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キャッシュレス「推進したい政府」と「躊躇する業者」のスレ違い 浅草の仲見世商店街にも聞いてみた
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58049
2018.10.21 我妻 弘崇 ライター 現代ビジネス
最大の観光地で実態を聞いてみる
今や、キャッシュレスにまつわるニュースを耳にしない日はないと言っていいほど、本格的に日本にもキャッシュレスの波が押し寄せている。
表面上、もっとも積極的な姿勢を見せているのは政府だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を前に、年々増加する訪日外国人旅行者数(インバウンド)を見越して、経済産業省は2025年までにキャッシュレス決済を、現状の倍である40%まで引き上げると謳っている。さらに、外国人が訪れる主要な観光地や宿泊施設では、2020年までに全面的にクレジットカードが使えるようにする方針だ。
しかし実際のところ、キャッシュレスの浸透度について、具体的な情報はやぶの中。中小規模の小売業や事業者がキャッシュレス決済を導入する際のコストについても、政府や経産省がどれだけそれを考慮し、実態を把握しているかも分かったものではない――。
実際のところ、事業者や、事業者と近い自治体の担当者は、キャッシュレスをどう考えているのか。話を聞いていくと、政府の方針との大いなるスレ違いが明らかになってきた。
浅草仲見世商店街〔PHOTO〕Gettyimages
2016年、訪日外国人旅行者数は2400万人を突破した。その内の830万人、つまり、インバウンドの実に3人に1人が訪れたエリアが、浅草、上野、谷中を擁する台東区だ。しかし、国内随一の観光スポットである台東区でさえ、キャッシュレス対応は簡単ではないという。
「キャッシュレスについては前向きに考えています。ただ、土地柄、そして日本で最も古い商店街の一つであることから、対面で現金によって決済をすることが、文化として深く根付いている。現金決済を軽視することはできない」
そう語るのは、浅草仲見世商店街振興組合の販売促進部クレジット委員会担当者。
雷門を入口として、浅草寺への参道として栄えてきた同商店街は、長さ約250mの間に、合計88の店舗が軒を連ねる。日本で最も外国人が訪れる観光スポットの一つだが、キャッシュレス対応に関しては慎重な姿勢を見せる。
「仲見世商店街はさまざまなお店が集っているため、お店によって事情が異なります。高価なものを扱っているお店であればクレジットカードをはじめとしたキャッシュレス対応が必要かもしれませんが、団子や人形焼を販売するようなお店や少額のお土産を揃える小売店は、手数料の問題などもあって簡単に導入はできません。
前向きに考えてはいるものの、強制的に全店舗へ号令をかけるような形で推進するようなことはできない」(販売促進部クレジット委員会担当者)
現在、同商店街でクレジットカード対応をしているお店は55店舗ほど。いまだ30店舗強は現金決済のみの扱いとなるが、「ここ10年でクレジットカードを導入したのは5店舗ほど」と担当者が話すように、インバウンドが加速度的に増加しているものの、「導入しない」という判断を選択しているお店は多いという。Alipay、WeChat Payに関しては、担当者が認識している限りで、一店舗のみが取り扱っているという状況だ。
「たしかに、『クレジットカードは使えますか?』と尋ねられることは少なくないですが、必要かどうかというと話は別です。(店頭にクレジットカードが使えるかどうかが分かる)アクセプタンスマークの表示も各店舗の判断に任せています。先述の通り、店舗によってケースが異なるため、全店舗が足並みを揃えてキャッシュレス対策をすることは難しいです」(販売促進部クレジット委員会担当者)
また、同じく台東区内にあるインバウンドが多数訪れる谷中銀座商店街も、「カードが使えなければ他の店に行きます、というような外国人の方はほぼいません。裏を返せば、クレジットカード導入で売り上げが向上するようなことはほとんどないと言えます」と語るように、特別なキャッシュレス対策はしていないという。
多様化、複雑化する決済手段が仇となる
となると気になるのが、これらの商店街を所轄する台東区の取り組みだ。行政が主導して、キャッシュレスを積極的に普及させるということはあるのだろうか?
