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トルコリラ急落は世界的な金融危機につながるのか?(マネーポスト)
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/181.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 8 月 14 日 16:36:04: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

トルコリラ急落は世界的な金融危機につながるのか?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180814-00000004-moneypost-bus_all
マネーポストWEB 8/14(火) 16:00配信


トルコリラが反発基調となるための条件とは?(トルコのエルドアン大統領。Getty Images)


 8月10日にトルコリラが一時2割ほども急落したのを機に、週明け13日の日経平均株価が440円安となるなど世界的な株安に見舞われている。欧州や他の新興国を巻き込んだ株安がどこまで進むのか不安は高まっているが、はたしてこの「トルコリラ・ショック」が世界的な金融危機を引き起こす契機となり得るのか。世界の金融市場に詳しいグローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が解説する。

 * * *
 そもそもトルコは多額の対外債務を抱える経常赤字国であり、通貨が下がりやすく、それに伴って輸入品価格が値上がりすることでインフレになりやすい国である。通常、過度なインフレを抑えるためには利上げという金融引き締め策を講じるが、トルコのエルドアン大統領は低金利と大規模インフラ投資によって経済成長を高める政策をとってきた。

 その結果、インフレは加速し、ただでさえ通貨安になりやすい状況になっていた。そうしたなか、米国は2016年に発生したクーデター未遂事件に関与した疑いでトルコ当局に拘束された米国人牧師のアンドリュー・ブランソン氏の釈放を求めてきたわけだが、トルコ側がこれを拒否。これに反発したトランプ大統領がトルコの閣僚に経済制裁を課し、トルコからの輸入品の関税を倍増したのをきっかけに、トルコリラ安が一段と進んだ構図だ。

 問題は今後の見通しだが、トルコリラが反発基調となるためにはブランソン氏の釈放を認めるなど米国と融和するか、トルコ中央銀行の大幅な利上げが必要となるだろう。ただ、現状ではそのような動きも見られず、日本株や米国株にとっても短期的な売り材料とされてしまい、9月頃にかけて調整が続く可能性がある。

 しかし、今回のトルコリラ暴落で、欧州をはじめとする銀行のトルコ向け融資が焦げ付くのではないかとの懸念から銀行株を中心に売り込まれたわけだが、そもそも先進国の銀行のトルコに対する融資額は、日米でそれぞれ1〜2兆円程度、欧州はスペインが突出しているが、英国を合わせても全体で20兆円弱というところ。先進国の大手銀行は1行だけで100兆円近い貸出金を持つことを考えても大した金額ではないだろう。まして、それらがすべて焦げ付くわけでもない。

 そう考えていくと、今回のトルコリラ暴落は短期的に金融市場を混乱させる要因になったとしても、世界的な金融危機を引き起こすほどではないのではないか。

 それでも夏枯れ相場の中で、新たな売り材料としてトルコリラ安が出てきたため、もう少し調整局面が続く可能性は否定できないだろう。しかし、中長期的には企業業績が相場の先行きを決定するので、大きく下がったところはむしろ買いのチャンスという認識もできるかもしれない。



 

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コメント
1. 2018年8月14日 21:07:12 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1298] 報告

日本株は大幅反発、トルコ問題の過度な警戒後退−全業種高い
赤間信行
2018年8月14日 8:08 JST更新日時 2018年8月14日 15:44 JST
• トルコ中銀は金融システム強化へ、トルコ・リラは下げ一服
• 為替は円安方向、円高リンクで前日急落の反動で上げ余地大−SBI証
14日の東京株式相場は5営業日ぶりに大幅に反発。トルコの金融システム強化に向けた取り組みなどを受けて、前日に対米ドルで最安値を付けたトルコの通貨リラの下げが一服。リスク回避の円買いが小休止して電機など輸出関連や通信中心に幅広い業種が買われた。
  TOPIXの終値は前日比27.45ポイント(1.6%)高の1710.95、日経平均株価は同498円65銭(2.3%)高の2万2356円08銭。両指数とも3月27日以来4カ月半ぶり上昇率。
  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、トルコ問題による欧州金融機関への影響が懸念され前日の日本株は大幅安となったものの、「トルコへのエクスポージャーが大きいスペインでも5%未満。欧州中央銀行による数次のストレステストもあり欧州の銀行の経営不安は不要」と指摘。「トルコ・ショックをあおって日本株を売り込んだ向きが手じまった」と話した。
  トルコ中央銀行が13日に債務の支払準備率引き下げやリラと外貨の流動性の管理方法に関する規則緩和などを発表して以降、為替相場は円安に振れ、きょうのドル・円相場は一時1ドル=110円90銭を付けた。ユーロ・円相場も1ユーロ=126円50銭台まで円が下落。前日に1ドル=7.236リラと最安値を付けたトルコ・リラは6.8−6.9リラ台で推移している。
  為替相場の円高一服を受けてきょうの日本株は反発して開始。SBI証券の鈴木英之投資調査部長は、トルコ中銀が危機対応の政策を早期に打ち出したことが好感されているとした上で、「日本株は前週末から円高に呼応して売り込まれただけに、円高の勢いが止まったことで反発の余地が大きくなった」との見方を示した。TOPIXと日経平均は10、13日の2日間でいずれも3.3%下げ、世界の主要株価95指数のなかで下落率8、9位になっていた。1、2位はいずれもトルコ株で4.7%と4.6%。

  午後に入ると一段高となり、日経平均はこの日の高値で引けた。しんきんAMの藤原氏は短期筋の買い戻しが中心としながらも、「株価の下げを待っていた一部投資家がきのうの下げ局面で買いを入れ、トルコ懸念の緩和を受けたきょうも買いに動いたのではないか」とみている。
• 東証1部33業種の上昇率上位は倉庫・運輸関連、精密機器、情報・通信、陸運、電気・ガス、不動産
• 売買代金上位では4−6月期営業利益が前年同期比4.2倍となったブイ・テクノロジー、利益が市場予想を上回った光通信、SMBC日興証券が目標株価を上げたソフトバンクグループが上昇
• 三菱UFJモルガン・スタンレー証券が業績予想を減額したスタートトゥデイ、みずほ証券が投資判断を下げたコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは下落
• 東証1部の売買高は12億624万株、売買代金は2兆533億円
• 値上がり銘柄数は1795、値下がりは264


トルコ・リラ急反発、一時6.8%高−国内小口投資家がドル売り
Constantine Courcoulas
2018年8月14日 16:41 JST
• 小口投資家は5000万−6000万ドル相当の外貨を売却
• 流動性の低さが相場の動きを増幅したとトレーダー
トルコの通貨リラが現地時間14日の取引で急反発。過去1カ月で30%近い下落を受けて、国内の小口投資家がドルを売って利益を確定した。
  同日の市場でトルコの小口投資家は5000万−6000万ドル(約55億5500万−66億6500万円)相当の外貨を売却したもようだと、イスタンブールの為替トレーダーが述べた。メディアに対して発言する権限がないとして匿名を条件に語った。流動性の低さが相場の動きを増幅したと付け加えた。
  イスタンブール時間午前10時8分現在、リラは6%超上昇の1ドル=6.4609リラ。10年物国債利回りは123ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し21.46%。
原題:Turkish Lira Rebounds as Locals Sell Dollars Amid Thin Liquidity(抜粋)


 

パウエル氏率いる米金融当局、利上げ継続へ−トルコ市場混乱でも
Rich Miller、Jeanna Smialek
2018年8月14日 13:30 JST
• 市場が織り込む9月の利上げ確率は90%、12月は55%前後
• 中国絡みでなければ米国は新興国市場の動向をあまり気にせずか

パウエル氏

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
トルコに端を発した金融市場の混乱は、新興国全般に波紋が広がりつつある。だが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局が利上げを休止する理由にはなりそうにない。これが熟練のFRBウオッチャーの見立てだ。
  確かに2015、16両年には海外情勢を考慮して米金融当局が利上げを見送ったり、遅らせたりしたことはあった。しかし、当時は現在に比べて米国の失業率は高く、基調的なインフレ率は低かったという大きな違いがある。恐らくもっと重要なのは、当時の混乱の中心が世界第2の経済大国で、経済規模がトルコの10倍余りの中国だった点だろう。

  元FRB当局者で、現在はバークレイズの米国担当チーフエコノミストを務めるマイケル・ゲーペン氏は「過去の事例から一般的に言える結論は、中国を巻き込むものでない限り、米国は新興市場の動向を総じて無視する公算が大きいということだ」と語った。
  こうした見方は投資家のものと一致する。トルコ問題の波及が懸念されつつも、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む9月の米利上げ確率は90%で1週間前と変わりがなく、12月の利上げ確率は約55%とされている。
  米株価はこのところ、トルコ情勢もあって軟調な地合いとなっているものの、引き続き過去最高値近辺で推移し、影響は限られている。新興市場の緊張に伴うドル高は、米企業の輸出競争力をそいで経済成長を多少損なう恐れがあるが、長期金利の低下がそうしたマイナス要因を一部相殺している。
  一方、脆弱(ぜいじゃく)さを抱える新興国に一段とストレスを加えているのは、通商問題を巡るトランプ米大統領の攻撃的な姿勢だ。JPモルガン・チェースのグローバル経済担当ディレクター、デービッド・ヘンスリー氏(ニューヨーク在勤)は、「米国は懸念や不安を抑えるという、従来の役割を果たしていない。それどころか、火に油を注いでいる」と指摘した。
原題:Powell to Keep Hiking as U.S. Growth Overshadows Turkey Turmoil(抜粋)

 


 

人民元の最悪期は終わった、悪材料織り込み済み−スタンダードC
Tian Chen
2018年8月14日 13:46 JST
• 元相場はドルに対してこの3カ月に約8%下落
• 貿易摩擦や金融緩和などマイナス要因は考慮済み−フェン氏
中国・人民元が大幅に下落する最悪期は終わった−−。トルコ情勢が世界の市場を混乱させている中で、英スタンダードチャータードの大中華圏担当マクロトレーディング責任者、チャールズ・フェン氏はこう見ている。
  貿易摩擦や中国の金融政策緩和など、人民元の下押し圧力となっていた要因は相場にほぼ織り込まれている上、ドルがさらに上昇する余地も限られているとフェン氏は分析する。年初来高値から20%余り下落している中国本土株も底入れに向かう可能性がある。
  外国為替や金利、現地通貨建て社債トレーディングを統括する香港在勤のフェン氏は、ドルが弱含めば元が最近の下げと同程度のぺースで戻す「十分な可能性」があると指摘した。また元上昇が経済のファンダメンタルズやドルの全体的な方向性に沿ったものであれば、当局が大規模介入に乗り出す公算は小さいとも述べた。

  米中間の貿易摩擦激化や景気下支えに向けた中国人民銀行(中央銀行)による緩和の動きを背景に元はドルに対してこの3カ月に約8%下落。アジア通貨で最悪のパフォーマンスを記録している。中国当局は元ショート(売り持ち)のコストが事実上高くなる措置を打ち出しており、為替市場での「群集行動」を避けるよう市中銀行に促した。元安になると、米国による対中関税引き上げに輸出企業は対処しやすくなるが、海外資産の外貨建て利益を押し下げるリスクにもなる。
原題:Veteran StanChart Trader Says Worst of Yuan Slump Is in Past (1)(抜粋)


 

 


ビットコイン6000ドル割れ、8月下落率は23%−仮想通貨ほぼ全滅
Eric Lam
2018年8月14日 12:18 JST
• ビットコインは一時6.2%安の5887ドルと6月以来の安値
• 規模が大きめの仮想通貨100種のうち99通貨が過去24時間に下落
仮想通貨ビットコインは14日、6000ドルを割り込んだ。他の仮想通貨の多くも値下がりし、今月に入ってからの売りが止まる兆しは見えない。
  ビットコインは香港時間午前10時44分(日本時間同11時44分)現在、6.2%安の5887ドルと6月以来の安値。イーサは12%安。コインマーケットキャップ・ドット・コムがモニターする規模が大きめの仮想通貨100種のうち、99通貨が過去24時間に下落した。
  ビットコインを裏付けとした上場投資信託(ETF)承認への期待が外れたことなどで仮想通貨は今月に入り下落。ビットコインの月初来下落率は約23%となっている。年初来では58%安。

原題:Bitcoin Sinks Below $6,000 as Almost Everything Crypto Tumbles(抜粋)


