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(回答先: 和製アマゾン・ゴーが人気、開発のサインポスト−株価うなぎ上り「AIで人間の仕事がなくなる」経済学的解明 テレワーク進まず 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 08 日 19:06:06)
超急成長都市「深圳」で体験した「中国の現在」
2018.11.8(木) 新潮社フォーサイト
超急成長・超変貌を遂げつつある深圳を現地リポート
「紅いシリコンバレー」と呼ばれ、日本でも関心が高まっている中国・深圳(筆者撮影、以下同)
(文:鈴木崇弘)
最近、「タイガーモブ」(https://www.tigermov.com/)の企画に参加して、中国広東省・深圳(シンセン)市で学ぶ機会を得た(注1、本文末尾に記載)。同社はアジア新興国を中心に、25カ国・地域、約180件の海外インターンシップ求人情報を紹介。またその経験者の海外インターンシップコミュニティを形成し、既存の学校や組織にはない機会・環境を提供するユニークな組織である。
今回、学生・経営者・官僚・会計士・会社員などがメンバーに加わったグループに参加し、深圳で非常に面白く、興味深いことを経験できた。それらに基づいて、日本社会の今後について考えていきたい。
「深圳での1週間はシリコンバレーでの1カ月に匹敵する」
近年日本でも深圳への関心が高まり、多くの視察団などが訪れるようになっているが、まだまだ知られてはいない。まずはどんな街なのかというところから説明していこう。深圳は次のように呼ばれている。
「紅いシリコンバレー」「中国のシリコンバレー」「中国のシリコンデルタ」「ハードウェアのシリコンバレー」「製造業のハリウッド」「メイカーズのハリウッド」「ハードウェアもあり、シリコンバレーを超えた場」「クラウド深圳」「深圳での1週間はシリコンバレーでの1カ月に匹敵する」「世界最速で急成長した都市」「未来都市」etc・・・。
さらに最近の深圳を表現して、次のような言葉も挙げられる。
「中国初の特別経済区」「イノベーションの首都」「スタートアップ企業の発祥地」「製造業者のグローバル都市」「ワールドクラスの企業群」「『一帯一路』のイニシアチブにおける戦略的な軸」「広東-香港-マカオ・グレーターベイエリアのハブ」「環境に優しい街」・・・。
これらの言葉だけからも、この街に一度は行ってみたいという衝動に駆られるのではないだろうか。
2000万人のうち20〜30代が65%
では、なぜ深圳は注目を集めるようになったか。次の2つの点から簡単に説明しておこう(注2)。
(1)超急成長・超変貌都市
深圳は中国大陸側にある香港に隣接した都市であり、超急成長・超変貌を遂げつつある。
深圳で40年間に使用されたコンクリート量は、全人類がこれまでに使用した量に匹敵するというほど
この都市は1979年に輸出特区、そして1980年に経済特区に指定され、その後10年間で人口は約7万人から約130万人に増加した。そして約40年後の現在は、2000万人と急激に増大している。
しかも、人口構成の中心は「80後(バーリンホウ)」と呼ばれる80年代以降生まれの新しい価値観をもつ中国の新世代である。そのため、20〜30代が65%を占め、65歳以上はたったの2%のみである。日本では、団塊世代とその世代の子ども(団塊ジュニア)である60〜70代と40代が人口に占める割合が多く、20〜30代は総人口1億2670.6万人のうち2751.5万人と約21.7%に過ぎない。
さらに、この都市の「超変貌」を端的に示す事例がある。1970年からの40年間で、深圳において使用されたコンクリート量は、全人類がこれまでに使用したコンクリート量に匹敵するとも言われている。
(2)起業社会とエコシステム
深圳は世界一高い起業率(15%)を誇り、起業家向けシェアオフィスが市内に250カ所以上存在する。また「テンセント」(WeChat運営)や「DJI」(ドローン製造)など、世界的企業の本社も所在している。
そのうえ、電子マネーや顔認証決済、シェアエコノミーといったキャッシュレスや、無人バス、ドローン宅急便、EV(電気自動車)タクシーといった新しい社会インフラが実装化された、未来都市となってきているのである。
