http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/399.html
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(回答先: 利息の起源:シャイロックはなぜ嫌われるのか イスラエル、もう1つの監視ビジネス先進国 ここまで来た監視社会「裏アカ」もあ 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 12 日 12:36:31)
イラン制裁発動でも弱気相場入りした原油市場
価格下落を防ぐ手だてはあるのか?
2018.11.9(金) 藤 和彦
NY証券取引所、全株式取引が一時停止 システム障害で3時間以上
米ニューヨークのニューヨーク証券取引所。株式市場に少しずつ動揺が生じ始めている(資料写真)。(c)AFP/Getty Images/Spencer Platt〔AFPBB News〕
11月5日、米国がイラン産原油を対象にした制裁を発動したが、「当面の間、原油は安定的に供給される」との見方から米WTI原油先物価格に大きな値動きはなく、その後、米国の原油在庫増で8カ月ぶりの安値となった(1バレル=61ドル台)。
WTI原油価格は今年(2018年)5月に米国がイランへの制裁を表明したことを契機に上昇し始め、10月には1バレル=76ドル90セントの高値を付けたが、その後イランを除く主要産油国の原油生産量が増加したことなどから今年4月の水準にまで値下がりした。5日の取引では当初WTI原油価格は上昇したが、午後になってトランプ大統領が「個人消費の鈍化につながる原油高を回避するため、イラン制裁は緩やかに進めたい」と述べたことや「米国政府が中国、インド、韓国、台湾、日本、トルコ、ギリシャ、イタリアに対してイラン産原油の一時的な輸入継続を認めた」ことが伝わり、「原油需給が引き締まる」との見方が後退した。イランの原油出荷状況などから本格的な減産は来年以降になる見込みである。
イラン産原油輸入については各国の削減努力を勘案し半年後に判断されるが、前回の制裁時の基準が曖昧であったことを思い起こせば、「今回も輸入ゼロを達成していなくても減少していれば制裁の適用免除が延長される」との見方がある。
主要産油国はいずれも増産
他の主要産油国を見ると、増産にますます歯止めがかからなくなっているようだ。
ロイターによれば、10月のOPEC諸国の原油生産量は前月比39万バレル増の日量3331万バレルとなり、2016年以来の高水準となった(減産遵守率は122%から107%に下落)。イランの原油生産量が日量10万バレル、ベネズエラが同7万バレル減少したが、サウジアラビアが同12万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)が同20万バレル増加している。UAEは11月6日「原油生産量を2020年までに100万バレル増産する」ことを発表した。
ロシアの10月の原油生産量は日量1141万バレルとなり、ソ連崩壊後の最高記録を更新した。
米国でも8月の原油生産量が前年比210万バレル増の日量1135万バレルと過去最高水準となったことが明らかになった(直近の生産量は1160万バレル)。年間の増加幅は1920年以来の大きさである。輸送パイプライン不足などの問題はあるものの、この驚異的な伸びが今後も続けば、米国の増分だけでイランの減産の穴埋めは可能である。
サウジアラビア、ロシア、米国の3カ国で世界の原油供給の3分の1超を賄うようになっているが、リビア、ナイジェリア、イラクも増産態勢に入っている(10月24日付OILPRICE)。世界の原油供給量は気がついてみれば今年3月から日量300万バレル以上増加したのである(10月29日付OILPRICE)。米エネルギー省の予測(世界の原油需給は既に供給過剰となり、需給ギャップが来年半ばまで続く)が示すとおり、米国のイラン制裁発動にもかかわらず原油市場は弱気相場入りしたと筆者は考えている。
「世界の工場」ではなくなる中国
それでは次に原油市場を動かす材料は何だろうか。
市場関係者の関心は、世界の原油需要に向けられつつある。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は10月30日、「原油高が消費者の負担となり需要を抑えるとともに、世界の景気減速も需要減につながる要因となっている」と発言した。
