下がり続けると国内経済にインフレを通じて悪い影響があるので、防衛をしているのです。結局はアメリカの利上げによってやらされているという格好になっているのです。
これではいずれ経済に対してネガティブなことが起きるという事は容易に想像がつくでしょう。これが続いていくと、ろくなことにはならないという前提で、マクロの見通しを立てるべきでしょう。今後もアメリカがどんどん利上げをし、円安ドル高、米金利も3.5%を超えてという予測をする人はもちろんいますが、この場合新興国はどうなってしまうのかという事は置き去りにされてしまっているのです。
パウエルFRB議長も9月の記者会見の時に、自分たちの政策が新興国に影響を与えているという認識はあると言っています。
しかしまだ自分たちの政策を変えるほどの話ではないと話しています。ということは、変えるほどの話になるという結末も、十分に頭の片隅にあると考えられます。FRBは、新興国を筆頭とする国際金融市場の混乱を理由として、利上げの手を止める、当然米金利が下がり、ドルも下がる、結果として円高になるというのが私の見通しのメインシナリオです。
実際このシナリオが今年に起こると思っていたのです。
しかし、アメリカの経済が凄く強いと、中央銀行としては利上げを止める理由がなくなってしまうのです。NYダウが高く、アメリカ経済が良い状態だと、新興国の資産価格もなんとなく値持ちしたりもするわけです。それにより結局、アメリカが強い限りにおいては、こうしたダラダラした状態が続きます。アメリカ経済に対する認識がFRBの中で変わってくれるほど新興国が混乱しないと、FRBの今の強気な姿勢は変わらないでしょう。
どうなったら目が覚めるのかというのは、端的には株の急落が続く場合でしょう。明らかに今年2月、10月、11月と株が動揺しているので、この動揺を放って置けなくなったときに、FRBの正常化プロセスは止まるのではないかと思います。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
みずほ銀行 国際為替部 為替営業第一チーム
チーフマーケット・エコノミスト
唐鎌 大輔
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