「中小企業関連の事業助成金を管轄する産業振興事業団という区のセクションがあります。これまでインバウンド対策として、免税の書類を発行するソフトウェアや、パソコンやタブレットを導入するにあたっての補助事業はありましたが、現状、キャッシュレス関連の設備投資への補助事業はありません」
と、台東区の産業振興課が回答するように、区としてもキャッシュレスを後押しすることができないという。そこには、以下のような事情がある。
「補助事業を組むにあたっては、補助をする事業者の範囲や金額などスキームが必要となります。公費を投入する以上、できるだけ効果が見込めるものでないと難しい。しかし、現状は多様な非現金決済方法が登場しています。中小企業に対するIT機器の導入を促進していく必要性は認識しているので、国や東京都の動向を注視しているというのが、現状です」(台東区産業振興事業団)
決済の方法、サービスの種類が増えれば増えるほど、何が普及するのか分からなくなるため判断が難しくなるといった問題も浮き彫りになる。
過去、日本は非接触ICチップ「モバイルFeliCa ICチップ」を搭載したおサイフケータイを浸透させるも、非接触型ICチップ「TypeA/B」が国際規格になったことで後塵を拝し、ガラパゴス化の一途をたどった苦い経験を持つ。現在、ようやくQUICPayやiDが浸透しつつある中で、Origami Pay、 LINE Pay、楽天ペイ、Amazon Pay、PayPayといったQRコード決済が猛追の兆候を見せている。
となると、自治体としては懸念を抱いてしまうだろう。こうした複数の決済方法はどれも決定的にシェアを取りきれず、“FeliCaの二の舞”になるやもしれない。結果的に、静観……すなわち、補助事業を組むことに躊躇せざるを得なくなってしまう。
また、「決済方法が増え、複雑になることで、高齢の店主などは拒否反応を示します。若いアルバイトが対応するときは決済ができるのに、高齢の店主のときは決済ができないというように、サービスの差が生じる可能性もあるため、決済方法の複雑化は避けたい」と、前出・仲見世商店街の担当者が語るように、できるだけ簡単かつ単純な非現金決済に絞ることが求められる。
「設置し読み取るだけのQRコードであれば、導入コストの低さに加え、ITに抵抗感のあるお店に対しても障壁は低いと考えます。また、区としては災害時の停電なども考慮して、何が良いのか探っていかなくてはいけないと思っています」(台東区産業振興事業団)
「インバウンド増加に伴い、翻訳アプリの使い方の講習会を開いてほしいといった要望を伝えるなど、台東区と商店街は、地元を活性化したいという点で連携を取っています。ですが、キャッシュレスに関してはなかなか難しい。そもそも浅草界隈には、66の商店街があります。店舗だけではなく、各商店街によっても事業は異なるわけですから」(前出の仲見世商店街振興会の担当者)
迷走する政府のキャッシュレス対策
こういった諸々の問題に鑑みるに、国が主導し、6つの主要銀行が共同開発したスマートフォン用の決済アプリケーション「Swish」を普及させたスウェーデンの例に倣うか、アリババ(Alipay)、テンセント(WeChat Pay)という超巨大企業による寡占状態を作り出した中国の例に準ずるでもない限り、日本のキャッシュレスは“船頭多くして船山に上る”状態になりかねない。
「キャッシュレス決済を40%まで引き上げる」とアドバルーンをぶち上げるのは勝手だが、実際のところ政府は、大上段に振りかぶるだけ振りかぶって、気合(掛け声)だけで押し切ろうとしているのではないか? と疑いたくなってくる状況だ。
たしかに、今年8月、決済手段を普及させるために、新たにキャッシュレス決済を導入する企業を対象に、一定期間、減税する仕組みを検討するなど、後押しをしていないわけではない。しかし、それらはあくまで間接的な介入であり、直接的な支援には程遠い。
さらには、来年10月に予定されている消費税10%への引き上げ(軽減税率制度開始)時に、「クレジットカードなどを使って中小規模の店舗で買い物をした顧客に、増税分の2%をポイントで還元する対策を検討」という耳を疑うような方針を、政府が検討していると報じられている。
臨時措置ではあるものの、必要な端末の配備やポイント還元の費用を「公費で補助する」方向だという。しかしこれでは、還元されるポイントを扱う一部の企業が潤うだけで、キャッシュレスの普及に求められている一本化、簡略化につながるとは、到底思えない。そもそも、なぜポイントで還元されなければいけないのか? 公費でポイント分を企業に補助する暇があるなら、他にやることがあるのではないか。