ビロル氏が言及したのはインドやインドネシアの原油需要の減退だったが、世界最大の原油輸入国である中国は、米国との貿易摩擦の激化で経済が悪化の度合いを強めている。
貿易摩擦の激化で株式市場が低迷し人民元の軟調が続いており、その悪影響はついに不動産市場にまで及んでいる。
中国メディアによれば、北京や上海、杭州などの主要都市で、在庫増加と資金難に頭を抱える不動産業者が販売促進のために大幅値下げに踏み切った。その値下げに抗議して各地で住宅所有者によるデモが相次いでいるという。
経済専門家は「中国は住宅が売れ残る時代に入った。巨額な債務を抱える不動産大手デベロッパーは景気鈍化で資金調達がさらに厳しくなり、倒産の危機に陥っている」と指摘した上で、「今後住宅価格の下落に抗議する市民が各地で増加し、社会不安が一段と広がる」と警告している。
10月29日付ロイターは、貿易摩擦の長期化が原因で中国南部に進出している米国企業のうち、約7割の企業が「中国での投資を遅らせ、生産ラインの一部または全部を他国に移転する」ことを検討していると伝えている。この動きは米国企業にとどまるものではない。中国が「世界の工場」である時代は終わりを迎えつつある。中国の爆食経済を牽引してきた不動産と製造分野が不調となれば、中国の原油需要が今後低迷しないはずはないだろう。
米国の株式市場に動揺の兆し
筆者は今後の原油価格を占う材料として「米中貿易摩擦」が主役に躍り出たと見ている。それに関連して注目するイベントは、11月30日からアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されるG20サミットである。米中首脳の間で貿易摩擦に関する合意がなされる可能性は現段階では低いとされているが、物別れに終われば原油市場をはじめ世界の金融市場に悪影響を及ぼすことだろう。
今のところ米国経済は貿易摩擦にもかかわらず堅調ぶりを維持しているが、株式市場では少しずつ動揺が生じるようになっている。
「米国市場の堅調さを支えているのはジャンク債市場の活況である」と本コラムでこれまで述べてきたが、そのジャンク債市場がエネルギー部門を中心に値崩れが始まっている(10月30日付ZeroHedge)。その原因は原油価格の下落である。ジャンク債発行量の15%を占めるシェール企業の今後を、投資家が不安視し始めているからだ。原油価格のさらなる下落によりシェール企業の倒産が増えればジャンク債市場全体が不調となり、株価が下落する。
2016年以降株価と連動を強めている原油価格は、株価の下落によりさらに値段を下げるという「負のスパイラル」に入る可能性がある。
米国経済の好調さの象徴である株式市場が変調をきたせば、米国の旺盛な原油需要もあてにできなくなる。11月に入り、「2019年の世界経済は一斉に減速するリスクがある」(11月5日付ブルームバーグ)、「世界の原油需要のピークが5年以内に訪れる」(11月5日付OILPRICE)など原油価格に悪影響を及ぼす予測も相次いでいる。
減産の決断ができないサウジアラビア
原油市場ではファンドの原油買い玉が約3年ぶりの低水準となり、「原油価格が1バレル=55ドルまで下落する可能性がある」と言われ始めている(11月5日付ブルームバーグ)。事態の急変を驚いた主要産油国の間に、再び減産の必要性が意識され始めている。
主要産油国で構成される共同閣僚監視委員会は10月25日、「原油在庫が増加する状況にかんがみ、再び減産が必要となる可能性がある」との声明を発表した。数日前までの「極力大量に生産する」姿勢から大転換である。
2017年の時はサウジアラビアがリーダーシップを発揮した。再びリーダーシップを求めることは、もう無理な注文なのだろうか。
カショギ氏殺害事件の大逆風の中、10月23日から開催された「未来投資イニシアティブ(砂漠のダボス会議)」の場で「560億ドルの新規投資契約が締結された」とサウジアラビア政府は成功を強調した。だが、その中身はほとんど石油関連である。サウジアラムコのIPO中止も合わせて考えると、サウジアラビア経済は石油依存に戻ってしまったといってよい。来年の予算は国内安定のために過去最大規模になる見込みであり、原油からの収入は「喉から手が出る」ほど欲しい状況である。
