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預貯金があれば不要?賢い人が「医療保険」には入らない理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181113-00018738-gonline-bus_all
11/13(火) 7:00配信 幻冬舎ゴールドオンライン
「一生涯保障」が続く終身タイプの医療保険が人気だが
医療保険について考えてみましょう。
医療保険は、社会人になると同時に加入する人が多い、第三分野の保険です。病気やケガで入院・手術をしたときに、保険金が出ます。入院1日あたりいくらもらえるかが決まっていて、たとえば「日額1万円」という契約になっていれば、1週間の入院で7万円もらえます。
さらに、手術をした場合には、保障の対象となる手術であれば、手術給付金ももらえます。ただし、対象外の手術も結構たくさんあるので、手術をすれば大体給付金がもらえるもの――と考えるのは早計です。
医療保険への加入を希望する場合は、次のような項目をあらかじめ選択したうえで加入することになります。
●期限を決めて入るか、一生保障が続くようにするか
●入院した場合、1日につきいくらもらえるようにするか
●入院何日目から保険金が出るようにするか
●どんな特約をつけるか
人はいつ入院し、手術をすることになるかわかりません。しかし、一般的に入院する可能性が高くなるのは、高齢になってからです。20代、30代で病気になる人よりも、60代、70代で病気になる人のほうがずっと多いことは、さまざまな統計からも明らかです。
そのため、医療保険の期限についていえば、一生涯保障が続く終身タイプを選ぶ人も多勢います。中でも、保障は一生続く一方で、保険料の支払い自体は60〜65歳くらいまでに終了する商品が主流です。途中で保障が終わる定期タイプの保険もありますが、今はそれほど人気がありません。
保障内容を充実させたほうが「安心感」を得られる!?
一生保障が続いてほしいと考えるのは、誰もが医療費に強い不安を感じているからでしょう。実際、医療にはお金がかかります。突然大病をし、長く入院することになったら、経済的に苦しくなる――そう考えるからこそ、「保険金はなるべく多いほうが安心」「絶対に入院1日目から保険金が出たほうがいい」などと考える人も増えるわけです。
しかし、保険金が多めに出るように設定すれば、その保険の保険料は高くなります。入院1日目から保険金が出る設定にした場合も、もちろん同じように保険料がかさんでしまいます。保険によっては「入院5日目から保険金が出る」というものもあり、そのほうが保険料は安くなります。
保険の主契約を補って保障内容を充実させる特約も、皆がつけたがります。特約の種類は多種多様です。たとえば、手術給付金の対象外になる手術があると述べましたが、どんな手術でもカバーされ、給付金が出るようにするための特約もあります。
公的健康保険の対象外(つまり、全額自己負担)となる先進医療や、がんの重粒子線治療などに際して、給付金が出る特約もあります。そのほかにも、かゆいところに手が届くような特約は数多くあります。
しかし、特約は無料ではないので、たくさんつけると、やはり保険料が跳ねあがります。保険料の問題ばかりでなく、特約をつけすぎると、契約者自身どんな保障が受けられるかを忘れ、該当する状況になったときに請求漏れを起こしてしまうリスクがあります。
とはいえ、自分の不安な気持ちを優先させようとすると、どうしても保障を厚くしたり、特約をつけすぎたりしてしまいます。その結果、保険料が高くついてしまうのです。
