http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/320.html
Tweet |
(回答先: 増える月曜朝の中高年の縊死と就職氷河期の果て パワハラにならない部下へのうまい伝え方 ひとが辞めないコツはひとつしかない 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 06 日 17:47:52)
2018年11月6日 Jacky Wong
アリババが映す中国経済の減速、待ち受ける試練
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
***
電子商取引大手アリババ集団は、中国のハイテク大手として知られるが、根本的には、中国消費者を相手に製品を販売する中・小企業向けのプラットフォームだ。
中国の中小企業は、当局によるシャドーバンキング(影の銀行)への取り締まり強化や、それに伴う景気減速で打撃を受けている。そこに米中の貿易摩擦が加わっており、アリババが2019年3月期の売上高見通しを4?6%引き下げたことに驚きはない。アリババは、注目のハイテク株というよりは、中国経済の先行きを占う上で目安となる先行指標のような存在だ。
アリババは、出店業者の一部が厳しい状況に直面しているとして、ウェブサイト上での検索数増加などによる漸増型の広告スペースの販売を少なくとも当面、停止すると明らかにした。アリババは出店業者が支払う広告費から収益の大半を得ており、今回の決定は今後成長が鈍ることを指す。
アリババは売上高見通しの下方修正を決めたのは、ほんのここ数カ月になってからだと説明した。つまり、ここから状況はさらに悪くなることを示唆している。ただ、アリババの成長鈍化の兆しは、ここ数四半期にすでに出ていた。
アリババの7-9月期(第2四半期)売上高と営業利益は、いずれも市場予想に届かなかった。純利益は市場予想を上回ったものの、背景には投資売却による押し上げがある。総売上高は54%伸びたが、営業利益は前年同期比19%落ち込んだ。まだ収益化できていない他の事業への投資がかさんだことが主因だ。アリババは次の成長の活路を求め、実店舗や食品宅配などの事業に資金を投じている。こうした新規事業を除くと、中核の電子商取引事業は29%の増収だった。なお底堅い数字だが、1年前に記録していた50%超の伸びからは鈍っている。
アリババは収益の大半を中国国内で稼いでいるものの、米中の通商対立激化はリスクとなる。なぜなら、経済減速による痛みを受けるのは、不均衡なまでに小規模企業に集中するからだ。
決算発表を受けた2日のアリババ株価は、前日比2.42%安で引けた。夏場につけた高値からは約30%下落している。7-9月期決算は、投資家が早期の回復を期待すべきではないことを物語っている。
https://diamond.jp/articles/-/184459
【第139回】 2018年11月6日 加藤嘉一 :国際コラムニスト
安倍訪中後の日中関係「4つの留意点」、依然油断はできない
今回の安倍首相の訪中後、日中関係の行方は… 写真:新華社/アフロ
安倍首相の
中国公式訪問が終了
安倍晋三首相の日本首脳による約7年ぶりとなる中国公式訪問が終了した。
安倍首相は習近平国家主席、李克強首相、栗戦書全国人民代表大会常務委員会委員長と会談を重ね、日中平和友好条約発効40周年記念レセプションに参加した。
安倍首相・李克強両首脳がイノベーション、海上における捜索および救済、通貨スワップなど12本の国際約束・覚書の署名に立ち会った。
両首脳は日中第三国市場協力に関するフォーラムにも出席し、1000人以上の両国市場関係者と共に日中経済協力の新しい形を模索した。約40年に渡って続いた政府開発援助(ODA)はその歴史的使命を終えた。安倍首相は、この節目を背景に、日中関係を“新たな段階”へと押し上げるという主張をした。