脱石油経済化を進めていた2017年前後は思い切った減産に踏み切ることができたが、石油依存に回帰したサウジアラビアが再び同様の決断ができない。サウジアラビアが決断できなければ、ロシアが同調することはないし、米国はそもそも協調減産できる状況にない。
OPEC総会は12月3日に開催されるが、来年の生産制限に関する新たな協定が締結できなければ、原油価格の下落に拍車がかかる可能性がある。
相変わらず独断専行のムハンマド皇太子
最後にサウジアラビア情勢についてである。
カショギ氏殺害事件以来、サウジアラビアに対する西側の視線が厳しくなっているが、10月30日、米国の国防、国務両長官がそろって「イエメンの停戦と30日以内の和平協議の開催を呼びかける」声明を発表した。サウジアラビアのイエメン内戦への軍事介入は3年半を超え、「世界最悪の人道危機の発生に米国も荷担している」との国内外からの批判が高まる中での米国政府の転換変更である。
だが停戦の呼びかけと裏腹に、サウジアラビアとUAEが主導するアラブ連合軍は、今年6月に失敗したイエメン西部のホデイダ港奪還作戦を再び開始した(11月2日付アルジャジーラ)。人道危機は深まるばかりである。
カショギ氏事件とは異なり、イエメン内戦への軍事介入はムハンマド皇太子の責任であることは明白である。イスラム教シーア派反政府武装組織フーシ派の拠点であるホデイダ港を奪還しないままではサウジアラビアが利する停戦合意はおぼつかない。「多額の軍事予算をドブに捨てた」としてムハンマド皇太子への批判が高まるのは必至であり、サウジ王室内の動揺が激しくなっている(11月3日付日本経済新聞)。
今年9月、ロンドンで「イエメン内戦への軍事介入はサルマン国王とムハンマド皇太子に責任がある」と述べたアハマド王子が、10月末にサウジアラビアに帰国した。アハマド王子(77歳)はサルマン国王の実弟であり、国内での人気が高い人物である。国王や皇太子の継承問題を協議する「忠誠委員会」が昨年6月にムハンマド皇太子の副皇太子からの昇格を決定した際、反対したメンバーの1人だった。王族内の調和を取り戻す動きの一環だろうが、肝心のムハンマド皇太子はイラン制裁が発動された11月5日、サウジ初の研究用原子炉を建設するプロジェクトを始動させる(11月6日付AFP)など、国際社会の懸念を全く考慮しない独断専行を続けている。
中東地域では1984年当時のサダム・フセイン大統領が、2004年にはアサド大統領が「改革者」として西側の賞賛を浴びていた。現在のサウジアラビアの「改革者」も先駆者と同じ運命をたどってしまうのだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54608
本当に「燃料制約」は起きていたのか
From 日経エネルギーNext
監視委員会が電力市場高騰の要因にメス
2018年11月12日(月)
中西 清隆=日経エネルギーNext
電力・ガス取引監視等委員会は、大手電力に対して、「燃料制約」の運用の合理化を求めていく。10月23日の有識者会議(第34回制度設計専門会合)で、監視の視点としてその概要を明らかにした。
全面自由化以降、卸電力市場は需給がひっ迫する夏場と冬場、決まって荒れた。とりわけ、昨冬と今夏は異常な高値が頻出した。
昨冬の電力市場価格は、11月半ばから西日本エリアで高騰する時間帯が頻繁に出現。西日本エリアの2017年12月の平均価格は13円/kWhと前年同期より4.1円/kWh高く、同じ時期の東日本エリア(北海道を除く)より2.7円/kWh高かった。
そうかと思えば、年が明けた2018年1月後半からは東日本で西日本を上回る高値が目立つようになる。2月9日には東京エリアプライスは57.98円/kWhという史上2番目(当時)の高値をつけた(「電力市場が史上2番目の高値、意外な2つの理由」参照)。
そして決定的だったのが今夏、7月25日に西日本エリアでつけた史上最高値「100円」に代表される猛烈な高騰ぶりだ(「電力市場価格が史上最高値100円」参照)。
いずれも、記録的な寒波や猛暑、原油価格の上昇だけでは説明しきれない値動きだった。市場からの電力調達に頼る多くの新電力が大きなダメージを被った。
監視委員会幹部は、日経エネルギーNextの取材に対し、「昨冬や今夏、需要のピーク時間帯で発生した高騰に最も効いていたのが大手電力による燃料制約だった」と明かした。そして今回、燃料制約に対する監視の視点が整理されたことで、「今後の高騰抑止に一定の効果があるはず」との見通しも明らかにした。
