2018年8月28日 / 17:36 / 3時間前更新 日本株は本当に割安か、「米国一強」のバリュエーション 3 分で読む[東京 28日 ロイター] - 日本株は割安と言われる。確かに予想PER(株価収益率)比較では、米国より低い。しかし、ドイツなど欧州主要国とはほぼ同水準だ。経済格差や貿易戦争の懸念がバリュエーションでも「米国一強」を生じさせおり、日本株だけが安いわけではない。ただ、日本株の割安さは収益性の弱さに起因するとの指摘もある。国際比較でいまだに低いROE(株主資本収益率)などの改善がなければ、構造的な割安感は消えないかもしれない。 <強さ際立つ米国株> トムソン・ロイターのデータストリーム(8月27日時点)でみたTOPIX.TOPXの予想PERは、18年度で13.4倍。S&P500.SPXの17.7倍と比べれば低いが、独DAX.GDAXIの12.9倍や仏CAC.FCHIの14.1倍、英FTSE.FTSEの13.4倍とはほぼ変わらない。MSCI CHINA.dMICN00000PUSは12.6倍とさらに低い。 目立つのは米国株の強さだ。「貿易戦争では米国が優位。利下げ余地もある。中間選挙に向けて経済刺激策も考えられる。米経済の強さが、バリュエーションの差を生み出している」とピクテ投信投資顧問・ストラテジストの糸島孝俊氏は指摘する。 過去の平均との比較ではどうか──。過去5年間の平均PERを実績ベースでみると、TOPIXは約17.4倍。足元の13.9倍は割安水準だ。一方、S&Pは平均18.9倍に対し、足元は21.7倍と割高。欧州株はCACがほぼ同じだが、DAXやFTSEは平均を下回っている。 日本株に割安感はある。ただ、日本株だけが安いわけではないというのが実情だ。「日経平均の過去平均PERは15倍。足元は13倍台であり、貿易戦争などの懸念が払しょくされれば、平均値に回帰する可能性はある。しかし、貿易摩擦などで企業利益が減れば話は違う」と、ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏は話す。 <大幅下方乖離のPBR> 野村証券の日本株チーフ・ストラテジスト、松浦寿雄氏の試算(8月22日時点をベース)では、TOPIXの12カ月先予想ROE9.7%から推計されるPBR(株価純資産倍率)は1.60倍。しかし、実際のPBRは1.33倍で16.7%低い水準にある。 この下方乖離(かいり)は、PBRが今年度末まで現在の水準で推移し、今期の税引利益が予想通りに実現するとすれば、来期に1.0%の減益を見込んでいる水準だ。貿易戦争などを背景にしたグローバル景気減速への懸念を反映したもので、下方乖離自体に違和感はないが、16.7%の乖離率は大きすぎると松浦氏は指摘する。 米国や中国のPMI(製造業購買担当者景気指数)が下降トレンドにあったり、景気の拡大・後退の分岐点である50を下回ったりした時期でも、これほど大幅な下方かい離はみられなかったという。過去にPBRの推計値と実際値が大きく乖離した後は、株価の戻りが大きいケースがみられる。 「景気減速懸念が後退すれば、バリュエーションの修正が起きるだろう。実際、足元の株高は米国とメキシコのNAFTA(北米自由貿易協定)合意で貿易戦争懸念がやや和らいだ効果が出ている」と松浦氏はみる。 <構造的な割安感> 貿易戦争懸念が後退すれば、日本株の割安感も薄れそうだ。しかし、PERやPBRの裏側にあるEPS(一株当たり利益)やROEをみると、日本株の構造的な割安感を醸成する弱さもみえる。 TOPIXのEPS予想は、18年度4.6%、19年度8.8%、20年度が4.7%だ。企業業績は拡大見通しながら、世界平均でみると伸び率は低い。株価がそのままなら、EPSが低下すればPERは高くなる。しかし、利益成長が期待しにくい株に、積極的になる投資家は少ない。EPSの低下以上に株価が下がればPERも低くなる。 ROEもこの5年間で5%台から9%台に改善してきたが、国際的にみるとまだ低い。20年度までみても一桁なのは日本だけだ。改善余地が大きいと好意的に解釈することもできるが、グローバルな比較ではやはり魅力は劣る。PBRは、ROEとPERで決まる。ROEが低い日本株はPBRも低くならざるを得ない。 「日本株をバリュエーション以外で注目している投資家は乏しい」と、BNPパリバ香港・アジア地域機関投資家営業統括責任者の岡澤恭弥氏は話す。 貿易戦争の懸念が後退し、世界の株式市場が再びリスクオン局面を迎えれば、日本株もバリュエーションの修正が期待できる。しかし、日本株(日本企業)の魅力が乏しい限り、構造的な割安感は残り続けるかもしれない。 