英雇用統計:4−6月失業率は43年ぶり低水準、賃金の伸びは鈍化
David Goodman
2018年8月14日 18:09 JST
• 4−6月失業率は4%、1975年2月以来の低水準
• 賃金の伸びは2.4%に鈍化、9カ月ぶり低水準
英国の4−6月失業率は43年ぶり低水準となったものの、賃金の伸びは鈍化した。
  政府統計局(ONS)の14日の発表によると、4−6月失業率は4%と、少なくとも1975年2月以来の低水準。エコノミスト予想は4.2%だった。
  ただ、賃金の伸びはやや鈍化し、上昇率は2.4%と9カ月ぶり低水準となった。イングランド銀行は3.5%に向けて加速すると見込んでいる。賞与を除く賃金上昇率は2.7%で、1月以来の低い伸びだった。インフレ率の2.4%は上回った。
原題:U.K. Unemployment Falls to New 43-Year Low But Pay Growth Slows (抜粋)


 


ダリオ氏率いるブリッジウォーター、金ETFの持ち分維持−4〜6月
Luzi Ann Javier
2018年8月14日 9:17 JST
• SPDRゴールドの持ち分は6月30日時点で390万口
• iシェアーズ・ゴールドの持ち分は変わらずの1130万口
金市場から資金が流出し金価格が下落する中、資産家でヘッジファンド運用者のレイ・ダリオ氏は、金を裏付けとする二つの主要上場投資信託(ETF)の持ち分を維持した。
  規制当局への届け出によれば、最大の金連動型ETF「SPDRゴールド・シェアーズ」のダリオ氏率いるヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツによる持ち分は6月30日時点で390万口、2番目に規模の大きい「iシェアーズ・ゴールド・トラスト」の持ち分は1130万口となっている。
  4−6月にSPDRゴールドからは10億ドル(約1100億円)余りが引き揚げられ、iシェアーズは四半期ベースでは2016年以来の資金流出となった。ドル相場と株価の上昇で金の安全資産としての魅力が低下し、金価格は4−6月に5.5%下落。米国の経済成長が好調で米金融当局による利上げ継続の妥当性が高まり、利息の付かない資産である金への逆風が強まった。
原題:Billionaire Dalio’s Bridgewater Maintains Holdings in Gold ETFs(抜粋)

 

中国:7月の工業生産や投資が予想に届かず−貿易摩擦激化の中
Xiaoqing Pi
2018年8月14日 11:13 JST更新日時 2018年8月14日 12:15 JST
• 工業生産は前年同月比6%増、予想6.3%増
• 1−7月の固定資産投資は5.5%増−予想6%増
7月の工業生産など中国の経済指標は市場予想に届かなかった。貿易摩擦の激化が先行きに影を落としている。
  国家統計局が14日発表した7月の工業生産は前年同月比6%増。ブルームバーグがまとめた市場予想は6.3%増だった。
  7月の小売売上高は前年同月比8.8%増加。市場予想は9.1%増。1−7月の都市部固定資産投資は前年同期比5.5%増と、データがさかのぼることができる1999年以降で最低の伸び。予想は6%増だった。
  政策担当者が米国との貿易対立の長期化に備える中、中国経済は勢いを失いつつある。当局者は中小企業への融資を増やし、インフラ投資支援を拡大すると表明したが、そうした措置が成長面で効果を上げ始めるには時間がかかりそうだ。
Sliding Economy
Retail sales and investment slowing, output growth flat

Source: National Bureau of Statistics
  AMPキャピタル・インベスターズの投資戦略責任者、シェーン・オリバー氏(シドニー在勤)は「全てが予想をやや下回った」と指摘。「昨年始まったシャドーバンキング(影の銀行)の融資抑制と米国との貿易摩擦を巡る不確実性が影響しているのは明らかだ。さらなる刺激策の根拠となる」と語った。
  
原題:China Growth Momentum Stalls as Trade War Turns Real for Economy(抜粋)
(4段落目以降にコメントなどを追加して更新します.)

 

PRESIDENT Online2018年08月12日 11:15

近いうちに訪れる"世界不況"が株の買い時

これから私たちの生活はどう変わるのか。マイナス金利の拡大や消費税の増税、東京五輪後の経済後退にどう備えればいいのか。経済・金融とお金の運用、家計の防衛策に詳しい3人の専門家に話を聞いた。

※本稿は、「プレジデント」(2017年11月13日号)の記事を再編集したものです。

(1)マイナス金利拡大
低金利で資産運用ができない
マイナス金利政策によって、金利の大幅な低下が銀行の収益悪化や不動産価格の高騰、資産運用難などの副作用を生んでいる。だが、日銀はマイナス金利政策のさらなる効果を目指し、金利をより引き下げる可能性がある。

▼大江コメント

日銀 黒田東彦総裁(AFLO=写真)

日銀がいくらお金を供給しても世の中にそれが十分出回っていないため、経済は活性化しません。併せて大胆な経済政策、成長戦略が必要なのです。黒田東彦総裁の任期は18年4月8日までですが、官邸の信任が厚いため、続投する可能性大。そうなれば、異次元緩和は継続されることになるでしょう。

ではどうするか。私は株式投資をおすすめします。ただし、日本株だけに集中するのはダメ。世界の1割程度のシェアしかありませんから、日経225やTOPIX(東証株価指数)などのインデックス投資でも、実態は日本という1つの市場で運用するアクティブ運用。中長期の資産運用は、世界経済の規模に合わせて日本以外の先進国株8割、新興国株1割、日本株1割といった国際分散投資が基本。毎月の積み立て投資なら平均購入単価を安くできるため、慌てずに継続しましょう。

結論:積み立てによる国際分散投資で、資産を増やせ

▼中原コメント
マイナス金利は、銀行の収益を悪化させて中小企業に対する融資のリスクを取りづらくし、不動産投資への融資が将来の不良債権予備軍に。さらに、マイナス金利によって年金や退職金の企業負担が重くなり、企業収益も圧迫されています。

資産運用はもはや金利で稼ぐのは困難。かといって米国株も日本株もすでに高値圏であまりおすすめできない。ですが、私は早ければ2018〜19年にも米中の経済が大減速し、世界同時株安に波及すると読んでいます。08年のリーマン・ショック後、世界的な金融緩和により低金利が続いた中で、新興国も含めた世界中の国々で債務が増えすぎているからです。

借金に依存する経済はいずれ行き詰まり、逆回転を始めるのは歴史が証明しています。ですから、株を買うなら景気後退期の最中の安いときが狙い目。18〜19年は日経平均で1万6000円割れくらいの下げはあるかもしれません。

結論:近いうちに訪れる不況が、株の買いどき

(2)消費税増税
10%引き上げで家計はさらに厳しく
安倍政権は「2019年10月の消費税率10%への引き上げ」を予定通り実施する考え。14年4月に消費税率が5%から8%に上がったときのように、景気回復に強いブレーキがかかることを覚悟しておいたほうがいい。

▼荻原コメント
もし増税したら消費がさらに落ち込み、企業の売り上げが減り、賃金も上がらないという悪循環が続き、急速に深刻なデフレへと逆戻りします。消費税の増税は、よく「子孫にツケを回さないために必要」なんていわれますが、これはウソ。私たちが消費税を払うようになってから、たかだか28年、それも平均で5%程度。でも、これから生まれてくる子は一生涯10%以上の消費税を払う。子孫にツケを残しまくりです。

家計の防衛策としては「お金を使わず、貯める」ことと「収入を増やす」ことしかない。夫は副業を始め、妻はパートではなく正社員になり、子どもはアルバイトをして、と一家総出で稼がないと、この難局は乗り切れないかも。政府は厚生労働省「モデル就業規則」の副業について「原則禁止」から「原則容認」に変更する方針です。自分にどんな副業ができるか、1度じっくり考えてみてはどうでしょうか。

結論:一家総出で稼げ! 副業も要検討

▼大江コメント
今増税しないと、国の財政が危なくなるなんてことはない。日本の借金は確かに約1070兆円ありますが、バランスシートで見ると資産も結構ある。現預金や有価証券、独立行政法人などへの出資金のほか、日本銀行法によって日銀の財産はすべて国のものになるため、日銀が保有する国債も国の資産になります。これらをすべて足すとトータルの赤字は100兆円程度で、GDP(約520兆円)の約2割。特に心配することはありません。

もし増税が実施されたら、やってはいけないのが増税前の「駆け込み消費」。前回8%に上がったときでおわかりのように、増税後のほうが住宅もクルマも家電も安くなります。また、一般に増税後は一時的な景気後退が来ます。アクティブな株式投資をやっているなら、増税前に株を売って現金に換えておき、増税後の株価が下がったときに買い直す戦術を検討してみてもいいでしょう。

結論:増税前の駆け込み消費は、やってはいけない

(3)年金減額
年金はどのくらい減らされるのか
2016年末、年金改革法案(いわゆる年金カット法案)が成立した。たとえ物価が上がっていても、賃金が下がれば、年金支給額はカットされる。適用は2021年4月からだ。老後不安はますます高まりそうだ。

▼中原コメント
年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられ、最終的には75歳にならないと帳尻が合わない。そのために、政府は75歳まで働ける環境の整備に力を入れ始めるでしょう。ですから、もう覚悟を決めて「年金が減っても自分で稼げばいい。生涯現役のほうが人生を楽しめる」くらいポジティブに考えましょう。労働人口は減っていきますから、75歳まで働ける仕事は結構あると思います。ただし、よりよい条件で働くためには、やはりスキルを磨いておくことが大切です。

では、どんなスキルがいいのか。注意したいのは、AI(人工知能)に奪われないスキルを選ぶこと。税理士や公認会計士、弁護士、弁理士などの士業は半分以上、AIにとって代わるでしょう。狙い目は、経営戦略策定、データ・サイエンティスト、マーケッター、商品企画、M&A支援など。きめ細かな心遣いが求められる接客・介護などの分野も有望です。

結論:AIに奪われない仕事は何かを、見極める

▼大江コメント
公的年金は盤石で、よく言われるように破綻寸前でもない。日本の年金制度は単年度決算で、毎年入ってくる年金保険料で年金を支払う仕組みになっています。たしかに今は少子高齢化で収支は赤字になり、これまでの貯金(約145兆円、2016年度末)から毎年5兆〜6兆円程度が補填されています。ですが、一方でこの貯金が減らないように運用して増やしています。16年度の運用状況は約8兆円のプラス。

ただし、公的年金だけではゆとりある生活は難しいですから、自助努力は必要です。定年前後に訪れるのは、健康、お金、生きがい(孤独)という3つの不安。これらをなくす最善の方法は「可能な限り働き続けること」。頭を使って体を動かし、人と関わる機会が増えれば、認知症の予防にもなります。男性も女性も、最後に頼れるのはお金ですから、できる限り働き続けることが大切だと思います。

結論:定年後も働くことで、お金と認知症の予防になり一挙両得

(4)残業代カット
今後、対象者大幅拡大の恐れは?
労働基準法改正案では、残業代ゼロは「年収1075万円以上」「高度専門職」に限定されるが、法案が通れば、省令で簡単に内容は見直せる。経団連は以前から「年収400万円以上に適用せよ」と要求している。

▼荻原コメント
残業代カットの対象となる年収や職種は、いずれ必ず広がります。労働者派遣法がそうでした。派遣可能業種が当初の13業務から16業務に、そして26業務に広がり、さらに今では業務の分類さえもなくなっています。経団連の求める年収400万円まで、おそらく同じような道を辿るでしょう。

でも、会社勤めだと自分の好きなことが自由にできるわけではなく、いつまで経っても束縛されます。ならば、いっそのこと60歳の定年を機に、あるいはその前に起業してしまうのも1つの選択肢です。そのためには、50歳以上になったら会社以外の人脈を広げていくことも大切。今は、アイデア次第でインターネットを活用したビジネスがいろいろできます。海外勤務の経験があるなら、「シニア海外ボランティア」はどうでしょう。仕事にもよりますが、2年間の勤務で130万円くらい貯まるそうです。

結論:会社の給料だけに頼らず、副業やプチ起業も視野に

残業が減ればサラリーマンの給料が下がってしまう ≫

▼中原コメント
安倍政権の「働き方改革」では、残業時間の大幅な削減が義務付けられる見通し。しかし、今の企業の賃金体系は残業代の占める割合が少なくなく、残業が減ればサラリーマンの給料が下がってしまう。時代の趨勢として残業を少なくするのは仕方ないですが、その分、企業は基本給を上げる必要が出てきます。しかし、その実現は極めて不透明な情勢です。

こうした状況下、国民に自助努力で資産運用すべきということ自体が間違っています。投資するなら、一生涯働けるように自己投資にお金を回すといい。例えば、経営やファイナンス、マーケティングなどの知識を身につけられる社会人向けのビジネススクールに通うのはどうでしょうか。学費の捻出が難しい場合は、安上がりなインターネット大学で学んだり、書物で学んだりする方法も。学ぶのに年齢は関係ない。いくつになっても好奇心を失わず、新しいことにチャレンジする気持ちと行動力が大切です。