燃料制約とは、大手電力が余剰供給力を市場に投入する「自主的取組」の実施に当たって、市場投入量を減らす要因となる「入札制約」の1つ。簡単に言えば、先々の燃料不足を懸念して、自社需要分の電力だけを発電し、市場投入用の発電はしないことをいう。
大手電力から新電力へ需要(顧客)が離脱し、自社需要は減ったとしても各エリアの電力需要の総量は大きく変わってはいない。それにもかかわらず、燃料不足を理由に発電量を減らせば、当然需給はタイトになる。
見えなかった監視の切り口
監視委員会は2018年1月30日の有識者会合(第26回制度設計専門会合)の場で、昨冬の西日本における市場価格高騰の背景として、「石油やLNGの燃料不足によりスポット市場での売り入札量の減少が発生した」と報告した。
このとき配布した「燃料制約の状況」と題したペーパーには、寒さなどから電力需要が計画より増える中、「燃料の追加調達については数カ月から半年程度のリードタイムが必要」「天候不良により入船が計画通りにできなかった」など、大手電力から聞き取った、各社が燃料制約を実施した理由が書き並べられていた。監視委員会が示した今後の対応は「燃料制約の在り方について整理・検証を行う」と記すにとどまった。
監視委員会は、燃料制約の問題に事実上初めて対峙することになった昨冬の段階では、有効な監視や規制ができなかったのだ。
今回、概要を公表した監視の視点は、これまでの燃料制約に対する研究の成果と言える。それは、大きく3点からなる。(1)卸電力市場への想定供出量の考え方、(2)燃料不足の判断方法、(3)売り入札の抑制方法――である。
(1)は簡単に言えば、自社需要分だけを考えた燃料調達ではなく、自主的取組で求められている余剰電力も可能な限り多く市場で売って、発電部門が最大限儲かる燃料調達を計画するよう求めるものだ。
今回、監視委員会は各社の燃料制約を検証するに当たっての“前提”を明文化した。そこには、「(大手電力が)保有する電源の大部分は総括原価の下で形成されたものであり最大限有効活用することが望ましい」と明記された。大手電力各社に対し、この前提に沿って発電事業の収益最大化を合理的に追求しているかどうかをチェックする。
例えば、監視委員会が例として挙げたのが、先渡市場を使った約定可能性の判断だ。ある発電ユニットの限界費用がスポット市場の想定価格を上回っていたとしても(スポットで売れる見込みが小さくても)、先渡市場で約定する可能性はある。
そこで、単純に「スポット市場では売れそうにない(から燃料を調達しない)」と判断するのではなく、追加燃料の調達が間に合う時期に、実際に先渡市場に売り入札を入れることなどを求める。「そこで約定しなかったとき、はじめてその発電ユニットの燃料調達は行わなわなくていいと客観的に判断できる」(監視委員会取引監視課)。つまり、“恣意的な燃料調達減らし”を抑止し、常に電源の最大活用を目指した燃料調達を求める。
「仮に卸電力市場への想定供出量(燃料調達量)の考え方が合理的でなければ、事業者は自主的取組への姿勢が問われる。市場支配力の不当な行使が認められるケースがあれば当然、行政処分の対象になり得る」(監視委員会幹部)。
2番目の監視のポイントである「燃料不足の判断」は、電力の需要増や入船遅延など想定と異なる事態が起きたとき、それが供給力にどのようなリスクをもたらすのかを合理的に評価することを求めるものだ。要は、勘や前例踏襲による判断は受け入れない。本当に燃料制約が必要な事態なのかを論理的に説明できなければならない。
ピーク時間帯には可能な限りの市場投入を
電力価格への影響という点では、3つめポイントとして挙げた「売り入札の抑制方法」が大きいと見られる。
というのも、ある監視委員会幹部は「需要ピーク時、特に猛暑日や厳寒日の夕刻に、複数の旧一般電気事業者の燃料制約(燃料消費の抑制)に起因した売り入札量の減少が頻繁に見られた」と、昨冬と今夏の実態を明かす。
つまり、高値がつきやすい時間帯に大手電力の燃料制約が重なり、高騰の直接の原因になったケースが少なくなかったというのだ。
市場価格は日々変わるが、夏場であれば冷房需要が伸びる13〜17時ころ、冬場であれば暖房需要が高まる6〜10時、16〜20時ころに需要はピークになり、価格が上昇しやすい時間帯であることは、電気事業者なら誰でも知っている。