加えて製造のエコシステムが機能していることは、2011年にこの地で起業したICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)関連製品の開発販売会社「ジェネシスホールディングス」執行董事総経理である藤岡淳一氏の、下記のような発言からもわかる。「少量多品種の中小メーカーが集まる地域は、この操業エリアをドーナツ状に取り巻いている。(中略)少量多品種・低価格短納期の深圳製造業界は革新的なハードウェアの創出で成功を狙うには非常に有利な環境」にあり、「新旧の深圳が結びついた結果が、二重構造のエコシステムを備えた“ハードウェアのシリコンバレー”」であるという。
深圳市投資推進署リーフレットでは、「深圳から車で1時間以内で、さまざまな用途向けコンポーネントを購入でき、研究の構想から革新的な製品への実現が高速で行え」、「深圳は世界で最も先進的な市場である香港へのアクセスが容易で、通関も24時間可能」で、「製品の製造後、深圳と香港の港を経由して1時間以内に世界中の地域への輸送することができ」ると説明している。
現金では食事や品物の購入が不便
上記を踏まえて、筆者が現地深圳で体験したものや事例などについて、具体的に述べてみたい。
まず、筆者は今回の企画の参加のために、事前にアプリのダウンロードやWi-Fiの持参を要求された。いくつかのアプリは、中国語のみの記載であったり、クレジットカードとの紐付けが必要であったりと、これには結構手間取った。
現地での日常の買い物や地下鉄利用時には、筆者らはこれらのアプリを利用して対応することになった。現金やクレジットカードなどでも対応可能な場所はもちろんあったが、現金では食事や品物の購入が不便な場合も多々あった。かなり小さな中華料理屋のようなところでも、現金で支払いをしようとすると、小銭を必要とするお釣りの対応ができないところもあった。
私たち外国人の場合、中国の銀行口座を持っていないため、アプリ使用が不便であったり、オンラインへのアクセスがうまくいかず、キャッシュレス決済が容易でないこともあったりした。しかし、現地の人々は基本的にこれらのアプリを活用して、キャッシュレスで日常生活を送れるようになっている。スウェーデンなど海外の多くの国でもキャッシュレスが浸透してきているが、いまだ現金が中心に回っている日本とは大きな違いがある。
筆者はそのような日常を体験しながら、他の参加者とともに深圳の各所を駆け巡った。
スタートアップが集積する華強北地区
次に、訪問した地域や組織を見ていくことにする。
(1)華強北(ファーチャンベイ)地区
アミューズメントパークのような華強北地区
1990年代、工場地区だった華強北が変貌を遂げるきっかけとなったのは、深圳市政府の東京・秋葉原の視察にあるといわれる。この地区は現在、秋葉原の実に約30倍の規模に達しており、世界最大の電気街に発展している。電気関連の店舗およびスタートアップが集積したビル群が立ち並び、多種多様な部品から雑多な完成品まで、「モノづくり」に必要なものをすべて揃えられる場所になっている。
筆者も現地を歩き回ったが、電気関連の小店舗がひしめき合い、「こんなものがある」、「あんなものがある」という感じで、いつまでいても飽きない。また展示されている製品もデザインやアイデア、機能性に優れていて、いくつも買ってしまいそうな衝動に駆られた。好奇心が旺盛でモノ好きな者にはたまらない、アミューズメントパークのような場所である。
(2)高新園(ハイテクパーク)
テンセント本社と「跟党一起創業」と書かれたモニュメント
テンセントの本社を中心にして形成されているスタートアップ支援地域であり、またアリペイ(決済アプリ)を運営する「アント・フィナンシャル」の深圳オフィスなど関連企業が至近距離に存在している。
スタートアップを支える企業が入ったビルも多く、起業家同士が相互に触発され、競い合いながら活動している。テンセントの巨大本社ビルを見上げながら、「いつかは自分も成功したい」という野望に燃えながら頑張っているという雰囲気に満ち溢れている。
他方、テンセント本社の前には共産党のコミュニティーセンターがあり、そこには「跟党一起創業(共産党と共に起業する)」「FOLLOW OUR PARTY, START YOUR BUSINESS」と刻まれたモニュメントが配置され、才気煥発で横溢な経済活動と党との不思議なバランスが感じられる場でもあった。
(3)OMO型スーパー
「アリババ」が運営する「盒馬鮮生」(ファーマーションシェン)とテンセントが運営する陣営「超級物種」(チャオジーウージョン)のOMO型スーパー店舗を見学した。
