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イラン制裁発動でも弱気相場入りした原油市場 本当に「燃料制約」は起きていたのか AI時代は「のび太」が理想的リーダー像に
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/399.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 12 日 12:39:17: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 利息の起源:シャイロックはなぜ嫌われるのか イスラエル、もう1つの監視ビジネス先進国 ここまで来た監視社会「裏アカ」もあ 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 12 日 12:36:31)

イラン制裁発動でも弱気相場入りした原油市場
価格下落を防ぐ手だてはあるのか?
2018.11.9(金) 藤 和彦
NY証券取引所、全株式取引が一時停止 システム障害で3時間以上
米ニューヨークのニューヨーク証券取引所。株式市場に少しずつ動揺が生じ始めている(資料写真)。(c)AFP/Getty Images/Spencer Platt〔AFPBB News〕

 11月5日、米国がイラン産原油を対象にした制裁を発動したが、「当面の間、原油は安定的に供給される」との見方から米WTI原油先物価格に大きな値動きはなく、その後、米国の原油在庫増で8カ月ぶりの安値となった(1バレル=61ドル台)。

 WTI原油価格は今年(2018年)5月に米国がイランへの制裁を表明したことを契機に上昇し始め、10月には1バレル=76ドル90セントの高値を付けたが、その後イランを除く主要産油国の原油生産量が増加したことなどから今年4月の水準にまで値下がりした。5日の取引では当初WTI原油価格は上昇したが、午後になってトランプ大統領が「個人消費の鈍化につながる原油高を回避するため、イラン制裁は緩やかに進めたい」と述べたことや「米国政府が中国、インド、韓国、台湾、日本、トルコ、ギリシャ、イタリアに対してイラン産原油の一時的な輸入継続を認めた」ことが伝わり、「原油需給が引き締まる」との見方が後退した。イランの原油出荷状況などから本格的な減産は来年以降になる見込みである。

 イラン産原油輸入については各国の削減努力を勘案し半年後に判断されるが、前回の制裁時の基準が曖昧であったことを思い起こせば、「今回も輸入ゼロを達成していなくても減少していれば制裁の適用免除が延長される」との見方がある。

主要産油国はいずれも増産
 他の主要産油国を見ると、増産にますます歯止めがかからなくなっているようだ。

 ロイターによれば、10月のOPEC諸国の原油生産量は前月比39万バレル増の日量3331万バレルとなり、2016年以来の高水準となった(減産遵守率は122%から107%に下落)。イランの原油生産量が日量10万バレル、ベネズエラが同7万バレル減少したが、サウジアラビアが同12万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)が同20万バレル増加している。UAEは11月6日「原油生産量を2020年までに100万バレル増産する」ことを発表した。

 ロシアの10月の原油生産量は日量1141万バレルとなり、ソ連崩壊後の最高記録を更新した。

 米国でも8月の原油生産量が前年比210万バレル増の日量1135万バレルと過去最高水準となったことが明らかになった(直近の生産量は1160万バレル)。年間の増加幅は1920年以来の大きさである。輸送パイプライン不足などの問題はあるものの、この驚異的な伸びが今後も続けば、米国の増分だけでイランの減産の穴埋めは可能である。

 サウジアラビア、ロシア、米国の3カ国で世界の原油供給の3分の1超を賄うようになっているが、リビア、ナイジェリア、イラクも増産態勢に入っている(10月24日付OILPRICE)。世界の原油供給量は気がついてみれば今年3月から日量300万バレル以上増加したのである(10月29日付OILPRICE)。米エネルギー省の予測(世界の原油需給は既に供給過剰となり、需給ギャップが来年半ばまで続く)が示すとおり、米国のイラン制裁発動にもかかわらず原油市場は弱気相場入りしたと筆者は考えている。

「世界の工場」ではなくなる中国
 それでは次に原油市場を動かす材料は何だろうか。

 市場関係者の関心は、世界の原油需要に向けられつつある。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は10月30日、「原油高が消費者の負担となり需要を抑えるとともに、世界の景気減速も需要減につながる要因となっている」と発言した。

 ビロル氏が言及したのはインドやインドネシアの原油需要の減退だったが、世界最大の原油輸入国である中国は、米国との貿易摩擦の激化で経済が悪化の度合いを強めている。

 貿易摩擦の激化で株式市場が低迷し人民元の軟調が続いており、その悪影響はついに不動産市場にまで及んでいる。

 中国メディアによれば、北京や上海、杭州などの主要都市で、在庫増加と資金難に頭を抱える不動産業者が販売促進のために大幅値下げに踏み切った。その値下げに抗議して各地で住宅所有者によるデモが相次いでいるという。

 経済専門家は「中国は住宅が売れ残る時代に入った。巨額な債務を抱える不動産大手デベロッパーは景気鈍化で資金調達がさらに厳しくなり、倒産の危機に陥っている」と指摘した上で、「今後住宅価格の下落に抗議する市民が各地で増加し、社会不安が一段と広がる」と警告している。

 10月29日付ロイターは、貿易摩擦の長期化が原因で中国南部に進出している米国企業のうち、約7割の企業が「中国での投資を遅らせ、生産ラインの一部または全部を他国に移転する」ことを検討していると伝えている。この動きは米国企業にとどまるものではない。中国が「世界の工場」である時代は終わりを迎えつつある。中国の爆食経済を牽引してきた不動産と製造分野が不調となれば、中国の原油需要が今後低迷しないはずはないだろう。

米国の株式市場に動揺の兆し
 筆者は今後の原油価格を占う材料として「米中貿易摩擦」が主役に躍り出たと見ている。それに関連して注目するイベントは、11月30日からアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されるG20サミットである。米中首脳の間で貿易摩擦に関する合意がなされる可能性は現段階では低いとされているが、物別れに終われば原油市場をはじめ世界の金融市場に悪影響を及ぼすことだろう。

 今のところ米国経済は貿易摩擦にもかかわらず堅調ぶりを維持しているが、株式市場では少しずつ動揺が生じるようになっている。

「米国市場の堅調さを支えているのはジャンク債市場の活況である」と本コラムでこれまで述べてきたが、そのジャンク債市場がエネルギー部門を中心に値崩れが始まっている(10月30日付ZeroHedge)。その原因は原油価格の下落である。ジャンク債発行量の15%を占めるシェール企業の今後を、投資家が不安視し始めているからだ。原油価格のさらなる下落によりシェール企業の倒産が増えればジャンク債市場全体が不調となり、株価が下落する。

 2016年以降株価と連動を強めている原油価格は、株価の下落によりさらに値段を下げるという「負のスパイラル」に入る可能性がある。

 米国経済の好調さの象徴である株式市場が変調をきたせば、米国の旺盛な原油需要もあてにできなくなる。11月に入り、「2019年の世界経済は一斉に減速するリスクがある」(11月5日付ブルームバーグ)、「世界の原油需要のピークが5年以内に訪れる」(11月5日付OILPRICE)など原油価格に悪影響を及ぼす予測も相次いでいる。

減産の決断ができないサウジアラビア
 原油市場ではファンドの原油買い玉が約3年ぶりの低水準となり、「原油価格が1バレル=55ドルまで下落する可能性がある」と言われ始めている(11月5日付ブルームバーグ)。事態の急変を驚いた主要産油国の間に、再び減産の必要性が意識され始めている。

 主要産油国で構成される共同閣僚監視委員会は10月25日、「原油在庫が増加する状況にかんがみ、再び減産が必要となる可能性がある」との声明を発表した。数日前までの「極力大量に生産する」姿勢から大転換である。