燃料制約が必要であっても、燃料消費の抑制はピーク時間帯を避けられないものなのか。経済合理性を考えれば、市場価格が高いときに市場に供出(発電)し、安いときに燃料制約(発電の抑制)をする方が大手電力にとって儲けは大きくなるはずだ。だが、これまでは必ずしもそうしてこなかった。
これまで、燃料制約に伴う発電の抑制やタイミングなどの具体的な手法は大手電力各社に委ねられてきた。だが、必要性の判断や実施する時間帯の選択など、事業者によっては必ずしも合理的に決めたものではなかったと監視委員会は見ている。
そこで、監視委員会は改めて、燃料制約が必要な場合は、夜間など需給が穏やかで市場価格が比較的安定している時間帯で発電を抑制し、ピーク時間帯では可能な限り余剰電力を市場に供出する(発電する)ことを求めていく。「今後は明確な理由もなく、ピーク時間帯に燃料制約を実施すれば、相場操縦と見なすこともあり得る」という。
今冬、これまで一部の大手電力が実施していたという、ピーク時間帯における燃料制約がなくなれば、昨冬や今夏のような異様な高騰は減る可能性がある。その点、今回の監視委員会の取り組みは評価できる。
一方で、「もう少し早く手を打てないものか。この調子では、市場が正常化する前に新規参入者は息絶えてしまう」(新電力幹部)といった声も漏れてくる。
燃料制約に起因した高騰が最初に起きたのは昨冬のこと。だが、今夏も同様の高騰が起きてしまった。電力市場の正常化は自由化の成否を分かつ大きなテーマである。そこでは監視委員会の存在が大きな鍵を握っている。
監視委員会にはさらなるスピードアップも求めたい。
[日経エネルギーNext 2018年11月5日付の記事を転載]
このコラムについて
From 日経エネルギーNext
電力・ガスの全面自由化を迎え、日本のエネルギー市場は新たな局面を迎えた。王者・東京電力は原子力発電所事故の賠償や廃炉の責任を背負い、大規模な合従連衡が進もうとしている。数多くの新規参入企業が虎視眈々と商機を狙い、まさに戦国時代の様相だ。電気やガスの料金は本当に下がるのか、魅力的なサービスは登場するのか――。エネルギービジネスの専門誌「日経エネルギーNext」が最新ニュースを解説する。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700115/110600157
AI時代は「のび太」が理想的リーダー像に
和田秀樹 サバイバルのための思考法
人工知能やロボットにわがままなリクエスト
2018年11月12日(月)
和田 秀樹
自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が月刊誌への寄稿で、同性カップルを念頭に「『生産性』がない」などと主張したことで物議を醸しだしている。
子どもができないことが果たして生産性がないと言えるのかについては、LGBT(性的少数者)の人たちや子どもを産まない人の生みだしている国内総生産(GDP)を考えれば、結論は明らかと言えるように思うが、私は実は、この生産性神話について、長年、強い違和感を覚えている。
AIとロボットが社会を支える(写真:shutterstock)
生産と消費が逆転しているというパラダイムシフトに対応していないように思えてならないからだ。
今回は、サバイバルのための思考法として、生産と消費の逆転、そのほかのパラダイムシフトにどう対応するかを考えてみたい。
生産と消費の逆転というパラダイムシフト
私が21世紀というものを考える際に、最大のパラダイムシフトと考えているものは、生産と消費の逆転である。
10年ほど前だったと思うが、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長(当時)と対談する機会があった。
その時に何を話したかあまり覚えていないが、覚えているのは、「1990年ごろ、先進国では生産と消費が人類の歴史上初めて逆転したと言える時代がきた。これまでのように生産性を高めるビジネスモデルは限界に来ていて、いかに消費を開発するかがビジネスのキーになる」というような意味のことを話されたことだ。
このパラダイムシフトに基づいた思考パターンを取り入れたことが、その後も続いたセブンイレブンの成功の秘訣と言えるのだろうが、私は、生産と消費が逆転したということはもっと重要な意味をもつように思うようになった。
