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MRJ、納入ゼロのまま撤退説も…直近1年で受注ゼロ、大量キャンセル発生、債務超過膨張
http://biz-journal.jp/2018/08/post_24269.html
2018.08.03 文=編集部 Business Journal
MRJ90 飛行試験一号機(「Wikipedia」より)
国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェット(MRJ)を開発する三菱航空機(愛知県豊山町)は7月17日、英国で開かれた世界最大級の航空展示会「ファンボロー国際航空ショー2018」で予定されていた2回目のデモ飛行を中止した。16日のデモ飛行後、機体にけん引車が接触し、機首の一部が損傷したからだ。
MRJは16日、性能をアピールするデモ飛行を同国際航空ショーで実施した。約10分間飛行し、成功を収めた。
2020年半ばの1号機納期まであと2年。リージョナルジェット(RJ)市場に参入するための離陸態勢に入る。最終日となる18日、ようやく2回目のデモ飛行にこぎ着けたが、ファンボロー国際航空ショーの商談期間(16〜20日)中、MRJの新規受注はゼロだった。17年のパリ航空ショーに続いて、2年連続で新規受注はゼロに終わった。
そんなMRJを尻目に、世界の航空機市場では再編の動きが急速に進んでいる。世界航空機2大メーカーの欧州エアバスと米ボーイングが相次いで小型旅客機事業に本格参入する方針を表明。MRJの先行きに暗い影を落とした。
エアバスは7月1日、小型機世界1位のカナダのボンバルディアの小型機、Cシリーズ(100〜150席)を手がける会社に50.01%出資し、傘下に収めた。Cシリーズは「A220」に名称を変更した。
一方、ボーイングは7月5日、世界2位のブラジルのエンブラエルの小型旅客機事業を買収することで合意した。80〜150席の小型機「Eジェット」を持つエンブラエルの事業を切り離し、19年末までにボーイング主導でつくる共同出資会社に移管する。
150席以下の小型機市場では、ボンバルディアとエンブラエルが合わせて世界シェアの8割を握ってきた。小型機はアジアのLCC(格安航空会社)を中心に需要増が見込めるとあって、中大型機で覇権争いを繰り広げているエアバスとボーイングが取り込みを急ぐ構図だ。
MRJのライバルであるボンバルディアとエンブラエルは、大手の傘下に入った。MRJは座席数88席の「MRJ90」と、76席の「MRJ70」の2つの機種で構成しているだけに、エアバス=ボンバルディア、ボーイング=エンブラエルの2強ともろに激突する。
ボーイングはMRJの補修部品の調達などのサービスを支援しており、三菱航空機の親会社である三菱重工業とは民間航空機分野で提携関係にある。
ボーイングのデニス・マレンバーグ最高経営責任者(CEO)は、ファンボロー国際航空ショーに先立ち、会場で開いた記者会見で「MRJに対する(支援の)義務は変わりない」と述べた。その一方で、エンブラエルの小型機事業の買収について「ボーイングの長い歴史のなかでも重要な出来事だ」と強調。「(三菱重工業とは)補完的な提携で、顧客により大きな価値と多くの選択肢を提供できる」とした。MRJの先行きに不透明感が残る。
■債務超過1100億円、さらに膨れる見込み
三菱航空機はMRJの開発費用の増加によって、18年3月期末時点で1100億円の債務超過に陥った。債務超過額は、17年3月期末に比べて2倍以上になった。受注は1年以上なく、1月末には米イースタン航空が受注総数の1割にあたる40機をキャンセルした。MRJは08年の開発開始から、これまで5度も納期を延期している。
三菱航空機の第11期(18年3月期)決算公告によると、売上高はゼロ。営業損益は559億円の赤字、純損益は589億円の赤字、累積赤字は2100億円に上る。その結果、1100億円の債務超過となった。
現在の確定発注は213機。ローンチカスタマー(1号機の納入先)の全日本空輸(ANA)への納入リミットは20年半ばだ。それまでの期間、毎年、赤字は500億円規模で膨れていくことになるとみられる。
親会社の三菱重工業の宮永俊一社長は5月8日の会見で、今年度内に三菱航空機の債務超過を解消する姿勢を示した。
三菱航空機の資本金は1000億円(資本準備金を含む)。三菱重工業が64%の株式を持つ筆頭株主で、三菱商事とトヨタ自動車が各10%、住友商事と三井物産が各5%保有している。債務の株式化(DES)と増資を組み合せた資本増強策で債務超過の解消を図る。
だが、債務超過を解消できたとしても、抜本的な解決策にはならない。小型機市場が2強に集約された現在、MRJに勝ち目はないからだ。経済産業省が主導した計画では、20年をメドに日本政策投資銀行が株式の大半を買い取ったうえで三菱航空機を清算させ、新たに国主導でMRJの製造・販売会社を立ち上げるというものだった。この計画も、小型機市場が2強に集約されてしまった現在となっては、実現性は乏しい。
結局、ボーイングがエンブラエルと共同で立ち上げる会社にMRJ事業を売却するしかないとの見方も多い。「今、断念(撤退)したほうが傷は浅い」と言い切る財界首脳もいる。決断の刻は迫ってきている。
果たして、三菱重工業は社運を賭けた航空機事業から撤退することになるのだろうか。
(文=編集部)
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