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(回答先: 弱気相場入りする米国株、前途覆う「政策手詰まり感」マクロとミクロの投資家に異例の乖離S&P2500割FRB資本要件緩和 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 01 日 18:52:06)
2018年11月1日 高橋洋一 :嘉悦大学教授
白川前日銀総裁は「デフレ大好き人間」と、著作を読んで納得した
白川方明・前日本銀行総裁が、2013年3月に退任後、5年半の沈黙を破り、バブル期やバブル崩壊、リーマンショックの際など、日銀時代の経験や中央銀行の役割について書いた本が話題になっている。
『中央銀行―― セントラルバンカーの経験した39年』(東洋経済新報社刊)は、700ページになるが、総裁当時に日銀が公表した論文などからの引用も多く、突っ込みどころも満載だ。
白川前総裁については、「2%インフレ目標」を金融政策だけで達成するのは困難、と総裁時代からしきりに述べていたことで、現状を的確に「予言」したと評価する向きもあれば、リーマンショック後の「デフレ脱却」を妨げた戦犯と捉える人もいる。
白川時代の日銀の金融政策をどう評価するのが正しいのか。筆者の評価は、ハッキリ言えば「デフレ脱却を妨げた戦犯」である。
消費増税なければ
「2%物価目標」は実現していた
まず、2%のインフレ目標だが、それが達成できなかったのは、2014年4月からの消費増税が原因だ。
消費増税までは、白川氏が抵抗した大胆な金融緩和を、後任の黒田東彦総裁が「異次元緩和政策」としてやった効果で、インフレ率はいい感じで上昇していた。
14年5月には、消費増税による見かけの上昇分を除き、インフレ率は1.6%まで上がっていた。消費増税がなければ、14年の年内にも2%達成は確実だった。
しかし、消費増税の影響でより長期的な消費低迷に入り、それとともにインフレ率上昇にもブレーキがかかり、今日に至っている。
このことは、2015年3月19日付本コラム「『2%インフレ目標未達』の批判は誤解で的外れ」を参照されたい。
要するに、金融政策だけでインフレ目標2%は達成できたはずなので、当時の白川氏の金融政策に関する「予言」は外れたのだ。
白川氏の著作や総裁時代の発言から、疑問に思うのは、金融政策は何のために行われるのかをきちんと理解していないのでは、と思わざるを得ない。この点が致命的である。
金融政策は雇用確保の政策
という認識がない
本コラムで繰り返し指摘しているように、金融政策は雇用を確保する政策だが、白川氏の著作や発言には、雇用の話はまず出てこない。
また著作では「インフレ目標2%の意味がわからない」という趣旨のことが書かれている。これはある意味で、正直ともいえるが、そういう人が中央銀行総裁だったとは空恐ろしいことだ。
インフレ目標として「なぜ「2%」なのかという理由は、本コラムでも繰り返し書いてきた(例えば、2017年12月28日付「安倍政権5年間の通信簿は雇用の確保で70点の及第点だ」)。
最低の失業率を目指しても、ある下限(経済学ではNAIRU、インフレを加速しない失業率という)以下にはならずに、インフレ率ばかり高くなってしまう。そうした下限の失業率(筆者の試算では、日本では2%台半ばから前半)を達成するために最小のインフレ率が2%程度になっているからだ。
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この意味で、インフレ目標は、中央銀行が失業率を下げたいために金融緩和をし過ぎないような歯止めともいえる。逆に言えば、インフレ目標までは金融緩和が容認されるということだ。
このような基本的なことを認識しないで、日銀総裁をやっていたから、その成果が散々だったのだ。
雇用確保の観点から、白川総裁時代を評価すると、失業率は、就任時の2008年4月は3.9%だったのが、退任時の2013年3月は4.1%に上がっている。とても及第点はつけられない。
リーマンショックや東日本大震災があったのは不運だったが、その対応でも落第だ。
円高やデフレが悪いと
思っていなかったのでは
リーマンショック後の超円高を招いたところに、それが端的に表れている。
当時、各国の中央銀行は失業率の上昇を恐れて、大幅な金融緩和を行ったが、日銀はしばらくはそれをやらなかった。その結果、円が各国通貨に比べて相対的に少なくなったので、その相対希少性から猛烈な円高になった。
これで苦しんだ企業は多かった。