好奇心が刺激されるOMO型スーパー
日本でもOMO(Online Merge Offline)という言葉が使われるようになってきているが、これはオフラインを活用する中でよりよい顧客体験や顧客接点を作り、新しい購買の方法を提供するものだ。つまり、テクノロジーの進展で生活の中におけるあらゆる行動がデジタルデータ化され、生活者の購買行動において、オンラインとオフラインの販売がデータによって結びついていくというものである。
日本でも、スーパーがホームページなどを開設し、OMO的な体裁が整ってきている。しかし、深圳と日本のそれとでは大きな発想の違いがある。日本の場合はスーパーの店舗ありきで、顧客の高齢化などの対応を含め、EC(電子商取引)を付加するという販売のアプローチである。
楽しさ、面白さ、好奇心が刺激されるスーパー
ところが、深圳のOMO型スーパーはECの企業(ここではアリババおよびテンセント)が自社の会員登録を増やし、ECを増大するための入り口として店舗展開を行っている。もちろん店舗におかれた商品を購入することもできるが、あくまで商品サンプル扱いだという(注3)。誤ってサンプル品を持ち去ってしまうと、顔面認証が行われ、次に来店するときに注意を受けることになる。また、顧客が店舗で購入する場合、QRコードでキャッシュレスなのはもちろん、購入商品は指定された範囲内であれば、30分程度で自宅に届けられる仕組みも完備されている。
そして何より、日本と深圳のスーパーには大きな違いがある。「超級物種」はスタイリッシュで品ぞろえ豊富。「盒馬鮮生」は水槽に入った生きた海産物を見ることができたり、様々な試食を楽しむことができたりする。特に「盒馬鮮生」の海産物売り場では、注文すればその場で調理してもらえ、フードコートと一体となった空間で楽しさ、面白さ、好奇心が刺激される。当然、顧客で溢れていたが、これなら誰でも何度も店を訪れたいと思うことだろう。
筆者は帰国後、日本でスーパーに行くと、「確かに品ぞろえはあるが、なんか寂れていて楽しくない」と感じたほどである。日本でも深圳同様の店舗ができれば、顧客が殺到するのではないだろうか。
(本記事は新潮社フォーサイト「超急成長都市「深圳」で体験した「中国の現在」と「日本の未来」(上)」を転載したものです。つづきは新潮社フォーサイトの「超急成長都市「深圳」で体験した「中国の現在」と「日本の未来」(下)」でお読みいただけます)
【注釈】
(注1)次のURLから、タイガーモブの今回の深圳での機会に関する簡単な動画を観ることができる。https://www.facebook.com/eriko.kikuchi.505/videos/2259450077403435/UzpfSTE1NzU1MDYzNTI6MTAyMTQ5NjkyNTEwOTYxNjQ/?id=1575506352
(注2)深圳の発展は、ケ小平が深圳で香港を指さしながら「前進」と宣言したことに始まっており(香港のようになることを目指すという意味)、改革開放政策の申し子なのである。
(注3)将来は店舗自体がなくなるのではという話も聞いたが、店内の活気を見れば、可能性は低いと思われる。
鈴木崇弘
城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科教授、および『教育新聞』特任解説委員。宇都宮市生。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イーストウエスト・センター奨学生として同センター及びハワイ大学などに留学。設立に関わり東京財団・研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の理事・事務局長も歴任。法政大学大学院兼任講師、中央大学大学院公共政策研究科客員教授、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)事務局長付、厚生労働省総合政策参与などを経て現職。1991〜93年まで アーバン・インスティテュート(米国)アジャンクト・フェロー。PHP総研主席研究員、『Yahoo!ニュース』のオーサー、一般財団法人未来を創る財団アドバイザー、日本政策学校代表なども務める。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。主な著書・訳書に『日本に「民主主義」を起業する…自伝的シンクタンク論』(単著、第一書林)、『学校「裏」サイト対策Q&A』(東京書籍)、『世界のシンク・タンク』(共に共編著、サイマル出版会)、『シチズン・リテラシー』(編著、教育出版)、『アメリカに学ぶ市民が政治を動かす方法』(監共訳、日本評論社)、『Policy Analysis in Japan』(分担執筆)など。専門は公共政策。
