トランプ政権の対中関税発動迫る、市場は中国テクノロジー株など注目Randall Jensen、Luke Kawa 2018年9月7日 12:14 JST • 人民元や新興国市場、米工業株の動きも投資家は注視 • 米国の小型株は好調さ目立つ−国内重視で貿易摩擦の影響軽微か 今週の市場で誰もが口にしたくはない重大な問題は米国と中国との通商対立だ。投資家は今後の展開に注目している。 トランプ米大統領は中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当への関税賦課計画について、意見公募期間が6日終了し次第、発動する構えだと伝えられている。実際に発動すれば、米国株式相場や新興国市場などを揺るがしかねず、米経済の長期的前進を幾分損なう恐れがある。 キングスビュー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏は電話インタビューで、「短期的に多少の波乱を招くだろう。貿易や関税の影響の一部を経済的観点から目にし始めたところだ。実際に発動されて中国が報復に出る場合、その影響は恐らく来年1−3月(第1四半期)まで見られないだろう」と述べた。 ここ数カ月の貿易摩擦の高まりから既に影響を受けた市場と、保護主義の台頭で影響を受けやすいとみられる分野を以下にまとめた。 中国のテクノロジーセクター トランプ政権が通商戦術で主な標的にしてきた1つは中国のテクノロジーセクターだ。米国が技術移転や知的財産権、技術革新に関わる中国の「不公平な貿易慣行」に対抗して3月に関税措置を打ち出して以来、中国企業は同業の米国企業に大きく出遅れている。中国のテクノロジー大手、百度やアリババ・グループ・ホールディング、テンセント・ホールディングス(騰訊)はMSCI新興市場指数の約12%を占めることから、同指数もその流れに追随する可能性がある。 工業株 貿易摩擦で売られやすいもう一つの脆弱(ぜいじゃく)な分野は、国際的な販売やサプライチェーンに依存する米製造業者だ。これらの工業株の年初来のパフォーマンスはS&P500種株価指数を約5%下回っている。 小型株 米国の小型株は全般的に、世界の株式を上回るパフォーマンスで、国内エクスポージャーの高さから貿易摩擦の影響を受けにくいと見られてきた。この差が生じた背景には、好調な経済活動を受けたドル高や米連邦準備制度の持続的な金融引き締め、新興国市場の一部の混乱もある。 波乱の新興国市場 新興国市場は貿易大国間の緊張で最も大きく動揺しているようだ。中国と香港に上場する株式が約3分の1を占めるMSCI新興市場指数は1月に約10年ぶりの高値を付けて以来20%強値下がりしている。 中国の通貨 中国人民元は貿易摩擦を背景に投資家の注目を集めている。オフショア人民元は3月に対ドルで1年ぶりの高値を付けて以来、最大11%下落した。元安は米国の貿易措置の一部を弱めるのに役立つが、中国政府は資本逃避にうんざりしている。 原題:Watch These Markets as Trump’s $200 Billion Trade Salvo Nears(抜粋)
2018年9月7日 / 12:28 / 31分前更新
コラム:自由貿易の復権へ、トランプ関税が思わぬ効果 Gina Chon 2 分で読む [ワシントン 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領はうっかりと、自由貿易を再び「クール」なものにしているようだ。 海外からの安い輸入製品が米国の雇用を破壊していると訴えたこともあり、トランプ氏は大統領選で勝利を収めた。だが最新の世論調査では、経済に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、米国人は大統領の関税戦争を支持していない。中国に反感を持つ「ラストベルト(さびついた工業地帯)」でさえ、輸入関税による価格上昇を心配している。 2016年の米大統領選において通商問題は共和、民主両党にとって「共通の敵」だった。 トランプ氏はさまざまな通商合意からの脱退を公約し、共和党の理念を足蹴にした。民主党では、バーニー・サンダース上院議員が環太平洋連携協定(TPP)に批判を浴びせ、候補指名を争ったヒラリー・クリントン氏は従来の支持姿勢を転換せざるを得なかった。