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米中関係はどこまで悪化するのか 貿易戦争収束も対立は長期化 成長鈍化も生産性上がる 輝き失うAI 米空母香港へ 尖閣危い
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/550.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 21 日 20:18:16: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 金融市場に無傷のセクター見当たらず、投資家の逃げ場ほとんどなし ドイツ銀行株が下げ止まらず 仮想通貨売りに終わり見えず 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 21 日 20:00:21)


米中関係はどこまで悪化するのか

2018.11.21(水) 横山 恭三

米中貿易戦争の「落としどころ」を探る


米副大統領が中国批判、習主席は「対立に勝者なし」 APEC関連行事で演説
パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の関連行事「CEOサミット」で、演説を終えて手を振る中国の習近平国家主席(2018年11月17日撮影)。(c)PETER PARKS / AFP〔AFPBB News〕

 現在までに米中貿易摩擦を巡る両国間の通商協議が4回開催されたが、8月下旬のワシントンでの次官級協議以降、同協議は開催されていない。

 報道によると米中ともに一歩も引かない姿勢を見せており、2018年11月末に予定されている米中首脳会議で大筋合意に達するのは難しいだろうと見られている。

 しかし、これまでの協議の経過をみると双方の思惑も見えてくる。

 来る米中首脳会議で何らかの合意が得られる可能性がある。そこで、本稿では米中貿易戦争の「落としどころ」について考察した。

 以下、初めに今回の中国製品に対する報復関税の根拠である301条の概要を述べ、次に米中貿易摩擦を巡る通商協議の経緯を述べ、次に米中貿易戦争における両国の狙い、最後に来る首脳会議における「落としどころ」について述べる。

1.301条の概要
 通常、米国1974年通商法301〜310条を総称して1974年通商法301条と呼ばれる。

(1)制定の経緯

 1962年通商拡大法による大統領への大幅な通商権限委譲により、大幅な関税引き下げによる貿易自由化が推進された。

 一方で、エスケープ・クローズ(緊急輸入制限措置規定)の適用の厳格化など、貿易自由化の原則を貫き、貿易自由化によって生じた被害に対する救済措置をあくまでも例外的なものとする試みが推進された。

 1970年代に入って、米国の貿易収支は悪化の一途を辿り、1971年には20世紀に入って初めての貿易赤字となった。

 そのうえ石油危機による追い打ちもあり、企業や労働組合は議会に対して貿易救済措置の発動要件の緩和を求めるなど、保護主義的な圧力を強めていった。

 このような経済情勢を背景に、エスケープ・クローズの発動要件を緩和すると同時に、外国の不公正貿易政策について制裁措置権限を大統領に与える301条などが盛り込まれた、1974年通商法が成立したのである。

 さらに、1980年代後半には、米国が巨額な貿易赤字を抱えたことから、ゲッパート修正条項に象徴される貿易赤字相手国に対する議会の不満が募った結果、1988年包括通商競争力法が成立した。

 この法律により1974年通商法301条の改正・強化が図られ、外国の不公正措置に対して調査から制裁発動までの手続を自動化することを規定し、米国が一方的措置をとりやすくした。

 すなわち、他国の貿易政策・措置について、WTO(世界貿易機関)協定などの国際的に認知された手続によることなく、自国の基準・判断に基づいて「(WTO協定等)国際的なルール違反である」または「不公正な措置である」などと一方的に判定し、これに対抗する手段として制裁措置を取りやすくしたのである。

(2)法律条文の構成

 第301条は、1974年通商法のタイトルV「不公正な貿易慣行の除去」の第1章「貿易協定の下の米国の権利の執行及び外国の貿易慣行への対応」の条文である。

 既述したが301〜310条を総称して301条と呼ばれている。各条文の見出しは次の通りである。

第301条 米通商代表による措置(Actions by United States Trade Representative)
第302条 調査の開始(Initiation of investigations)

第303条 調査開始の協議(Consultation upon initiation of investigation)
第304条 通商代表による決定(Determinations by the Trade Representative)

第305条 措置の執行(Implementation of actions)
第306条 外国のコンプライアンスのモニタリング(Monitoring of foreign compliance)

第307条 措置の修正と終了(Modification and termination of actions)
第308条 情報の要求(Request for information)

第309条 管理(Administration)
第310条 通商上の執行措置の優先順位(Trade enforcement priorities)

(3)301条の内容

ア.趣旨:米国1974年通商法301条は、外国政府の不公正行為に対抗して、米国政府が報復措置をとる権限と手続きを規定する。

イ.不公正行為:

不公正行為とは、1) 通商協定違反行為および不正 (unjustifiable)行為、2) 差別 (discriminatory)行為、または3) 不合理 (unreasonable)行為をいう。

 不正行為とは国際義務(条約や協定はもちろん、国際慣習法も含めて)違反行為である。

 差別行為とは、合衆国産品またはサービスまたは投資に対する内国民待遇や最恵国待遇を拒否する行為を含む。

 不合理行為とは不公正かつ不公平(unfair and inequitable) な行為をいい、1)起業機会の拒否、2)知的財産権の適正かつ有効な保護の拒否、3)市場機会の拒否(合衆国製品のアクセスを制限する外国民間企業の組織的反競争活動に対する同政府の黙認をふくむ)、4)輸出ターゲティング、5)労働者の権利の常習的な拒否などを含む。

 いずれの場合も、それが米国商業に対する負担・制約になっていることが要件である。

ウ.担当官庁:調査者・措置の決定者は、大統領が上院の助言と承認を経て任命する合衆国通商代表(USTR)である。

エ.措置の種類:不公正行為が協定違反または不正行為の場合、措置は義務的である(USTRは措置をとらなければならない)。

 ただし、1)大統領が拒否権を発動した場合、2)相手国政府が協定違反や不正行為をやめるか補償提供に同意した場合、または 3)WTOの否定的決定がある場合、措置を免除する。

