NAFTAからNACTAで自動車業界激震 細川昌彦の「深層・世界のパワーゲーム」 「管理貿易」に突き進むトランプ政権の脅威2018年9月4日(火) 細川 昌彦 北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し交渉で、米国とメキシコが大筋合意した。この合意が、日本の自動車業界を激震させる可能性がある。あまり報じられていないが、合意内容に日本の自動車メーカーの身動きをとれなくする“毒まんじゅう”が仕込まれている。 トランプ大統領はメキシコに“毒まんじゅう”を食わせた?(写真:ロイター/アフロ) レイムダックのメキシコを二国間で突く米国 北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを巡る米・メキシコ、米・カナダ2国間協議に世界の目が注がれている。8月29日、米・メキシコは大筋合意し、その後、行われた米・カナダは農業分野などでの対立が解消されず、9月5日に再協議する。
「これまでのNAFTAは米国の雇用を奪ってきたので見直す」 NAFTAの見直しはトランプ大統領にとって大統領選での選挙公約であった。しかし、昨年からのメキシコ、カナダとの交渉は膠着状態に陥っていた。事態が動いたのは、7月のメキシコの大統領選だ。12 月に新大統領に交代するが、新大統領が現政権との協議結果を受け入れると表明したことで、米国はレイムダックになった現政権との協議を一挙に加速させた。ある意味、新旧大統領の「無責任が生んだ間隙」を突いた結果なのだ。 メキシコにとってその代償は大きかった。 自動車産業の北米戦略、抜本見直し迫られる 日本の自動車業界では、米・メキシコの間で大筋で妥結した中身に衝撃が走った。 まず、北米域内で自動車関税ゼロにする適用条件として域内での部品調達比率が定められているが、これを現在の62.5%から75%に引き上げる。日本メーカーは現状では75%を達成していないので、対応が必要になる。 そして米国製部材の調達を事実上増やすことにつながる、「賃金条項」も新たに盛り込んだ。部品の40〜45%について時給16ドル以上の地域での生産を義務付けるものだ。これは事実上、米国製部品の購入を強制する、悪名高い「バイ・アメリカン条項」に等しい。メキシコの労働コストの安さ(時給7ドル程度)を前提として生産体制を構築してきた、これまでの自動車産業の経営戦略の転換を迫るものだ。 さらに、これはまだ公表されていないようだが、全体としての域内調達比率を満たすだけでは足りないようだ。部品の中でもエンジン、サスペンション、トランスミッション、バッテリーなど中核的な部品7品目については、それだけで75%の現地調達比率を定めているとの情報もある。これらの中核的な部品は日本から供給している日本メーカーにとって、対応の困難な深刻な問題だ。特に内製化していない部品は、部品メーカーが域内から供給しない限り、条件を満たせない。 自動車メーカーはこれまでNAFTAを前提に、北米でのサプライチェーンを構築してきた。部品の品質、価格、納期などを緻密に検討して、部品の調達先を決めて作り上げてきたものだ。その前提条件が変更されるのだから、堪ったものではない。調達先の切り替えも簡単ではない。 部材メーカーも自動車メーカーの調達方針を踏まえて、メキシコなどへの投資をしてきている。今回の見直しで、メキシコの工場ではなく、米国の工場からの供給に切り替えざるを得ないところも出てくるだろう。 コスト高になってでも米国工場からの部品供給に切り替えるのか、中核部品を北米から供給できるような体制を組めるのか、それらの対応を諦めて2.5%の関税を支払うことを覚悟するのか、そうした選択の厳しい経営判断を迫られる。 いずれにしても、今後のメキシコへの投資が冷え込むのは明らかで、メキシコが安易に妥協した代償は大きい。 “毒まんじゅう”を食べてしまったメキシコ しかし、当初公表されたこれらの条項だけではなかった。もっと衝撃的な内容が付属合意としてあったことが判明したのだ。それが「数量規制」という“毒まんじゅう”だ。 