◎新潮社フォーサイトの関連記事
・超急成長都市「深圳」で体験した「中国の現在」と「日本の未来」(下)
・霞が関に「政策立案」を任せるな
・本格的シンクタンクの創設を
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54585
2018年11月8日 北野幸伯 :国際関係アナリスト
中国が米中覇権戦争に絶対勝てない3つの理由
前回の『トランプの「中国潰し」に世界が巻き添え、貿易戦争は覇権争奪戦だ』では、米中貿易戦争が覇権争奪戦に転化していることを指摘した。米国は、中国のウイグル人迫害を非難し始め、人民解放軍を制裁し、台湾への軍事支援を強化している。中国は、GDPでも軍事費でも世界2位の大国だ。しかし、この「戦争」で米国には勝てないだろう。その理由を3つ挙げる。(国際関係アナリスト 北野幸伯)
<第1の理由>
中国経済が悪化し続けるのは必然だ
米中貿易戦争は、覇権争奪戦争そのもの。しかし、中国はこの戦いで米国に勝利することはないだろう Photo:Reuters/AFLO
まず第1に、中国経済が悪化していくのは必然であることが挙げられる。これは、米中貿易戦争が始まらなくても、そうなる方向だった。どういうことか。
中国のGDP成長率を見てみよう。2008年9.6%、2009年9.2%、2010年10.61%、2011年9.5%。この国は、2008年に起きたリーマンショックの影響が皆無であるかのような成長を続けていた。
ところがその後を見ると、2012年7.9%、2013年7.8%、2014年7.3%、2015年6.9%、2016年6.72%、2017年6.86%、2018年6.6%(IMF予測)と、着実に鈍化している。
実をいうと、2010年代末に向けて中国経済の成長が鈍化していくことは、大昔から予測できた。たとえば、筆者は2005年に出版した『ボロボロになった覇権国家』127ページに、こう書いた。
<中国は2008・2010年の危機を乗り越え、初めは安くてよい製品を供給する「世界の工場」として、その後は1億3000万人の富裕層を抱える巨大市場として、2020年ぐらいまで成長を続けるでしょう>
2005年の時点で、中国は2008〜2010年の危機を乗り越え、成長を続けるが、それも2020年までと予想していた。なぜこのような予測になるのか?
筆者の根拠は、「国家ライフサイクル論」だ。「国家ライフサイクル論」では、国のある体制にも人間の「生老病死」のようなサイクルがあると見る。具体的には、大きく「移行期=混乱期」「成長期」「成熟期」「衰退期」に分けることができる。
まず、前の体制からの「移行期」は、混乱が続いている。しかし、有能なリーダーが出て政治の混乱を終わらせ、かつ正しい経済政策を行うと、「成長期」に突入する。
中国は、安い人件費を武器に「安かろう悪かろう」と批判されながらも急成長。しかし、人件費が高くなるにつれて成長率は鈍化する。やがて企業は、より労働力の安い外国に生産拠点を移すようになる。こうして成長期は終わり、低成長の成熟期がやってくるのだ。
中国のライフサイクルは
日本の「30年遅れ」である
日本と中国の国家ライフサイクルを比較すると、中国は、日本から約30年遅れていることがわかる。
1950年代、日本、成長期に突入。
1980年代、中国、ケ小平改革で成長期に突入。
1960年代、日本、「安かろう悪かろう」と揶揄されながらも急成長。
1990年代、中国、「安かろう悪かろう」と揶揄されながらも急成長。
1970年代、日本、「世界の工場」になる。
2000年代、中国、「世界の工場」になる。
1980年代、「日本が米国を追い越す」と多くの人が確信。
2010年代、「中国が米国を追い越す」と多くの人が確信。
この「パラレル状態」が続くと仮定すると、2020年代からの中国は以下のようになる。
1990年代、日本、「バブル崩壊」から「暗黒の20年」に突入。
2020年代、中国、「暗黒の20年」に突入?