 不公正行為が差別行為または不合理行為の場合、措置は裁量的(措置をとるかどうするかUSTRが判断し決定する)である。

オ.措置の内容は大統領権限のすべてに及ぶが、対象外国産品に対する一定期間の報復関税(不公正行為による米国商業の被害と等価)の賦課が最も望ましいと規定されている。

カ.たすきがけ報復とカルーセル条項:不公正行為対象品目と報復措置対象品目はかならずしも同じでなくてもいい。

キ.調査開始:利害関係者による提訴またはUSTRの職権による独自の調査。調査開始は裁量的である。

ク.措置決定期限:一般の場合12か月以内、協定違反事件の場合18か月以内。措置の実施は最長180日延期可。措置は4年間の自動終結。

2.通商協議等の経緯
 今月17日までの公開情報に基づき、協議と関連する事象を含めて、次のとおり時系列順にまとめた。

@ 2018年5月3−4日:米国のムニューシン財務長官、ウィルバー・ロス商務長官、ラリー・クドロー国家経済会議委員長、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表、ピーター・ナヴァロ通商製造業政策局(OTMP)局長らと中国の劉鶴国務院副総理が率いる中国代表団が2日間にわたって第1回の閣僚級通商協議を実施したが突破口は見つからなかった。

 この協議で注目されたのは米中の間の議論でなく、米政権内部の保護貿易主義者(ロス長官とナヴァロ局長)と自由貿易主義者(ムニューシン長官とクドロー委員長)との間の意見の調整であった。(CNN 5月8日)

A 2018年5月17−18日:ワシントンで開いた第2回閣僚級通商協議を受けた共同声明で「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国のモノとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」と表明。

 ムニューシン米財務長官は20日に「貿易戦争を当面保留する」と述べ、中国への制裁関税をひとまず棚上げして協議を継続する考えを示した。

 また、中国による知的財産の侵害についても、両国が連携を強化し、中国が法整備を進めるとの表現にとどまった。(日経5月21日及びCNN5月20日)

B 2018年6月3日:ロス米商務長官と中国の経済担当副首相劉鶴氏との第3回閣僚級通商協議を北京で開催。米中は共に、北京で行った通商協議で3750億ドル(約41兆円)に上る中国のモノによる対米貿易黒字の削減方法に関して一定の進展があったと発表。(Bloomberg News6月4日)

C 2018年6月3日:中国の劉鶴副首相とロス米商務長官の会談後、新華社は、米中の合意は「両国が互いに歩み寄り、貿易戦争を行わないことを前提とすべきだ」とし、「米国が関税引き上げなど貿易制裁を導入すれば、両国が交渉した全ての経済・貿易合意は無効化される」と警告。(出典:ロイター6月4日)

D 2018年7月6日:制裁関税第1弾を発動。

E 2018年7月13日:米商務省は、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に科した米国企業との取引禁止の制裁を解除したと発表。

 商務省は4月中旬、ZTEがイランなどに米国製品を違法に輸出し、米政府に虚偽の説明をしたため米国企業との取引を7年間禁じる制裁を科した。

 ドナルド・トランプ大統領が5月中旬に習近平国家主席から頼まれたとして制裁見直しを表明。米中の貿易協議で中国側から譲歩を引き出す交渉材料とする構えをみせていた。(日経7月12日)

F 2018年8月22−23日:米国と中国の貿易摩擦を巡る王受文次官とマルパス米財務次官(国際問題担当)との間で第4回(次官級)通商協議が22〜23日にワシントンで開催。

 米中の貿易協議は、6月初旬に劉鶴・中国副首相とロス米商務長官との間で開かれて以来。

 ただ、事情に詳しい関係者によると、目に見える具体的な進展はなく、貿易摩擦が早期に収束する見込みは低下しつつある。(WSJ8月24日)

G 2018年8月23日:制裁関税第2弾発動

H 2018年9月24日:制裁関税第3弾発動

I 2018年9月24日:トランプ米大統領が近く第3弾の制裁関税の発動を表明する見通しとなったのを受け、中国の劉鶴副首相率いる代表団はムニューシン米財務長官らと27、28の両日に閣僚級の貿易協議をワシントンで開催する予定であったが中止した。(WSJ9月21日)

J 2018年9月24日:中国国務院新聞弁公室は24日、「中米経済貿易摩擦に関する事実と中国の立場」白書を発表。

 中国国営新華社通信によると、中国政府は24日に発表した「中米経済貿易摩擦に関する事実と中国の立場」と題した白書の中で、中国の知的財産権保護の姿勢について、「明確かつ揺るぎないものだ。立法や法執行、司法レベルで保護を強化し続けることで明らかな効果を収めている」と強調するとともに、「中国の日増しに強まる知的財産権の保護は外国企業の中国でのイノベーション活動に効果的な保障を与えている」などと指摘。

 一方で、米国の対中貿易制裁については「米国政府による一連の既存の多国間貿易ルールに違反し、破壊さえするような不当なやり方によって、既存の国際経済秩序は著しく損なわれている」

 「米国政府による一方的な貿易戦争の挑発は、世界経済だけでなく米国の国益も損なうことになるだろう」などと反発。(recordchina9月25日)

L 2018年10月1日:トランプ大統領はホワイトハウスで「中国は極めて強く協議を望んでいるが、率直に言って現時点では時期尚早だ。中国側の準備が整っていないため協議はできない」とし、「時期尚早な協議を無理に行えば、米国、および米国の労働者にとって正しい合意は得られない」と述べた。(ロイター10月2日)

M 2018年11月1日:トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、1日、電話会談し、11月末にブエノスアイレスで開かれる主要20カ国・地域(G−20)首脳会議にあわせて会談することを確認。

 トップ同士による打開を目指して対話を進めることでは一致。(朝日11月2日)

N 2018年11月9日:米側はポンペオ国務長官とマティス国防長官、中国側は楊潔?政治局員と魏鳳和国務委員兼国防相の米中両国の閣僚による「外交・安全保障対話」が9日、ワシントンで開催。

 終了後の共同記者会見で楊潔?政治局員は、米中の貿易摩擦について、互いに受け入れ可能な解決策を模索することで一致したと説明。(読売11月10日)

O 2018年11月17日:トランプ政権は5月、中国に対して、1)貿易赤字を2年で2000億ドル(約22兆5000億円)削減、2)先端産業の育成策「中国製造2025」による補助金の撤廃、3)米国並みに関税を引き下げ――など8項目を要求。

 トランプ米大統領は16日、「中国は142項目の行動計画を提出してきた」「取引で合意するかもしれない」と述べ、ただ、同大統領は「重要な4、5項目が解決されていない」と述べて「私にとって、まだ受け入れられるものではない」と記者団に述べた。(日経11月17日)