医療に対する保険のかけすぎで、毎月の保険料がかなり高くなっている人もいるでしょう。保険のせいで家計が厳しくなって、使いたいところにお金を使えず、我慢する毎日を送っている人もいます。
保険のために、何十年もそんな我慢を強いられる――「将来のために仕方ない」と思って耐えているのかもしれませんが、そんな人生はいい人生とはいえないはずです。
保険料と保障内容のバランスが悪い「医療保険」
「社会人なら医療保険くらい入っておくべきだ」という考えは正しくありません。保険料が高くつきがちなのに対して、保障はそこまで充実しているわけではなく、バランスが悪いからです。
よく、「入院したときに日額1万円の保険金が出る」という医療保険に入っている人がいます。若いうちに入れば、よっぽど特約をつけすぎていない限り、保険料は月額5000円くらいのものでしょう。
入院したときに1日1万円をもらうため、毎月5000円の保険料を支払う――冷静になって考えると、意外と割高なことに気づきます。
そもそも、人はそんなに頻繁に入院しません。人生において入院する回数は、片手で数えられる程度に収まる人も多いでしょう。
しかも、最近はどこの病院も慢性的にベッド数が不足している関係で、あまり長く入院させない方針になっています。そのため、重篤な病気であっても、患者は意外と早く退院させられるのです。たいていの場合、入院から退院までの所要期間は1カ月以内です。
家計を圧迫するほど入院費がかさむ可能性は低い
預貯金があれば不要?賢い人が「医療保険」には入らない理由
現に、厚生労働省「患者調査」※によると、平均在院日数は32.8日となっています。
ただし、これには平均的な入院日数が特別長い統合失調症(561.1日)や、血管性及び詳細不明の認知症(359.2日)、アルツハイマー病(236.3日)なども含まれています。そのほかの病気の場合、たとえば結腸及び直腸の悪性新生物(がん)で17.5日、心疾患で21.9日など、生死にかかわるような病気であっても、比較的短期間で退院しています。もちろん、軽症のケガや虫垂炎程度であれば、さらに短くなります。
※平成23年9月1日〜30日に退院した者を対象としたもの。宮城県の一部及び福島県を除いた数値
【図表 年齢別に見たおもな病気の平均在院日数】
つまり、長く入院することで、医療費が家計を圧迫する可能性は、さして高くはないのです。それなのに、毎月5000円も保険料を支払うというのは、少々割高だといえます。
「健康保険」加入者は医療費の自己負担額は3割のみ
仮に、虫垂炎で1週間入院するとしましょう。
入院1日目から保険金が出る医療保険に入っていて、日額が1万円であれば、もらえるお金は7万円です。虫垂炎の手術に対して手術給付金が出ると、入院日額の10倍だった場合、10万円です。ということは、総額でおよそ17万円支給されることになります。
17万円もらえると聞くと、何だか嬉しくなってしまいますが、虫垂炎で1週間入院したくらいでは、入院・手術費用は30万〜40万円くらいしかかかりません。公的健康保険があるので、負担するのはそのうちの3割(現役世代の場合)です。ということは、自己負担は10万円そこそこです。
しかも、公的健康保険には、「高額療養費制度」があります。ライフプランニングをしていると、意外と知らない人が多いことに驚かされるのですが、高額療養費制度とは、国民健康保険などの公的健康保険に加入している人を対象とした制度です。日本は国民皆保険の国ですから、健康保険料を滞納している人を除き、すべての人が対象です。
実際の支払い額は「1入院につき8万円」!?