日本以外でも主要国では2070年までに中国、ブラジル、ロシア、ドイツ、イタリアなどが人口減に転じる。人口が減れば、よほど1人あたりの所得が増えない限り、消費は減っていくことになる。ところが生産性は、手作りでないと嫌というような大規模なムーブメントがない限り、どんどん伸びていくだろう。要するに需給ギャップはどんどん大きくなっていく。
人口減が進む国では、需要減に伴う生産過剰が危惧される。生産物が余っているのだから、外国にモノを買ってもらいたくなる。モノを買ってくれる国の力が強くなるのは、中国とドイツの関係をみているとわかる。逆に外国からの輸入はできればお断りだ。トランプのような人物が出てくるのはアクシデントでなく、これから保護主義の国がもっと増える可能性は小さくない。
個別物品で、生産過剰ということは珍しいことではない。せっかく作った農産品を価格維持のために捨てたりする、豊作貧乏などと呼ばれることが起こる。あるいは、コメが余ってから行われている減反政策では、コメを作らないと補助金が与えられるということが続けられた。
同じように農作物だけでなく、工業製品についても生産過剰が危惧される。
それなのに、生産性を上げろと言うのは、パラダイムシフトに対応できていないとしか思えない。生産性を上げれば輸出の競争力が上がるという考え方もあり得るが、トランプのような保護主義が世界中で起こるようになれば、その目算も狂うし、買ってくれる途上国が自らで作れるようになり、自国内でも生産過剰になれば、やはり買い手が減ってくる。
そう考えると、我々は大胆な発想の転換が必要となるだろう。
経営者には、生産性を上げるより、従業員が会社の一歩外に出れば消費者になるのだから、給料を上げるべきという発想が必要となるかもしれない。高齢者が増えることを心配する人が多いが、生産しないで消費だけしてくれる高齢者がありがたい存在ということになる。同様に生活保護バッシングもナンセンスで、むしろ歓迎すべき存在と言う話にだってなり得る。
AIとロボットの時代に残る人の役割
働かない時代という意味では、人工知能(AI)やロボットの技術進歩も見逃せない。
自動運転が実用化されれば、トラックやタクシードライバーが大量に失業するとされる。着いた先で荷物を運ぶのだって、ロボットの方が力があるだろう。配送ミスだってむしろ少なくなるはずだ。
私は毎月、福島で原発の廃炉作業をしている職員のメンタルケアのボランティアに今でも通っているが、慢性の人手不足に悩む廃炉作業でもほとんどがロボットで代替可能になるだろう。それどころか現在肉体労働とされているものは、ほぼロボットで代替可能で、せいぜい現場の監督が必要なだけになるようだ。
医者や弁護士のような知的職業だって危ういとされている。AIであれば、どんな優秀な弁護士より判例や法律を覚えることができるし、毎年作られる法律をどんどん更新できる。今の医者のように検査データや画像データで診断するのであれば、おそらくAIに太刀打ちできないだろうし、たとえば放射線画像からがんを見落とすことだってはるかに減るはずだ。
接客業や介護などロボットがやるより人間にやってもらった方がうれしい仕事が生き残るとされているが、人間の肌を人工で作れるようになって、人間のモデル以上の美女ロボットが、人間よりはるかに優しい対応をしてくれるプログラムでもてなしてくれれば、こっちの方がいいという人も珍しくなくなるかもしれない。
漫画「ドラえもん」では、劣等生ののび太がロボットのドラえもんにいつも泣き付いているが、このパラダイムシフトの中では、のび太のようなわがままなリクエストが出せる人の方が、その命令を忠実に実現する優秀な人より価値がでるかもしれない。
現にスティーブ・ジョブズは技術者でないのに、あれこれと作ってほしいものを発案し、大成功者になっている。こういうタイプの経営者が、これまで優秀とされてきた人材にとって代わってスタンダードになってくる可能性は大だ。
女性の時代といわれて久しいが、この新パラダイムでは、別の形の女性活躍の時代がくると私は考えている。
これまで活躍している女性は、男勝りというか、男性以上に生産性の高い人が多かったように思う。
私が考える新しい女性リーダーというのは、男性ではできない発想をする女性だ。有史以来、男が稼いでくる、生産する、女性は主に消費して家庭を守るというのが基本的なスタンダードだった。