日本政府が尖閣を国有化した2012年、日中関係は「戦後最悪」になった。それで日本では、生産拠点を中国の他にもつくる「チャイナプラスワン」という考えが一般化した。日中関係の悪化が直接的原因だったが、中国の人件費が高騰し、利益が出にくくなったことが長期的理由だった。
外国企業が逃げ出す。これは、国家ライフサイクル論では、まさに「成長期後期」の典型的現象だ。つまり、米中貿易戦争が始まらなくても、中国経済の栄華は終わりつつあったのだ。
結論を書くとこうなる。
国家ライフサイクル通り、中国の経済的繁栄は終わりつつあった。米中貿易戦争は、この繁栄終了のプロセスを加速させるだろう。
<第2の理由>
中国の政治体制の脆弱性
第2の理由は、中国の政治体制が脆弱であることだ。ご存じの通り、中国の政治体制は、共産党の一党独裁だ。つまり、民主主義国家にあるような、「選挙による政権交代システム」がない。これは、非常に重大な欠陥だ。
理解しやすいように、米国と比較してみよう。黒人と白人のハーフ・オバマ前大統領の誕生は、まさに「革命」だった。ケニア人を父に持つ男性が、WASP(白人、アングロサクソン、プロテスタント)が支配する国のトップになったのだから。しかも、このプロセスは、選挙を通してあっさり実現した。これが米国の強さであり、安定性である。
日本でも、自民党が増長し悪政を行うようになると、時々政権交代が起こる。しかし、交代は選挙によって行われ、流血の事態は起こらない。これが日本の強さと安定性だ。実際の革命なしで、平和裏に「革命的」なことを起こせる。これが、民主主義国家の強さなのだ。
ところが中国では、そうはいかない。中国人が「政権交代」を望むなら、革命を起こすしか方法がない。
選挙で選ばれたことがない共産党は、これまで2つの「正統性」を確保してきた。1つは、国民党を駆逐して、「中華人民共和国」を建国したこと。2つ目は、奇跡的経済成長を実現したこと。ところが既述のように、中国の経済成長は終わりつつある。それで、共産党が勝手に中国を支配できる「正統性」はなくなりつつあるのだ。
今後、中国経済は必然的に悪化していく。そして、その責任は共産党、特に独裁者・習近平にあると認識されるだろう(中国政府は「貿易戦争を始めた米国が悪い」と国民に説明するだろうが)。
1990年代初めのバブル崩壊後、日本の政界は混乱した。そして1993年、日本新党の細川護熙氏が総理大臣に就任。38年間続いた自民党時代は終焉した。
2020年代になると中国の政界も、景気悪化で混乱することになるだろう。選挙による政権交代システムがない中国は、1990年代の日本以上の大混乱に陥る可能性が高い。
<第3の理由>
戦闘なしの戦争で、中国は勝てない
核兵器の登場と拡散で、戦争の形態は変わった。
米国と中国は、共に両国を破壊し尽くせる核兵器を保有している。それで両国は、大規模な戦闘が起こせない。結果、戦争の形は大きく変化した。戦闘よりも、情報戦、外交戦、経済戦などが重視されるようになったのだ。
情報戦で、中国は米国に勝てない。中国は、民主主義のない一党独裁国家だ。
言論の自由も、信教の自由も、結社の自由もない。ウイグル人を100万人強制収容しているといわれる、人権侵害大国である。こういう国なので、米国が望めば、容易に中国を「悪の帝国」にすることができるだろう。
外交戦は、自国の味方を増やし、敵国を孤立させるために行われる。「アメリカファースト」のトランプは、お世辞にも「外交上手」とはいえない。彼の要求が厳しすぎるので、欧州、ロシア、中国がお互いに接近している。
トランプの外交は、米国にとっては大きな懸念要因だろう。しかし、中国の景気がますます悪化すれば、人権問題がフォーカスされるようになる。
金のある人権侵害国家と付き合いたい国は、たくさんある。中国は、いつでも人権侵害国家だったが、1990年から2000年代の間、日欧米企業は、競ってこの国に進出してきた。
しかし、金のない人権侵害国家は「ただの人権侵害国家」だ。結局、世界の国々の大半は、再び米国側につくことになるだろう。
最後に経済戦。現代の戦争では、これがメインだ。ここでも、米国が勝つ可能性が高い。
米国は、年間5000億ドル強を、中国から輸入している。一方、中国は、米国から年間1300億ドルしか輸入していない。貿易戦争によって、お互いの全製品に関税をかけたとすると、中国が受ける打撃は、米国が受ける被害の3.8倍になる。