TOPIX 1731.63 .TOPXTOKYO STOCK EXCHANGE +2.68(+0.16%) .TOPX .TOPX.SPX.GDAXI.FCHI.FTSE 2018年8月27日 / 16:04 / 3時間前更新 コラム:リスクオフの円高にブレーキをかける4つの要因=佐々木融氏 佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長 4 分で読む [東京 27日] - 最近、「円は今でもファンディング(調達=売り)通貨としての機能を維持しているのか」、との質問を受けることが多い。昨今の新興国通貨下落、米中貿易摩擦を巡る混乱などを背景に、市場のリスクオフ度合いが高まっても、ドル円相場の下落が限定的となり、底堅い印象を受けるからだ。 そもそも、リスクオン時の典型的な為替相場の動きとして、資金の出どころである円やドルが両通貨とも弱くなる傾向がある。これは日本も米国も投資家が保有する資金が多く、リスクテークに対する姿勢が強まった場合に、国境を越える投資フローが増え、両国の通貨が売られやすくなるためと考えられる。 また、円の場合には金利が低いこともあって、海外の投資家がファンディング通貨として円を売って、高金利通貨を買うという取引、いわゆるキャリートレードを行うこともある。この結果、リスクオンの際には弱いドルよりも円の方がさらに弱くなることが多い。従って、ドル円相場は上昇する。 一方、そうした資本フローの巻き戻し(ポジションの手じまい)につながるリスクオフの環境では、ドルと円の双方が買い戻され、両通貨が強くなるが、上記とは逆に強いドルよりも円の方がさらに強くなるため、ドル円は下落することになる。 では実際、リスクオフになっても円が買い戻されなくなるという傾向は出始めているのだろうか。 円の名目実効レートとボラティリティー・インデックス(VIX指数)の相関をみると、足元で確かにやや弱まっているものの、現状程度まで相関が弱まっていた時期は過去にもある。特に2014年後半や2016年中のように相関がほとんどない状態が長く続いていたこともあった。少なくとも、円全体としてはファンディング通貨としての機能が大きく変化したとは言えそうにない。 もっとも、市場のリスクセンチメントが悪化した際、円の買い戻し度合いが以前に比べ小さくなっているようにみえるのも事実である。そう感じられる背景的な要因としては、以下の4点が指摘できよう。 <リスクオフになっても円売り需要が根強い訳> まず、円売りの主体が本邦企業・投資家だったためリスクオフ時の円買い戻し圧力が弱い。 前述の通り、リスクオフ時に円が買い戻されるのはポジションの巻き戻しである。この観点から考えると、リスクオン時の円売りの主体によって、リスクオフ時の円買いのセンシティビティー(感応度)が異なる可能性は十分に考えられる。 当社がこれまでも指摘してきたように、最近の円の弱さは、海外投資家による短期的・投機的な円売りよりも、国内投資家・企業による対外投資によるところが大きいとみられる。特に、ここ数年間の特徴としては、本邦企業による対外直接投資の大きさが目立つ。 対外直接投資による円売りは、証券投資や短期的な円売りに比べて、リスクオフ下での円買い戻しにつながりにくい。これが以前に比べて「リスクオフ=円買い戻し」という動きが小さくなっている要因の1つである可能性は考えられる。 第2に、リスクオフになっても根強い円売り需要がある。 1番目の要因は過去の円売り主体に関するものだが、現在の円売り主体も以前と大きくは変っていない可能性が高い。特にアベノミクス開始以降の5年半の円売り主体として目立っているのは本邦企業(対外直接投資)だが、本邦企業による円売りは証券投資や短期的な取引と違い、リスクオフになっても円売りオーダーが引かないという特徴がある。 個々の案件で事情はやや異なるかもしれないが、海外企業の買収や海外への設備投資に絡む為替取引は、買収や投資が決定してから行われるのが通常であると考えられるため、その時々のニュースや株価下落などでセンチメントが悪化しても淡々と円売りが続けられる可能性がある。 <リスクオフ下で円がドルより買われる前提条件> 3つ目の背景的な要因としては、今回のリスクオフの発端が新興国市場に対する懸念であることや、米国経済独り勝ちによりドルが通常のリスクオフ時よりも強くなっている(ドル円相場で円高が進みにくい)可能性が考えられる。 実際、新興国通貨とドル名目実効為替レートの逆相関関係は継続的に非常に強くなっている。円名目実効レートとの相関関係と比べても圧倒的に逆相関関係が強いことは、新興国市場に投資されている資金の出どころは圧倒的にドルが多い可能性を示唆している。 新興国市場に対する懸念の高まりによるリスクオフ状態は、他の要因によるリスクオフ状態に比べ、円よりもドルの買い戻しにつながる可能性が高いと言えそうだ。 さらに、今回は米国経済の独り勝ち状態がドルを通常の状態より強くしていることも重なっている。