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モス、5年連続の尋常じゃない客数減…マック復活&海外勢上陸ラッシュで「凡庸なバーガー化」
https://biz-journal.jp/2018/08/post_24541.html
2018.08.27 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
モスバーガーの店舗(撮影=編集部)
「モスバーガー」が客離れで苦しんでいる。7月の既存店客数は前年同月比7.1%減で、10カ月連続の前年割れだ。特に今年に入ってからの減少幅が尋常ではなく、1月が1.9%減、2月が3.4%減、3月が4.7%減、4〜7月の累計が6.6%減となっている。売上高は7月まで6カ月連続で前年を下回った。
客離れはここ数カ月が特に著しいが、それ以前から客数の減少は続いていた。2014年3月期から18年3月期まで5年連続で前年割れを起こしている。客離れが止まらない状況にあるといえる。
運営会社のモスフードサービスの業績も厳しい状況にある。8月10日に発表した18年4〜6月期の連結決算は、売上高が前年同期比5.9%減の163億円、本業の儲けを示す営業利益が同62.0%減の3.7億円だった。最終的な儲けを示す純利益は同60.5%減の2.9億円となっている。客離れが大きく影響した。
モスバーガーがこの1、2年において、何か失策を犯した形跡は見当たらない。たとえば、食中毒が発生したり従業員が問題を起こしたりしていれば、客数が減るのは致し方ないといえるのだが、筆者が確認した限りでは、そういった大きな問題は発生していない。
新商品の投入や販促において問題があったわけでもない。昨年、発売約2週間で100万食売り上げた人気バーガーを今年1月から復活販売したほか、2月からはミスタードーナツとコラボした玩具を販売したり、7月からは消費者からの復活リクエストが多かった「ナン」を使ったメニューを復活販売している。もちろんこれらは一例にすぎず、さまざまな施策を講じている。そうしたなかで失策があったわけではない。
このように、モスバーガーで何か大きな問題があったわけではない。では、なぜモスバーガーで客離れが起きているのか。それは、モスバーガーの施策が無難なものに終始してしまい、外食市場の大海原の中で埋没してしまったからだと考える。
先述した通り、新商品の投入や販促の面で失策はなかった。適時、無難に施策を講じてきた。これが“平時”であれば、特段問題はなかった。しかし、今のハンバーガー市場は“大乱世”といえる情勢だ。大乱世で無難な施策を講じていては埋没してしまう。モスバーガーは、大乱世の市場において無難な施策で乗り切ろうとしたため埋没してしまい、客離れにつながったと考えられる。
■高級ハンバーガー店が相次いで日本上陸
事実、ここ数年はハンバーガー店の勃興が激しい。
現在、国内で約180店を展開する「フレッシュネスバーガー」や、約130店の「ファーストキッチン」、約100店の「バーガーキング」、約30店の「ドムドムハンバーガー」は近年店舗網を拡大してきているが、それぞれの運営会社は今後も積極的に店舗網を広げていく意向を示している。
他方、「ロッテリア」はピーク時からは店舗数を減らしているものの、それでも現在国内で約360店を展開しており、店舗数業界2位のモスバーガー(約1300店)に次ぐ3位の規模で存在感を示している。
また、海外発のプレミアムハンバーガー店の台頭も著しい。15年に「ベアバーガー」や「シェイクシャック」が上陸し、16年には「カールスジュニア」、17年には「ウマミバーガー」、18年には「ファットバーガー」が日本で1号店をオープンしている。
このように、近年は多くのハンバーガー店が台頭してきている。そして、それらをマスコミはこぞって取り上げてきた。「高級ハンバーガー店のシェイクシャックが日本上陸!」といったニュースを見聞きしたことがある人は少なくないだろう。モスバーガーを取り巻く環境は明らかに厳しさを増している。大乱世と言っても言い過ぎということはないだろう。こうした状況の中で平時の施策を行っていては、埋没してしまうのは明らかだ。
モスバーガーのポジショニングが変わってしまったことも見逃せない。以前はモスバーガーを高級ハンバーガー店とみなしていた人が少なくなかった。しかし、さらに高級なプレミアムハンバーガー店が台頭したことでモスバーガーの高級感が薄れてしまい、中価格帯の中途半端なポジションに追いやられてしまっている。
そうしたなかでも、ブランドを明確に定義づけたり、存在感を発揮できるような施策を打ち出すことができれば埋没することはなかったと思われるが、残念ながらそれができなかった。
■マクドナルド復活の影響
ここまで、モスバーガーよりも店舗数が少ないハンバーガー店の動向を見てきた。これはもちろん重要な意味を持つが、同じかそれ以上に重要となるのが店舗数業界1位の「マクドナルド」(約2900店)の動向だろう。マクドナルドは現在復活を遂げているが、それとモスバーガーの客数の減少は無関係ではない。
マクドナルドは、14年7月に期限切れの鶏肉を使用していた問題が発覚し、客離れが起きた。客離れは長らく続き、鶏肉問題前も含め、客数は15年12月まで32カ月連続で前年を下回った。「マクドナルドは終わった」と見る向きも少なくなかった。
しかし、16年に入ってから客足は回復するようになる。客数は今年6月まで30カ月連続で前年を上回っている。なお、7月の客数は残念ながら前年を下回ってしまったが、既存店売上高は7月まで32カ月連続で前年を上回っており、連続上昇記録は今もなお続いている。
マクドナルドに客足が戻ってきた理由はいくつかあるが、特に新商品の投入と販促が大きく貢献した。しかも、従来とは異なる手法を採用し、どん底から這い上がるために適したかたちで打ち出した。それが功を奏した。
たとえば、16年2月から同社初となる、新商品バーガーの名前を公募し販売するという施策を打ち出した。これは、ほかでは見られない斬新な取り組みとして話題となった。同年12月からは同社初となる、レギュラーメニューの人気投票企画「第1回マクドナルド総選挙」を実施した。17年8月からはマクドナルドの愛称が「マック」と「マクド」のどちらのほうがより愛着があるかを決める対決キャンペーンを実施し、それに合わせて新商品も投入した。どちらも大きな話題を呼ぶことに成功している。
これらは一例にすぎないが、このようにマクドナルドは“同社初”となる施策を数多く打ち出し、その多くがほかの飲食店でも行っていないような新しいものだったため、その斬新さが大いに受けることとなった。
こうした施策は、斬新すぎて失敗するリスクもあった。ただ、どん底から這い上がるには、多少のリスクは覚悟しなければならない。マクドナルドは、あえてそのリスクをとり、結果的にそれが功を奏したといえるだろう。
このように、最大手のマクドナルドが復活を遂げたほか、多くの競合チェーンが店舗網を拡大し、海外発のプレミアムハンバーガー店が続々と日本に上陸する大乱世の市場の中で、モスバーガーは客離れで苦しんでいる。こうした状況下で、復活販売やコラボといった施策をモスは打ち出してきたわけだが、どれもすでにどこかで実施されたことがあるようなものばかりで、パンチ力に欠けた感が否めない。
モスバーガーが客離れの状況から脱却するには、マクドナルドのように、これまでに行われたことのない斬新な施策を打ち出す必要があるといえるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
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