結論:ビジネススクールや書物などを利用して、自己投資

(5)オリンピック
2020年以降、日本は不況に陥るか
五輪前は国のインフラ投資や五輪需要を見込んだ民間投資が前倒しで行われるが、その反動で開催後に投資が鈍化し、景気が低迷する。実際、都心部の不動産や建材の価格が高騰しているが、バブル崩壊が危惧される。

▼中原コメント
18〜19年に米中経済が大減速すれば、20年の東京五輪の頃はすでに不況期に入っていて、今高騰している不動産価格も下落しているでしょう。超低金利環境は、相続税対策のアパート経営やサラリーマンの賃貸不動産経営に火をつけましたが、そのブームも間もなく幕を閉じます。

問題は、これから本格的な人口減少が始まるのに、供給過多にある貸家の供給がさらに増え続けていること。すでに全国で820万戸の空き家があり、その半数超は貸家。遅くとも10年後には全国的に家賃が大きく値下がりします。

こうした状況を考えると、今後は住宅を買った価格よりも高く売れる可能性は極めて小さい。これからマイホームを持つなら、将来、高く売って利益を出そうなんて考えず、「家族と楽しく暮らす」ことを優先して選んだほうがいい。定年後もずっと幸せに暮らせるのか、などもポイントになるでしょう。

結論:賃貸経営や売却益狙いの不動産投資は、避けるべき

▼荻原コメント
「オリンピックの崖」なんて言われるように、五輪後に前倒し投資のリバウンドが一気に来るでしょう。では、オリンピック後の不況にどう備えればいいのか。その処方箋が企業も行っている「ダウンサイジング」。デフレ不況の中で企業がやってきたことは、内部留保の増加とコスト削減、借り入れ返済です。家計もそれと同じ。貯金と節約、住宅ローンの繰り上げ返済に励むべきです。

デフレの中では無理して投資しなくても、今あるお金を減らさなければいい。日本の金融機関は今、マイナス金利政策によって運用難に陥り、収益の悪化に苦しんでいます。そんな中で狙っているのが個人の資産。こういうと何ですが、まるであの手この手で手数料稼ぎを目論んでいるかのよう。商品の仕組みやリスクをよく理解できていないのに、「すすめられたまま手を出して大損した」なんてことにならないよう、注意してくださいね。

結論:五輪後不況に備え、今から家計をダウンサイジング

(6)教育無償化
政治家の甘言を信用できるのか
自民党は消費増税の増収分の一部を充て、幼稚園・保育園(3〜5歳)の費用を無償化する公約を掲げた。一部の高等教育の無償化もある。ただ、財源は明確化されていない。

▼荻原コメント
教育無償化に対して政治家がどこまで本気なのかは怪しいもの。でも国が負担する教育費は、他の先進国に比べて非常に少ないのが現状です。日本では国立大学(自宅生)でさえ授業料のほか、入学金、通学費、図書費などを含めると4年間に500万円以上かかる。だから50%を超える学生が奨学金を利用しています。頭がよくてもお金がなければ大学で学べないわけです。

でも、日本の教育環境もこれからガラリと変わるでしょう。今や授業料がすごく安いインターネット塾も登場しています。まだ知名度は高くありませんが、インターネット大学もあります。

結論:政治に頼らず、授業料の安い塾を効果的に取り入れる

(7)北朝鮮暴発リスク
有事の資産防衛はしておくべきか
安倍政権はトランプ米大統領と共に、北朝鮮の金正恩政権に圧力をかけ続けている。国際社会の包囲網が強まった結果、窮鼠猫を噛むかのごとく、北朝鮮が暴発する日が来るかも。

▼大江コメント
これはあくまで私個人の考えですが、日本にミサイルが飛んでくるような戦争は起きないと思います。仮に北朝鮮暴発リスクがあるにしても、「有事の資産防衛」は必要ない。

よく金地金やビットコインがいいと言われますが、もし日本がミサイル攻撃されたら金を保管している貸金庫はもちろん、銀行も閉鎖されてしまう事態だって起こりかねません。ビットコインもどんな値動きになるか、まったく想定できません。「有事の金」とよく言いますが、これは昔、欧州で戦争が起きて難民が逃げ惑ったとき、持ち運びできる金が役立ったことに由来した話。島国の日本は、そもそも金を持って逃げるところがありません。

結論:有事に備えて、金やビットコインを買う必要はない

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大江英樹
経済コラムニスト
大手証券会社を定年退職後、オフィス・リベルタス設立。資産運用、企業年金、シニア層向けライフプランなどをテーマに執筆や講演などで活躍中。

中原圭介
経営アドバイザー・経済アナリスト
その経済予測の正確さには定評がある。著書多数。2017年11月に『中原さん、未来の日本経済はどうなるんですか?』を上梓予定。

荻原博子
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。
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(経済コラムニスト 大江 英樹、経営アドバイザー・経済アナリスト 中原 圭介、経済ジャーナリスト 荻原 博子 構成=河合起季 撮影=大沢尚芳、加々美義人 写真=AFLO、時事通信フォト、iStock.com)

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2. 2018年8月14日 21:17:29 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1299] 報告

トルコ株最大ETF、資金流入拡大も要注意−空売り用の口数増か
Carolina Wilson
2018年8月14日 10:52 JST
• iシェアーズMSCIトルコETF、10日に5300万ドル余りが流入
• 弱気ポジション構築で口数増必要だった−ルークマン氏
トルコ株を対象とする最大の上場投資信託(ETF)への資金流入が最近膨らんだ。だが、これを強気のシグナルと捉えるべきではない。
  クレディ・スイス・グループの米州担当ETFマーケットメーキング責任者、ジョシュ・ルークマン氏によると、「iシェアーズMSCIトルコETF」への資金流入は、トレーダーらが借りて空売りするための新たな口数が必要となっていることを示唆している可能性がある。トランプ政権がトルコの鉄鋼・アルミニウムへの関税率引き上げを表明した後、同ETFには5300万ドル(約58億7000万円)余りが10日に流入、約5年ぶりの大きさを記録した。
  iシェアーズMSCIトルコETFの発行済み口数が1400万口と比較的少なく、弱気ポジションを取ろうとしているトレーダーらに供給するため口数を増やさなければならなかったとルークマン氏は話す。
  S3パートナーズのデータによれば、同ETFの空売り残高は今月、485万口と少なくとも1年ぶりの高水準に膨らんだ。10日には過去最高の売買を記録、約15%安と2008年以来の大きな下げとなった。週明けの13日は11%下落した。
Trading Turkey
Investors scoop up short positions in Turkey ETF amid currency crisis

Source: S3 Partners
原題:Turkey ETF Sees Cash Inflows Surge as Short Sellers Smell Blood(抜粋)


 


仕組み信用商品に警戒警報、「リスクオフ」の時期に入ったーBofA
Christopher DeReza
2018年8月14日 14:50 JST
証券化商品についてよりディフェンシブにーバチュバロフ氏ら
連邦機関の住宅ローン証券をアンダーウエート
バンク・オブ・アメリカ(BofA)によると、仕組み信用商品の市場には警戒警報が鳴り響いている。アナリストらは同市場が新たな「リスクオフ」の時期に入りつつあると警告した。多くの指標が用心を促しているという。

  アレクサンダー・バチュバロフ氏らアナリストはリポートで「証券化商品についてよりディフェンシブになり、連邦機関の住宅ローン証券をアンダーウエートにしている」と説明。「リスクオフの時期が恐らく始まっている」と記述した。

  投資家のリスクテーク意欲の低下は、投資適格社債のスプレッドの拡大につながり、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の住宅ローン担保証券など、より高格付けの仕組み商品に影響する可能性が高いという。

  トレンドを示す重要な指標は10年物米国債利回り、2年物と10年物のスプレッド、金利のボラティリティー、投資適格級社債のスプレッドで、「8月は、イールドカーブのフラット化、金利低下、スプレッド拡大に向けた戦術的ポジションを取るのに良い時期となるだろう」としている。


原題:Bank of America Says Pump the Brakes on Structured-Credit Risk(抜粋)


 

 


ソブリン債にとどまらない、アルゼンチンとトルコは社債でも安値競う
Justin Villamil、Pablo Gonzalez
2018年8月14日 14:38 JST
• トルコの銀行への打撃は特に甚大−リターン悪化を主導
• アルゼンチンでは汚職、トルコでは政策の失敗が社債の打撃に
ソブリン債だけではない。アルゼンチンとトルコは社債でも安値争いを演じている。
  今月最もパフォーマンスが悪いドル建て新興国社債10本のうち、6本がトルコ企業、4本がアルゼンチン企業だ。最もリターンが低いのはトルコのイシ銀行の社債(2028年償還)でほぼマイナス19%、この集団で最も高いアルゼンチンの公益会社トランスポルタドラ・デ・ガス・デル・スルでさえマイナス7.3%となっている。一方、ソブリン債のリターンはアルゼンチンがマイナス7.5%、トルコはマイナス6.7%。
  
  ピクテ・アセット・マネジメントのシニア投資マネジャー、グイド・チャモロ氏(ロンドン在勤)は「アルゼンチンとトルコは結合双生児のごとく取引されている」と指摘。「その理由は異なるものの、結果は同様だ」と語った。

  トルコとアルゼンチンは共に経常収支赤字の規模が大きく、インフレ加速に苦しんでいるが、トルコは伝統的な経済政策の遂行や利上げを拒み、通貨リラや資産価格の暴落を招いた。アルゼンチンでは、中央銀行が13日に利上げに踏み切ったものの、汚職スキャンダルの急拡大で投資が失速する恐れがある。
  SMBC日興キャピタル・マーケッツのエグゼクティブディレクター、オクサナ・ラインハルト氏(ロンドン在勤)は、トルコ資産はある時点で魅力的になるかもしれないが、今トルコに投資することは「落ちてくるナイフをつかむようなものだ」と語った。
  アルゼンチンでは、リセッション(景気後退)に向かいつつある状況に加え、国内大手企業の一部が関与した汚職捜査が輪をかけた。トランスポルタドラ・デ・ガスを共同管理するパンパ・エネルヒアを含む、パフォーマンス下位の社債10本に入るアルゼンチン企業4社の全てが、この捜査に直接または間接的に関わっている。パンパの広報担当者は、社債価格の下落は同社の第2四半期の損失が影響した可能性があると説明。その他のアルゼンチン企業はコメントを控えた。
  アルゼンチンの通貨ペソは年初から35%余り下げており、世界で2番目にパフォーマンスが悪い。そして最下位に位置するのがトルコ・リラだ。
             
原題:Think Turkey, Argentine Sovereign Debt Is Bad? Look at Companies(抜粋)


 

 
トルコ危機が新興市場全般に波及、株式と通貨が1年ぶり低水準に
Rita Nazareth、Ben Bartenstein、Giulia Morpurgo
2018年8月14日 6:48 JST
トルコの金融システム下支え措置は不十分と一部アナリスト
アルゼンチンのセンチュリーボンド利回りが10%に急上昇
トルコ危機は新興市場全般へと波及し、株式と通貨の双方を1年ぶりの低水準まで押し下げた。

  トルコの政策当局が国内金融システムを下支えする最初の措置を講じたものの、一部アナリストからは苦境にある市場を守るには不十分だと見なされ、トルコ・リラは一段安となり、他の新興市場国にも通貨安が広がった。トルコのエルドアン大統領は米国を批判。利上げを論外とし、国際的な救済措置の要請を拒否すると表明する中で、トレーダーらはトルコ資産を売り浴びせ、それが他の途上国経済へと波及した。

  南アフリカ共和国の通貨ランドの1カ月物インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)は2015年12月以来の大幅上昇となり、アルゼンチン・ペソが1ドル=30ペソまで下落する中でアルゼンチンのセンチュリーボンド(期間100年の超長期債)利回りは10%に上昇した。

  野村インターナショナルの外為ストラテジスト、ジョーダン・ロチェスター氏(ロンドン在勤)は、「またもやマニック・マンデー(大騒ぎの月曜日)だ」と発言。「われわれはトルコがこの流れをとめるために持ち合わせている選択肢のリストを検討している。利上げや国際通貨基金(IMF)の関与、トルコ・リラへの市場の信頼感回復だ。残念ながら全ての要素が逆方向に向かっている」と述べた。

  MSCI新興市場指数は2%下げ、1041.60となった。CBOE新興市場ETFボラティリティー指数は1カ月ぶりの高水準に上昇。MSCI新興市場通貨指数のこの4日間の下げ幅は16年11月以来最大となった。JPモルガン指数の新興市場ソブリンのリスクプレミアムは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の366bp。


原題:Turkey’s Collapse Sinks Emerging Markets on ‘Manic Monday’(抜粋)


 

 

EU、トルコ通貨リラ急落で欧州銀への潜在的影響注視−欧州委報道官
Jones Hayden
2018年8月14日 7:19 JST
トルコ・リラの動きが欧州の銀行に与えかねない潜在的影響を認識
「欧州委はグローバル市場の動向を注意深く見守っている」と報道官