しかし、その「無策」を反省するでもなく、「(インフレ格差を差し引いて修正した)実質為替レートで見たら、大した円高ではないので、それを言うとたたかれるから放置した」という趣旨の記述が著作中にある。
この記述は、逆に言えば、名目的な円高は大したことないのになぜ大騒ぎするのか、という彼の本心を告白しているようなものだ。
これには驚いた。変化の実質だけを見て、デフレで実質所得が高くなるからいいだろうという、典型的な「デフレ思考」である。その当時、円高に苦しんだ人は、この白川氏の本音を聞いてどう思うだろうか。
デフレも円高も、円が、それぞれモノや他国の通貨量に対して相対的な過少状況から引き起こされる現象である。相対的に過少なので、通貨の価値が高くなり、その裏腹にモノの価値が下がりデフレになり、円の価値が高くなって円高になるというわけだ。
それが怖いのは雇用が失われるからだが、この人には金融政策によって雇用を確保できるという考えがなく、またデフレや円高が悪いものと思っていなかったのだろう。
人口減少は
デフレの原因ではない
このほかにも、あきれたことはある。人口減少がデフレに影響しているという「デフレ人口原因説」を、著作で長々と書いていたことだ。
この論は、5年ほど前には一世を風靡したが、今でも人口減少は続いている一方で、デフレは脱却しつつある。だからもう否定されているものだ。
日銀総裁時代にも、白川氏は「デフレ人口原因説」を展開したが、その時も、主張は破綻していた。
2012年 5月30日、日銀の国際シンポジウムでの挨拶、「人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス ―日本の経験から―」で、同じ見解を示した。
その時に、資料として示された「先進国の生産年齢人口変化率とインフレ率の関係」(図表14)のデータについて、筆者は、「国別データの取り方を恣意的にしたもので捏造レベルの問題だ」と、月刊誌『FACTA』2012年7月号で、恣意的な方法を含めて批判したことがある。
この図表は、今回の著作では出ていないが、それでも同じような見解が書かれている。
「日本銀行はデフレは低成長の原因ではなく、結果であると反論した。この点で興味深いのは先進国における(人口一人当たりの)潜在成長率と予想物価上昇率の関係である(注8)。これを見ると、両者の間には明確な正の相関関係が観察される(図10−5)。」(341ページより引用)と。
だが筆者が確認したところでは、注8で引用されている「マネーと成長期待―物価の変動メカニズムを巡って」と題した日本銀行のワーキングペーパーには、「米英欧では、中長期の予想インフレ率と潜在成長率が無相関」とされている。
白川氏の著作の記述は間違っている。著作では、まだ懲りずに、デフレの「人口原因説」を展開しているが、その論拠は怪しいものだ。
また、白川氏は日本財政についても、危機であると本当に信じ込んでいる。これも著作に書かれているが、筆者には、その見解は信じがたい(2015年2月5日付「国の債務超過490兆円を意外と簡単に減らす方法」)。
「統合政府論」で見れば、日本の財政は問題がないことは、先週の本コラムでも言及したが、今ではIMFでもそういったことを言い始めている。
いずれにしても、白川氏はまぎれもない「消費増税積極論者」であるようだ。
だが、冒頭に述べたように、2%のインフレ目標が達成できなかったのは消費増税が原因である。
白川氏が仮に2014年4月に日銀総裁を続けていたら、日本経済はもっとひどいことになっていただろう。
というのは、金融政策で2%物価目標は達成できないというくらいだから、金融緩和は「手抜き」だろう。したがって当然のように物価上昇率は2%には届かず、その上、消費増税が行われるので、デフレに逆戻りしただろう。
こうしてみていると、白川氏はまさに「デフレ大好き人間」なのだと、妙に納得してしまう。
(嘉悦大学教授 高橋洋一)
https://diamond.jp/articles/-/183968
2018年11月1日 野口悠紀雄 :早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
働く高齢者を増やせば将来の労働力不足はどの程度緩和できるか
これからの高齢者は、年金に頼るのでなく働くことが必要だと、前回(10月25日付け)コラム「年金だけでは老後の生活を賄えない、対処の最善策は就労年数の延長だ」で書いた。
高齢者が働くことは、経済全体の労働力不足解消の観点からも期待されている。企業は、人手不足対策として、高齢者の雇用を考えているのだろう。