3.米中貿易戦争における米中の狙い
 次に、米中の貿易協議等から読み取れる両国の狙いなどを考察する。

 筆者は経済の専門家でないので、見当違いの考察になるかもしれない。大方のご教示を賜りたい。

(1)米国の狙い

 中国が不公正貿易慣行の全面的な中止を約束すれば米国の勝利である。

 しかし、米国が中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に科した制裁を解除したことから、米国は中国からそのような譲歩を得ることは無理であろうと見ており、何らかの妥協点を模索している様子がうかがえる。

 また、今回の制裁関税の発動の時期が米国の中間選挙の直前であったところから、国内に向けに強い指導者としての印象を与える狙いがあったものと考えられる。この狙いの役割は終了した。

 11月17日に中国が142項目の行動計画を提出したことにより、来る首脳会議で合意の可能性が出てきた。

 しかし、トランプ大統領が「大きな懸案がいくつか残っており、現時点ではまだ受け入れられない」と述べており、現時点では首脳会談で合意に至るかはなお不透明である。

(2)中国の狙い

 中国は、WTO紛争解決手続きを申し立てるなどして、WTOを重視するEUや日本を味方に引き入れて、米国を孤立させるようとしている。

 しかし、2016年7月の南シナ海仲裁裁判所の裁定を無視し続けているなど国際機関を軽視している中国を信頼・協力する国はないであろう。

 また、中国は、これまでの協議で輸入拡大や知的財産保護体制の改善を提示するなど対話による解決を目指している。

 しかし、輸入拡大や知的財産保護体制の改善は、米国にとっては最低限の要求事項であって、これで米国が満足するとは思えない。

 中国は今のところ米国に報復措置も辞さない強硬姿勢を取っているが、2期目の習近平政権の権力基盤が盤石となり、習総書記は、今後、国内の反対勢力の声などを気にせずに政策決定を行うことができることから、必要であれば譲歩の姿勢を見せる可能性もある。

 中国は産業発展の原動力は科学技術力であると見ている。

 そして、中国は製造業の高度化を目指す行動計画である「中国製造2025」を実現するために、海外から次世代情報通信技術やハイエンドデジタル工作機械、ロボット、航空・宇宙装備などの「中国製造2025」が定める10大重点分野に関連する技術を必要としている。

 従って、今回は、ある程度の譲歩をせざるを得ないであろう。11月17日に142項目の行動計画を提出したことは、それを物語るものである。

4.来る米中首脳会談における「落としどころ」
 本項では、貿易赤字の削減や関税の引き下げなどの貿易問題の解決策でなく、本貿易戦争の背景にある安全保障上の問題やインテリジェンス活動を巡る米中の対立に焦点を当てて述べる。

 2018年11月14日、米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は、中国の動向に関する年次報告書を公表。

 その中で「中国の国家主導の不公正貿易慣行は、ハイテク技術の流出につながり、安全保障上のリスクだ」と警告した(11月14日 時事通信社)。

 経済はパワーの源泉として安全保障に深くかかわっている。

 経済の繁栄は、経済力はもとより、技術力、軍事力といった国家のパワーを充実させ、反対に経済の衰退はかつての旧ソビエトのように国家の崩壊に至る可能性がある。

 これがゆえに、経済的手段によって安全保障の実現を目指す「経済安全保障」という概念が生まれたのである。

 すなわち、中国の経済力の発展は米国の安全保障上の脅威なのである。

 しかも、その経済力の発展が、米国の技術および知的財産を盗み、自分のものにして大きくなったとなれば、米国の憤りも理解できる。

 ちなみに、現在繰り広げられている「米中のインフラ支援競争」も「経済安全保障」の脈絡で捉えるべきである。

 中国は自国の情報機関を使って米国の技術および知的財産を盗んで国有企業または民間企業に提供している。

 インテリジェンス活動は国家の安全確保のために行われるもので、収集した情報を民間企業の経済活動のために提供することは考えられない。

 これは、民間企業の公正な競争を阻害している。

 公正は米国が最も重視する価値観である。ここに今回の米中対立の隠れたかつ根本的な原因がある。

 本年10月10日に米司法省が中国情報機関の幹部の訴追を公表したことも、これらの活動を絶対許さないという中国へのメッセージであろう。

 従って、来る米中首脳会議では、「中国が自国の情報機関による自国の国有企業または民間企業の経済的利益のためのスパイ活動(サイバー空間のスパイ活動を含む)をやめる」ことを約束すれば、さしあたって米中貿易戦争は沈静化すると思われる。

 しかし、2015年9月の米中首脳会談での首脳同士の約束をいとも簡単に反故にした中国に対して、この約束を遵守させ、その他の様々な義務の履行をきちんと担保する仕組みをどう構築するかという課題が残っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54708


 


2018年11月21日 田中 均 :日本総合研究所国際戦略研究所理事長

米中貿易戦争は収束に向かう、それでも米中対立が長期化する理由


 中国は複雑で危険な行動をしている。

 習近平国家主席の唱える「中国の夢」は、中国の栄華を取り戻すこと、すなわちアヘン戦争、日清戦争で敗北した以前の大国中国の姿を取り戻すことだ。

 中国は国内に向けたものと説明するが、実際の行動を見ると、対外的にも着々と地歩を固めているように見える。

 こうした中国を米国は国際秩序を変更する「修正主義勢力」と位置づける。貿易戦争は発端にすぎず、米中双方の政治・経済・社会システムの戦いという様相がより強まっていくだろう。

「中国の栄華」回復目指し
複雑で危険な行動
 中国は2010年にGDP(国民総生産)で日本を追い越して世界第2の経済大国となり、2013年に習近平氏が国家主席の座について以降、「中国の夢」実現に向けての動きは急だ。

 東シナ海や南シナ海における活発な海洋活動、特に南シナ海の埋め立てによる軍事基地化、空母の建造と配備、A2AD(接近阻止・領域拒否)戦略の下で西太平洋での米軍の接近を拒む。

 特に近年、シルクロードの復活を目指したOne Belt, One Road(一帯一路)を「Belt and Roadイニシアチブ」と称し、旧シルクロードだけでなく、アジア全域、中東、欧州、アフリカ、中南米までを包含し得るような経済構想を展開する。

 台湾との関係も馬英九国民党政権との蜜月時代から、より独立志向を持つ蔡英文政権とは対立を強め、パナマやエルサルバドルなどには台湾が維持してきた外交関係を断絶させ、中国との外交関係樹立に走らせた。