この結果、ドル円相場で円高が進みにくくなっていることが、円のファンディング通貨としての機能に変化があったのではないかとの印象を与えているのかもしれない。 4つ目の背景的な要因としては、円とドルの相関関係が強くなっている(ドル円相場で円高が進みにくい)ことを指摘したい。 名目実効レートでみた円とドルの相関関係は足元で非常に強くなっている。円とドルは資金の出どころであり、同じような動きをするのは特に珍しいことではないが、ここまで相関関係が強くなるのはそれほど頻繁に起きる現象ではない。 仮説としては、前述した要因が影響しているかもしれない。つまり、最近の円の弱さは、低金利という特性を用いた、短期的なキャリートレードのための円売りという円特有の要因によるところが小さく、投資資金を多く保有する資金の出どころというドルと同じ特性を背景にした円売りが中心のため、売られる時も買い戻される時もドルと同じような動きになるのかもしれない。 こうした状況に鑑みると、以前のようにリスクオフ下で円がドル以上に目立って買われるようになるには、世界経済が新興諸国以外の広範な要因で著しく減速することにより、本邦企業・投資家による対外投資の動きが止まり、逆に本邦投資家が本格的に対外投資の巻き戻しを迫られたり、本邦企業が海外直接投資の際に取った為替リスクのヘッジを余儀なくされる状態となることが必要なのかもしれない。 そう考えると、当面はドル円相場での急速な円高は発生しそうにない。 佐々木融氏(写真は筆者提供) *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。 ヘッジファンドと運用会社、米国債「綱引き」で降参するのはどっち Emily Barrett 2018年8月28日 13:29 JST 綱引きが決着すれば、10年債利回りはボックス圏を脱する可能性 ファンドか資産運用会社、どちらかが近く降参と野村は予想 米国債市場では2つの勢力が綱引きを続けている。引き合う力が極端なレベルに達しているため、いずれかが降参し、10年債利回りが6月半ば以降のボックス圏を脱する可能性がある。 資産運用会社は10年債先物のロング(買い持ち)を積み上げ続け、一方でヘッジファンドはショート(売り持ち)を増やしている。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ポジションの乖離(かいり)は記録的な大きさになっている。 どちらかが近く降参すると、野村の金利ストラテジスト、ジョージ・ゴンキャルベス、サム・ウェン両氏はみている。8月末はいずれのグループもポジションを見直す時期だからだ。 資産運用会社とヘッジファンドそれぞれの「断固とした一方的な見方の綱引き」が10年債利回りを比較的狭いレンジにとどめてきたと、両ストラテジストは27日のリポートに記述。「しかし、これはそう長く続かないかもしれない」と付け加えた。 貿易紛争の悪化やトランプ米大統領の元側近らを取り巻く法的問題で米国債はこのところ買われ、10年債利回りは今月に入って総じて低下している。1日は一時3%に達したが、27日は2.84%前後。 このトレンドが続けばヘッジファンドが降参し、ショートカバーの買いで利回りが2.7%を下回る可能性があると野村のストラテジストらはみる。 しかし、もっと可能性が高いのは強気派が折れるシナリオで、9月15日に税制上の優遇措置が失効して年金基金からの需要が後退すれば、10年債利回りの上昇圧力は強まる公算だという。 原題:Something’s Got to Give in Treasury Market ‘Tug-of-War’(抜粋)
高齢化がアジアの利上げ余地狭める、日本が経験したように−HSBC Enda Curran 2018年8月28日 13:53 JST アジアの中銀にとって人口高齢化を考慮する必要性がさらに生じる 香港在勤のフレデリック・ニューマン氏がリポートで指摘 Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg 人口高齢化がアジア各国の中央銀行の利上げ能力を抑制するとHSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者フレデリック・ニューマン氏(香港在勤)は分析する。 人口動態の変化による影響が表れるには時間がかかる可能性があるが、中国や韓国、 タイ、台湾など高齢化が急速に進むアジア地域でこれは一段と重要な問題となっている。 「こうした観点からすれば、今後数年、長期金利が全般的にそれほど大きく上昇するかどうかは判然としない」とニューマン氏はリポ−トで指摘。一部の国・地域では長期金利が「人口がなお着実に増えている米国の水準を下回る可能性がある」と記した。 