当初、日本のメディアでは「最悪の事態を回避して安堵」といった、呑気なコメントもあったが、これでは本質が見えない。海外通信社の衝撃的な報道で、やっとその深刻な内容に気づいたようだ。 かつて日本も80年代に締結した日米半導体協定においても、その付属文書で外国製半導体のシェアに関する数値目標を盛り込まされた。そしてその後、大きな禍根を残した苦い経験をしている。 突かれたくない重要な内容は本体の合意には盛り込まないものだ。付属文書を見なければ本質はわからない。 メキシコから米国への乗用車輸出数量が240万台を超えると、25%の関税が課されるというものだ。米国は現在通商拡大法232条に基づいて、自動車輸入への追加関税を検討しているが、この高関税を免れるために、数量規制を飲んだということだ。メキシコはこの“毒まんじゅう”を食べてしまった。 数量規制は関税引き上げよりも自由貿易を歪める度合いが強いので、世界貿易機関(WTO)のルールで禁止されている。これは明らかに自由貿易の根幹を揺るがす大問題なのだ。 かつて80年代の日米貿易摩擦において、鉄鋼の対米自主規制を行い、自動車でも米国は同様の自主規制を日本に対して要求していた。そしてこのような「管理貿易」には怖さがあった。日米半導体協定のように、一旦安易に譲歩すると、更に米国はカサにきて要求を強めてくる、という苦い経験をした。 そして今、塗炭の苦しみを味わっているのが韓国だ。 本年3月、米韓自由貿易協定(FTA)の見直し交渉が合意した。この中で、鉄鋼に関して、通商拡大法232条に基づく追加関税を免除されるのと引き換えに、米国への鉄鋼輸出の数量制限が盛り込まれた。 当初、うまく交渉をして追加関税を免れたとされていたが、そこに大きな落とし穴があった。数量規制の運用が米国にいいようにやられて、韓国はがんじがらめにされて、悲惨な状況に追い込まれているのだ。 「これでは追加関税をかけられていた方がマシだった」との声が聞こえるほどだ。 「ミスター数量規制」によって「北米管理貿易協定(NACTA)」になった ライトハイザー米国通商代表は、80年代に日本に対して鉄鋼輸出自主規制を飲ませた成功体験を持つ。さらにトランプ政権下では拍車がかかり、通商拡大法232条による高関税を脅しに、数量規制に追い込む。鉄鋼問題で韓国に対して味を占めて、今回、メキシコに対して自動車の数量規制を飲ませたのだ。 いわば彼は「ミスター数量規制」だ。 さすがにメキシコのグアハルド経済大臣は当初受け入れなかったが、最後はレイムダック化した現大統領が安易に受け入れてしまったのだ。 メキシコは「25%の追加関税を免れるための保険を得た」とその成果を説明するしかなかったが、これこそ米国の思うつぼだ。 2017年のメキシコから米国への乗用車輸出が170万台なので、240 万台の数量規制ならば今後4割程度の増やす余地があると安易に考えたのだろう。 しかしメキシコの対米輸出はここ5年を見ても、年平均1割は伸びている。今後も自動車メーカーの生産拡大計画があり、新協定が2020年から発効するとして、恐らく数年で240万台に達してしまう。 しかも注意を要するのは総枠の数量だけでない。韓国は鉄鋼の数量規制を54品目ごとに規定されて「がんじがらめ」にされている。今後、明らかにされるであろう数量規制の中身も子細に見る必要がある。 例えば、前述したように、自動車メーカーが「引き上げられた域内部品調達率や賃金条項を無理して満たすよりも、2.5%の関税を支払う方がコスト的によい」として選択したとしよう。ところが、そういう対応を抑制するために別途の仕組みも仕込まれているようだ。 2.5%の関税支払いをして米国に輸出できる台数を百数十万台に制限して、これを超えると懲罰的な高関税がかかる、という仕組みだ。 こうした管理貿易の仕組みを駆使して、企業の経営判断の自由度を「がんじがらめ」に縛り、米国での部品調達に巧妙に追い込んでいるのである。 いずれにしても自動車産業はメキシコへの投資を抜本的に見直しすることを迫られそうだ。 「北米自由貿易協定」は「北米管理貿易協定」になってしまった。NAFTA(North American Free Trade Agreement)ではなく、NACTA(Controlled Trade )だ。 