Photographer: Ismail Ferous/Bloomberg
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、トルコ通貨リラの急落に伴うグローバルな影響、特に域内の銀行に及ぼす潜在的な影響を注視していることを明らかにした。

  トルコの通貨と株式、債券の相場が急落する状況を受けて、欧州委のシュパール報道官は13日にブリュッセルで記者団に対し、「欧州委はグローバル市場の動向を注意深く見守っている。トルコ・リラの動きが欧州の銀行に与えかねない潜在的影響も認識している」と語った。

  シュパール報道官は、市場の動きに関するコメントを控える一方、難民を巡るEUとトルコとの合意に及ぼす潜在的影響についても欧州委としてコメントしないと述べた。

原題:EU Is ‘Closely Following’ Global Impact From Turkish Lira Crisis(抜粋)


 

 


外為フォーラムコラム2018年8月14日 / 12:31 / 3時間前更新
コラム:トルコ・ショック、真の懸念は「欧州難民危機」再来=唐鎌大輔氏
唐鎌大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
5 分で読む

[東京 14日] - 国内外ともに夏季休暇モードで流動性が薄くなる時期だが、トルコリラ急落を受けた混乱が新興国のみならず先進国の市場にも影響を及ぼしている。この震度をどう評価するかは目下、夏休みの重要な課題だ。

前回7月17日付のコラム「新興国の次は米国経済か、異変伝える炭鉱のカナリア」でも述べたように、米連邦準備理事会(FRB)が引き締めを継続している以上、遅かれ早かれ「新興国市場からの資本流出」自体は起こるべくして起こることであり、見通しを作る上では自然な想定であると述べてきた。

つまり、「あとはきっかけ待ち」という状況にあったところ、今回のトルコリラ・ショックが起きたというのが筆者の理解だ。これを機に新興国市場からの資金流出が続く展開に構えたい。

<現状打開に必要な4つの選択肢>

もともとトルコリラ安の底流には中央銀行への政策介入も辞さないエルドアン大統領の経済政策という内政要因があったが、対米関係の悪化という外交要因もあった。とりわけクーデター容疑でトルコ当局に拘束されている米国人牧師を巡って問題がこじれた結果、「鉄鋼・アルミニウムに係る追加関税率を倍に引き上げる」という米政府の決定につながり、トルコリラ急落のトリガーを引くに至っている。

こうした状況下、トルコが現状を打開するために必要な選択肢は、1)緊急利上げに踏み切る、2)米国人牧師を解放する、3)資本規制の強化、4)国際金融(IMF)支援の要請である。

もっとも、「利下げをすればインフレ状況も落ち着く」という奇異な主張の持ち主であるエルドアン大統領は8月12日の演説で、1番目の選択肢については「自分が生きている限り、金利のわなには落ちない」と一蹴しており、その上で2番目にも応じない姿勢を明確にしている。また、4番目の選択肢についても「政治的主権を放棄しろというのか」と述べ、これも退けた。

今のところトルコは、3番目の選択肢を取っている。8月13日早朝、トルコ銀行調整監視機構は、国内銀行による海外投資家とのスワップ、スポット、フォワード取引を銀行資本の50%以内に制限すると発表し、投機的なリラ売りの抑制に踏み出している。

しかし、投機のリラ売りを抑制しても同国が経常赤字国であるという事実は変わらないので実需のリラ売りは残る。資本規制を強化するほど、トルコへの投資は敬遠されるはずであり、経常赤字のファイナンスは難しくなる。新興国が危機に陥る際の典型的な構図が見て取れる。

そのほか、8月に入って以降は、中銀が設定する各種準備率を調節することで市中への流動性供給を増やすという措置も取っている。それらの措置が市場の緊張緩和に寄与するには違いないが、利上げによる通貨防衛を期待する市場参加者にとって迂遠(うえん)な一手と言わざるを得まい。言い換えれば、政策金利の調整を決断できない「中銀の独立性の無さ」を逆に誇張しているようにすら見えてしまう。

<欧州金融システムへの影響は軽微か>

トルコ・ショックはどれほどの震度を持つと考えるべきなのか。今回、トルコ・ショックが先進国市場にまで影響を及ぼし始めたのは、欧州系銀行がトルコに対して大きな債権を持っているのではないかという懸念を8月10日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じてからだった。

同報道では「欧州中銀(ECB)がスペイン、フランス、イタリアの国内銀行が抱えるトルコ向け債権の大きさを懸念している」といった趣旨の関係者のコメントが紹介されており、記事の中で各国大手銀行の名前が具体的に挙げられていたことから同日の対象銘柄株価は大きく値を下げ、これが世界的な株安につながった格好である。

しかし、国際決済銀行(BIS)の統計を見る限り、そこまで懸念すべき事態なのかは判断がつかない。確かに、トルコの国内銀行が外国銀行に対して持つ対外債務の約6割がスペイン・フランス・イタリアによって占められていることから、市場が「トルコ発、スペイン・フランス・イタリア経由、ユーロ圏行き」といった危機の波及経路を心配することも一理ある。このところのトルコリラ急落を踏まえれば、外貨で借り入れている債務の為替ヘッジが進んでおらず債務不履行に陥る部分が出てくる可能性は確かにある。

とはいえ、トルコにとって欧州が重要な債権者であるからと言って、欧州にとってトルコが同じくらい重要な債務者であるとは限らない。例えば、国際与信残高(国外向けの与信残高)を見ると、スペインは約1.8兆ドル、フランスは約3.8兆ドル、イタリアは0.9兆ドルである。ちなみに、ドイツは約2兆ドルだ。

ここで、それらユーロ圏4大国の国際与信残高合計に占めるトルコ向け与信残高の割合を計算してみると、2%にも満たないことが分かる。国別に見てもスペインの4.5%が最大であり、トルコ・ショックがそのまま欧州金融システムを揺るがすような話になるとは考えにくい。

<「難民」を巡る大きな借り>

だが、問題がないわけではない。というのも、欧州連合(EU)はトルコに対して大きな借りがある。2015年に勃発し「債務危機を超える危機」とも言われる欧州難民危機は今も根本的な解決には至っておらず、正確には解決のめどすら立っていない。だが、その一方で大きな混乱も招いていない。

これはなぜなのか。ひとえにEUとの合意に従ってトルコが難民をせき止めているからである。EUに流入する難民の多くは内戦激化により祖国を飛び出したシリア人であり、トルコ経由でギリシャにこぎ着けてEUに入るというバルカン半島を経るルートを利用していた。ゆえに、EUとしては何とか経由地であるトルコの協力を得て流入をせき止める必要があった。

2016年3月18日、ドイツが主導する格好でトルコとの間で成立した「EU・トルコ合意」は非常にラフに言えば、「カネをやるから難民を引き取ってくれ」という趣旨の危うい合意だが、効果はてきめんだった。少なくとも、その合意がEU(とりわけドイツ)に余裕を与えているのは紛れもない事実である。

<欧州政治安定の鍵はエルドアン政権の手中に>

これは裏を返せば、難民危機はトルコひいてはエルドアン政権次第ということである。ここに至るまでの大統領の言動を見る限り、今後、意図的に難民管理をずさんなものにするリスクはないとは言えまい。

いや、故意ではなくともトルコの政治・経済自体が混乱を極めれば難民を管理しきれないという過失も考えられる。どちらにせよトルコがいつまでも欧州のために難民をせき止めてくれる保証はない。

率直に言って、EU域内に難民流入が再開するのは非常にまずい。そうなった場合、難民流入に不平不満を抱えるイタリアのポピュリスト政権が勢いづくだろう。ただでさえ、それを切り札として欧州委員会と交渉する雰囲気があるのだから、事態はより複雑になるはずだ。

また、10月にバイエルン州選挙を控えるメルケル独政権も難渋するだろう。難民受け入れのあり方を巡って長年の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)がメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と仲たがいを起こしたことが6月に話題になったばかりだ。ここで状況が悪化したら余計に両者の溝が埋め難くなろう。

さらに2019年5月には欧州議会選挙もある。EU懐疑的な会派をこれ以上躍進させないためにも難民を巡る状況はやはり悪化させるわけにはいかない。

金融市場ではトルコの国内金融システム混乱がユーロ圏に波及する経路が不安視されているが、現実的にはエルドアン政権が欧州難民危機ひいてはEU政治安定の生殺与奪を握っている事実の方がより大きな脅威であるように思われる。

唐鎌大輔氏(写真は筆者提供)
*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行国際為替部のチーフマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。著書に「欧州リスク:日本化・円化・日銀化」(東洋経済新報社、2014年7月) 、「ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで」(東洋経済新報社、2017年11月)。新聞・TVなどメディア出演多数。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。


 


 

 


トップニュース2018年8月14日 / 15:01 / 4時間前更新
トルコリラ安で外国客が爆買い、大統領はおもてなし呼びかけ
1 分で読む

[イスタンブール 13日 ロイター] - トルコの通貨リラが急落する中、これを利用してイスタンブールの高級品店街で買い物しようと、外国からの観光客が殺到している。

シャネルやルイ・ヴィトンの店では、アラブ人観光客を中心とする列が店外を取り巻くほど伸びて、ほとんど動かない状態。

エルドアン大統領の影響力に対する懸念や米国との関係悪化などから、今年に入りリラは対ドルで40%以上下落している。大統領は、重大な時期にドルを持ち込んでくれる観光客を一段ともてなすよう国民に呼びかけている。

ある高級服飾店の従業員は匿名で、ハイシーズン中にしても買い物客の人数は異例と指摘。リラ安が原因との見方を示した。

クウェートからの観光客は、「トルコのためには相場が改善するよう願うが、ここにいる買い物客のためにはこのままであるよう願う」と語った。


 

 


ワールド2018年8月14日 / 18:41 / 3時間前更新
トルコ、米国製電気製品の不買運動実施へ=エルドアン大統領
1 分で読む

[イスタンブール 14日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は14日、米国製の電気製品に対し不買運動を実施すると述べた。米国はトルコで拘束されている米国人牧師を巡り、同国に対して制裁を科したほか、関税を引き上げた。

エルドアン大統領はトルコ経済について必要な措置を実施しているが、重要なのは確固たる政治スタンスを維持することだとの見方を示した。

 

 


 
トルコ情勢に揺れる新興国市場、ファンダメンタルズの強さ置き去りに
Netty Ismail、Filipe Pacheco
2018年8月14日 12:05 JST
• 投資家、トルコ関連リスク回避で新興国へのエクスポージャー圧縮
• 「トルコと同じ問題を抱える国は他にない」−GAMのマクナマラ氏
トルコの金融危機に動揺した新興国市場は、向こう数日から数週間は下げ続けるかもしれないが、これ以上はそれほど痛みを伴うことなく苦境を乗り越えそうだ。
  危機が伝染するとの懸念は13日に浮上。トルコ・リラは2営業日の下落率を約20%に拡大して最安値を付け、南アフリカ共和国の通貨ランドやメキシコ・ペソ、インド・ルピーを含む新興国通貨のパニック的な売りに拍車が掛かった。投資家はトルコでの損失の穴埋め、あるいはリラのポジションをヘッジするため、新興国市場全体へのエクスポージャーを圧縮した。
           
クレディ・スイスのグローバルCIO、ブルクハルト・バーンホルト氏は新興国市場への波及についてコメント
出所:ブルームバーグ
  もっとも、近い将来のその先をみると、他の新興国市場がトルコと同列に扱われるファンダメンタルズ上の理由はほとんどない。平均インフレ率は記録的な低さで経常収支は改善しており、新興国の世界はトルコの現状からかけ離れつつある。この違いが危機の伝染を抑える可能性がある。
リラの伝染リスクは限定的−ゴールドマンのスピルオーバー指数が示唆
  GAM・UKのファンドマネジャー、ポール・マクナマラ氏(ロンドン在勤)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「トルコと全く同じ問題を抱える新興国市場は他にないため、トルコだけに封じ込められる可能性がある」と指摘した。
            

           
  トルコの問題の核心は急激なインフレであり、これが実質リターンを低下させる。一方、新興国市場の平均インフレ率は2.81%と記録的な低水準で、過去7年間において実質利回り平均を4ポイント余り押し上げた。これは持続的な売りを支える材料ではあり得ない。

  経常収支の悪化とインフレ高進の抑制に政策当局が十分な措置を講じてこなかった市場を、投資家は罰し続ける。トルコのインフレ率は15.9%、アルゼンチンは同29.5%で、リラとペソはいずれも年初来の通貨パフォーマンスでランキング最低付近に位置する。
            
Narrowing Deficit
Emerging markets' current-account deficit as a percent of GDP has narrowed since 2016