トランプ氏の公約は、ペンシルバニアのような伝統的に民主党色の強い産業州での勝利に一役買った。 トランプ政権は既に、メキシコやカナダ、欧州連合(EU)から輸入する鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税に踏み切った。また、中国からの2500億ドル(約28兆円)相当の輸入品にも関税をかけようとしている。標的にされた国々は、報復措置を講じた。 一方でトランプ大統領は、いまだに主要通商合意の締結にこぎつけていない。大統領は1日、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を巡り、カナダをNAFTAにとどめる必要はないとツイートした。 しかし、一般の米国人は、トランプ大統領の貿易戦争が経済に及ぼす影響を心配している。最近の各種世論調査においても、貿易戦争が影を落とし始めた。 AP通信と全国世論調査センター(APーNORK)が先週発表した世論調査によると、回答者の61%がトランプ氏の通商協議を支持しないと回答し、不支持率は6月の55%から増加した。 ペンシルバニア州の鉄鋼生産がさかんな地域ですら、住民が懸念を深めている。最近のNBCニュース/マリストの調査によると、同地域の有権者46%が、関税措置により米世帯の負担が増え、経済がダメージを受けると回答。関税措置で米国の雇用が守られると答えたのは28%にとどまった。 米キニピアック大の世論調査では、オハイオ州民の55%が中国製品に対する関税を支持すると答えたが、それにより消費者物価が上昇した場合でも支持するとの回答は46%だった。 11月に予定される中間選挙で下院の過半数維持を掲げて選挙戦に臨む与党共和党は、神経をとがらせている。 先月行われたオハイオ州の連邦下院補欠選挙で辛勝した共和党のトロイ・ボルダーソン氏は、トランプ大統領の支持を受けたものの、トランプ関税を支持しないと発言。伝統的な共和党の地盤にもかかわらず、ボルダーソン氏の勝利は僅差だった。 ある共和党ストラテジストはBreakingviewsに対し、貿易戦争が党の経済繁栄に向けたメッセージを傷つけていると話す。関税を巡る公聴会では、多数の中小企業経営者が、関税で廃業に追い込まれる恐れがあると証言。トランプ大統領の貿易政策に対する反動は、経済的にも政治的にも大きな代償をもたらすかもしれない。 *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
中国は再び世界経済を救えるか−週内にも追加のトランプ関税発動 Enda Curran 2018年9月7日 10:26 JST • アジア通貨危機や世界金融危機では中国が安定化の役割 • トランプ政権は中国製品2000億ドル相当に追加関税も 世界経済に占める中国の割合は拡大しており、新興国市場の混乱が先進国に波及しない防波堤としての役割がこれまで以上に重要になっている。 アルゼンチンやトルコ、南アフリカ共和国の市場を襲い、アジアにも波及しつつある混乱でも、大半の先進国経済の成長見通しはほとんど損なわれていない。実際、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長からは、新興国には重荷となっている利上げペースを緩める兆しはほぼ見られない。 だが、12兆ドル(約1325兆円)規模の中国経済がここからかなり減速した場合、話は違ってくる。トランプ米政権は中国製品2000億ドル相当への追加関税発動を週内にも発表する可能性があり、中国経済は新たな課題に直面している。 世界経済に占める中国の割合は約15%と、20年前のアジア通貨危機時のわずか3%から大きく膨らみ、世界の経済成長に対する寄与は30%余りに達している。多くの新興国にとって中国は最大の貿易相手国であり、多くの商品で最も大きい買い手でもある。 HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏(香港在勤)は、「中国は新興国経済を引っ張る機関車だ」と指摘。「このため、新興国が既に債務のドル調達コスト上昇への対応に苦慮する中、中国経済の減速は特に新興国にとって深刻な課題になる」と話す。 