しかし、以下では、高齢者の就労を促進しても、将来の労働力不足は解消しないことを示す。
日本の労働力人口は、
2040年までに1300万人減少する
人口の高齢化は、労働人口の減少をもたらす。以下では、将来の労働力人口がどのようになるかを推計する。
最初に、全体の姿の概要をつかんでおこう。
「労働力調査」によると、2015年における年齢階級別の人口、労働力、人口に対する労働人口の割合を示す労働力率は、図表1のとおりだ。また、年齢階層別人口の推移は図表2のとおりだ。
◆図表1:年齢階級別の人口、労働力、労働力率(2015年)
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◆図表2:年齢階層別人口の推移
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15年から40年までに、15〜64歳人口が約1750万人減る。したがって、仮に労働力率が76.1%のままだとすれば、労働力人口は1300万人強減る。働く高齢者が増えるので、ある程度は補えるが、労働力の減少は避けられない。
60年までには、15〜64歳人口が約2900万人減る。したがって、労働力人口は2200万人減る。これに対処するのはきわめて困難だ。
以上のことを、もう少し正確に計算すれば、つぎのとおりだ。
将来における年齢別の労働力率が、図表1に示した15年の数字のままで変わらないと仮定しよう。
将来人口の値(図表2)を用いて労働力人口を推計すると、図表3のようになる。
◆図表3:将来の労働力人口(年齢別労働力率不変の場合)
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15年との比較では、40年に約1300万人減り、60年には約2300万人減少する。
15年の製造業の就業者が約1000万人であることと比較すると、これがきわめて大きな変化だということが分かる。
日本経済は、深刻な労働力不足経済に突入するのだ。
なお、将来の労働力人口に関する推計としては、いくつものものがある。
内閣府「労働力人口と今後の経済成長について」(平成26年3月)によれば、13年における労働力人口は6577万人だが、30年には894万人減って5683万人になる(現状維持ケース)。
私は、『2040年問題』(ダイヤモンド社、2015年)で、内閣府の数字と将来人口推計の計数を基にして、労働力人口の推計を行なった。
その結果は、25年で6059万人、30年で5834万人、40年で5156万人、50年で4530万人というものだ。上で述べた数字は、これとほぼ同じものだ。
日本の労働力率は欧米に比べて低く
時系列的にも下がってきた
人口全体が減少するから、労働力の絶対数が減少しても大きな問題にはならないと考えられるかもしれない。
しかし、そうではない。なぜなら、図表3に見るように、労働力率も低下するからだ。
他方で、労働力に対する需要は増加する。とくに、医療介護の分野では、高齢者の増加に伴って労働力に対する需要が増加する。したがって、いまのままでは、将来の日本で、労働の需給が著しくタイトになるのである。
日本の労働力率は、欧米諸国に比べて低い。
15歳以上について見ると、2016年で、アメリカ62.8%、ドイツ61.0%、スウェーデン72.1%なのに対して、日本は60.0%となっている。
日本の労働人口比率は、図表4に示すように、13年頃までは、時系列的に見ても下がってきた。その結果、1995年に63.4%だったものが、2017年に60.5%になっている。
◆図表4:労働力率の推移
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ただし、年齢別に見ると、25歳から64歳までのどの年齢階層でも、労働力率はこの期間に上昇している。
したがって、経済全体の労働力率の低下は、人口の年齢別比率の変化によると考えられる(注)。
高齢化が進めば、経済全体の労働力率はさらに低下する。図表3に示すように、年齢別労働力率が不変の場合には、経済全体の労働力率は40年には54.0%、60年には52.0%と、かなりの低水準になると予想される。
しかし、それなら、主として高齢者の労働力率が上昇するはずだが、実際には、どの年齢階層を見ても、13年以降、労働力率が上昇している。
むしろ、それまで低下を続けていた15〜19歳、20〜24歳の労働力率が上昇したことの影響が大きい。
(注)労働力率は、2013年から上昇している。これは年金支給開始年齢引き上げの影響であろうか?