高額療養費制度とは、国民の医療費負担が大きくなりすぎることを防ぐために導入されているものです。具体的には、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定金額を超えたときに、その超えた金額を支給してもらうことができます。
その一定金額というのは、年齢や所得などに応じて異なりますが、一般的には、1カ月の負担の上限は8万〜9万円程度で収まる場合が普通です。
そのため、先の例のように自己負担が10万円ほど発生しても、実際に負担する金額は8万円強となり、それを超える分については、役所へ支給申請をすることで後日返してもらえます。
1入院につき8万円くらいならば、自分の貯蓄で何とかできるという人も多いでしょう。仮に医療保険を毎月5000円払っているとしたら、16カ月で8万円に達します。16カ月の間にこれほどの医療費がかかることが、どれだけあるでしょうか。
もちろん年齢や健康状態にもよりますが、医療保険には加入せず現金を8万円用意しておけばよいと考えるのは、それほどおかしなことではないでしょう。
医療保険に貯蓄機能を求めるのは得策ではない
医療保険は終身タイプを選ぶ人が多くなっています。高齢になってからのほうが入院する可能性は高いのに、途中で保障が切れる保険に入っていてもあまり意味がないからです。終身タイプの保険は、定期タイプの保険に比べると保険料が高くなりがちですが、掛け捨てであれば比較的安く抑えられます。
解約したときや死亡したときに、「解約返戻金」、あるいは「死亡保険金」として、払い込んだお金が戻ってくる商品もありますが、掛け捨ての保険に比べて保険料がかなり高くなります。
それに、ずっと医療の保障を受け続けたいのであれば、途中で解約することはできません。解約するにしても、解約返戻金の返戻率(解約返戻金が、これまでに支払った保険料に対して何パーセントあるのかを示すもの)は、時期によって異なります。
契約から何年目に解約返戻率が何パーセントになっているかということは、契約時にチェックすることができますが、元本を上回るときもあれば、大きく下回ってしまうときもあります。
したがって、自分が解約したいタイミングで、解約返戻率が有利な状況になっているとは限らないわけです。
このように、医療保険で「損をしないために、掛け捨てじゃないものを選ぼう」と考えると、いろいろ問題が出てきます。そのため、医療保険に貯蓄機能を求めるのは得策ではないでしょう。
40年間支払う保険料を「回収」できる確率は低い
だからといって掛け捨てならば医療保険に入ってもいいかといえば、そういうわけでもありません。掛け捨てタイプは保険料が安いことが特徴ですが、こんなふうに考えてみてください。25歳で保険に入り、65歳まで毎月5000円支払ったとしましょう。40年間で支払う保険料は、約240万円です。
掛け捨てならば、入院・手術をしない限り、この240万円は戻ってきません。ですが、一生涯でこの240万円を回収するほどの入院や手術を経験する人は、恐らくそれほど多くないでしょう。
仮に、1カ月以内の入院を5回体験したとしても、前回お伝えしたように高額療養費制度があるので、1回あたりの負担額は8万円強。5回で50万円にも達しないくらいです。240万円には到底及びません。
預貯金がある程度あれば、医療保険は不要ということになるのです。
原則的に1回の「入院日数」に上限がある医療保険
医療保険では、長期入院をすれば元が取れるのかといえば、答えはYESであり、NOでもあります。
医療保険は原則として、1回の入院日数の上限が決まっています。60日型、120日型などさまざまですが、60日型であれば、それを超える分の入院については、保険金が出ません。かといって、カバーされる入院日数を長くすればするほど、保険料は高くなってしまいます。
しかも、1回入院して、すぐにまた再発し、再入院することになった場合、最初の入院と2回目の入院は同一のもの≠ニ見なされてしまいます。つまり、2回の入院ではなく、1回の入院としてカウントされてしまうということです。
そのため、1回目の入院が30日、2回目の入院が40日で、入院日数が60日型の場合、10日分の保険金は給付されません。
保険金を給付される日数にも制限あり
1回の入院から一定期間時間を空けて入院すれば、もちろんまた医療保険でカバーされます。しかしながら、一生涯のうちで保険金が給付される日数にも制限があるのです。保険会社や商品によっても異なりますが、一般的には700日、1000日といったケースが多くなっています。
もし、頻繁に長期入院をしていて、通算入院日数が1000日を超えてしまったら、終身の医療保険であっても、超過分についてはまったく保険金が出なくなってしまうのです。