カナダとの交渉を固唾を飲んで見守る日欧 現在協議が継続中の米加間の交渉では、カナダの乳製品の扱いと米加間の紛争処理のあり方で対立が激しいが、自動車分野は大きな対立点になっていない、とメディアは伝えている。 カナダについては、賃金が米国並みで、低賃金のメキシコとは賃金条項での立場が違うので、この点では対立点にならないのは確かだ。しかし表に出ていない数量規制については、その危険性をカナダは十分理解していることを期待したい。カナダがメキシコのように“毒まんじゅう”を食べないよう、日本、欧州は固唾を飲んで見守っている。 トランプ大統領はカナダへの強硬姿勢を強め、NAFTA分裂や自動車の追加関税もちらつかせることによって脅して、カナダの譲歩を迫っている。しかし五大湖付近では日本メーカーも含めて自動車産業は、国境をまたいで一体化して生産している。仮にNAFTAを維持できない事態になれば、米加双方も、そしてそこに投資するメーカーも致命的打撃を受ける。 米国議会の権限も無視できないことも忘れてはならない。NAFTA分裂の事態は、議会としても受け入れられないだろう。強硬姿勢はトランプ政権の焦りの裏返しでもある。 今後、欧州、日本に対しても数量規制要求へ 鉄鋼で韓国に対して、自動車でメキシコに対して、米国は「高関税で脅して、数量規制を飲ませた。」これが米国の手法だ。 米国は今後、欧州、日本に対しても、同様の手法でやってくるだろう。ハガティ駐日大使が自動車の数量規制に言及するのもそれと軌を一にするものだ(参照:メディアが報じない、日米通商協議の真相を読む)。9月の日米通商協議(FFR)、日米首脳会談での大きな焦点となるだろう。 この問題は世界の通商秩序の根幹を揺るがすものだとの危機感が必要だ。部品調達率や賃金条項だけに目を奪われていてはいけない。自動車メーカーも「実害のない数量が確保できればよい」といった安易な考えは、将来に禍根を残すことを肝に銘ずるべきだろう。 さらに考えなければならないのは、これを米国に許すと、将来、同様に巨大市場を有する中国も同じことをしてくることも覚悟しなければならないということだ。 日欧は連携して、「毒まんじゅう」を阻止する戦いの胸突き八丁にさしかかっている。 このコラムについて 細川昌彦の「深層・世界のパワーゲーム」 経済産業省(旧通商産業省)で日米の通商交渉などを長らく担当してきた細川昌彦氏(中部大学特任教授、元・経済産業省中部経済産業局長)が、米国、中国、欧州、そして日本など世界の大国間で繰り広げられるパワーゲームの深層を読み解く。2017年2月から日経ビジネスオンラインの「ニュースを斬る」でトランプ外交などを中心に解説してきた人気コラムニスト。
淘汰目前、中国NEVメーカーに3つの試練 トレンド・ボックス 底力と経営革新が問われる 2018年9月4日(火) 湯 進 蔚来汽車のスマートカー(写真上)と量産モデルES8 中国新興電気自動車(EV)メーカーの代表格である蔚来汽車が8月、ニューヨーク証券取引所への新規株式公開計画を発表。「中国のテスラ」になるという夢の実現に向けて一歩踏み出した。
補助金政策を追い風にEVを中心とする中国の新エネルギー車(NEV)市場は急速に拡大し、多くの新興メーカーが続々とEV開発に乗り出している。一方、2019年から実施される罰則付きNEV生産義務、20年までに段階的に廃止される補助金制度などを勘案すれば、淘汰の波は眼前に迫りつつある。新興EVメーカーの生き残りをかけた競争は激しさを増すものと思われる。 50社超が新規参入 中国政府は、地場自動車メーカーの内燃機関の技術開発がなかなか進まない中、国内の大気汚染の深刻化や原油の過度な輸入依存もあり、12年からNEV市場の育成に力を入れてきた。 補助金制度、購入税免除、自動車ナンバープレート優先取得など一連の促進政策により、中国のNEV販売台数は13年の1.7万台から17年に77.7万台へと急速に増加。世界全体の5割強を占める規模にまで増加した。中国政府が示したNEV販売台数を25年に新車販売の20%にあたる700万台にする目標は、中国NEV市場の拡大を大いに期待させる。 出所:中国乗聨会の発表より作成 中国地場自動車メーカーがNEV政策の波に乗り活気づく中、異業種からNEV市場に新規参入する動きも目立つ。