高齢者の労働力率を高めても、
労働力不足は解消できない
将来における労働力需給逼迫に対処するために、高齢者の労働力率を高めることが考えられる。
65歳以上人口は、現在、約3500万人いる(図表1)。それが、2040年には約4000万人になる(図表2)。
ところで、この階層の労働力率は、いまは約22%だ。これを約10%ポイント引き上げることができれば、40年における労働力は、図表3で示したものよりは400万人程度増えることになるだろう。
このことをより正確に評価するため、図表1、2の計数を用い、高齢者の労働力率としていくつかの値を想定して、シミュレーションを行なった。
そのうち、2つのケースについての結果は、以下のとおりだ。
(1)65歳以上の労働力率を5割引き上げ
まず、65歳以上の労働力率を5割引き上げて、65〜69歳は64.1%、70歳以上は20.8%になる場合を考える。
結果は、図表5の(1)のとおりだ。
◆図表5:(1)高齢者の労働力率引き上げ
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労働力率不変の場合(図表3)に比べると、労働力は、40年、60年で400万人程度増える。したがって、労働力不足は、ある程度は緩和される。
しかし、そうであっても、15年と比べた労働力は、40年には約880万人減り、60年には約2000万人減少となる。また、経済全体の労働力率も、40年に58.1%、60年に56.1%となって、現在よりかなり低下する。
こうしたことを見れば、労働力不足問題が解消されたとは言えない。
(2)労働力率を6割に保てるように、高齢者の労働化率を引き上げる
つぎに、経済全体の労働力率を約6割に保てるように、高齢者の労働化率を引き上げる場合を考える。
労働力率を65〜69歳は74.8%とし、70歳以上は34.7%とすれば、これが達成できる。
これは、65〜69歳が現在の15〜64歳と同じように働き、70歳以上も約3人に1人が働くというものだ。
現実にこれを実現するのはかなり無理かもしれないが、経済全体の労働力低下を高齢者の就業促進だけで実現しようとすれば、このようなことが必要になるのだ。
この場合の結果は、図表5の(2)のとおりだ。
◆図表5:(2)全体の労働力を60%以上に保つよう高齢者労働力率を引き上げ
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労働力率不変の場合(図表3)に比べると、労働力は、40年、60年で800万人から900万人程度増える。したがって、労働力不足は、かなりの程度、緩和される。
しかし、それでも、60年で労働力が15年より1400万人以上減ることは避けられない。高齢者の就労を増やすだけでは、若年者人口の減少には対処できないのだ。
高齢者の就労促進は、高齢者の所得や生きがいの確保のために重要なことだ。しかし、経済全体としての労働力確保の観点からは、これに頼り切ることはできない。
労働力確保の観点から重要なのは、つぎに述べる女性労働力率の引き上げと、外国人労働者の活用だ。
女性の労働力率がスウェーデン並みになれば
労働力が約1000万人増加
労働力不足に対応することが目的であれば、女性の労働力率を高めるほうが効果はある。
2016年での15歳以上の女性の労働力率を見ると、日本は50.3%であり、欧米諸国に比べて低い。欧米では、アメリカが56.8%、スウェーデンが69.7%、ドイツが55.6%となっている。
そこで、女性の15歳以上労働力率を70%に引き上げたものとしよう。
15歳以上の女性人口はほぼ4000〜5000万人だから、これによって、労働力人口は約800〜1000万人増えるはずだ。
人口推計の値を用いて正確に計算した結果は、図表6に示すとおりだ。
労働力率が50.3%にとどまる場合との差は、40年で975万人、60年で821万人になる。
労働力がこれだけ増えれば、全体の労働力率も上昇する。40年で63.9%、60年で61.8%になる。こうして、経済全体としての労働力率の落ち込みを回避することができる。
ただし、子育て期の女性の労働力率を高めるには、子育て支援などの政策が必要だ。それは、決して容易な課題ではない。
したがって、高齢者と女性の労働力率の引き上げだけに頼るのでなく、それ以外の方策も考えなければならない。
第1は、新しい技術(とくにAI)の導入によって生産性を高めることだ。 第2は、外国人労働者の活用と移民の拡大である。これら問題を日本は避けて通ることができない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
https://diamond.jp/articles/-/183967
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