日本が経験したように生産年齢人口の伸び悩みは貯蓄との比較で投資を減らし、長期金利を押し下げると説明した上で、「アジアの中銀にとっては人口高齢化を考慮する必要性がさらに生じる。成長を損ねることなく政策金利を押し上げることができる余地を高齢化が小さくするためだ」と論じた。 原題:Asia’s Aging Population Will Keep a Lid on Central Bank Hikes(抜粋) 3兆円の巨額通貨スワップ再開へ、関係改善の象徴に−日中財務対話 占部絵美 2018年8月28日 9:25 JST 中国は周辺国と協調関係築き、米国との関係を有利にしたいとの見方 市場競争阻害する中国の国家資本主義に是正求めよ−日本総研の関氏 日中両政府は31日、北京で日中財務対話を開催する。日本円と人民元の通貨スワップ協定の再開に向けた協議を進め、関係改善の象徴と位置付ける。米中貿易摩擦の過熱を背景に、周辺国との距離を急速に縮める中国。一方で、日本は中国に次ぐ貿易相手国の米国を横目に難しい立ち回りが求められている。 日中通貨スワップについては、5月の首脳会談で協定締結のための作業を早期に完了させることで合意していた。有事に用いられる同スワップはアジア通貨危機後の2002年に開始後、尖閣諸島をめぐる両国関係の悪化を受け、13年に失効した。 政府関係者によると、当時30億ドル(3300億円)だったスワップの交換上限は10倍の規模の3兆円に拡大する。年内開催を予定している日中首脳会談で最終決定される見通しだ。同スワップの規模は共同通信が21日、先んじて報じた。 7回目となる同対話には麻生太郎財務相と劉昆財政相が出席する。財務当局・中央銀行幹部に加え、今回から金融当局幹部も参加。同スワップのほか、両国の経済・金融情勢などについて意見交換を行う。 みずほ総研の大和香織主任エコノミストは、米中貿易摩擦の影響を最大限抑制するため、「中国は周辺国との関係を強化することによって孤立しないようにし、米国との関係も有利に進めたい」との思惑があると分析する。両国の利害が一致して貿易面の協力関係を模索する可能性はあるものの、具体的な成果は「正直、難しい」との見方を示した。 中国は金融リスクの軽減に向けて17年初から金融政策を引き締めに転じたが、米国との貿易摩擦などを背景とした景気減速に対応するため、再び緩和に転じた。日本総研の中国経済展望(8月)によると、米トランプ政権がハイテク製造業を対象とした制裁を講じるなか、製造業に生産抑制の動きが出始めているという。 日本総研の関辰一副主任研究員は、通貨スワップの規模拡大について「中国はここ数年の金融緩和によって経済規模を上回るペースでマネーサプライが拡大しており流動性も多い。それだけ金融リスクが発生した時に必要となる資金量が以前に比べて大きくなっている」と指摘している。 先週ワシントンで開かれた米中次官級通商協議では、摩擦解消に向けた明確な進展は見られず、中国からの年間2000億ドル(約22兆3000億円)相当の輸入品への追加関税と中国の報復措置が現実味を増している。 日米間では、米国による鉄鋼・アルミニウムへの追加関税の導入に加え、最大25%の自動車の追加関税が緊張感を高めている。一方、中国の国有企業に対する補助金などの優遇措置をめぐり、日米と欧州連合(EU)とともに是正措置の検討に入るなど、世界3極で対中国の包囲網を作る動きもある。 日本総研の関氏は、中国の国有企業向けの補助金や低利融資は市場における平等な競争を阻害しており、「アンフェアな競争に苦しんでいる企業も多い」と指摘。米国も中国政府による市場介入の是正を求めている中、日本政府は「さらなる対外投資規制の緩和や中国に耳に痛い話もいう必要がある」と語った。 イタリア国債下落、赤字がEU制限を突破する可能性と副首相発言 Charlotte Ryan 2018年8月28日 18:47 JST • ディマイオ副首相がイタリア紙とのインタビューで語った • 10年債は5営業日続落、利回りは4bp上昇の3.21% 28日の欧州債市場でイタリア国債が下落。財政赤字が欧州連合(EU)規則の上限を突破する可能性があるとのディマイオ副首相の発言が報じられた。 10年物国債は5営業日続落。ディマイオ副首相はイタリア紙とのインタビューで、景気てこ入れのために必要であれば赤字が国内総生産(GDP)の3%という上限を突破することもあり得ると語った。 10年債利回りは4ベーシスポイント(bp)上昇の3.21%に達した。予算発表を来月に控えEUとの軋轢(あつれき)への懸念が高まっている。 原題:Italian Bonds Fall as Budget Concerns Continue to Hit Investors(抜粋)
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