 2017年の時はサウジアラビアがリーダーシップを発揮した。再びリーダーシップを求めることは、もう無理な注文なのだろうか。

 カショギ氏殺害事件の大逆風の中、10月23日から開催された「未来投資イニシアティブ(砂漠のダボス会議)」の場で「560億ドルの新規投資契約が締結された」とサウジアラビア政府は成功を強調した。だが、その中身はほとんど石油関連である。サウジアラムコのIPO中止も合わせて考えると、サウジアラビア経済は石油依存に戻ってしまったといってよい。来年の予算は国内安定のために過去最大規模になる見込みであり、原油からの収入は「喉から手が出る」ほど欲しい状況である。

 脱石油経済化を進めていた2017年前後は思い切った減産に踏み切ることができたが、石油依存に回帰したサウジアラビアが再び同様の決断ができない。サウジアラビアが決断できなければ、ロシアが同調することはないし、米国はそもそも協調減産できる状況にない。

 OPEC総会は12月3日に開催されるが、来年の生産制限に関する新たな協定が締結できなければ、原油価格の下落に拍車がかかる可能性がある。

相変わらず独断専行のムハンマド皇太子
 最後にサウジアラビア情勢についてである。

 カショギ氏殺害事件以来、サウジアラビアに対する西側の視線が厳しくなっているが、10月30日、米国の国防、国務両長官がそろって「イエメンの停戦と30日以内の和平協議の開催を呼びかける」声明を発表した。サウジアラビアのイエメン内戦への軍事介入は3年半を超え、「世界最悪の人道危機の発生に米国も荷担している」との国内外からの批判が高まる中での米国政府の転換変更である。

 だが停戦の呼びかけと裏腹に、サウジアラビアとUAEが主導するアラブ連合軍は、今年6月に失敗したイエメン西部のホデイダ港奪還作戦を再び開始した(11月2日付アルジャジーラ)。人道危機は深まるばかりである。

 カショギ氏事件とは異なり、イエメン内戦への軍事介入はムハンマド皇太子の責任であることは明白である。イスラム教シーア派反政府武装組織フーシ派の拠点であるホデイダ港を奪還しないままではサウジアラビアが利する停戦合意はおぼつかない。「多額の軍事予算をドブに捨てた」としてムハンマド皇太子への批判が高まるのは必至であり、サウジ王室内の動揺が激しくなっている(11月3日付日本経済新聞)。

 今年9月、ロンドンで「イエメン内戦への軍事介入はサルマン国王とムハンマド皇太子に責任がある」と述べたアハマド王子が、10月末にサウジアラビアに帰国した。アハマド王子(77歳)はサルマン国王の実弟であり、国内での人気が高い人物である。国王や皇太子の継承問題を協議する「忠誠委員会」が昨年6月にムハンマド皇太子の副皇太子からの昇格を決定した際、反対したメンバーの1人だった。王族内の調和を取り戻す動きの一環だろうが、肝心のムハンマド皇太子はイラン制裁が発動された11月5日、サウジ初の研究用原子炉を建設するプロジェクトを始動させる(11月6日付AFP)など、国際社会の懸念を全く考慮しない独断専行を続けている。

 中東地域では1984年当時のサダム・フセイン大統領が、2004年にはアサド大統領が「改革者」として西側の賞賛を浴びていた。現在のサウジアラビアの「改革者」も先駆者と同じ運命をたどってしまうのだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54608

 


本当に「燃料制約」は起きていたのか
From 日経エネルギーNext
監視委員会が電力市場高騰の要因にメス

2018年11月12日(月)
中西 清隆=日経エネルギーNext

 電力・ガス取引監視等委員会は、大手電力に対して、「燃料制約」の運用の合理化を求めていく。10月23日の有識者会議(第34回制度設計専門会合)で、監視の視点としてその概要を明らかにした。

 全面自由化以降、卸電力市場は需給がひっ迫する夏場と冬場、決まって荒れた。とりわけ、昨冬と今夏は異常な高値が頻出した。

 昨冬の電力市場価格は、11月半ばから西日本エリアで高騰する時間帯が頻繁に出現。西日本エリアの2017年12月の平均価格は13円/kWhと前年同期より4.1円/kWh高く、同じ時期の東日本エリア(北海道を除く)より2.7円/kWh高かった。

 そうかと思えば、年が明けた2018年1月後半からは東日本で西日本を上回る高値が目立つようになる。2月9日には東京エリアプライスは57.98円/kWhという史上2番目(当時)の高値をつけた(「電力市場が史上2番目の高値、意外な2つの理由」参照)。

 そして決定的だったのが今夏、7月25日に西日本エリアでつけた史上最高値「100円」に代表される猛烈な高騰ぶりだ(「電力市場価格が史上最高値100円」参照)。

 いずれも、記録的な寒波や猛暑、原油価格の上昇だけでは説明しきれない値動きだった。市場からの電力調達に頼る多くの新電力が大きなダメージを被った。

 監視委員会幹部は、日経エネルギーNextの取材に対し、「昨冬や今夏、需要のピーク時間帯で発生した高騰に最も効いていたのが大手電力による燃料制約だった」と明かした。そして今回、燃料制約に対する監視の視点が整理されたことで、「今後の高騰抑止に一定の効果があるはず」との見通しも明らかにした。

 燃料制約とは、大手電力が余剰供給力を市場に投入する「自主的取組」の実施に当たって、市場投入量を減らす要因となる「入札制約」の1つ。簡単に言えば、先々の燃料不足を懸念して、自社需要分の電力だけを発電し、市場投入用の発電はしないことをいう。

 大手電力から新電力へ需要(顧客)が離脱し、自社需要は減ったとしても各エリアの電力需要の総量は大きく変わってはいない。それにもかかわらず、燃料不足を理由に発電量を減らせば、当然需給はタイトになる。

見えなかった監視の切り口
 監視委員会は2018年1月30日の有識者会合(第26回制度設計専門会合)の場で、昨冬の西日本における市場価格高騰の背景として、「石油やLNGの燃料不足によりスポット市場での売り入札量の減少が発生した」と報告した。


 このとき配布した「燃料制約の状況」と題したペーパーには、寒さなどから電力需要が計画より増える中、「燃料の追加調達については数カ月から半年程度のリードタイムが必要」「天候不良により入船が計画通りにできなかった」など、大手電力から聞き取った、各社が燃料制約を実施した理由が書き並べられていた。監視委員会が示した今後の対応は「燃料制約の在り方について整理・検証を行う」と記すにとどまった。

 監視委員会は、燃料制約の問題に事実上初めて対峙することになった昨冬の段階では、有効な監視や規制ができなかったのだ。

 今回、概要を公表した監視の視点は、これまでの燃料制約に対する研究の成果と言える。それは、大きく3点からなる。(1)卸電力市場への想定供出量の考え方、(2)燃料不足の判断方法、(3)売り入札の抑制方法――である。

 (1)は簡単に言えば、自社需要分だけを考えた燃料調達ではなく、自主的取組で求められている余剰電力も可能な限り多く市場で売って、発電部門が最大限儲かる燃料調達を計画するよう求めるものだ。

 今回、監視委員会は各社の燃料制約を検証するに当たっての“前提”を明文化した。そこには、「(大手電力が)保有する電源の大部分は総括原価の下で形成されたものであり最大限有効活用することが望ましい」と明記された。大手電力各社に対し、この前提に沿って発電事業の収益最大化を合理的に追求しているかどうかをチェックする。

 例えば、監視委員会が例として挙げたのが、先渡市場を使った約定可能性の判断だ。ある発電ユニットの限界費用がスポット市場の想定価格を上回っていたとしても(スポットで売れる見込みが小さくても)、先渡市場で約定する可能性はある。

 そこで、単純に「スポット市場では売れそうにない(から燃料を調達しない)」と判断するのではなく、追加燃料の調達が間に合う時期に、実際に先渡市場に売り入札を入れることなどを求める。「そこで約定しなかったとき、はじめてその発電ユニットの燃料調達は行わなわなくていいと客観的に判断できる」(監視委員会取引監視課)。つまり、“恣意的な燃料調達減らし”を抑止し、常に電源の最大活用を目指した燃料調達を求める。

