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IR実施法案は成立したが、日本のカジノはすでに座礁寸前か?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180727-00022262-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 7/27(金) 8:15配信
welcomia / Shutterstock.com
とうとうIR実施法案が成立し、日本にもカジノがつくられることとなった。ラスベガスのカジノ会社は、こぞって業務受託の意欲を示し、自社の経験とノウハウを誇示している。しかし、営業トークとは裏腹に、彼らは日本でIRが本当に成功するかどうかをシビアに考え、彼らサイドの参入条件のカードをどう切ろうか深く思慮している。
国会での議論は長期に及んだが、実に不思議なことに、「どうしたらカジノ中毒=依存症の人間や犯罪者を寄せつけないようにするか」という議論ばかりに終始し、「このカジノ競争激化の時代に、本当にIRは黒字を出せるのか?」という議論がまるでないのだ。
「われらが日本につくるIRだから繁盛間違いなし!」という大前提は、バブル時代を経験した筆者には、廃墟になったたくさんの失敗した「テーマパーク」さえ想起させる。
世界で百カ国以上がカジノを合法化しているが、おそらく日本ほどカジノを「必要悪」視し、「やむを得ない」と顔を歪めながら導入する国はない。そして、長年、新規ビジネスの立ち上げをコンサルタントとしてかかわってきた立場からして、導入する前から敵視されるビジネスなどうまくいったためしがないと懸念する。
日本のカジノが生き残る道
まず、今回可決された法案では、納付金という形で、粗利益に30%も課金される。経費を控除したあとの純利益でなく、粗利益の3割を持っていかれるということが、どれだけ高額な「みかじめ料」となるかは、ビジネスに携わっている方々には自明のことだろう。もちろん、純利益にも普通に国税と地方税がかかっていく。
これほど行政に搾取される産業がかつて日本にあっただろうか? 日本につくられるカジノが生き残るには、2つの道しかない。売上のボリュームを圧倒的に上げるか、顧客に負担を強いるかだ。
しかし、カジノはIR施設全体のたった3%が設営の限界と規制されているから、前者には期待できない。なので、後者を選択し、つまりスロットマシンを出なくする選択しかない。「出ない」日本のカジノが、近隣諸国の「出る」カジノと比べて魅力がなくなるのは火を見るよりも明らかだ。
さらに、カジノも懸命なマーケティングなくてはけっして成り立たないが、広告や賭け金の金融には行政(カジノ管理委員会)が規制をかけることになるので、ここでも「悪者」意識が強いほど、プロモーションができなくなる可能性を示唆していて気が重くなる。
なぜこんなことになったのか? 筆者は、カジノ反対派があまりに「依存症」の問題に偏向しすぎて、議論を偏らせてしまったからだと考える。残念ながら、去年、筆者が「巨象再建」(小学館文庫)という近未来のカジノ経済小説で警告した通りの道筋を進んでいるように見えて、胸が痛む。
ラスベガスに20年以上いれば、これまでたくさんの日本の県庁や議会、中央行政の相談を受けてきたが、勉強熱心なのは賛成派ばかりで、反対派は忌み嫌って視察にも来ない。知識レベルのアンバランスは顕著だった。
マネーロンダリング対策が必要
マネロン対策を怠ると命とりに
依存症の問題も大事なことではあるが、実はそれ以上にIRにとって重要なのは、マネーロンダリングの問題だ。今日、日本はマネロン対策が不十分で、エラーも多い。平和な日本にいると、国際テロになかなか関心が向かなくてもあたりまえだが、マネロンは単に暴力団やオレオレ詐欺のツールではなく、テロ活動にも直結する。
国際テロの資金洗浄に使われ、世界紛争の行方さえ左右する。マネロン対策に甘い産業は国際テロに利用される。そしてこの産業のおかげで欧米はひき続きテロに見舞われ、市民が命を落とす。
カジノほどマネロンに狙われる産業はない。だからこそ強い規制を発動し、断固たる態度と法制度で臨まない限り、ここで失敗すると、参入したラスベガスのカジノ業者は本国でのライセンスさえ失いかねないという恐怖にさらされるのだ。
日本のカジノが目を光らすポイントがずれたままだと、ラスベガスのカジノ会社に彼らの条件をつきつけられ、飲まない場合には撤退を余儀なくされるというリスクさえある。
いいニュースがあるとすれば、安倍総理が一貫してITを世界最高レベルでカジノに持ち込むことを主張していることだ。マネロンとは金融の問題であったが、フィンテックや仮想通貨の台頭で、金融とITは近年強烈に親和性を高めている。
一例では、ラスベガスの子会社がカジノの電子決済を開発しているテックファーム株式会社(東京)は、カジノマネロン対策の調査レポートの販売を始めたし、大手電機メーカーのA社はカジノでのセキュリティカメラによる自動顔認証システムの開発を進めている。
日本のカジノは、このままでは座礁寸前だと見る。来月から本格的な規制整備と業務委託交渉が始まっていくはずだが、いち早くカジノを理解したITのプロを議論に加え、カジノ依存症もマネロンもITで超えていくことを世間に納得させ、3%の上限とか30%の納付金などという、非常識な「悪者扱い」を早くやめさせることである。
長野 慶太
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