Source: IMF
  「われわれにとっての大きな懸念材料は、トルコが本当に重大な危機に陥り、資本規制を課すことだ」と述べたマクナマラ氏は、そうなれば、新興諸国の「資産クラスの信用を失墜させるようなものだ」と語った。
  
Growth Picking Up
Real GDP growth for emerging markets

Source: IMF
原題:Turkey Too Much of a One-Off to Undermine Emerging-Market Case(抜粋)


 


 

外為フォーラムコラム2018年8月14日 / 16:41 / 3時間前更新
コラム:ドル高予想変更は無用、トルコ危機もガス抜きに=植野大作氏
植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
5 分で読む

[東京 14日] - 真夏の外為市場でドル円は上値を削る展開になっている。7月19日に一時113.17円と約6カ月ぶりの高値圏へ上昇したが、トランプ米大統領が米連邦準備理事会(FRB)の利上げを批判しながらドル高けん制発言をぶつけてくると急落。「日銀が金融緩和の副作用軽減策を模索している」との観測報道が相次いだことも重しとなり、7月下旬には一時110円台半ばまで売り込まれた。

その後、7月末の日銀会合で消費増税前の利上げ期待を封印するフォワード・ガイダンスが導入されると反発し、112円台に復帰する一幕もあったが、8月中旬にかけては再び軟化。9日から始まった日米通商協議への警戒感が高まる中、10日に勃発したトルコリラ円の暴落に軽く巻き込まれると110円台前半に続落する場面も観測されている。

米国発の世界貿易戦争への懸念が強まる中、最近のドル円は、米国経済・金融政策の相対的な優位性が注目されるとドル高・円安が進む一方、世界貿易戦争のエスカレートを伝える残念な報道、米大統領の不規則発言、トルコ発の新興国不安などが意識されるとドル安・円高方向に振れる非常にややこしい展開になっている。

例年、8月の盆休み前には、「国内輸出企業のドル売り注文が大きくなる」との思惑が広がるほか、中旬になると米国債の大量利払いの円転観測が広がりがちだ。そんな時期に日米通商協議が始まったこともあり、今後の交渉の場で米国側が日本の嫌がる「円高カード」を切ってくるとの警戒感も渦を巻いている。当面は円高に振れやすい展開が続きそうだ。

ただ、筆者は年末に向けてのドル高・円安予想を堅持している。3月安値の104円台から7月高値の113円台に至るまで、かなり一方的なドル高・円安が進んでいただけに、「8月の円高説」「日米通商協議の開始」「トルコリラ安ショック」などを口実にした適度なガス抜きで押し目を作った方が、その後の上昇余地は広がるだろう。以下、そのように考えている理由を3つ挙げておく。

<貿易戦時下でドルは売られにくい>

第1に、世界貿易戦争時下にあっても米国経済が堅調に推移し、FRBが主要先進国の金融政策正常化レースの先頭を走っている。米国の実質経済成長率は今年第2・四半期に年率プラス4.1%に加速。アトランタ地区連銀の推計によれば、第3・四半期も4%台を維持しており、今のところ、輸入増税の負担に負けて失速に向かっている様子は観測されていない。

このような状況下、パウエルFRB議長は先の議会証言で「当面は緩やかな利上げを続けるのが最善の策」と述べており、同時に進めている保有債券の圧縮にも「3、4年はかかる」との見解を示していた。当面は「金利」と「量」の両面で米金融政策の正常化が進みそうだ。

米国が始めた不毛な輸入関税引き上げ合戦は、全ての参戦国の成長押し下げ要因になり得るが、為替レートは当該2国通貨の相対評価で方向が決まる。このため、米国が過去の金融危機対応で散布したドル資金を回収しながら先進国の利上げレースで先頭を走れる体力を維持している間は、貿易戦時下における「敗戦国選び」の矛先は、米国に先制攻撃を仕掛けられた相手国側の通貨に向かい、ドルは買われやすく売られにくい地合いになる。

現在、トルコリラ暴落の悪影響が他の新興国や欧州諸国に波及することが懸念されているが、米国の金融システムに飛び火して金融政策の正常化を妨げるような事態に発展しない限り、新興国通貨と欧州通貨に対してドル高と円高がほぼ同時に進む状況が続きそうだ。ドル円相場への感染力は限られるだろう。

<口先介入の力で相場は支配できない>

第2に、米大統領の米利上げ批判や米政府要人によるドル高けん制発言は、すう勢的なドルの地合いにほとんど響かないとみられる。不動産会社の経営で財を成し、自らを「低金利人間」だと認めるトランプ大統領が、パウエル議長の利上げ路線を快く思っていないのは事実だろう。ただ、「FRBの独立性」は、先達の英知が築き上げた米国民の貴重な財産だ。

その価値を熟知しているパウエル議長は、今後も大統領の嗜好に左右されずに金融政策を運営するはずだ。米国経済が弱ってくれば、大統領に言われなくても利上げを止めるだろうが、今はまだその時期ではないと判断しているようだ。

また、日米通商協議が本格化する中、米政府の高官がドル高・円安けん制発言で日本に揺さぶりをかけてくる可能性は否定できない。ただ、筆者は為替相場のトレンド判断において、特定の国や組織で要職にある人物の言霊(ことだま)の力をあまり重視していない。

日米貿易摩擦が盛んだった数十年前に比べ、為替市場の売買規模や参加者の多様性は格段に増しており、現在、ドル円だけで年間の売買金額は2.5京円程度に達していると推定される。天文学的な金額の国際資金フローが自由に行き交う為替の動きを、口先介入の力だけで支配するのはトランプ大統領でも多分無理だ。恐らく本人はそう思ってないかもしれないが、為替市場の恐ろしさを熟知している多くの市場関係者は、もしも自分が米国の大統領になったとしても、「自らの希望を伝えるだけで為替相場のすう勢を意のままに操れる」とは思っていないだろう。

そもそも、「アメリカ・ファースト」を標榜して貿易赤字を削減、海外に漏出した投資資金や雇用を国内に戻すことを目指すトランプ大統領の政策は、もしも成功したならドル高圧力を発生させるはずだ。経済・軍事の両面で米国を断トツの強国にすることを目指して仮想敵国を攻めておきながら、口先介入の呪いだけでドル安に誘導するのは難しいだろう。

<「尺蠖(しゃっかく)の屈するは伸びんがため」>

第3に、7月末の会合で日銀は巧妙な情報操作で円高ショックを回避しつつ、異次元緩和のマイナー・チェンジに成功した。「日銀が金融緩和の副作用軽減策を練っている」との観測報道が最初に流れた7月20日から31日の結果発表の直前まで、各種媒体が競って報じた記事の中に、フォワード・ガイダンスの導入を示唆していたものは皆無だった。

その後、実際に公表された具体策を見ると、「短期金利はマイナス0.1%で据え置いたまま、適用残高を5兆円だけ減額する」「長期金利の中心はゼロ%で維持した状態で上下の変動幅を0.1%から0.2%に広げる」という地味な内容だった。わずかに容認された長期金利の上昇幅は0.1%と世界標準の政策金利変更刻みとみなされている0.25%の半分以下にとどめられていた。結局、事前の観測報道の死角に入っていたフォワード・ガイダンスだけがサプライズを呼び、異例の低金利政策の出口はひとまず見えなくなっている。

また、一般には注目されていないが、今回の会合で日銀は、「コアインフレの実績が安定的に2%を超えるまでマネーの拡大方針を維持する」というオーバーシュート型コミットメントも堅持していた。今後の日銀の金融政策は「金利」の面ではフォワード・ガイダンス、「量」の面ではオーバーシュート型コミットメントという2つの基本方針の下で運営されることになる。

「オープンエンドのマネー漸増を約束しながら異例の低金利政策を続ける日本」と「計画通りに保有資産を圧縮しながら緩やかな利上げ見通しを維持する米国」の違いは明らかだ。彼我の金融政策の印象格差をすう勢判断の軸に据える姿勢を崩さない限り、年末に向けたドル高・円安見通しは不変だ。

「尺蠖(しゃっかく)の屈するは伸びんがため」のことわざもある。この夏、一時的に1ドル=110円を割る局面があったなら、買い下がりで臨みたいと考えている。

植野大作氏(写真は筆者提供)
*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

3. 2018年8月14日 22:23:41 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1300] 報告
トルコリラ急落、投資家が学ぶべき教訓とは
トルコは制度が機能不全に陥った究極の事例と言える(写真はイスタンブール市内のバザール)
トルコは制度が機能不全に陥った究極の事例と言える(写真はイスタンブール市内のバザール) PHOTO: YASIN AKGUL/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By James Mackintosh
2018 年 8 月 14 日 16:07 JST

――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

***

 トルコの通貨リラの急落は、おかしな経済政策と米国との対立によって生じた地域的な大惨事というだけではない。他の新興国市場に投資する人々への警告でもある。新興国の経済的統治が改善するという長年の強気論は投資家が思っているより当てにならない。

 トルコでは長年にわたって好景気が続き、投資家は同国の制度に恒久的な変化があったと考えるようになった。ところが不況になると、昔ながらの悪しき政治と政策が装いを新たに戻ってきた。確かに今回は軍の主導によるものではない。ただ、独裁色を強める大統領は、トルコが抱える問題を外国の陰謀のせいにするいつものやり方にすがりついている。痛みを受け入れて根深い財政問題に取り組もうとはしていないのだ。

 他の新興国市場についても同じことが言えるかもしれない。1990年代後半の債務不履行(デフォルト)で傷ついた新興国は行いを改めた。2000年代には中央銀行に独立性が与えられ、民主主義が根付き、貿易が盛んになり、資本逃避のリスクに対抗するため外貨バッファーが構築された。投資家は制度の強化が続くと確信し、多くの企業幹部にとって新興国市場は「成長市場」になった。

 長年の弱気論は、このプロセスが逆方向に進むという考え方だ。2013年の「テーパー・タントラム」(量的緩和縮小の示唆を受けた市場の動揺)でマクロ経済運営の誤りが明らかになり、かつては欧米式の民主主義を支持した指導者が独裁者になりつつある。法の支配や人権、政治家の気まぐれに左右されない金融政策を保護したさまざまな制度は、強力な指導者に逆らうにはあまりに弱いことが露呈した。

 トルコは制度が機能不全に陥った究極の事例だ。しかし同じような力は他の新興国市場でも働いている。インドではポピュリスト的指導者が中央銀行に干渉している。中国は国家主席の任期を撤廃し、共産党指導部の独裁性を強化した。フィリピンの大統領は超法規的殺人に対する規制を受け入れない。東欧ではポーランドを筆頭に指導者が制度による統治を破棄している。その一方で、ロシアは経済危機から立ち直り、他国の独裁者を導く存在となった。

 しかし、制度の失敗だけで国家が危機に陥るわけではない。「シャルマの未来予測 これから成長する国 沈む国」の著者であるモルガン・スタンレーのルチア・シャルマ氏によると、経済の動向はこれまでは民主主義の国でも独裁国家でも同じようなものだったが、今は民主主義の国のほうがはるかに順調だ。

 制度がぜい弱な国は負荷が高まった時により苦労する。だから景気悪化による影響は非常に大きい。トルコは今まさに、そのことを身をもって学んでいる。制度が強かったり、合理的な政策を採用したりしている国も、例えばドルが高いときに多額の経常赤字を抱えれば打撃を受けるが、回復力は強く、実際に回復は早いだろう。

 新興国について債券市場は弱気論を展開している。2000年代には新興国のハードカレンシー(主要通貨)建ての債券が人気となり、米国のジャンク債と同程度だった利回りが2008年には米国の高格付け社債の利回りに近い水準を付けた。この10年で利回りの改善は後退し、この夏、新興国債券は13年ぶりに米国のジャンク債をわずかに上回る水準で取引されている。

 投資家が考えるべき問題は2つある。1つは新興国市場が本当に逆戻りしているのかという点だ。全体としてはおそらく違う、というのがその答えだ。

 確かに多くの国が間違った方向に進んでいる。しかし、他の重要な新興国では制度が強固に保たれている。ブラジル、マレーシア、南アフリカで汚職スキャンダル後に指導者が交代した例がそうだ。インドネシアは正統派の経済政策を維持している。インドでもナレンドラ・モディ首相がポピュリズムに走っているにもかかわらず、過去の指導者の下では行われなかった重要な経済改革が実施されている。全体として見れば、新興国が集団で後退しているというよりも、進歩しなくなった新興国があるということだ。

 第2の問題は、長期的な統治の悪化がどの程度織り込まれているのかという点だ。この疑問に答えるには、長期的な統治傾向と短期的な循環を切り離す必要がある。短期的には新興国市場は再燃したドル高に圧迫されており、このドル高は経常赤字を背景にドルでの資金調達に依存する国に打撃を与えている。その筆頭格がトルコやアルゼンチンだ。中国経済の減速はコモディティー(商品)輸出に頼る国にとって痛手となった。FRBが金融緩和策を取っていた時期には投資家は利回りを追ってリスクの高い現地通貨建ての新興国債券に投資していたが、金利上昇で利回りを追う動きも鈍くなっている。