 そして2015年に発表した「中国製造2025」だ。これは2025年までの製造業発展、さらにそれを踏まえて2049年までに中国を最強の製造大国とする長期計画で、とりわけ先端産業分野の競争力の強化を目標としている。

国際秩序変える
「修正主義勢力」と米国は強硬
 これに対して、米国の行動も強硬となってきた。

 2017年末に発表された米国国家安全保障戦略には、中国が国際秩序を変更する「修正主義勢力」であり米国は力で対抗するという考え方も盛り込まれている。

 極めつけはペンス副大統領が、10月初め、米シンクタンクのハドソン研究所で行った演説に盛られた強烈な対中批判だ。中国はサイバー、投資、留学生などを通じて米国の民主主義に介入をしている「シャープパワー」だとする。

 中国は当初は、「アジアへの回帰」を掲げたオバマ政権から「アメリカファースト」を掲げ、取引的手法で理念や長期戦略を感じさせないトランプ政権をくみしやすいと考えたに違いない。

 トランプ政権が公然とオバマ前大統領の政策を否定し、TPPやパリ協定、イラン核合意からの離脱を決め、米国内法の安全保障条項を使ってアルミ・鉄鋼の関税引き上げなど保護主義的行動に出たことには、国際社会からも批判が強まった。

 そうした状況で、中国は自分たちこそが保護主義に反対して国際協調を推進しているのだと強調。アフリカや中東だけでなく、東南アジアや欧州などにも中国との経済協力関係を強化する国々が増えていった。

 そのような中で、米国が中国と戦端を開いたのが、米中貿易戦争だ。

 不公正貿易慣行に関する通商法301条に基づき差別関税の強烈な圧力をかけられたのは中国が初めてではない。日米摩擦の時も同じだった。

 1980年代後半、米国の対日貿易赤字が500億ドルを超え、米国の赤字の40%を超えた時、米国は301条を援用した。日本を「異質な国」と批判し、対日差別法案も連日のごとく議会に提案された。米国の圧力の下、日本は市場開放に精力的に取り組み、実際の関税賦課を免れた。

 当時から中国の友人たちは、自分たちは米国の圧力に屈することはしないと強調していたが、果たしてどうだろうか。

 今の米中貿易戦争は、3500億ドルに達する米国の対中貿易赤字を削減すれば解決するというものではなく、対立の根はもっと深いものだ。

 根源は多くの人が論じるようにハイテクの覇権争いなのだろう。米国にとっては、中国が知的財産権を侵害し国家の不正な補助金の下で、将来的にハイテク技術と製品の分野で米国に代わって世界の覇権を取ろうとするのを防ぐという意味合いが強いのだろう。

貿易戦争は中国譲歩で収束に
成長鈍化は体制不安定化につながる
 貿易戦争に限れば、今年11月末の米中首脳会談を経て収拾されることになると思う。

 昨今の米中双方の動きからも、貿易戦争は収拾の方向に向けて米中間でかじが切られている感がある。米中首脳電話会談、ブエノスアイレスでのG20の際の米中首脳会談開催の合意、延期されてきた外交・安全保障対話の開催など数多くの兆候が感じ取られる。

 米中の経済的体力を比べれば圧倒的に米国が強いからだ。

 中国の報復関税実施が国内の物価高や農産品の輸出低下を招いたところで、今米国経済は好況下にあり、来年以降、景気は下降する可能性が高いにしても、生産や消費などの落ち込みは景気循環の幅にとどまるだろう。

 それに比べ中国の株式市場や為替相場は貿易戦争の影響を大きく受けるだろうし、確かに中国の国内消費は飛躍的に拡大したとはいえ、GDPの中で輸出が占める比重はまだ高い。

 米国による制裁関税賦課が現在の規模でとどまるのであればまだしも、来年になって、さらに制裁関税の範囲と税率が拡大されれば深刻な影響を受けるだろう。

 共産党政権は高い経済成長を維持することが政権の正統性の根源にあり、成長が鈍化していけば、習近平体制も不安定化しかねない。

 トランプ大統領にとっての「取引」の意味は、自分に好ましい結果を作ることであり、結果が出ないと取引とはならない。

 こうしたことを考えると、貿易戦争を収束に向かわせるためには、中国は単に米国からの輸入を拡大するだけではなく、知的財産権の保護の法制やルールに従った政府補助金への改善など、制度的な面でも米国の要求に応じざるを得ないだろう。

 米国の制裁関税賦課という一方的な措置は非難されるべきだが、もし中国の制度の改善に結びつけば、それはそれで日本にとっても好ましいことだ。

「米ソ冷戦」とは違うが
戦略的対峙はずっと続く
 だが、貿易戦争が当面、収束することは米中の対峙が終了することを意味しない。

 米中は経済・文化・人的交流など幅広く深い相互依存関係があり、「ソ連邦との冷戦」に対比されるような関係になるはずがない。

 冷戦時代には大量の核兵器で相互抑止力が働き戦争は防止されたが、西側がソ連を囲い込む政策をとっていたので相互依存関係はほぼ存在しなかった。

 しかし、今や中国と世界の相互依存関係は強い。ただ一方で、今後、米中間では「戦略的対峙」が続いていくことは間違いがない。

 北朝鮮核問題が米中の協力で解決に向かえば戦略的対峙は緩むかもしれないが、基本的には南シナ海を巡る米国の「航行の自由」作戦はさらに強化されていくだろう。

 トランプ大統領がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を放棄したのは、条約の対象になっていない中国のINFが米国にとっての脅威になりつつあるという問題意識からだろう。

 果たしてINFを巡り、米中間で軍拡となるのか、それとも相互の制限の方向に軍備管理が行われていくのか。

 こうした米中の戦略的対峙の中で、東シナ海、南シナ海や南・西太平洋で偶発的な軍事衝突が起こる可能性は短期的にも全くないとは言い切れない。

 かつて中国の人民解放軍が習近平主席のインド訪問と時を合わせてインド領に侵入したこともある。人民解放軍が完全に統制されていればよいが、そうではないケースが歴史上も散見される。

政治・経済システムの戦い
イノベーション進める力が鍵に
 長期的には米中双方の政治・経済・社会のシステムの戦いが浮き彫りとなっていくのだろう。

 中国は、建国100周年にあたる2049年を念頭に「夢の実現」を目指している。米中の経済力の差は、今の米中の成長率の差を考えれば、今世紀中葉までの約30年間に縮小し、GDPに限れば、多くの人は2035年ごろには逆転するという。