安倍首相訪中の詳細や両国間での合意事項等に関しては日本国内でも広範に報道されているためこれ以上は触れない(参照:外務省https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page4_004452.html)。
本稿では、安倍訪中を経た上での今後の情勢について考えてみたい。
この訪中を無駄にせず、日中関係・交流を安定的かつ健全に管理するという観点から、筆者が現段階で留意すべきだと考える問題を4点提起し、若干の検証作業を行いたい。
「新たな時代」という言葉に
習近平は内心ほくそ笑んだであろう
1つ目に、「第5の政治文書」についてである。日中両国政府はこれまで国交正常化を実現した1972年、平和友好条約を締結した1978年、その後1998年の江沢民訪日時、2008年の胡錦濤訪日時に政治文書に署名し、両国間系の礎としてきた。
この流れ、および昨今の情勢や世論を考慮するとき、来年6月に予定されている習近平国家主席の訪日時に「第5の政治文書」の署名に向けて検討と調整がなされる可能性はある。
それ自体は前向きな動きであり、日中間の政治的関係を安定させ、多角的な民間交流、そして斬新的な日中共同の国際貢献に向けての礎となるものと筆者は考える。
一方で留意したいのが同文書をどういう立場で、どういう論調のものに仕上げるかという点である。今回安倍首相は随所で日中関係の“新しさ”を強調した。
例えば、習近平主席との会談で、安倍首相は日中両国・関係が(1)競争から協調に、(2)互いに脅威とならず、(3)自由で公正な貿易体制の進化発展を推し進めるという“3原則”を示した上で「新たな時代を習主席と共に切り開いていきたい」と主張した。
筆者が想像するに、この言葉を聞いた習近平は内心ほくそ笑み、「してやったり」という思いを抱いたであろう。“新時代”とは、自身が国内政治において提唱し、党規約や憲法にまで書き込んだ概念にほかならないからだ。
“習近平新時代中国特色社会主義思想”――。
習近平政権の指導思想である。中国の軍事や役人、学者たちは毎回口にするには長すぎるこの言葉を省略して“習近平思想”と呼ぶ。
習近平からすれば、仮に“新時代”という言葉を「日中第5政治文書」に組み込むことができれば、それを自らの外交成果とみなし、宣伝し、国内のあらゆる勢力に対してアピールすることができる。
日本の安倍首相が“新時代”に同調してきた、内政が新時代に入った中、外交も新時代に入っていくのだと。“一帯一路”や“人類運命共同体”といった習近平政権を象徴する概念も盛り込もうとするだろう。
筆者はここでそういう状況の良しあしについて価値判断するつもりは毛頭ない。ただ、内政に忠実で、他国以上に外交を内政の延長だとみなし行動する傾向のある中国側は、おそらくそういう立場で、そういう論調で日本側との交渉に当たってくるであろうこと、日本側もそれを前提に中国側と向き合い、日本の長期的かつ開かれた国益に符合する、アジア太平洋地域の安定と繁栄に資する日中関係のあり方を模索すべきだということを指摘したいだけである。
依然として油断はできない
日中の関係
2つ目に、「中日関係は再び正常な発展の軌道に戻った」(李克強首相、日中共同記者会見にて)とはいうものの、依然として油断はできないという点である。
2014年11月の会談では、両首脳の表情は非常に硬かった
2014年11月の会談では、記念撮影でも両首脳の表情は非常に硬かった Photo:REUTERS/AFLO
ここでは一つひとつ挙げないが、改善した日中関係が何らかの突発的事件を通じて悪化した例は枚挙にいとまがない。歴史的、構造的な背景からいって、日中関係はまだまだもろいのだという現実を自覚する必要がある。
筆者が特に警戒しているのが、中国側の日本の内政、および日本側の中国の外交に対する反応である。
「今後安倍政権が憲法9条改正に本格的に乗り出したとき、中国としてどう対応するか、世論をいかにして管理するかという問題を今から考えている」