ブルームバーグ・エコノミクスのトム・オーリック氏は、1997年のアジア通貨危機や中南米での周期的な危機など大きなショックが新興国市場を襲っても、近隣の先進国にはさざ波が立つ程度だったと分析。だが、中国の場合はそうはいかない。 中国は長らく安定化の役割を担ってきた。アジア通貨危機時に人民元切り下げを見送り、影響の広がりを防ぐことに一役買った。それから10年後の世界金融危機時には巨額の景気刺激策を打ち出し、商品需要が急回復、多くの新興国やオーストラリアなど一部の先進国を後押しした。 メイバンク・キム・エン・リサーチのシニアエコノミスト、チュア・ハク・ビン氏(シンガポール在勤)は、中国が引き続き鍵を握ると指摘。「貿易戦争で中国経済が沈むことになれば、新興国や他のアジア諸国は下押し圧力をフルに受けることが避けられない」と述べた。 予想する向きはほとんどいない中国経済のハードランディングシナリオは起こりそうにないが、中国景気が底堅く推移しても、金融引き締めによる影響から世界を守ることはできない。 ユーリゾン・SLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)は、「中国は世界経済情勢の一段の悪化を防ぐため、新興国向けに措置を講じることは可能だ」と指摘しながらも、「米金融当局による今後の政策行動に伴う逆風を完全に打ち消すことはできないだろう」と述べた。 原題:China Stands Between Emerging Market Turmoil and Global Pain(抜粋)
外為フォーラムコラム2018年9月7日 / 08:13 / 30分前更新 コラム:巨大黒字国ドイツ、再びトランプ貿易戦争の標的に Jamie McGeever 3 分で読む [ロンドン 5日 ロイター] - 今週発表されるドイツ貿易統計は、世界の経済ウオッチャー、とりわけ米ホワイトハウスの住人にとって、巨大な経常赤字を抱えた国と巨大な黒字を享受する国にまたがる深い亀裂を改めて認識させるものになるだろう。 トランプ米大統領は先週、ドイツや欧州が、為替相場をユーロ安に操作して輸出や貿易を自国有利になるよう働きかけることで、米国企業に損害を与えている、と改めて攻撃した。 「ほぼ中国並みに悪い。ただ(中国より)小さいだけだ」と、トランプ氏はブルームバーグに語った。 実際には、対米や全体の貿易黒字額では、ドイツの黒字は中国よりも大きい。 もし、米国とドイツの溝が改められることなく拡大すれば、その反動で為替市場のボラティリティーが急上昇する事態が起きかねない。ボラティリティーは現在、史上最低に近い水準にあるが、それが急上昇するならば、世界金融市場の安定を脅かすことになりかねない。 ユーロ/ドル市場は、世界でもっとも取引が活発で重要な為替市場であり、取引高は1日1兆ドル(約111兆円)と、全世界の為替取引の4分の1近くを占めている。ユーロ/ドルが安定している理由は、まさにこの取引規模と流動性にある。 だがこの市場が、今後も静かなオアシスであり続ける保障はない。 ボラティリティーが新興国市場の大半を引き裂く中、先進国市場は、これまでほぼ無傷のままだった。だがユーロ/ドル相場における混乱やストレス、急変から影響を受けない市場は世界に存在しない。 ドイツは今年上半期、244億ユーロ(約3兆1600億円)と、どの国よりも大きな対米貿易黒字を記録、同国の総貿易黒字額も1215億ユーロに達した。 ドイツは2002年以降、毎年経常黒字を計上しており、2015年には国内総生産(GDP)の8.9%に達した。その後、この割合はやや減少しているが、それでも昨年はまだ8%台で、3年間の平均値は欧州委員会(EC)が上限として推奨する6%を大きく上回っている。 ミュンヘンのIFO経済研究所によれば、ドイツの経常黒字は今年2990億ドルに達し、3年連続で世界最大の貿易黒字国となると見込まれている。これは、約2000億ドル程度とIFOが予想する2位の日本の経常黒字を、約50%上回っている。 したがって、トランプ大統領が再びドイツに関心を向けたことも、何ら不思議ではない。昨年1月、ドイツ政府が「ひどく過小評価された」ユーロを使って米国から「搾取している」と非難したナバロ米通商製造政策局長の発言を、大統領は繰り返した。 外交的な表現をするなら、ドイツが何らかの手段でユーロ相場を操作しているとの指摘は疑わしい。