http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/462.html
Tweet |
外国人労働者受け入れが日本人労働者にとってデメリットしかない理由
https://diamond.jp/articles/-/185575
2018.11.16 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
写真はイメージです Photo:PIXTA
政府は、出入国管理法を改正して、外国人労働者の受け入れ範囲を一部単純労働者にまで拡大するとともに、一定の条件を満たせば家族の帯同も認める方針だ。だがこれは、日本人労働者にとって大問題となりそうだ。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
労働力不足は労働者にとって
素晴らしいこと
「労働力不足だから外国人労働力を受け入れる」という政府の説明は、「労働力不足は悪いことだ」という前提に立つものだ。確かに語感は悪いので、素直に納得してしまう人も多いようだが、労働力不足が困るのは経営者であって、労働者にとっては大変素晴らしいことといえる。
まず、労働力不足だと、失業する心配がない。仮に今の仕事を失ったとしても、容易に他の仕事を見つけられるからだ。若手男性だけではなく、高齢者や子育て中の女性などでも探せば仕事が見つかる。働きたい人が仕事を見つけられるというのは喜ぶべきことだ。
また、労働力不足だと、企業が労働力を確保しようと競争するため非正規労働者の時給が上がる。正社員については目立った上昇は見られていないが、非正規労働者の時給は既に上昇しており、今後も上昇を続けると期待されている。
ブラック企業が“ホワイト化”していくことも期待できる。ブラック企業の社員が容易に転職先を見つけられるようになると退職者が相次ぐため、ブラック企業がホワイト化しない限り存続できなくなるからだ。
外国人労働者の受け入れは
日本人労働者に不都合
ところが、外国人労働者が大量に流入してくると、労働力不足が解消されてしまうため、労働者は失業のリスクにさらされ、非正規労働者の時給も上がらなくなり、消滅しかかっていたブラック企業も復活してしまうかもしれない。
ちなみに読者の中には、外国人労働者が日本人労働者より安い賃金で働くと考えている人もいるだろうが、本稿では日本人と同じ賃金で働くことを前提として考えている。それでもなお、外国人受け入れは日本人労働者を貧しくする。
例えば、労働者を募集している企業が100社あり、働きたい日本人労働者が50人いるとすると、100社が50人を争うから、時給は上昇していく。しかし、そこに50人の外国人労働者が加わると、労働力不足が解消してしまうので、労働者の賃金は今まで通りとなり、上がるはずだった賃金が上がらなくなってしまう。
企業経営者としては、「外国人労働者を受け入れないと、労働力不足が深刻化するので、日本人労働者の賃金を引き上げなければならない。それは嫌だから外国人労働者を受け入れてほしい」と政府に要請しているのだが、それは日本人労働者には受け入れられない話だろう。
労働者も労働組合も、労働者の味方を標榜している政党も、なぜ大声をあげて反対しないのであろうか。不思議でならない。
労働力不足は生産性も高まり
日本経済にもいい影響
労働力不足になると、企業は「省力化投資」を始める。例えば、アルバイトに皿洗いをさせていた飲食店が自動食器洗い機を購入するようになるので、飲食店の生産性が向上するのだ。もちろん、他の業界でも同様だ。
こうして日本経済の労働生産性が高まれば、労働力不足でも経済の成長が可能となる。
また、財政にとってもいい影響を及ぼす。失業対策の公共投資は不要だし、失業手当や生活保護の申請も減るだろう。それ以上に重要なのは、増税が容易になることだ。
日本政府がなかなか増税できないのは、政治家の人気取りもさることながら、「増税して景気が悪化したら失業者が増えてしまう」という恐怖心があるからだ。今後は少子高齢化による労働力不足で、「景気がいいと超労働力不足、景気が悪くても少し労働力不足」という時代がくるので、“気楽”に増税できるようになるはずだ。
それなのに、外国人の単純労働者を大量に受け入れてしまったら、失業のリスクが増すため増税が難しくなってしまう。
さらに問題なのは、一定の要件を満たせば、外国人の単純労働者の日本での永住も可能で、家族の帯同も認められることだ。
労働力不足だから外国人を受け入れるのに、彼らが日本で医療や介護を受けることになり、それに対して日本人の労働力を使うなど、悪い冗談としか言いようがない。
家族を連れてきていいとなると、日本語の分からない家族に日本語を教える必要もあるだろう。小中学校に複数の外国語が分かる先生を配置し、保護者用の説明も複数言語で用意しなければならなくなる。
そうしたコストは、当然だが行政が負担することになる。企業が外国人の単純労働者を受け入れることで雇って利益を得る一方で、一般市民の支払った税金が使われることになるのだ。これは、「外部不経済」といえる。
企業が、「家族の教育のコストも負担するから外国人労働者を雇いたい」というなら認めるにやぶさかではない。しかし、「家族の教育コストを負担するなら雇わないが、負担しないなら雇いたい」というなら、雇わせるべきではない。雇うべきでない人を雇っているとことになるからだ。
したがって、外国人の単純労働者を雇った企業には、高額の税を課すべきである。それでも雇いたいと言われれば、妥協案として認めてもいいだろう。
上記した日本人労働者の失業問題があるので、本来はそれさえも認めたくないが、そこまでして雇う企業は少数だろうから、日本人の失業を心配するほどの影響はないと考えておこう。
デメリットに比べれば
経常黒字減少は軽微な話
「介護労働者が不足しているから、外国人の単純労働者を受け入れる」というのは、百歩譲って認めるとしても、農業や造船などの労働者は受け入れるべきではない。商品を輸入すればいいからだ。
特に農産物は、農家の保護という名目で、これまで消費者は高い国産農産物を買わされていた。これを機に外国産の安い農産物を輸入すれば、労働力不足も解決し、消費者も安い農産物を食べられて皆がハッピーになる。
国内の、特に高齢の農家に関しては、「割増退職金」的な支援を行い、農業から引退してもらえばいい。そして若者に、引退した高齢者の土地を集約して大規模かつ効率的な農業を営んでもらうための補助金であれば、喜んで支払おう。
食料安全保障の問題は軽微だ。世界の食料輸出国は友好国が多く、海上輸送路にも大きな問題はなさそう。一方で、原油の輸入が止まればトラクターを始めとする農作機械が動かず、食料安全保障上、深刻な問題となり得るが、その際には外国人の単純労働者を受け入れても意味がない。
「ちなみに、経常収支は黒字が望ましいのか否かについては、さまざまな意見があるが、仮に“黒字有用論”を採用したとしても、日本は経常収支が大幅に黒字なのだから、農産物などを輸入したくらいで赤字に転落することはあり得ない。
外国人の単純労働者を受け入れることのデメリットと比べたら、黒字が若干減ることくらい大したことではない。したがって、経常収支黒字有用論者からの農産物などの輸入反対は説得力に欠けるだろう。
「日本のGDPが減ってしまわないように、外国人労働者を受け入れる必要がある」という人もいるが、そういう人には100年単位で物を考えてもらいたい。100年後には日本人の人口が3分の1に減るとも言われている。したがって、日本のGDPを守るために日本の人口を保つとしたら、日本列島に住む人の過半は外国人になってしまう。
本当に、そんな日本の将来が望ましいのだろうか。守るべきなのは、GDPではなく、日本国民の豊かさ、つまり1人当たりGDPなのではなかろうか。
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民129掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民129掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。