王滬寧政治局常務委員(序列5位)が主任を兼任する中央政策研究室国際局の中堅幹部は、筆者にこう語る。
中国当局は官製メディアを中心に日本の憲法改正アジェンダを、平和路線の変更、場合によっては“軍国主義の復活”という観点から警戒心をあらわにしてきた。そういうこれまでのプロパガンダとの整合性をどう取るのか。仮に安倍政権が9条を含めた憲法改正のための手続きに本格的に乗り出したとして、中国側は日中関係の安定と発展という観点からどのように反応し、特に世論に対して説明していくのか。
今後、中国の公船が尖閣諸島の接続水域内に入ってきたり、南シナ海での拡張的行動を一層本格化させた場合、日本政府としてどう対応していくのだろうか。
もちろん、東シナ海問題に関しては、事態を緊張・悪化させないために、今回の訪中を通じても防衛当局間の海空連絡メカニズムの強化やホットラインの創設を巡って前向きな協議が行われた。
昨今の情勢下において、中国側としても安易に領海侵犯するような真似はしない可能性が高い。ただ南シナ海問題に関して言えば、中国側はこれまでも安倍首相の南シナ海問題への“積極介入”に反発してきている。
「日本が南シナ海問題に軍事介入した場合、中国はしかるべき措置を取り、断固として対応する」(中国外交部華春瑩報道官、2017年3月16日)。
仮に今後、米国や日本が、南シナ海を“軍事化”する行為だとして批判してきた事態が中国側によって再びもたらされた場合、安倍首相はこれまでの立場や反応との整合性をどう取っていくつもりなのか。一つの不安要素である。
米中関係が改善したら
日中関係への影響は
3つ目に、仮に米中関係が改善した場合、日中関係がそこからどのような影響を受けるかという点である。
前回コラム(「中国が安倍首相訪中を機に日本に接近する4つの理由」で指摘したように、中国側が安倍首相の訪中を機に日本に“接近”する理由の一つが米国要因、一歩踏み込んで言えば、この機会に中国として「米国の同盟国である日本を取り込んでおきたい」と考えているというのが筆者の見立てである。
貿易戦争は構造的要因によるものであり、米国は中国を“戦略的競争相手”とみなし、中国は米国が貿易戦争を発動する動機は中国の台頭そのものを封じ込めようとしているからだとみなしている今、米中関係が根本から改善する可能性は高くないだろう。
筆者自身、間もなく行われる中間選挙の結果いかん、トランプ大統領の今後の進退いかんによって米中関係そのものが質的に変化するか否かに関しては懐疑的な立場を取っている。
とはいうものの、日本としては準備を進めておく必要がある。
米中関係が改善、あるいは緩和し、中国としてそこまで日本に接近する切迫性に見舞われなくなったとき何が起き、それにどう対応していくか。
「歴史、領土、台湾。日中間で最も敏感な問題は何一つ解決していない。火種はいつ爆発してもおかしくない」(前出の中央政策研究室国際局幹部)。そのとき、日本国内で再び“米中再接近”を不安視し、“ジャパン・パッシング”を懸念する内向きの議論が広がるのではないか。そうならないために、日本として、日米中関係を長期的にどう管理していくのかという戦略を今のうちから練り、固めておかなければならない。
保守的になる
中国の内政事情
4つ目に、安倍首相が最長で2021年9月まで首相を務めるこれからの数年、習近平新時代の真っただ中にある中国側でも「政治の季節」が続くという点である。
2019年は中華人民共和国建国70周年、2020年は全面的に小康社会(少しゆとりのある社会)を実現する1年(筆者注:中国政府は2010年と比べて、2020年にGDPおよび1人あたりGDPを倍増させるという計画を立ててきた)、2021年は中国共産党結党100周年に当たる。
筆者の観察と理解によれば、政治の季節を迎える中国共産党はまず内政的に保守的になる傾向が強い。
政治的なプロパガンダが四六時中横行し、中国共産党がいかに偉大であるかが強調され、ナショナリズムが蔓延する。そのプロセスは安定第一という絶対原則の中で推進される。