生産不足の時代であれば、生産性の高い男性ほど(女性も)評価が高かった。しかし、消費不足であり、生産したいものがAIやロボットでほぼ作れる時代であれば、のび太型の、なるべく怠けたい、消費大好きの女性がリーダーとなって、わがままをいうような会社の方が支持を集めたり、売れるもの、売れるサービスを作れるかもしれない。
パラダイムシフトの時代には、外国人労働者を受け入れるかどうか以上に人余りをどう解決するかとか、これからの時代に必要とされる人材とはどういうものかを考え直す必要があることは確かなようだ。
内科医はAI、外科医はロボが代替
生産過剰や、AI、ロボットの実用性の大幅な向上以外にも、この10年、20年であちこちで大胆なパラダイムシフトが起こると私は読んでいる。
たとえば医学の世界だ。
iPS細胞が当たり前に使える時代がくると、医学が180度と言っていいくらい変わると私は考えている。
生活習慣病といわれる高血圧や糖尿病、高脂血症の治療をなぜ行うかと言うと、将来の脳梗塞や心筋梗塞などの予防のためだ。これは原則的に動脈硬化がひどくなって起こると考えられるので、その促進要因である高血圧や高血糖、高脂血症を治療することで動脈硬化になりにくくするという考え方である。
そのために集団検診を行い、これを早めに発見しようとするし、異常値が見つかれば、投薬や生活指導を受ける。
しかし、ある程度動脈硬化が進んだら、iPSで治療ができるという話になれば、この手の健康診断も、その後の投薬や生活指導も大部分はいらなくなる。
これまでは内科的治療の発達で多くの外科医が必要がなくなった。結核を抗生物質で治療できるようになると手術で結核の患部を取り去る必要がなくなった。胃潰瘍の薬が発明されると、まず手術的治療が行われなくなった。がんの特効薬ができれば外科医の大半が失業するという話はかなり前から出ている。
ところがAIが検査データを読み、動脈硬化が生じたらiPS移植ということになれば、逆に内科医が失業して外科の時代になるかもしれないし、それも手術ロボットの普及で失業の憂き目にあうかもしれない。
中国の買収攻勢に日本は無防備
これはすでに始まっていることだが、冷戦が終わり、中国が準資本主義化した現在、軍事力による国防より、外国資本による侵略やIT化によって、情報を握られたり、攪乱させられたりすることの防衛の方が重要だという声をよく耳にする。
8月に米国では、外国投資リスク審査近代化法という法律が成立している。中国などに技術が流出しないように、重要な技術を持つ会社に、外国が投資してきたり、買収をしようとした際にそのリスクを審査して止めることができる法律だ。
日本の場合、小さな島が侵略されないかということには非常にナーバスなのに、日本のたとえば皇居の周りのような大事な土地を中国企業に買収されたり、日本のハイテク企業を中国が買収しようとしてきたときなどには、あまりに無防備だ。戦争で領土を万が一取られるようなことがあっても、金を払えば、その土地の開発も可能だろうし、そこに観光に行けるだろうが、外国人に土地を買われたら、日本国内であっても、そこに足を踏み入れたら不法侵入で日本の警官に逮捕されるというのに。
私が2022年問題と呼んでいることがある。それは2013年に中国の政府系のシンクタンクがまとめた報告書によると、中国が米国をGDPで抜かすということだ。
習近平が任期を伸ばしたことを正当化するためにも、多少中国経済が失速しても、人民元を切り上げしてでも、これは実現すると私は見ている。少なくとも人口が圧倒的に多いのだから、いつかは逆転する。
これだって、その後の世界の勢力地図に大きな影響を与えるだろう。購買力の大きい国やお金を持っている国に頭が上がらないのが現状なのだから。
今回、私が示したパラダイムシフトはあくまで例であって、あちこちで生じているはずだ。少なくとも、多くの分野でこれまでの常識が通じなくなっていることを意識しないとサバイバルできるとは思えない。
このコラムについて
和田秀樹 サバイバルのための思考法
国際化、高齢化が進み、ストレスフルな社会であなたはサバイバルできますか? 厳しい時代を生き抜くアイデアや仕事術、思考法などを幅広く伝授します。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/110600040/
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