18年6月末時点、中国にNEV関連メーカーは503社あり(累計登記ベース)、主要メーカーの投資計画をまとめると、20年のNEV生産能力は800万台に達する。これは市場需要の4倍にあたる規模だ。 現在の中国NEV市場ではBYD汽車、北汽新能源、上汽乗用車など民族系3社が約5割のシェアを占める。既存の自動車勢力にITを駆使したスマートカー技術の蓄積は多くないものの、新たな製品価値を市場に浸透させれば、今まで参入できなかった自動車市場で競争力をもつ可能性がある。 外資系企業は中国でNEVの本格的な生産を行っていない。高級車に特化するテスラを除くと、いずれもその販売台数は少ない。このため、新興EVメーカーの多くは、いつの日か「中国のテスラ」に化けるときが来る、と夢見ている。50社超の新興EVメーカーが続々と自社工場の建設に取り組む。 EV量産を進めるIT系3社 豊富な資金力を持つ中国IT大手の百度、アリババ、テンセントの3社は、政府のNEV政策に投資意欲を刺激され、相次いで新興EVメーカーに出資した。 蔚来汽車(テンセント出資)は6月、高級EV「ES8」の納車を開始。7月末までに1331台納車し、18年の販売目標を3万台に設定する。創業3年間の資金調達額は累計24億ドルに達したのに対し、累計損益は17億ドルの赤字であった。ニューヨーク証券取引所に上場できれば、蔚来汽車は最大18億米ドル(約2000億円)を調達。EVの生産・開発に投入する計画だ。 小鵬汽車(アリババ出資)はこれまで15億ドル超を調達したが、来年さらに30億ドルを調達する予定。EV量産モデル「G3」を年内にも納車する。販売価格を蔚来汽車「ES8」の半額程度(20万〜28万元)に設定し、幅広い消費者をターゲットにする。 上記2社がそれぞれ地場自動車メーカーのJAC汽車、鄭州海馬汽車に生産を委託したのに対し、威馬汽車(百度出資)は既存EVメーカーの買収により年産能力10万台の自社工場を稼動させ、EV量産モデル「EX5」の9月納車開始を目指す。 新興EVメーカーは、エンジン車メーカーに伍する製品開発力を備え、コネクテッドカーの開発で他社と差別化を図る必要がある。資金調達力、製品開発力及び自社工場建設の進捗状況を考慮すれば、少なくとも現時点で大手IT企業の出資する上記3社は比較的生き残る可能性が高い。 一方、3社以外に年内の完成車量産を計画する新興EVメーカーは5社にとどまる。これら新興EVメーカーにとっては、部品サプライチェーンの整備やものづくり力の向上が依然重要な課題となる。 中国EV生産・販売ライセンスを取得した8社と主要新興EV企業(万台) EV生産・販売ライセンスを取得した企業 主要新興EVベンチャー 企業名 出資先 年産能力 企業名 出資先 年産能力 北京新能源 北京汽車 7 蔚来汽車 テンセント等 20 長江EV 五龍集団 5 小鵬汽車 アリババ等 20 前途汽車 長城華冠 5 威馬汽車 百度等 20 奇瑞新能源 奇瑞汽車 8.5 Dearcc汽車 ファンド 18 江鈴新能源 江鈴汽車 5 Byton汽車 一汽、CATL等 18 雲度新能源 福建汽車 5 奇点汽車 ファンド等 30 知豆電動汽車 新大洋集団 4 車和家汽車 ファンド 20 合衆新能源 桐郷合衆 5 零跑汽車 ファンド 30 出所:各種報道より作成 新興メーカーが直面する3つの試練 今後中国の新興EVメーカーは、以下の3つの試練を乗り越えなければならない。 1つ目の試練として挙げられるのは、中高級EV市場の形成に時間を要することだ。18年1〜6月のEV販売台数を見ると、航続距離300km以下の車種が全体の5割を占め、補助金控除後の小売価格10万元(約170万円)以下の車種は全体の45%を占めた。沿海部の大都市では、ナンバープレートの発給規制によるEV特需があり、短距離移動に適したコンパクトカーがEV市場の主流である。他方、内陸部の中小都市では、中古車を含む対エンジン車のコストパフォーマンスと利便性がEV購入の重要な条件となる。 