故に、政治的な引き締めが強化され、多元的、開放的な報道や言論が規制される。例えば、2008年の北京五輪前、中国ではツイッター、フェイスブック、ユーチューブの閲覧が禁止され、今に至っている。
世論環境が共産党のプロパガンダ一色と化し、自由で多様な報道や言論が制限される環境は、日中関係の安定と発展にとっても不安要素であろう。
中国政府が対日世論を上から締め付け“一本化”したほうが日中関係の安定には有利に働くという類いの主張も一部あるが、筆者はこの考えには全くくみしない。両国間で多様な意見が自由に往来し、ダイナミックな民間世論が形成される環境こそが長期的に両国間系の発展を担保するものだと考える。
そして、“国家大事”が続き、内政が保守化し、引き締め策が横行する状況下で、対外政策が拡張的・強硬的になる傾向もまた歴史的に見いだせる。
中国で“核心的利益”(筆者注:2011年9月国務院が発表した《中国平和的発展》白書によれば、中国の核心的利益は〈1〉国家主権、〈2〉国家安全、〈3〉領土保全、〈4〉国家統一、〈5〉中国の憲法が確立した国家政治制度と社会大局の安定、〈6〉経済社会の持続可能な発展の基本的保障から成る)が主張され、国際社会がそれを警戒し始めたとき、中国はまさに政治の季節にあった。
2008年北京五輪、2009年建国60周年、2010年上海万博の頃のことである。
(国際コラムニスト 加藤嘉一)
https://diamond.jp/articles/-/184168
【第138回】 2018年10月23日 加藤嘉一 :国際コラムニスト
中国が安倍首相訪中を機に日本に接近する4つの理由
中国は日本を取り込もうとしている?
中国は日本を取り込もうとしている? Photo:PIXTA
安倍首相による
約7年ぶりの中国公式訪問
10月25〜27日、安倍晋三首相が日本の総理大臣として約7年ぶりに中国を公式訪問する。日中平和友好条約発効40周年という節目の時期における訪中であり、5月の李克強首相の日本公式訪問、来年予定されている習近平国家主席の日本公式訪問と並んで、日中間の首脳外交、そして政治関係の安定化、成熟化、メカニズム化を象徴する外交行事であるといえる。
外交には相手があり、双方の思惑や利害関係がある程度一致して初めて交渉や行事は成立するわけであるが、本稿では、なぜこの時期に習近平国家主席率いる中国共産党指導部が日本との関係を経済的、外交的、政治的、そして戦略的に改善し、強化しようと乗り出しているのか、という問題を考えてみたい。
これは、本連載の核心的テーマである中国民主化研究、すなわち「中国共産党研究」という意味でも重要であると考える。中国共産党最大の任務と目標は党の威信、権力、存在を死守、維持、強化することにほかならない。
筆者が考える
4つの理由、動機、背景
筆者は4つの理由、動機、背景が交錯しながら作用していると考える。それらは、(1)米国要因、(2)一帯一路、(3)改革開放、(4)儀式需要である。以下、一つひとつ整理・検証していきたい。
まず米国要因に関してだが、本連載でも度々扱ってきたように(過去記事「米中貿易戦争が泥沼化、中国はもはや米国を信用していない」参照)、特に今年に入ってからトランプ政権の対中貿易戦争、対台湾政策、中国を“戦略的競争相手”と定義した国家安全保障戦略報告書、そして昨今トランプ大統領やマイク・ペンス副大統領の公の場における「中国が米国の中間選挙に干渉しようとしている」といった発言などを経て、中国共産党指導部はもはやトランプ政権を信用しなくなっている。
一方の米国側も中国の産業政策、貿易政策、知的財産、南シナ海問題、台湾問題、そして米国のメディア、シンクタンク、大学、政治、市民社会などへの官民一体・挙国一致的な“浸透”政策を見逃すつもりは毛頭ないようで、中国に対してしかるべき圧力、制裁を科していくものと思われる。
