>厚労省は、調査先を継続していた場合の数値も公表しています。6月分は1.7%の伸びそういうことだ ゲンダイだから仕方がないが、熊野のコメント自体、大分前のものであり
しかも、引用も意図的に間違った方向に誘導している 本来の彼のコメントは、今回はサンプルバイアスがあるが、残業減というマイナス効果があっても 方向としては伸びているというもの http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2018/kuma180809ET.pdf 発表日:2018 年8月9日(木)
驚きの賃金上昇を確認する 〜特殊要因があっても進む賃上げ〜 第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生(пF03-5221-5223) 毎月勤労統計では、2018 年6月の現金給与が速報ベースで、前年比 3.6%と高い伸びになった。ここに はサンプル要因があるが、そのバイアスを除いても前年比 1.7%と高い。また、ここには 2019 年4月から の時間外労働の規制も微妙に影響しているとみられる。 21 年ぶりの高い伸び 厚生労働省が8月7日に発表した毎月勤労統計では、2018 年6月(速報)の賃金が前年比 3.6%に 上昇した。21 年ぶりの高い伸び率だという。この上昇率には驚く。少し立ち止まって考えると、この データは6月だ。ボーナスの支給が押し上げているのだと察しがつく。 特に伸びているのは、パートを除く一般労働者の現金給与である。前年比の伸びは、4月 0.6%、5 月 2.1%、6月 3.3%である。1〜6月までを均すと、平均 1.8%になる。それでも、2017 年平均 0.5%よりはずっと高い。業種では、卸売・小売業が 2018 年6月 10.7%、製造業が同 4.2%と高い (就業形態計)。卸小売は人手不足だから従業員のつなぎ止めに賃金を多めに配分したことがわかる。 製造業でも、春闘でベースアップをしない代わりに賞与で還元したと言われた。 サンプル要因のバイアス さあ、これで賃金は上昇ペースを上げると考えてよいのだろうか。今回の上昇にはサンプル要因と いう事情が挙げられる。この統計も企業の全数調査ではなく、サンプル調査である。調査先が一年前 と今年では違っているので、今回はたまたま増加した可能性がある。毎月勤労統計では、6月分は 「変動が大きくなっています。賞与や賃金の動向については、7月分以降の結果も併せてみる必要が あります」と注釈がある。 毎月勤労統計は、2018 年1月分から 2015 年 基準に指数改訂された。従来は 2010 年基準だ った。調査事業所も、この 2018 年1月から部 分入替え方式を導入している。そうしたサンプ ル要因がデータの伸びを嵩上げしていると考え られる。 「毎月勤労統計」では、サンプル要因の変化 を取り除いてみるために、以前と同じ「共通事 業所」のデータを掲載している。そのデータで は、2018 年6月は前年比 1.7%となっている。 3.6%ほどは高くないが、1.7%でも高い数字で ある(図表)。確かに、ボーナスの増加によっ -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 17 18 前年比% (出所)厚生労働省「毎月勤労統計」 (図表)現金給与総額の伸び率 サンプル入替え後のベース 共通事業所ベース 2 / 2 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所調査研究本 部経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変 更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 Economic Trends / マクロ経済分析レポート て賃金が増えている現象は、特殊要因だけでなく、実際に起きているようだ。しかも、この傾向はパ ートよりも正社員でより鮮明である。 働き方改革の影響? 筆者は、賃金上昇自体は本当のことだと考えるが、もう一つ別の要因があってボーナスが増えてい る可能性があるとみている。別要因とは、時間外労働の上限に対する規制である。大企業(中小企業 以外)は 2019 年4月から、月 100 時間を単月で超えてはいけないルールとなる。働き方改革の一環で ある。 働き方改革の趣旨は、生産性を上昇させて、労働時間を必要な範囲内に抑えていこうということで あろう。そうなると、労働時間が減って賃金も減ってもらっては困る。