 「仮に卸電力市場への想定供出量(燃料調達量)の考え方が合理的でなければ、事業者は自主的取組への姿勢が問われる。市場支配力の不当な行使が認められるケースがあれば当然、行政処分の対象になり得る」(監視委員会幹部)。

 2番目の監視のポイントである「燃料不足の判断」は、電力の需要増や入船遅延など想定と異なる事態が起きたとき、それが供給力にどのようなリスクをもたらすのかを合理的に評価することを求めるものだ。要は、勘や前例踏襲による判断は受け入れない。本当に燃料制約が必要な事態なのかを論理的に説明できなければならない。

ピーク時間帯には可能な限りの市場投入を
 電力価格への影響という点では、3つめポイントとして挙げた「売り入札の抑制方法」が大きいと見られる。

 というのも、ある監視委員会幹部は「需要ピーク時、特に猛暑日や厳寒日の夕刻に、複数の旧一般電気事業者の燃料制約(燃料消費の抑制)に起因した売り入札量の減少が頻繁に見られた」と、昨冬と今夏の実態を明かす。

 つまり、高値がつきやすい時間帯に大手電力の燃料制約が重なり、高騰の直接の原因になったケースが少なくなかったというのだ。

 市場価格は日々変わるが、夏場であれば冷房需要が伸びる13〜17時ころ、冬場であれば暖房需要が高まる6〜10時、16〜20時ころに需要はピークになり、価格が上昇しやすい時間帯であることは、電気事業者なら誰でも知っている。

 燃料制約が必要であっても、燃料消費の抑制はピーク時間帯を避けられないものなのか。経済合理性を考えれば、市場価格が高いときに市場に供出(発電)し、安いときに燃料制約(発電の抑制)をする方が大手電力にとって儲けは大きくなるはずだ。だが、これまでは必ずしもそうしてこなかった。

 これまで、燃料制約に伴う発電の抑制やタイミングなどの具体的な手法は大手電力各社に委ねられてきた。だが、必要性の判断や実施する時間帯の選択など、事業者によっては必ずしも合理的に決めたものではなかったと監視委員会は見ている。

 そこで、監視委員会は改めて、燃料制約が必要な場合は、夜間など需給が穏やかで市場価格が比較的安定している時間帯で発電を抑制し、ピーク時間帯では可能な限り余剰電力を市場に供出する(発電する)ことを求めていく。「今後は明確な理由もなく、ピーク時間帯に燃料制約を実施すれば、相場操縦と見なすこともあり得る」という。

 今冬、これまで一部の大手電力が実施していたという、ピーク時間帯における燃料制約がなくなれば、昨冬や今夏のような異様な高騰は減る可能性がある。その点、今回の監視委員会の取り組みは評価できる。

 一方で、「もう少し早く手を打てないものか。この調子では、市場が正常化する前に新規参入者は息絶えてしまう」(新電力幹部)といった声も漏れてくる。

 燃料制約に起因した高騰が最初に起きたのは昨冬のこと。だが、今夏も同様の高騰が起きてしまった。電力市場の正常化は自由化の成否を分かつ大きなテーマである。そこでは監視委員会の存在が大きな鍵を握っている。

 監視委員会にはさらなるスピードアップも求めたい。

[日経エネルギーNext 2018年11月5日付の記事を転載]


このコラムについて
From 日経エネルギーNext
 電力・ガスの全面自由化を迎え、日本のエネルギー市場は新たな局面を迎えた。王者・東京電力は原子力発電所事故の賠償や廃炉の責任を背負い、大規模な合従連衡が進もうとしている。数多くの新規参入企業が虎視眈々と商機を狙い、まさに戦国時代の様相だ。電気やガスの料金は本当に下がるのか、魅力的なサービスは登場するのか――。エネルギービジネスの専門誌「日経エネルギーNext」が最新ニュースを解説する。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700115/110600157

 


AI時代は「のび太」が理想的リーダー像に
和田秀樹 サバイバルのための思考法
人工知能やロボットにわがままなリクエスト

2018年11月12日(月)
和田 秀樹

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が月刊誌への寄稿で、同性カップルを念頭に「『生産性』がない」などと主張したことで物議を醸しだしている。

 子どもができないことが果たして生産性がないと言えるのかについては、LGBT(性的少数者)の人たちや子どもを産まない人の生みだしている国内総生産(GDP)を考えれば、結論は明らかと言えるように思うが、私は実は、この生産性神話について、長年、強い違和感を覚えている。


AIとロボットが社会を支える(写真:shutterstock)
 生産と消費が逆転しているというパラダイムシフトに対応していないように思えてならないからだ。

 今回は、サバイバルのための思考法として、生産と消費の逆転、そのほかのパラダイムシフトにどう対応するかを考えてみたい。

生産と消費の逆転というパラダイムシフト
 私が21世紀というものを考える際に、最大のパラダイムシフトと考えているものは、生産と消費の逆転である。

 10年ほど前だったと思うが、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長(当時)と対談する機会があった。

 その時に何を話したかあまり覚えていないが、覚えているのは、「1990年ごろ、先進国では生産と消費が人類の歴史上初めて逆転したと言える時代がきた。これまでのように生産性を高めるビジネスモデルは限界に来ていて、いかに消費を開発するかがビジネスのキーになる」というような意味のことを話されたことだ。

 このパラダイムシフトに基づいた思考パターンを取り入れたことが、その後も続いたセブンイレブンの成功の秘訣と言えるのだろうが、私は、生産と消費が逆転したということはもっと重要な意味をもつように思うようになった。

 日本以外でも主要国では2070年までに中国、ブラジル、ロシア、ドイツ、イタリアなどが人口減に転じる。人口が減れば、よほど1人あたりの所得が増えない限り、消費は減っていくことになる。ところが生産性は、手作りでないと嫌というような大規模なムーブメントがない限り、どんどん伸びていくだろう。要するに需給ギャップはどんどん大きくなっていく。

 人口減が進む国では、需要減に伴う生産過剰が危惧される。生産物が余っているのだから、外国にモノを買ってもらいたくなる。モノを買ってくれる国の力が強くなるのは、中国とドイツの関係をみているとわかる。逆に外国からの輸入はできればお断りだ。トランプのような人物が出てくるのはアクシデントでなく、これから保護主義の国がもっと増える可能性は小さくない。

 個別物品で、生産過剰ということは珍しいことではない。せっかく作った農産品を価格維持のために捨てたりする、豊作貧乏などと呼ばれることが起こる。あるいは、コメが余ってから行われている減反政策では、コメを作らないと補助金が与えられるということが続けられた。

 同じように農作物だけでなく、工業製品についても生産過剰が危惧される。

 それなのに、生産性を上げろと言うのは、パラダイムシフトに対応できていないとしか思えない。生産性を上げれば輸出の競争力が上がるという考え方もあり得るが、トランプのような保護主義が世界中で起こるようになれば、その目算も狂うし、買ってくれる途上国が自らで作れるようになり、自国内でも生産過剰になれば、やはり買い手が減ってくる。

 そう考えると、我々は大胆な発想の転換が必要となるだろう。

 経営者には、生産性を上げるより、従業員が会社の一歩外に出れば消費者になるのだから、給料を上げるべきという発想が必要となるかもしれない。高齢者が増えることを心配する人が多いが、生産しないで消費だけしてくれる高齢者がありがたい存在ということになる。同様に生活保護バッシングもナンセンスで、むしろ歓迎すべき存在と言う話にだってなり得る。

AIとロボットの時代に残る人の役割
 働かない時代という意味では、人工知能(AI)やロボットの技術進歩も見逃せない。

 自動運転が実用化されれば、トラックやタクシードライバーが大量に失業するとされる。着いた先で荷物を運ぶのだって、ロボットの方が力があるだろう。配送ミスだってむしろ少なくなるはずだ。