 しかしそれが直ちに国力の差が逆転するということではない。米中に限ったことではないが、おそらくこれから国力を拡大していくのに最も重要な要素は、「イノベーション」だろう。

 単に技術革新だけをいうのではなく、社会全体が新しい意識で前に進んでいけるかどうかということだ。

 この点では、米国と中国はイノベーションが起こりやすい国ということはできる。

 米国の教育は圧倒的に競争的で、企業にも選ばれたエリートたちが新たな発想で革新的考えを持ち込んでいく。シリコンバレーの歴史を見れば明らかだ。

 IT・金融からAI・自動運転・IoTへと目まぐるしい変化を遂げている。米国は自由な市場が生み出す技術革新だ。

 中国の場合も、技術革新が進むだろうが、これはいわば上からの技術革新なのだろう。政府が主導し「中国製造2025」のように先端産業をターゲットにし、リソースを集中して革新につなげていく。

 共産党一党体制の下では既得権益の抵抗も容易に排除できる国なのだろう。技術革新に限ったわけではないが、米中は「民主主義下の市場資本主義」と「共産主義下の国家資本主義」の争いとなる。

 私は、この戦いでは、個人の自由と創造性が核となり、インセンティブが働いて技術革新を進めていく民主主義社会の勝利に終わるはずだと思う。

 人間社会では自由な個人の創造力がもたらす力は大きいからだ。

 ただ一方で、民主主義社会でも昨今の状況には不安を持たざるを得ない。

 政治指導者が「ポピュリズム」と「強権主義」に陥り、短期的な国民の歓心を買おうとするあまり、個人の自由と創造性に富んだ社会を窒息させてしまえば、未来は暗い。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)
https://diamond.jp/articles/-/186134


 

習主席の中国経済運営、成長鈍化でも生産性上がる−世界的にも歓迎か
Kevin Hamlin、Enda Curran
2018年11月21日 10:56 JST
• 習氏は中国経済をより持続的な成長軌道へと緩やかに乗せる
• 6%成長でも中国は世界経済にとって最大の成長エンジンに

Photographer: Kevin Frayer/Getty Images AsiaPac
株価急落や景気減速の影に隠れているが、中国には朗報もある。年間経済成長率がこのままいけば約30年ぶりの低水準にとどまり、米国との貿易摩擦がさらに深刻化する恐れがあるにもかかわらず、高リスク融資や住宅価格を抑え込む取り組みを政府が続けている。
  中国政府は2009年や15年のような従来型の投資支出や金融緩和に頼るのではなく、的を絞った減税や投資インセンティブの付与、効率的な民間企業への与信拡大で景気の下支えを図る。習近平国家主席は途中で多少の困難があっても、中国経済をより持続的な成長軌道へと徐々に乗せようとしているのかもしれない。
New Normal
China's annual gross domestic product growth

Source: Bloomberg
  調査会社トリビアム・チャイナの共同創業者、アンドルー・ポーク氏(北京在勤)は「中国指導部は本土金融システムの最も投機的な部分の一部抑制で、まず素晴らしい成功を収めた」と評価。「多くのアナリストはこうした初期の大きな成果を認識できていない」と話す。
Growth Continues
China's Gross Domestic Product Per Capita

Sources: World Bank, Bloomberg
Constant 2010 U.S. dollars
  世界経済にとっては、ペースが鈍ったとはいえ中国がより着実に成長していくなら歓迎だ。中国経済は以前に比べてはるかに大きくなっており、6%成長でもかつての2桁成長と同じくらいの需要を世界に提供できる。つまり、中国は今後も世界経済最大の成長エンジンであることに変わりはないということだ。

  モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、邢自強氏(香港在勤)によると、習主席の過剰抑制策による成果の1つに生産性の伸びがある。14−16年の年平均1.9%程度から今年は2.4%前後に伸びが加速しているという。生産性改善を促している主な要因は鉄鋼やセメントの過剰生産能力削減などだ。
  邢氏は債務の伸びが今年横ばいにとどまり、対国内総生産(GDP)比276%前後になると予想。19年は3ポイントほど上昇するとの見通しを示した。一方、07−15年は年平均15ポイント上昇していた。同氏は「苦労して手に入れたレバレッジや生産能力抑制の成果を当局が手放すことはないだろう」と話す。
  そんな習主席にも景気減速のレッドラインがある。20年のGDP・所得水準を10年比で倍増する公約実現には年6.2%程度の成長が求められ、年間1100万人分の雇用創出目標の達成には十分な需要が必要になっている。18年は既に雇用創出の目標を達成済みだ。
原題:China’s Economy Under Xi: Slower, Safer and More Productive(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIIRLP6K50XS01?srnd=cojp-v2

 


 

輝きを失う中国AI業界

熱気に沸いた1年前とは様変わり、民間投資が急減
2018.11.21(水) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年11月16日付)

中国・新華社、世界初とする「AIキャスター」を起用
中国・浙江省で開催された世界インターネット大会で自己紹介する新華社のAIキャスター(2018年11月7日撮影)。(c)STR / AFP〔AFPBB News〕

 かつて活気に満ちていた中国の人工知能(AI)セクターが落ち込んでいる。

 投資家にそっぽを向かれ、最先端技術を世に送り出せず、収益を生むのに苦労しているのだ。

 この状況は、中国政府が2030年までにAIで世界をリードする計画を発表し、ベンチャーキャピタル(VC)投資家がバリュエーションをどんどん押し上げ、中国のハイテク大手が決算発表でAIの野望を盛んに謳っていた昨年とは様変わりだ。

 AIの進展への失望が広がっているのは中国だけではない。米国では、IBMが今夏、IBMワトソン研究所のAI旗艦部門でエンジニアをレイオフした。

 その前には、ニューヨーク大学教授(心理学専門)で、長年AIに懐疑的なギャリー・マーカス氏が、「AIの歴史が始まって60年経ったのに、我々のボットにできることは、音楽をかけ、床を掃除し、広告枠を買うことくらいだ」と嘆いた。

 だが、ハイプ(誇大宣伝)と資金流入が昨年一気に過熱した中国では、流れの反転が深い傷をもたらした。

 コンサルティング会社ABIリサーチによると、中国は昨年、民間部門のAI投資で米国を抜き、50億ドル弱の資金を集めたが、今年上半期に投資された16億ドルは米国のレベルの3分の1にも満たないという。

