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鳥貴族、日銀総裁が絶賛した「やきとり18円値上げ」で、悪夢の連続2ケタ客数減少→株価5割下落
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25265.html
2018.10.28 文=編集部 Business Journal
鳥貴族の店舗(「wikipedia」より)
「値上げ=客離れ」の法則は簡単に打ち破れない。カジュアル衣料の“勝ち組”であったユニクロが、2度にわたる値上げで客離れを起こし、苦戦に陥ったことは記憶に新しい。株式市場がもっとも注目したのは、焼き鳥チェーン、鳥貴族の値上げの成否だった。
黒田東彦・日本銀行総裁が、社名こそはっきり出さなかったが、鳥貴族の“値上げ力”の高さを称賛したことがあった。そこで、値上げによって鳥貴族の客足がどう変遷したのかを検証してみた。
鳥貴族は2017年10月、焼き鳥などの価格を税抜き280円から298円に引き上げた。値上げの理由は、人手不足によるアルバイトなどの人件費の上昇と野菜の高騰だった。その後、業績への影響はどうだったのか。結論を言えば、客離れは会社側の想定を超えていた。
【月次動向】(前年同月比)
既存店売上高
17年8月 ▼0.5%
9月 1.9%
10月 ▼3.8%
11月 5.3%
12月 0.4%
18年1月 ▼3.6%
2月 ▼6.0%
3月 ▼2.8%
4月 ▼4.3%
5月 ▼8.8%
6月 ▼9.0%
7月 ▼11.2%
18年7月決算の累計 ▼3.7%
客数
17年8月 1.5%
9月 3.4%
10月 ▼7.0%
11月 0.5%
12月 ▼2.1%
18年1月 ▼6.2%
2月 ▼8.0%
3月 ▼4.7%
4月 ▼6.2%
5月 ▼11.4%
6月 ▼11.4%
7月 ▼14.2%
18年7月決算の累計 ▼5.7%
客単価
17年8月 ▼2.0%
9月 ▼1.4%
10月 3.5%
11月 4.7%
12月 2.6%
18年1月 2.8%
2月 2.2%
3月 2.1%
4月 2.1%
5月 2.9%
6月 2.7%
7月 3.5%
18年7月決算の累計 2.1%
(資料:鳥貴族月次報告)
18年7月期決算の既存店売上高は前年比3.7%減、客数は5.7%減、客単価は2.1%増だった。客数の落ち込みを値上げによる客単価の上昇で吸収し、既存店売り上げを増やすというシナリオだったが、その思惑が見事に外れた。
客数は値上げ後、前年同月比で実績割れが続き、18年5月からは3カ月連続で2ケタのマイナスとなった。
1品18円の値上げといっても、ファミリー層は支払いの絶対額が増えることにナーバスになる。家族連れでの利用が多い40代のファミリー層の来客数は15%以上落ち込んだ。
コアターゲット層である20〜30代の会社員も減り、学生は10%減った。大幅に増えたのは外国人で、20%以上の増加。鳥貴族は外国人観光客が訪れる人気焼き鳥店になったのだ。
地域別での既存店の売上高は、本拠地の関西圏が0.1%増と健闘した。一方、関東圏は5.4%の減少。関東圏の利用客のほうが価格にシビアだった。
素人考えだと280円から298円の値上げは6.4%にすぎないということになるが、サービス業はこうした単純な発想では勝ち抜けない。
客数の落ち込みを、客単価の上昇で吸収するという会社側の当初のシナリオは、アルコール類の注文が減ったことで砂上の楼閣となってしまった。結局、客単価は2.1%増にとどまり、客数の落ち込みを埋めるには全然足りない。客数は大きく落ち込み、客単価の伸びは小さかった。
鳥貴族の当初の想定が甘かったということかもしれない。
■純利益は計画の半分
鳥貴族の18年7月期の単独決算の売上高は前期比15.8%増の339億円、営業利益は同15.4%増の16億円、純利益は同31.6%減の6億6200万円だった。
期初には売上高369億円、営業利益23億円、純利益は13億3900万円を予想していたのだから、純利益にいたっては計画の半分という惨状を呈した。
「『値上げで既存店売上高の引き上げを狙ったが、思うようにならなかった』。9月20日に東京都内で開かれた決算説明会で、大倉忠司社長はこう話した。ちょうど1年前、『品質やサービスを維持・強化すればお客様は離れないはず』と値上げについて自信を持って話していたが、主に価格転嫁を理由にした値上げが通用しないという現状が浮き彫りになった」(9月21日付日本経済新聞記事より)
単純な一律値上げは、会社側の想定以上に消費者の拒絶反応を招くということだ。大倉社長は価格政策の失敗を認めざるを得なかった。
これに株式市場が敏感に反応した。決算発表翌日の9月13日、鳥貴族の株価は一時、年初来安値の2010円に下落した。年初来高値(1月9日)の3910円から5割弱の下げだ。値上げ戦略失敗のツケは大きかった。ちなみに10月16日の終値は2178円(28円安)。安値圏から脱け出せていない。
19年7月期がスタートを切ったが、依然として既存店売上高は8月がマイナス5.6%、9月は2ケタ減のマイナス13.1%。客数は8月が9.2%マイナス、9月が15.3%減だった。9月の落ち込みがひどい。客単価は8月4.0%、9月2.5%のプラスだが、店に来る客数の減少に比べて客単価の伸びは低かった。
台風21号の影響で関西及び東海エリアの直営店全店が9月4日に臨時休業しており、大阪・豊中店は9月4日を含み3営業日休業した。また台風24号の影響により直営店全店が9月30日に臨時休業したことが成績不振の一因となった。鳥貴族では、2回の臨時休業により(既存店売り上げや客数で)4.2ポイント程度のマイナスの影響が出たと推計している。
■日本マクドナルドは値上げしても既存店売り上げは8.9%増
日本マクドナルドホールディングスの18年8月の既存店売り上げは対前年同月比2.7%増となり、対前年同月比で33カ月連続してプラスとなった。
2014〜15年に起こした鶏肉の偽装や異物混入の影響で、一時は消費者の信用を失い、業績が大きく落ち込んだ。その後は、付加価値を訴える作戦で客数も増加。業績はV字回復を果たした。
マックは、一律値上げはしない。今年3月、午後5時以降、定番バーガーのパティがプラス100円で2倍になる「夜マック」を始めた。ディナー需要を新たに開拓したことで、18年4〜6月の既存店売上高は前年同月比8.9%増と大きく伸びた。“お値頃感”を前面に出した営業戦略を、マックのファンは支持している。
19年10月、消費税が10%へと上がる予定だ。外食業界も2%分は否応なしに値上げに踏み切らざるを得ない。鳥貴族流の一律値上げか、マック流の新ブランドを構築しての値上げか。各社、知恵の絞りどころとなる。
(文=編集部)
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