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相続のルールが激変! 新設「配偶者居住権」で大損する人たち 知らないうちにルールがどんどん変わる
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56404
2018.10.27 週刊現代 :現代ビジネス
新設「配偶者居住権」には、こんな落とし穴があった
世田谷区に一戸建てを持つ大場浩之さん(76歳・仮名)は、妻(70歳)と2人暮らしだ。長男(50歳)一家は都心のマンションで別居している。
大場さんは、1年前に早期がんを宣告されてからというものの、万一自分が死んだとき、残されることになる妻のことだけが気がかりだという。
というのも、妻は長男の嫁との折り合いが悪く、かねてより行き来が少なくなっていたからだ。考えたくないが、遺産相続は、現実的な大問題だ。
資産は自宅(評価額約2000万円)、さらに預金をはじめとした金融資産が約1000万円の計約3000万円である。
大場さんが亡くなれば、法定相続分では妻と長男で、半分の1500万円ずつ相続することになる。現状のルールでは、2つの方法しか妻には残されていない。
@家に住み続けるかわりに、500万円を別途調達し、長男に支払う
A家を売却し、現金を長男とのあいだで分割する
妻自身の資産は少なく、@は不可能だ。とすれば、家を売却するしかない。
この場合、妻は現金を1500万円受け取ることができるが、住み慣れた家を離れたくはない。嫁との折り合いが悪い以上、息子の家での同居は難しいだろう。老後資金も不安だ……。
今国会で成立した、相続制度見直しの民法改正で、大場さんの悩みは、解決されるかもしれない。大場さんの妻は「配偶者居住権」という権利を持てることになるからだ。
配偶者居住権を使えば、子が自宅を相続しても、妻は一生住み続けることができる。
それどころか、仮に居住権の評価額が1000万円とすると、現預金1000万円のうち、半分の500万円も妻のものとすることができるというのである(ページ下の図参照)。
だが――この「配偶者居住権」を行使すると、思わぬ落とし穴がある。
以下はシミュレーションだ。大場さんは、新制度を使い、妻に居住権を与えることを遺言書に明記し、'20年、東京五輪の年に亡くなった。
それから1年。残念ながら残された妻と長男の関係はますます悪化してしまった。長男がことあるごとに母親にこう愚痴ったのである。
「この家を売ることができていれば、子どもの大学進学費にあてることができたのに。俺の所有権の1000万円分はもらえないままじゃないか。母さんが独り占めするなんて、ずるいよ」
肩身が狭いなんてものじゃない。冷たい嫁の視線を感じながら、妻は不安を抱えた生活を余儀なくされる。この先、孤独な一人暮らしを続け、誰が自身の介護を引き受けてくれるのか――。
相続に詳しい夢相続代表・曽根恵子氏が言う。
「これまで、夫の遺産を、妻と子どもたちが相続しようとすると、法定通りの相続では問題が起こりがちでした。家の売却を迫られたり、家を相続したとしても現金が残らず、妻が困窮したりというケースです。
これを是正しようとしたのが、配偶者居住権ですが、実態に即して考えると、妻を優遇しすぎて、かえって妻自身や子どもたちに負担がかかりそうなのです」
住めない家に相続税、固定資産税を支払う人たち…
2000万円相当の自宅は、たとえば1000万円の居住権と、1000万円の所有権に分割される。前者を妻が、後者を子がとることになる。
「つまり配偶者居住権を設定すれば、その分だけ妻が受け取る現預金が増えます。そのため、問題を抱えている家族の場合は、トラブルを招きます」と語るのは、アレース・ファミリーオフィス代表の江幡吉昭氏だ。
一番揉めやすいのが、「再婚した父」のケース。「後妻」が配偶者居住権を主張したときだ。
「血の繋がらない『後妻と先妻の子たち』のトラブルはより深刻になりそうです」(フジ相続税理士法人代表社員・原誠氏)
埼玉県に住む吉田真二さん(68歳・仮名)は、長年連れ添って苦労を共にした先妻に旅立たれ、5年前、再婚した。実は、娘たちは若い「後妻」を快く思っていない。父親の財産の半分を「アカの他人」に取られてしまいかねないからだ。