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 新興国の株式はリーマン・ブラザーズ破綻後の短期間の回復後はさえない。2001年以降の先進国株式に対するアウトパフォーマンス分の半分がなくなった格好だ。一方でハードカレンシー建ての新興市場債は再びジャンク債のような扱いを受けており、楽観視できない。

 しかしいずれのケースでも新興国市場の不振は誇張されている。ジャンク債の利回りは歴史的な低水準にある。したがってジャンク債のような扱いを受けることは以前ほど軽視の印ではない。一方、このところ米国株に後れを取っているのは新興国の株式だけではない。新興国株は1年から2年あるいは5年かけて米国を除く先進国と全く同じように回復した。

 株価のバリュエーションも同じだ。米国と比較すると割安に見えるが、米国を除く先進国と比較すると、予想株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)のどちらで見ても特に割安ではない。

 多くの悪材料が既に織り込み済みで、新興国市場はもはや人気の投資先として絶頂期にあるわけではない。しかし、新興国市場が長期的にはアウトパフォームするという見方は健在で、今でも一般にはリスクの源泉というより成長の源泉として受け止められている。このセンチメントに変化が起きたときこそ、本物の逆張り投資家が殺到するときだろう。

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トルコ大統領、リラ急落巡りソーシャルメディアに怒りの矛先
トルコの当局者はこのところのトルコリラ急落について、偽ニュースに批判の矛先を向けている。エルドアン大統領(写真)は「テロリスト」がソーシャルメディアで誤情報を広めている疑いがあるとして強く非難している

By David Gauthier-Villars
2018 年 8 月 14 日 07:48 JST 更新

 【インスタンブール】トルコの当局者はこのところのトルコリラ急落について、偽ニュースに批判の矛先を向けている。レジェプ・タイップ・エルドアン大統領は、「テロリスト」がソーシャルメディアで誤情報を広めている疑いがあるとして強く非難している。

 リラは13日に一時10%急落。年初来では40%余り下落している。同国が借り入れコストの上昇に対応できなくなるとの懸念が高まっているうえ、長年の軍事同盟国である米国との対立も長引いている。

 6月の再選後に行政権を大幅に拡大したエルドアン氏は、大方の原因は米国にあり、米政権がトルコに対して経済戦争を仕掛けていると非難してきた。

 だが13日になって、怒りの矛先が別方面へと向けられた。

 エルドアン氏はアンカラの大統領公邸に集まったトルコ大使らを前に、「ソーシャルメディアに経済テロリストがいる」とし、「まさに背信のネットワークだ」と指摘した。

 さらに、当局が銀行の預金引き出し制限を準備しているとの悪意に満ちた投稿が、パニックを引き起こすためにソーシャルメディアで広められていると述べた。トルコ政府は資本規制を導入する計画はないとしている。

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4. 2018年8月15日 19:15:39 : ubsqxr99nk : L8tnnf@OvnU[687] 報告
ギリシャ危機がどうなりました?

元のさやに戻りました。

トルコに芝居を打って、儲けを企んでいるユダヤ金融資本家たち、、、

安くなりすぎたら、買えばよいかもね〜

5. 2018年8月15日 22:16:25 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1313] 報告
コラム2018年8月15日 / 16:18 / 4時間前更新
コラム:トルコ危機、世界金融秩序の凋落を露呈
Edward Hadas
3 分で読む

[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トルコの通貨危機は予想しやすかった。それよりも驚くべきは、世界の反応の弱さだ。従来の世界金融秩序が非常に惜しまれる事態だ。

大規模な経常赤字を補うため短期融資に頼り続けてきた国に、大混乱が起きることはほぼ必然といえる。それだけではない。多額の外貨建て借入金と高インフレが、混乱を拡大した。トルコ政府が、経済維持の一助となった国際金融機関の助言をはねつけたことも、混乱に拍車をかけた。

トルコのエルドアン大統領が、これまで深刻な問題を回避できたのは幸運だった。しかし現在、彼は危機に直面している。自国通貨リラは5月初め以降、対ドルで42%下落。国内で金融危機が起きるのを防ぐには、奇跡か国際支援が必要だろう。

2009年、エルドアン氏が当時首相として率いていたトルコ政府が、国際通貨基金(IMF)からの助言をもはや必要としないと発表してから、トルコは大きく様変わりした。「つえなしで前に進む」ことを選んだのだ。

トルコは長年、IMFの支援に大きく依存していた。1970年から2009年に至る大半の期間で、IMFから「スタンドバイ取り決め(SBA)」を受けてきた。トルコ政府が経済改革に取り組み続ける限り、IMFは支援を約束した。

だが今回、IMFはいまだにトルコからの電話を待っている。IMFにはリラを安定させるのに必要な知識と、恐らくそのための資金もあるが、エルドアン大統領はIMFをトルコ国民の「敵役」に選んだ。

IMFに対する反感は大統領の国家主義的で独裁主義的な意図に沿うものだが、同時に痛ましいパターンにも一致する。伝統的な権力者は、世界的な金融問題に見舞われると、身動きが取れなくなる。

自由貿易や自由な資本移動、自由市場の原則にやみくもに忠実だと広くみられていることで、IMFの名声は傷つけられた。2011年から専務理事を務めるクリスティーヌ・ラガルド氏の下でIMFのアプローチは軟化したものの、トルコの頑なさは、かつては存在したモラル的権威がIMFに欠けていることを示唆している。

そして米国はかつて、反抗的な政府や債権者、交渉者に圧力をかける際には信頼できる圧力源だった。世界金融システムの管理人として、軍事的覇権を握る国として、また世界最大の経済国として、米国は強力なアメとムチを持っていた。

だがそれはもう過去の話だ。

トランプ米大統領は、米国市民のアンドリュー・ブランソン牧師がトルコで自宅軟禁されていることの報復として、トルコに追加関税をかけることでこの危機を悪化させた。トランプ政権は、北大西洋条約機構(NATO)同盟国であるトルコの経済的運命に、あるいは敵対的で弱体化したトルコが中東での米国の権益に与える影響に、無関心のように見える。かつては世界秩序の保証人だった米国は、ならず者になった。

一方、経済力のある欧州連合(EU)は2017年のトルコ輸出の47%を受け入れている。欧州の銀行は、トルコの財政リスクにもっともさらされており、同国の混乱を収束するのを支援する動機がある。

さらに言えば、トルコには推定350万人のシリア難民がいる。トルコが受け入れなければ、一部は欧州に向かっているかもしれない。

とはいえ、EUがトルコに支援を働きかけようとしているようには見えない。エルドアン大統領は楽な交渉相手ではないが、ブリュッセル、あるいは他のEU加盟国から支援の公的な申し出を受けていない。

従来の世界金融秩序が古くさく、大きな欠陥があることはほぼ間違いない。IMFは長いこと硬化したままだし、米国は必ずしも誠実な仲介者ではなかった。欧州の結束が十分であったことは一度もない。この3つは、世界金融システムの無謀な傾向を抑制するのにほとんど何もしなかった。それでも、失速し、エンジンが止まりかけて煙を出しているオンボロ車のように、歩くよりは好ましいものとされている。

では、次に何が起きるのか。

トルコ政府は計画があると明らかにしているが、国際債権団から相当な支援がなければ、政治能力が試される深刻なリセッション(景気後退)はほぼ不可避だろう。隣国ギリシャでは、2008年に海外からの資金調達が突然止まったことにより、6年間で国内総生産(GDP)が27%落ち込んだ。ギリシャの経常赤字は現在のトルコのそれより大きいが、トルコはインフレと資本逃避という問題も抱えており、さらにたちが悪い。

トルコの問題にとって最善の解決策は、新たな指導者と刷新された機関による、より広範な世界金融秩序を確立することだろう。パキスタンや南アフリカといった、海外金融機関の善意に頼りすぎている国々にとっても、これは良いニュースとなる。

残念なことに、そうした新秩序はまだ見えてこない。中国には必要とされる富と経験、世界からの尊敬に欠けている。その上、自国の銀行セクターの制御に苦労している。

危機は、時に皆の頭脳を結集させることがある。従来の大国は恐らく、古いオンボロ車を集めて、トルコのために中途半端でそこそこの対策を見いだすことになるだろう。

たとえそうなったとしても、リラの急落は強力な警告を発している。つまり、通貨危機が今後も起きる可能性が非常に高いということだ。世界経済を導く指導者がいなければ、それは現実のものとなる。

 

 


 
トルコ通貨危機、国内銀に負担ずしり
エルドアン大統領が推進する経済プログラムの中心的存在となってきたトルコの国内銀は、通貨リラの急落による悪影響を実感しつつある
By Patricia Kowsmann
2018 年 8 月 15 日 14:45 JST

 トルコの銀行が通貨リラの急落による悪影響を実感しつつある。国内銀の健全度は、トルコ経済にどれほど深刻な打撃が及ぶかをみるバロメーターになりそうだ。

 国内銀は多額の外貨建て債権を保有している。その大部分は企業向けで、消費者向けもある。ドル建てやユーロ建ての融資はリラ建ての返済額が急騰している。こうした状況に景気減速が追い打ちを掛けるとみられる。

 トルコの金融当局は14日、消費者・企業向け融資債権の不良化という銀行の重荷を軽減するための措置を発表した。金融機関による返済期限延長や債務再編支援を認めるといった内容だった。

 ABNアムロの債券ストラテジスト、トム・キンマンス氏は「最終的に鍵を握るのは、外貨建ての融資を受けながら売上高はリラ建てという企業の資金調達コストだ」とし、「こうした企業の返済能力が問われている」と述べた。

 国内銀はレジェプ・タイップ・エルドアン大統領が推進する経済プログラムの中心的存在となってきた。2017年には政府主導の融資ブーム(銀行経由の融資を国内総生産=GDPの7%相当の規模まで押し上げた)が経済を急成長させたが、インフレの高進も招いた。

 国内銀は現在、嵐のまっただ中にある。ガランティ銀行、ヤピ・クレディ銀行、トルコ勧業銀行の株価(リラ建て)はいずれも40%超下げている。投資家の警戒感を映すように、3行の株価純資産倍率(PBR)はそれぞれ0.58倍、0.39倍、0.40倍に沈む。

 国内銀の資金調達もリラ安の影響を受けやすい。投資家はトルコのソブリンリスクが高いとみて、国内銀が発行した債券に高い利回りを要求している。例えば、トルコ勧業銀行が発行したドル建て債(2018年10月償還債)の利回りは14日に17.90%を付け、約1週間前の5.29%から急上昇した。

 トルコ中央銀行によると、5月時点で非金融企業の外貨建て資産はおよそ1200億ドルで、負債は3300億ドルを超える。企業が値下がりするリラでその差を埋めることができるかは不透明だ。

 トルコ最大の通信会社トルコ・テレコムは先月、4-6月期(第2四半期)の純損益が8億8900万リラの赤字になったと発表した。「為替変動による悪影響」が響いたという。こうした要因を除く純損益は6億7600万リラの黒字だった。同社の総額147億リラの借り入れは、ほぼ全てがドル建てかユーロ建てだった。

 アナリストらによると、収益源を国内市場に頼る小売り・エネルギー・通信部門の企業が特に大きな打撃を受けている。

 リラが急落する前から、債務返済が滞る兆候はあった。3%であればまだ低いとされる不良債権比率が最近やや上昇している。米格付け会社フィッチ・レーティングスは7月、不良化の恐れがある融資債権が増えたことを理由に、トルコの銀行24行を格下げした。

 もう1つの不安要素は、トルコ政府が預金引き出しを制限する資本規制を導入するのではないかと懸念される中、預金者が銀行預金を続けるかどうかだ。

 ベレンベルクのエコノミスト、カーステン・ヘッセ氏は「トルコの家計は長年、ドルやユーロ、金を銀行に預け続けてきた。これは多額の外貨建て融資を行っている銀行には朗報だ」と指摘。銀行の前に預金引き出しの長い列ができ始めたら、中銀が直ちに「止血」に動く可能性があると述べた。

 中銀の統計によると、国内銀の預金の約47%、融資の36%は外貨建てとなっている。

 国内銀がこの状況を乗り切ることができるかは、トルコの不安定な情勢がいつまで続くかに大きく左右されるとアナリストらは言う。フィッチによると、国内銀の資本比率(銀行の損失吸収力の指標)は5月時点で15.9%と高水準を保っているが、昨年末の16.9%からは低下している。