 私は毎月、福島で原発の廃炉作業をしている職員のメンタルケアのボランティアに今でも通っているが、慢性の人手不足に悩む廃炉作業でもほとんどがロボットで代替可能になるだろう。それどころか現在肉体労働とされているものは、ほぼロボットで代替可能で、せいぜい現場の監督が必要なだけになるようだ。

 医者や弁護士のような知的職業だって危ういとされている。AIであれば、どんな優秀な弁護士より判例や法律を覚えることができるし、毎年作られる法律をどんどん更新できる。今の医者のように検査データや画像データで診断するのであれば、おそらくAIに太刀打ちできないだろうし、たとえば放射線画像からがんを見落とすことだってはるかに減るはずだ。

 接客業や介護などロボットがやるより人間にやってもらった方がうれしい仕事が生き残るとされているが、人間の肌を人工で作れるようになって、人間のモデル以上の美女ロボットが、人間よりはるかに優しい対応をしてくれるプログラムでもてなしてくれれば、こっちの方がいいという人も珍しくなくなるかもしれない。

 漫画「ドラえもん」では、劣等生ののび太がロボットのドラえもんにいつも泣き付いているが、このパラダイムシフトの中では、のび太のようなわがままなリクエストが出せる人の方が、その命令を忠実に実現する優秀な人より価値がでるかもしれない。

 現にスティーブ・ジョブズは技術者でないのに、あれこれと作ってほしいものを発案し、大成功者になっている。こういうタイプの経営者が、これまで優秀とされてきた人材にとって代わってスタンダードになってくる可能性は大だ。

 女性の時代といわれて久しいが、この新パラダイムでは、別の形の女性活躍の時代がくると私は考えている。

 これまで活躍している女性は、男勝りというか、男性以上に生産性の高い人が多かったように思う。

 私が考える新しい女性リーダーというのは、男性ではできない発想をする女性だ。有史以来、男が稼いでくる、生産する、女性は主に消費して家庭を守るというのが基本的なスタンダードだった。

 生産不足の時代であれば、生産性の高い男性ほど(女性も)評価が高かった。しかし、消費不足であり、生産したいものがAIやロボットでほぼ作れる時代であれば、のび太型の、なるべく怠けたい、消費大好きの女性がリーダーとなって、わがままをいうような会社の方が支持を集めたり、売れるもの、売れるサービスを作れるかもしれない。

 パラダイムシフトの時代には、外国人労働者を受け入れるかどうか以上に人余りをどう解決するかとか、これからの時代に必要とされる人材とはどういうものかを考え直す必要があることは確かなようだ。

内科医はAI、外科医はロボが代替
 生産過剰や、AI、ロボットの実用性の大幅な向上以外にも、この10年、20年であちこちで大胆なパラダイムシフトが起こると私は読んでいる。

 たとえば医学の世界だ。

 iPS細胞が当たり前に使える時代がくると、医学が180度と言っていいくらい変わると私は考えている。

 生活習慣病といわれる高血圧や糖尿病、高脂血症の治療をなぜ行うかと言うと、将来の脳梗塞や心筋梗塞などの予防のためだ。これは原則的に動脈硬化がひどくなって起こると考えられるので、その促進要因である高血圧や高血糖、高脂血症を治療することで動脈硬化になりにくくするという考え方である。

 そのために集団検診を行い、これを早めに発見しようとするし、異常値が見つかれば、投薬や生活指導を受ける。

 しかし、ある程度動脈硬化が進んだら、iPSで治療ができるという話になれば、この手の健康診断も、その後の投薬や生活指導も大部分はいらなくなる。

 これまでは内科的治療の発達で多くの外科医が必要がなくなった。結核を抗生物質で治療できるようになると手術で結核の患部を取り去る必要がなくなった。胃潰瘍の薬が発明されると、まず手術的治療が行われなくなった。がんの特効薬ができれば外科医の大半が失業するという話はかなり前から出ている。

 ところがAIが検査データを読み、動脈硬化が生じたらiPS移植ということになれば、逆に内科医が失業して外科の時代になるかもしれないし、それも手術ロボットの普及で失業の憂き目にあうかもしれない。

中国の買収攻勢に日本は無防備
 これはすでに始まっていることだが、冷戦が終わり、中国が準資本主義化した現在、軍事力による国防より、外国資本による侵略やIT化によって、情報を握られたり、攪乱させられたりすることの防衛の方が重要だという声をよく耳にする。

 8月に米国では、外国投資リスク審査近代化法という法律が成立している。中国などに技術が流出しないように、重要な技術を持つ会社に、外国が投資してきたり、買収をしようとした際にそのリスクを審査して止めることができる法律だ。

 日本の場合、小さな島が侵略されないかということには非常にナーバスなのに、日本のたとえば皇居の周りのような大事な土地を中国企業に買収されたり、日本のハイテク企業を中国が買収しようとしてきたときなどには、あまりに無防備だ。戦争で領土を万が一取られるようなことがあっても、金を払えば、その土地の開発も可能だろうし、そこに観光に行けるだろうが、外国人に土地を買われたら、日本国内であっても、そこに足を踏み入れたら不法侵入で日本の警官に逮捕されるというのに。

 私が2022年問題と呼んでいることがある。それは2013年に中国の政府系のシンクタンクがまとめた報告書によると、中国が米国をGDPで抜かすということだ。

 習近平が任期を伸ばしたことを正当化するためにも、多少中国経済が失速しても、人民元を切り上げしてでも、これは実現すると私は見ている。少なくとも人口が圧倒的に多いのだから、いつかは逆転する。

 これだって、その後の世界の勢力地図に大きな影響を与えるだろう。購買力の大きい国やお金を持っている国に頭が上がらないのが現状なのだから。

 今回、私が示したパラダイムシフトはあくまで例であって、あちこちで生じているはずだ。少なくとも、多くの分野でこれまでの常識が通じなくなっていることを意識しないとサバイバルできるとは思えない。


このコラムについて
和田秀樹 サバイバルのための思考法
国際化、高齢化が進み、ストレスフルな社会であなたはサバイバルできますか? 厳しい時代を生き抜くアイデアや仕事術、思考法などを幅広く伝授します。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/110600040/
 

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コメント
1. 2018年11月12日 13:16:10 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[128] 報告
ノキア会長が実践した、
機械学習を全社導入する方法

リスト・シラスマ:2012年からノキア会長。エフセキュア創業者兼会長。
2018年11月12日
人工知能を自社で活用したいと考えている企業は多いだろうが、上層部がその知識に乏しければ、進むべき道を見誤る。世界を代表する通信機器会社ノキア会長のリスト・シラスマは、リーダーみずから学校で学び直すことから始め、同社の全社員に機械学習の基礎を習得する仕組みをつくりあげた。本記事では、そのための5つのステップが示される。


 人工知能(AI)はほぼすべてのものに破壊的変化を及ぼす、という期待と可能性に対し、私は長いこと懐疑的であり、楽観的でもあった。しかし昨年、機械学習の急速な進歩にショックを受け、ノキアと自分がともに理解不足だったことに懸念を抱いた。そこで、私自身が機械学習についてどう学び、会社の学習をどう支援すべきかを考えた。

 幸いにも、ノキア会長という立場のおかげで、世界を代表する何人もの人工知能の研究者たちに時間を割いてもらうことができた。ただし、彼らの話は断片的にしか理解できなかった。また、一部の対談相手は、私に対して「機械学習は実際にどう機能するのか」を芯から理解させることよりも、このテーマに関するみずからの高度な理解を披露することに夢中になっているように思えて、苛立ちを感じた。

