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崩れ落ちる中国経済 住宅ローン地獄で家計債務がリーマン危機前水準に
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/08/post-10717.php
2018年8月2日(木)18時20分 ロイター
7月25日、中国南部の港湾都市、厦門(アモイ)の市職員を勤める26歳のYang Xiaodaoさんは、2ベッドルームのマンションを夫と30年ローンで購入したことが、人生で最大の失敗だったと悔やんでいる。写真は2017年、同市で建設中の高層ビルで働く作業員(2018年 ロイター)
中国福建省南部の港湾都市、厦門(アモイ)の市職員を勤める26歳のYang Xiaodaoさんは、2ベッドルームのマンションを夫と30年ローンで購入したことが、人生で最大の失敗だったと悔やんでいる。
購入価格290万元(約4700万円)のうち、頭金の150万元は双方の両親が肩代わりしてくれたが、夫婦で稼ぐ月収の7割以上がローン返済に消えてしまう。月収は2人合わせて約1万元で、厦門市では平均的な金額だ。
「私たちの支出能力は急降下した」と語るYangさん。「子どもを作ろうとも思わないし、車を買おうとも、旅行に行こうとも思わない」
中国の住宅価格は、所得比でみると世界で最も高い部類に入っており、何百万もの世帯が抱える債務はすでに、住宅危機直前の米国に匹敵する水準に達していることが、上海財経大学の高等研究院の調査で明らかになった。
米国との貿易摩擦が熱を帯びる中、こうした債務が消費に悪影響を及ぼし、内需主導の成長を目指している中国政府の障害になる、とエコノミストは警鐘を鳴らす。
中原銀行(北京)首席エコノミストのワン・ジュン氏は、減速する所得の伸びと高水準の家計債務により、短期的に消費者が経済成長に寄与するレベルが限られると指摘する。「住宅ローンの重荷が、それ以外の用途に支出できる可処分所得の額に影響を及ぼしている」
特に目立っているのが、福建省の豊かな沿岸都市、厦門市だ。
約400万人の厦門市住民は、他のどの中国都市と比べても、債務水準が最も高くなっていることが、ロイターによる中銀データの分析で明らかになった。
温暖な気候と豊富な魚介類、のんびりとしたライフスタイルで知られる厦門市は、不動産価格の高さでは全国第4位だが、住宅価格が同じレベルにある他の都市と比べると、所得はかなり低い。
「厦門のライフスタイルに魅せられて、他の都市から福建省に不動産投機の波が押し寄せ、不動産価格を過去最高の水準に押し上げてしまい、地元住民の間でパニック買いが生じた」と厦門大学経済学大学院のWang Yanwu准教授は語る。
■急速な変化
厦門市には最近建設された高層建築があふれており、地方政府は市の中心である厦門島を除く周辺地区の開発を推進している。
同市の新築住宅価格は2015年から今年6月までに53%上昇しており、年換算では約19%と、中国国家統計局が調査対象としている70都市の中で最大の伸び率を記録。同時期における厦門市の可処分所得の伸び率は平均8.4%にとどまった。
公式統計に基づいたロイターの計算によれば、中国全体の新築住宅価格は、2015年以来20.7%上昇している。
しかし、冒頭で紹介したYangさんのような住宅所有者が警戒すべきは、住宅購入を規制する新ルールの導入以来、厦門市での住宅販売が低迷し、既存の住宅価格が今年1─6月で4.8%下落している点だ。
ロイターの計算によれば、他の70主要都市における同価格は平均3.9%上昇している。
厦門市民にとり、住宅価格と収入のギャップが拡大している。90平方メートルの住宅価格は平均45万ドル(約5000万円)だが、1人当たり所得は年間約7500ドル(約83万円)にとどまっている。
購入者に住宅ローン返済をする余裕があるとしても、住宅価格の最低3割は頭金として要求される場合が多い。平均価格で見ると、これは60年分の可処分所得に相当する計算になる。
2人の子供を持つ28歳のHuangさんは、自分と妻の両親が昨年200万元の頭金を出してくれたという。姓だけを教えてくれたこの男性は、住宅ローンの返済が月8000元に達しており、他に使えるお金はほとんど残らない、と語った。
「いらいらするし、疲れ果てて、うんざりしている」と彼は言う。
国際決済銀行(BIS)によれば、昨年末時点で厦門市における家計債務は同市の国内総生産(GDP)の98%に達し、全国レベルの同55%を大きく上回り、米国における家計債務の対GDP比79%よりも高くなっている。
さらに、厦門市における家計貯蓄に対する家計債務の比率は182%と驚くほど高い。
■憂慮すべき数値
厦門市における小売売上高は今年1─5月に前年同期比で9.2%増加したが、全国平均の9.5%を下回っており、前年同期に記録した12.1%から大幅な減速となった。
市統計局のデータによれば、市内の大手百貨店・スーパーの半数以上で第1・四半期の売上高が減少。また4月データでは、化粧品や宝飾品を含む裁量品目の支出が前年同月から低下している。
中国全体でも、1人当たり可処分所得の伸びは上半期に6.6%と、前年同期の7%から減速していることが、16日発表の統計で明らかになった。
一方、他の都市でも債務は積み上がっている。深センでは家計債務が同市GDPの79%、杭州でも同77%に達している。
中銀データに基づくロイターの分析によれば、最も債務が多いのは、中国経済を牽引してきた主要沿岸都市の住民であり、貯蓄に対する家計債務残高の比率が最も高いのは、4月末時点で110%を記録した福建省、次いで浙江省、広東省と続く。
上海財経大学の報告書では、可処分所得に対する中国の家計債務比率は、2017年末時点で78%だったと試算。現在のトレンドが続けば、2020年にはこの比率が100%を超え、グローバル金融危機前の米国が記録した水準に匹敵する、と同報告書は予想している。
また、中国で最も豊かな省に含まれる福建、広東、浙江の3省では、すでにこの比率が危機前の米国水準を上回っているという。
「お金を使う気になれない」と語る厦門市職員のYangさん。「住宅ローンが、わが家の2世代にわたる生活の質に影響を与えている」
(翻訳:エァクレーレン)
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