 「我々は一般的な用途の事例が打ち立てられた後の岐路に立たされている」

 同社の首席アナリスト、リャン・ジェ・スー氏はこう話す。

 「一般的な汎用チャットボットの開発は、銀行や建設、鉱業といった産業特有のアルゴリズムの開発よりずっと容易だ。なぜなら、それには産業の知識と産業からの同意が必要になるからだ」

 この大きな転換点が、アルゴリズムと機械学習の動力となるコンピューティング能力の不足と重なった。

 その結果残ったのが、ハイテク投資家にはお馴染みの領域だ。膨れ上がったバリュエーション、大きく誇張された宣伝文句、お粗末な収益化モデルである。

 「少しばかり過剰投資になっていると感じている」

 中国のハイテク業界に多額の投資を行っているチミン・ベンチャー・パートナーズのマネジングディレクター、ニーサ・リュン氏はこう語る。

 「多くの企業はマネタイゼーションを加速できないか、実力に見合わない過剰な能力を約束している」

 バリュエーションが急上昇するにつれてVCの意欲は衰えており、人民元資金が干上がったことでこのトレンドに拍車がかかっている。

 グーグルの中国事業を率い、現在はVC会社シノベーション・ベンチャーズを経営しているカイフ・リー氏は「もし百度(バイドゥ)かグーグルからエンジニアが5人飛び出してゼロからスタートしたら・・・その会社は今なら6000万〜8000万ドルの価値があると評価されるかもしれない。9か月前であれば1億1000万ドルだった」と言う。

 同氏はさらなるバリュエーション低下を見込んでおり、「おそらく本来、5000万ドルに満たないべきなのだろう」と話している。

 アーリーステージの投資を手がける真格基金(ツェンファンド)にとっては、機械学習その他のAI投資のピークは2012〜15年前後だった。

 「現時点では、画期的な新興AIスタートアップがそう多く見当たらない」と最高経営責任者(CEO)兼パートナーのアンナ・ファン氏は言う。

 多くの人が産業特有のアプリケーションを次の大きな飛躍と見ているものの、クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)で中国ハイテク企業への投資を率いた後、自ら創世夥伴資本(チャイナ・クリエーション・ベンチャーズ、CCV)を立ち上げたウェイ・ツォウ氏が「それなりに良い(good enough)」技術と呼ぶものには、まだチャンスがある。

 「米国の投資家は常に最先端技術に投資したがるから、彼らは常に高度なAIについて考えている。だが我々は、変化をもたらすために、こうした『それなりに良い』AIを模索している」と同氏は言う。

 その好例として、オンライン英語学習会社に対する最近の投資を引き合いに出す。

 この会社のサービスは生徒とのマンツーマンの会話には劣るものの、生徒の返答――正しい答えや間違った答え――次第で変わる十分なシナリオをカスタマイズしているため、ユーザーが本当の先生がいるように感じられるのだという。

 「これは魔法のようではない」が、授業料が1ドル未満になる。

 こうしたアプリケーションには、中国特有の問題に対処するうえで利点がある。例えば、最先端技術や大量のコンピューティング能力がなくても、英語教師の不足という問題に対処できるわけだ。

 コンピューティング能力はおそらく、中国の「AI武器庫」に欠けている最大の要素だ。中国の大手ハイテク企業が今年相次ぎハードウエアに進出した動きもこれで説明できる。

 自前のAI半導体の開発に取り組んでいる中国企業にはバイドゥ、華為技術(ファーウェイ)、アリババ集団などが含まれ、アリババは量子コンピューティングへの進出の先鞭をつけている。

 アリババは来年、最初のAI半導体を市場へ送り出したいと考えているが、中国企業がこの分野での開発を加速する能力には懐疑論もある。

 今のところ、中国のAIの大部分を動かす半導体はクアルコムやエヌビディアといった米国メーカーから調達されたもので、ソフトウエアも大半は海外製だ。

 「単純な事実は、中国の大手プレーヤーの大半が米国のプラットフォームやテンソルフローといったソフトウエアツールを使っているということだ」

 大手銀行UBSのアナリストらは最近のリポートでこう書き、中国の人気アプリがアップルとグーグルの基本ソフト(OS)上で動く携帯電話産業を例えに引いてみせた。

 中国はこの弱点を嫌というほど思い知らされた。

 イラン制裁措置に違反して製品を販売したことへの処罰として米国が通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)に対する部品販売を禁じたことが、多くの中国ハイテク企業にとっての警鐘となった(禁止措置は以来、撤回されている)。

 半導体の開発とコンピューティング能力の増強は、自給を高めるために「中国製造2025」で描き出された中国政府の目標とも合致している。

 だが、中国のAIセクターが乗り越えなければならない大きなハードルはまだ残っている。

 専門特化されたAIを開発するためには各産業がハイテク企業と協力する必要があり、ハイテク企業は処理能力を高める必要があり、スタートアップ企業はもっと現実的になる必要があるとスー氏は指摘する。

 そうなっても、まだ「スピードは従来より遅くなる。投資収益率は低くなり、投資を回収するまでにかかる時間も長くなるだろう」と警鐘を鳴らしている。

By Louise Lucas in Hong Kong

c The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. Please do not cut and
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54725


 


米国で報告された尖閣周辺の「危ない現状」
中国の攻勢がエスカレート、高まってきた軍事衝突の危険性
2018.11.21(水) 古森 義久
中国、海上演習で空母「遼寧」に戦闘機着艦
中国軍の海上演習で、同国の空母「遼寧」に着艦するJ15戦闘機(2018年4月24日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO〔AFPBB News〕

 中国は尖閣諸島を奪取するために軍事力を土台とする攻勢を強め、日本領海に艦艇を侵入させるほか、新たに人民解放軍直属の潜水艦や軍用機の投入による日本領土侵食を開始した──。

 11月中旬、米国議会の諮問機関がこんな報告を公表した。中国のこの動きは、尖閣諸島での日本の施政権を否定し日中両国間の軍事衝突の危険を高めるとともに、米国の尖閣防衛誓約へのチャレンジだともいう。

 こうした中国の動向は、最近の日本への融和的な接近とは対照的である。中国当局は米国からの圧力を弱めるために日本への微笑外交を始めている。だが、米国議会の諮問機関による報告は、実際の対日政策の攻勢的な特徴は変えていないことを明示するといえそうである。