 私はしばらくの間、不平をこぼしていた。しかしやがて、長い間CEOと会長を務めてきたがゆえに、自分の立場に囚われるというワナに陥っていたことに気づいた。他人に説明してもらうことに慣れてしまっていたのだ。見るからに複雑そうな技術の基本を自分で解明しようとする代わりに、私はその重荷を他の誰かに背負ってもらうことに慣れきっていた。

 機械学習についてみずから学び、同じ問題を抱える人たちに、その成果を説明してはどうだろうか。そうすれば彼らのためになると同時に、当社における機械学習の注目度も高まるかもしれない。そう考えたのである。

学校でふたたび学ぶ
 私はインターネットで手早く検索し、オンライン学習プラットフォームのコーセラでアンドリュー・エンのコースを見つけた。アンドリューは素晴らしい講師で、人々に学んでほしいと心から願っていた。約20年ぶりにプログラミングに触れたことも、非常に楽しかった。

 機械学習の最初のコースを修了した後、専門的なフォローアップ講座2つを続けて受講した。深層学習と、主に視覚イメージの分析に適用される畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の講座である。テーマに関する知識が増えていくにつれ、アンドリューのコースに含まれていなかった、機械学習のアーキテクチャとアルゴリズムに関する研究論文と記事も読むようになった。

 私は3ヵ月間で6つのコースを修了し、各コースで1つずつプロジェクトに取り組んで実践的な理解を深め、簡単なアルゴリズムと、より複雑な多くのアーキテクチャについて学習した。

 その後、何よりも困難な部分に手をつけた。機械学習の本質を最もシンプルに、かつレベルを下げずに、どうやって人に説明するか、という問題だ。そこで、自分ならこんな内容のものが見たいと思うような、プレゼンテーションを作成した。

 このプレゼンはYouTubeにアップされ、これまでに約4万5000人が視聴した。また、各方面にもプレゼン動画を提供した。その一部はフィンランドの全閣僚、欧州連合の大勢の委員、国連大使のグループ、科学に興味を持ってもらいたい10代の女子学生200名などである。多くの企業では、私の機械学習入門のプレゼンを視聴するよう管理職に義務づけている。

 ノキアの数千人の社員も、私のプレゼンを見て刺激を受けてくれた。研究開発部門のメンバーの多くは、私のもとに現れて打ち明けた。会長が機械学習システムをコーディングしているのに、自分たちはまだ始めてさえいないことを恥ずかしく思う、と。しかしいまでは、彼らは空いた時間を機械学習の研究に充て、ノキア初のプロジェクトに取り組んでいると言った。うれしい話だった。

 しかし、これは最初の一歩にすぎない。

人工知能の能力を身につける5つのステップ
 私が望んだのは、機械学習に関する、より広い理解を促す仕組みを構築することだ。その対象は技術者だけでなく、ノキアの全社員である。

 この目標の達成を目指し、「AI能力を身につける5つのステップ」のテンプレートを作成したことは、私の経験で最も価値あるものとなった。あらゆる業界のリーダーにとって、事業での機械学習活用の知見を探るうえで、これらのステップが参考になれば幸いである。

 1. 全社員に人工知能の基礎を学ばせる

 我々は、機械学習の基礎の習得を義務化する計画を立てている。会社の行動規範を知るのと同じだ。今後はオンラインテストを作成する。全社員がそれに向けて、機械学習を学ぶことになる。

 大切なのは、機械学習を理解できることを、社員に気づかせることだけではない。これには、もっと深い意味がある。学習は人生を通じて続ける必要があり、初めは理解できそうにないと思われた非常に複雑なことでも、実は理解できるのだと気づくことが大切なのだ。

 自分には新しいことを学ぶ能力があるという驚きを社員に与えることができれば、彼ら自身にとっても、会社にとっても、非常にプラスとなるだろう。

 2. 優秀な専門家チームをつくる

 事業リーダーや他の誰かが、アイデアを思いついたとしよう。「こうすれば、お金をかなり節約できるだろう」とか「機械学習システムの活用について教育すれば、この製品の競争力を高めることができる」といった提案を、専門家チームに「それは実現可能だ」「まずは試してみよう」「ありえない」などと評価・判断させるのだ。これは社内の能力センターでもいいし、第三者のAI企業に外注してもいいだろう。

 専門家チームのデータサイエンティストたちは、事業部門の一般的な研究開発チームに送り込まれ、必要な仕事を実現する方法を指南する。そして、プロジェクトが終わるごとに、実践的な経験を通じて機械学習に詳しくなった社員のもとから去っていく。彼らは自分の知識を広めると同時に、本部の能力センターに戻ったときには、現場での成功経験を共有することができるのだ。

 ところで、専門家チームを本部に集約することが重要なのには理由がある。今日の厳しい人材市場では、機械学習の優秀人材を採用する際に、彼ら自身と同じように有能な同僚と仕事ができることを知らせておけば、格段に有利だからだ。

 3. 堅牢なITシステムとデータ戦略を組み合わせる

 ITシステムの構築においては、自社がアクセスできるすべてのデータサブセットと、他のあらゆるサブセットとの組み合わせを可能にする必要がある。それによって、特定の機会学習システムの導入に必要となる、正しいデータを収集できるようにするためだ(国によっては、個人情報関連法との兼ね合いで困難かもしれない)。データレイクの構築は、純粋にITの仕事である。

 これと対を成す戦略面では、将来必要となるデータに関する予測が必要となる。3〜5年後、当社のビジネスの中には、導入する機械学習システムによって競争力が大きく左右されるものが出てくるだろう。将来を見据え、競争力の向上に欠かせないシステムに学習させるためのデータを把握して入手する必要があるのだ。

 4. 社内に機械学習を導入する

 機械学習で人間の作業を増強すれば、もっと迅速かつ的確にこなせる仕事は無数にある。そのためには、社員の行動を変え、自分の周りの仕事すべてを自動化のチャンスと捉えてもらう必要がある。

 5.機械学習を製品とサービスに取り入れる

 機械学習をどう活用すれば顧客に対する競争力が向上するのかを、常に分析しなければならない。

 AIの将来にとって、これら5つのステップはどれも等しく重要なので、すべてを同時に実践しなければならない。社員に機械学習の基礎を教えながら、ITインフラの構築に着手し、人材を発掘し、既存のITチームと協力して、自社の製品とサービスに機械学習の能力を追加するよう取り組むことは可能だ。

 機械学習能力のさまざまな要素のレベルを同時に向上させれば、各要素がつながり合い、関係する要素すべてが強化されるだろう。ある要素が別の要素の足を引っ張るのではなく、すべてがともに前進し、教訓を共有し、新しいアイデアを生み出し、勢いに乗るのだ。

 私はしばしば、自分のことを起業家だと説明する。起業家精神を持つと、何もかもがみずからの責任になる。本気で考え、それを行動で力強く、はっきりと伝えるようになるのだ。

 私はノキアのCEOと経営陣に対し、機械学習へのテコ入れを早急に始める必要性について、ただ説明するという形でも後押しできたかもしれない。しかし、口だけで言うのは簡単だ。人々に見える形で行動を起こし、見習いたいと思わせるほうが、どんな立派なスピーチよりも価値がある。

 グローバル企業の会長が、学校に戻って大事な技術を学んだ――。この事実は十分に新奇であり、人々の注目を集め行動を促すことにつながった。

 これが単なる始まりにすぎないことを願っている。


HBR.ORG原文:The Chairman of Nokia on Ensuring Every Employee Has a Basic Understanding of Machine Learning — Including Him, October 04, 2018.