実際、世界の3大経常黒字国の中で、ドイツは自国通貨相場に対する影響力が最も低いためだ。 中国は、以前より人民元の柔軟性や元建ての二国間貿易を容認しているかもしれない。だが、それでも人民元は、厳しい資本管理が敷かれた国の、厳密な管理下に置かれた通貨であることに変わりはない。人民元は基本的に、中国政府の意のままに動く。 そして日本は、この20年で世界のどの先進国よりも頻繁に世界の為替市場に介入しており、そのほとんどが、円安方向への誘導、または、少なくとも円高進行を阻止するためのものだった。 これら3大輸出国は、2002年以降、経常黒字を毎年計上している。2002年は、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した年であり、ドイツが経常赤字から黒字に転じた年でもある。 国際通貨基金(IMF)と世界銀行のデータによると、2002年以降にこの3カ国が計上した累計経常黒字の合算金額は、現在の為替レートで8.6兆ドルに達する。これは、同期間に米国が抱えた累計債務額8.3兆円に、ほぼ完璧に符号する。 米国の歴代政権は、日本や中国、またはドイツが、通貨操作や他の通商慣行を利用することによって、世界市場における自国製品の競争力を高めてきたと批判してきた。 1980年代に当時のレーガン大統領が標的にしたのは日本で、2000年代にジョージ・W・ブッシュ大統領が追及したのは中国だった。トランプ大統領は、中国とドイツに怒りの矛先を向けている。 レーガン大統領が就任した1981年以来、米国は、たった1年を除いて、毎年経常赤字を出してきた。その例外は1991年だが、IMFと世銀のデータによると、同年の黒字額はGDPの0.046%で、ほとんど意味がなかった。 世界貿易の舞台で「アメリカの敗北や失敗」だとみなしているものに向けるトランプ大統領の苛立ちは、自国に対して向けられるべきではないだろうか。 *筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
2018年9月7日 / 16:13 / 1時間前更新 ドル110円半ば、米大統領発言受け2週間ぶり安値 2 分で読む [東京 7日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点に比べ、ドル安/円高の110円半ば。日本時間の早朝(米国市場終盤)にトランプ米大統領の対日貿易不均衡を巡る発言が伝わり、ドルは一時2週間ぶり安値をつけた。 トランプ米大統領は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのコラムニストとの電話の中で、自身と日本の指導者との良好な関係に言及する一方、「『もちろんそれは彼らがいくら支払わなければならないのかを伝えればすぐに終わるだろう』と付け加えた」という。 これを受けて、ドルは一時110.38円と8月22日以来2週間ぶり安値まで下落。「通商問題で日本にはこれまで具体的な言及はなかった。目先は円高圧力が強まりやすい」(信託銀)との声が出ており、欧州から米国時間にかけて円高圧力が警戒されている。 きょうは8月の米雇用統計が発表される。「米雇用市場は堅調との見方が主流だが、8月ADP民間雇用者数が予想を下回ったこともあり、予想外に悪ければドルが110円割れするリスクもある」(外為アナリスト)という。 米国の対中追加関税の意見募集期間は米国時間6日夜に終了したが、中国からの2000億ドルの輸入品に対して追加関税措置を発動したとの報道はない。 一方、7月の米国の対中貿易収支は368億ドルと過去最高となり、トランプ政権の保護主義的な政策が今のところ成果をあげていないことを示唆する結果となった。 午後3時過ぎのスポット市場の人民元CNY=CFXSは1ドル=6.84元付近。この日は6.8296元で取引が始まり、元安方向に振れた。 香港市場では翌日物の人民元HIBOR(香港銀行間取引金利)HICNHONDF=が3.13933%と前日の1.71600%から急上昇し、約3カ月ぶりの高水準となった。 中国国営銀行大手がフォワード市場で、ドルを人民元にスワップするドル投/人民元転取引を実施し、流動性がタイトになったことがHIBOR上昇の主因とみられる。 