実際に吉田さんの死後、「居住権」を後妻が主張すれば、どうなるのか。
「後妻は終身、その家に住み続けることができます。本当の親子なら、同居の選択肢もありますが、後妻は基本的に血のつながりのない他人。
子どもたちは相続した資産の所有権を持っているのに、住むことも売ることもできなくなってしまう。この制度は、妻に非常に有利に働く」(前出・原氏)
相続税まで支払って所有権を得ても、そこに住むことはできない。しかも、負担はそれだけにとどまらない。弁護士で南青山M's法律会計事務所の眞鍋淳也氏が言う。
「固定資産税です。改正の細則は未知数ですが、居住権者ではなく、所有権者に対してかかる可能性が高い。子どもは、住んでもいない家の所有権のために、税金を負担することになる」
仮に妻が亡くなっても、さらに負担が乗ってくる。
「自宅の居住権を相続することになりますが、その評価額分の相続税が子に課税される可能性があります」(同)
一連の問題は、決して「後妻」には限らない。妻が居住権を得たとき、所有権を得た子たち全員が持ってしまうリスクだ。
配偶者居住権で、妻は得する。だが子どもたちはもらえるおカネは減り、家にも住めず、さらに税金負担も増える――。
さらに、血みどろの争続≠誘発しかねない。前出の江幡氏が挙げるケースはこうだ。
「2000万円の自宅マンションと、3000万円の預貯金の計5000万円を、妻と長男、次男の3人で遺産分割する例で考えましょう。
妻(1/2を相続)の配偶者居住権が1000万円だと想定し、長男(1/4を相続)が所有権の1000万円分を相続したとする。すると長男の現金は250万円、次男の現金は1250万円になる。
長男が『母親が住み続けることは変わらないのに、弟ばかり現金の取り分が増えるのはおかしい。自分だけが損している』と遺産分割時に主張しだしたら、揉めに揉める」
前出の眞鍋氏も言う。
「実は兄弟が自宅を巡って争うというのが、最も典型的な争続≠フパターンです。居住権にこだわって、自宅を残そうとすると、かえってその後の子どもたちの争いのタネにもなりかねません」
無理して「配偶者居住権」を選ぶ必要はないんです
ここまで述べてきたとおり、居住権は「妻」には有利で、子どもに不利だ。だからこそ、友好な親子関係ができているなら、妻が「居住権」を持つことにメリットは多い。
とりわけ、夫が遺した資産に現金が少なく、妻が遺族年金で暮らすだけならば、民法改正の恩恵は大きいだろう。さらに子と同居しているならば、生活費や住宅にかかる費用もかからず、その死後はスムーズに子どものものとなる。
先の例のように、より多くの金融資産を相続できる。高齢になるとかかりつけ医や気のいい友達が自宅の近くにいることから、自宅を離れたくない人も多い。そういう妻にとっては所有権よりも居住権だろう。
特に、母より子が先に亡くなってしまうケースまで想定するとしたら、居住権の設定が有利だ。
「こんな例もありました。母親思いの息子さんが、老後の面倒をすべてみるからと、遺産をすべて息子が相続し、母親と一緒に暮らし始めました。
ところが息子さんのほうが先立ってしまった。息子さんの所有権はその妻と子どもに相続されるので、母親はその家に住む権利を一切失ってしまったのです。
嫁との関係が一気に悪化し、家を出て行かざるを得なくなった。居住権が設定できれば、追い出されることもありません」(前出・原氏)
一方、居住権には前述したような「争続」リスクがつきまとう。
「居住権は、死後の遺産分割協議でも設定できるが、生前に遺言を書いておけば、表だって揉めるリスクは減ります。設定するなら、生前に遺言を書いておくことを勧めます」(前出・江幡氏)
専門家たちは、無理に居住権を選ぶ必要はなく、「生前贈与」や「遺言」によって、所有権を妻が確保するほうがメリットは多いと言う。
家が遺産分割協議のトラブルになる理由は、残すか、売るかしかなく、分割することができないからだ。ならば、遺産分割の対象にしなければよいという選択肢を考えてみてはいかがだろうか。
「週刊現代」2018年7月14日号より
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