生産性が上がる分だけ賃金が 上がってこないと、「働き方改革をすると総賃金は下がる」という変なことになる。だから、企業は 時間外労働が減って成果の分配が残業代によって行われなくなる分を、ボーナスの増加に回す。これ は仮説に過ぎないが、2019 年4月からの時間外規制は微妙に賃上げに影響を与える可能性は否定でき ない。 一方、規制は、2019 年4月からだが、すでに一部の企業は残業削減を行っている。データの上でも、 共通事業所ベースでの所定外労働時間は、2018 年1〜6月までで前年比▲0.5%と減少している。この 変化は、残業代がボーナスに回るだけで雇用者の総賃金は変わらないということだが、賃金は意外に フレキシブルに成果を分配するようになったとみることもできる。 また、今回、従来までと異なる変化がいくつかあったことも注目される。就業形態計の賃金が、そ の内訳の一般労働者とパート労働者の伸び率を上回っている。これは、パート比率の低下のせいであ る。パート比率は前年比▲0.43%ポイント低下している。賃金水準の高い一般労働者が増加したこと で、全体平均の伸び率がより高まったことによる。従来、パート比率の上昇で全体平均が低下し続け てきたのと逆の動きである。一連の変化をみると、いよいよ賃上げが進むことに向けた胎動が感じら れる。 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2018/kuma180809BOJ.pdf 1 / 3 BOJ Watching / マクロ経済分析レポート 発表日:2018 年 8 月 9 日(木) 今後の金融政策 〜フォワードガイダンスをどう修正するか〜 第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生(пF03-5221-5223) どうみてもサプライズ 日銀が7月末の会合で緩和見直しを決定して、数日間が経過した。会合後の反応をみていると、イ ールドカーブなどにはそれほど大きな変化は起きていない。長期金利も、変動幅の上限を 0.1%から 0.2%へと引き上げたが、すぐに 0.2%に跳ね上がることにはならなかった。理由は、この見通しが緩 和強化なのか、出口戦略なのか、今ひとつわかりにくいところにある。今もって、政策評価には定説 はない。 しかし、日銀の金利上昇容認が予想外だったことは間違いない。例えば、7月の日本経済研究セン ター「ESPフォーキャスト調査」では、先行きの長期金利の誘導目標が 2018 年末までに 0.1%以上 に変わるとみていた人は予想人数 39 人中 4 人に過ぎない。確かに、誘導目標は 0%のままだが、事実 上の上限が 0.2%となったので、これはサプライズに違いない。 もうひとつ、日銀は 2019 年 10 月の消費税率引き上げによる景気変動を見極めるため、「当分の 間」、長短金利が低い状態を維持する。フォワードガイダンスを新設して緩和強化をアピールした。 この変更は、あと1年間と数ヶ月間は現状の長短金利が続くことを示すものだ。しかし、長短金利は、 安倍首相が自民党総裁に3選されて 2021 年 9 月まで現状維持されるとみていた人は相当数いたはずだ。 これも、事前に予想されていなかったという点でサプライズだ。 出口戦略なのか 改めて今までの見方を整理しておこう。異次元緩和は、物価2%を安定的に超えるようになって、 マイナス金利や長期国債の買入れが変更されて、引き締め=緩和終了となる見通しだった。今も、そ ういう見通しを信じている人は多い。 ところが、日銀は今までの取り決めを破る訳ではなく、書かれていなかったことを次々に始めた。 2016 年 9 月のイールドカーブ・コントロールの導入、2018 年 4 月の2%達成期限の廃止、そして7月 の金利変動幅の拡大である。 これらは何の脈略もなく修正しているのではない。長期金利の過度な上昇を抑える体制をつくる準 備という点で一致している。例えば、日銀が長期国債の買入れをほとんどしなくなると、国債消化は 市場の売買に委ねられる。すると、金利変動幅は広がる。日銀が債券市場への介入を弱めることで市 場機能を徐々に回復させる。2%の達成期限も、それがなくなることで、長期金利は徐々に日銀の需 7月末の政策の枠組み修正から、金融政策の理解について定説はない。見直しが緩和強化か、出 口戦略なのか見極めにくい。筆者は、一連の動きが出口における長期金利上昇を抑える体制への準 備だとみている。日銀は 2019 年 10 月までにまだ仕掛けてくるだろう。 2 / 3 BOJ Watching / マクロ経済分析レポート 給コントロールがない世界で金利の居どころを考え始める。