現在、中小企業庁では、軽減税率制度への対応が必要となる中小企業・小規模事業者などに対して、複数税率対応POSレジやタブレットの導入や、受発注システムの改修などを行う際の経費の一部を補助する「軽減税率対策補助金」の制度を受け付けている。
国は、こうした消費税増税対策を行うついでに、その勢いでキャッシュレス推進も行おうとしている気がしてならない。しかし、どちらも事業者、消費者にとって、生活を左右する重大なテーマだ。混乱が起こらないよう、分けて考えてほしいものだ。
木更津市役所、木更津商工会議所、君津信用組合が取り組む電子地域通貨「アクアコイン」など、官民が一体となり独自にキャッシュレス化を推進している地域もある。しかし、その背景には地域経済や地銀の限界という一枚岩にならざるを得ない状況がある。
その一方で、2014年から2016年の2年間で、インバウンド数が57.8%増加という飛躍的な数字を誇る台東区ですら、キャッシュレス化への石橋を叩いて渡る姿勢を見せている。
乱立する決済方法、地域ごとに異なる事情、公費でポイント補助という首を傾げざるを得ない政策……どれだけ国が声高に「推進」を叫んだところで、このままではキャッシュレスの大号令は、掛け声倒れになってしまうのではないかと不安で仕方がない。
“決済の方法、サービスの種類が増えれば増えるほど、何が普及するのか分からなくなる” → キャッシュレス「推進したい政府」と「躊躇する業者」のスレ違い https://t.co/C6qvJ88OAI
— Kiyoshi (@Kiyoshileo) 2018年10月20日
キャッシュレス
— 木理 (@kirisuke_0522) 2018年10月21日
お店にとっては辛いかもやけど、消費者にしたらメリットが多い。
知ってるか知らないか、やるかやらないか。
塵も積もれば… / キャッシュレス「推進したい政府」と「躊躇する業者」のスレ違い (現代ビジネス[講談社] | 最新記事) #NewsPicks https://t.co/Mjhaj34lNb
現金だけでも問題ないから大丈夫!ではなく、キャッシュレスにすることで、より速くより快適により多くのお客様が買い物できる事をもっと考えた方がいい。
— seev (@shib_jp) 2018年10月21日
現金決済のままでいいというのは... #NewsPicks https://t.co/PKhAQnc0FI
世代交代で人が入れ替わるまでキツイでしょうねー / キャッシュレス「推進したい政府」と「躊躇する業者」のスレ違い (現代ビジネス[講談社] | 最新記事) #NewsPicks https://t.co/wfl5VUIaIb
— 魅惑のヒッチハイカーATSUSHI (@ATSUSHI51145568) 2018年10月21日
・キャッシュレス化のメリットが足りないよね
— 迷子のぷーさん(小林祐也) (@u8puuuuuuuuuuuu) 2018年10月21日
キャッシュレス化すると消費税減る位やんなきゃ.
脱税を減らせるならなおのこと.
・中国は既に80%のキャッシュレス化なのに,
日本は7年かけ... #NewsPicks https://t.co/LZG0pKZWsR
決済手数料がバカにできないから導入が難しいっていうのは間違いない。
— よしき@失敗の天才 (@yoshiki_blog) 2018年10月21日
決済手数料ではなく、ユーザーの決済データを活用したビジネスモデルだとやっぱり事業としては厳しいのかな〜
キャッシュレス「推進したい政府」と「躊躇する業者」のスレ違い https://t.co/7XOtvxfoUG #現代ビジネス
そもそも勘違いされがちだけど、キャッシュレス対応が進んだ中国やスウェーデンでも現金を一切使ってないわけではない。むしろほとんどの店でまだ現金は使える。一部の報道が誤解を与えてる気がするんだけど。https://t.co/2mq2GUOXGM
— Takefumi Nitta (@TakefumiNitta) 2018年10月21日
団子や人形焼を販売するようなお店や少額のお土産を揃える小売店は、手数料の問題などもあって簡単に導入はできません。https://t.co/uN0P40E858
— Kango Hayashi (@kangohayashi) 2018年10月21日
現金への安心感なんでしょう。
— ボルボる (@ZarkavaAge) 2018年10月21日
眼で見えるていう安心感。 / キャッシュレス「推進したい政府」と「躊躇する業者」のスレ違い (現代ビジネス[講談社] | 最新記事) #NewsPicks https://t.co/RxlrildtNN
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