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トヨタ・ソフトバンク連合は本当にグーグル陣営に対抗できるか
https://diamond.jp/articles/-/183544
2018.10.27 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
写真はイメージです Photo:PIXTA
皆さん、こんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクが戦略的提携を発表しました。この時の会見で、トヨタ自動車の豊田章男社長は提携の理由として、「自動車業界は100年に1度の大変革期を迎えている。競争の相手もルールも大きく変化している。変化をもたらしているのはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)だ。車は社会とつながり社会システムの一部になる」と説明しました。
電動化や自動運転などが進んでいく点については、見方が一致していますが、技術的な課題などからそのスピードについては、見方が分かれており、今後の関連各社の取り組みに注目が集まります。そこで今回は、主に電動化や自動運転を中心に加速する、技術開発競争や提携の動きなどを見ていきたいと思います。
電気自動車(EV)へのシフト加速は、
世界的な環境規制強化などが背景
電気自動車(EV)へのシフトが加速し始めた要因は、地球温暖化への対応等から各国の燃費規制が一層強化し始めたことにあります。中国の大都市は大気汚染の被害が深刻で、大気汚染対策と自動車強国実現の2つの国家目標を掲げ、国策として新エネルギー車(EV、プラグインハイブリッド(PHEV)、燃料電池車)の製造と普及を進めています。
2019年に導入される「NEV(新エネルギー車)規制」により、自動車メーカーは中国での生産・輸入量に応じて一定比率のNEVを製造販売しなければなりません。購入補助金やナンバープレートの交付などで新エネ車は優遇されます。2020年には300万台、2030年には1900万台の販売台数目標が設定されています。
米国ではカリフォルニア州政府などが、2018年から自動車各社にZEV(ゼロエミッションビークル)の販売比率を年々高めるよう義務付けたこと、イギリス、フランスでは2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する政策を打ち出したなどもEV化を加速しました。
欧州の方針転換などもEVシフトを加速
今後はハイブリッド、プラグインハイブリッドからEVへ
EV加速の背景には、各国自動車メーカーの事情もあります。当初欧州の多くのディーゼル車メーカーはEVにはあまり積極的とは言えませんでしたが、2015年の米国におけるフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正を機に、複雑かつ高コストの排気後処理装置を必要とするディーゼル車に見切りをつけ、EVシフトにかじを切りました。
中国がEV導入に力を入れるのには、仕組みが複雑で高度なノウハウが必要なガソリン自動車やハイブリッドでは日本勢に追いつけないため、EVで主導権を握ろうとの思惑もあります。
EV、燃料電池車には克服しなくてはいけない技術面やコスト面などの課題があり、当面はハイブリッド、プラグインハイブリッドが中心とみられますが、各国当局の方針からEV、燃料電池車ヘのシフトは変わらないとみられます。
国内企業を見ると、日産自動車は「リーフ」を発売して、早い時点からEVへ注力してきました。トヨタ自動車は優位性のあるハイブリッド、プラグインハイブリッドに重点を置いてきましたが、EVへの取り組みも加速しています。
またトヨタ自動車は燃料電池車にも注力しています。燃料電池車は水素ステーションの建設がネックですが、力を入れている業務用での普及がうまくいけば、水素自動車の普及に弾みがつくかもしれません。ただし、世界的な取り組みを見ると、EVを最重点にしているメーカーが多数を占めています。
EVは電池とコストなどが課題
全固体電池への期待が高まる
今後のEVの普及の程度については、電池の性能向上と低コスト化にかかっています。現在使われているリチウムイオン電池は、従来はスマ−トフォン向けなど民生用が中心でしたが、車載向けが急増して現状では60%程度を占めます。日本企業は電池本体に加えて、部材も非鉄金属、化学企業などが素材技術を生かして、高い競争力を有しています。電気自動車の本格普及には、現在300km程度の走行距離を延長するため、エネルギー密度の引き上げ、低価格化、充電時間の短縮など性能向上を進めていく必要があります。
ただし今のリチウム電池の改良には限界があるとみられており、全固体電池が期待されています。2020年台前半の搭載を目指す全固体電池は、リチウムイオン電池の液体電解質を固体電解質にした電池です。全固体電池はコスト面など課題はありますが、電解質を可燃物である液体から固体に変えることで発火の可能性がなくなり安全性や小型化ができます。
軽量で高性能であることから、EVへの採用が見込まれており、トヨタ自動車など国内企業が中心に開発しています。EVでは米国企業などがやや先行、中国企業がシェアを拡大していますが、全固体電池の開発いかんでは、EVで国内企業が主導権を握る可能性もあります。
電気自動車の技術開発では、新規参入企業や異業種との競争が激しく、巨額な開発資金も必要です。開発負担とリスクを軽減するためホンダと米GMにみられるような提携は今後も続くと見られます。またEVは現状のガソリン車などと構造に大きな変化があり、自動車部品点数が減少することなどから、完成車、自動車部品企業に大きな影響を与えると見られています。
自動運転に情報技術(IT)や
エレクトロニクス企業などが参入
次に自動運転について見ていきたいと思います。自動運転車の技術の分類は国や業界団体などにより異なりますが、概ね5段階に分けられます。このうち、現在普及が進んでいるのはレベル1〜2に当たる先進運転支援システム(ADAS)です。レベル3以上については、限定された場所や条件で運行されているのが現状です。今後の普及に向けては法制面の整備が必須であり、多方面で議論が重ねられています。