中国公船4隻、尖閣沖の領海に侵入
2016年11月に尖閣諸島沖の領海に侵入した中国公船の「海警2502」。中国側の尖閣への攻勢はこのときよりさらにエスカレートしている。海上保安庁提供(2016年11月6日撮影)。(c)AFP/Japan Coast Guard〔AFPBB News〕

日本に対する軍事力攻勢を拡大
 米国議会上下両院の超党派の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は11月14日、2018年度の年次報告書を議会に提出した。米中経済安保調査委員会は、米中両国の経済関係が米国の国家安全保障に及ぼす影響の調査と研究を主目的とする委員会である。

 同委員会の2018年度の年次報告書は、日本に関連して「中国は、米国と日本など同盟諸国との絆を弱め、その離反を図る一方、尖閣諸島への軍事的攻勢を強め、米国の日本防衛、尖閣防衛の誓約にチャレンジしている」と述べていた。

 また、米中安全保障関係に関するこの1年間の新たな主要な動きの1つとして中国側の尖閣攻勢の拡大を挙げ、この動きが米中安保関係での米国への挑戦になると総括していた。

 さらに同報告書は、尖閣をめぐる新たな動向として中国人民解放軍の原子力潜水艦や軍用機が出動してきたことを指摘し、日本に対する軍事力攻勢の増加を強調していた。中国軍は東シナ海での軍事的存在を拡大し強化してきた、ともいう。

中国潜水艦が尖閣近海に初めて侵入
 尖閣諸島に関して同報告書の記述で最も注目されるのは、“中国と日本との軍事衝突の危険性”が高まってきたとする警告だった。その点について同報告書は次のように述べていた。

・東シナ海での中国と日本との間の緊張が高まり、事故や読み違い、対立拡大の恐れが強まった。

 同報告書は、中国側の軍事的エスカレーションによって尖閣諸島をめぐる情勢が緊迫してきていると述べる。その主な内容は以下のとおりである。

・中国側の潜水艦など海軍艦艇が、尖閣諸島の日本側の領海や接続水域へ顕著に侵入するようになった。中国は、日本の尖閣諸島の施政権を否定する方法として軍事的な要素を強めてきた。

・2018年1月、中国海軍の原子力潜水艦とフリゲート艦が、尖閣諸島の日本側の接続水域に侵入した。日本側からの再三の抗議を受けて接続水域を出た後、潜水艦は中国国旗を掲げた。中国潜水艦の尖閣近海への侵入は初めてである。国旗の掲揚は日本の施政権への挑戦が目的だとみられる。

・2018年全体を通じて、中国軍は尖閣付近での軍用機の訓練飛行をそれまでになく頻繁に実施するようになった。中国軍機は日本の沖縄と宮古島の間の宮古海峡を通り抜け、対馬付近も飛行した。中国空軍のこの長距離飛行訓練は日本領空にきわめて近く、軍事衝突の危険が高い。

・2018年全体を通じて中国の公艇は平均して毎月9隻の割で尖閣諸島の日本領海に侵入してきた。この隻数は2017年よりわずかに少ないが、潜水艦やフリゲート艦など海軍艦艇の侵入は今年が初めてとなる。全体として中国側の日本側に対する攻勢は激しくなった。

・中国の尖閣諸島に対するこうした攻勢は、明らかに日本が持つ尖閣の主権と施政権への挑戦であり、とくに施政権を否定する意図が明白である。同時に日米安保条約によって尖閣の防衛を誓っている米国に対しても挑戦を強めてきたといえる。

 以上のような中国の具体的な動向は、習近平政権が最近、日本に対してみせている融和的な姿勢とは明らかに異なっている。

 中国側の尖閣に対する動向をみるかぎり、日本領土を奪取し日米同盟を敵視するという年来の対日政策はなにも変わっていないことになる。とすると、いまの習近平政権が安倍晋三首相らにみせる友好的な態度はみせかけだけだという結論になりそうだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54723

 


米空母、1年ぶり香港に寄港 米中関係改善の兆し
2018/11/21 19:00日本経済新聞 電子版
 【香港=木原雄士】米原子力空母ロナルド・レーガンが21日、約1年ぶりに香港に寄港した。中国は9月に米海軍の強襲揚陸艦ワスプの香港寄港を拒否していたが、今回は認めた。米中は11月30日〜12月1日にアルゼンチンで開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて首脳会談を開く予定。中国が関係改善への意欲を示唆したとの見方が出ている。

 米空母の香港寄港は2017年10月以来。米海軍第7艦隊によると、随伴するイージス巡洋艦チャンセラーズビルや駆逐艦カーティス・ウィルバーも寄港。これに先立ち、中国人民解放軍の司令官らが艦隊に招かれ、戦闘機の訓練を見学した。

 カール・トーマス第5空母打撃群司令官は声明で「(香港の)文化や活力、多様性を楽しむ機会を得られてうれしく思う」と指摘。「第7艦隊はこの重要な地域のすべての国のために香港を取り巻く成長と繁栄を保つことをめざす」と表明した。寄港中にスポーツなどを通じて香港の市民とも交流する予定だ。

 中国がワスプの寄港を拒否した9月は米中貿易戦争が激しさを増していた時期だった。トランプ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はアルゼンチンでの首脳会談で貿易問題を協議する見通しだ。香港メディアは今回の寄港を米中の対立緩和に向けた兆しと受け止めている。

 もっとも、トランプ米政権は「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、南シナ海などへの海洋進出を続ける中国をけん制する姿勢は変えていない。米メディアによると、米空軍は19日に核兵器を搭載可能なB52戦略爆撃機2機を南シナ海に飛行させた。通常の訓練の一環と説明している。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38036120R21C18A1FF1000/  

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コメント
1. 2018年11月21日 20:23:27 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[144] 報告
コラム2018年11月21日 / 12:47 / 35分前更新
対立深める米中、関係修復は可能か
Peter Apps
4 分で読む

[19日 ロイター] - 17─18日に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際、首脳宣言の表現を巡る米国提案を議長国パプアニューギニアが支持したことに、中国の外交担当者が反発した。

