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メルカリ、上場直後の決算で赤字拡大・非公開…株価崩落、含み損恐れ株処分の動き
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25264.html
2018.10.27 文=編集部 Business Journal
山田進太郎会長兼最高経営責任者(写真:ロイター/アフロ)
6月19日に東証マザーズへ上場したフリマアプリのメルカリ株が、低空飛行を続けている。10月25日に公開価格(3000円)を下回り、2856円(前日比224円安)の上場来安値を更新した。新興市場で取り沙汰されていた公開価格割れが現実のものとなった。
公開価格を下回れば、IPO(新規上場)後に同社株を買ったすべての株主が含み損を抱えることになる。IPO直後が上場来高値で、その後は株価が下がり続ける「上場ゴール」との批判が出かねない状況となった。
「米国とスマホ決済への投資拡大で当面黒字化が見通せず、とても手が出せない」(新興市場に強い中堅証券会社のアナリスト)との警戒感が台頭し、これが株価崩落につながった。
メルカリは鳴り物入りで上場した。米国では企業価値が10億ドル(約1100億円)以上の未上場ベンチャー企業を、伝説の生き物にたとえて「ユニコーン」(一角獣)と呼ぶ。ユニコーン銘柄のメルカリの人気は高く、公募価格3000円に対し、上場初日に公開価格の2倍の6000円まで上昇し、これが上場来高値である。
8月9日、上場後初めて発表された2018年6月期連結決算の最終損益が70億円の赤字(前年同期は42億円の赤字)と、赤字幅が拡大したことから株価が急落した。その後、8月24日まで5営業日続落し、連日、上場来安値をつけた。
創業者の山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)は、「現在は短期的な利益を追う段階ではない」と投資家に理解を求めたが、理解が広がったとはいいがたい。売上高は前年同期比62%増の357億円、営業損益は44億円の赤字(同27億円の赤字)だった。国内のフリマアプリ事業の利用者は増えたものの、米国での事業拡大に伴う先行投資が重荷となった。
アナリスト向け説明会で、自信満々の経営陣はビジネスモデルや長期的な成長戦略を中心に語り、足元の業績や今期の見通しなどは後回しにした。IR資料でも、決算数字より人材の確保の推移を先に掲載するなど、「“いいとこ取り”の説明だった」(前出のアナリスト)という。
この結果、メルカリの先行きを一層、警戒する投資家が増え、機関投資家のなかには持ち株を処分するところもあったようだ。
アナリスト説明会で、黒字化の時期について問われた山田氏は「メルカリのゴールは短期的な収益を高めることではなく、中長期的に成長すること。いつまでに黒字化できるか明言できない。国内外で積極的に投資していく」と述べるにとどめた。
19年6月期については「合理的な業績予想は困難」として、売り上げ、利益、投資額を非開示とした。上場時点では18年6月期の売り上げの見通しは公表していたが、市場(マーケット)との対話は一歩も二歩も後退したことになる。
■次々にサービス開始し、「クイックに撤退」繰り返し
アプリ利用者から出展品を買い取る「メルカリNOW(ナウ)」は、8月20日にサービスを終了した。昨年11月末にサービスを開始したばかりだが、わずか9カ月で打ち止めとなった。ブランド品に特化した「メルカリメゾンズ」や、英会話レッスンや料理など個人のスキルを売り買いする「teacha(ティーチャ)」も8月中で終えた。ティーチャに至っては、今年4月に始めたばかりだ。5月に閉鎖した地域コミュニティーアプリ「メルカリアッテ」を含めると、3カ月の間に4つのサービスを休止したことになる。
小泉文明社長は「違うと思ったらクイックに撤退を判断する。経営者は有限なリソースをどこに充てたらいいかを考えるべきだ」と発言しているが、上場企業は常に株主の厳しい目があることを忘れてはならない。
メルカリは、新規事業の開発を担うソウゾウと、金融関連事業のメルペイを子会社に持つ。ソウゾウは、自転車シェアサービスなどの新事業を打ち出し、今秋には旅行関連事業に参入するが、オンライン系旅行業界には強豪がひしめく。
“ポストフリマ”の本命としているのが、スマホ決済サービスである。12月1日付で、メルカリの決済事業をメルペイに移管。年内にも決済サービスを始める。
スマホ決済には米アマゾン・ドット・コムの日本法人アマゾンジャパンが参入し、ヤフーや楽天も体制を強化。LINEもスマホ決済を次の柱に据えている。
「今後もチャンスのあるところにクイックに参入し、難しいとわかれば、クイックに撤退することを繰り返していく」
これがメルカリの経営の基本方針だが、スマホ決済は金融インフラだ。儲からないからといって、これまでのサービスのように、すぐに撤退できる分野ではない。
「中長期戦略としてメルカリのエコシステム(経済圏)を構築する」と意気込むが、メルカリ経済圏を構築するメドは、いつ立つのだろうか。
IPOで得た資金を注ぎ込んでいる米国市場で実績を残せるかも、現時点では不透明だ。10月25日に公開価格を一気に割り込んだことは、投資家がメルカリの経営の現状を、かなりシビアに見ている表れである。
(文=編集部)
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