以上を簡潔にまとめてみよう。
・中国経済は、米中貿易戦争がなくても悪化していくトレンドである
・中国経済は、米中貿易戦争で悪化のスピードが加速する
・不況で、中国の政治は不安定化する
・民主的政権交代システムがない中国では、クーデター、革命が起こりやすくなる
・核大国である米中の「戦争」は、情報戦、外交戦、経済戦がメインになるが、中国は米国に勝てない
日本が注意すべき
2つのこと
米中貿易戦争が、覇権争奪戦に転化する中、日本はどう動くべきなのだろうか?注意すべき点は2つだ。
まずは、「孤立しないこと」。1937年に日中戦争が始まったとき、中国は、米国、英国、ソ連から支援を受けていた。この戦争は事実上、日本vs米英中ソの戦いだった。日本が負けるのは当然だ。
あれから80年の時が過ぎ、日本は現状、孤立していない。しかし、中国は常に日本を孤立させようとしているので、決して安心はできない(証拠はこちらの記事を参照のこと)。
日本は、中国の罠にはまって孤立しないよう、常に慎重に行動しなければならない。
もう1つは、軍事同盟国・米国との関係を最優先にし、中国に接近しすぎないこと。第2次大戦時、日本最大の失敗は、ナチスドイツと軍事同盟を結んだことだった。「負ける国の同盟国になったこと」が致命的ミスだったのだ。
今の日本政府はそんなバカなことはしないと思う人が多いかもしれない。しかし、米中覇権争奪戦が始まった途端に、日中関係が大きく改善された。日本は、第2次大戦時のようにフラフラし、米中の間を揺れているようにも見えるのだ(安倍首相は、習近平との会談後、すぐにインドのモディ首相を別荘に招くなどして、バランスをとっているようだが)。
日本政府は、愚かにも「負ける国の側についた」第2次大戦から教訓を得て、今度は「勝つ国」の側にいなければならない。
そして、「勝つ国」は、またもや米国なのだ。
https://diamond.jp/articles/-/184513
2018年11月8日 田岡俊次 :軍事ジャーナリスト
米中の「新冷戦」が米ソ冷戦とは本質的に異なる理由
マイケル・R・ペンス米副大統領は10月4日ワシントンの保守系シンクタンク「ハドソン研究所」で演説し、中国を激しく非難した。
貿易不均衡や知的財産権問題だけでなく、軍事問題や米国の内政への干渉、人権問題などの広い範囲で中国との対決姿勢を示したため、「新冷戦」の始まり、との見方が日本の保守派に多い。
だがこの演説は中間選挙での共和党の支持者を固めるための発言であることも計算に入れる必要がある。
米ソの冷戦が1989年に終わって以来すでに29年がたち、米ソの巨大な軍事力が対決していた。冷戦時代の後に成人したか、その記憶が薄れた人々には、米中の対立はかつての米ソ対立に似た状況のように思えるのだろう。
だが人類の絶滅を招きかねない「第3次世界大戦」の可能性と、それが日本に及ぼす危険を固唾をのんで見つめてきた者にとっては、今日の米中対立を冷戦と同じにみるのは滑稽のように感じられる。
軍事対立の米ソ冷戦
核戦争の寸前の危機があった
冷戦が終了した1989年当時、ソ連軍の総兵力は約510万人、東欧の同盟国は約100万人の兵力を持っていた。これに対し、米国は総兵力216万人とNATOの同盟国の310万人余の兵力で対峙した。
国防費の対GDP比は米国で6%、ソ連は15%に達していた。現在、米国の国防費の対GDP比は3.5%、中国は1.3%で冷戦時代とは大違いだ。
冷戦当時、ソ連は大陸間弾道ミサイル1386基、中距離弾頭ミサイル608基、弾道ミサイル原潜63隻、爆撃機1195機の核戦力を持ち、米国は大陸間弾道ミサイル1000基、弾道ミサイル原潜36隻、爆撃機390機を保有していた。
米海軍は空母14隻、対艦船用の原潜95隻、水上戦闘艦(巡洋艦、駆逐艦等)225隻を持ち、ソ連海軍は空母4隻、潜水艦370隻、水上戦闘艦264隻を保有していた。
米国とソ連がもし戦えば、双方とその同盟国が壊滅的打撃を受けるだけでなく、全世界で飢餓が発生することも予測されていた。長期間大気中に漂うばい煙により太陽光が遮られ、地表の温度が低下する「核の冬」により、食料生産などへの影響も懸念されたからだ。