自動運転は、車両がみずから「認知」「判断」「制御」を行います。現状を認知するには、多様なセンサーやそれらの情報を瞬時に判断するテクノロジーが必要となります。このため、自動車企業に限らず、グーグルなどの情報技術(IT)やエレクトロニクス企業などが参入しています。業界標準を握った企業に利益が集中する可能性があるため、激しい開発競争と買収・提携などが繰り広げられています。
政府の後押しを受け、
中国で自動運転車の取り組みが加速
2017年に独アウディが市販モデルとして世界初となるレベル3に当たる自動運転技術を搭載した車種を発表しました。この技術は、自動車専用道路上で一定以下のスピードの下、ハンドルから手を放した状態で運転が可能となるものです。
そして、ここにきて中国企業が存在感を増してきました。インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は、今年の7月4日、『自動運転車』のバス“アポロン”を実用化したと発表しました。中国政府の後押しや、自動運転技術を開発する 「アポロ計画」で世界企業と連携したことを追い風に、先頃世界で初めて「レベル4」の『自動運転車』を量産化したのです。
自動運転バス“アポロン”は、特定の場所での完全自動化運転である「レベル4」です。“アポロン”にはハンドルも運転席もなく、車内には客席しかありません。百度は中国企業のほか、フォードやホンダなど世界企業約100社と組み、自動運転技術の開発で連携しています。
日産、デンソー、ソニーなど
国内エレクトロニクス企業も取り組みを活発化
国内自動車メーカーの取り組みも活発化しており、例えば、日産自動車は、高速道路の同一車線を一定条件で自動走行する技術を「プロパイロット」と呼び、2016年に日本向けの主力ミニバン「セレナ」に初搭載しました。これは、高速道路で加減速とハンドル操作を支援する「レベル2」に相当します。2022年までに、自動運転技術の搭載車を現在の5車種から20車種に増やす予定です。
デンソーは車載エレクトロニクス分野で最も急成長を遂げている分野の一つであるADAS(先進運転支援システム)が伸長しています。ソニーは高い競争力を持つ画像センサーの自動運転向けへの開発強化を進めています。
国内で提携の動きが本格化
トヨタ系4社で新会社設立、米企業買収も
2018年に入り、自動運転で開発競争の加速化や提携など、自動運転への取り組みが世界的に一段と本格化してきました。主な動きを見ていくと、トヨタ自動車のグループ4社は8月27日、自動運転の普及に向けた統合EUC(電子制御ユニット)ソフトウエア開発を担う新会社を設立すると発表ました。 新会社を設立するのは電装品に強いデンソーと変速機などの駆動部品を手掛けるアイシン精機、ステアリングのジェイテクト、アドヴィックスのトヨタ系の4社です。各社の持つ技術を集約し自動運転車に必要なコア技術を提案できる体制を目指します。
トヨタ自動車は8月28日、米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズに5億ドルを出資すると発表しました。両社の技術を融合させて安全性能を高めた自動運転車両を開発し2021年にウーバーのライドシェアネットワークに導入する予定です。半導体大手のルネサスエレクトロニクスは8月31日、米同業のインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)買収を検討しているとの声明を発表しました。同社の半導体は、視覚や触覚など人の五感の役割を担い、自動運転車に搭載すれば、車の目や耳として強みを発揮する可能性を秘めています。
10月3日には、ホンダ、GM、GMの自動運転子会社の3社は無人ライドシェアサービス用車両開発での協業に合意したことを公表しました。
グーグルなどの陣営に対抗可能な
日本企業連合が誕生
10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクグループで新しい「モビリティサービス」の構築に向けて戦略的提携に合意し、両社で「モネ・テクノロジーズ」を設立することを発表しました。これにより、グーグルなどの陣営に対抗できる日本企業連合が誕生します。
トヨタ自動車が打ち出した「モビリティサービス・プラットフォーム」とは、ライドシェアやカーシェア、レンタカー、タクシーなどの「モビリティサービス」事業者に対し、トヨタが自社開発したシステムを提供するための、モビリティの管理・利用・分析など個別の機能を包括した仕組み全体のことを指します。「モビリティサービス」を支える車とITの融合は独ダイムラーや中国などではすでに進み始めており、両社の連携による巻き返しが期待されています。
今回の提携が注目されるのは、トヨタ自動車がKDDIの母体の一つである日本移動通信の設立にかかわり、今もKDDIの大株主である中で、ソフトバンクと提携したことです。これは開発競争が従来の関係を超えた総力戦の段階にきたことを意味します。移動中に料理を作って宅配するサービスや、移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどを届けることなどを目指す方向で、将来はグローバル市場への提供も視野に入れているとしています。
ソフトバンクグループは既に ライドシェア大手のウーバー、シンガポールのGrab や車載用に期待される半導体企業などに対し大規模に出資しています。今回の提携で両社の協調姿勢が強まれば、トヨタ自動車が自動車の開発、生産、販売、メンテナンスにおける強みや自動運転技術のソフト、ハード両面での技術力を実際の開発や商業化により活用しやすくなると考えられます。つまり、この提携によってモビリティサービスに積極投資してきたソフトバンクと協業する事で、グローバルに付加価値を生み出せる可能性が高かまったと見られます。
自動車産業は国内企業の競争力が高く、最大の輸出品です。また産業の裾野も広く、極めて重要な産業です。コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化などは国境を越えた企業連合の総力戦となっていくことでしょう。技術的な課題など残りますが、企業の対応いかんでは主役が交代する可能性もあり、今後も注目していく必要があると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
(三井住友アセットマネジメント 調査部 生永正則)
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