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リスト・シラスマ(Risto Siilasmaa)
2012年からノキア会長。エフセキュア創業者兼会長。著書にTransforming NOKIA(未訳)がある。
http://www.dhbr.net/articles/-/5608


 

【第2回】 2018年11月12日 田坂広志 :田坂塾 塾長、多摩大学大学院 教授

「あの人、頭は良いんだけど……」と陰で言われる人に足りないもの

残念な人、一流の人、その差は紙一重 ――あなたの成長を阻む「7つの壁」を打ち破り、人生を拓くための技法とは。田坂流「成長の思想」をまとめた最新刊『なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか ― 何歳からでも人生を拓く7つの技法』より、本文の一部を紹介する。


「あの人、頭は良いんだけど……」と揶揄されてしまう人
まずは、どの職場でも見かける「頭の良い」新人の突き当たる壁について、紹介しましょう。

有名大学を優秀な成績で卒業し、入社してきた佐藤さん。「期待の新人」という周囲の眼差しの中、毎日、一生懸命に仕事をしています。会議では、熱心に議論の内容をメモに取り、上司の指示もすぐにメモをして確認しています。また、勉強熱心で、通勤の往復時間には、必ず本を読んでいるようです。学生時代から読書家だったとのこと。さらに、ウェブでの情報収集にも余念が無い。さすが有名大学を卒業した、いわゆる「頭の良い」タイプの新人です。何より、真面目です。

しかし、どういうわけか、任された客先回りの営業の仕事については、上司の評価は芳しくありません。なかなか新規受注が取れないことも問題なのですが、うまくいかなかった商談について、プライドが邪魔するのか、すぐに上司に報告しないのです。先輩にも相談しないようです。

一方、同じ職場に配属された鈴木さんは、佐藤さんほど有名な大学を出ていないのですが、営業成績は、かなり先を行っています。鈴木さんは、可愛げのある性格もあり、営業のスキルについても、上司や先輩に自分から頭を下げて教えてもらっています。失敗した商談についても、正直に上司へ報告し、むしろ、色々とアドバイスをもらう機会にしています。

この鈴木さんと佐藤さんを比較して、佐藤さんのことを、陰で「あれで○○大学を出ているんだけどね……」と揶揄する職場の先輩もいるようです。

あなたの職場にも、こうした新人がいるのではないでしょうか。

実は、この佐藤さんは、優秀な人が突き当たる「成長の壁」のうちの一つ突き当たっているのです。
それは、

「優秀さ」の切り替えができない

という「学歴の壁」です。

これは、前回の記事で述べた、「学歴」という落し穴に陥る人が、突き当たっている壁でもあります。

※参考
なぜ、「勉強ができる人」は「仕事ができない人」になってしまうのか
https://diamond.jp/articles/-/184594

すなわち、どれほど学生時代に「勉強ができる」と言われ、「高学歴」を手にしても、ひとたび実社会に出た瞬間に、その「学歴的優秀さ」だけでは、「仕事ができる」人材にはなれないのです。
実社会において活躍するためには、誰であろうとも、「職業的優秀さ」を身につけなければならないのですが、学生時代に「優秀」と言われた人ほど、この「学歴的優秀さ」から「職業的優秀さ」への切り替えができないのです。

佐藤さんが突き当たっているのは、その壁なのです。一方、鈴木さんは、「学歴的優秀さ」においては、佐藤さんに劣っていますが、だからこそ、一生懸命に、実社会で求められる「職業的優秀さ」を貪欲に身につけようとしています。そして、その姿勢の違いが、佐藤さんと鈴木さんの営業成績での違いとなって表れているのです。

なぜ、いくら本を読んでも、仕事につながらないのか
前回の記事では、「学歴的優秀さ」とは「論理的思考力」と「知識の修得力」が優れていることであると述べましたが、分かりやすく言えば、「理路整然と物事を考えられる」ということと、「記憶力が良い」ということです。この2つの能力があれば、入学試験や資格試験などでは、好成績を挙げることができます。

これに対して、「職業的優秀さ」とは、この2つの能力よりも、さらに高度な「直観的判断力」と「智恵の修得力」において優れていることを意味しています。分かりやすく言えば、「勘が鋭い」ということと、「経験から大切なことを学べる」ということです。

いま、「経験から大切なことを学べる」と言いましたが、それが、「知識の修得力」と「智恵の修得力」との大きな違いです。では、この2つは、何が違うのでしょうか。

そもそも、「知識」と「智恵」とは、何が違うのでしょうか。

端的に言えば、「知識」とは、言葉で表せるものであり、「書物」や「ウェブ」で学ぶことのできるものです。
これに対して、「智恵」とは、言葉で表せないものであり、「経験」や「人間」を通じてしか掴めないものです。

すなわち、この「知識」とは「文献知」や「言語知」とも呼べるものであり、「智恵」とは「実践知」や「経験知」とも呼べるものです。

ちなみに、この日本で「智恵」と呼ばれるものは、欧米では、かつて、科学哲学者のマイケル・ポランニーが「暗黙知」(tacit knowing)と呼んだものでもあります。彼は、著作『暗黙知の次元』の中で、「我々は、言葉で語れることよりも、多くのことを知っている」という言葉を残していますが、実際、我々は、言葉で表せる「知識」以上のことを、経験を通じて知っており、これを日本では「智恵」と呼んできたのです。

では、なぜ、「知識」と「智恵」を区別することが大切なのか。

なぜなら、優れたプロフェッショナルの「優秀さ」とは、どれほど多くの本を読み、どれほど多くの「専門的な知識」を学んだかではなく、どれほど豊かな経験を積み、そこから、どれほど深い「職業的な智恵」を掴んだかで決まるからです。

言葉を換えれば、仕事の経験を通じて、どれほど深い「技術」や「心得」を掴んだかです。それは、分野を問わず、職業を問わず、プロフェッショナルに、共通に問われるものです。

ここで、「技術」とは、スキルやセンス、テクニックやノウハウと呼ばれるものであり、「心得」とは、マインドやハート、スピリットやパーソナリティと呼ばれるもの、日本語では、心構え、心の姿勢、心の置き所とも呼ばれるものです。そして、「技法」とは、この「技術」と「心得」を統合したものです。

人は何を見て「この人は頼りになる」と判断するのか
この「知識」と「智恵」の違いについて、分かりやすい例を挙げましょう。

世の中に弁護士という職業がありますが、活躍する弁護士と、そうでない弁護士の違いは、どこから生まれるのでしょうか。
弁護士であるかぎり、誰もが、法律に関する猛勉強をして、司法試験という難しい資格試験を突破してきています。すなわち、誰もが、「専門的な知識」という意味では、ある水準以上の力を身につけているのです。
しかし、そうした「法律の専門知識」だけでは、弁護士として活躍することはできません。

では、弁護士事務所を開いて活躍している、高橋弁護士の例を見てみましょう。

ある日、高橋弁護士の事務所に、依頼人の太田さんが来訪しました。相談内容を聞くと、父親が亡くなって、兄弟と土地の相続の問題で言い争いになっているとのこと。太田さんが少し興奮した状態で語る、混乱気味の話を一通り聴いて、高橋さん、冷静に、しかし明確な口調で、太田さんに、こう伝えます。

「分かりました。お話を伺っていると、太田様は、いま、法律的に、こういう問題に直面しています。分かりやすく申し上げれば、こういう問題です。もし、この件を裁判で争うとすれば、こういう法廷闘争の戦術でいくべきですが、できれば、事前に、先方の弁護士と和解の交渉をしてみることを勧めます。その場合、交渉は、当方が担当しますが、同時に、その土地については、隣地の住民から事情聴取をした方が良いでしょう。それも、当方で担当します。おそらく、この問題、うまく解決策が見つかると思います」

落ち着いた雰囲気で語る高橋さんの話を聞いて、太田さんも、気持ちが落ち着き、高橋さんへの信頼感を抱き、この問題の解決を任せようという気になります。高橋さん、また、新たな仕事を得たようです。