それだけに双方とも直接の戦争は避けたが、ベトナム戦争ではソ連が大量の兵器と教官、技術者を北ベトナムに送り、ソ連のアフガニスタン侵攻に対しては米国がアフガンの反ソ組織に武器を供与し、代理戦争で、それぞれが相手の弱体化をはかった。
1962年にはソ連が核ミサイル基地で中距離弾道ミサイルをキューバに送り込んだことが明らかになったことから、米国がカリブ海で海上封鎖をするなどで、核戦争寸前の危機となった。
こうした冷戦当時、筆者はNATO軍の大演習や、韓国での米韓合同演習を見学していても「もしこのような事態になれば日本はどうなる」と考え、暗い気分にならざるを得なかった。
当時を考えれば、今日の米国と中国の対立は米ソの冷戦とは比較にならない。
南シナ海で米海軍の潜水艦や哨戒機が、海南島を拠点とする中国の潜水艦を追尾して、識別用の「音紋」を収録したり、調査船が海水の温度や海底地形など対潜水艦戦のためのデータを集め、中国海軍がそれを妨害しようとしたりしてトラブルが続発している。
だが冷戦時代には空母3〜4隻を中心とする米国の大艦隊がウラジオストック前面で発着艦訓練をして威嚇、ソ連は多数の爆撃機を出してそれに対抗した。
ソ連艦が米空母のすぐ前を横切って直進を妨げ、艦載機の発着艦を妨害しようとし、米ソの駆逐艦が接触する事件もよく起きていた。
それに米ソの間では経済的な関係はほとんどなく、時にソ連が米国から小麦を輸入する程度だったから、経済の面での対立は起きず、米ソの対立は主として軍事的なものだった。
一方で現在の米中の対立はそれとはほぼ逆だ。
経済的な相互依存関係が広範囲で、深いだけに、摩擦やいさかいが起こっている。本来、貿易や金融の関係は双方の企業などに利益があるからこそ成立しているもので、冷戦時代の軍事的対立とは本質的に異なっている。
米中は経済で相互依存
中国の「抵抗力」強まっている
ペンス氏は「中国を助ける時代は終わった」と言うが、米国企業が中国からの輸入をするのは中国を助けるために行っているのではない。それが利益を生むからだ。消費者もそれがお得だから買っている。
同様に他の国々が米国の産品を輸入するのも「米国を助ける」ためではない。
中国は米国の国債を1兆1880万ドルも保有し、今年度は9840億ドルの赤字が予測される米国財政をファイナンスしている形だ。また中国は3兆1180億ドルもの外貨準備の約70%をドル建てにし、ウォール街で運用している。
これも中国はもっぱら利回りを考えてドル資産を運用しているのであり、米国への援助ではあるまい。
冷戦時代にソ連が米国債を保有したり、ウォール街への投資や米国製の旅客機を毎年150機も購入したりすることはあり得なかった。
中国には米国系企業の拠点が8600ヵ所もあり、在留米国人は2010年の中国の国勢調査で7万人以上、実際にはその倍はいるとみられる。このようなことも冷戦期のソ連では考えられなかった。
米国の統計では昨年の中国からの輸入が5055億ドル、中国への輸出が1299億ドルで、対中赤字が3756億ドル。中国の統計では米国からの輸入が1539億ドル、米国への輸出が4297億ドルで、対米黒字は2758億ドルだ。
この違いがあるのは双方とも輸出額には香港向けを含まず、輸入額は香港経由を含む「原産地主義」だからだ。お互いにとって貿易面での主要な取引相手だ。
日本の財務省の発表によれば昨年末の対外純債権は日本が328兆円余、ドイツが261兆円余、中国が204兆円余、香港が157兆円余であるのに対し、米国はマイナス885兆円余だ。フローの面だけでなく、ストックの面でもお互いは表裏の関係にある。
米国の全世界に対する貿易赤字は8620億ドル(約97兆円)に達する一方、中国の貿易黒字は総額4212億ドル(約47兆円)だから、貿易戦争で米中の貿易が減っても、米国の貿易赤字が解消することはあるまい。
米国の輸出依存率はGDPの7.8%で、中国の方が貿易依存度が高いことから、関税引き上げ合戦によるGDPへのマイナスの影響が中国がより大きいとの見方が多いことは確かだ。
だが中国の輸出依存率は2006年にGDPの35.4%だったのが、内需の拡大で昨年には18.5%と急速に低下し、貿易戦争での抵抗力は高まっている。