しかし18年6月末時点、全国のEV保有台数が162万台であったのに対し、充電スタンドの設置数は70万に過ぎない。さらにバッテリー測定体制の不備により、EV中古車取引価格が新車価格と大きく乖離していることが、一部の消費者がEVを敬遠する要因となっている。 2つ目の試練は、政府が参入基準の引き上げや生産ライセンスの発給を通じ、新興EVメーカーの絞り込みを図ることだ。 18年7月発表の「自動車産業投資管理規定(意見公募)」は、過剰投資を防ぐため、企業と地方政府の双方に厳しい基準を設けた。EV年産能力10万台以上、工場フル稼働までの株式譲渡ができない、企業所在地域のNEV保有率が全国平均を上回ること、などを主な参入条件に挙げる。18年8月末時点で、既にEV生産ライセンスを取得した15社(うちの8社が販売許可も取得)以外にも、ITベンチャーを含む新興メーカー数十社が懸命にEV開発を行う。しかしこうした新興メーカーが生産ライセンスを取得する目処は立っていない。 3つ目の試練は、NEV補助金の廃止や外資規制の緩和により、今後し烈な市場競争が繰り広げられることだ。 メーカー乱立による過剰投資や製品品質の低下が懸念されることから、中国政府は18年に航続距離300km以下のEVに対する補助金を前年比最大58%減額、支給期間を20年末とする方針を明らかにした。また今年NEV市場の外資出資比率規制が撤廃されることにより、すでに新規EV合弁事業を発表したフォードと衆泰汽車、日産・ルノーと東風汽車、BMWと長城汽車に加え、テスラも中国に年産50万台のEV新工場を建設する。21年以降、多くの外資系メーカーがEV市場に参入することから、市場競争は一層激しさを増し、新興EVメーカーに淘汰の波が押し寄せる可能性は高い。 この先中国のNEV市場では、生存をかけた激しい戦いが展開されるものと予想される。すでに中国でEVを量産するフォルクスワーゲンは、25年に150万台のEV販売を計画する。GMは上海にEVバッテリーパック工場を設け、今後5年間で20車種のNEVを投入する予定だ。日本の自動車大手3社も一斉に中国での増産に向けた投資を表明し、激戦必至の中国NEV市場で態勢を整える。 補助金制度の廃止やEV生産ライセンス規制の設定は、自国のNEV市場を育成しようとする中国政府にすれば、新興EVメーカーの存亡にタイムリミットを設ける試みといえる。筆者が6月小鵬汽車を訪ねた時、創業者の何小鵬氏は「20年に生き残っている新興EVメーカーは3社だけだ」と危機感を露わにした。 今後新興EVメーカーには厳しい試練が待ち受ける。いかにものづくりの弱みをカバーしコネクテッドカーで競争優位に立てるか、今まさに新興EVメーカーの底力と経営革新が問われている。 湯進(たん・じん)氏 みずほ銀行国際営業部主任研究員・博士(経済学) 2008年入行時より国際営業部に所属。自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国地場自動車メーカーや当局とのネットワークを活用した日系自動車関連企業の中国ビジネス支援を実施しながら営業推進業務に従事。また継続的に中国自動車業界に関する情報のメディア発信も行っている。(関連情報はこちら) 直近の自動車関連レポート 日経産業新聞 「中国EV電池市場〜外資規制に緩和期待」(2018.6.25) mizuho globalnews Vol.97「中国新エネルギー車市場の拡大とリチウムイオン電池メーカーの成長」(2018.6) みずほ銀行 週刊エコノミスト「中国が EV電池工場になる日」 (2018.5) 毎日新聞出版社 日経産業新聞 「中国の燃費・NEV規制」(2018.5.21) このコラムについて トレンド・ボックス 急速に変化を遂げる経済や社会、そして世界。目に見えるところ、また見えないところでどんな変化が起きているのでしょうか。そうした変化を敏感につかみ、日経ビジネス編集部のメンバーや専門家がスピーディーに情報を発信していきます。
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