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【スルガ銀行問題】相次ぐ不動産業者の業務停止で疑惑浮上…「かぶせ」等の不正横行か
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25518.html
2018.11.15 文=小林紘士/不動産ジャーナリスト Business Journal
「Getty Images」より
不正融資問題の発端となったスルガ銀行に10月5日、金融庁による行政処分が下った。目玉となったのは、10月12日から来年4月12日までの6カ月間、新規の投資用不動産に対する融資を停止する処分だ。その他、役職員すべてへの研修、経営責任の明確化や業務運営態勢の確立、信用リスクやコンプライアンス態勢の確立など、一連の問題の根源となった同行の態勢の立て直しを図るよう求めた内容となった。
そして以前、当サイトでも、第2のスルガ銀行として指摘されていた西武信用金庫にも10月31日、金融庁が立ち入り検査する方針と報告した。スルガ銀行の問題を受けて、金融庁は地方銀行を中心とした調査を行うとしていたが、そのなかで西武信金においてもスルガ銀行同様の問題に対する懸念が高まったとして立ち入り検査を行ったようだ。
一方、11月2日には、スルガ銀行の融資を受け倒産したスマートデイズからシェアハウス「かぼちゃの馬車」を購入したオーナーたちとADR(裁判外での紛争解決)による調停が行われるとの報道もあった。
■ひそかに業務を停止した不動産会社
さて、こうした金融庁によるスルガ銀行への処分や他の金融機関への調査が進むなか、投資用不動産の仲介業を営んでいた不動産会社が、ひっそりと業務を停止している。1社は9月末に解散、もう1社は10月8日に倒産した。2社とも一時期急成長を遂げ、不動産投資の業界では有名になっていた。その2社とは「水戸大家さん」と「わひこ」である。
スルガ銀行とスマートデイズによる一連のシェアハウス問題が大きく取り上げられて以降、不動産投資の業界には重苦しい空気が流れている。驚くほどの早さでアパートなどの投資用不動産に対する融資が引き締められてきたからだ。実際、不動産投資の業界では、まじめにアパートなどを企画・販売する不動産業者や仲介業者からも、融資が厳しくなり一気に売りにくくなったという声が至る所で聞かれている。
上記2社が業務を停止した背景に、こうした金融引き締めにより事業の先行きが厳しくなったということがあるのは事実だ。実際、わひこは倒産というかたちで事業が停止したのだから、現実の厳しさと先行きの不透明感による業務停止に疑いはない。
しかし、筆者はこの2社がある意味、きれいな理由で事業を停止したのか疑問に思わずにはいられず、裏側の理由を勘ぐってしまう。というのも、筆者が以前、懇意にしていた、アパートを企画・販売する、いわゆるアパート業者の担当者から、さまざまな話を聞いているからだ。
たとえば、わひこのホームページでは、自社の強みとして「資金調達」、つまり銀行融資に自信を持っている旨を記載していた。「無理だと思って諦めている方、是非一度私どもにご相談ください!」とある。果たして、それほどまでに銀行に融通の利く会社だったのかという点が、第1の疑問だ。同社は、ある金融機関では“取引できない会社”とされていた。過去に別の問題があったからだが、そのため、同社の融資付けは、ほとんどがスルガ銀行だったと聞いている。
また、実際にアパート業者の担当者から聞いた話では、わひこの担当者から「かぶせ」といわれる、銀行に提出する資料の物件価格を上乗せする行為をさせてほしいと持ち掛けられたという。当然、本来の物件価格と違う金額とするのであれば、提出資料に手を加えなければできない。最終的に、不信感を抱いたそのアパート業者の社長は、わひことの取引を取りやめたが、ほかのアパート業者に対しても、日常的にそうした取引を持ちかけていたことは想像に難くない。これが第2の疑問だ。
こうした話から筆者は、近い将来、なんらかの処分を受ける前に廃業したという“裏の理由”を勘ぐってしまうのである。また、業界内で、水戸大家さんについても似たような話が聞かれた。
■金融機関だけでなく不動産業界にもメスを
現在、かぼちゃの馬車から始まった不正融資の問題は、スルガ銀行や今回の西武信金など、金融機関の問題ばかりが取り上げられているが、不正を行ってきた不動産会社に対しても、もっと追及が行われてもいいのではないだろうか。どうしても、中小の不動産会社を取り上げるより大手の金融機関を取り上げたほうがメディアとしては話題となるので注目されがちだが、本質的な部分にメスが入っていない気がしてならない。今後、金融機関への金融庁の調査が進み、特定の不動産会社の個別の不正が発覚すれば、その取引を行った不動産業者も当然、宅建業法上の処分の対象となり、一定の証拠が見つかれば、購入者への補償問題などに発展する可能性もある。
そして、こうした一連の不動産投資の融資に絡む問題が大きく取り上げられ、金融庁による調査が始まって数カ月後には、廃業しているのである。ここでは2社を取り上げたが、ほかにも同様の不動産会社が多数あることは間違いない。筆者としては、金融庁だけでなく、国土交通省もその担当部署を動員して積極的に不動産会社の実態を調査すべきではないかと考える。
もちろん、不動産業界で働く筆者としては、正直、痛くもない腹を探られ、その対応も面倒なものであるから、そうした調査は歓迎するものではないが、現実として投資用不動産の取引で大きな支障が出ており、このままでよいとは思えない。また、もっと健全であることが確認できれば、金融機関としても融資をしやすくなるのではないだろうか。そうして不動産業界としては、一時的に面倒なことになったとしても、今後の活動がしやすくなるのなら、その引き換えとしてここで膿を出してしまったほうがいいのではないだろうか。
(文=小林紘士/不動産ジャーナリスト)
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