 トルコ銀は国内にも不安要素を抱える。リラ建ての資金調達コストが急騰しており、リラ建て国債利回りは20%を超える。一方、預金は潤沢とは言えない。トルコ銀の預貸率は145%近くで、米銀の約70%を大きく上回る。

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外為フォーラムコラム2018年8月15日 / 15:32 / 1時間前更新
コラム:トルコ・ショックは世界金融危機の火種となるか=鈴木健吾氏
鈴木健吾 みずほ証券 チーフFXストラテジスト
4 分で読む

[東京 15日] - トルコリラは10日、対ドルで20%前後の急落をみせた。翌週13日にかけてはリスク回避傾向が加速し、世界中の株価指数が下落。為替市場では新興国通貨が軒並み下落する反面、安全通貨とされる円やドル、スイスフランが上昇する動きとなった。

にわかにトルコを巡る懸念が米中貿易戦争懸念に並び、グローバル経済のリスク要因として浮上した。

もともとトルコリラは年初より下落基調にあった。経常赤字の大きさやインフレ率の高さなどがファンダメンタルズ面で材料視され、政治的にはエルドアン大統領の強権的な政治姿勢が嫌気されていた。

これに加えて10日にはトルコで軟禁中の米国人牧師を巡り米国との対立が先鋭化したことや、欧州の銀行が抱えるトルコ向け債権の大きさを欧州中銀(ECB)が懸念しているといった報道などがきっかけとなり、トルコリラの急落につながった。

この結果、トルコ同様に高インフレや経常赤字を抱えるアルゼンチンペソも急落し、同国中銀は13日、通貨防衛のための緊急利上げに追い込まれている。また、トルコ向け債権が大きいとして名指しで報道されたイタリアやスペインの銀行の株価も13日にかけて7―8%もの急落を演じた。

今回のトルコリラ急落が、1997年のアジア通貨危機のような新興国通貨の連鎖的な急落や、欧州銀行の破綻など金融危機の火種となり、グローバル経済を大幅に悪化させるとの懸念が台頭したのである。

<局地的な悪材料か>

だがその後、株式市場が多少の反発をみせるなど、事態の悪化に一定の歯止めがかかっている。結論から述べると、今回のトルコリラ急落が世界経済を揺るがす危機にまで拡大する可能性は低いと考えている。

インフレ率や経常赤字は新興国の中でもトルコとアルゼンチンが頭ひとつ抜けている。国際通貨基金(IMF)によれば、アルゼンチン、トルコに次いで高インフレなのはメキシコだが、その水準はトルコの半分程度であり、経常赤字も対GDP(国内総生産)比でみれば数分の1に過ぎない。他の新興国通貨も「同類」とするにはやや無理がある。

また、国際決済銀行(BIS)によれば、トルコ向け貸出に占める欧州銀行の割合は74.8%と極めて高いが、欧州銀行からみたトルコ向けの貸出は全体の1%強にすぎない。この一定程度が不良債権化するとしても、金融システム不安につながるとの懸念は悲観的過ぎる。

グローバルなリスク回避の連鎖につながらなければ、あくまで局地的な悪材料の1つということになる。名目GDPで世界21位のアルゼンチンが今年5月にIMFに金融支援を要請した際にも世界の金融市場の動揺は限定的にとどまった。トルコの名目GDPはアルゼンチンよりも3割ほど大きく世界17位だが、世界の金融市場への影響は限定的とみられる。

ただ、トルコ自身にとって状況は深刻だ。トルコは危機対応として、スワップなどの資本規制や流動性の供給、銀行の自己資本ルールの一時的な緩和などを行ったが、いずれも問題の根本的な解決にはならないだろう。特に資本規制は経常赤字を補てんする資本流入の妨げとなり、さらなるトルコリラ安圧力につながる可能性もある。

トルコの実体経済はこれまでのところ堅調だが、足元のリラ下落が続けば、輸入物価の急激な上昇や外貨建て負債を抱える企業・金融機関が破綻する可能性、また海外投資家の資金引き揚げなどといった悪影響が拡大する可能性がある。

<安保・難民問題に要警戒>

トルコがこうした悪循環を避けるためには取り急ぎ、1)米国との関係改善、2)中銀の大幅利上げ、が必要となろう。

米国との関係改善には、2016年のクーデター未遂に絡んで軟禁状態にある米国人牧師の解放が最も手っ取り早いが、エルドアン大統領は今のところこれを否定。一方で、駐米トルコ大使がボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と13日に面会し、この問題を協議したとの報道もあり、何らかの進展があるかもしれない。

トルコ中銀は利上げ期待の高かった7月24日の会合で利上げを見送った。エルドアン大統領の強硬な利上げ反対姿勢が影響しているとされ、市場はこれを嫌気した。今回のリラ急落局面でトルコ中銀が毅然とした態度を示せれば市場の安心感につながるとみられる。

これらの対策が行われればリラは一定程度反発し、懸念は徐々に解消に向かうだろうと考えている。

ただ、今回のトルコ問題の中長期的な懸案事項として、欧州の政治に与えるリスクには一定の注意をしておきたい。具体的には安全保障問題と難民問題だ。

トルコは地理的にロシアに近い北大西洋条約機構(NATO)の一員だが、足元、米国との関係が悪化する一方、ロシアとの距離が縮まっている。エルドアン大統領の「新たな友人や同盟を探し始めなければならなくなる」との発言も気掛かりだ。

また、トルコは欧州連合(EU)との合意に基づいてシリアなどから欧州への難民流入の堰(せき)となっている。難民問題がドイツのメルケル政権を揺るがしたことは記憶に新しい。

このような点やトルコ側の対応などに今後も一定の注意が必要ではあるものの、今回のトルコリラ急落はグローバル経済の急激で大幅な悪化を招くきっかけとはならず、市場は徐々に一定の落ち着きを取り戻していくのではないかとみている。

鈴木健吾氏(写真は筆者提供)
*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。


 

 

 

 


 トルコは予行演習にすぎない−「量的引き締め」加速で新興国にリスク
Michelle Jamrisko、Enda Curran
2018年8月15日 16:25 JST
量的引き締めでドルとユーロの流動性が吸収されるリスク
新興国の債務には赤信号が点滅しているとアルジェブリスのガロ氏
トルコは予行演習にすぎない。
  主要中央銀行は、2019年にかけて政策金利引き上げやバランスシートの縮小を予定し、金融危機時代の政策を巻き戻す動きが加速する見通しだ。いわゆる「量的引き締め(QT)」は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)改善を伴わずに低金利で資金調達が可能な債券に大きく依存してきた政府や企業にとって、ドルとユーロの流動性が吸収されるリスクがある。
  米金融当局は満期償還分の再投資を行わないことで保有資産残高の縮小に動き、欧州中央銀行(ECB)は資産購入プログラムを年末に終了する予定。ブルームバーグ・エコノミクスの予測では、日本銀行を含む3つの主要中銀による純資産購入額は、2017年末の月間1000億ドル(約11兆1200億円)近くから18年末までにゼロに縮小する見込みだ。    
            

  アルジェブリス・インベストメンツのマネーマネジャー、アルベルト・ガロ氏(ロンドン在勤)はブルームバーグテレビジョンで、「新興国市場全般になお油断がある。新興国の債務には赤信号が点滅している」と語った。  
  
  モルガン・スタンレーのハンス・レデカー、ゲ・タン・クー両氏は14日のリポートで、「流動性が潤沢な世界であれば、新興国市場の最近の動きが相場の変動や現地の流動性に与える影響ははるかに小さかっただろう。ここ数週間にわれわれが新興国市場で目にした状況は、グローバルな流動性環境が引き締まった結果だといえる」と指摘した。
原題:Turkey Just a Test Case as Quantitative Tightening Era Nears(抜粋)


 

 


トルコを締め付けるトランプの愚策、リラ・ショックの背景

2018/08/15

佐々木伸 (星槎大学客員教授)


8月13日イスタンブールのグランバザール内の両替所(AP/AFLO)
 トルコと米国の対立が先鋭化、リラ・ショックを招くなど世界市場を動揺させている。対立の要因はトルコが拘束中の米牧師の釈放を拒否したことだが、その背景にはトランプ大統領がエルドアン大統領に約束を反故にされた、とぶち切れたことがある。同盟国を軽視するトランプ氏の振る舞いはトルコをロシアに接近させており、「外交素人の愚策」(専門家)との批判を生んでいる。

発端
 発端はトルコに23年間も在住しているキリスト教福音派の米国人牧師アンドルー・ブランソン(50)氏が2016年10月、その夏のクーデター未遂事件に関与したとして、拘束されたことだ。同牧師は今年7月に刑務所から自宅軟禁に移されたが、厳しい監視下に置かれていることに変わりはない。

 トランプ大統領は6月のブリュッセルでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の際、エルドアン大統領と個別会談し、牧師の釈放問題について話し合った。トランプ氏はその時、当時イスラエルに拘束されていたトルコ人女性の釈放をわざわざイスラエルに働き掛け、女性を釈放する手助けまでした。

 米紙によると、トランプ氏はエルドアン氏が会談で、牧師の釈放に同意したと受け取ったが、その後も釈放されず、約束を反故にされたと思い込んだようだ。釈放のシナリオは、牧師と米国で投獄されているトルコ人銀行家を交換しようというものだ。銀行家は対イラン制裁に違反した容疑で逮捕されている。

 トルコは8月、高級代表団をワシントンに派遣し、サリバン国務副長官らと釈放問題について協議した。米側はこの際、牧師を8月8日までに釈放するよう最後通告、トルコ側は対イラン制裁違反に関連して、トルコの銀行をこれ以上捜査しないよう要求した。結局、協議は不調に終わった。

 トランプ氏が牧師の釈放にこれほどこだわるのは、牧師が福音派に属しているからだ。福音派は米有権者の25%を占める同氏最大の支持基盤。11月6日の中間選挙に向け、牧師を釈放させてアピールする政治的な思惑があった。しかし、この思惑が外れ、トルコへの怒りが爆発したようだ。

根っこにギュレン師送還問題
 トランプ氏は7月のツイートで、ブランソン牧師を長期間拘束していることに大規模な制裁を課すと宣言。米政府はこの発言に従って8月1日、トルコの法相と内相の2人を在米資産凍結などの制裁対象に指定すると発表、10日にはトランプ氏がトルコにすでに課している鉄鋼とアルミニウムの関税をそれぞれ50%、20%に倍増させるとたたみかけた。

 これに対して、エルドアン大統領は2閣僚の資産凍結に同等の報復措置を課すとし、鉄鋼への追加関税についても「経済戦争には負けない」「われわれに脅しは通用しない」などと強く反発。国民に対し通貨リラを支えるため「金やドルをリラに交換するよう」呼び掛け、米国との全面対決の姿勢を打ち出した。

 しかし、こうした両国の緊張激化を受け、リラは10日だけで約20%下落。その価値は年初以来40%以上も下落するという非常事態に陥った。強権的なエルドアン氏が中央銀行の政策運営に介入する恐れも出たことからリラ安に拍車がかかり、米国や日本を含め世界市場が動揺、株安となった。

 トルコと米国間には、ブランソン牧師問題に加え元々、いくつかの懸案がある。特にエルドアン氏にとって我慢がならないのは、クーデター未遂事件の黒幕と名指ししているギュレン師の送還問題だ。エルドアン氏は事件後、軍や政府、司法、学校などからのギュレン派一掃に乗り出し、これまでに15万人を拘束し、11万人以上を職場などから追放した。

 しかし、当のギュレン師は米ペンシルベニアの山中に在住し、トランプ政権もエルドアン氏の送還要求に応じていない。同氏は6月の大統領選挙で初の「実権型大統領」として再選を果たし、閣僚の任免権や国会承認なしの非常事態宣言発布など強力な権限を手に入れ、その独裁的な姿勢が際立っている。

プーチンにすがるエルドアン
 トランプ氏との対立で追い込まれたエルドアン氏にとって、頼りはロシアのプーチン大統領だ。米国が鉄鋼などへの追加関税を発表した10日には、プーチン氏と急きょ電話会談、事実上、同氏にすがりついた。 

 エルドアン氏は同日付のニューヨーク・タイムズへの寄稿でも、米国が同盟国であるトルコに失礼な行動をやめなければ「新たな仲間や同盟国を探し始めなければならない」などと警告した。国際関係論から言えば、米ロを天秤にかける典型的な動きである。

 エルドアン氏と米国との関係はクーデター未遂事件が起きる前から、シリアのクルド人支援問題などでギクシャクしてきた。だが、その逆にプーチン氏とは友好関係を築いた。ロシアのシリア軍事介入で、その軍事力を目の当たりにし、2017年、ロシアの最新防空システムS400の購入を契約した。プーチン氏にとっては米国とその同盟国に楔を打ち込む好機でもある。