1000日入院すれば1000万円は受け取れるので、支払い保険料よりも多くの保障が受けられることにはなります。ですが、目いっぱい保険金を受け取ってトクできる人はかなり少ないでしょうし、もしそうなったとしても、超過分の保障はなくなるので、不安がつきまといます。
長く入院するとトクかどうかが、YESでもNOでもあるというのは、そのためです。
先進医療の多くは健康保険の対象外
預貯金があれば不要?賢い人が「医療保険」には入らない理由
医療を受けるにあたって本当に心配なのは、実は入院や一般的な手術のコストではありません。
先ほどの特約の話の中でも出てきましたが、患者が選択できる医療の中には、一部の先進医療などのように、健康保険の対象外で、費用を自己負担でまかなわなければならないものもあります。
3割負担が10割負担になるわけですから、費用は莫大な金額に及びます。これを貯蓄でまかなうのは、かなり難しいかもしれません。いざというときに、そういった先進医療しか解決策がなく、お金がないために治療を受けられなかった――では、悲惨すぎます。
特殊な医療を受ける確率は、極めて低いものです。しかし、こればかりは「絶対いらないですよ」とは誰にもいえません。
【図表 先進医療の具体例】
先進医療特約は年間100円程度でつけられる
先進医療だけに絞った保険はないので、対策を講じたければ、普通の医療保険や共済に先進医療特約をつけることになります。先進医療特約目的で最低限の共済(保険料の月額が1000〜2000円くらい)に加入し、なるべく保険料を抑えているような人もいます。
先進医療特約自体は、どの保険会社でも年間ほんの100円くらいでつけられます。これほど安く抑えられているのは、先進医療を受ける事態に陥る可能性が低いからです。可能性の高いことに備える場合は、もっと保険料というのは高くなるものです。
使う可能性は低いですが、お守り(あるいは精神安定剤)代わりに持っておくのであれば、悪くないかもしれません。
医療保険より、がん・三大疾病保険に加入すべき!?
預貯金があれば不要?賢い人が「医療保険」には入らない理由
先進医療と同じく、高額なお金がかかるとして不安視されがちなのが、がんなどの三大疾病に関連する出費です。
入院・手術だけでなく、がんの場合はその後の通院・治療にもお金がかかるのが一般的です。医療保険に抗がん剤治療特約や重粒子線治療特約などがあるのは、そういった不安に対応するためです。
たしかに、がんは日本人の国民病ともいうべき病気で、現在のところ日本人の死因の第1位です。生涯のうちにがんにかかる可能性は、男性の2人に1人、女性の3人に1人と推測されてもいます。また、毎年のように30万人以上もの人が、がんによって亡くなっています。
こうしたデータを見ると、がんになることが不安になるのは当然です。もし、身内にがんの方が多いなどの理由で、がんにかかった場合の対策をしておきたいと考えるなら、医療保険ではなくがん保険、あるいは三大疾病保険への加入を検討するのが先決です。
ちなみに、三大疾病とは、日本人の約3割の死因となっているがん、急性心筋梗塞、脳卒中(くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞を含む)のことです。これらに備えるのが三大疾病保険です。
がん保険や三大疾病保険は、医療保険とは違い、商品によっては診断された時点で一時金がもらえます。つまり、何百万円という単位のまとまったお金を、ドカンと一気に受け取れるのです。
入院日数は関係ないですし、使い道も自由です。その点が、原則として入院しない限りはお金がもらえない医療保険とは違います。よって、通院治療の際にも役立てることができるのです。
【図表 がんなど、三大疾病で死亡する人は多い】
商品数が少なく保険料が高い、民間の「介護保険」
がんと同じくらい高額な出費が予想されるのが、要介護状態になることです。アルツハイマー病や、重篤な病気の後遺症などで、要介護状態になってしまう可能性は誰にでもあります。自分自身だけでなく、配偶者、あるいは親の介護費用を負担する可能性がある人もいるでしょう。
24時間介護が必要になれば、家族は大変な苦労をすることになります。なるべく外部に協力を求めるためには、たくさんのお金が必要になってきます。
そんなとき、民間の第三分野保険である介護保険で備えるという方法もあります。ただ、こちらはがん保険などとは異なり、商品数が少なく、しかも保険料が高くなっています。したがって、保険で介護に備えることは、あまりおすすめできません。
工藤 将太郎
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ 代表取締役社長
CLP International Ltd. プレジデント&CEO
工藤 将太郎
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