もともと、物価2%になると信じている 人はごく稀なので、達成期限がなくなっても、支障はない。 日銀は少し前から「量と金利は一体」という言葉を使っている。この抽象的表現を翻訳すると、長 期国債の買入れを日銀がしなくなると、金利変動幅は大きくなるが、「私たちは長期金利上昇に対し て、以前のような上昇を抑え込む過剰な介入はしません」と言っているのだ。 出口に対しては、これまで長期金利上昇への警戒感が強かった。2%の物価になってから緩和解除 するのでは、長期金利が跳ね上がって、実体経済に悪影響が及ぶという警戒感である。だから、物価 が2%に達しない時期から、長期金利上昇を容認しておいて、ガス抜きをする。日銀は、長期国債の 買入れを減らして、金利形成を市場に任せるという訳である。 今回の対応は、明らかに出口戦略である。そう見えないような手品を私たちは見せられている。手 品は、マジシャンが自分から絶対に種明かしをしないルールになっている。出口だとは絶対に言わな い。 フォワードガイダンスの効果 「枠組み」を修正することは、従来のルールを修正することに等しい。今回、政策金利のフォワー ドガイダンスが導入された。この修正は、物価2%に到達していなくても、金利変動幅を広げるとい う表現を使って、長期金利上昇を認めることを示している。金利上昇の見通しを立てたい人は、物価 だけでなく、「当分の間」という表現がどう変わるかに注目することになる。 思考実験をしてみよう。2019 年 10 月までに「当分の間、現在のきわめて低い長短金利」を修正する ことはあるだろうか。このフォワードガイダンスは、物価だけではなく景気を基準にしている。消費 税増税の不確実性が薄らぐと、この文面が書き換えられて、金利変動幅が 0.3〜0.5%へと広がること があり得る。日銀は、その時々に見える先行きの景気情勢によって、方針を変更できる。インフレ目 標の縛りは弱まり、時間軸を主体的に日銀が動かせる。これがフォワードガイダンスの意味だ。 出口はどうなるか? 普通に考えると、日銀が長期金利の変動幅を 0.3〜0.5%へと広げるのは 2020 年初となる。2019 年 10〜12 月のGDPが速報されて、反動減が小さいとわかるときだ。その頃には、ECBも利上げをし ているだろう。 おそらく、あと1年後の 2019 年 8 月には、時間軸はもっと前倒しになっているだろうと筆者は読む。 最大の理由は、副作用対策が長期金利の上限 0.2%では不十分だからである。金融機関の運用環境は、 この程度の金利上昇では改善しない。日銀が副作用対策に耳を傾けたことは、今後大きくなっていく 金融機関の声に反応して、金利変動幅の上限をさらに引き上げる観測を強めるだろう。 もうひとつの要因は、米長期金利である。FRBの利上げがより進み、インフレ圧力が強まってい くと、2019 年中盤には長期金利は3%台へと上昇するだろう(もちろん、低下する可能性もある)。 そのとき、日本の長期金利の上限 0.2%は低すぎる天井にみえるかもしれない。日銀は、無理に金利上 昇を抑え込まない方針を採る可能性がある。 出口を考えるときに最大の縛りは2%である。日銀は、金利変動幅を広げるという方法で、実質的 な利上げを行っているとみられるが、そこには限界もある。短期金利のマイナスをゼロ%ないしプラ 3 / 3 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに 足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。ま た、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 BOJ Watching / マクロ経済分析レポート スに変更するときには2%の達成が現実味を持たなくてはならない。2%の達成なしに短期金利は動 かせないと判断される。 しかし、日銀は今後に別の枠組み変更を行ってきて、その縛りを形骸化するという見方もできる。 4月に2%の達成期限を廃止、7月に金利変動幅の拡大、と急ピッチで日銀は、リフレ政策の骨を抜 いてきている。今後、10 月の展望レポート、2019 年に消費税増税が近づいたとき、いろいろな局面で 枠組みを見直すことはあり得る。 私たちは、気が付いたならば巨大緩和の出口の手前に立っているという日銀マジック・ショーのま だ途中に居ると現状を考えておく方がよい。
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