パプアニューギニアの外務省を突然訪問した彼らは、警察が呼ばれるまで退去しなかったと、豪メディアなどが報じている。

中国側はこれらの報道を否定しており、彼らが小国の当局者を威圧しようと試みたという内容は「まったくのでたらめ」と一蹴した。

だがこうした衝突が報じられること自体、アジア太平洋地域の米同盟諸国と中国を緊張緩和へ導くと期待されていた同会合が、逆に対立をあおってしまったという印象を強烈に裏付けている。

アルゼンチンで月末開催される20カ国・地域(G20)サミットで、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が重要な会談に臨むまであと2週間。そして中国政府が提示した約140項目の対米貿易改善案についてトランプ氏が「現時点でまだ受け入れられない」と述べてから数日後というタイミングで、世界の2大経済大国は、これまで以上に対立の度合いを深めている。

先週末のAPEC首脳会談は、29年の歴史を誇る同会議として初めて、首脳宣言を採択できないまま閉幕した。もっぱら、貿易を巡る表現で対立が際立ったためだ。

これに先立って、南シナ海における米中軍の対立や台湾を巡る緊張も高まっており、米軍の元司令官が「15年以内に米中が戦争状態に陥る可能性が高い」と警告したことは広く報じられた。

全体的に、APEC首脳会談は中国にとって外交上の大きな失敗だったように見受けられる。

習主席は演説で、昨年のダボス会議以来そうしているように、自らをトランプ政権と米国で台頭する保護主義に抵抗するグローバリゼーションと自由貿易の擁護者として自らを描き出そうと試みた。

中国政府は太平洋の島嶼国に12億ドル(約1350億円)以上の融資を提供しているが、その約3分の1がパプアニューギニア向けだ。それだけに、同国で開催された今回の首脳会議で、そうした「ソフト・パワー」の広がりを実証できると期待していた。

だが、域内の首脳と習主席の会談から中国人以外のジャーナリストを締め出すことも含め、中国政府の高圧的な戦術は裏目に出たようだ。

中国はAPECでほぼすべての参加国と対立する羽目に陥った。その一方で、ペンス米副大統領は演説で、米政府が中国による画期的大事業である「一帯一路」構想に反対しており、自ら代替案を提示する意志があることをこれまで以上に明確に示した。

中国のシルクロード構想「一帯一路」は、数十億ドル規模のインフラ投資を含め、アジア、アフリカ、欧州の交流拡大を促進するものだ。

米国と、アジア太平洋域内の主要同盟国である日本、オーストラリア、ニュージーランドは、このところ経済面での影響力をますます露骨に行使するようになっている。18日には、これら4カ国とパプアニューギニアとのあいだで電力インフラへの投資を目的とした数百万ドル規模の協定を締結。これは中国政府に対抗し、米国とオーストラリアの軍事基地を保護するための意識的な動きと見られている。

G20でこうした動きがどう展開されるかは予断を許さない。

APECでペンス副大統領が明らかな攻撃姿勢を示した後だけに、アルゼンチンではトランプ大統領が習主席に対し、もっと融和的なアプローチを取ることもできるだろう。

なんといってもトランプ大統領は、交渉開始時点では強硬姿勢を見せておいて、その後に落とし所を探るという戦略を長年推奨してきた人物だ。他方、11日開催された第1次世界大戦の休戦記念式典におけるマクロン仏大統領との辛辣なやり取りが示したように、G20での米中会談が二国間に横たわる深い溝を強調するだけに終る可能性もある。

米中政権内部の多くが、両国は今後数十年間悪化が見込まれる対立に陥っていると考えている。こうした状況下では、双方に挟まれた国々がどちらか一方を選択するよう迫られ、往々にしてその選択を巡り内部分裂が生じる。これは世界的に活動する以外の選択肢がほとんど無い西側の国際企業にとっても、頭痛の種となる。

中国当局者は6月、米国企業の幹部に対し、彼らの会社が激化する対米貿易摩擦の犠牲となるリスクを犯している、と明確に警告した。米国で活動する中国企業もやはり高まるプレッシャーを感じている。

米中政府はまた、他国に対してますます露骨に圧力をかけるようになっている。たとえばポンペオ米国務長官は10月、パナマなどの中南米諸国に対し中国との協定を結ばないよう勧告した。

ベネズエラやスリランカ、フィリピンといった地域も国情も異なる国々において、中国寄りの独裁的勢力と西側寄りの勢力という政治の二極化が進んでおり、地政学的な色合いの濃い力関係を呈している。

数百人もの超法規的な殺害を伴う自らの麻薬撲滅作戦について米国のオバマ前政権から批判を受けて以来、明らかに中国寄りにシフトしていたフィリピンのドゥテルテ大統領は先週、南シナ海での米軍活動を批判し、中国政府はすでにこの海域を「手中に収めて」いると述べた。

Slideshow (2 Images)
習主席のフィリピン訪問を控えたこの発言は、領有権が争われている環礁などを占拠・軍事化する中国の動きに抵抗しようとしているフィリピン軍部や政界主流派の多くと対立するものだと捉えられている。

米中対立の主要な原因は、依然として貿易摩擦だが、こうした南シナ海などでの軍事的対立が最も危険なものになる可能性がある。マティス米国防長官の訪中キャンセルや、今夏行われた米軍主導の環太平洋合同演習(リムパック)に中国が招待されなかったことなどにより、米中の軍事交流は、ここ数カ月かなり低調となっている。

恐らく南シナ海における力の誇示よりもさらに深刻なのは、中国政府が「反抗的な属州」とみなす台湾を巡って、米中が注力を強めているように見える点だ。

こうした力関係に、域内諸国は憂慮を強め、不安を感じているが、どのように行動すべきかは、いまだ決めかねている。

中国との関係や外交交流を改善しようと独自の努力を進めている最も分かりやすい例が日本だ。

APECでの顛末によって、日本は一層その努力を強めるだろうし、北朝鮮が改めて挑発的言動や兵器試験を行っているとなれば、なおさらだ。恐らく北朝鮮のこうした動きは、孤立を深める中国が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を抑制することに、それほど構っていられないと感じている兆候だろう。

ますます危険な道を進もうとしている米中首脳は今月末、引き返すチャンスを得ることになる。彼らが引き返せないとすれば、あらゆる関係諸国が今後、非常に不愉快な驚きに直面することになりかねない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/bc-america-idJPKCN1NQ09C?il=0


 
 

2. 2018年11月22日 19:02:22 : ughNs283sg : @HlW4yT9_Z8[3] 報告
紛い物 メッキ剥がれた 民主主義

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