 この兵器購入契約に米国が危機感を募らせるのは当然だ。S400を導入すれば、NATOの一員であるトルコ領内で、ロシアの技術者が公然と活動することになる。米議会はこのほど、ブランソン牧師を釈放し、S400の購入契約を停止しなければ、トルコが米国から購入したF35戦闘機100機の引き渡しを認めないとする法案を可決し、エルドアン氏に圧力を掛けた。

 イランのザリフ外相はトルコへの米制裁を「恥ずべき行為」と批判したが、エルドアン氏にとっては当面、ロシアとイランこそ同盟国だ。この3カ国はシリア内戦でも協力関係にあり、内戦終結後のシリアの政治体制についての協議を続けてきたし、3カ国とも米国から制裁を受けているという共通項がある。

 トランプ氏が優先するのは目先の利益だ。先のNATO首脳会議や先進7カ国首脳会議(G7)で見せた“同盟国を同盟国と思わない”姿勢、そして日本を含む同盟国との貿易戦争も辞さない態度がそのことを物語っている。だから同盟国であるトルコに対する強硬方針もさほど違和感がないに違いない。だが、「トルコがロシアに取り込まれた時、その地政学的損失は米国にとってはかり知れない」(ベイルート筋)。後になってほぞを噛むのは米国ではないのか。


 

 


 
ロシアに歩み寄るトルコ政府、米制裁を受け
トルコのチャブシオール外相(左)とシリア危機について協議するロシアのラブロフ外相(4月、モスクワ)

By David Gauthier-Villars
2018 年 8 月 15 日 11:32 JST

 【イスタンブール】トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領がアップルの「iPhone(アイフォーン)」を含む米国製電化製品のボイコットを呼びかけ、トランプ政権への対立姿勢を強めている。一方、トルコのメブリュト・チャブシオール外相はロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談し、欧米の制裁を批判した。

 北大西洋条約機構(NATO)に長年加盟しているトルコは、欧米各国とロシアの板挟みになっていた。だが同国政府は今週に入り、ロシア側に歩み寄る姿勢を示している。トルコとロシアはそれぞれが米政府から制裁を受け、自国通貨が対ドルで下落。その中でエルドアン氏が呼びかけたボイコットも、米政府の制裁に報復するための一手だ。

 トルコの通貨リラは同国経済の先行きに対する懸念からすでに下落していた。だが、テロ関連容疑で拘束されている米国人牧師を釈放しなかったとして米政府が制裁措置を発動した1日以降、リラは対ドルで最安値を更新し続けている。14日にはやや持ち直したものの、年初来では大幅な下落を見せている。

 米政府がトルコからの輸入品に新たな関税をかけるとしたことで、貿易面でも全面的な対立が生じる不安が高まっている。

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 ラブロフ氏とトルコの首都アンカラで14日に会談したチャブシオール氏は、欧米による制裁を強く非難。「われわれが傷つけられる時代は終わらなければならない」とした。

 またラブロフ氏も、「彼らは制裁や脅し、恐喝、そして絶対的命令といった手法を用いている」と同じように批判を展開した。

 ラブロフ氏はトルコとの協力関係を強化するとし、中国やイランと実行しているように、トルコとの貿易でもドル建ての決済をやめる可能性に言及した。

 ロシアとの関係を強化すれば、エルドアン氏は米国への依存度を減らすことができる。またトルコ軍はNATOの南東部を守り続けているが、第2次世界大戦以降続く欧州の体系が変わる可能性もある。

 エルドアン氏は支持者らに対し、「われわれは新たな同盟国を求めている」と12日に述べていた。

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322回 トルコリラ下落の背景とドル高の背景【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】
配信日:2018年8月15日
フリーアナウンサーの大橋 ひろこ氏が実際のトレードを通じて学んできたFX取引のコツ、魅力をお伝えいたします。

第322回 トルコリラ下落の背景とドル高の背景【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】
トルコの通貨リラの下落は、南アフリカの通貨ランドやインドの通貨ルピーなど新興国通貨の下落に波及しただけでなく、多額のトルコ債券を保有しているとしてスペインやイタリアの銀行不安が広がりを見せ、欧州の通貨ユーロの下落まで誘引しました。

トルコリラは2001年2月に変動相場制に移行しましたが、当時のレートは1トルコリラ170円ほどでした。今回の下落でトルコリラは15.60円近辺にまで下落しています。長期化する経常赤字がトルコリラ安の背景ですが、恒常的なトルコリラ下落で輸入物価が高くなってしまうため、インフレ率が高いことも問題です。さらに近年ではISによるテロなど地政学リスクが観光収入を減少させており、恒常的にトルコリラ安が継続しているのです。

足下ではこの6月の大統領選挙で再選されたエルドアン大統領が、金融政策を司る中央銀行に対し、利下げを主張していることが懸念されています。トルコリラ安の影響もありトルコのインフレ率は15%にも上るため、物価の安定のためには利上げが必要な局面なのですが7月の政策会合では利上げを見送ったことで市場が失望、トルコリラ下落がさらに加速しました。トルコリラが暴落しているこの局面で、利下げは考え難いのですが、利上げの必要に迫られているのに利上げできないというだけで、トルコリラ売りの材料としては十分です。

こうした中で、トランプ大統領がトルコに対する鉄鋼・アルミ関税倍増を指示したことがきっかけとなり、トルコリラの大暴落が起こりました。2016年にトルコで起きたクーデータ-未遂事件に関与したとしてトルコで軟禁状態にある米国人、ブランソン牧師の釈放を求める米国に対し、トルコもまた米国に亡命しているイスラム教指導者ギュレン師の引き渡しを求めており、米国はこれを拒否しています。トルコに対する関税引き上げは、このような政治的背景が引き金となっているため、トルコ側の譲歩がない限り米国の制裁の圧力は緩むことがないと思われ、トルコリラの下落に歯止めがかかるとは思えません。

足下の為替市場、下落圧力が強いのはトルコリラだけではありません。国際決済銀行(BIS)によるとスペインは2018年3月末時点で809億ドル(9兆円弱)のトルコ向け債権があります。フランスが351億ドル、イタリアが185億ドルも保有していることが懸念され、ユーロにも売り圧力が強まっています。そもそも6月のECB理事会で政策金利を「少なくとも2019年夏にかけて」過去最低の現行水準を維持するとの見通しを示したことで、ユーロは下落圧力が強まっています。

ニュージーランドもまた、8月9日のニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策会合にて政策金利を据え置き、「2020年まで利上げしない」スタンスを示しました。今後2年金利が上がらないとうことで、ニュージーランドドルは売り圧力が強まっています。

イギリスは2017年11月に10年ぶりの利上げに踏み切り、この8月にも再度利上げを発表しました。利上げのサイクルにあるポンドですが、上昇するどころか4月を天井にして下落が続いています。ポンド売りの材料は「合意なき離脱リスク」。イギリスは2016年の国民投票でEUからの離脱(ブレグジット)を決めました。離脱といっても簡単ではありません。EUとイギリスの間で様々な新ルールの取り決めが必要となります。EUとの間でのブレグジット交渉のデッドラインは2019年3月29日ですが、実際には合意事項をイギリスとEU各国の各議会の承認を得る必要があるため、2018年10月までには条件合意が求められますが、現時点では何もまとまっていない状況です。

日本は7月の日銀の金融政策決定会合で修正があったとはいえ、低金利政策の長期化は明白。ということで、粛々と利上げを続けている米国以外の国には買い材料が見当たらず、ドル一強となってしまっているのです。行き過ぎた相場の揺り戻しはあっても大局のドル高はまだ続くものと思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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トルコが米国製品に追加関税−自動車やコメ、酒類
Taylan Bilgic、Inci Ozbek
2018年8月15日 14:16 JST

Photographer: Danielle Villasana / Bloomberg
トルコが官報で追加関税を適用する製品のリストを公表した。

リストに22品目盛り込む−携帯電話は対象外
コメに50%、アルコール飲料に140%、乗用車や他の自動車に120%、化粧品に60%
原題:Turkey Raises Customs Tax on Some U.S. Goods Including Vehicles(抜粋)

トルコ・リラが下げ再開、前日に8%余り上昇−中銀措置は不十分
Ruth Carson
2018年8月15日 13:14 JST
15日の外国為替市場でトルコ・リラが再び下落。前日は8%余り上昇していたが、トルコ中央銀行が発表した措置はリラを支えるには不十分なことが示された。
  リラはアジア時間の取引で一時3.4%安。13日には過去最低の1ドル=7.2362リラを付け、他の新興市場通貨の下落を引き起こした。
  中銀は「必要なあらゆる措置を取る」と表明、市中銀行の支払準備率を引き下げるなどの策を打ち出し、14日はリラが反発していた。
  一方、エルドアン大統領は米国人牧師拘束を巡り譲歩の姿勢を見せず、14日には米国製電子機器をボイコットすると発表した。

原題:Lira Resumes Drop as Central Bank Steps Fail to Stem Sell-Off(抜粋)

 

 

トルコ危機に激しくさらされた隣国の通貨、騰落率トップから転落
Natasha Doff
2018年8月15日 14:47 JST
ジョージアの通貨ラリは8月初めまでは年初来騰落率でトップ
ラリはトルコの通貨危機に数日で飲み込まれ、上げ幅を打ち消した

Photographer: Kerem Uzel / Bloomberg
ジョージア(旧グルジア)とロシアの開戦から10年となった週に、ジョージアの通貨ラリは、同国の南に位置するトルコの危機の急襲を受けた。
  ラリは8月初めまでは世界の通貨の年初来騰落率でトップだったが、トルコ市場の混乱が波及し、今年の上げ幅が打ち消された。ジョージアにとって最大の貿易相手国であるトルコに対する競争力を保つために為替相場の調整が必要になるとの見方が投資家の間に広がり、ラリは数日でトルコの通貨危機に飲み込まれた。
  この1週間でラリは対ドルで約6%下げ、年初来の騰落率もマイナスとなった。さらに悪いことには、ジョージアの貿易相手国2位は、米国による最新の制裁と追加制裁の恐れから通貨が今月下落していたロシアだった。
  ガルト・アンド・タガート・リサーチのエバ・ボチョリシビリ氏らアナリストはリポートで、「力強い市場の需給により、ジョージアの通貨ラリは2018年8月初めまでは地域の通貨売り浴びせの影響を受けなかった」とした上で、「この調整は、ラリが主要通貨に対して実際に調整し、競争力を維持していることを意味する」と説明した。
  ラリの運命の逆転は、今月のトルコ・リラ急落の影響の広がりをあらためて示している。リラの大幅下落はユーロ圏から中南米まで幅広い市場への重しとなっている。カザフスタンやアゼルバイジャンなど旧ソ連諸国の通貨もロシアとトルコのダブルパンチを受けて下げている。

High Exposure
Georgia does the bulk of its foreign trade with Turkey and Russia

Source: Bloomberg
原題:Currency Most Exposed to Turkey Meltdown Swept From Hero to Zero(抜粋)

6. 2018年8月16日 01:32:04 : ZpF5weOHnE : JOpiE4j1Pk0[1] 報告
トルコ危機問題の本質は、もっと別のところにあるんですね。
トランプと言う男は、今までも、経済制裁をカードと見做していない節があったのが、
今回、間違いなく武器と解釈していると、証明されたわけです。

普通の脳みそを持っている大統領なら、経済制裁はカードなので、脅しとしてチラつかせるわけですが、トランプは短絡脳なので、すべてすっ飛ばして”高関税発動!”とやっちゃうわけです。

普通は、発動前に何段階もの表裏の交渉があって、メリットデメリット、デメリットには対策を講じて、有利なときに発動するのですが、
トランプは馬鹿なので、そんなこと知ったこっちゃありません。
頭にきたらすぐに発動してしまうのです。

これが、大国ロシアや中国、EU相手ならば、お互い、関税競争などをすればいいわけですが、小国や経済に欠陥を抱えている国などに同じ感覚でやられたら、小国はたまったもんではないんですね。

暴力横綱が、子供相手に本気でルール無視の相撲をとるようなもんです。
大関や横綱級なら何とか技でいなせても、子供には無理なんですね。
それを大々的にやっちゃったのが、トランプなんです。

今回のトランプを見て、世界中の小国は戦々恐々としたことでしょう。
もちろんリスクをとって小国に投資している投資家たちも、今までとは、
計り知れないリスクに晒されていることに、気付いたに違いありません。
そういう意味でのリラ・ショックです。

それが、まあ、いわゆる”トランプリスク”なのです。
スイッチを渡された呆けた猿が、いつ巨大爆弾のスイッチを押すか解らないリスクです。

今後は、投資がやばくなる小国は、ボコボコデフォルトしていくかもしれません。
さしあたっては、スペイン危機で、EUがまた騒がしくなるんじゃないかと思います。

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