対米輸出は全輸出の19%だから、それが細れば特に米国向け製品を扱っていた中小企業に大打撃となるだろうが、中国政府の歳入は2007年に5.1兆元余だったのが、2017年には17.2兆元余で約3.4倍に増大している。
貿易戦争の被害者を一時的に支援する余力はあると思われる。
政府への不満は米国の方が高まる
「新冷戦」は1〜2年で収束か
米国でも、貿易戦争で今後、関税引き上げによる輸入品の値上がりで消費者物価が上がったり、部品や原材料の不足が生じたりする可能性がある。また農産物の輸出が減少し、中国で年間約300万台が売れている米国産自動車の販売が急減したりするなどの実害が出そうだ。
そうなればそうした事態を招いたトランプ政権への企業や消費者の非難が高まりそうだ。
こうした影響は、中国も同じだろうが、中国では、貿易戦争は中国が始めたわけではなく、応戦したにすぎないから、政府への不満はさほど高まらないだろう。
中国では昨年2887万台もの自動車が売れ、保有数は2億台を超えた。海外旅行者は1億3050万人、国内旅行者は50億人で人口の3.5倍。中国のどの観光地も観光客であふれている。
改革・開放路線による市場経済化がもたらした中産階級の爆発的な増大は中国の社会現象の本流とみるべきだろう。
2007年から17年までの10年間に1人当たりの可処分所得は都市で2.64倍、農村では3.24倍に増えた。だがもともと都市住民の所得は農村の約3倍だったから、なお格差は拡大している。
商工業と比べ、農業の経済成長が遅いのは当然だ。それでも農民の所得も10年間に3倍以上になり、極貧層は縮小したから、広範な大衆に政府への不満が蓄積しているとは考えにくい。
習近平政権は過去5年の腐敗撲滅運動で、次官級以上280人余、局長約8600人、地方の官吏、党役員など約134万人を処分したと発表されている。
自らの地位をおびやかす恐れのある幹部を排除し長期政権の基盤を固める狙いといった見方もされているが、絶大な権力を握り、連類も多い公安(警察)や軍のトップ級幹部を収賄、横領で処断することは、政権にとり大きな危険を伴う。「政権保持の政略」との説は疑わしい。
10月に、国際刑事警察機構の孟宏偉総裁の身柄を拘束し召還した問題は、孟氏を総裁に推薦した中国政府の面目にかかわるが、あえてそのような大胆な行動に出るのは、中国数千年の賄賂の伝統を断ち切ろうとする決意の表れとみる方が合理的と思える。
巧みに中国を改革・開放路線に転換させ、今日の近代化の基礎を作ったトウ小平氏は、市場経済と権威主義的政治を融合させて成功した中国系住民主体の国シンガポールのリー・クアンユー(李光燿)首相を模範とし、訪問して長時間、彼の教えを受けた。
法律家だったリー首相は強い権限を持つ「汚職調査局」を設けて腐敗を厳しく取り締まり、今日のシンガポールは汚職などがない効率の良い行政で評価されている。習近平氏もそれに習おうとしているようだ。
大物・小物計約135万人もの「悪徳官吏」、党役員を処分したことは、中国の庶民の共感を博した。また4億人ともいわれる新興中産階級の人々の大多数はかつて思いもよらなかった車と近代的住宅を持ち、旅行を楽しんで、現在の体制に満足しているはずだ。
一方、トランプ氏に対しては米国を二分するほどの批判者がいて、11月6日の中間選挙では民主党が下院で圧勝し、米国の一党支配は崩れた。EUをはじめ多くの国々にケンカを売って、同盟国とも対立している。同氏と親しい他国指導者は北朝鮮の金正恩委員長とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相ぐらいだ。自国第一主義を公言すれば他国への指導力を失うのは当然だ。
これを考えれば米中の貿易戦争がしばらく続いても、トランプ政権よりも習政権の方が安定度は高い。
貿易戦争の実害を来年米国民が感じるようになれば、対中タカ派議員たちも妥協、停戦を求める方に傾く公算は高いだろう。
米ソの冷戦は40年以上も続いたが、「新冷戦」はここ1、2年の話かと思われる。
(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)
https://diamond.jp/articles/-/184666
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