来月行われる米国の中間選挙を経て程度や雰囲気の次元で何らかの変化は生じるのかもしれないが、米中間の“戦略的競争関係”はトランプ大統領・政権という次元を超えて長期化する、そしてその最大の要因は“中華民族の偉大なる復興”というチャイナ・ドリームを掲げ、政治力、軍事力、外交力、経済力を含め総合的に“世界の中心”へ登り詰めることを明確な目標とし、そのために現在“中国の特色あるソフトパワー”を世界の各地、各分野で行使している習近平政権の国家戦略にあると筆者は考えている。
党の“核心”である習近平が、今年3月の全国人民代表大会で憲法を改正し、国家主席の任期が撤廃され、少なくとも制度・理論的には名実ともに、いつまでも中国の最高指導者に居座ることができるようになった昨今においてはなおさらである。
米中関係が構造的に悪化している副作用として、米中外交安全保障対話、中国側で経済貿易政策を担当する担当者らの訪米などが延期されている。筆者自身は、このような状況が続く中、米中両国が国交正常化40周年に当たる来年の1月1日をどのように迎えるのかに注目している。
日米同盟に“ヒビ”を入れ
日本を“取り込もう”という思惑?
世紀のライバルである米国との関係が悪化する中、そして多国間主義、自由貿易システム、グローバリゼーションなどに消極的な姿勢を見せるトランプ政権の政策に先進国、新興国、途上国を問わず国際社会全体が翻弄(ほんろう)される中、中国として米国の同盟国であり、世界第3位の経済大国である隣国日本に“接近”し、あわよくば日米同盟に“ヒビ”を入れ、日本を中国側に“取り込もう”という思惑が働いても、いささかも不思議ではないといえる。
拙書『日本夢 ジャパンドリーム:アメリカと中国の間で取るべき日本の戦略』(晶文社)の共著者である劉明福・中国人民解放軍上級大佐が主張するように、中国国内には、官民、文官か軍人かを問わず、「日中関係が悪いのは米国が裏でそう操作しているからだ」「日本が米国との同盟関係を破棄して日中関係は初めて根本的に改善され、アジアに安定と平和がもたらされる」という類の見方は根強いと感じている。
米国との関係悪化に端を発した日本への“接近”、そして希望観測的に抱く“取り込み策”の背景として、中国の外交政策、世界戦略、そして日米同盟に対して潜在的に抱いてきたDNAが同時に働いているというのが筆者の見方である。
中国が目玉政策としてきた
シルクロード経済圏構想
2つ目に“一帯一路”、すなわち習近平主席が第一次政権成立以来、中国が“世界の中心”に登り詰めるための国家戦略、目玉政策として掲げてきたシルクロード経済圏構想である。
今回の安倍首相訪中における一つの目玉が、今年5月李克強首相が訪日した際に両国間で合意に至った第三国における日中民間経済協力の推進、そしてその具体的プラットフォームとしての「日中第三国市場協力フォーラム」の開催である。
筆者自身、日本と中国がラテンアメリカ、東南アジア、アフリカといった第三地域において、互いに勢力範囲の構築を彷彿(ほうふつ)させたり、警戒・牽制したり、場合によってはつぶし合うような状況ではなく、資金、技術、マネージメント、経験などを含め、互いに長所を伸ばし合い、短所を補う形での官民一体協力は日中間における新しい協力の形式・次元として有意義であると考える。一人の有権者として、安倍首相には今回の訪中を通じてこのスキームをより一層推し進めていただきたいと思っている。
一方で、中国は第三国における日中協力の推進や、今回のフォーラムへの安倍首相の出席といった本件をめぐる一連の流れや行事をもって、「日本が、中国が提唱・推進する“一帯一路”を支持してきた」と宣伝する光景は想像に難くない。
日本政府としてはこれまで、“一帯一路”が地域のインフラ建設や経済の正常で健全な交流を活発化させるものであり、そして日本政府・企業としても対応が可能な個別案件に関しては前向きに対応していくという立場を取ってきたと認識しているが、日本側がどう認識・対応しているかと、中国側がどう認識・宣伝するかは別問題である。日本の動きを同盟国である米国や、価値観を共有する各国がどう捉えるかという“見え方”の問題も考慮しなくてはならないだろう。