さて、この高橋さん、明らかに「活躍する弁護士」ですが、彼がこの場面で発揮している能力は、「法律の専門知識」だけではありません。

混乱した話を聞いて、すぐに問題の本質を掴む「洞察力」。難しい法律用語を、相手の理解力を判断しながら分かりやすく説明する「説明力」。その場で、法廷闘争の戦術を瞬時に考える「判断力」。先方の弁護士と交渉する「交渉力」。隣地の事情聴取をする「聴取力」。さらには、話を聞いてもらうだけで依頼人の気持ちが静まり、安心し、信頼感を抱く「人間力」など、極めて高度な能力を発揮しています。

そして、言うまでもなく、これらの能力は、いずれも、司法試験の勉強では決して身につかない能力であり、実際の仕事の経験を通じて身につけた「職業的な智恵」に他なりません。

これは弁護士の例ですが、分野を問わず、職業を問わず、プロフェッショナルとして活躍するためには、「専門的な知識」だけでなく、こうした「職業的な智恵」を身につけることが不可欠なのです。

すなわち、冒頭で紹介した新入社員の佐藤さんは、「専門的な知識」を学ぶ能力は身につけているのですが、活躍する人材になるために必要な「職業的な智恵」を身につける方法が分からないため、壁に突き当たってしまっているのです。
逆に、同期入社の鈴木さんは、その「職業的な智恵」を身につける方法を知っているため、「学歴」において佐藤さんに劣っていても、プロフェッショナルとして急速に成長しているのです。

相変わらず「工夫の無い会議」をする人に、決定的に足りないもの
では、その「職業的な智恵」を身につけるには、どうすれば良いのでしょうか。

そのために、まず最初に、佐藤さんが実行すべきことがあります。

それが、「学歴の壁」を越えるための「第1の技法」、

「経験」から掴んだ「智恵」の棚卸しをする
という「棚卸しの技法」です。

この技法は、これまでの日々の仕事で、自分が、どのような「職業的な智恵」を身につけてきたかを振り返るという技法ですが、「職業的な智恵」とは、高橋弁護士の例で言えば、「洞察力」や「説明力」、「判断力」や「交渉力」などのことです。さらには、「プレゼン力」や「会議力」、「企画力」や「営業力」などと呼ばれるものは、いずれも、この「職業的な智恵」です。

例えば、自分が会議を主宰することが多い立場ならば、自分の「会議力」を振り返り、自分がどの程度の「会議力」を身につけているかを「棚卸し」することです。
ただし、この「棚卸し」をするとき、2つの要点があります。

第1は、「一定期間の成長を振り返る」ということです。

分かりやすく言えば、「自分は、会議力が身についているか否か」という問いではなく、「自分の会議力は、この半年の間に、どの程度向上しただろうか」という問いを、自分に投げかけることです。
なぜなら、成長が止まる人というのは、ある程度、会議を運営できるようになると、「自分は、会議の運営はできる」と思い込み、実は、会議力というものには、奥深いスキルやノウハウの世界があることに気がついていないからです。

実際、職場を見渡すと、十年一日、工夫の無い会議の運営をしているマネジャーやリーダーは、決して少なくありません。リズム感良く会議を運営するスキルさえ身につけていない人も、残念ながら、珍しくありません。特に目につくのは、会議の運営とは、会議を「仕切る」ことだと思い込み、「シキラー会議」のスタイルを脱することのできないマネジャーやリーダーです。

同様に、「営業力」についても、「自分は、営業スキルは身につけた」と思い込み、顧客の立場や状況、人柄や心境に注意を払うことなく、マニュアル化した営業をする営業パーソンも、しばしば目につきます。いわゆる、「ワンパターン営業」のスタイルを脱することのできない営業パーソンです。

従って、「職業的な智恵」の棚卸しをするとき、必ず、一定の期間の成長を振り返り、例えば、「自分は、この半年の間に、どの程度、会議力が向上しただろうか」「この数か月、どの程度、営業力が伸びただろうか」と、自問自答することが極めて大切です。

第2は、「明確な課題意識を持って振り返る」ことです。

これは、第1の「成長の振り返り」を行うためにも重要なことですが、例えば、「会議力」であるならば、ただ「かなり会議力が身についた」といった抽象的な確認で終わらないということです。

もっと具体的、詳細に、自分が主宰する会議において、

(1)時間のマネジメントができるようになった
(2)混乱した議論の整理ができるようになった
(3)リズム感良く、議論を進められるようになった
(4)最後に、結論を上手くまとめられるようになった
(5)参加者の無言のメッセージを掴めるようになった

といった形で、自分がどれほど、その「会議力」を身につけることができたかを、明確な課題意識を持って振り返ることです。

このように、「会議力」や「営業力」だけでなく、「企画力」や「交渉力」、「洞察力」や「判断力」、「説明力」や「聴取力」など、自分の仕事で求められる様々な「職業的な智恵」について、定期的に、こうした「棚卸し」をすると、自然に、我々の「職業的な能力」は高まっていきます。
https://diamond.jp/articles/-/184626


 

【第101回】 2018年11月12日 丸山貴宏 :株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役
いま企業が切実に欲しがっている「2種類のマネジャー職」とは
企業が求めるマネジャー職
社長はどんな部門のマネジャーを今、欲しがっているのでしょうか Photo:PIXTA
「人事は最重要の戦略部門」
経営者が本気でそう考え始めた
 最近、企業の経営者と話をすると、「人」に関する課題に危機感を強めている傾向が見て取れます。その中で「どんな人材が欲しいか」という観点でいうと、必ずといってよいほど挙げられるポジションが2つあります。

 それは、「人事部門」と「マーケティング部門」の責任者です。採用人気だけを見ると人事とマーケティングの時代になっているような観すらあります。なぜそのような状況が生まれているのか。まず人事責任者から考えてみましょう。

 経営環境が大きく変動するなかで、経営者には新たなビジョンを打ち出したり事業戦略を変更したり、やりたいこと・やらなければいけないことがたくさんあります。それらの実行に必要な人材の採用や組織づくり、ルールの整備など、社長が人事責任者に任せたい仕事は山積みです。

 他方で人事部門に求められる仕事の内容も大きく変化しています。ダイバーシティや働き方改革の導入と定着、就活ルール変更への対応や従来よりも厳しくなった労基署とのコミュニケーション等々。そして何よりHRテクノロジーの登場で、ツールの活用による劇的な生産性向上という大きな効果をもたらすことが期待されています。

 このように経営環境と人事の仕事という2つの変化の掛け算のなかで、人事部門の重要性がより高まっています。もともと人事は経営戦略を実現するための重要部門とは言われてきましたが、経営者たちも本気でそう認識し始めたのだと感じています。

旧来型の人事責任者には
何が足りないのか?
 ところがこれまでの人事責任者は一般的に、バランス感覚に秀でていて社長との付き合いも長く、安定した仕事ぶりの人が座っていることが少なくありません。従来はそうした資質が人事責任者に求められていたからですが、社長がこれから人事責任者にやってもらいたいと考えていることをできるかといえば、非常に難しい。テクノロジーの動向も含め、外部環境の変化に対するアンテナの低い人が多いからです。

 もともと外部に出してはいけない情報を多く扱う人事部門は閉鎖的です。私の世代の人事は外部に話せることは何もなく、「人事は秘め事」でした。最近は少し様子が変わり、ベンチャーやスタートアップ系の人事責任者は勉強会などで横の交流を積極的に行っていますが、大多数の企業ではまだそこまでオープンになってはいません。

 しかし、それでは社長が人事責任者にやってほしいことをできるようにはなかなかなりません。だから「人事責任者が欲しい」と言っている社長の会社では人事責任者が空席になっているのではなく、「今の部長には難しいので彼にはこういう仕事を任せることにして、新たに別の人を採用したい」といった話が少なくないのです。