中国国営銀行はしばしば中国人民銀行(中央銀行)の意向を反映して行動するとされ、人民元安を抑制したい人民銀行が、国営銀行を介して、人民元の借入れコストを吊り上げた可能性が指摘されている。 ドル/円JPY= ユーロ/ドルEUR= ユーロ/円EURJPY= 午後3時現在 110.58/60 1.1622/26 128.53/57 午前9時現在 110.48/50 1.1618/20 128.37/41 NY午後5時 110.74/77 1.1621/23 128.72/76 為替マーケットチーム 2018年9月7日 / 12:33 / 5時間前更新 コラム:通貨ルピアが急落、インドネシアに有効な防衛策は Clara Ferreira-Marques 2 分で読む
[シンガポール 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - インドネシアにとって通貨防衛の最も有効な方法は、「頭を冷やす」ことかもしれない。新興国資産が劇的に売られる流れを受け、通貨ルピアの対ドル相場は1998年のアジア危機以来の安値に沈んだ。政策担当者はあわてているようだが、落ち着いて取り組めば十分対応できる。 ルピアを守るという面でインドネシアの態勢は、20年前よりしっかりしている。当時に比べて外貨準備は多い半面、対外債務は少ない。ただし経常赤字が拡大を続けているため、アルゼンチンやトルコと同一視されてインドネシア資産は売り浴びせられている。5日には株価も約4%安と、この2年近くで最大の下げに見舞われた。 こうした中で当局は見事なほど早めに動いてきた。中央銀行は5月以降4回、計125ベーシスポイント(bp)の利上げを実施するとともに、2月から7月まで外貨準備のうち137億ドル相当を投じてルピア支援の介入を間断なく行っている。最近ではヘッジコストの引き下げを試みた。一方で政府は、今年の対国内総生産(GDP)比が昨年の1.7%から2.5%に上がると予想される経常赤字の縮小に力を注いでいる。 実際に発表された経常赤字縮小策は、短期的にはプラスに働くだろう。例えばバイオディーゼルの使用義務化は、同国の原油輸入を日量約40万バレル減らしてくれる可能性がある。とはいえ、これらの措置は低調な経済成長を再び上向かせたり、喉から手が出るほどほしい外国の直接投資を呼び込む力は全くない。 より適切で長期的な解決策は、自由化を継続するとともに政策の安定を維持して、海外からの資金流入につなげることだ。国内エネルギー部門への資金流入が増えれば、インドネシアは再びエネルギーの純輸出国になってもおかしくない。同じように、およそ250億ドルの発電所向け投資の先送りは、インフラ改善の努力を妨げている。そうした改善がなければ、インドネシアが外国資金に投資先として選んでもらうのは難しくなるかもしれない。 逆にムルヤニ財務相が4日、投機筋に対して漠然と脅しをかけたような行為は、何の役にも立たない。打つ手の選択肢がだんだんと減り、選挙も視野に入っている中で、政治家としてはこのような口先介入や目先の対策をもっと打ち出したくなるだろう。 もっとも中銀は、来年になればドル高がもたらすルピアの下げ圧力が弱まると予想している。それまでにより多くの改革や後戻り可能な措置を実行する方が、インドネシアにとっては有益だろう。 ●背景となるニュース *ルピアの対ドル相場は4日、一時1ドル=1万4940ルピアと20年ぶりの安値に沈んだ。アジア新興国通貨の中で今年値動きが最も低調なのがインドルピーで、ルピアはそれに次いで、年初来の下落率が10%近くに達する。 *インドネシア政府は4日、投機筋に対して「断固とした行動」を取ると表明。中央銀行と金融サービス監督機関が大口取引への監視を強める、とムルヤニ財務相が発言した。 *中銀は5月以降に計125bp利上げし、ルピア支援のために数十億ドル規模の為替介入を実施した。 *中銀は、オーバーナイト・インデックス・スワップと金利スワップの導入により、企業や投資家が利用できるヘッジ手段を拡大する方針を示した。一方で政府は、いくつかの発電所建設プロジェクトの延期や修正などを通じて、輸入の抑制に取り組んでいる。 *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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