というのも、“一帯一路”はモノ、ヒト、カネの交流にとどまらないからだ。中国はそれを通じて中国が直面する地政学的環境を有利に構築し、経済・金融外交を通じて第三地域における政治的影響力を浸透させ、これらの地域における国家に中国の“核心的利益”を尊重させるべくもくろみ、動いていく。その過程で、中国が望む、中国にとって有利な国際秩序やルールを築こうとするのは火を見るより明らかである(過去記事「中国がアフリカ支援外交で打ち出した「5つのノー」の真の狙い」参照)。“一帯一路”が習近平主席率いる中国共産党にとって“中華民族の偉大なる復興”を実現していくためのツールなのだという前提に立って、日本は慎重かつ丁寧に中国との第三国協力を進めていくべきであろう。
日本との関係を安定的に管理し
大いに利用したいという戦略的考慮
3つ目に、今年同じく40周年を迎える改革開放を祝い、より一層推し進めるために日本との関係を安定的に管理し、日本の経験や日本というプレーヤーを大いに利用したいという戦略的考慮である。
本月はまたケ小平訪日40周年に当たる。8日間の訪日期間中、ケ小平は随所で日本の近代化を目の当たりにした。日産自動車の工場では「これが近代化だ」、新幹線の中では「とても速い。これこそ我々が求めている速さだ」と感嘆に浸った。
筆者自身は、習近平は特に政治面と外交面では“ケ小平路線”を実質的に修正しているが、少なくとも経済面においては基本的に改革開放の路線を歩もうとしていると考えている(政治面での修正が経済面での継承に与える悪影響には警戒が必要だが)。
“ニューノーマル(新常態)”を掲げる近年の中国政府であるが、輸出から消費への転換、過剰生産能力の解消、産業構造の最適化、イノベーション、環境保護への配慮といった目標だけでなく、“高質量発展”というスローガンの下、企業に対しても品質やブランドへの追求を促している。
李克強首相は“工匠精神”を提唱し、(「日本に学べ」とは口にしないが)モノづくり、そして中国の持続可能な発展に必要な精神だとしている。改革開放政策をより品質重視、持続可能なプロセスにするために日本との官民一体協力を大いに利用したい、そのために日本との関係を安定的に管理しておきたいと考えているのだろう。
米国との貿易戦争が激化し、出口が見えず、その中で第3四半期の実質成長率が6.5%増と、第2四半期よりも0.2ポイント減り、2期連続の減速となった現在、日本(経済・企業)とのつながりを維持し、強化しようという政治的インセンティブが中国共産党内で働きやすい状況が生まれている。
儀式を通じて国威を発揚し
正統性を創造
最後が儀式である。
中国は儀式を重んじる国家である。指導者が選挙によって選ばれない共産党一党支配下の社会主義体制という要素も関係している。民主選挙という制度を通じた正統性が確保されないからこそ、儀式を通じて国威を発揚し、正統性を創造しようとする。
安倍首相の訪中を大々的に祝うことで、相手に圧力をかけようというしたたかさも作用しているのかもしれない。そして儀式は間もなくスタンダードと化す。誰が敵で、誰が味方なのか。何が政治的に正しくて、何がそうじゃないのか。官民を問わず、中国の人々は最高指導者・党中央からのメッセージを的確に読み取り、行動する経験則と民族性を擁している。
(国際コラムニスト 加藤嘉一)
https://diamond.jp/articles/-/183016
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民129掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民129掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。