 あるいは中小規模で人事の仕事は総務部門でやっていた会社が「これでは追いつかない。人事業務をきちんと切り出して戦略的にやらなければいけない」と考え、人事部として格上げしようとしているところもあります。

マーケティング戦略を描ける
人材は社内にいるか?
 マーケティングの世界も昔のようにテレビ番組の冠スポンサーになったりコマーシャルを打ったりすれば仕事は終わり、広告代理店に丸投げすればなんとかなるという時代ではありません。マーケティングの責任者を社長が強く欲しがるようになっているのは売り方の多様化、とくにネット対応という要素が大きくなっています。

 とくにこれまで、BtoBであれBtoCであれ商品・サービスを気合と根性で売っていたゴリゴリの営業スタイルの会社は、ネットでも売ろうと入り込んだ瞬間、自分たちのスタイルとはまったく異なる世界が広がっていることに気付きます。

 リアルとネットを比較すれば伸びしろはネットに分がありますし、リアルを強化するにもネットの活用は重要です。ところがゴリゴリ営業会社の社内に「営業」人材はいても、きちんと戦略を描いて有効なツールを選択し、ブランディングを行いながら数字を上げていく「マーケティング」人材はいません。

 もちろん社内人材だけで頑張ってもある一定レベルのところまでは到達できるかもしれませんが、やはりそれ以上はマーケティングのプロフェッショナルが必要になります。

 また、ネットでも一人当たりの集客コストが上昇し効率が悪化する一方、マーケティングの対象となるメディアが雨後のたけのこのように登場しています。それぞれのメディアでどんな展開を行ってどう統合的にブランディングしていくのか。それをネットにあまり土地勘のない人が手探りでやっていくのは難しいといっていいでしょう。

新しいツールを使いこなすだけでは
責任者の仕事は務まらない
 本質的な目的や使命は変わらないものの、ネットやテクノロジーの影響で仕事の内容が大きく変化しており、しかもそれらの特性や特徴を理解し、使いこなせる人材はまだまだ少ない状況です。強く人事責任者やマーケティング責任者が求められるようになった背景には、そんな事情があります。


本連載の著者・丸山貴宏さんの『そのひと言で面接官に嫌われます』が好評発売中!
青春出版社、192ページ、926円(税別)
 しかも責任者ですから単に新しいツールを導入し、それまで積み上げてきた有形無形の資産をガラガラポンするのではなく、活かせる資産は尊重して新たな状況に合わせてチューニングしていく能力も必要です。いまいる人を使わなければいけませんし、たとえば現在の人事制度が社長の肝いりでつくられていて変更には慎重さが必要だったり、各社固有の事情があったりすることもあります。そうした状況でいきなり「改革」を叫んで現状否定するだけでは、周囲の協力を得られないでしょう。

 要するに大人で、器用な人でなければ務まりません。

 こうやって社長から求められている新たな人事責任者やマーケティング責任者の要件を考えていくとなかなか大変ですが、チャレンジすることが多くなり、仕事の面白さややりがいという点では昔よりはるかに高まっていると思います。

 私は各社の人事責任者に会うと「これから楽しくなっていいですね」とよく言っているのですが、本当にこれからの状況を楽しめるかどうかが一番重要な資質かもしれません。

(株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役 丸山貴宏)
https://diamond.jp/articles/-/184992

2. 2018年11月12日 13:19:53 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[129] 報告
OPECと非加盟国、2019年の減産に向けた下準備に入る−弱気相場で
Grant Smith、Elena Mazneva、Anthony DiPaola、Mohammed Aly Sergie
2018年11月12日 7:48 JST
サウジは12月の原油輸出を11月に比べて日量50万バレル減らす
産油国は「新たな戦略」が必要になるかもしれないと声明で言及
1年近くにわたって原油増産を進めてきた石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国は2019年の減産に向けた下準備に入った。サウジアラビアは調整役を担うスイングプロデューサーとしての役割をあらためて強調し、来月からの減産を発表した。

  サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は11日にアブダビで記者団に対し「われわれは責任ある産油国として妥当な範囲内に市場を均衡させるため懸命に取り組む方針だ」と発言。季節的要因もあってサウジ産原油の需要が「徐々に縮小しつつある」ため、輸出を減らす方針だと説明した。


サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相撮影:Stefan Wermuth / Bloomberg
  サウジは12月の原油輸出を11月に比べて日量50万バレル減らし、OPEC加盟国の財政やエネルギー企業の財務を圧迫している原油安に同国が先陣を切って対応する。11日に開かれた産油国会合では供給方針に変更はなかったが、OPECと非加盟国は「新たな戦略」が必要になるかもしれないと声明で言及し、来年のより広範な協調減産の見通しを強めた。

  原油市場は1カ月余り前から弱気相場に入り、産油国に対し12月の会合より前の行動を求める圧力が高まっている。米国で過剰供給の兆しが出てきているが、ファリハ氏はOPECおよび非加盟国で協調減産を話し合うには時期尚早だと語り、ロシアやアラブ首長国連邦(UAE)もこれに同調した。

  こうした産油国の慎重な姿勢の背景にはイランの原油供給が予測しにくいことがある。米国は当初、全てのイラン産原油禁輸を目指す方針を掲げていたが、今月の制裁再発動では8カ国・地域を適用除外とした。この措置は、より厳格な施行を予想していた市場を混乱させた。

  コンサルティング会社エナジー・アスペクツ(ロンドン)のチーフ石油アナリスト、アムリタ・セン氏は「対イラン制裁を巡る適用除外は予想より大きかったため、サウジはイラン産原油の減少分を補うために実施した生産を減らすことで責任を果たそうとしている」と分析した。


原題:OPEC, Allies Move Closer to Oil Cuts as Bear Market Adds Urgency(抜粋)

 
トランプ大統領の会議欠席はアジア軽視でない−ペンス副大統領
Toluse Olorunnipa
2018年11月12日 12:08 JST
ペンス副大統領がアラスカで記者団に語った
副大統領は12日に東京に到着、その後シンガポールなど訪問
トランプ米大統領が今週、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を欠席するのはアジア軽視ではないと、大統領に代わり出席するペンス副大統領がアジアへ向かう途上で述べた。

  副大統領は12日に東京に到着する予定。その後、シンガポールとパプアニューギニアを歴訪する。アジア諸国はトランプ政権の同地域に対するコミットメントや一貫性への疑念を深めており、米政策について同盟国に説明し、安心させるのが副大統領の今回の仕事となる。


トランプ大統領とペンス副大統領写真家:Al Drago / Bloomberg
  ペンス副大統領は11日夜アラスカで記者団に、インド太平洋地域に対する米国のコミットメントは「かつてないほど強い」と強調。首脳会議を欠席するトランプ氏の決定はアジア軽視では「全くない」と訴えた。大統領は米国民が望んでいるため、パリで第1次世界大戦終結記念式典に出席することにしたと付け加えた。

  ASEANとAPECの首脳会議を米大統領が欠席するのは2013年にオバマ大統領(当時)が政府機関閉鎖への対応のため出席を中止して以来。環太平洋連携協定(TPP)への参加を見送ったほか、同盟国に関税を課し中国との外交・経済的対立を深めるトランプ大統領の下で、アジアと米国の溝は深まっている。

  アジア諸国の疑念を払拭(ふっしょく)するためには、ペンス副大統領が何らかの強い発表を行う必要があるだろうと、オルブライト・ストーンブリッジ・グループ(ワシントン)の東アジア・太平洋担当ディレクターのアンソニー・ネルソン氏は話す。

  「トランプ氏が出席を約束しなかったことへの失望があった。ペンス氏は適切な発言を試みることはできるが、具体的に提案できることはなく、政権の考えについて誰もが知っていることが影を落とさないと考えるのは難しい」と同氏は述べた。

原題:Trump’s Absence at Asia Summits Is Not a Snub, Pence Says(抜粋)


 

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