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免震不正のKYBが「2年で交換」の無謀、ゼネコンは早くも白旗
https://diamond.jp/articles/-/183567
2018.10.29 週刊ダイヤモンド編集部
10月19日の会見で謝罪と説明を行ったKYBの齋藤圭介取締役専務執行役員(右)と子会社のカヤバシステムマシナリーの廣門茂喜社長。Photo by Tomomi Matsuno
「現実問題、やりきれないよ」。ゼネコン幹部は、油圧機器大手KYBによる検査データの改ざんが発覚した建築用免震・制振用装置の交換工事に早くも白旗を揚げる。
KYBは2020年9月までの約2年間、装置の新規受注を停止し、基準に適合しない製品をその間に全て交換する方針を決めた。
同社は免震・制振用装置で国内シェア45%(17年度売上高ベース)を占め、納入先のゼネコンは25社前後に及ぶ。国の認定基準や顧客との契約の基準を満たさなかったり、改ざんの疑いがある装置を設置された物件の数は全国で約1000件、製品数にして約1万個に上る。
建物の地下に設置される免震用は比較的交換しやすいが、各階の壁の中に埋め込まれた制振用の交換は容易ではない。設置個所の壁を取り壊すといった手間のかかる工事が発生する。
その上、高級高層マンションなどに設置されるケースが多く、交換のために装置を運び込むのにも骨が折れる。出来上がった建物の屋上に装置を引き上げるクレーンを設置するのは難しい。となると、住宅用エレベーターで運ぶ手段が考えられるが、長さおよそ1〜3メートルの棒状の交換用装置を積み込むには、エレベーターの壁を外す必要も出てこよう。
とび職の確保も難儀
20年の東京五輪・パラリンピックに向けて案件が詰まった建設業界では、人手不足が深刻。故に「交換作業をする鉄鋼とび職人は、日当5万〜10万円くらいの好条件でないと引き受けてくれないかも」と不正製品を納入した物件を抱えるゼネコン幹部は頭を悩ます。
交換工事のコストは膨大になること必至だ。床面積900平方メートルのタワーマンションの例を挙げれば、制振用装置はワンフロアに10本程度が使われている。交換は1本につき装置代や工賃で100万〜数百万円、1棟丸ごと交換すると単純計算で億円単位になる。工期は各階につき1週間はかかるとみられ、工期中に住民がホテルなどへ滞在するコストものしかかる。
不正装置であっても震度7程度の地震では倒壊の恐れがないことは確認済みだが、建物の所有者や住人からの早急な交換要請は必至。それに応えずに信頼を回復できるはずもない。2年弱で全て交換すると言う他ないのだろう。
しかし、協力を求められるゼネコン側にすれば、明らかに非現実的な計画。ずるずると交換終了が遅れる可能性が高く、まさか「『データを再計算したら基準内だった』などとして、対象の件数を減らす裏業を繰り出すんだろうか」と訝るゼネコン幹部も。もちろん、問題を矮小化したりごまかしたりすることがあれば、信頼度はさらに落ちる。装置の検査データ改ざん発覚は他社にも広がるが、不正の代償はかくも大きい。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松野友美)
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